JP6906348B2 - 酵母の改良方法 - Google Patents
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Description
このことから、アルギニン高含有酵母の製造方法には、遺伝子組み換えは使わず、自然突然変異で細胞内に遊離のアルギニンを高濃度蓄積するアプローチが必要である。
すなわち本発明は、
(1)酵母のアナログ耐性による酵母の改良方法であって、以下の工程を含む酵母改良方法、
第一の炭素源を用いて、薬剤耐性を得る工程
第二の炭素源(第一の炭素源と異なる炭素源)を用いて、薬剤耐性を得る工程
(2)前記(1)の方法であって、第一の炭素源の薬剤耐性濃度より第二の炭素源では、低濃度の薬剤耐性となる酵母の改良方法、
(3)(1)又は(2)の酵母の改良方法であって、酵母がキャンディダ・ウチリス、第一の炭素源がグルコース、第二の炭素源がキシロースである酵母の改良方法、
(4)前記(3)の酵母キャンディダ・ウチリスの改良方法であって、薬剤耐性が、アルギニンアナログ耐性株である酵母の改良方法、
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つの記載の方法により得られた酵母から抽出する工程を有する酵母エキスの製造方法、
を提供するものである。
このように、本発明の方法では、炭素源を変更することで、薬剤への感受性が変化し、さらなるアナログ高耐性株の取得が可能である。
さらに詳細な、具体例としては、変異処理後、グルコースを炭素源としたL−カナバニン選択培地で、L−カナバニン耐性株を取得する。L−カナバニン培地濃度は、各菌株の最小阻止濃度に設定する。得られた耐性株の中から所望のアルギニン生産性を示す株を取得する。目標の生産性に達していない場合は、取得した株に対し更に変異処理を繰り返し、取得株の最小阻止濃度に設定したL−カナバニン培地で更なる耐性株を取得する。炭素源をグルコースとした場合、容易に5,000ppmを超える高濃度のL−カナバニンがつくため、この繰り返し回数が制限される。一方、炭素源にキシロースを用いるとグルコースで5,000ppm以上の耐性を獲得した株であっても1/50以下にその感受性を増やすことが可能で、L−カナバニン耐性を指標としたスクリーニングが継続可能であり、所望のアルギニン含量を達成する可能性が高くなる。
このようにして単離された株は、遊離のアルギニンが10重量%以上、塩基性アミノ酸総和が15重量%以上を含有する酵母エキスの製造にきわめて好適である。
本発明のL−カナバニン耐性株では、アルギニン以外の塩基性アミノ酸は、ヒスチジン、リシンを有意に高蓄積化することができる。
培地は、酵母の培養に使用される公知の培地を使用することができる。一般的に炭素源として、ブドウ糖、酢酸、エタノール、グリセロール、糖蜜、亜硫酸パルプ廃液等が用いられ、窒素源としては、尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸塩などが使用される。リン酸、カリウム、マグネシウム源も過リン酸石灰、リン酸アンモニウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の通常の工業用原料でよく、その他亜鉛、マンガン、鉄イオン等の無機塩を添加する。その他、ビタミン、アミノ酸、核酸関連物質等を添加しても良い。カゼイン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等の有機物を添加しても良い。
なお、分析法は、下記の通りである。
<酵母菌体中の遊離のアミノ酸の定量法>
酵母菌体中の遊離のアミノ酸の定量は以下の様に行った。
洗浄した菌体を、沸騰水中で4分加熱し、流水中で冷却後、遠心分離した。得られる上清を適宜希釈し、常法に従いアミノ酸分析計L8900(HITACHI製)により測定した。
菌体乾燥重量は、洗浄した酵母懸濁液10mlを秤量瓶に採取し、105℃、20時間の加熱により水分を飛ばした後、デシケーター内で室温まで放冷し、加熱前後の重量差を精密電子天秤で測定することで求めた。この酵母菌体乾燥重量を基に、菌体中の各種成分の含有量(重量%)を算出した。
親株キャンディダ・ウチリスATCC9950株を YPD 培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)を含む5ml培養液で対数増殖期まで培養した。この菌体を回収し、洗浄後、公知の方法に準じニトロソグアニジンによる変異処理を行った(Biochem. Biophys. Res. Comm. Vol.18,P788(1965))。変異処理した菌体を二回洗浄後、YPD培地で30℃、一晩培養したものを変異処理菌体とした。
この菌体をグルコースが炭素源となる合成培地(グルコース2重量%、リン酸1カリウム2重量%、硫酸アンモニウム0.1重量%、硫酸マグネシウム0.05重量%、尿素0.2重量%、硫酸第二鉄4.2ppm、硫酸亜鉛5.9ppm、硫酸銅0.3ppm、硫酸マンガン1.4ppm、寒天2重量%)にL−カナバニン(CAN)50~200ppmを添加した選択培地を用い、30℃、3〜7日間培養した。その結果親株で生育できない選択培地上に生育するコロニーを単離した。これらを、前記のグルコースを炭素源とした液体合成培地で培養し、菌体生産性が良く、かつ遊離のアルギニンの蓄積量の高い株を選別した。さらに、変異処理の繰り返すことより、グルコースを炭素源とした培地では高濃度CAN耐性を示した変異株をキシロースが炭素源となる合成培地(キシロース2重量%、リン酸1カリウム2重量%、硫酸アンモニウム0.1重量%、硫酸マグネシウム0.05重量%、尿素0.2重量%、硫酸第二鉄12.6ppm、硫酸亜鉛17.8ppm、硫酸銅0.9ppm、硫酸マンガン4.3ppm、寒天2重量%)にCAN 100ppm~1000ppmを添加した培地で更なる高濃度のアルギニン蓄積株を選択した。
具体的には、まず親株に対し、前述の変異処理を繰り返し、グルコースを炭素源とした培地でCAN 5000ppm以上の耐性を有する2A145株を取得した。一方、表1に示すように、キシロースを炭素源とした培地では、100ppm以下の耐性を見られた。CAN 5000ppm株2A145を同様にさらに変異操作を繰り返し、本発明の手法であるキシロースが炭素源とした培地選択方法で、CAN 100ppm耐性を有する3株、3A12F、3A72G、3ACを取得した。
洗浄した菌体を、沸騰水中で4分加熱し、流水中で冷却後、遠心分離した。得られる上清を適宜希釈し、常法に従いアミノ酸分析計L8900(HITACHI製)により測定した。
エキス乾燥重量は、上記の方法で得られた上清を10ml を秤量瓶に採取し、105℃、20時間の加熱により水分を飛ばした後、デシケーター内で室温まで放冷し、加熱前後の重量差を精密電子天秤で測定することで求めた。この酵母エキス乾燥重量を基に、エキス中の各種成分の含有量(重量%)を算出した。結果は表4に示す。
Claims (2)
- 酵母のアナログ耐性による酵母キャンディダ・ウチリスの改良方法であって、以下の工程を含む酵母改良方法。
第一の炭素源であるグルコースを用いて、アルギニンアナログ薬剤耐性を得る工程。
第二の炭素源であるキシロースを用いて、アルギニンアナログ薬剤耐性を得る工程。 - 請求項1の記載の方法により得られた酵母から抽出する工程を有する酵母エキスの製造方法。
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