以下、本発明の好ましい実施の形態として、目的ガスとしての酸素および不要ガスとしての窒素を含む混合ガスから濃縮酸素ガス(製品酸素ガス)を製造する方法について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る濃縮酸素ガスの製造方法を実行するのに使用することができる製品ガス製造装置X1の概略構成を示している。
製品ガス製造装置X1は、2つの吸着塔10A,10Bと、ターボブロワ21と、真空ポンプ22と、貯留タンク23と、配管31〜37と、を含む。製品ガス製造装置X1は、圧力変動吸着法(PSA法)を利用して、酸素および窒素を含む混合ガス(通常は空気)から酸素を濃縮分離することが可能なように構成されている。
吸着塔10A,10Bのそれぞれは、両端にガス通過口11,12を有し、ガス通過口11,12の間において混合ガスに含まれる窒素を選択的に吸着するための充填剤が充填されている。当該吸着剤としては、例えば、LiX型ゼオライト、CaA型ゼオライト、およびCaX型ゼオライトが挙げられ、これらは単独で使用しても複数種を併用してもよい。
ターボブロワ21は、混合ガスを吸着塔10A,10Bに送出するためのものである。真空ポンプ22は、吸着塔10A,10Bの内部を減圧するためのものである。真空ポンプ22としては、例えばルーツ式が用いられる。貯留タンク23は、吸着塔10A,10Bから導出されるガス(後述の製品酸素ガス)を一時的に貯留するための空容器である。
配管31は、混合ガス導入端E1を有する主幹ライン31’、および、吸着塔10A,10Bの各ガス通過口11側に各々が接続された分枝ライン31A,31Bを有する。主幹ライン31’には、ターボブロワ21および自動弁31cが設けられている。分枝ライン31A,31Bには、開状態と閉状態との間を切替可能な自動弁31a,31bが付設されている。詳細は後述するが、本実施形態において、配管31の主幹ライン31’には温度計40が取り付けられている。
配管32は、ガス排出端E2を有する主幹ライン32’、および、吸着塔10A,10Bの各ガス通過口11側に各々が接続された分枝ライン32A,32Bを有する。主幹ライン32’には、真空ポンプ22が設けられている。分枝ライン32A,32Bには、開状態と閉状態との間を切替可能な自動弁32a,32bが付設されている。
配管33は、貯留タンク接続端E3を有する主幹ライン33’、および、吸着塔10A,10Bの各ガス通過口12側に各々が接続された分枝ライン33A,33Bを有する。分枝ライン33A,33Bには、開状態と閉状態との間を切替可能な自動弁33a,33bが付設されている。
配管34は、配管33の分枝ライン33A,33Bに橋架け状に接続されている。これにより、吸着塔10A,10Bそれぞれのガス通過口12は、配管34を介して連通している。配管34には、開状態と閉状態との間を切替可能な自動弁34aと、流量調節弁34b(流量調節手段)とが設けられている。
配管35は、一端が貯留タンク23に接続されるとともに、他端に製品ガス取り出し端E4を有する。これにより、貯留タンク23内に一時的に蓄えられた製品酸素ガスが配管35を介して外に取り出される。
配管36は、両端が配管31の主幹ライン31'に接続されている。より具体的には、配管36の一端がターボブロワ21の吸入口の上流において主幹ライン31'に接続され、他端がターボブロワ21の吐出口の下流において主幹ライン31'に接続されている。配管36は、主幹ライン31'に導入される混合ガスを、ターボブロワ21を通らずに迂回させて吸着塔10A,10Bへ供給するためのバイパスラインとして機能する。
配管37は、一端が配管31の主幹ライン31'に対して分岐状に接続されており、他端が大気中に開放している。具体的には、配管37の一端は、主幹ライン31'に対して、ターボブロワ21の吐出口側と、バイパス配管36における主幹ライン31’への下流側接続端との間において接続されている。配管37には、流量調節弁37aが設けられている。また、主幹ライン31'に設けられた自動弁31cは、主幹ライン31'に対する配管37の接続端と、配管36における主幹ライン31'への下流側接続端との間にある。
以上のような構成を有する製品ガス製造装置X1を使用して、本発明の実施形態に係る製品ガス製造方法を実行することができる。製品ガス製造装置X1の稼働時において、自動弁31a,31b,31c,32a,32b,33a,33b,34a,36a、および流量調節弁34bを適宜切り替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜6からなる1サイクルを繰り返すことができる。図2は、ステップ1〜6における製品ガス製造装置X1でのガスの流れ状態を模式的に表したものである。詳細は後述するが、ステップ3はサブステップ3−1およびサブステップ3−2を含み、ステップ6はサブステップ6−1およびサブステップ6−2を含む。
ステップ1では、自動弁31a,32b,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図2(a)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。吸着塔10Aについては、先に吸着(AS)を行っていたので(図2(h)に示されるサブステップ6−2参照)、ステップ1の開始時には相対的に高圧状態にあり、塔内には製品酸素ガスを多く含むガスが残留している。なお、吸着を行うサブステップ6−2での吸着塔10Aの内部の最高圧力は、例えば5〜40kPaG(ゲージ圧:以下同じ)であり、好ましくは10〜30kPaGである。
一方、吸着塔10Bにおいては、先に脱着(DS)を行っており(図2(h)に示されるサブステップ6−2参照)、引き続き真空ポンプ22により塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは、分枝ライン32B、主幹ライン32’を介して系外へ排出される。なお、脱着を行うサブステップ6−2での吸着塔10Bの内部の最低圧力は、例えば−80〜−45kPaGであり、好ましくは−75〜−55kPaGである。
また、ステップ1では、吸着塔10A,10Bそれぞれのガス通過口12が配管34を介して相互に連通している。ステップ1の開始時の吸着塔10Aの内部圧力は、先に吸着を行っていたサブステップ6−2の最高圧力と実質的に同じである。ステップ1の開始後において、吸着塔10Aでは、ガス通過口12からの残留濃縮酸素ガス(製品酸素ガスを多く含むガス)の放出を伴いながら減圧する一方、吸着塔10Bでは、吸着塔10Aから放出された残留濃縮酸素ガスがガス通過口12から導入されて、洗浄効果を有する昇圧・洗浄(PR/RS)が行われる。
ステップ1において、吸着塔10Aの内部圧力は、例えば流量調節弁34bを適宜調節するか、あるいはステップ1の継続時間を調節することによって制御される。吸着塔10Aの内部圧力は、ステップ1の終了時において、開始時よりも低下する場合(減圧:DP)、開始時と実質的に同一の場合(圧力キープ:PK)、あるいは開始時よりも上昇する場合(昇圧:PR)のいずれも起こり得る。ステップ1の終了時における吸着塔10Aの内部圧力は、例えば5〜40kPaGである。ステップ1の開始時から終了時までの、混合ガス導入側である吸着塔10Aの圧力変化は、吸着塔10Aの最高圧力と最低圧力との圧力差に対して、例えば−5〜25%の割合であり、好ましくは0〜15%である。なお、ステップ1の終了時において、吸着塔10Aの内部圧力は吸着塔10Bの内部圧力よりも高い。上記ステップ1は、例えば4秒間継続される。
貯留タンク23には、製品酸素ガス(濃縮酸素ガス)が充填されている。後述のサブステップ3−1にて吸着塔10Bから導出された製品酸素ガスが貯留タンク23に送出され、後述のサブステップ6−1にて吸着塔10Aから導出された製品酸素ガスが貯留タンク23に送出される。貯留タンク23内の製品酸素ガスは、流量調整がなされたうえで配管35を介して取り出され、使用される。なお、ステップ1を含めたすべてのステップ1〜6において、貯留タンク23から製品酸素ガスが一定流量にて連続的に取得される。
ステップ2では、自動弁31b,32a,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図2(b)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着され(減圧/脱着:DP/DS)、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは、分枝ライン32A、主幹ライン32’を介して系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。
また、ステップ2では、ステップ1に引き続き吸着塔10A,10Bそれぞれのガス通過口12,12が配管34を介して連通している。ステップ2の開始時において、吸着塔10Aは吸着塔10Bと比べて相対的に高圧状態にある。
ステップ2の開始後において、吸着塔10Aでは、ガス通過口12付近に残存する濃縮酸素ガスが当該ガス通過口12から放出されつつ減圧する。一方、吸着塔10Bでは、ステップ1に引き続き吸着塔10Aから放出された残留濃縮酸素ガスがガス通過口12から導入されて、昇圧/回収(PR/RC)が行われる。
ステップ2では、吸着塔10Aと吸着塔10Bとの圧力差が所定範囲となるように、流量調節弁34bの開度が調節される。ステップ2の終了時において、吸着塔10Aの内部圧力および吸着塔10Bの内部圧力は近似するか、あるいは同圧である。例えば、ステップ2の終了時における吸着塔10Aと吸着塔10Bとの圧力差は5kPaG以内である。なお、ステップ2の終了時において、吸着塔10Bの内部圧力は貯留タンク23の内部圧力よりも低い。上記ステップ2は、例えば4秒間継続される。
本実施形態において、ステップ3は、当該ステップ3の開始時(ステップ2の終了直後)から所定時間経過時まで継続するサブステップ3−1と、サブステップ3−1の後に行うサブステップ3−2とを含む。
サブステップ3−1では、自動弁31b,32a,33bが開かれ、図2(c)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、ステップ2に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、ステップ2に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。
また、サブステップ3−1では、吸着塔10A,10Bの連通を遮断する一方、吸着塔10Bのガス通過口12と貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。サブステップ3−1の開始時において、吸着塔10Bは貯留タンク23と比べて相対的に低圧状態にある。したがって、サブステップ3−1の開始後において、貯留タンク23内の製品酸素ガスが主幹ライン33’に放出される。一方、吸着塔10Bでは、貯留タンク23から放出された製品酸素ガスがガス通過口12から導入されて、昇圧(PR)が行われる。サブステップ3−1の終了時において、吸着塔10Bの内部圧力と貯留タンク23の内部圧力とは、実質的に同圧である。上記サブステップ3−1は、例えば2秒間継続される。
サブステップ3−2では、引き続き自動弁31b,32a,33bが開かれ、図2(d)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、サブステップ3−1に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、サブステップ3−1に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。脱着を行う吸着塔10Aでは内部圧力が低下し続け、サブステップ3−2の終了時には吸着塔10Aの内部が最低圧力に到達する。当該最低圧力は、例えば−80〜−45kPaGであり、好ましくは−75〜−55kPaGである。
また、サブステップ3−2では、サブステップ3−1に引き続き、吸着塔10Bと貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。サブステップ3−2の開始時において、吸着塔10Bと貯留タンク23とは実質的に同圧である。サブステップ3−2の開始後において、吸着塔10Bへ混合ガスが供給されることで当該吸着塔10Bの内部圧力が上昇する一方、貯留タンク23から製品酸素ガスが配管35を介して取り出されることで当該貯留タンク23の内部圧力は低下する。このため、吸着塔10Bから貯留タンク23に向けてガスの流れが生じる。吸着塔10Bでは内部圧力が上昇し、混合ガスに含まれる窒素が吸着剤によって吸着(AD)される。そして、ガス通過口12から酸素が濃縮された製品酸素ガスが導出される。当該製品酸素ガスは、分枝ライン33Bおよび主幹ライン33’を介して貯留タンク23に送出される。サブステップ3−2では吸着塔10Bの内部圧力が上昇し続け、サブステップ3−2の終了時には吸着塔10Bの内部が最高圧力に到達する。当該最高圧力は、例えば5〜40kPaGであり、好ましくは10〜30kPaGである。上記サブステップ3−2は、例えば15秒間継続される。
以降のステップ4〜6では、図2(e)〜(h)に示したように、ステップ1〜3において吸着塔10Aについて行った操作を吸着塔10Bについて行い、吸着塔10Bについて行った操作を吸着塔10Aについて行う。
ステップ4では、自動弁31b,32a,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図2(e)に示すようなガス流れ状態が達成される。ステップ5では、自動弁31a,32b,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図2(f)に示すようなガス流れ状態が達成される。サブステップ6−1では、自動弁31a,32b,33aが開かれ、図2(g)に示すようなガス流れ状態が達成される。サブステップ6−2では、引き続き自動弁31a,32b,33aが開かれ、図2(h)に示すようなガス流れ状態が達成される。詳細な説明は省略するが、ステップ4,5及びサブステップ6−1,6−2では、吸着塔10Bは、ステップ1,2及びサブステップ3−1,3−2における吸着塔10Aと同じ状態となっており、吸着塔10Aは、ステップ1,2及びサブステップ3−1,3−2における吸着塔10Bと同じ状態となっている。
そして、以上のステップ1〜6からなるサイクルを各吸着塔10A,10Bにおいて繰り返し行うことにより、混合ガスから窒素が有意に除去された製品酸素ガスが連続的に取得される。なお、ステップ1〜6による1サイクルの時間(サイクルタイム)は、50秒間である。
本実施形態の製品酸素ガスの製造においては、貯留タンク23内の製品酸素ガスによる洗浄を減らし、あるいは無くすことにより、製品酸素ガスの回収率を高めることができる。また、吸着塔10A,10bへの混合ガスの供給はターボブロワ21を用いて行う。ターボブロワ21は、吐出圧が大気圧よりも高い状態の時に消費電力が小さくなる。そのため上記混合ガスの供給にターボブロワ21を使用することで、吸着塔10A,10B内の残留濃縮酸素ガスを用いた洗浄中の相対的に高い圧力状態のところに混合ガスの供給を行なっても(ステップ1,4参照)、効率よく混合ガスを供給できるだけではなく、効率よく消費電力を低減することができる。
本実施形態において、上記ステップ1およびステップ4の各々において、当該ステップの開始時から終了時までの間に、混合ガス導入側である吸着塔10A,10Bの圧力が低下する場合でも、その低下の割合を、各吸着塔における最高圧力と最低圧力の圧力差の25%以下、好ましくは15%以下に抑えるようにしている。このように吸着塔10A,10B内の残留濃縮酸素ガスを用いた洗浄において、混合ガス供給側吸着塔の圧力変化を抑制することで洗浄ガスの酸素濃度低下を抑制し、効率よく吸着剤の再生を行うことができる。
本実施形態においては、ステップ1〜6による1サイクルの時間(50秒間)に対して、上記ステップ1および上記ステップ4の各ステップの占める時間比率は、例えば2〜18%とされ、好ましくは6〜14%とされる。また、ステップ2とステップ5の終了時において、10A吸着塔と吸着塔10Bの圧力差は5kPaG以内である。
製品酸素ガスの取得に際して電力原単位を低減するには、吸着塔内の最低圧力を上げることで真空ポンプの負荷を少なくする方法などもあるが、この方法では吸着と脱着の圧力幅(スイング幅)が小さくなるため、窒素吸着量が減少し、必要吸着剤が増加する。このように電力原単位と必要吸着剤量は通常トレードオフの関係にある。これに対し、上記ステップ1とステップ4の占める時間比率が上記ステップ1〜6によるサイクルタイムの2〜18%、好ましくは6〜14%とし、上記ステップ2とステップ5の終了時において、吸着塔10A,10Bの圧力差が5kPaG以内となるように流量調節弁34bの開度を調節すると、効率よく製品酸素ガス(濃縮酸素ガス)を回収できるようになり、電力原単位を低減しながら必要吸着剤量を削減することができる。
上記ステップ1〜6の進行中、外気温に応じて、上記ステップ3とステップ6を行うのに最適な継続時間を算出し、上記製造サイクルを繰り返す過程において、当該ステップ3とステップ6の継続時間を更新してもよい。主として窒素および酸素を含む混合ガスとして空気を使用して製品酸素ガス(濃縮酸素ガス)を製造する場合、気温の変化により単位容積あたりの酸素含有量が異なる。また、気温の変化により吸着剤の窒素吸着容量が変化する。そのため製品酸素ガスの酸素濃度と製品流量を設定値に維持するには、気温が高くなるとサイクルタイムを短くし、気温が低くなるとサイクルタイムを長くする必要がある。本実施形態においては、混合ガスを吸着塔10A,10Bへ供給するための配管31の主幹ライン31’には、温度計40(温度測定手段)が設けられている。そして、温度計40によって測定される混合ガスの温度に応じて、上記ステップ3とステップ6を行うのに最適な継続時間を算出し、当該ステップ3とステップ6の継続時間を更新することで、自動で酸素濃度と製品流量を設定値に維持することができる。
また、上記ステップ3におけるサブステップ3−1は、貯留タンク23の内部圧力が吸着塔10Bの内部圧力よりも高い間に自動弁33bを開いて、吸着塔10Bと貯留タンク23とを連通させることにより、製品となる貯留タンク23内の酸素富化ガスで吸着塔10B昇圧を行なうようにしたものである。しかしながら、サブステップ3−1を省略して、サブステップ3−2に自動弁33bを開いて吸着塔10Bと貯留タンク23とを連通させるタイミングを遅くして、製品となる酸素富化ガスで吸着塔10Bの昇圧を行なわなくてもよい。この場合、先行するステップ2は、吸着塔10Bの内部圧力が貯留タンク23の内部圧力に等しくなるまで継続され、その後にステップ3(サブステップ3−2)を行うことになる。すなわち、ステップ3におけるサブステップ3−1は省略してもよいものである。同様に、ステップ6におけるサブステップ6−1も省略してもよい。
本実施形態では、ターボブロワ21の吐出圧力を常に大気圧よりも高くする。上記混合ガスの供給において、大気圧未満である吸着塔10A,10Bへ混合ガスを供給する場合には、ターボブロワ21を迂回したバイパス用の配管36より、混合ガス自体の供給圧を利用して混合ガスの供給を行うことができる。また、バイパス用の配管36に代えて、別途混合ガスをそれ自体の供給圧を利用して供給する手段を採用してもよい。このように混合ガス自体の供給圧を利用して混合ガスを供給する際、ターボブロワ21は空運転状態となる。ここで、ターボブロワ21においては吐出圧が大気圧よりも高い状態の時に消費電力が小さくなるため、ターボブロワ21の空運転時に当該ターボブロワ21の吐出圧力を消費電力の低減に有効な吐出圧力(大気圧より高い吐出圧力)に調節することで、電力原単位を低減することができる。ターボブロワ21の吐出圧力の調節は、例えばターボブロワ21の下流側にある自動弁31cを閉じるとともに配管37に設けられた流量調節弁37aの開度を調節することにより、行うことができる。
本実施形態の製品酸素ガスの製造によれば、混合ガスを常に投入し且つ真空ポンプ22を連続して使用する場合でも、吸着塔10A,10B内の残留濃縮酸素ガスを用いた洗浄を有効に行うことが可能となる。また、洗浄中における混合ガス供給側の吸着塔(ステップ1での吸着塔10Aおよびステップ4での吸着塔10B)の圧力低下を制限することで、洗浄ガスの酸素濃度低下を抑制し、効率よく吸着剤の再生を行うことができる。このことは、製品酸素ガスを高濃度且つ高回収率で回収するうえでも好ましい。
図3は、ステップ1〜6からなる1サイクルを繰り返す構成の製品ガス製造方法において、図2を参照して上述した場合とステップの一部の構成が異なる他の例を示している。
図3に示したステップ1〜6からなるサイクルにおいて、サブステップ3−1、サブステップ6−1の構成が図2に示した場合と異なっている。サブステップ3−1,6−1以外の他のステップ1,2,3−2,4,5,6−2の構成は図2に示した場合と実質的に同じなので、その説明を適宜省略する。
図3に示した実施形態において、サブステップ3−1では、自動弁31b,32aが開かれ、同図(c)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、ステップ2に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、ステップ2に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。また、本実施形態の場合、サブステップ3−1では、吸着塔10A,10Bの連通を遮断するとともに、吸着塔10Bのガス通過口12と貯留タンク23との連通についても遮断されている(自動弁33bが閉じている)。したがって、吸着塔10Bにおいては、混合ガスの供給のみによって昇圧され、製品酸素ガスによる昇圧は行われない。なお、サブステップ3−1の終了時において、吸着塔10Bの内部圧力は、貯留タンク23の内部圧力と実質的に同じ、あるいは貯留タンク23の内部圧力よりも高い。このサブステップ3−1は、例えば4秒間継続される。
サブステップ3−2では、自動弁31b,32a,33bが開かれ、図3(d)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、サブステップ3−1に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、サブステップ3−1に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。脱着を行う吸着塔10Aでは内部圧力が低下し続け、サブステップ3−2の終了時には吸着塔10Aの内部が最低圧力に到達する。当該最低圧力は、例えば−80〜−45kPaGであり、好ましくは−75〜−55kPaGである。
また、サブステップ3−2では、サブステップ3−1とは異なり、吸着塔10Bと貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。サブステップ3−2の開始時において、吸着塔10Bの内部圧力は、貯留タンク23の内部圧力と実質的に同じか、あるいは貯留タンク23の内部圧力よりも高い。サブステップ3−2の開始後において、吸着塔10Bへ混合ガスが供給されることで当該吸着塔10Bの内部圧力が上昇する一方、貯留タンク23から製品酸素ガスが配管35を介して取り出されることで当該貯留タンク23の内部圧力は低下する。このため、吸着塔10Bから貯留タンク23に向けてガスの流れが生じる。吸着塔10Bでは内部圧力が上昇し、混合ガスに含まれる窒素が吸着剤によって吸着される。そして、ガス通過口12から酸素が濃縮された製品酸素ガスが導出される。当該製品酸素ガスは、分枝ライン33Bおよび主幹ライン33’を介して貯留タンク23に送出される。サブステップ3−2では吸着塔10Bの内部圧力が上昇し続け、サブステップ3−2の終了時には吸着塔10Bの内部が最高圧力に到達する。当該最高圧力は、例えば5〜40kPaGであり、好ましくは10〜30kPaGである。上記サブステップ3−2は、例えば13秒間継続される。
以降のステップ4〜6では、図3(e)〜(h)に示したように、ステップ1〜3において吸着塔10Aについて行った操作を吸着塔10Bについて行い、吸着塔10Bについて行った操作を吸着塔10Aについて行う。
そして、以上のステップ1〜6からなるサイクルを各吸着塔10A,10Bにおいて繰り返し行うことにより、混合ガスから窒素が有意に除去された製品酸素ガスが連続的に取得される。なお、ステップ1〜6による1サイクルの時間(サイクルタイム)は、50秒間である。
図3に示した本実施形態の製品酸素ガスの製造においても、図2に示した上記実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、サブステップ3−1およびサブステップ6−1において、貯留タンク23と吸着塔10B,10Aとの連通が遮断されている。これにより、吸着塔10B,10Aは、混合ガスの供給のみによって昇圧され、製品酸素ガスによる昇圧は行われない。そして、本実施形態におけるサブステップ3−1および6−1では、次のサブステップ3−2および6−2に切り換えるタイミングが上述の図2に示した場合と比べて2秒遅くなっており、(図2で示したサブステップ3−1,6−1は2秒間であるのに対し、図3に示したサブステップ3−1,6−1は4秒間)、次のサブステップ3−2および6−2の継続時間が2秒短くなっている。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、PSA法により各吸着塔10A,10Bにて繰り返し行われる、複数ステップからなるサイクルについては、上記実施形態に限定されない。
また、本発明に係る製品ガスの製造方法は、上記実施形態のような酸素を濃縮分離する酸素PSAへの適用に限定されず、他のガス成分を目的ガスとするPSA法によるガス分離に適用してもよい。
次に、本発明の有用性を実施例および比較例により説明する。
〔実施例1〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図2を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。
吸着塔10A,10Bとしては容量が約2L(2dm3)の円筒型のものを用い、各吸着塔10A,10Bには、吸着剤としてLiX型ゼオライトを1.2kg充填した。なお、後述の他の実施例および比較例においても、本実施例で用いた吸着塔10A,10B、および吸着剤と同じものを用いた。
各ステップの継続時間は、ステップ1が4秒間、ステップ2が4秒間、サブステップ3−1が2秒間、サブステップ3−2が15秒間、ステップ4が4秒間、ステップ5が4秒間、サブステップ6−1が2秒間、サブステップ6−2が15秒間であり、ステップ1〜6からなる1サイクルの時間サイクルは50秒とした。サブステップ3−2,6−2において、吸着操作時の吸着塔10B,10A内部の最高圧力を20kPaGとし、脱着操作時の吸着塔10A,10B内部の最低圧力を−65kPaGとした。また、ステップ1,4の終了時において、混合ガス供給側である吸着塔10A,10Bの内部圧力が15kPaGとなるように流量調節弁34bを調節した。このとき、ステップ2,5の終了時における吸着塔10A,10Bの内部圧力は同一となった。
本実施例において、ステップ1,4の開始時と終了時との混合ガス導入側である吸着塔10A,10Bの圧力低下は、吸着塔10A,10Bの最高圧力(20kPaG)と最低圧力(−65kPaG)との圧力差(85kPa)に対して5.9%であった。
本実施例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が827NL/h(Nは標準状態を示し、以下も同じ。)、製品酸素ガス流量が102NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は16372m3/h、ターボブロワ21の必要風量は8887Nm3/hとなった。
真空ポンプ22としての大晃機械工業株式会社(日本国山口県熊毛郡、URL:https://www.taiko-kk.com/)製ルーツ型真空ポンプ(型番:TLIF−400WP)と、ターボブロワ21としての虹技株式会社(日本国兵庫県姫路市、URL:http://www.kogi.co.jp/)製ターボ型ブロワ(型番:12A112X−Y)の性能曲線を用い、真空ポンプ22のモーター効率を95%一定とし、且つターボブロワ21のモーター効率を65%一定として電力原単位を算出した。また、大気圧未満の吸着塔に混合ガスを供給する場合、ターボブロワ21を迂回してバイパス用の配管36からの混合ガスの供給を想定し、ターボブロワ21の吐出圧力を0kPaGとして電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.286kWhとなった。
〔実施例2〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図3を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。
本実施例では、各ステップの継続時間は、ステップ1が4秒間、ステップ2が4秒間、サブステップ3−1が4秒間、サブステップ3−2が13秒間、ステップ4が4秒間、ステップ5が4秒間、サブステップ6−1が4秒間、サブステップ6−2が13秒間であり、ステップ1〜6からなる1サイクルの時間サイクルは50秒とした。サブステップ3−1,6−1では、貯留タンク23内の製品酸素ガスを用いた吸着塔10B,10Aの昇圧は行わなかった。サブステップ3−2,6−2において、吸着操作時の吸着塔10B,10A内部の最高圧力を20kPaGとし、脱着操作時の吸着塔10A,10B内部の最低圧力を−65kPaGとした。また、ステップ1,4の終了時において、混合ガス供給側である吸着塔10A,10Bの内部圧力が15kPaGとなるように流量調節弁34bを調節した。このとき、ステップ2,5の終了時における吸着塔10A,10Bの内部圧力は同一となった。
本実施例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が824NL/h、製品酸素ガス流量が99NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は16582m3/h、ターボブロワ21の必要風量は8987Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.290kWhとなった。
〔実施例3〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図2を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。
本実施例では、ステップ1,4の終了時において、混合ガス供給側である吸着塔10A,10Bの内部圧力が20kPaGとなるように流量調節弁34bを調節した。
本実施例において、ステップ1,4の開始時と終了時との混合ガス導入側である吸着塔10A,10Bの圧力低下は、吸着塔10A,10Bの最高圧力(20kPaG)と最低圧力(−65kPaG)との圧力差(85kPa)に対して0%であった。その他の操作条件は上記の実施例1と同様とした。
本実施例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が882NL/h、製品酸素ガス流量が102NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は16963m3/h、ターボブロワ21の必要風量は9269Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.296kWhとなった。
〔実施例4〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図2を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。
本実施例では、ステップ1,4の終了時において、混合ガス供給側である吸着塔10A,10Bの内部圧力が10kPaGとなるように流量調節弁34bを調節した。本実施例において、ステップ1,4の開始時と終了時との混合ガス導入側である吸着塔10A,10Bの圧力低下は、吸着塔10A,10Bの最高圧力(20kPaG)と最低圧力(−65kPaG)との圧力差(85kPa)に対して11.8%であった。その他の操作条件は上記の実施例1と同様とした。
本実施例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が788NL/h、製品酸素ガス流量が97NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は16324m3/h、ターボブロワ21の必要風量は8756Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.289kWhとなった。
〔実施例5〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図2を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。
本実施例では、各ステップの継続時間は、ステップ1が6秒間、ステップ2が4秒間、サブステップ3−1が2秒間、サブステップ3−2が13秒間、ステップ4が6秒間、ステップ5が4秒間、サブステップ6−1が2秒間、サブステップ6−2が13秒間であり、ステップ1〜6からなる1サイクルの時間サイクルは50秒とした。その他の操作条件は上記の実施例1と同様とした。
本実施例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が923NL/h、製品酸素ガス流量が110NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は16862m3/h、ターボブロワ21の必要風量は9016Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.296kWhとなった。
〔実施例6〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図2を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。
本実施例では、各ステップの継続時間は、ステップ1が2秒間、ステップ2が4秒間、サブステップ3−1が2秒間、サブステップ3−2が17秒間、ステップ4が2秒間、ステップ5が4秒間、サブステップ6−1が2秒間、サブステップ6−2が17秒間であり、ステップ1〜6からなる1サイクルの時間サイクルは50秒とした。その他の操作条件は上記の実施例1と同様とした。
本実施例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が750NL/h、製品酸素ガス流量が90NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は16749m3/h、ターボブロワ21の必要風量は9146Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.293kWhとなった。
〔実施例7〕
本実施例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、図2を参照して説明した各ステップからなる製品酸素ガスの製造方法により、混合ガスとしての空気から製品ガスとしての濃縮酸素ガスを取得した。本実施例では、大気圧未満の吸着塔に混合ガスを供給する場合、配管37の流量調節弁37aにてターボブロワ21の流量調節を行ない吐出圧力を高くすることを想定し、ターボブロワ21の吐出圧力を20kPaGとして電力原単位を算出した。それ以外の各ステップの操作条件は上記の実施例1と同様とし、また真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.278kWhとなった。
〔比較例1〕
本比較例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、特開平11−179133号公報(上記特許文献1)に開示された方法を本発明の実施例とできるだけ条件を揃えて行った。本比較例では、図4に示した各ステップからなるサイクルを繰り返し、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から濃縮酸素ガスを取得した。
本比較例において、ステップ1’〜6’からなる1サイクルを繰り返し行った。ステップ1’では、自動弁31b,32a,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図4(a)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。
また、ステップ1’では、吸着塔10A,10Bそれぞれのガス通過口12が配管34を介して連通している。ステップ1’の開始後において、吸着塔10Aでは、ガス通過口12付近に残存する濃縮酸素ガスが当該ガス通過口12から放出されつつ減圧(DP)する。一方、吸着塔10Bでは、吸着塔10Aから放出された残留濃縮酸素ガスがガス通過口12から導入されて、昇圧/回収(PR/RC)が行われる。
ステップ2’では、自動弁31b,32a,33bが開かれ、図4(b)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、ステップ1’に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、ステップ1’に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。
また、ステップ2’では、吸着塔10A,10Bの連通を閉じる一方、吸着塔10Bのガス通過口12と貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。ステップ2’の開始時において、吸着塔10Bは貯留タンク23と比べて相対的に低圧状態にある。したがって、ステップ2’の開始後において、貯留タンク23内の製品酸素ガスが主幹ライン33に放出される。一方、吸着塔10Bでは、貯留タンク23から放出された製品酸素ガスがガス通過口12から導入されて、昇圧(PR)が行われる。ステップ2’の終了時において、吸着塔10Bの内部圧力と貯留タンク23の内部圧力とは、実質的に同圧である。
本比較例において、ステップ3’は、当該ステップ3’の開始時(ステップ2’の終了直後)から所定時間経過時まで継続するサブステップ3−1’と、サブステップ3−1’の後に行うサブステップ3−2’と含む。
サブステップ3−1’では、引き続き自動弁31b,32a,33bが開かれ、図4(c)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、ステップ2’に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、ステップ2’に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。脱着を行う吸着塔10Aでは内部圧力が低下し続け、サブステップ3−1’の終了時には吸着塔10Aの内部が最低圧力に到達する。
また、サブステップ3−1’では、ステップ2’に引き続き、吸着塔10Bと貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。サブステップ3−1’の開始時において、吸着塔10Bと貯留タンク23とは実質的に同圧である。サブステップ3−1’の開始後において、吸着塔10Bへ混合ガスが供給されることで当該吸着塔10Bの内部圧力が上昇する一方、貯留タンク23から製品酸素ガスが配管35を介して取り出されることで当該貯留タンク23の内部圧力は低下する。このため、吸着塔10Bから貯留タンク23に向けてガスの流れが生じる。吸着塔10Bでは内部圧力が上昇し、混合ガスに含まれる窒素が吸着剤によって吸着(AS)される。そして、ガス通過口12から酸素が濃縮された製品酸素ガスが導出される。当該製品酸素ガスは、分枝ライン33Bおよび主幹ライン33’を介して貯留タンク23に送出される。
サブステップ3−2’では、自動弁31b,32a,33b,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図4(d)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Bにおいては、サブステップ3−1’に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。吸着塔10Bでは内部圧力が昇圧し、混合ガスに含まれる窒素が吸着剤によって吸着(AS)される。そして、ガス通過口12から酸素が濃縮された製品酸素ガスが導出される。当該製品酸素ガスは、分枝ライン33Bおよび主幹ライン33’を介して貯留タンク23に送出される。サブステップ3−2’では吸着塔10Bの内部圧力が上昇し続け、サブステップ3−2’の終了時には吸着塔10Bの内部が最高圧力に到達する。
また、サブステップ3−2’では、吸着塔10Bから導出された製品酸素ガスの一部が洗浄ガスとして配管34を介して吸着塔10Aに導入され、吸着塔10Aの吸着剤が洗浄(RS)される。それと共に、吸着塔10Aにおいては、真空ポンプ22により塔内が減圧されて塔内のガスが塔外へ排出される。
以降のステップ4’〜6’では、図4(e)〜(h)に示したように、ステップ1’〜3’において吸着塔10Aについて行った操作を吸着塔10Bについて行い、吸着塔10Bについて行った操作を吸着塔10Aについて行う。そして、以上のステップ1’〜6’からなるサイクルを各吸着塔10A,10Bにおいて繰り返し行うことにより、混合ガスから窒素が有意に除去された製品酸素ガスが連続的に取得される。
本比較例では、各ステップの継続時間は、ステップ1’が4秒間、ステップ2’が2秒間、サブステップ3−1’が12秒間、サブステップ3−2’が7秒間、ステップ4’が4秒間、ステップ5’が2秒間、サブステップ6−1’が12秒間、サブステップ6−2’が7秒間であり、ステップ1’〜6’からなる1サイクルの時間サイクルは50秒とした。サブステップ3−2’,6−2’において、吸着操作時の吸着塔10B,10A内部の最高圧力を20kPaGとし、サブステップ3−1’,6−1’において、脱着操作時の吸着塔10A,10B内部の最低圧力を−65kPaGとした。ステップ1’,4’の終了時において、混合ガス供給側である吸着塔10B,10Aの内部圧力が同一となるように流量調節弁34bを調節した。また、サブステップ3−2’,6−2’において、洗浄ガスとして使用される製品酸素ガスの量は180NL/hとした。
本比較例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が807NL/h、製品酸素ガス流量が95NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は17283m3/h、ターボブロワ21の必要風量は8964Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.308kWhとなった。
〔比較例2〕
本比較例では、図1に示した製品ガス製造装置X1を用いて、特開平2−119915号公報(上記特許文献2)の実施例3に開示された方法を本発明の実施例とできるだけ条件を揃えて行った。本比較例では、図5に示した各ステップからなるサイクルを繰り返し、以下に示す条件下で、混合ガスとしての空気から濃縮酸素ガスを取得した。
本比較例において、ステップ1”〜6”からなる1サイクルを繰り返し行った。ステップ1’では、自動弁31a,32b,34aおよび流量調節弁34bが開かれ、図5(a)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。吸着塔10Aについては、先に吸着を行っていたので(図5(f)に示されるステップ6”参照)、ステップ1の開始時には相対的に高圧状態にあり、塔内には製品酸素ガスを多く含むガスが残留している。一方、吸着塔10Bにおいては、先に脱着を行っており(図5(f)に示されるステップ6”参照)、引き続き真空ポンプ22により塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは、分枝ライン32B、主幹ライン32’を介して系外へ排出される。
また、ステップ1”では、吸着塔10A,10Bそれぞれのガス通過口12,12が配管34を介して連通している。ステップ1”の開始後において、吸着塔10Aでは、ガス通過口12からの残留濃縮酸素ガス(製品酸素ガスを多く含むガス)の放出を伴いながら減圧(DP)し、一方、吸着塔10Bでは、吸着塔10Aから放出された残留濃縮酸素ガスがガス通過口12から導入されて、洗浄効果を有する昇圧/回収(PR/RC)が行われる。
ステップ2”では、自動弁31b,32a,33bが開かれ、図5(b)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給される。
また、ステップ2”では、吸着塔10A,10Bの連通を閉じる一方、吸着塔10Bのガス通過口12と貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。ステップ2”の開始時において、吸着塔10Bは貯留タンク23と比べて相対的に低圧状態にある。したがって、ステップ2”の開始後において、貯留タンク23内の製品酸素ガスが主幹ライン33に放出される。一方、吸着塔10Bでは、貯留タンク23から放出された製品酸素ガスがガス通過口12から導入されて、昇圧(PR)が行われる。ステップ2”の終了時において、吸着塔10Bの内部圧力と貯留タンク23の内部圧力とは、実質的に同圧である。
ステップ3”では、引き続き自動弁31b,32a,33bが開かれ、図5(c)に示すようなガス流れ状態が達成される。吸着塔10Aにおいては、ステップ2”に引き続き真空ポンプ22により塔内が減圧されて吸着剤から窒素が脱着(DS)され、塔内のガスがガス通過口11を通じてオフガスとして塔外へ導出される。当該オフガスは系外へ排出される。一方、吸着塔10Bにおいては、ステップ2”に引き続き混合ガスが配管31を介してガス通過口11から供給され、混合ガスに含まれる窒素が吸着(AS)される。脱着を行う吸着塔10Aでは内部圧力が低下し続け、ステップ3”の終了時には吸着塔10Aの内部が最低圧力に到達する。
また、ステップ3”では、ステップ2”に引き続き、吸着塔10Bと貯留タンク23とが主幹ライン33'、分枝ライン33Bを介して連通している。ステップ3”の開始時において、吸着塔10Bと貯留タンク23とは実質的に同圧である。ステップ3”の開始後において、吸着塔10Bへ混合ガスが供給されることで当該吸着塔10Bの内部圧力が上昇する一方、貯留タンク23から製品酸素ガスが配管35を介して取り出されることで当該貯留タンク23の内部圧力は低下する。このため、吸着塔10Bから貯留タンク23に向けてガスの流れが生じる。吸着塔10Bでは内部圧力が上昇し、混合ガスに含まれる窒素が吸着剤によって吸着される。そして、ガス通過口12から酸素が濃縮された製品酸素ガスが導出される。当該製品酸素ガスは、分枝ライン33Bおよび主幹ライン33’を介して貯留タンク23に送出される。ステップ3”では吸着塔10Bの内部圧力が上昇し続け、ステップ3”の終了時には吸着塔10Bの内部が最高圧力に到達する。
以降のステップ4”〜6”では、図5(d)〜(f)に示したように、ステップ1”〜3”において吸着塔10Aについて行った操作を吸着塔10Bについて行い、吸着塔10Bについて行った操作を吸着塔10Aについて行う。そして、以上のステップ1”〜6”からなるサイクルを各吸着塔10A,10Bにおいて繰り返し行うことにより、混合ガスから窒素が有意に除去された製品酸素ガスが連続的に取得される。
本比較例では、各ステップの継続時間は、ステップ1”が4秒間、ステップ2”が2秒間、ステップ3”が19秒間、ステップ4”が4秒間、ステップ5”が2秒間、ステップ6”が19秒間であり、ステップ1”〜6”からなる1サイクルの時間サイクルは50秒とした。ステップ3”,6”において、吸着操作時の吸着塔10B,10A内部の最高圧力を20kPaGとし、脱着操作時の吸着塔10A,10B内部の最低圧力を−65kPaGとした。また、ステップ1”,4”の終了時において、混合ガス供給側である吸着塔10B,10Aの内部圧力が1kPaGとなるように流量調節弁34bを調節した。
本比較例では、取得する製品酸素ガスの平均濃度が93%の条件の時、混合ガス供給量が814NL/h、製品酸素ガス流量が90NL/hであった。また、酸素取得量が100%濃度換算で1000Nm3/hを想定した場合、真空ポンプ22の必要風量は18047m3/h、ターボブロワ21の必要風量は9677Nm3/hとなった。
そして、真空ポンプ22およびターボブロワ21について上記実施例1と同じ稼働条件で電力原単位を算出した。その結果、酸素1Nm3あたりの消費電力(電力原単位)は0.318kWhとなった。
上記実施例および上記比較例に関して、単位時間あたりの製品酸素ガス発生量(製品酸素ガス流量)と電力原単位の関係を表1に示す。
次に、流量5000Nm3/h(100%酸素濃度換算)の装置を想定し、電気価格を15円/kWh、年間の装置稼働時間を8000時間、吸着剤価格を1700円/kgとした場合の、年間電気料金と、使用する吸着剤の価格の一覧を表2に示す。
表1から明らかなように、本発明の製品酸素ガス(製品ガス)の製造方法によると、電力原単位を低減(0.3kwh/Nm3未満程度)することが出来る。
また、吸着塔内の残留濃縮酸素ガスを用いた洗浄時間(上記実施例1〜4におけるステップ1およびステップ4の各ステップの時間)をサイクルタイムの6〜14%にすることで、高い製品酸素ガス発生量が実現でき、必要となる吸着剤量が削減される。したがって、電力原単位を低減しながら装置製造コストも削減可能となる。