しかしながら、特許文献1のものでは、吸気路を延長するには余分なスペースが必要であって、構造も複雑になることから、少ないスペースで効果的に整流を実現する技術が要望される。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、少ないスペースで効果的に整流を実現するエアクリーナーを備える鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によれば、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びるメインフレームと、前記メインフレームから後方に延びて、乗員が着座する乗員シートを支持する左右のリアフレームと、前記メインフレームに連結されて、混合気の燃焼に応じて動力を生成する内燃機関と、クリーナー容器内に形成されて前記クリーナー容器外の空間に吸気ダクトを介して通じるダーティルーム、および、前記クリーナー容器内に形成されて前記内燃機関に通じるクリーンルームの間に、前記混合気用の空気を浄化するクリーナーエレメントを配置するエアクリーナーとを備える鞍乗り型車両において、前記吸気ダクトの上流端には前記吸気ダクトの外周に沿って二重管部が設けられ、当該二重管部は、前記乗員シートの下方に位置するようにして、前記乗員シートの側面から連続して広がる左右のサイドカバーの間に配置される鞍乗り型車両が提供される。
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記二重管部は、少なくとも部分的に平面視で左右の前記シートリアフレームの間に配置される。
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記リアフレームの下方で前記メインフレームに結合される前端、および、前記リアフレームに連結される後端を有し、個々の前記リアフレームの下方で延びる左右のサブフレームを備え、前記二重管部は、左右の前記サブフレームに挟まれる領域内に少なくとも部分的に配置される。
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、前記二重管部は、前記メインフレームに連結される後輪の回転軸線に平行であって前記リアフレームの上面に接する仮想面よりも下方に配置される。
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記サブフレームで挟まれる空間を下方から塞ぐアンダーシートカバーから上方に延びて、前記サブフレームで挟まれる前記空間を後方から塞いで前記吸気ダクトの上流端に向き合わせられる縦壁を備える。
第6側面によれば、第1〜第5側面のいずれか1の構成に加えて、前記吸気ダクトは、少なくとも前記吸気ダクトの内径の3倍以上の長さで前記クリーナー容器から車体後方に向かって線形に延びる。
第7側面によれば、第6側面の構成に加えて、二重管部の上流端から連続して上流側に延びる庇部が設けられ、庇部の上流端を仕切る仮想垂直面よりも上流側で前記吸気ダクトの内壁面は水平面よりも後下がりに広がる。
本発明の第8側面によれば、操舵可能に前輪を支持するヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びるメインフレームと、前記メインフレームから後方に延びて、乗員が着座する乗員シートを支持する左右のリアフレームと、前記リアフレームの下方に配置されて後輪を覆うリアフェンダーと、前記メインフレームに連結されて、混合気の燃焼に応じて動力を生成する内燃機関と、前記乗員シートの下方であって前記リアフェンダーの前方に配置され、クリーナー容器内に形成されて前記クリーナー容器外の空間に吸気ダクトを介して通じるダーティルーム、および、前記クリーナー容器内に形成されて前記内燃機関に通じるクリーンルームの間に、前記後輪の回転軸線に直交する仮想平面に沿って、前記混合気用の空気を浄化するクリーナーエレメントを配置するエアクリーナーとを備える鞍乗り型車両において、前記クリーンルームの側方で前記ダーティルームおよび前記リアフェンダーの間に前記クリーナー容器外の空間を形成し、当該空間に前記吸気ダクトを配置し、前記吸気ダクトの上流端には前記吸気ダクトの外周に沿って二重管部が設けられる鞍乗り型車両が提供される。
第9側面によれば、第8側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記乗員シートの側面から連続して広がる左右のサイドカバーを備え、前記二重管部は、左右の前記サイドカバーに挟まれる空間内に配置される。
第10側面によれば、第9側面の構成に加えて、前記吸気ダクトは、前記後輪の回転軸線に直交する左右対称面の片側空間にオフセットして配置され、前記吸気ダクトの上流端は前記左右対称面に指向して傾斜する。
第11側面によれば、第9または第10側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記リアフレームの下方で前記メインフレームに結合される前端、および、前記リアフレームに連結される後端を有し、個々の前記リアフレームの下方で延びる左右のサブフレームを備え、前記二重管部は、車幅方向片側の前記リアフレームおよび前記サブフレームに挟まれる領域内に少なくとも部分的に配置される。
第12側面によれば、第8〜第11側面のいずれか1の構成に加えて、前記吸気ダクトには、前記クリーナー容器の外壁に沿って吸気ダクトの外周から外側に延びる突片が設けられ、前記クリーナー容器の前記外壁には、前記吸気ダクトを受け入れる円形の開口と、前記突片を受け入れる凹部とが設けられる。
第13側面によれば、第1〜第12側面のいずれか1の構成に加えて、前記吸気ダクトの外壁面と前記二重管部との距離は前記吸気ダクトの吸気軸線と直交する内壁の距離の30%以下に設定される。
第14側面によれば、第1〜第13側面のいずれか1の構成に加えて、前記二重管部の上流端は、前記吸気ダクトの上流端を含む仮想平面に接する、もしくは、前記二重管部は前記仮想平面に交差する。
本発明の第15側面によれば、車体フレームと、前記車体フレームに支持されて、乗員が着座する乗員シートと、前記乗員シートの側面から連続して広がる左右のサイドカバーと、前記車体フレームに連結されて、混合気の燃焼に応じて動力を生成する内燃機関と、クリーナー容器内に形成されて前記クリーナー容器外の空間に吸気ダクトを介して通じるダーティルーム、および、前記クリーナー容器内に形成されて前記内燃機関に通じるクリーンルームの間に、前記混合気用の空気を浄化するクリーナーエレメントを配置するエアクリーナーとを備える鞍乗り型車両において、前記吸気ダクトの上流端には前記吸気ダクトの外周に沿って二重管部が設けられ、当該二重管部は、前記乗員シートの下方に位置し、左右の前記サイドカバーに挟まれる空間内に配置される鞍乗り型車両が提供される。
第1側面によれば、吸気ダクトの上流端は乗員シートの下方に位置するので、吸気ダクトに対して雨水の進入などはできる限り回避されることができる。したがって、エアクリーナーそのものにラビリンス構造といった複雑形状を施す必要がなく、エアクリーナーの構造は簡素化される。しかも、吸気ダクトの上流端に二重管部が設けられることから、吸気ダクトの周辺に様々な部品が配置されても、吸気ダクト内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。
しかも、吸気ダクトの上流端は、左右のサイドカバーで挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクトに対して雨水の進入などは確実に回避されることができる。したがって、二重管部は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクトの吸気効率は最適化されることができる。
第3側面によれば、二重管部はサブフレームの間に配置されるので、側方からの衝撃などから二重管部は保護されることができる。加えて、リアフレームから上方へ二重管部の突出が回避されることができ、シート高さはできるだけ抑制されることができる。
第4側面によれば、二重管部は、左右のリアフレームの上面に接する仮想面よりも下方に配置されることから、リアフレームから上方へ二重管部の突出は回避されることができ、シート高さはできるだけ抑制されることができる。
第5側面によれば、吸気ダクトの上流端にはアンダーシートカバーから立ち上がる縦壁が向き合わせられることから、吸気ダクトに対して異物の進入は防止されることができる。
第6側面によれば、クリーナー容器外で吸気ダクトに十分な長さが確保されることから、内燃機関の低速トルクを向上させることができる。併せて、吸気ダクトの上流端とクリーナー容器との間に空間が確保されることで、吸気ダクトの外周に沿って滑らかに空気が後方に流れ、吸気ダクトの上流端から良好に空気は吸い込まれることができる。
第7側面によれば、庇部の上流端を仕切る仮想垂直面よりも上流側で吸気ダクトの内壁面は水平面よりも後下がりに広がることから、乗員シートを開放した際に、垂直方向(重力方向)に落下する水滴は庇部で遮られて水平面よりも前下がりに広がる吸気ダクトの内壁面に到達しがたくでき、吸気ダクトに対して水滴に進入は防止されることができる。庇部よりも後方で垂直方向に落下する水滴は水平面よりも後下がりに広がる内壁面を伝って吸気ダクトの外側に排出されることができる。庇部の上流端を仕切る仮想垂直面は吸気ダクトの最後方端よりも前方に位置するので、庇部の長さはできるだけ短縮されることができる。
第8側面によれば、クリーンルームの側方でダーティルームおよびリアフェンダーの間に空間が形成されると、クリーンルームに対してダーティルームは車体前後方向に短縮される。乗員シートの下方の空間はリアフェンダーで後方が仕切られることから、クリーンルームはリアフェンダーまで広がって十分な容積を有するとともに、クリーンルームに隣接する空間に吸気ダクトは効率的に配置されることができる。吸気ダクトの上流端は狭まった空間に開口するものの、二重管部の働きで吸気ダクト内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。
第9側面によれば、吸気ダクトの上流端は、左右のサイドカバーで挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクトに対して雨水の進入などは確実に回避されることができる。したがって、二重管部は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクトの吸気効率は最適化されることができる。
第10側面によれば、吸気ダクトの上流端は車体の左右対称面に指向することから、吸気効率は向上する。加えて、吸気ダクトは左右対称面の片側空間にオフセットして配置されるものの、吸気ダクトの上流端の二重管部は左右対称面に近づくことができ、車幅方向に二重管部の突出は抑制されることができる。
第11側面によれば、二重管部の配置にあたってリアフレームとサブフレームとに挟まれる空間が利用されることから、車幅方向への突出を抑制しつつ効率的に二重管部は配置されることができる。
第12側面によれば、クリーナー容器の外壁面の凹部に吸気ダクトの突起が係り合うことで、円形の開口内で吸気ダクトの自転は阻止されることができる。こうして吸気ダクトの回り止めが確立されることから、吸気ダクトが傾斜しても、二重管部の突出は回避されることができる。
第13側面によれば、気流の流通路の大きさに対して吸気ダクトの外壁面と二重管部との距離が適切に設定されることで、吸気ダクト内の気流の整流は確実に実現される。
第14側面によれば、二重管部は吸気ダクトの上流端を囲むので、吸気ダクト内の気流の整流は確実に実現される。
第15側面によれば、吸気ダクトの上流端は、乗員シートの下方で左右のサイドカバーで挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクトに対して雨水の進入などは確実に回避されることができる。したがって、エアクリーナーそのものにラビリンス構造といった複雑形状を施す必要がなく、エアクリーナーの構造は簡素化される。しかも、吸気ダクトの上流端に二重管部が設けられることから、吸気ダクトの周辺に様々な部品が配置されても、吸気ダクト内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。二重管部は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクトの吸気効率は最適化されることができる。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、上下および左右の各方向は自動二輪車に搭乗した乗員から見た方向をいう。
第1の実施の形態
図1は本発明の第1実施形態に係る鞍乗り型車両としての自動二輪車の全体像を概略的に示す。自動二輪車11は、車体フレーム12と、車体フレーム12に部分的に覆い被さる車体カバー13とを備える。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、該ヘッドパイプ14から後ろ下がりに延びる左右1対のメインフレーム15と、メインフレーム15の下方に間隔を隔てて配置されて、ヘッドパイプ14から後下がりに延びる左右1対のダウンフレーム16と、個々のメインフレーム15の後端に結合され、下方に向かって延びる左右1対のピボットフレーム17と、水平方向に延びて左右のピボットフレーム17を連結するクロスチューブ18と、個々のメインフレーム15から後上がりに延びる左右1対のリアフレーム19と、リアフレーム19の下方に配置されて、クロスチューブ18およびリアフレーム19に結合されるサブフレーム21とを有する。サブフレーム21は、リアフレーム19の下方でクロスチューブ18を介してメインフレーム15に結合される前端、および、リアフレーム19に結合される後端を有し、対応のリアフレーム19の下方でクロスチューブ18から後上がりに延びて下方からリアフレーム19を支える。
メインフレーム15は例えば上下に間隔を隔てて配置される第1フレーム15aおよび第2フレーム15bを備える。第1フレーム15aおよび第2フレーム15bは例えば断面円形のパイプ材から形成される。第1フレーム15aおよび第2フレーム15bは補強部材22a、22bで相互に結合される。補強部材22a、22bは第1フレーム15aおよび第2フレーム15bの組立体の剛性を補強する。同様に、ダウンフレーム16と第2フレームとは補強部材22cで相互に結合される。補強部材22cはダウンフレーム16およびメインフレーム15との間で組立体の剛性を補強する。
ヘッドパイプ14には操向自在にフロントフォーク23が支持される。フロントフォーク23には車軸24回りで回転自在に前輪WFが支持される。フロントフォーク23の上端には操向ハンドル25が結合される。ヘッドパイプ14の前方で操向ハンドル25にはヘッドライト装置26が固定される。
ピボットフレーム17にはピボット27回りで上下に揺動自在にスイングアーム28が連結される。スイングアーム28の後端に車軸29回りで回転自在に後輪WRが支持される。前輪WFと後輪WRとの間で車体フレーム12には混合気の燃焼に応じて動力を生成する内燃機関31が搭載される。内燃機関31の動力は伝動装置32を介して後輪WRに伝達される。こうして自動二輪車11の走力は生み出される。
メインフレーム15の上方には燃料タンク34が配置される。燃料タンク34には内燃機関31に供給される燃料が蓄積される。燃料タンク34の後方でリアフレーム19上には乗員シート35が搭載される。自動二輪車11の走行時、乗員は乗員シート35に着座する。
車体カバー13は、燃料タンク34を覆うタンクカバー36と、タンクカバー36の下縁一部に倣った形状を備えてタンクカバー36の下方に配置されるサイドシュラウド37と、乗員シート35の側縁から連続して広がって、側方からリアフレーム19およびサブフレーム21を覆う左右のサイドカバー38と、リアフレーム19の下方に配置されて後輪WRに被さるリアフェンダー39とを備える。乗員シート35の下方で左右のサイドカバー38の間には吸気通路(後述される)が形成される。燃料タンク34の側面とタンクカバー36の内面との間には空間が区画される。自動二輪車11の走行時に当該空間に前方から流入する空気はサイドカバー38の内側に沿って吸気通路に流れ込む。
内燃機関31の機関本体は、回転軸線Rk回りで回転自在にクランクシャフトを支持するクランクケース41と、クランクケース41に結合されて、ピストンの線形往復運動を案内するシリンダーブロック42と、シリンダーブロック42に結合されて、ピストンとの間に燃焼室を形成するシリンダーヘッド43と、シリンダーヘッド43に結合されて、シリンダーヘッド43上の動弁機構を覆うヘッドカバー(図示されず)とを備える。ピストンの線形往復運動に応じて内燃機関31の吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程は繰り返される。内燃機関31の機関本体は、クランクケース41の前側でダウンフレーム16の下端に連結され、クランクケース41の後側でメインフレーム15の下端に連結される。こうしてメインフレーム15およびダウンフレーム16に加えて機関本体で剛体構造が確立される。ダウンフレーム16はいわゆるエンジンハンガーとして機能する。
シリンダーヘッド43には、燃焼室に通じる吸気道に接続される吸気装置45と、燃焼室に通じる排気道に接続される排気装置46とが結合される。吸気装置45は、乗員シート35の下方で左右のリアフレーム19の間に配置されるエアクリーナー47と、エアクリーナー47およびシリンダーヘッド43の間に配置されるスロットルボディ48とを備える。スロットルボディ48ではスロットルの働きでエアクリーナー47から供給される浄化空気の流量が調整される。シリンダーヘッド43の後部側壁には燃料噴射弁(図示されず)が取り付けられる。燃料噴射弁から浄化空気に燃料が噴射されて混合気は形成される。混合気は吸気弁の作用を経て燃焼室に導入される。排気装置46は、シリンダーヘッド43の前部側壁からクランクケース41の下方を通って後方に延びる排気管51と、排気管51の下流端に接続されて後輪WRの側方で延びる排気マフラー(図示されず)とを備える。燃焼後の空気は排気弁の作用を経て燃焼室から排出される。
図2に示されるように、エアクリーナー47は、主容器体52aに上方から被さる上蓋52b、および、主容器体52aに下方から結合される下蓋52cを有して、外気および浄化空気の供給先(内燃機関31)に通じる内部空間を形成するクリーナー容器52と、上蓋52bに固定されて上蓋52bから後方に延び、外気に曝される上流端でクリーナー容器52の外側に開口し、クリーナー容器52の内部空間に外気空間を連通する吸気ダクト53と、下蓋52cに固定されて下蓋52cから前方に延び、クリーナー容器52の内部空間内に位置する上流端でクリーナー容器52の内部空間に開口し、クリーナー容器52の外側の下流端でスロットルボディ41に連結されるコネクティングチューブ54とを備える。吸気ダクト53およびコネクティングチューブ54は例えばゴムといった弾性体から成形される。吸気ダクト53は、少なくとも吸気ダクト53の内径の3倍以上の長さでクリーナー容器52から車体後方に向かって線形に延びる。
図3に示されるように、左右のサイドカバー38の間で乗員シート35の下方には、左右のサブフレーム21に挟まれる空間を下方から塞ぎ、乗員シート35との間に吸気通路55を形成するアンダーシートカバー56が配置される。図2に示されるように、アンダーシートカバー56はクリーナー容器52の外面から連続して吸気ダクト53の下方で車体後方に向かって広がる。吸気通路55内に吸気ダクト53は配置される。アンダーシートカバー56には、アンダーシートカバー56から上方に延びて、吸気通路55を後方から塞いで吸気ダクト53の上流端に向き合わせられる縦壁57が形成される。吸気ダクト53の上流端には縦壁57に向き合う吸込口が形成される。
吸気ダクト53には、吸気ダクト53の外周から下方に延びて下端でアンダーシートカバー56の上面に支持される支持突起58が一体に形成される。支持突起58は、アンダーシートカバー56から離れた位置に吸気ダクト53の上流端を保持する。
図4に示されるように、主容器体52aは、クリーナーエレメント59を保持する隔壁61に面して上蓋52bで塞がれる空間を形成する第1器体62aと、隔壁61に面して下蓋52cで塞がれる空間を形成する第2器体62bとを有する。第1器体62aと上蓋52bとの間に、吸気ダクト53を通じて外気空間に連通するダーティルーム63aが形成され、第2器体62bと下蓋52cとの間に、コネクティングチューブ54を通じてスロットルボディ48に連通するクリーンルーム63bが形成される。こうしてクリーナー容器52の内部空間はダーティルーム63aおよびクリーンルーム63bに仕切られる。ダーティルーム63aおよびクリーンルーム63bの間にクリーナーエレメント59は配置される。外気はクリーナーエレメント59を通過して浄化されクリーンルーム63bに導入される。吸気ダクト53の下流端はクリーナーエレメント59に向き合う位置で開口する。
吸気ダクト53は、上蓋52bの差し込み口64に挿入される際に上蓋52bの内側から上蓋52bの内壁面に接触する第1環状体65aと、第1環状体65aに軸方向に向き合って、上蓋52bの外側から上蓋52bの外壁面に接触する第2環状体65bとを一体に有する。第1環状体65aは、差し込み口64の軸線に直交する垂直面で上蓋52bの内壁面に密着する。第2環状体65bは、差し込み口64の軸線に直交する垂直面で上蓋52bの外壁面に密着する。こうして第1環状体65aと第2環状体65bとの間に上蓋52bの壁体は挟まれる。第1環状体65aの外径は、差し込み口64に下流端から吸気ダクト53を差し込む際に第1環状体65aの変形に応じて第1環状体65a全体が差し込み口64に進入する大きさを有する。第2環状体65bの外径は、第1環状体65aよりも大きく、差し込み口64の進入時に第1環状体65aが変形しても差し込み口64の外側に留まる大きさを有する。
吸気ダクト53の上流端には、吸気ダクト53の外周に沿って二重管部66が設けられる。図5に示されるように、二重管部66は、吸気ダクト53の外壁面から外側に広がるフランジ部66aと、外壁面との間に間隔を維持しながら、フランジ部66aから外壁面に沿って吸気ダクト53の上流端に向かって延びる外環部66bとを有する。外環部66bは、吸気ダクト53の上流端を形成する円筒体に同軸であってその円筒体よりも大径の円筒体で形成される。ただし、外環部66bは必ずしも円筒体である必要はなく、多角形その他の断面形状であってもよい。また、吸気ダクト53の上流端と外環部66bとは必ずしも同軸である必要はなく、偏心してもよい。外環部66bには、フランジ部66a以外で吸気ダクト53の外壁面に外環部66bを連結するリブが形成されてもよい。フランジ部66aが省略されて、周方向に分離される複数のリブで外環部66bは吸気ダクト53の外壁面に固定されてもよい。ここでは、外環部66bの上流端は、円筒体の軸線に直交して吸気ダクト53の上流端を含む仮想平面PLよりも後方に延びる。円筒体の軸線に直交して外環部66bの上流端を含む仮想平面PGは仮想平面PLよりも上流側であって仮想平面PLに平行に位置する。而して外環部66bは仮想平面PLに交差する。ただし、外環部66bの上流端は仮想平面PLに接してもよい。
外環部66bの上流端には、外環部66bの上流端から連続して仮想平面PGよりも上流側に延びる庇部67が設けられる。庇部67の上流端は、円筒体の軸線に傾斜角αで交差して重力方向に平行に広がる仮想垂直平面VPで仕切られる。吸気ダクト53の上流端で吸気ダクト53の内壁面はトランペット形状に形成され上流に向かうにつれて指数関数的に拡径する。仮想垂直面VPよりも上流側で吸気ダクト53の内壁面は水平面HZよりも後下がりに広がる。
外環部66bには、重力方向に下方位置で、円筒体の径方向に外環部66bの壁体を貫通する切り欠き68が配置される。切り欠き68は、外環部66bの上流端から二重管部66のフランジ部66aに向かって切り欠かれる。切り欠き68は仮想垂直平面VPよりも上流側に配置される。したがって、外環部66bの内側に進入する水滴は切り欠き68から外環部66bの外側に流出することができる。
吸気ダクト53の外壁面と二重管部66との距離DFは、吸気ダクト53の内壁の距離DPの30%以下に設定される。ここでは、吸気ダクト53の上流端および外環部66bは同軸の円筒形に形成されることから、距離DFは吸気ダクト53の外壁面と外環部66bとの径方向差に相当し、距離DPは吸気ダクト53の内径に相当する。図2に示されるように、吸気通路55内で二重管部66と乗員シート35およびアンダーシートカバー56との間には間隙が形成される。
二重管部66は、乗員シート35の下方に位置し、無限遠上方の視点から観察される平面視で左右のリアフレーム19の間に配置される。二重管部66は、左右のサイドカバー38に挟まれる空間内に配置される。二重管部66は、左右のサブフレーム21に挟まれる領域内に配置される。二重管部66は、後輪WRの回転軸線に平行であってリアフレーム19の上面に接する仮想面Vcよりも下方に配置される。
次に本実施形態の動作を説明する。ピストンの線形往復運動に応じて内燃機関31の吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程は繰り返されると、吸気ダクト53からクリーナー容器52内のダーティルーム63aに外気は導入される。外気はクリーナーエレメント59を通過して浄化されクリーンルーム63bに導入される。クリーンルーム63b内の浄化空気は吸気ダクト53に流入し、スロットルボディ41に供給される。スロットルボディ48ではスロットルの働きでエアクリーナー47から供給される浄化空気の流量が調整される。スロットルボディ48から流出する浄化空気に燃料噴射弁49から燃料が噴射されて混合気は形成される。混合気は吸気弁の作用を経て燃焼室に導入される。
本実施形態に係る自動二輪車11では、吸気ダクト53の上流端に吸気ダクト53の外周に沿って二重管部66が設けられ、当該二重管部66は、乗員シート35の下方に位置し、平面視で左右のリアフレーム19の間に配置される。吸気ダクト53の上流端は乗員シート35の下方に位置するので、吸気ダクト53に対して雨水の進入などはできる限り回避される。したがって、エアクリーナー47そのものにラビリンス構造といった複雑形状を施す必要がなく、エアクリーナー47の構造は簡素化される。しかも、吸気ダクト53の上流端に二重管部66が設けられることから、吸気ダクト53の周辺に様々な部品が配置されても、吸気ダクト53内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。図6に示されるように、本発明者が吸気ダクト53単体で検証したところ、二重管部66によれば、二重管部を付加しない構成と比べ、吸気ダクト53の長さや、他の構成を変えることなく、吸気ダクト53内の整流を行い、吸気ダクト53の下流端で流速を向上させることが可能となる。
自動二輪車11は、乗員シート35の側面から連続して広がる左右のサイドカバー38を備え、二重管部66は、左右のサイドカバー38に挟まれる空間内に配置される。吸気ダクト53の上流端は、左右のサイドカバー38で挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクト53に対して雨水の進入などは確実に回避される。したがって、二重管部66は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクト53の吸気効率は最適化されることができる。
自動二輪車11は、リアフレーム19の下方でメインフレーム15に結合される前端、および、リアフレーム19に連結される後端を有し、個々のリアフレーム19の下方で延びる左右のサブフレーム21を備え、二重管部66は、左右のサブフレーム21に挟まれる領域内に少なくとも部分的に配置される。二重管部66はサブフレーム21の間に配置されるので、側方からの衝撃などから二重管部66は保護される。加えて、リアフレーム19から上方へ二重管部66の突出が回避され、シート高さはできるだけ抑制される。
本実施形態に係る二重管部66は、図2に示されるように、メインフレーム15に連結される後輪WRの回転軸線に平行であってリアフレーム19の上面に接する仮想面Vcよりも下方に配置される。二重管部66は、左右のリアフレーム19の上面に接する仮想面Vcよりも下方に配置されることから、リアフレーム19から上方へ二重管部66の突出は回避され、シート高さはできるだけ抑制される。
自動二輪車11は、サブフレーム21で挟まれる空間(吸気通路55)を下方から塞ぐアンダーシートカバー56から上方に延びて、サブフレーム21で挟まれる空間を後方から塞いで吸気ダクト53の上流端に向き合わせられる縦壁57を備える。吸気ダクト53の上流端にはアンダーシートカバー56から立ち上がる縦壁57が向き合わせられることから、吸気ダクト53に対して異物の進入は防止される。
吸気ダクト53は、少なくとも吸気ダクト53の内径の3倍以上の長さでクリーナー容器52から車体後方に向かって線形に延びる。クリーナー容器52外で吸気ダクト53に十分な長さが確保されることから、内燃機関31の低速トルクを向上させることができる。併せて、吸気ダクト53の上流端とクリーナー容器52との間に空間が確保されることで、吸気ダクト53の外周に沿って滑らかに空気が後方に流れ、吸気ダクト53の上流端から良好に空気は吸い込まれることができる。
本実施形態では、二重管部66の上流端から連続して上流側に延びる庇部67が設けられ、庇部67の上流端を仕切る仮想垂直平面VPよりも上流側で吸気ダクト53の内壁面は水平面HZよりも後下がりに広がる。庇部67の上流端を仕切る仮想垂直平面VPよりも上流側で吸気ダクト53の内壁面は水平面HZよりも後下がりに広がることから、乗員シート35を開放した際に、垂直方向(重力方向)に落下する水滴は庇部67で遮られて水平面HZよりも前下がりに広がる吸気ダクト53の内壁面に到達することはない。吸気ダクト53に対して水滴の進入は防止される。庇部67よりも後方で垂直方向に落下する水滴は水平面HZよりも後下がりに広がる内壁面を伝って吸気ダクト53の外側に排出される。庇部67の上流端を仕切る仮想垂直平面VPは吸気ダクト53の最後方端よりも前方に位置するので、庇部67の長さはできるだけ短縮されることができる。
吸気ダクト53の外壁面と二重管部66との距離DFは吸気ダクト53の内壁の距離DPの30%以下に設定される。気流の流通路の大きさに対して吸気ダクト53の外壁面と二重管部66との距離DFが適切に設定されることで、吸気ダクト53内の気流の整流は確実に実現される。また、二重管部66は仮想平面PLに交差して仮想平面PLよりも後方に延びることから、二重管部66は吸気ダクト53の上流端を囲み、吸気ダクト53内の気流の整流は確実に実現される。
本実施形態に係る自動二輪車11では、吸気ダクト53の上流端には吸気ダクト53の外周に沿って二重管部66が設けられ、当該二重管部66は、乗員シート35の下方に位置し、左右のサイドカバー38に挟まれる空間内に配置される。吸気ダクト53の上流端は、乗員シート35の下方で左右のサイドカバー38で挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクト53に対して雨水の進入などは確実に回避される。したがって、エアクリーナー47そのものにラビリンス構造といった複雑形状を施す必要がなく、エアクリーナー47の構造は簡素化される。しかも、吸気ダクト53の上流端に二重管部66が設けられることから、吸気ダクト53の周辺に様々な部品が配置されても、吸気ダクト53内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。二重管部66は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクト53の吸気効率は最適化されることができる。
第2の実施の形態
図7は本発明の第2実施形態に係る鞍乗り型車両としての自動二輪車81の全体像を概略的に示す。自動二輪車81は、車体フレーム82と、車体フレーム82に部分的に覆い被さるシュラウド83とを備える。車体フレーム82は、ヘッドパイプ84と、該ヘッドパイプ84から後ろ下がりに延びる1本のメインフレーム85と、メインフレーム85の下方に間隔を隔てて配置されて、ヘッドパイプ84から後下がりに延びる1本のダウンチューブ86と、メインフレーム85の後端に、車幅方向左右両側に固着される1対のサイドプレート87と、メインフレーム85の前後方向中間位置から後上がりに延びる左右1対のリアフレーム88と、リアフレーム88の下方に配置されて、サイドプレート87から後上がりに延びてリアフレーム88に結合されるサブフレーム89とを有する。サブフレーム89は、リアフレーム88の下方でサイドプレート87を介してメインフレーム85に結合される前端、および、リアフレーム88に結合される後端を有し、対応のリアフレーム88の下方でサイドプレート87から後上がりに延びて下方からリアフレーム88を支える。
ヘッドパイプ84には操向自在にフロントフォーク91が支持される。フロントフォーク91には車軸92回りで回転自在に前輪WFが支持される。フロントフォーク91の上端には操向ハンドル93が結合される。操向ハンドル93の左右両端にはグリップが固定される。運転者は自動二輪車11の運転にあたってグリップを握る。
車両の後方で車体フレーム82にはピボット94回りで上下に揺動自在にスイングアーム95が連結される。スイングアーム95の後端に車軸96回りで回転自在に後輪WRが支持される。前輪WFと後輪WRとの間で車体フレーム82には混合気の燃焼に応じて動力を生成する内燃機関97が搭載される。内燃機関97の動力は伝動装置98を介して後輪WRに伝達される。こうして自動二輪車11の走力は生み出される。
シュラウド83は、メインフレーム85の上方で、燃料タンクを覆うタンクカバー101と、タンクカバー101の下縁一部に倣った形状を備えて、側方からリアフレーム88およびサブフレーム89を覆う左右のサイドカバー102と、サイドカバー102の後端に接続されて、車両の後方を覆うリアカバー103とを備える。タンクカバー101の後方でリアフレーム88上には乗員シート104が搭載される。サイドカバー102は乗員シート104の側縁から連続して広がる。図8に示されるように、左右のサブフレーム89の間には、リアフレーム88の下方で後輪WRを覆うリアフェンダー105が配置される。リアフェンダー105は、後輪WRの表面形状に倣って、車軸96の延長線上で無限遠方に位置する視点から観察される側面視で後輪WRの外周に沿って車軸96周りに円弧を描くように湾曲するとともに、車軸96に直交して後輪WRの左右対称面を形成する仮想垂直面から左右に遠ざかるにつれて車軸96に近づくように湾曲する。したがって、リアフレーム88とリアフェンダー105との間隔は車体後方に向かうにつれて急激に狭まる。
図7に示されるように、内燃機関97の機関本体は、回転軸線Rk回りで回転自在にクランクシャフトを支持するクランクケース106と、クランクケース106に結合されて、ピストンの線形往復運動を案内するシリンダーブロック107と、シリンダーブロック107に結合されて、ピストンとの間に燃焼室を形成するシリンダーヘッド108と、シリンダーヘッド108に結合されて、シリンダーヘッド108上の動弁機構を覆うヘッドカバー109とを備える。ピストンの線形往復運動に応じて内燃機関97の吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程は繰り返される。内燃機関97の機関本体は、クランクケース106の前側でダウンチューブ86の下端に連結され、クランクケース106の後側でメインフレーム85に溶接されるサイドプレート87に連結される。こうしてメインフレーム85およびダウンチューブ86に加えて機関本体で剛体構造が確立される。ダウンチューブ86はいわゆるエンジンハンガーとして機能する。
シリンダーヘッド108には、燃焼室に通じる吸気道に接続される吸気装置111と、燃焼室に通じる排気道に接続される排気装置112とが結合される。吸気装置111は、乗員シート104の下方で左右のリアフレーム88の間に配置されるエアクリーナー113と、エアクリーナー113およびシリンダーヘッド108の間に配置されるスロットルボディ114とを備える。スロットルボディ114ではスロットルの働きでエアクリーナー113から供給される浄化空気の流量が調整される。シリンダーヘッド108の後部側壁には燃料噴射弁(図示されず)が取り付けられる。燃料噴射弁から浄化空気に燃料が噴射されて混合気は形成される。混合気は吸気弁の作用を経て燃焼室に導入される。排気装置112は、シリンダーヘッド108の前部側壁からクランクケース106の下方を通って後方に延びる排気管116と、排気管116の下流端に接続されて後輪WRの側方で延びる排気マフラー(図示されず)とを備える。燃焼後の空気は排気弁の作用を経て燃焼室から排出される。
図9に示されるように、エアクリーナー113は、クランクシャフトの回転軸線Rkに直交する仮想平面に平行な第1垂直面VP1に沿って合わせ面で相互に結合される小器体117aおよび大器体117bを有し、外気および浄化空気の供給先(内燃機関97)に通じる内部空間を形成するクリーナー容器117と、小器体117aに固定されて、外気に曝される上流端でクリーナー容器117の外側に開口し、クリーナー容器117の内部空間に外気空間を連通する吸気ダクト118と、大器体117bに固定されて、クリーナー容器117の内部空間内に位置する上流端でクリーナー容器117の内部空間に開口し、クリーナー容器117の外側の下流端でスロットルボディ114に連結されるコネクティングチューブ119とを備える。大器体117bは、第1垂直面VP1に平行な第2垂直面VP2に沿って合わせ面で相互に結合される本体121aおよびカバー体121bに分割される。吸気ダクト118は例えばゴムといった弾性体から成形される。
図10に示されるように、小器体117aおよび大器体117bの間には、後輪WRの回転軸線に直交する仮想平面に沿ってクリーナーエレメント122を保持する隔壁123が挟まれる。隔壁123は、小器体117aとの間に、吸気ダクト133を通じて外気空間に連通するダーティルーム124aを形成し、大器体117bとの間に、コネクティングチューブ119を通じてスロットルボディ114に連通するクリーンルーム124bを形成する。こうしてクリーナー容器117の内部空間はダーティルーム124aおよびクリーンルーム124bに仕切られる。ダーティルーム124aおよびクリーンルーム124bの間にクリーナーエレメント122は配置される。外気はクリーナーエレメント122を通過して浄化されクリーンルーム124bに導入される。吸気ダクト118の下流端はクリーナーエレメント122に向き合う位置で開口する。
図9に示されるように、小容器117aは大容器117bに比べて車体前方側に偏って配置され、その結果、左右のサイドカバー102に挟まれる空間では、大容器117bの側方で小容器117aおよびリアフェンダー105の間に外気空間125が形成される。図10から明らかなように、当該外気空間125は、クリーンルーム124bの側方でダーティルーム124aおよびリアフェンダー105の間に配置される。当該外気空間125に吸気ダクト118は配置される。吸気ダクト118は、後輪WRの回転軸線に直交する左右対称面126の片側空間にオフセットして配置され、吸気ダクト118の上流端は左右対称面126に指向して傾斜する。
図10に示されるように、吸気ダクト118は、小器体117aの差し込み口127に挿入される際に小器体117aの内側から小器体117aの内壁面に接触する第1環状体128aと、第1環状体128aに軸方向に向き合って、小器体117aの外側から小器体117aの外壁面に接触する第2環状体128bとを有する。差し込み口127は、小器体117aに穿たれる円形の開口で形成される。第1環状体128aは、差し込み口127の軸線に直交する垂直面で小器体117aの内壁面に密着する。第2環状体128bは、差し込み口128の軸線に直交する垂直面で小器体117aの外壁面に密着する。こうして第1環状体128aと第2環状体128bとの間に小器体117aの壁体は挟まれる。第1環状体128aの外径は、差し込み口127に下流端から吸気ダクト118を差し込む際に第1環状体128aの変形に応じて第1環状体128a全体が差し込み口127に進入する大きさを有する。第2環状体128bの外径は、第1環状体128aよりも大きく、差し込み口127の進入時に第1環状体128aが変形しても差し込み口127の外側に留まる大きさを有する。
図11に示されるように、第2環状体128bの外周には、クリーナー容器117の外壁に沿って吸気ダクト118の外周から外側に延びる突片129が設けられる。クリーナー容器117の外壁には、円形の差し込み口127の径方向に延びる1対の突起131が形成される。突起131は、突片を受け入れる凹部132を提供する。凹部132は、差し込み口127の周方向に突片129の変位を防止する。
吸気ダクト118の上流端には、吸気ダクト118の外周に沿って二重管部133が設けられる。図12に示されるように、二重管部133は、吸気ダクト118の外壁面から外側に広がるフランジ部133aと、外壁面との間に間隔を維持しながら、フランジ部133aから外壁面に沿って吸気ダクト118の上流端に向かって延びる外環部133bとを有する。外環部133bは、吸気ダクト118の上流端を形成する円筒体に同軸であってその円筒体よりも大径の円筒体で形成される。ただし、外環部133bは必ずしも円筒体である必要はなく、多角形その他の断面形状であってもよい。また、吸気ダクト118の上流端と外環部133bとは必ずしも同軸である必要はなく、偏心してもよい。外環部133bには、フランジ部133a以外で吸気ダクト118の外壁面に外環部133bを連結するリブが形成されてもよい。フランジ部133aが省略されて、周方向に分離される複数のリブで外環部環部133bは吸気ダクト118の外壁面に固定されてもよい。ここでは、外環部133bの上流端は、円筒体の軸線に直交して吸気ダクト118の上流端を含む仮想平面PLに接する。ただし、円筒体の軸線に直交して外環部133bの上流端を含む仮想平面PGは仮想平面PLよりも上流側であって仮想平面PLに平行に位置してもよい。すなわち、外環部133bは仮想平面PLに交差してもよい。
吸気ダクト18の外壁面と二重管部133との距離DFは、吸気ダクト118の内壁の距離DPの30%以下に設定される。ここでは、吸気ダクト118の上流端および外環部133bは同軸の円筒形に形成されることから、距離DFは吸気ダクト118の外壁面と外環部133bとの径方向差に相当し、距離DPは吸気ダクト118の内径に相当する。図9に示されるように、二重管部133は、車幅方向片側のリアフレーム88およびサブフレーム89に挟まれる領域内に少なくとも部分的に配置される。外気空間125内で二重管部133とクリーナー容器117との間には間隙が形成される。
図10に示されるように、コネクティングチューブ119は、クリーンルーム124b内に配置されて、硬質の樹脂材から成形される室内部材134と、クリーナー容器117およびスロットルボディ114を連結し、大器体117bの壁を貫通して上流端でクリーンルーム124b内に臨み室内部材134に直接に連結される連結部材135とを有する。連結部材135は、ゴム材といった弾性体から成形される。室内部材134は、クリーンルーム124bの内壁から直立する複数のボス136の先端に個々に重なるタブ137を有する。タブ137がボス136の先端にねじ138止めされることで室内部材134はクリーンルーム124b内に浮遊状態で支持される。2本のねじ138は、相互に平行に延びるねじ軸線を有し、ねじ軸線とコネクティングチューブ119は交差しない。ここでは、室内部材134は、垂直面VP1、VP2に平行な仮想平面で合わせられる半円筒体の第1半体139aおよび第2半体139bで構成される。第1半体139aおよび第2半体139bは例えば溶着で相互に気密に結合される。第1半体139aおよび第2半体139bのいずれか一方にタブ137は一体に形成されればよい。
連結部材135は、大器体117bの差し込み口141に挿入される際に大器体117bの内側から大器体117bの内壁面に接触する第1環状体142aと、第1環状体142aに軸方向に向き合って、大器体117bの外側から大器体117bの外壁面に接触する第2環状体142bとを有する。第1環状体142aは、差し込み口141の軸線に直交する垂直面で大器体117bの内壁面に密着する。第2環状体142bは、差し込み口141の軸線に直交する垂直面で大器体117bの外壁面に密着する。こうして第1環状体142aと第2環状体142bとの間に大器体117bの壁体は挟まれる。第1環状体142aの外径は、差し込み口141に上流端から連結部材135を差し込む際に第1環状体142aの変形に応じて第1環状体142a全体が差し込み口141に進入する大きさを有する。第2環状体142bの外径は、第1環状体142aよりも大きく、差し込み口141の進入時に第1環状体142aが変形しても差し込み口141の外側に留まる大きさを有する。第1環状体142aは上流側から徐々に拡径して最大径で垂直面に連続するテーパー面を有する。連結部材135の上流端に室内部材134は差し込まれる。室内部材134から連結部材135にわたってコネクティングチューブ119の内径は一定に維持される。
コネクティングチューブ119の上流端には、コネクティングチューブ119の外周に沿って二重管部143が設けられる。図13に示されるように、二重管部143は、コネクティングチューブ119の外壁面から外側に広がるフランジ部143aと、外壁面との間に間隔を維持しながら、フランジ部143aから外壁面に沿ってコネクティングチューブ119の上流端に向かって延びる外環部143bとを有する。外環部143bは、コネクティングチューブ119の上流端を形成する円筒体に同軸であってその円筒体よりも大径の円筒体で形成される。ただし、外環部143bは必ずしも円筒体である必要はなく、多角形その他の断面形状であってもよい。また、コネクティングチューブ119の上流端と外環部143bとは必ずしも同軸である必要はなく、偏心してもよい。外環部143bには、フランジ部143a以外でコネクティングチューブ119の外壁面に外環部143bを連結するリブが形成されてもよい。フランジ部143aが省略されて、周方向に分離される複数のリブで外環部143bはコネクティングチューブ119の外壁面に固定されてもよい。ここでは、外環部143bの上流端は、コネクティングチューブ119の上流端を含む仮想平面PNに接する。ただし、外環部143bの上流端は、コネクティングチューブ119の上流端を含む仮想平面PNよりも前方に延びて、外環部143bは仮想平面PNに交差してもよい。
次に本実施形態の動作を説明する。ピストンの線形往復運動に応じて内燃機関97の吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程は繰り返されると、吸気ダクト118からクリーナー容器117内のダーティルーム124aに外気は導入される。外気はクリーナーエレメント122を通過して浄化されクリーンルーム124bに導入される。クリーンルーム124b内の浄化空気は吸気ダクト118に流入し、スロットルボディ114に供給される。スロットルボディ114ではスロットルの働きでエアクリーナー113から供給される浄化空気の流量が調整される。スロットルボディ114から流出する浄化空気に燃料噴射弁115から燃料が噴射されて混合気は形成される。混合気は吸気弁の作用を経て燃焼室に導入される。
本実施形態に係る自動二輪車81では、吸気ダクト118の上流端に吸気ダクト118の外周に沿って二重管部133が設けられ、当該二重管部133は、乗員シート104の下方に位置し、少なくとも部分的に平面視で左右のリアフレーム88の外縁に挟まれる空間に配置される。吸気ダクト118の上流端は乗員シート104の下方に位置するので、吸気ダクト118に対して雨水の進入などはできる限り回避される。したがって、エアクリーナー113そのものにラビリンス構造といった複雑形状を施す必要がなく、エアクリーナー113の構造は簡素化される。しかも、吸気ダクト118の上流端に二重管部133が設けられることから、吸気ダクト118の周辺に様々な部品が配置されても、吸気ダクト118内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。
自動二輪車81は、乗員シート104の下方であってリアフェンダー105の前方に配置され、ダーティルーム124aおよびクリーンルーム124bの間に、後輪WRの回転軸線に直交する仮想平面に沿ってクリーナーエレメント122を配置するエアクリーナー113を備える。そして、クリーンルーム124bの側方でダーティルーム124aおよびリアフェンダー105の間にクリーナー容器117外に外気空間125を形成し、当該外気空間125に吸気ダクト118を配置し、吸気ダクト118の上流端には吸気ダクト118の外周に沿って二重管部133が設けられる。こうしてクリーンルーム124bの側方でダーティルーム124aおよびリアフェンダー105の間に外気空間125が形成されると、クリーンルーム124bに対してダーティルーム124aは車体前後方向に短縮される。乗員シート104の下方の空間はリアフェンダー105で後方が仕切られることから、クリーンルーム124bはリアフェンダー105まで広がって十分な容積を有するとともに、クリーンルーム124bに隣接する空間に吸気ダクト118は効率的に配置される。吸気ダクト118の上流端は狭まった空間に開口するものの、二重管部133の働きで吸気ダクト118内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。
自動二輪車81は、乗員シート104の側面から連続して広がる左右のサイドカバー102を備え、二重管部133は、左右のサイドカバー102に挟まれる空間内に配置される。吸気ダクト118の上流端は、左右のサイドカバー102で挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクト118に対して雨水の進入などは確実に回避される。したがって、二重管部133は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクト118の吸気効率は最適化されることができる。
本実施形態では、吸気ダクト118は、後輪WRの回転軸線に直交する左右対称面の片側空間にオフセットして配置され、吸気ダクト118の上流端は左右対称面に指向して傾斜する。吸気ダクト118の上流端は車体の左右対称面に指向することから、吸気効率は向上する。加えて、吸気ダクト118は左右対称面の片側空間にオフセットして配置されるものの、吸気ダクト118の上流端の二重管部133は左右対称面に近づくことができ、車幅方向に二重管部133の突出は抑制される。
本実施形態に係る自動二輪車81は、リアフレーム88の下方でメインフレーム85に結合される前端、および、リアフレーム88に連結される後端を有し、個々のリアフレーム88の下方で延びる左右のサブフレーム89を備え、二重管部133は、車幅方向片側のリアフレーム88およびサブフレーム89に挟まれる領域内に少なくとも部分的に配置される。二重管部133の配置にあたってリアフレーム88とサブフレーム89とに挟まれる空間が利用されることから、車幅方向への突出を抑制しつつ効率的に二重管部133は配置されることができる。
吸気ダクト118には、クリーナー容器117の外壁に沿って吸気ダクト118の外周から外側に延びる突片129が設けられ、クリーナー容器117の外壁には、吸気ダクト118を受け入れる円形の差し込み口127と、突片129を受け入れる凹部132とが設けられる。クリーナー容器117の外壁面の凹部132に吸気ダクト118の突起128が係り合うことで、円形の差し込み口127内で吸気ダクト118の自転は阻止される。こうして吸気ダクト118の回り止めが確立されることから、吸気ダクト118が左右対称面を指向して傾斜しても、二重管部133の突出は回避される。
吸気ダクト118の外壁面と二重管部133との距離DFは吸気ダクト118の内壁の距離DPの30%以下に設定される。気流の流通路の大きさに対して吸気ダクト118の外壁面と二重管部133との距離が適切に設定されることで、吸気ダクト118内の気流の整流は確実に実現される。また、二重管部133の上流端は、吸気ダクト118の上流端を含む仮想平面PLに接することから、二重管部133は吸気ダクト118の上流端を確実に囲み、吸気ダクト118内の気流の整流は確実に実現される。
本実施形態に係る自動二輪車81では、吸気ダクト118の上流端には吸気ダクト118の外周に沿って二重管部133が設けられ、当該二重管部133は、乗員シート104の下方に位置し、左右のサイドカバー102に挟まれる空間内に配置される。吸気ダクト118の上流端は、乗員シート104の下方で左右のサイドカバー102で挟まれる空間内に配置されるので、吸気ダクト118に対して雨水の進入などは確実に回避される。したがって、エアクリーナー113そのものにラビリンス構造といった複雑形状を施す必要がなく、エアクリーナー113の構造は簡素化される。しかも、吸気ダクト118の上流端に二重管部133が設けられることから、吸気ダクト118の周辺に様々な部品が配置されても、吸気ダクト118内の流速が均一化され、吸気効率が向上する。二重管部133は、気液分離のラビリンス構造といった防水機能を果たす必要はなく、吸気効率の向上を最優先に設計されることができる。こうして吸気ダクト118の吸気効率は最適化されることができる。