以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(1)概要
まず、本実施形態に係るスナバ回路3、及びそれを用いた電力変換システム1の概要について、図1を参照して説明する。
電力変換システム1は、主回路2と、スナバ回路3と、を備えている。主回路2は、電力の変換を行う電力変換回路である。以降、主回路2を電力変換回路2ともいう。スナバ回路3は、電力変換回路2で発生する、リンギング又はサージ電圧を抑制するための保護回路である。電力変換回路2において、例えば直流電力から交流電力への変換、又は交流電力から直流電力への変換を行う際に、後述するトランス24の漏れインダクタンスに起因してリンギングが発生することがある。本実施形態に係る電力変換システム1では、このようなリンギングをスナバ回路3にて抑制することが可能である。本実施形態では、電力変換回路2は、電力変換の一方側と他方側とを電気的に絶縁しており、他方側に容量成分を有していない。スナバ回路3は、電力変換回路2の他方側に接続されている。本実施形態では、電力変換回路2における、一方側が一次側、他方側が二次側として説明する。スナバ回路3は、主回路2に対して副回路に相当する。
電力変換システム1は、一例として、図1に示すように、電力系統E2と、蓄電池E1との間における電力変換に用いられる。ここでいう「電力系統」は、電力会社等の電気事業者が需要家の受電設備に電力を供給するためのシステム全体を意味する。図1の例では、電力変換システム1は、蓄電池E1が電気的に接続される一対の第1端子H11,H12と、電力系統E2が電気的に接続される一対の第2端子H21,H22と、を有する。この電力変換システム1は、蓄電池E1の充電時には、電力系統E2から入力される交流電力を直流電力に変換し、直流電力を蓄電池E1に供給する。また、電力変換システム1は、蓄電池E1の放電時には、蓄電池E1から入力される直流電力を交流電力に変換し、交流電力を電力系統E2に出力する。つまり、本実施形態の電力変換システム1は、蓄電池E1の充電及び放電の両方に対応できるよう、一対の第1端子H11,H12と一対の第2端子H21,H22との間で、双方向に電力の変換を行うように構成されている。これにより、電力変換システム1は、蓄電池E1を電力系統E2に接続して系統連系させ、電力系統E2から供給される電力にて蓄電池E1を充電したり、蓄電池E1の放電電力を電力系統E2に接続された負荷に供給したりすることができる。本実施形態では一例として、このような電力変換システム1及び蓄電池E1を含む蓄電システムが、オフィスビル、病院、商業施設及び学校等の、非住宅施設に導入される場合を想定して説明する。
(2)構成
図1に示すように、本実施形態の電力変換システム1は、突入防止回路4と、電力変換回路2と、スナバ回路3と、制御回路6と、を備えている。また、電力変換システム1は、一対の第1端子H11,H12と、一対の第2端子H21,H22と、一対の第3端子H31,H32と、を更に備えている。本実施形態では、第1端子H11が高電位(正極)側となるように、一対の第1端子H11,H12間には蓄電池E1が電気的に接続されている。また、一対の第2端子H21,H22間には、電力系統E2が電気的に接続されている。一対の第3端子H31,H32は、電力変換回路2とスナバ回路3とに電気的に接続されている。ただし、ここでいう「端子」は、電線等を接続するための部品でなくてもよく、例えば、電子部品のリード、又は回路基板に含まれる導体の一部であってもよい。
(2.1)突入防止回路
まず、突入防止回路4の構成について説明する。
突入防止回路4は、蓄電池E1とコンデンサC11との間に電気的に接続されている。コンデンサC11は、例えば電解コンデンサである。突入防止回路4は、高インピーダンス状態と低インピーダンス状態と遮断状態とを切り替え可能に構成されている。ここでいう「高インピーダンス状態」とは、インピーダンスが相対的に高い状態をいい、「低インピーダンス状態」とは、インピーダンスが相対的に低い状態をいう。また、「遮断状態」とは、蓄電池E1とコンデンサC11とが電気的に遮断された状態をいう。
突入防止回路4は、第1開閉部SW51と、第2開閉部SW52と、抵抗R51と、ダイオードD51と、を有している。
第1開閉部SW51は、第1端子H11を介して、蓄電池E1の正極と、コンデンサC11の正極との間に電気的に接続されている。第1開閉部SW51は、制御回路6からの駆動信号S51によって開閉する。第1開閉部SW51が閉状態である場合、蓄電池E1の正極とコンデンサC11の正極とが導通し、突入防止回路4が低インピーダンス状態となる。本実施形態では、第1開閉部SW51は、メカニカルスイッチであるが、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体スイッチであってもよい。
第1開閉部SW51の両端間において、第2開閉部SW52、抵抗R51、及びダイオードD51の直列回路が、電気的に接続されている。つまり、蓄電池E1の正極とコンデンサC11との間において、第2開閉部SW52、抵抗R51、及びダイオードD51の直列回路が、第1開閉部SW51と電気的に並列接続されている。ダイオードD51は、アノード端子が、抵抗R51、及び第1端子H11を介して、蓄電池E1の正極に電気的に接続され、カソード端子が、第2開閉部SW52を介してコンデンサC11の正極に電気的に接続されている。第2開閉部SW52は、制御回路6からの駆動信号S52によって開閉する。第2開閉部SW52が閉状態である場合、蓄電池E1の正極とコンデンサC11の正極とが抵抗R51及びダイオードD51を介して導通し、抵抗R51によって突入防止回路4が高インピーダンス状態となる。抵抗R51は、後述するコンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2への突入電流を低減する電流制限抵抗として機能する。本実施形態では、第2開閉部SW52は、MOSFETなどの半導体スイッチであるが、メカニカルスイッチであってもよい。
つまり、第1開閉部SW51が閉状態であり、かつ第2開閉部SW52が開状態である場合、突入防止回路4が低インピーダンス状態となる。また、第1開閉部SW51が開状態であり、かつ第2開閉部SW52が閉状態である場合、突入防止回路4が高インピーダンス状態となる。また、第1開閉部SW51及び第2開閉部SW52の両方が開状態である場合、突入防止回路4が遮断状態となる。
突入防止回路4が高インピーダンス状態である場合、突入防止回路4が低インピーダンス状態である場合に比べて、蓄電池E1からコンデンサC11に供給される直流電流の電流値が小さくなる。
また、コンデンサC11の両端間に放電回路5が電気的に接続されている。放電回路5は、抵抗R71と放電スイッチSW71とを有している。コンデンサC11の両端間において、抵抗R71及び放電スイッチSW71の直列回路が電気的に接続されている。放電スイッチSW71は、制御回路6からの駆動信号S71によって開閉する。放電スイッチSW71は、通常時はオフ状態であり、コンデンサC11を放電する際にオンされる。
(2.2)電力変換回路
次に、電力変換回路2の構成について説明する。
電力変換回路2は、第1変換部21と、第2変換部22と、第3変換部23と、トランス24と、フィルタ回路25と、を備えている。
第1変換部21は、コンデンサC11とトランス24の一次巻線L11との間に電気的に接続されている。第1変換部21は、直流電力を交流電力に変換、又は交流電力を直流電力に変換するように構成されている。
第1変換部21は、4つのスイッチング素子Q11〜Q14を有している。本実施形態では、一例として、スイッチング素子Q11〜Q14の各々は、デプレッション型のnチャネルMOSFETで構成されている。スイッチング素子Q11〜Q14は、フルブリッジ接続されている。スイッチング素子Q11は、コンデンサC11の両端間において、スイッチング素子Q12と電気的に直列接続されている。スイッチング素子Q13は、コンデンサC11の両端間において、スイッチング素子Q14と電気的に直列接続されている。言い換えれば、コンデンサC11の両端間には、スイッチング素子Q11,Q12の直列回路と、スイッチング素子Q13,Q14の直列回路とが、電気的に並列接続されている。具体的には、スイッチング素子Q11,Q13のドレインは、コンデンサC11の正極に電気的に接続されている。スイッチング素子Q12,Q14のソースは、コンデンサC11の負極に電気的に接続されている。
スイッチング素子Q11のソース及びスイッチング素子Q12のドレインの接続点と、スイッチング素子Q13のソース及びスイッチング素子Q14のドレインの接続点との間に、トランス24の一次巻線L11が電気的に接続されている。
第1変換部21は、スイッチング素子Q11〜Q14がオン/オフすることによって、直流電力を交流電力に変換、又は交流電力を直流電力に変換する。スイッチング素子Q11〜Q14は、制御回路6からの駆動信号S11〜S14によってオン/オフが個別に制御される。
トランス24は、互いに磁気的に結合された一次巻線L11と二次巻線L12とを有する高周波絶縁トランスである。一次巻線L11は、第1変換部21と電気的に接続され、二次巻線L12は、第2変換部22と電気的に接続されている。本実施形態では、二次巻線L12の巻数は、一次巻線L11の巻数よりも多い。したがって、一次巻線L11の両端電圧を昇圧した電圧が、二次巻線L12の両端間に生成される。なお、一次巻線L11と二次巻線L12との巻数比は、1:1であってもよい。
第2変換部22は、トランス24の二次巻線L12と一対の第3端子H31,H32との間に電気的に接続されている。
第2変換部22は、4つのスイッチング素子Q21〜Q24を有している。本実施形態では、本実施形態では、一例として、スイッチング素子Q21〜Q24の各々は、デプレッション型のnチャネルMOSFETで構成されている。スイッチング素子Q21〜Q24は、フルブリッジ接続されている。スイッチング素子Q21は、一対の第3端子H31,H32間において、スイッチング素子Q22と電気的に直列接続されている。スイッチング素子Q23は、一対の第3端子H31,H32間において、スイッチング素子Q24と電気的に直列接続されている。言い換えれば、一対の第3端子H31,H32間には、スイッチング素子Q21,Q22の直列回路と、スイッチング素子Q23,Q24の直列回路とが、電気的に並列接続されている。具体的には、スイッチング素子Q21,Q23のドレインは、高電位側の第3端子H31に電気的に接続され、スイッチング素子Q22,Q24のソースは、低電位側の第3端子H32に電気的に接続されている。
スイッチング素子Q21のソース及びスイッチング素子Q22のドレインの接続点と、スイッチング素子Q23のソース及びスイッチング素子Q24のドレインの接続点との間に、トランス24の二次巻線L12が電気的に接続されている。
第2変換部22は、スイッチング素子Q21〜Q24がオン/オフすることによって、交流電力を直流電力に変換、又は直流電力を交流電力に変換する。スイッチング素子Q21〜Q24は、制御回路6からの駆動信号S21〜S24によってオン/オフが個別に制御される。
第3変換部23は、一対の第3端子H31,H32を介して第2変換部22と電気的に接続されている。また、第2変換部22と第3変換部23との間には、スナバ回路3が電気的に接続されている。
第3変換部23は、4つのスイッチング素子Q31〜Q34を有している。本実施形態では、一例として、スイッチング素子Q31〜Q34の各々は、デプレッション型のnチャネルMOSFETで構成されている。スイッチング素子Q31〜Q34は、フルブリッジ接続されている。スイッチング素子Q31は、一対の第3端子H31,H32間において、スイッチング素子Q32と電気的に直列接続されている。スイッチング素子Q33は、一対の第3端子H31,H32間において、スイッチング素子Q34と電気的に直列接続されている。言い換えれば、一対の第3端子H31,H32間には、スイッチング素子Q31,Q32の直列回路と、スイッチング素子Q33,Q34の直列回路とが、電気的に並列接続されている。具体的には、スイッチング素子Q31,Q33のドレインは、高電位側の第3端子H31に電気的に接続され、スイッチング素子Q32,Q34のソースは、低電位側の第3端子H32に電気的に接続されている。
スイッチング素子Q31のソース及びスイッチング素子Q32のドレインの接続点と、スイッチング素子Q33のソース及びスイッチング素子Q34のドレインの接続点とは、フィルタ回路25が電気的に接続されている。
第3変換部23は、スイッチング素子Q31〜Q34がオン/オフすることによって、直流電力を交流電力に変換、又は交流電力を直流電力に変換する。スイッチング素子Q31〜Q34は、制御回路6からの駆動信号S31〜S34によってオン/オフが個別に制御される。
フィルタ回路25は、2つのインダクタL21,L22と、コンデンサC21と、を有している。フィルタ回路25は、第3変換部23と一対の第2端子H21,H22との間に電気的に接続されている。インダクタL21の一端、言い換えれば、フィルタ回路25における第3変換部23側の一対の端子の一方は、スイッチング素子Q31のソース及びスイッチング素子Q32のドレインの接続点に電気的に接続されている。インダクタL22の一端、言い換えれば、フィルタ回路25における第3変換部23側の一対の端子の他方は、スイッチング素子Q33のソース及びスイッチング素子Q34のドレインの接続点に電気的に接続されている。インダクタL21の他端、言い換えれば、フィルタ回路25における第2端子H21側の端子は、交流開閉部SW61を介して第2端子H21に電気的に接続されている。インダクタL22の他端、言い換えれば、フィルタ回路25における第2端子H22側の端子は、第2端子H22に電気的に接続されている。言い換えれば、第3変換部23は、フィルタ回路25を介して一対の第2端子H21,H22に電気的に接続されている。また、インダクタL21の他端とインダクタL22の他端との間には、コンデンサC21が電気的に接続されている。
交流開閉部SW61は、制御回路6からの駆動信号S61によって開閉する。交流開閉部SW61は、メカニカルスイッチであってもよいし、半導体スイッチであってもよい。一対の第2端子H21,H22間には、電力系統E2が電気的に接続されている。
(2.3)スナバ回路
次に、スナバ回路3の構成について説明する。スナバ回路3は、電力変換回路2に電気的に接続されている。具体的には、スナバ回路3は、電力変換回路2における第2変換部22と第3変換部23との間の一対の第1電圧点P11,P12、及び一対の第2電圧点P21,P22に電気的に接続されている。すなわち、電力変換回路2は、スナバ回路3が電気的に接続される、一対の第1電圧点P11,P12、及び一対の第2電圧点P21,P22を有する。
一対の第1電圧点P11,P12は、一対の第3端子H31,H32と電気的に接続されている。また、一対の第2電圧点P21,P22は、一対の第3端子H31,H32と電気的に接続されている。
高電位側の第3端子H31と、高電位側の第1電圧点P11と、高電位側の第2電圧点P21とは、同電位である(電気的に等価である)。同様に、低電位側の第3端子H32と、低電位側の第1電圧点P12と、低電位側の第2電圧点P22とは、同電位である(電気的に等価である)。
スナバ回路3は、第1クランプ回路31と、第2クランプ回路32と、回生回路33と、起動回路34と、を備えている。
第1クランプ回路31は、一対の第1電圧点P11,P12間に電気的に接続されている。第1クランプ回路31は、電力変換回路2における一対の第1電圧点P11,P12から電力変換回路2の電気エネルギを吸収することによって、一対の第1電圧点P11,P12間の電圧をクランプする。ここで、電力変換回路2における一対の第3端子H31,H32間(一対の第1電圧点P11,P12)の電圧をバス電圧Vbusとする。つまり、バス電圧Vbusは、第2変換部22が第3変換部23に出力する直流電圧、又は第3変換部23が第2変換部22に出力する直流電圧である。第1クランプ回路31は、一対の第1電圧点P11,P12間の電圧(バス電圧Vbus)の大きさが第1クランプ値v1を超える場合に、電力変換回路2における一対の第1電圧点P11,P12から電力変換回路2の電気エネルギを吸収する回路である。これにより、第1クランプ回路31は、一対の第1電圧点P11,P12間の電圧を第1クランプ値v1にクランプする。つまり、電力変換回路2におけるバス電圧Vbusが第1クランプ値v1を超える場合には、第1クランプ回路31が、第1クランプ値v1を超える分の電気エネルギを引き抜くことにより、バス電圧Vbusの上限値を第1クランプ値v1にクランプする。
第1クランプ回路31は、第1ダイオードD1及び第1コンデンサC1を有する。第1ダイオードD1及び第1コンデンサC1は、一対の第1電圧点P11,P12間に電気的に直列接続されている。第1クランプ回路31は、一対の第1電圧点P11,P12間の電圧(Vbus)が第1クランプ値v1を超える場合に、高電位側の第1電圧点P11から第1ダイオードD1を通して第1コンデンサC1に電流Id1が流れるように構成されている。具体的には、一対の第1電圧点P11,P12間に第1ダイオードD1及び第1コンデンサC1の直列回路が電気的に接続されている。第1ダイオードD1は、アノード端子が高電位側の第1電圧点P11に電気的に接続され、カソード端子が第1コンデンサC1を介して低電位側の第1電圧点P12に電気的に接続されている。
この構成により、第1コンデンサC1の両端電圧の大きさを第1クランプ値v1とすれば、一対の第3端子H31,H32間のバス電圧Vbusが第1クランプ値v1を超えると、第1ダイオードD1がオン(導通状態)になり第1コンデンサC1に電流Id1が流れる。厳密には、第1コンデンサC1の両端電圧に第1ダイオードD1の順方向降下電圧を加えた電圧が第1クランプ値v1になる。ただし、第1クランプ値v1に比べて第1ダイオードD1の順方向降下電圧が十分に小さいため、ここでは、第1ダイオードD1の順方向降下電圧をゼロ、つまり第1コンデンサC1の両端電圧の大きさが第1クランプ値v1であることとして説明する。
第2クランプ回路32は、一対の第2電圧点P21,P22間に電気的に接続されている。第2クランプ回路32は、電力変換回路2における一対の第2電圧点P21,P22から電力変換回路2に電気エネルギを注入することによって、一対の第2電圧点P21,P22間の電圧をクランプする。第2クランプ回路32は、一対の第2電圧点P21,P22間の電圧(バス電圧Vbus)の大きさが第2クランプ値v2を下回る場合に、一対の第2電圧点P21,P22から電力変換回路2に電気エネルギを注入する回路である。これにより、第2クランプ回路32は、一対の第2電圧点P21,P22間の電圧を第2クランプ値v2にクランプする。つまり、電力変換回路2におけるバス電圧Vbusが第2クランプ値v2を下回る場合には、第2クランプ回路32が、第2クランプ値v2を下回る分の電気エネルギを回生することにより、バス電圧Vbusの下限値を第2クランプ値v2にクランプする。
第2クランプ回路32は、起動スイッチング素子Q2及び第2コンデンサC2を有する。
起動スイッチング素子Q2は、MOSFET等の半導体スイッチで構成されており、起動スイッチ部SW2と、第2ダイオードD2と、を有する。本実施形態では、一例として、起動スイッチング素子Q2は、デプレッション型のnチャネルMOSFETで構成されている。第2ダイオードD2は、起動スイッチング素子Q2の寄生ダイオードである。第2ダイオードD2は、アノード端子が起動スイッチ部SW2のソースと電気的に接続され、カソード端子が起動スイッチ部SW2のドレインと電気的に接続されている。
起動スイッチング素子Q2及び第2コンデンサC2は、一対の第2電圧点P21,P22間に電気的に直列接続されている。第2クランプ回路32は、一対の第2電圧点P21,P22間の電圧(バス電圧Vbus)が第2クランプ値v2を下回る場合に、第2コンデンサC2から第2ダイオードD2を通して電力変換回路2に電流Id2が流れるように構成されている。具体的には、一対の第2電圧点P21,P22間に起動スイッチング素子Q2および第2コンデンサC2の直列回路が電気的に接続されている。起動スイッチング素子Q2は、起動スイッチ部SW2のドレインが高電位側の第2電圧点P21に電気的に接続され、起動スイッチ部SW2のソースが第2コンデンサC2を介して低電位側の第2電圧点P22に電気的に接続されている。したがって、第2ダイオードD2は、カソード端子が高電位側の第2電圧点P21に電気的に接続され、アノード端子が第2コンデンサC2を介して低電位側の第2電圧点P22に電気的に接続されている。つまり、第2クランプ回路32は、第2ダイオードD2および第2コンデンサC2を有する。第2ダイオードD2及び第2コンデンサC2は、一対の第2電圧点P21,P22間に電気的に直列接続されている。
また、起動スイッチング素子Q2は、制御回路6によって制御される。具体的には、起動スイッチング素子Q2の起動スイッチ部SW2は、制御回路6からの駆動信号S2によって開閉する。
この構成により、第2コンデンサC2の両端電圧の大きさを第2クランプ値v2とすれば、一対の第2電圧点P21,P22間のバス電圧Vbusが第2クランプ値v2を下回ると、第2ダイオードD2がオン(導通状態)になり電力変換回路2に電流Id2が流れる。厳密には、第2コンデンサC2の両端電圧に第2ダイオードD2の順方向降下電圧を加えた電圧が第2クランプ値v2になる。ただし、第2クランプ値v2に比べて第2ダイオードD2の順方向降下電圧が十分に小さいため、ここでは、第2ダイオードD2の順方向降下電圧をゼロ、つまり第2コンデンサC2の両端電圧の大きさが第2クランプ値v2であることとして説明する。
また、起動スイッチング素子Q2は、起動回路34としても機能する。起動回路34は、オンオフが可能であって、回生回路33の起動前に第2クランプ回路32を充電する充電経路を形成する。つまり、起動回路34は、半導体スイッチ(例えばMOSFET)である。第2ダイオードD2は、半導体スイッチの寄生ダイオードである。起動回路34は、第2ダイオードD2と電気的に並列接続された起動スイッチ部SW2を含む。起動スイッチ部SW2がオンすることによって、第2コンデンサC2を充電する充電経路が形成される。
回生回路33は、第1クランプ回路31及び第2クランプ回路32に電気的に接続されており、第1クランプ回路31の電気エネルギを第2クランプ回路32に回生する。具体的には、回生回路33は、第1クランプ電圧Vc1と第2クランプ電圧Vc2との間で電圧変換(降圧、昇圧、又は昇降圧)を行う。ここでいう「第1クランプ電圧」は、第1クランプ値v1を規定する電圧であって、本実施形態では、第1コンデンサC1の両端電圧である。「第2クランプ電圧」は、第2クランプ値v2を規定する電圧であって、本実施形態では、第2コンデンサC2の両端電圧である。
回生回路33は、第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42、及びインダクタL41を有する。回生回路33は、スイッチング素子として第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42を有するチョッパ回路である、具体的にはチョッパ方式のDC/DCコンバータである。本実施形態では、一例として、回生回路33は、降圧(チョッパ)回路であって、第1クランプ電圧Vc1を降圧して第2クランプ電圧Vc2を生成する。つまり、回生回路33は、第1コンデンサC1の両端電圧を降圧して、第2コンデンサC2の両端電圧を生成する。本実施形態では、一例として、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42の各々は、デプレッション型のnチャネルMOSFETからなる。
第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42は、第1コンデンサC1の両端間において、電気的に直列接続されている。第1回生スイッチQ41のドレインは、第1クランプ回路31における第1ダイオードD1のカソード端子と第1コンデンサC1との接続点に電気的に接続されている。第2回生スイッチQ42のソースは、第1コンデンサの負極側の端子(第1電圧点P12)に電気的に接続されている。
インダクタL41は、第2コンデンサC2の両端間において、第2回生スイッチQ42と電気的に直列接続されている。言い換えれば、インダクタL41は、第1回生スイッチQ41のソース及び第2回生スイッチQ42のドレインの接続点と、起動スイッチング素子Q2のソース(第2ダイオードD2のアノード)及び第2コンデンサC2の接続点との間に、電気的に接続されている。
第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42は、制御回路6によって制御される。具体的には、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42は、制御回路6からの駆動信号S41,S42によって開閉する。
回生回路33は、動作モードとして通常モードと放電モードとを有している。通常モードとは、第1クランプ回路31の電気エネルギを第2クランプ回路32に回生する動作モードである。放電モードとは、第1クランプ回路31(第1コンデンサC1)と第2クランプ回路32(第2コンデンサ)とを放電する動作モードである。本実施形態では、回生回路33は、主回路2(電力変換回路2)の停止後に、第1クランプ回路31及び第2クランプ回路32を放電する放電モードで動作する。具体的には、回生回路33は、制御回路6からの駆動信号S41,S42により、電力変換回路2の停止後に、放電モードで動作する。言い換えれば、制御回路6は、主回路2(電力変換回路2)の停止後に、回生回路33を、第1クランプ回路31及び第2クランプ回路32を放電する放電モードで動作させる。
本実施形態では、回生回路33は、通常モードと放電モードとで同一の動作を行う。つまり、電力変換回路2の動作中に行うのが通常モードであり、電力変換回路2の停止後に行うのが放電モードである。回生回路33は、通常モード及び放電モードにおいて、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42が交互にオンする。これにより、通常モードでは、第1クランプ回路31の電気エネルギが第2クランプ回路32に回生(伝送)される。また、放電モードでは、インダクタL41の鉄損などにより、第1クランプ回路31及び第2クランプ回路32が放電される。
(2.4)制御回路
制御回路6は、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。つまり、制御回路6は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御回路6として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
制御回路6は、電力変換回路2、スナバ回路3、突入防止回路4、交流開閉部SW61、及び放電スイッチSW71を制御するように構成されている。
具体的には、制御回路6は、突入防止回路4に対しては、第1開閉部SW51及び第2開閉部SW52をそれぞれ駆動する駆動信号S51,S52を出力する。
また、制御回路6は、交流開閉部SW61に対して、交流開閉部SW61を駆動する駆動信号S61を出力する。
また、制御回路6は、放電スイッチSW71に対しては、放電スイッチSW71を駆動する駆動信号S71を出力する。
また、制御回路6は、電力変換回路2の第1変換部21に対しては、スイッチング素子Q11〜Q14をそれぞれ駆動する駆動信号S11〜S14(以下、駆動信号Sig10ともいう)を出力する。制御回路6は、電力変換回路2の第2変換部22に対しては、スイッチング素子Q21〜Q24をそれぞれ駆動する駆動信号S21〜S24(以下、駆動信号Sig20ともいう)を出力する。制御回路6は、電力変換回路2の第3変換部23に対しては、スイッチング素子Q31〜Q34をそれぞれ駆動する駆動信号S31〜S34(以下、駆動信号Sig30ともいう)を出力する。
また、制御回路6は、スナバ回路3の第2クランプ回路32に対しては、起動スイッチング素子Q2(起動スイッチ部SW2)を駆動する駆動信号S2を出力する。制御回路6は、スナバ回路3の回生回路33に対しては、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42をそれぞれ駆動する駆動信号S41,S42(以下、駆動信号Sig40ともいう)を出力する。
また、制御回路6には、駆動信号S2、及び駆動信号S41,S42の出力の可否を決定する回生イネーブル信号Sen1が入力される。回生イネーブル信号Sen1は、信号レベルがHigh/Lowのデジタル信号である。制御回路6は、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルに基づいて、駆動信号S2及び駆動信号Sig40を出力する。
制御回路6は、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがLowである場合、駆動信号S2を出力し、かつ、駆動信号Sig40を停止する。具体的には、制御回路6は、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがLowである場合、駆動信号S2の信号レベルをHighにして起動スイッチング素子Q2(起動スイッチ部SW2)をオン状態にする。また、制御回路6は、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがLowである場合、駆動信号Sig40を停止して、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42の両方をオフ状態にする。
また、制御回路6は、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがHighである場合、駆動信号S2を停止し、かつ、駆動信号Sig40を出力する。具体的には、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがHighである場合、駆動信号S2の信号レベルをLowにして起動スイッチング素子Q2(起動スイッチ部SW2)をオフ状態にする。また、制御回路6は、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがHighである場合、駆動信号Sig40を出力して、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42を交互にオンする。
(3)動作例
(3.1)電力変換回路の動作
以下に、電力変換回路2の動作について、図1を参照して説明する。
本実施形態の電力変換回路2は、一対の第1端子H11,H12と一対の第2端子H21,H22との間で、トランス24を介して双方向の電力変換を行うように構成されている。そのため、電力変換回路2は、「インバータモード」と「コンバータモード」との2つの動作モードを有している。インバータモードは、一対の第1端子H11,H12に入力される直流電力を交流電力に変換して一対の第2端子H21,H22から出力する動作モードである。コンバータモードは、一対の第2端子H21,H22に入力される交流電力を直流電力に変換して一対の第1端子H11,H12から出力する動作モードである。
まず、インバータモードでの電力変換回路2の動作について説明する。
制御回路6は、スイッチング素子Q11,Q14,Q21,Q24の組み合わせと、スイッチング素子Q12,Q13,Q22,Q23の組み合わせとが、交互にオンするように、駆動信号S11〜S14,S21〜S24を出力する。ここで、スイッチング素子Q11,Q14,Q21,Q24(又はスイッチング素子Q12,Q13,Q22,Q23)のデューティ比は50%である。
これにより、コンデンサC11の両端電圧Vc11を昇圧した電圧(バス電圧Vbus)が、一対の第3端子H31,H32間に生成される。
一対の第3端子H31,H32間の電圧が固定されている期間において、制御回路6は、第3変換部23のスイッチング素子Q31〜Q34をPWM制御(PWM:Pulse Width Modulation)することにより、第3変換部23の出力電圧を制御する。具体的には、スイッチング素子Q31,Q34(又はスイッチング素子Q32,Q33)がオンする供給期間には、トランス24の二次巻線L12から第2変換部22及び第3変換部23を通して一対の第2端子H21,H22に電流が供給される。
一方、スイッチング素子Q31,Q33(又はスイッチング素子Q32,Q34)がオンする循環期間には、還流経路として第3変換部23を通してインダクタL21,L22から電流が流れる。
制御回路6は、供給期間と循環期間との比率を変えることにより、第3変換部23の出力電圧を制御する。トランス24の二次巻線L12における反転動作は、循環期間において行われる。
以上説明したような動作を繰り返すことにより、電力変換回路2は、蓄電池E1からの直流電力を交流電力に変換して、一対の第2端子H21,H22から電力系統E2に出力する。
また、電力変換回路2は、コンバータモードにおいても、基本的には上記インバータモードと同様のシーケンスにより、第1変換部21、第2変換部22、及び第3変換部23を動作させる。すなわち、電力変換回路2において、第3変換部23の出力電圧が電力系統E2の電圧を下回っていれば、電力系統E2からの交流電力は直流電力に変換され、一対の第1端子H11,H12から蓄電池E1に出力される。
(3.2)スナバ回路の動作
次に、スナバ回路3の動作について、図1〜図3Bを参照して説明する。
上述した電力変換回路2の動作に伴って、一対の第3端子H31,H32間に発生する直流のバス電圧Vbusに、リンギングが生じることがある。すなわち、第3変換部23は、トランス24を介して直流電源である蓄電池E1に接続されているため、第3変換部23は、トランス24の漏れインダクタンスを介して直流電源(蓄電池E1)に電気的に接続されているとみなすことができる。そのため、第3変換部23のスイッチング素子Q31〜Q34のスイッチング動作時に、バス電圧Vbusにリンギングが生じる可能性がある。
図2は、図1に示すスナバ回路3を、回路図上での配置を変更した記載であり、図2に示すスナバ回路3と図1に示すスナバ回路3とは等価である。
図3Aでは、横軸を時間軸として、バス電圧Vbusを示している。図3Bでは、横軸を時間軸とし、上段のグラフがバス電圧Vbusを示し、下段のグラフが電流Id1,Id2(図2参照)を示している。電流Id1は、スナバ回路3の第1ダイオードD1を流れる電流を表し、電流Id2は、スナバ回路3における起動スイッチング素子Q2の寄生ダイオードである第2ダイオードD2を流れる電流を表している。また、図3Bにおいては、クランプされる前のバス電圧Vbusを破線で示している。
まず、スナバ回路3が無い状態では、図3Aに示すように、一対のバス電圧点P1,P2に発生する直流のバス電圧Vbusには、正のリンギング及び負のリンギングが生じることがある。ここでいう「正のリンギング」とは、バス電圧Vbusの平均値v0に対して、電圧が増加する向き(正の向き)のリンギング(図3Aでは「vr1」まで増加している)を意味する。「負のリンギング」とは、バス電圧Vbusの平均値v0に対して、電圧が低下する向き(負の向き)のリンギング(図3Aでは「vr2」まで低下している)を意味する。
スナバ回路3は、バス電圧Vbusに正のリンギングが生じた場合、第1クランプ回路31にて、電力変換回路2の電気エネルギを吸収することにより、図3Bに示すように、バス電圧Vbusを第1クランプ値v1にクランプする。すなわち、バス電圧Vbusに正のリンギングが生じた結果、バス電圧Vbusの大きさが第1クランプ値v1を超えることになれば、第1ダイオードD1がオンして第1クランプ回路31が作動する。このとき、図3Bに示すように、第1クランプ回路31での電気エネルギの吸収に伴って、第1ダイオードD1にパルス状の電流Id1が流れる。したがって、スナバ回路3は、バス電圧Vbusの大きさが第1クランプ値v1を超えると、電力変換回路2から第1クランプ値v1を超える分の電気エネルギを引き抜いて、この電気エネルギを第1コンデンサC1に蓄積することができる。よって、バス電圧Vbusに正のリンギングが生じても、バス電圧Vbusの最大値は第1クランプ値v1に抑制される。
更に、スナバ回路3は、第1クランプ回路31と第2クランプ回路32との間に電気的に接続された回生回路33にて、第1クランプ電圧Vc1と第2クランプ電圧Vc2との間で電圧変換を行う。回生回路33は、制御回路6からの駆動信号S41,S42により、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42が交互にオンし、第1クランプ電圧Vc1を降圧して第2クランプ電圧Vc2を生成する。第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42の駆動周波数は、例えば100kHzである。そのため、第2クランプ電圧Vc2としての第2コンデンサC2の両端電圧の値(第2クランプ値v2)は、第1クランプ電圧Vc1としての第1コンデンサC1の両端電圧の値(第1クランプ値v1)よりも低くなる。要するに、第1クランプ回路31が作動して第1コンデンサC1に電気エネルギが蓄積されると、この電気エネルギの少なくとも一部が、回生回路33を介して第2クランプ回路32の第2コンデンサC2へと送られ、第2コンデンサC2に蓄積される。
また、スナバ回路3は、バス電圧Vbusに負のリンギングが生じた場合、第2クランプ回路32にて、電力変換回路2に電気エネルギを注入することにより、図3Bに示すように、バス電圧Vbusを第2クランプ値v2にクランプする。すなわち、バス電圧Vbusに負のリンギングが生じた結果、バス電圧Vbusの大きさが第2クランプ値v2を下回ることになれば、起動スイッチング素子Q2の寄生ダイオードである第2ダイオードD2がオンして第2クランプ回路32が作動する。このとき、図3Bに示すように、第2クランプ回路32での電気エネルギの注入に伴って、第2ダイオードD2にパルス状の電流Id2が流れる。したがって、スナバ回路3は、バス電圧Vbusの大きさが第2クランプ値v2を下回ると、第2クランプ値v2を下回る分の電気エネルギを、第2コンデンサC2から電力変換回路2に回生することができる。よって、バス電圧Vbusに負のリンギングが生じても、バス電圧Vbusの最小値は第2クランプ値v2に抑制される。
ここにおいて、第2コンデンサC2に蓄積されている電気エネルギは、上述したように回生回路33を介して第1コンデンサC1から送られた電気エネルギである。すなわち、スナバ回路3は、バス電圧Vbusに正のリンギングが生じた際に第1クランプ回路31が電力変換回路2から吸収した電気エネルギを、バス電圧Vbusに負のリンギングが生じた際に第2クランプ回路32から電力変換回路2に回生している。更に言い換えれば、スナバ回路3では、正のリンギングが生じた際に吸収した電気エネルギを、一旦蓄え、負のリンギングが生じた際に回生している。このようにして、バス電圧Vbusに生じた正のリンギングの電気エネルギと、負のリンギングの電気エネルギとが互いに相殺し合うことにより、バス電圧Vbusの正及び負の両方のリンギングが抑制される。
また、スナバ回路3において、第1回生スイッチQ41を制御するための駆動信号S41のデューティ比を調節することによって、第1クランプ値v1及び第2クランプ値v2を調節することが可能である。すなわち、駆動信号S41のデューティ比が変化すれば、回生回路33における降圧比が変化するので、これに伴って、第1クランプ値v1及び第2クランプ値v2も変化する。
具体的には、駆動信号S41のデューティ比が大きくなる、つまり第1回生スイッチQ41のスイッチング周期における第1回生スイッチQ41がオンの期間が占める割合が大きくなるほど、第1クランプ値v1は小さくなり、第2クランプ値v2は大きくなる。そして、駆動信号S41のデューティ比が最大値「1」に近づくほど、第1クランプ値v1及び第2クランプ値v2は、バス電圧Vbusの平均値v0に近くなる。ただし、第1クランプ値v1はバス電圧Vbusの平均値v0を下回らず、第2クランプ値v2はバス電圧Vbusの平均値v0を上回らない。また、駆動信号S41のデューティ比が大きくなるほど、スナバ回路3によって電力変換回路2に回生される電力(回生電力)は大きくなる。言い換えれば、駆動信号S41のデューティ比が小さくなる、つまり第1回生スイッチQ41のスイッチング周期における第1回生スイッチQ41がオンの期間が占める割合が小さくなるほど、第1クランプ値v1は大きくなり、第2クランプ値v2は小さくなる。また、駆動信号S41のデューティ比が小さくなるほど、回生電力は小さくなる。
(3.3)起動シーケンス
次に、電力変換システム1の起動シーケンスについて、図4を参照して説明する。
図4では、横軸を時間軸として、最上段から順に、電圧Vc11、電圧Vc1,Vc2、駆動信号S52、駆動信号S51、駆動信号Sig10,Sig20、回生イネーブル信号Sen1、駆動信号Sig30を示している。図4において、電圧Vc11は、電力変換回路2におけるコンデンサC11の両端電圧である。電圧Vc1は、スナバ回路3における第1クランプ回路31の第1コンデンサC1の両端電圧であり、電圧Vc2は、スナバ回路3における第2クランプ回路32の第2コンデンサC2の両端電圧である。駆動信号S52は、突入防止回路4における第2開閉部SW52の駆動信号である。駆動信号S51は、突入防止回路4における第1開閉部SW51の駆動信号である。駆動信号Sig10は、電力変換回路2における第1変換部21のスイッチング素子Q11〜Q14の駆動信号であり、駆動信号Sig20は、電力変換回路2における第2変換部22のスイッチング素子Q21〜Q24の駆動信号である。回生イネーブル信号Sen1は、スナバ回路3における起動スイッチング素子Q2の駆動信号S2と、第1回生スイッチQ41、及び第2回生スイッチQ42の駆動信号S41,S42との出力の可否を決定する信号である。駆動信号Sig30は、電力変換回路2における第3変換部23のスイッチング素子Q31〜Q34の駆動信号である。
初期状態において、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24,Q31〜Q34、起動スイッチング素子Q2(起動回路34)、第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42、第1開閉部SW51、及び第2開閉部SW52は、全てオフ状態である。
時刻t0において、制御回路6に起動指令信号が入力される。
制御回路6は、起動指令信号が入力されると、まず駆動信号Sig10,Sig20の出力を開始し、第1変換部21及び第2変換部22の動作を開始させる(時刻t1)。具体的には、制御回路6は、スイッチング素子Q11,Q14,Q21,Q24の組み合わせと、スイッチング素子Q12,Q13,Q22,Q23の組み合わせとが、交互にオンするように、駆動信号S11〜S14,S21〜S24を出力する。このとき、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24の駆動周波数f1(以下、第1周波数f1ともいう)は、例えば40kHzである。
また、時刻t1において、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがLowである。したがって、制御回路6は、起動スイッチング素子Q2(起動スイッチ部SW2)をオン状態にする。つまり、起動回路34がオンする。このとき、回生回路33(第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42)は、オフ状態のままである、つまり起動前である。
時刻t2において、制御回路6は、第2開閉部SW52に駆動信号S52を出力し、第2開閉部SW52をオン状態にする。第2開閉部SW52がオンすることによって、第2開閉部SW52を介してコンデンサC11が充電され始める。ここで、第2開閉部SW52には、抵抗R51が直列接続されている。したがって、コンデンサC11は、抵抗R51とコンデンサC11との時定数で充電される。
また、時刻t2において、スイッチング素子Q11〜Q14、Q21〜Q24が駆動している。したがって、一対の第3端子H31,H32間に、コンデンサC11の両端電圧Vc11を昇圧した直流電圧が生成される。一対の第3端子H31,H32間の直流電圧により、第1ダイオードD1を介して第1コンデンサC1が充電され始める。また、起動スイッチング素子Q2(起動回路34)がオン状態である。つまり、第2クランプ回路32(第2コンデンサC2)を充電する充電経路が形成されている。したがって、一対の第3端子H31,H32間の直流電圧により、起動スイッチング素子Q2(起動回路34)を介して第2コンデンサC2が充電され始める。厳密には、第1コンデンサC1の両端電圧Vc1は、第2コンデンサC2の両端電圧Vc2に比べて第1ダイオードD1の順方向降下電圧だけ低くなる。ただし、第1ダイオードD1の順方向降下電圧は、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2に比べて十分に小さい。そのため、図4では、第1ダイオードD1の順方向降下電圧をゼロとみなし、第1コンデンサC1の両端電圧Vc1と第2コンデンサC2の両端電圧Vc2とが同じとして記載している。
なお、第2開閉部SW52がオンするタイミングは、駆動信号Sig10,Sig20の出力と同じタイミングであってもよい。
時刻t2から期間T1(例えば310ms)後の時刻t3において、コンデンサC11の両端電圧Vc11と所定の閾値Vthとの比較が行われる。制御回路6は、コンデンサC11の両端電圧Vc11が閾値Vth以上である場合、駆動信号Sig10,Sig20の出力を継続する。制御回路6は、コンデンサC11の両端電圧Vc11が閾値Vth未満である場合、第2開閉部SW52をオフし、電力変換システム1の起動を中止する。ここでは、コンデンサC11の両端電圧Vc11が閾値Vth以上であるとして説明する。
そして、時刻t4のときに、コンデンサC11の両端電圧Vc11は、電圧Va1まで充電され、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2は、電圧Va2まで充電される。ここで、コンデンサC11の両端電圧Vc11は、抵抗R51の電圧降下及びトランス24の鉄損によって、蓄電池E1の出力電圧Vbatよりも低い電圧Va1までしか充電されない。また、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2は、トランス24の鉄損によって、バス電圧Vbusの定格電圧Vx1よりも低い電圧Va2までしか充電されない。
時刻t2から期間T2(例えば3ms)後の時刻t5において、コンデンサC11の両端電圧Vc11が電圧Vbatとなるように、駆動信号Sig10,Sig20を停止する。これにより、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24が停止し、コンデンサC11の両端電圧Vc11が電圧Vbatに近付くように徐々に増加する。一方、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2は、自然放電によって徐々に減少する。
時刻t2から期間T3(例えば5ms)後の時刻t6において、制御回路6は、第1開閉部SW51をオン状態にするために、駆動信号S51を出力する。第1開閉部SW51は、メカニカルスイッチであるため、時刻t6から期間T4(例えば、27ms〜50ms)後の時刻t7においてオン状態となる。第1開閉部SW51がオン状態になることによって、抵抗R51を介さずにコンデンサC11が充電されるので、コンデンサC11の両端電圧Vc11が電圧Vbatまで増加する。一方、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2は、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24が停止しているため、自然放電によって更に減少する。なお、期間T3では、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24が停止しており、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が自然放電するため、期間T3は短期間であることが好ましい。
時刻t6から期間T5(例えば60ms)後の時刻t8において、制御回路6は、駆動信号Sig10,Sig20の出力を再開する。これにより、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24の駆動が再開する。このとき、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24の駆動周波数f2(以下、第2周波数f2ともいう)は、例えば20kHzである。
スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24の駆動が再開することによって、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2が、バス電圧Vbusの定格電圧Vx1まで増加する。
また、時刻t8において、制御回路6は、第2開閉部SW52への駆動信号S52の出力を停止する。これにより、第2開閉部SW52がオフ状態になる。
時刻t8から期間T6(例えば50μs)後の時刻t9において、回生イネーブル信号Sen1の信号レベルがHighとなり、制御回路6は、起動スイッチング素子Q2(起動回路34)をオフ状態にする。また、制御回路6は、回生回路33を起動させる。具体的には、制御回路6は、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42を交互にオンする。つまり、起動回路34がオフし、回生回路33が起動して、バス電圧Vbusのリンギングの抑制が可能な状態となる。
時刻t9から期間T7(例えば14.95ms)後の時刻t10において、制御回路6は、駆動信号Sig30の出力を開始し、第3変換部23の動作を開始させる。このとき、スイッチング素子Q31〜Q34の駆動周波数f3は、例えば20kHzである。
本実施形態では、上述のように、電力変換システム1が起動する際に、突入防止回路4を高インピーダンス状態にして、第1変換部21及び第2変換部22を動作させている。このとき、スナバ回路3における第2クランプ回路32の起動スイッチング素子Q2(起動回路34)がオン状態である。これにより、起動スイッチング素子Q2を介して第2コンデンサC2を充電することができる。したがって、コンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2それぞれを充電することができる。また、第2コンデンサC2は、起動スイッチング素子Q2を介して充電される。例えば、比較例のスナバ回路として、第1回生スイッチ及びインダクタの直列回路と並列に抵抗を接続し、この抵抗を介して第2コンデンサを充電する構成がある。本実施形態のスナバ回路3では、比較例のスナバ回路と比較して、電力損失が抑制される。
そして、第1変換部21及び第2変換部22の動作を開始させた後、突入防止回路4を高インピーダンス状態から低インピーダンス状態に切り替えている。そのため、突入防止回路4を高インピーダンス状態から低インピーダンス状態に切り替えた後、第1変換部21及び第2変換部22の動作を開始させる場合と比較して、コンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2への突入電流が低減される。これにより、コンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2それぞれの充電経路に含まれる素子に過電流が流れることが抑制される。
また、起動スイッチング素子Q2(起動回路34)は、電力変換システム1の起動時のみ、つまり回生回路33の起動前のみオン状態となり、第2クランプ回路32(第2コンデンサC2)の充電経路を形成する。そして、起動スイッチング素子Q2(起動回路34)は、電力変換システム1の通常動作時はオフ状態となり、寄生ダイオードである第2ダイオードが、第2コンデンサC2から電力変換回路2に回生される電流の経路を形成する。また、電力変換システム1の起動時に回生回路33が駆動している場合、回生回路33の鉄損などにより、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が十分に充電されない。したがって、電力変換システム1の起動時は、回生回路33の第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42がオフ状態であることが好ましい。電力変換システム1の通常動作時は、バス電圧Vbusのリンギングを抑制するために、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42が動作する必要がある。
つまり、起動回路34(起動スイッチング素子Q2)と回生回路33とは、排他関係にあり、起動回路34(起動スイッチング素子Q2)がオン状態である場合、回生回路33が停止する。起動回路34(起動スイッチング素子Q2)がオフ状態である場合、回生回路33が動作する。したがって、1つの制御信号(回生イネーブル信号Sen1)のみで、起動回路34(起動スイッチング素子Q2)と回生回路33との両方の動作のオン/オフを制御することができ、制御の簡略化を図ることができる。本実施形態では、起動回路34(起動スイッチング素子Q2)は、回生回路33の起動前において、所定時間が経過するまでオンしている。所定時間は、少なくとも図3の期間T1を含む。これにより、第2クランプ回路32(第2コンデンサC2)を十分に充電することができる。
また、本実施形態では、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24の駆動周波数は、突入防止回路4が高インピーダンス状態(図3の期間T2)での第1周波数f1が、突入防止回路4が低インピーダンス状態(通常動作時)の第2周波数f2よりも高い。そのため、第1周波数f1が第2周波数f2以下である場合と比較して、トランス24の鉄損を低減することができる。
また、本実施形態では、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24の駆動周波数を第1周波数f1から第2周波数f2に切り替える前に、第1変換部21及び第2変換部22を停止させている。そのため、第1変換部21及び第2変換部22を停止させない場合と比較して鉄損の影響を低減することができる。
また、本実施形態では、第1変換部21及び第2変換部22の動作を開始した後、所定期間(時刻t1から時刻t6までの期間)が経過した場合に、突入防止回路4を低インピーダンス状態に切り替えている。そのため、所定期間が経過する前に突入防止回路4を低インピーダンス状態に切り替える場合と比較して、コンデンサC11、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2への突入電流を低減することができる。
また、本実施形態では、突入防止回路4を遮断状態から高インピーダンス状態に切り替える切替タイミングで、第1変換部21及び第2変換部22の動作を開始させている。そのため、上記切替タイミングよりも後に第1変換部21及び第2変換部22の動作を開始する場合と比較して、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2への突入電流を低減することができる。
(3.4)停止シーケンス
次に、電力変換システム1の停止シーケンスについて、図5を参照して説明する。
図5では、横軸を時間軸として、最上段から順に、電圧Vac、駆動信号Sig30、駆動信号S51,S61、駆動信号Sig10,Sig20、駆動信号S71、駆動信号S41,S42、電圧Vc11、電圧Vc1,Vc2、電流Itを示している。図5において、電圧Vacは、電力系統E2から入力、又は電力系統E2に出力する交流電圧である。駆動信号Sig30は、電力変換回路2における第3変換部23のスイッチング素子Q31〜Q34の駆動信号である。駆動信号S51は、突入防止回路4における第1開閉部SW51の駆動信号であり、駆動信号S61は、交流開閉部SW61の駆動信号である。駆動信号Sig10は、電力変換回路2における第1変換部21のスイッチング素子Q11〜Q14の駆動信号であり、駆動信号Sig20は、電力変換回路2における第2変換部22のスイッチング素子Q21〜Q24の駆動信号である。駆動信号S71は、放電回路5における放電スイッチSW71の駆動信号である。駆動信号S41は、スナバ回路3における回生回路33の第1回生スイッチQ41の駆動信号であり、駆動信号S42は、スナバ回路3における回生回路33の第2回生スイッチQ42の駆動信号である。電圧Vc11は、電力変換回路2におけるコンデンサC11の両端電圧である。電圧Vc1は、スナバ回路3における第1クランプ回路31の第1コンデンサC1の両端電圧であり、電圧Vc2は、スナバ回路3における第2クランプ回路32の第2コンデンサC2の両端電圧である。電流Itは、トランス24の一次巻線L11(又は二次巻線L12)に流れる電流である。
なお、停止シーケンスの開始直前の状態において、第1開閉部SW51、及び交流開閉部SW61がオン状態であり、電力変換回路2及びスナバ回路3が動作している。また、第2開閉部SW52、及び放電スイッチSW71がオフ状態である。
時刻t20において、制御回路6に停止指令信号が入力される。
制御回路6は、停止指令信号が入力されると、駆動信号Sig30,S51,S61を停止する(時刻t21)。これにより、第3変換部23が停止されスイッチング素子Q31〜Q34がオフ状態となる。また、第1開閉部SW51、及び交流開閉部SW61がオフ状態となり、電力変換システム1と蓄電池E1及び電力系統E2との間の電力供給経路が遮断される。
時刻t21から期間T21(例えば40ms)後の時刻t22において、制御回路6は、駆動信号Sig10,Sig20を停止し、かつ、駆動信号S71を出力する。これにより、第1変換部21及び第2変換部22が停止し、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24がオフ状態となる。つまり、電力変換回路2が停止する。また、放電スイッチSW71がオン状態となり、コンデンサC11の両端間が抵抗R71を介して導通する。これにより、コンデンサC11は、抵抗R71とコンデンサC11の時定数で放電され、コンデンサC11の両端電圧Vc11が徐々に減少する。
ここで、回生回路33は、電力変換回路2(第1変換部21、第2変換部22、第3変換部23)の停止後、継続的に動作している。つまり、回生回路33は、電力変換回路2の停止後、放電モードとして第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42が駆動する。これにより、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が放電され、電圧Vc1,Vc2が減少する。
本実施形態では、時刻t22から期間T22(例えば350ms)後の時刻t23に、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電が完了している。ここでいう「放電が完了」とは、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2の電圧値がゼロである場合に限らず、所定電圧値以下、又は定格値の所定%以下である場合も含む。
時刻t22から期間T23(例えば500ms)後の時刻t24において、制御回路6は、駆動信号S41,S42を停止し、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42をオフ状態にする。つまり、スナバ回路3(回生回路33)が停止される。期間T23は、第1変換部21及び第2変換部22が停止してから(時刻t22から)、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電が完了すると推定される時間よりも長い時間に設定されている。
本実施形態では、時刻t21から期間T24(例えば5s)後の時刻t25に、コンデンサC11の放電が完了している。ここでいう「放電が完了」とは、コンデンサC11の両端電圧Vc11の電圧値がゼロである場合に限らず、所定電圧値以下、又は定格値の所定%以下である場合も含む。
本実施形態では、上述のように、電力変換システム1が停止する際に、電力変換回路2(第1変換部21、第2変換部22、及び第3変換部23)の停止後も、回生回路33は、放電モードで動作を継続している。つまり、電力変換システム1の停止後において、回生回路33の第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42が交互にオンしている。これにより、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が放電され、電圧Vc1,Vc2が減少する。このとき、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電経路には、回生回路33のインダクタL41が含まれている。したがって、インダクタL41の鉄損により、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電時間の短縮を図ることができる。第1変換部21及び第2変換部22と同じタイミング(時刻t22)で回生回路33を停止した場合と比較して、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電が完了するまでの時間が短くなる。図5では、電力変換回路2(第1変換部21及び第2変換部22)と同じタイミングで回生回路33を停止する場合における、駆動信号S41,S42と、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2と、を破線で示している。電力変換回路2(第1変換部21及び第2変換部22)と同じタイミングで回生回路33を停止した場合、電力変換回路2(第1変換部21及び第2変換部22)の停止から第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電が完了するまで16s要する。一方、本実施形態では、電力変換回路2の停止後も回生回路33の動作が継続しており、電力変換回路2の停止から第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電が完了するまでの時間(期間T22)が350msである。
(4)変形例
上記実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、上記実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。
(4.1)第1変形例
スナバ回路3の第1変形例について、図6を参照して説明する。
上述した実施形態では、起動スイッチング素子Q2が第1クランプ回路31と起動回路34とを兼用していた。本変形例のスナバ回路3では、第1回生スイッチQ41が起動回路34Aと回生回路33とを兼用している。また、本変形例のスナバ回路3では、起動スイッチング素子Q2の代わりに第2ダイオードD2Aが設けられている。第2ダイオードD2Aは、カソード端子が高電位側の第2電圧点P21に電気的に接続され、アノード端子が第2コンデンサC2を介して低電位側の第2電圧点P22に電気的に接続されている。バス電圧Vbusに負のリンギングが生じた結果、バス電圧Vbusの大きさが第2クランプ値v2を下回ることになれば、第2ダイオードD2Aがオンして第2クランプ回路32が作動する。このとき、第2クランプ回路32での電気エネルギの注入に伴って、第2ダイオードD2Aにパルス状の電流Id2が流れる(図3参照)。したがって、スナバ回路3は、バス電圧Vbusの大きさが第2クランプ値v2を下回ると、第2クランプ値v2を下回る分の電気エネルギを、第2コンデンサC2から電力変換回路2に回生することができる。よって、バス電圧Vbusに負のリンギングが生じても、バス電圧Vbusの最小値は第2クランプ値v2に抑制される。
本変形例では、制御回路6は、第1回生スイッチQ41及び第2回生スイッチQ42を個別に制御可能である。制御回路6は、電力変換システム1が起動する際に、突入防止回路4を高インピーダンス状態にして、第1変換部21及び第2変換部22を動作させる(図3の時刻t1から時刻t5)。このとき、制御回路6は、起動回路34A(第1回生スイッチQ41)をオン状態にする。これにより、高電位側の第1電圧点P11から、第1ダイオードD1、第1回生スイッチQ41、及びインダクタL41を介して第2コンデンサC2を充電することができる。したがって、電力変換システム1を起動する際に、コンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2をそれぞれ充電することができる。電力変換システム1の起動後において、制御回路6は、第1回生スイッチQ41と第2回生スイッチQ42とを交互にオンする。
(4.1)第2変形例
スナバ回路3の第2変形例について、図7を参照して説明する。
上述した実施形態では、起動スイッチング素子Q2(起動スイッチ部SW2)がオンすることによって、第2コンデンサC2の充電経路を形成していた。本変形例のスナバ回路3では、回生回路33の第1回生スイッチQ41及びインダクタL41の直列回路に対して抵抗R41が並列接続されている。また、本変形例のスナバ回路3では、起動スイッチング素子Q2の代わりに第2ダイオードD2Aが設けられている。第2ダイオードD2Aは、カソード端子が高電位側の第2電圧点P21に電気的に接続され、アノード端子が第2コンデンサC2を介して低電位側の第2電圧点P22に電気的に接続されている。
制御回路6は、電力変換システム1が起動する際に、突入防止回路4を高インピーダンス状態にして、第1変換部21及び第2変換部22を動作させる(図4の時刻t1から時刻t5)。これにより、一対の第3端子H31,H32間に、コンデンサC11の両端電圧Vc11を昇圧した直流電圧が生成される。一対の第3端子H31,H32間の直流電圧により、第1ダイオードD1を介して第1コンデンサC1が充電される。また、一対の第3端子H31,H32間の直流電圧により、第1ダイオードD1、及び抵抗R41を介して第2コンデンサC2が充電される。
(その他の変形例)
以下、その他の変形例を列挙する。
上述した実施形態では、電力変換システム1を起動する際に、第2開閉部SW52をオンしてから(図4の時刻t2)、所定時間(期間T2)経過後に、第1変換部21及び第2変換部22を停止していたが、これに限らない。所定時間(期間T2)は、コンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2のそれぞれが十分に充電されたと推定される時間よりも長い時間である。制御回路6は、コンデンサC11、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc11,Vc1,Vc2を監視し、所定値以上まで充電されると、第1変換部21及び第2変換部22を停止してもよい。
また、上述した実施形態では、電力変換システム1を停止する際に、電力変換回路2(第1変換部21、第2変換部22)を停止してから(図5の時刻t22)、所定時間(期間T23)経過後に、回生回路33を停止(時刻t24)していたが、これに限らない。所定時間(期間T23)は、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電が完了すると推定される時間よりも長い時間である。制御回路6は、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の両端電圧Vc1,Vc2を監視し、所定値以下まで放電されると、回生回路33(第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42)を停止してもよい。例えば、回生回路33は、第1クランプ回路31及び第2クランプ回路32の電圧Vc1,Vc2が少なくとも50%以下になるまで放電モードで動作するように構成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、電力変換システム1を停止する際に、電力変換回路2(第1変換部21及び第2変換部22)の停止後(図5の時刻t22)、継続的に回生回路33を動作させているが、これに限らない。制御回路6は、電力変換回路2の停止後、回生回路33も一時的に停止させてもよい。この場合、制御回路6は、回生回路33の一時停止中に、起動指令信号を受信し、電力変換システム1を再起動する場合、回生回路33の放電モードでの動作を中止する。これにより、電力変換システム1を短期間で再起動する場合に、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の放電量が少なく、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2に突入電流が流れることが抑制される。一方、制御回路6は、回生回路33を一時停止させてから、所定期間内に起動指令信号を受信しなかった場合、回生回路33を放電モードで動作させる。これにより、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2が放電される。
上述した実施形態では、電力変換回路2における第1変換部21は、フルブリッジ式のDC/AC変換回路であったが、センタータップ式のDC/AC変換回路で構成されていてもよい。また、第2変換部22は、フルブリッジ式のDC/AC変換回路であったが、センタータップ式のDC/AC変換回路で構成されていてもよい。また、第1変換部21と第2変換部22との両方が、センタータップ式のDC/AC変換回路で構成されていてもよい。
上述した実施形態では、電力変換回路2における第3変換部23は、単相のDC/AC変換回路であったが、三相のDC/AC変換回路で構成されていてもよい。
また、電力変換システム1は、双方向に電力の変換を行う構成に限らない。電力変換システム1は、一対の第1端子H11,H12から一対の第2端子H21,H22への一方向にのみ電力の変換を行う構成であってもよい。また、電力変換システム1は、一対の第2端子H21,H22から一対の第1端子H11,H12への一方向にのみ電力の変換を行う構成であってもよい。
電力変換システム1及び蓄電池E1を含む蓄電システムは、非住宅施設に限らず、例えば、住宅に導入されてもよいし、電気自動車等、施設以外に適用されてもよい。また、電力変換システム1は、電力系統E2と、蓄電池E1との間における電力変換に限らず、例えば、太陽光発電装置又は燃料電池等の発電設備と、電力系統E2又は負荷との間の電力変換に用いられてもよい。
(まとめ)
第1態様に係るスナバ回路(3)は、第1クランプ回路(31)と、第2クランプ回路(32)と、回生回路(33)と、を備える。第1クランプ回路(31)は、主回路(2)における一対の第1電圧点(P11,P12)から主回路(2)の電気エネルギを吸収することによって、一対の第1電圧点(P11,P12)間の電圧をクランプする。第2クランプ回路(32)は、主回路(2)における一対の第2電圧点(P21,P22)から主回路(2)に電気エネルギを注入することによって、一対の第2電圧点(P21,P22)間の電圧をクランプする。回生回路(33)は、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)に電気的に接続され、第1クランプ回路(31)の電気エネルギを第2クランプ回路(32)に回生する。回生回路(33)は、主回路(2)の停止後に、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)を放電する放電モードで動作する。
この態様によれば、主回路(2)の停止後に、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)を放電する時間を短縮することができる。
第2態様に係るスナバ回路(3)では、第1態様において、回生回路(33)は、主回路(2)の停止後、継続的に動作する。
この態様によれば、主回路(2)が停止してから、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)の放電が完了するまでの時間を短縮することができる。
第3態様に係るスナバ回路(3)では、第1又は第2態様において、回生回路(33)は、第1クランプ回路(31)の電気エネルギを第2クランプ回路(32)に回生する通常モードと、放電モードと、で同一の動作を行う。
この態様によれば、通常モードと放電モードとで回生回路(33)の動作が同一であるので、回生回路(33)の制御が容易になる。
第4態様に係るスナバ回路(3)では、第1〜第3態様のいずれかにおいて、第1クランプ回路(31)は、一対の第1電圧点(P11,P12)間に電気的に直列接続された第1ダイオード(D1)及び第1コンデンサ(C1)を有する。第2クランプ回路(32)は、一対の第2電圧点(P21,P22)間に電気的に直列接続された第2ダイオード(D2,D2A)及び第2コンデンサ(C2)を有する。
この態様によれば、ダイオード及びコンデンサを用いた比較的簡単な回路構成により、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)を実現することができる。
第5態様に係るスナバ回路(3)では、第1〜第4態様のいずれかにおいて、回生回路(33)は、スイッチング素子(第1回生スイッチQ41、第2回生スイッチQ42)を有するチョッパ回路である。
この態様によれば、第1クランプ回路(31)の電気エネルギを効率よく第2クランプ回路(32)に回生することができる。
第6態様に係るスナバ回路(3)では、第1〜第5態様のいずれかにおいて、回生回路(33)は、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)の電圧(Vc1,Vc2)が少なくとも50%以下になるまで放電モードで動作する。
この態様によれば、回生回路(33)は、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)が十分に放電されるまで動作し、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)を放電する時間を短縮することができる。
第7態様に係る電力変換システム(1)は、第1〜第6態様のいずれかのスナバ回路(3)と、主回路(2)と、を備える。主回路(2)は、電力の変換を行う電力変換回路(2)である。
この態様によれば、電力変換システム(1)において、電力変換回路(2)の停止後に、第1クランプ回路(31)及び第2クランプ回路(32)を放電する時間を短縮することができる。
第8態様に係る電力変換システム(1)では、第7態様において、電力変換回路(2)は、電力変換の一方側と他方側とを電気的に絶縁しており、他方側に容量成分を有していない。スナバ回路(3)は、電力変換回路(2)の他方側に接続されている。
この態様によれば、電力変換回路(2)の停止後に、電力変換回路(2)の二次側の放電時間を短縮することができる。