以下、本発明の工事船舶運航管理システムを、添付図面を参照して説明する。
図1〜図10は、本発明の実施例1を示し、工事船舶運航管理システムは、主局船1にAIS機器2を搭載し、この主局船1は、前記AIS機器2により、AIS機器3を搭載したAIS搭載対象船舶4からAIS情報を取得し、この対象船舶4のAIS情報に基づく船舶情報(船舶データ)と、AIS機器を搭載しないAIS非搭載対象船舶5の船舶情報と、主局船1の船舶情報(船舶データ)とをインターネット回線によりサーバ7に集める。
尚、AIS非搭載対象船舶5は、工事船舶と異なるプレジャーボート等の小型船舶や、サーバ7に船舶情報(船舶データ)を送らない他の工事船舶などが例示される。また、サーバ7は、工事船舶を管理する会社の陸上の事務所などに配置することができる。
そして、主局船1及び複数の従局船6が工事船舶であり、言い換えると、これら複数の工事船舶のなかでAIS機器2を搭載した船舶が主局船である。尚、主局船1は主局となる船であり、従局船6は従局となる船である。
前記AIS非搭載対象船舶5の船舶情報には、船体を特定する情報のほかに位置情報、速力情報、針路情報などの船舶情報が含まれている。
前記AIS搭載対象船舶4からのAIS情報には、船名情報のほかに位置情報、速力情報、針路情報などの船舶情報が含まれている。尚、工事船舶の船名情報は、サーバ7や工事船舶に搭載した後述するパソコンに記憶されている。
また、主局船1及び従局船6はGNSS受信器8を搭載し、このGNSS受信器8で得られた主局船1及び従局船6の船舶情報をインターネット回線を通じてサーバ7に送る。尚、この例では、GNSS受信器8はDGPS方式のものを用いており、海上保安庁が放送するDGPSの位置補正データを受信するためのビーコン受信機(図示せず)を備え、前記位置補正データにより位置データを補正している。
前記主局船1は、前記AIS機器2,前記GNSS受信器8,自動追尾式のレーダー装置11,カメラたるWebカメラ12,パソコン13及び表示モニタ14を備える。尚、主局船1のパソコン13にサーバ機能を有するものを用いることにより、サーバ7の替わりに主局船1のパソコン13をサーバとして用いてもよく、この場合、陸上のサーバ7が不要となる。
前記従局船6は、前記GNSS受信器8,パソコン16及び表示モニタ17を備える。また、前記主局船1としては、起重機船70が例示され、従局船6としては、引船,監視船及び交通船などが例示され、この例では、複数の従局船6の中で監視船にWebカメラ18を搭載している。そして、Webカメラ18は自船及び周囲の工事船舶を撮像してその画像を表示モニタ14,17の画面に表示する。
AIS非搭載対象船舶5の船舶情報たる位置情報等を得るため、主局船1は前記レーダー装置11を備え、このレーダー装置11によりAIS非搭載対象船舶5の船舶情報を取得する。前記レーダー装置11で、主局船1の自船位置を基準にして距離と方位が設定された後、緯度、経度の情報に変換され、船舶情報が得られる。尚、主局船1の位置などを含む主局船1の船舶情報(船舶データ)は、該主局船1に搭載したGNSS受信器8により得られる。
前記レーダー装置11には、レーダー装置11が生成したレーダー映像を利用して他の船舶等の物標との衝突を予防する自動衝突予防援助装置(以下、ARPA装置ともいう。)15を備える。
また、前記自動衝突予防援助装置15は、前記レーダー映像に基づいて、AIS非搭載対象船舶5を、追尾(捕捉)すべき目標として選択し、選択した目標を追尾すると共に、前記各表示モニタ14,17の画面上に前記レーダー映像と前記AIS非搭載対象船舶5の追尾状況とをそれぞれ表示させることも可能である。
前記サーバ7はインターネット回線を通じて、主局船1及び複数の従局船6とそれぞれ通信ネットワークが構築されている。前記各パソコン13,16は、インターネット回線と接続可能な情報端末であり、主局船1及び従局船6からの情報を送信する情報送信手段として機能する。主局船1に搭載したパソコン13は、主局船1に搭乗する作業員の操作によって作業開始および終了、その他の作業情報をインターネット回線を通じてサーバ7に送信する。
また、パソコン13,16の操作に関係なく、工事船舶のパソコン13,16は、船舶情報等をインターネット回線を通じてサーバ7に定期的に送信する。サーバ7では、それらの船舶情報を集約して定期的に主局船1のパソコン13にインターネット回線を通じて送信する。
このようにサーバ7では、受信した主局船1,AIS搭載船である対象船舶4,非AIS搭載船である対象船舶5及び従局船6の船舶情報を集約した集約情報を、主局船1に送信し、この集約情報を主局船1のパソコン13が処理し、集約情報を従局船6に定期的に送信する。
尚、サーバ7は、主局船1及び従局船6から発信される情報を、インターネット回線を通じて受信し、受信した情報をデータベースに登録する。このデータベースに登録された情報は、主局船1及び従局船6のパソコン13,16によりウェブブラウザを用いて閲覧することができる。
次に、前記主局船1のパソコン13の処理について説明する。前記パソコン13は、前記船舶情報に含まれるAIS搭載対象船舶4,AIS非搭載対象船舶5,パソコン13,16を搭載した主局船1及び従局船6の針路情報・位置情報・速力情報に基づいて、各表示モニタ14,17の画面に前記主局船1,対象船舶4,5及び従局船6の針路情報・位置情報・速度情報をベクトル21,24,25,26で表示する。
この場合、主局船1の表示モニタ14には、少なくとも自船である主局船1が表示され、従局船6の表示モニタ17には、少なくとも自船である従局船6が表示される。このようにパソコン13,16にはそれぞれ自船が中央側に表示される。尚、各パソコン13,16には、表示切替手段(図示せず)が設けられており、各パソコン13,16の表示モニタ14,17において、主局船1を中心とした主局船用表示と従局船6を中心とした従局船用表示とに選択して切り替えることもできる。尚、従局用表示においては、複数の従局船6の中から選択して切り替えることができる。
図1〜図7を用いてパソコン13の処理について説明する。図2の表示モニタ14,17は主局船1を選択して表示したものであり、表示モニタ14,17の中央側には、主局船1を表す船形のマーク31を表示している。尚、船形のマーク31は尖鋭な先端31Sを略進行方向側に向けて表示している。また、主局船1の現在の位置、方向及び速度から主局船1の針路を直線表示部たるベクトル21で表示し、このベクトル21の始点は前記現在の主局船1の中心位置である。前記ベクトル21には、複数の設定時間に対応した予想位置を示す予想位置表示部たる点表示部21Aが表示され、これら点表示部21Aの直径はベクトル21の線の太さより大きい。
また、表示モニタ14,17には、AIS情報及びレーダー装置11により取得した情報によりAIS搭載対象船舶4及びAIS非搭載対象船舶5を船形等のマーク34,35で表示し、同時にそれら対象船舶4,5及び従局船6の現在の位置、方向及び速度から対象船舶4,5及び従局船6の針路を直線表示部たるベクトル24,25,26で表示し、これらベクトル24,25,26の始点は前記現在の対象船舶4,5及び従局船6の位置である。
また、前記ベクトル24,25,26には、複数の設定時間に対応した予想位置を示す点表示部24A,25A,26Aが表示される。
前記ベクトル21,24,25,26の始点には、マーク31,34,35及び/又は船名が表示される。また、点表示部21A,24A,25A,26Aに対応して、設定時間を表示することができる。具体的には、図2に示すように、マーク31,34,35の近傍に、船名や船体を特定する事項を表示する船体特定情報表示部36が表示され、また、設定時間を示す設定時間表示部37が点表示部21A,24A,25A,26Aの近傍に表示される。尚、設定時間表示部37は、図2及び図3では、例えば「3分後」と表示したが、「3分」「3」などの設定時間が判る表示であれば適宜選定できる。
図2に示した例では、このままの針路と速度で航行した場合、主局船1と対象船舶4が3分後に行き会うことが一目で判り、速やかに回避行動を取ることができる。このように自船と他船の位置、方向及び設定時間経過後の予想位置を表示モニタ14,17に表示することにより、昼夜を問わずに衝突回避行動や航路への侵入・横断判断を早期に行うことができ、工事用船舶を用いた施工性が向上する。また、対象船舶4が大型船の場合、接近するだけで衝撃波の影響を受けるため、接近が想定される場合、その接近を回避することができる。
また、船の種類に対応して、マーク31,34,35を設定することができ、図10に示すように、それぞれを模してポンプ浚渫船,グラブ浚渫,土運船,アンカー船,監視船,交通船,砂撒船などが例示され、また、任意に設定することもできる。このように既知の工事船舶を、該工事船舶を表す図形のマークで表示することにより、工事船舶の種類を容易に判断することができる。
図5は、表示モニタ14,17の表示を切り替え、表示モニタ14,17に設定時間設定表示部41を表示した画面を示している。この設定時間設定表示部41には、複数の時間切換部42,42A,42Bが並設され、この例では3つの時間切換部42,42A,42Bが設けられ、各時間切換部42,42A,42Bの数値を切り替えることができる。この切り替えは上下の三角の時間切換部43,43をクリックすることにより数値が増減し、この例では1分単位で切り替えることができる。また、複数の切換部42,42A,42Bのいずれかを使用しない場合は、時間切換部42に対応する「使用する」の隣りの使用選択切換部44のチェックボックスをオン・オフ切換することにより、対応する時間切換部42,42A,42Bを使用する場合と使用しない場合とに切換えることができる。尚、チェックボックスはオフの状態で空欄となる。
全ての使用選択切換部44を使用するにした状態で、時間切換部43により設定時間を選択し、この例では、左側から「1分」「3分」「5分」を選択することにより、「1分後」「3分後」「5分後」に対応した予想位置を示す前記点表示部21A,24A,25Aがベクトル21,24,25と共に表示される。ここで例えば中央の時間切換部42Aを使用選択切換部44により使用しないにすると、「1分後」「5分後」の設定時間に対応した予想位置を示す予想位置表示部たる点表示部21A,24A,25Aが表示される。
さらに、表示モニタ14,17の画面には、警戒区域51が表示される。この警戒区域51は工事場所を囲んで表示するものであり、例えば、水中構造物であるケーソン67などの据付位置である工事現場を囲んでいる。尚、工事船舶運航管理システムにおいて、ケーソン67は、工事船舶の従局船6と略同様に管理される。
前記警戒区域51は、複数の区域直線部52,52A,52B・・・と隣り合う直線52,52A,52B・・・を連結する区域角部53,53A,53B・・・を有する多角形形状をなす。
図6は、表示モニタ14,17の表示を切り替え、警戒区域設定表示部55を表示した画面を示している。この警戒区域設定表示部55には、その左側に複数の警戒区域51を選択可能な選択部56が設けられ、その中央上部に現在選択している警戒区域51の名称を表示する名称表示部57が設けられ、この名称表示部57の下に、前記区域角部53の数を設定する区域角部数設定部58が設けられ、その中央にデータ入力部59が設けられ、その左側に凡例表示部60が設けられている。
前記データ入力部59の左側には数字表示部59Aが設けられ、この数字表示部59Aには、前記区域角部53,53A,53B・・・に対応して、整数が1から下に向かって増加するように並んで配置され、その数字表示部59Aに対応してその右側にX座標入力部59BとY座標入力部59Cが配置されている。
警戒区域51の設定方法について、図4などに示す警戒区域51を例にして説明すると、五角形の警戒区域51を設定するには、区域角部数設定部58の上下の三角の数切換部58A,58Aをクリックすることにより数値が上下し、この例では区域角部53の数を多角形形状の角数に合わせて5個に切り替え、凡例表示部60に示されているように、1〜5の数値表示部59AのX座標入力部59BとY座標入力部59Cに座標の数値を入力するにより、表示モニタ14,17に警戒区域51の枠が表示される。尚、図3と図6とは座標の数値が実際のものとは異なる。
この場合、1〜5の数値表示部59Aの座標の数値に対応した位置に、前記区域角部53,53A,53B,53C,53Dが表示され、隣り合う前記区域角部53,53A,53B,53C,53Dを区域直線部52,52A,52B,52C,52Dが繋ぐ。尚、数値表示部58Aの最小と最大に対応する区域角部53,53Dを、区域直線部52Dにより繋いで警戒区域51が閉じられる。
また、警戒区域設定表示部55において、更新ボタン61を押すことにより座標の数値を更新することができ、警戒区域51を追加して座標を入力後、追加ボタン61Aを押すことにより選択部56における警戒区域51を追加することができ、また、選択部56において削除したい警戒区域51を選択した状態で、削除ボタン61Bを押すことにより、登録された警戒区域51を選択して削除することができる。
さらに、表示モニタ14,17の画面には、航路区域62が表示される。この航路区域62は水中構造物の航海可能な航路を囲んで表示するものであり、例えば、水中構造物であるケーソン67などの航行に適した範囲を表示する。尚、適した範囲とは、水上に浮かべて曳航するケーソン67が海底に接触する虞のある浅瀬68などを避けるため、所定の水深を有する範囲や堤防などの構造物に近付かない範囲である。尚、図9の平面図では理解を容易にするため、対応する位置に航路区域62を想像線で図示している。
また、前記航路区域62は、前記警戒区域51と同様に、複数の区域直線部52,52A,52B・・・と隣り合う直線52,52A,52B・・・を連結する区域角部53,53A,53B・・・を有する多角形形状をなす。
また、図7は、表示モニタ14,17の表示を切り替え、航路区域設定表示部63を表示した画面を示している。この航路区域設定表示部63には、その左側に複数の航路区域62を選択可能な選択部56が設けられ、その中央上部に現在選択している航路区域62の名称を表示する名称表示部57が設けられ、その中央にデータ入力部59が設けられ、その左側に凡例表示部60が設けられている。そして、航路区域設定表示部63は、警戒区域設定表示部55と同様にして航路区域62を設定することができる。
また、AIS機器3を搭載した対象船舶4及びAIS機器を搭載しない対象船舶5が警戒区域51に侵入すると、これらを表す舟形のマーク34,35が点滅等の警告表示状態となり、侵入を報知する。或は、図4に示すように警戒区域51を表示する表示モニタ14,17に、「船舶が警戒区域に侵入しました」というメッセージを表示する。
さらに、GNSS受信器8からの位置情報のデータにより、GNSS受信器8を搭載したケーソン67が航路区域62を逸脱すると、警報表示が表示モニタ14,17に表示される。具体的には、図4に示したように航路区域62を表示する表示モニタ14,17に、「ケーソンが航路区域外に侵入しました」というメッセージを表示し、航路区域62からの逸脱を報知する。尚、ケーソン67は、傾斜計81を構成する情報携帯端末が、GNSS受信器8を備え、従局船6と同様に、船舶情報がインターネット回線を通じてサーバ7に送られ、表示モニタ14,17に表示することができる。
図9は航路区域設定表示部63の使用例を示している。図9は港湾の平面図であり、左右に堤防65,66が配置されており、左側の堤防66の先端66Aにケーソン67が据付けられる。港湾の陸側から左側の堤防66の先端66Aまでケーソン67を曳航する。前記堤防65,66の内側に浅瀬68,68が位置し、これら浅瀬68,68を避けて航路区域62を設定している。この場合、1〜10の数値表示部58Aの座標の数値を入力することにより、航路区域62を設定することができる。
ケーソン67の曳航航路は、ケーソン67が海底に接触しないようケーソン67の喫水以上の水深が必要となる。航路周辺に浅瀬68がある場合においては、計画航路から曳航ケーソン67が逸脱しないように管理する必要がある。このような場合に本システムを適用し、ケーソン67の曳航航路を航路区域62として管理することで航路区域62からの逸脱を防止することによりケーソン67と海底との接触防止を図ることができる。特に、後述する傾斜計と組み合わせることにより、ケーソン67の安定した曳航が可能になる。
以上を主として主局船1のパソコン13が処理して制御する。この場合、パソコン13は、受け取ったデータに基づき、演算処理をして表示モニタ14の画面に表示し、経時的に変化するデータに基いて表示を1秒間に複数回書き換える。また、表示モニタ14と同様な表示を表示モニタ17の画面に表示することができる。
次に、前記工事船舶運航管理システムの構成につきその作用を説明する。主局船1を含む工事船舶の当日の航行に合わせて設定時間設定表示部41において設定時間を設定し、ベクトル21,24,25,26と点表示部21A,24A,25A,26Aを設定する。また、警戒区域51を警戒区域設定表示部55により設定し、航路区域62を航路区域設定表示部63により設定する。
そして、図2に示したように、表示モニタ14,17を運行管理システムの画面に切り替え、主局船1がこのままの針路と速度で航行した場合、対象船舶4と3分後に行き会うことが一目で判り、速やかに回避行動を取ることができる。
このように本実施例では、主局船1と、主局船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を主局船1に送る従局船6と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、主局船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、主局船1,従局船6及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、主局船1及び従局船6の一方である主局船1と対象船舶4の複数の設定時間経過後の予想位置をベクトル21,24に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、主局船1の設定時間経過後の位置を表示するベクトル21と、対象船舶4の複数の設定時間経過後の位置を表示するベクトル24とにより、対象船舶4との接近位置と時間とを直感的に知ることができる。
このように本実施例では、主局船1と、主局船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を主局船1に送る従局船6と、主局船1に設けられ、AIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報を取得するレーダー装置11と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、レーダー装置11によるAIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報と、主局船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、主局船1,従局船6及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、主局船1及び従局船6の一方である主局船1と対象船舶4,5の複数の設定時間経過後の予想位置をベクトル21,24,24に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、対象船舶4,5のAIS機器の搭載・非搭載に係らず、主局船1及び従局船6の一方の設定時間経過後の位置を表示するベクトル21と、対象船舶4,5の複数の設定時間経過後の位置を表示するベクトル24,25とにより、対象船舶4,5との接近位置と時間とを直感的に知ることができる。
このように本実施例では、請求項3に対応して、複数の設定時間が任意に設定可能であるから、設定時間を任意に変更することができるため、これから向かうべき方向及び速度に合わせて直線表示部の長さ及び設定時間を設定することができる。
このように本実施例では、請求項4に対応して、表示モニタ14,17には、警戒区域51が表示され、警戒区域51への対象船舶4の侵入を報知するから、警戒区域51に侵入した船舶を監視することができる。
このように本実施例では、請求項5に対応して、警戒区域51は多角形形状に表示され、この多角形形状の角部の位置を設定することにより任意に設定可能であるから、工事の進捗に伴う範囲や場所の変更に対して、警戒区域51の設定及び変更を簡便に行うことができる。
また、実施例上の効果として、主局船1のパソコン13にサーバ機能を有するものを用いることにより、サーバ7の替わりに主局船1のパソコン13をサーバとして用いることができ、この場合、陸上のサーバ7が不要となる。さらに、ベクトル21には、複数の設定時間に対応した予想位置を示す点表示部21Aが表示され、これら点表示部21Aの大きさ(直径)はベクトル21の線の太さより大きいものであるから、一目で設定時間経過後の位置が理解できる。また、複数の時間切換部42,42A,42Bにより、中心側の設定時間よりその外側の設定時間を長く設定する方法であり、具体的に実施例では、中心側の設定時間が1分、その外側の設定時間が1分の2倍以上の2分,2分であるから、始点に船名などが有っても無くても時間切換部42,42A,42Bの間隔が広い方が航行方向であることが容易に判る。さらに、工事船舶には、対応するマーク31,34,35の近傍に、船名や船体を特定する事項を表示する船体特定情報表示部36が表示され、また、設定時間を示す設定時間表示部37が点表示部21A,24A,25A,26Aの近傍に表示されているから、どの工事船舶がどこに向かうかが容易に分かる。また、設定時間設定表示部41は、時間切換部42,42A,42Bを使用する場合と使用しない場合とに切換えることができ、設定時間だけでなく、航行条件に応じてベクトルに設ける点表示部の数も替えることができ、現場に合わせた対応が可能となる。
また、前記警戒区域51及び航路区域62は、複数の区域直線部52,52A,52B・・・と隣り合う直線52,52A,52B・・・を連結する区域角部53,53A,53B・・・を有する多角形形状をなし、設定表示部55,63を用いて現場に合わせた区域を簡便に設定することができる。
図11〜図12では、同心円22を用いて航路を予想可能にしている。
主局船1の表示モニタ14には、主局船1を中心22Sとした同心円22が表示され、従局船6の表示モニタ17には、従局船6を中心とした同心円22が表示される。このようにパソコン13,16の表示モニタ14,17にはそれぞれ自船を中心にして、同心円22が表示される。尚、各パソコン13,16には、表示切替手段(図示せず)が設けられており、各表示モニタ14,17で主局船1を中心22Sとした表示と従局船6を中心22Sとした表示とに切り替えることもできる。
以下、パソコン13の処理について説明する。図11及び図12の表示モニタ14は主局船1を中心とした同心円22を表示しており、中心22Sに主局船1を表す船形のマーク31を表示している。尚、船形のマーク31は尖鋭な先端31Sを略進行方向側に向けて表示している。また、主局船1の現在の速度で所定時間後に達する位置を、同心円22の3つの円23,23A,23Bで示し、複数の所定時間が任意に設定可能である。この場合、同心円22の円23,23A,23Bの数と複数の設定時間を設定することができ、中心22Sから3つの円23,23A,23Bが鎖線で表示され、これら3つの円23,23A,23Bは、実施例1で例示したように、中心22Sから1分後、3分後、5分後の主局船1の位置を示している。また、各円23,23A,23Bに対応して、設定時間を示す設定時間表示部37がそれぞれ表示される。
また、同心円22を表示した表示モニタ14,17に、前記ベクトル24,25を表示し、これらベクトル24,25の始点は前記現在の対象船舶4,5の位置である。前記ベクトル24,25には、前記同心円22の設定時間に対応した設定時間が点表示部24A,25Aにより表示される。
尚、複数の対象船舶4,5が表示モニタ14,17の画面上に表示される場合、同心円22の外側の円23Bを通る又は外側の円23Bに近接するベクトル24,25のみを表示するように切り替えることができる。尚、この場合の近接は、他の船舶から衝撃波の影響を受ける程度近付くことを言う。
また、表示モニタ14,17には現時点の主局船1のベクトル21が表示され、行き会いが予想される箇所で警告表示部27が表示される。この例では、対象船舶4が現在の航路では、3分後に円23A上の位置において行き合いが予想され、この箇所が赤などの警報色で点滅すると共に、警報音が発せられるようにパソコン13が制御する。
尚、図12に示すように、直線表示部たるベクトル24の先端に矢印28を設けてもよく、この矢印28は同様に他のベクトル21,25に設けることができる。
このように本実施例では、請求項1に対応して、主局船1と、主局船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を主局船1に送る従局船6と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、主局船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、主局船1,従局船6の一方及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、主局船1及び従局船6の一方である主局船1を中心にして、主局船1及び従局船6の一方である主局船1の複数の設定時間経過後の予想位置に対応する同心円22を表示し、主局船1及び従局船6の一方である主局船1の複数の設定時間経過後の予想位置における対象船舶4と衝突が想定される箇所を、同心円22と共に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、主局船1及び従局船6の一方の複数の設定時間経過後の位置における対象船舶4と衝突が想定される箇所を、同心円22と共に表示するため、主局船1及び従局船6の一方と対象船舶4との今後の位置関係を直感的に把握することができ、昼夜を問わずに衝突回避行動や航路への進入・横断判断を早期に行うことができる。
特に、主局船1及び従局船6の一方がそのままの速度で最大移動できる位置を同心円22が表わすため、速度を変えずに、操舵により対象船舶4との衝突を回避することができる。
このように本実施例では、請求項2に対応して、主局船1と、主局船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を主局船1に送る従局船6と、主局船1に設けられ、AIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報を取得するレーダー装置11と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、レーダー装置11によるAIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報と、主局船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、主局船1,従局船6及び対象船舶4,5の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24,25で表示すると共に、主局船1及び従局船6の一方である主局船1を中心にして、主局船1及び従局船6の一方である主局船1の複数の設定時間経過後の予想位置に対応する同心円22を表示し、主局船1及び従局船6の一方である主局船1の複数の設定時間経過後の予想位置における対象船舶4,5と衝突が想定される箇所を、同心円22と共に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、対象船舶のAIS機器の搭載・非搭載に係らず、主局船1及び従局船6の一方の複数の設定時間経過後の位置における対象船舶4,5と衝突が想定される箇所を、同心円22と共に表示するため、主局船1及び従局船6の一方と対象船舶4,5との今後の位置関係を直感的に把握することができ、昼夜を問わずに衝突回避行動や航路への進入・横断判断を早期に行うことができる。
特に、主局船1及び従局船6の一方がそのままの速度で最大移動できる位置を同心円22が表わすため、速度を変えずに、操舵により対象船舶4,5との衝突を回避することができる。
また、実施例上の効果として、複数の対象船舶4,5が表示モニタ14,17上に表示される場合、同心円22の外側の円23Bを通る又は外側の円23Bに近接するベクトル24,25のみを表示するように切り替えることができるため、行き会いの判断の対象となる船舶を絞り込むことができる。さらに、主局船1の設定時間表示部37は四角の枠で囲われて表示され、主局船1と対象船舶4とで、設定時間表示部37,37の表示形態が異なるから、同一画面に表示しても、紛れることなく正しく表示できる。
図13〜図19は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、前記主局船1たる起重機船70の前部に前記ケーソン67を取り付けて押航し、このケーソン67を引船71により曳航する。このように船舶である引船71と起重機船70によりケーソン67が浮上した状態で海上を移送される。尚、この場合、引船71は従局船である。
図14に示すように、前記起重機船70の前面部70Aには、緩衝装置たる緩衝架台装置72が設けられている。この緩衝架台装置72は、前記前面部70Aに弾性体たる複数の弾性筒体73,73・・・を左右に間隔を置いて配置し、これら弾性筒体73,73・・・の前面に硬質材料からなる枠体74を固定し、この例では枠体74は鋼製であって、横方向の上,下横枠部74Y,74Yを複数の縦枠部74T,74T・・・により連結してなる。また、その枠体74の前面に左右に間隔を置いて、緩衝材たる複数の弾性リング体75,75・・・を固定し、この例では弾性リング体75にタイヤを用いている。
前記ケーソン67は、左右方向より前後方向が長く形成され、底板(図示せず)の四方に前後外壁67A,67A及び左右外壁67B,67Bを設け、これら周囲の外壁67A,67A,67B,67B間に平面で前後及び左右方向の隔壁67C,67D,67Dを設けて複数の投入箇所を升目状に配置している。また、前後外壁67A,67Aの左右幅寸法より左右外壁67B,67Bの前後幅寸法が大きい。尚、前後外壁67A,67Aの左右幅より、起重機船70の前面部70A及び枠体74の左右幅が大きい。
また、緩衝架台装置72の前面にケーソン67を配置し、前記前面部70Aの左右に大回しロープ76の両端部76T,76Tを連結すると共に、この大回しロープ76をケーソン67の前外壁67Aと左右外壁67B,67Bの外面に配置し、起重機船70の前部にケーソン67を取付ける。
前記引船71はケーソン67の前方において該ケーソン67に牽引ロープ77を連結している。
本発明の水中構造物用傾斜測定表示装置には傾斜計81が用いられ、前記ケーソン67上には、傾斜測定手段たる2台の傾斜計81,81が搭載されている。尚、2台(複数)の傾斜計81,81を搭載するのは、一方が故障した場合のバックアップのためであり、どちらか一方の傾斜計81により傾斜を測定し、その測定データがインターネット回線などを介してパソコン13に送られる。
この場合、ケーソン67を起重機船70に取り付けたから、ケーソン67の位置などを起重機船70と同じとして処理してもよいし、GNSS通信機となる携帯端末からの位置情報によりケーソン67の位置などを測定してもよく、一方、傾斜はケーソン67に設けた携帯端末などの傾斜計81により測定する。尚、引船71のみで曳航する場合などは、引船71とケーソン67が離れているから、この場合はケーソン67に設けたGNSS受信器8又はGNSS受信器機能を備えた携帯端末によりケーソン67の船舶情報を管理する。
前記表示モニタ14,17には傾斜情報表示部82が表示され、この傾斜情報表示部82に、前記傾斜計81により測定したケーソン67の傾斜角度が表示される。図14及び図15に示すように、傾斜情報表示部82には、水平位置を示す中心点83と、この中心点83を中心とする所定角度表示円84と、この所定角度表示円84の内側に設定可能に設けられ中心点83を中心とする許容角度表示部たる許容角度範囲85とを備え、傾斜計81により測定した傾斜を示す傾斜指示部たる傾斜指示点86が表示され、この傾斜指示点86は、水平器などの気泡と同じ動作で傾斜を表示する。尚、傾斜情報表示部82は、X軸方向においてプラス方向、即ち真上が傾斜計81を装備したケーソン67の進行方向を示す。また、所定角度表示円84には、該所定角度表示円84の表す傾斜角が、数字からなる数字表示部84Aにより表示されている。尚、前記許容角度範囲85は閉曲線で表され、この例では円形である。
前記所定角度表示円84の示す傾斜値と許容角度範囲85の示す許容傾斜値とは任意に設定することができる。また、前記中心点83を中心としたX軸方向及びY軸方向の目盛り87,87の間隔を任意に設定できる。尚、X軸方向及びY軸方向に並んだ目盛り87,87が傾斜方向表示部である。
また、前記傾斜情報表示部82には、被測定物(ケーソン67)の方位を示す方位指示部88が設けられている。この例では、方位指示部88は、互いに色の異なる三角形の指示図形88A,88Bから構成され、一方の指示図形88Aは方位の北を示し、他方の指示図形88Bは方位の南を示し、両指示図形88A,88Bは前記中心点83を挟んで対称の位置にある。
そして、前記傾斜情報表示部82には、中心点83を中心としたX軸方向及びY軸方向がピッチ角及びロール角に対応して、ピッチ角を表示するピッチ表示部90と、ロール角を表示するロール表示部91と、方位角を表示する方位表示部92が設けられ、前記ピッチ表示部90とロール表示部91が傾斜角度数値表示部である。尚、方位は北を0°とし、北と進行方向とがなす角度で、北から時計回り方向に増加する。傾斜計81には、傾斜角度と傾斜方向を測定可能なスマートフォンなどの情報携帯端末を用いることができ、所定時間が経過しても傾斜計81からパソコン13に傾斜データの入力がない場合、後述するように警告を表示することができる。
図16を用いて、傾斜情報表示部82の設定について説明する。図16は表示モニタ14に表示した傾斜計設定表示部93であり、この傾斜計設定表示部93には、左側上部からデータ有効時間設定部94、表示円設定部95、目盛り値設定部96、傾斜許容範囲設定部97が設けられ、中央上部にはオフセット設定部98が設けられ、これら設定部95,96,97,98に数値を入力することにより設定することができる。
前記データ有効時間設定部94は、データ有効時間を設定することができ、設定した時間が過ぎても傾斜計81から新しいデータが来ない場合、傾斜情報表示部82に「データがきていません」などの警告表示94A(図20参照)を表示し、傾斜に係る表示が実際の現在の値と異なることを報知する。前記表示円設定部95を用いて前記所定角度表示円84の表す傾斜角を設定することができ、前記目盛り値設定部96を用いて前記目盛り87の傾斜角に対応した位置及び間隔を設定することができる。
また、前記傾斜許容範囲設定部97は、ピッチ角が北側に増加するピッチアップ部97Aと、ピッチ角が南側に増加するピッチダウン部97Bと、ロール角が左に増加するロールレフト部97Cと、ロール角が右に増加するロールライト部97Dとを有し、それぞれに傾斜の許容角度を設定することができる。尚、図16の傾斜許容範囲設定部97における設定では、図15に示すように許容角度範囲85の閉曲線は円となる。
尚、前記傾斜情報表示部82において、ケーソン67の進行方向前側が進行方向後側より低くなるように傾斜した傾斜角をプラスで表わし、ケーソン67の進行方向後側が進行方向前側より低くなるように傾斜した傾斜角をマイナスで表わし、また、ケーソン67の進行方向右側が進行方向左側より低くなるように傾斜した傾斜角をプラスで表わし、ケーソン67の進行方向左側が進行方向右側より低くなるように傾斜した傾斜角をマイナスで表わしている。
前記オフセット設定部98は、表示される方位、ピッチ、ロールを補正する方位オフセット部98A、ピッチオフセット部98B、ロールオフセット部98Cを有し、それぞれ角度を入力することができる。例えば、傾斜計81をケーソン67に位置固定して設置した後、オフセット設定部98に値を入力することにより補正することができる。例えば、方位を例にすると、ケーソン67が北を向いた状態で、方位データが1°であれば、方位オフセット部98Aに−1°を入力することにより、実際の方位に補正できる。
また、傾斜計設定表示部93には、その中央下部に描画設定部99が設けられ、その右側に色設定部100が設けられている。前記描画設定部99は、傾斜情報表示部82における各種の表示に対応するチェックボックスをオン・オフ切換することができる。
前記チェックボックスをオン・オフ切換することにより、「軸の値を表示する」では、数字表示部84Aが表示・非表示となり、「目盛を表示する」では、目盛り87が表示・非表示となり、「傾斜許容範囲を表示する」では、許容角度範囲85が表示・非表示となり、「方位を表示する」では、方位指示部88が表示・非表示となり、「中心点を表示する」では、中心点83が表示・非表示となり、「値を表示する」では、ピッチ表示部90,ロール表示部91及び方位表示部92が表示・非表示となり、「警告文を表示する」では、警告表示94Aが表示・非表示になる。
尚、図16に対して、図17では前記チェックボックスをオン・オフ切換することにより、方位指示部88,ピッチ表示部90及びロール表示部91を非表示にし、方位指示部88は図示省略している。
また、色設定部100は、傾斜情報表示部82における各種の表示の色を選択・変更することができる。
そして、ケーソン67の傾斜角度が許容角度範囲85以上になると、警報表示が表示モニタ14,17に表示されたり、警報音を発したりして報知する。例えば、傾斜情報表示部82を表示する表示モニタ14,17に、「傾斜許容範囲を超えました」というメッセージを表示し、傾斜角度が許容角度以上になったことを報知する。或いは、ケーソン67の傾斜角度が許容角度範囲85以上になると、表示モニタ14,17の画面の一部が点滅して警報表示してもよい。
図15などの示すように、前記ケーソン67の水上移動において、保持吊枠101を使用することができる。この保持吊枠101の枠体102は、左右方向の前後枠部102A,102Aと、前後方向の左右枠部102B,102Bとからなる横長の方形をなし、その枠体102内に前後方向の中央補強枠部102Cが設けられ、この中央補強枠部102Cの前後が前記前後枠部102A,102Aに固定されている。
前記枠体102は前記ケーソン67の左右幅以上に形成され、この例では枠体102の左右幅はケーソン67の左右幅と略同一である。そして、枠体102の前後左右の4箇所の角部側から索条103,103,103,103を垂設し、各索条103,103,103,103の下端をケーソン67の左右外壁67B,67Bに連結している。また、前記索条103,103,103,103に対応して、枠体102には吊上げ用索条104,104,104,104が連結され、これら吊上げ用索条104,104,104,104の上端が、上部で集まった集合部104Aが形成されている。
前記起重機船70には、起重機本体111が配置されている。この起重機本体111は、起重機船70に対して旋回可能に設けられ、また、起伏可能なクレーンアーム112を備え、このクレーンアーム112の先端113から吊下げ用の索条114が吊下げられ、この索条114は起重機本体111により巻取り・送り出し可能に構成されている。そして、索条114の下端に設けた連結部たるフック115に前記集合部104Aを連結している。
尚、図19では、主局船である起重機船70の船名が「○○○丸」であり、従局船である引船71の船名が「×××丸」であり、それら引船71と起重機船70との間にケーソン67が位置し、搭載した「傾斜計1」により船体を特定するために、ケーソン67の近傍には「傾斜計1」が船体特定情報表示部36として表示されている。この場合、ケーソン67が従局船であり、ケーソン67の針路情報・位置情報・速度情報をベクトル21により表示されている。
このように本実施例では、主局船たる起重機船70,従局船6及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、主局船1及び従局船6の一方である主局船1と対象船舶4の複数の設定時間経過後の予想位置をベクトル21,24に表示する表示モニタ14,17を備え、また、主局船たる起重機船70及び従局船6の一方である主局船1の複数の設定時間経過後の予想位置における対象船舶4と衝突が想定される箇所を、同心円22と共に表示する表示モニタ14,17を備えるから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
また、実施例上の効果として、船舶たる引船71により水上たる海上を移送する水中構造物たるケーソン67に設けられ該ケーソン67の傾斜角度及び傾斜方向を測定する傾斜測定手段たる傾斜計81と、この傾斜計81の測定データによりケーソン67の傾斜を表示する表示モニタ14,17とを備えた水中構造物用傾斜測定表示装置において、表示モニタ14,17は、所定の傾斜角度を表示する所定角度表示円84と、傾斜方向の基準を表示する傾斜方向表示部たる目盛り87と、測定データによりケーソン67の傾斜角度及び傾斜方向を示す傾斜指示部たる傾斜指示点86とを備えるから、傾斜指示点86の移動によりケーソン67の傾斜を直感的に把握することができるため、操船者により移送中にケーソン67が安定した姿勢を保つように船舶の速度を調整することができる。
また、表示モニタ14,17は、傾斜角度が設定可能に設けられると共に、所定角度表示円84より小さい許容角度範囲85を備えるから、移送するケーソン67に対応した許容傾斜角度で許容角度範囲85を表示することができる。
また、傾斜角度を数値で表示する傾斜角度数値表示部たるピッチ表示部90及びロール表示部91を備えるから、傾斜角度を数値で確認することができる。
また、水中構造物たるケーソン67は船舶たる引船71により曳航され、水中構造物たるケーソン67の傾斜角度が許容角度範囲85以上になるとこれを傾斜測定表示装置が報知するから、傾斜角度が許容角度以上になったことが判り、すぐに対応することができる。
また、水中構造物用傾斜測定表示装置を用いた水中構造物の曳航管理システムにおいて、表示モニタ14,17には、航路区域62が表示され、水中構造物たるケーソン67が航路区域62から逸脱すると警報表示するから、ケーソン67の傾斜角によりケーソン67が安定した姿勢を保つように曳航速度を調整し、且つ、航路区域62を逸脱しないように曳航することにより、海底に接触する虞のある浅瀬68などを避けて曳航することができる。
また、水中構造物がケーソン67であり、このケーソン67は前後方向が左右方向より長く形成され、ケーソン67を引船71により曳航し、起重機船70の前部に緩衝部材たる弾性リング体75を設け、弾性リング体75の前にケーソン67を取り付け、起重機船70の起重機本体111により吊った状態で曳航し、引船71及び起重機船70に表示モニタ17,14を配置したから、細長形状で左右に傾斜し易いケーソン67を、引船71と起重機船70とで前後から挟み、起重機船70で吊った状態で、ケーソン67の傾斜角を確認しながら引船71と起重機船70を航行することにより、ケーソン67を安定した姿勢で移送することができる。この場合、引船71と起重機船70の速度・針路を調整してケーソン67の傾斜や針路を管理し、例えば、ケーソン67が前傾姿勢になった場合には曳航速度を遅くするなどして調整する。
また、実施例上の効果として、緩衝部材として弾性を有する複数の弾性リング体75,75・・・を用いたから、ケーソン67を傷付けることなく、押航することができる。また、枠体74の前後に弾性リング体75と弾性筒体73を配置したから、緩衝機能が効果的に向上する。さらに、前記ケーソン67の水上移動において、保持吊枠101を使用することにより、ケーソン67を均一に吊ることができ、4箇所の索条103,103,103,103が略垂直で緩まないように吊ることにより、曳航中のケーソン67の傾斜を低減することができる。
また、所定角度表示円84も所定角度が設定可能であるから、移送するケーソン67に適した所定角度で所定角度表示円84を表示することができる。また、方位指示部88は、互いに異なるマーク、この例では色の異なる指示マークたる指示図形88A,88Bから構成されるから、針路の方位を容易に確認でき、さらに、所定角度表示円84の内側で、好ましくは所定角度表示円84と許容角度範囲85との間で、中心点83を挟んだ位置に指示図形88A,88Bを配置したから、指示図形88A,88Bが見易く、針路の方位の確認が容易となる。尚、この場合、指示図形88A,88Bは所定角度表示円84に近接しているが、重なりあってはいない。また、前記データ有効時間設定部94は、データ有効時間を設定することができから、データ有効時間内の略現在のケーソン67の傾斜を知ることができる。