JP5078186B1 - 工事用船舶の安全航行支援システム - Google Patents

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【課題】工事用船舶の操船者に対して安全航行に関する判断基準を提示する工事用船舶の安全航行支援システムを提供する。
【解決手段】安全航行システム10は、AIS基地局12、ウェブサーバ14、浚渫船局16、土運船局18で構成されている。浚渫船局16は、浚渫船20に搭載されたパーソナルコンピュータ22によって構成されており、土運船局18は、押船26に搭載されたパーソナルコンピュータ28およびPDA30、ウェブカメラ34によって構成されている。ウェブサーバ14は、インターネット回線を通じて、AIS基地局12、浚渫船局16、土運船局18とそれぞれ通信ネットワークが構築されており、AIS情報に含まれる対象船舶の針路情報・位置情報・速力情報と、工事用船舶の位置情報と、予め設定された航路横断基準情報に基づいて、工事用船舶と対象船舶との行き会いの発生を判定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、船舶輻輳海域における工事用船舶の安全航行支援システムに関する。
浚渫工を始めとする港湾工事が行われる海域は、工事用船舶以外にも貨物船や旅客船などの一般船舶、漁船、官公庁船舶などが多数航行する船舶輻輳海域であることが多い。このような船舶輻輳海域を往来する船舶の多くには船舶自動識別装置(Automatic Identification System;AIS)の搭載が義務付けられている。AISは、船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報(AIS情報)を自動的にVHF帯電波で送受信し、船舶局相互間及び船舶局と陸上局の航行援助施設等との間で情報の交換を行うシステムである。港湾工事においてAISを工事用船舶の安全航行システムに活用する試みは既にいくつかなされている。例えば、押船など工事用船舶にAISとカメラを搭載し、得られた情報をインターネット回線を通じて、船舶監視基地局に設けられたモニタに画像表示するシステムが構築されている(特許文献1参照)。
特開2010−269669号公報
工事用船舶は、航路を航行して港湾に出入りする一般船舶とは異なり、港湾内を比較的自由に移動し、航路を横断する機会も多い。 そのため、航路横断の際には航路を航行する一般船舶との行き会いの可能性を的確に判断しなければならないが、従来、この判断は、工事用船舶の船長がAIS情報を含む各種情報に基づいて行っていた。しかし、行き会いに関する全ての判断を船長に委ねることは決して好ましいものではなく、また船長の経験や勘に頼らざるを得ない部分も多いため、リスク管理の観点から大きな問題となっていた。特許文献1に開示されたシステムを含めこれまでに提案されたシステムでは、自船およびその周辺海域を含む航海情報の正確な把握にのみ関心が向く傾向にあり、行き会いに関しては依然として船長の判断に委ねられていた。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、AIS情報を含む各種情報に基づいて工事用船舶と一般船舶との行き会い判定を行い、工事用船舶の操船者に対して安全航行に関する判断基準を提示する工事用船舶の安全航行支援システムを提供することを目的とする。
本発明の工事用船舶の安全航行支援システムは、航路を横断しようとする工事用船舶との行き会いが予想される対象船舶から発信されたAIS情報をインターネット回線を通じて受信するAIS情報受信手段と、前記工事用船舶から発信された位置情報をインターネット回線を通じて受信する工事用船舶情報受信手段と、前記AIS情報受信手段により受信されたAIS情報に含まれる前記対象船舶の針路情報・位置情報・速力情報と、前記工事用船舶情報受信手段により受信された前記工事用船舶の位置情報と、前記航路毎に前記工事用船舶の管理者が独自に定めた安全基準をもとに予め設定され、前記工事用船舶との行き会いが想定される前記対象船舶の速力と、行き会いが想定される箇所までの前記対象船舶の距離との相関を示した航路横断基準情報に基づいて、前記工事用船舶と前記対象船舶との行き会いの発生を判定する行き会い判定手段、を備えている。
本システムによれば、インターネット回線を通じて取得した対象船舶のAIS情報および工事用船舶の位置情報、さらには予め設定された航路横断基準情報に基づいて、工事用船舶と対象船舶との行き会い判定がなされるため、属人的な要素や人為的ミスを排除した安全航行に関する客観的な判断基準を工事用船舶の操船者に提示することができる。
工事用船舶は、港湾工事に使用される船舶であれば種類や大きさに特段の限定はないが、本システムは、浚渫土砂を運搬する土運船など非自航式の船舶の安全航行に適している。
AIS情報は、安全航行を目的として、船舶自動識別装置を用いて送受信される船舶の船名、位置、速力、針路などに関する情報である。船舶自動識別装置は、現在、全ての客船および300トン以上の国際航海に従事する船舶、500トン以上の国際航海に従事しない船舶への搭載が義務付けられている。
航路横断基準情報は、本システムを適用する航路毎に工事用船舶の管理者が独自に定めた安全基準をもとに作成される情報であり、工事用船舶との行き会いが想定される対象船舶の速力と、行き会いが想定される箇所までの対象船舶の距離との相関を示したものである。
AIS情報受信手段、工事用船舶情報受信手段、行き会い判定手段は、インターネット回線と接続されたウェブサーバで構成することができる。ウェブサーバは、インターネット回線を通じて各種情報を受信し、受信した情報をデータベースに登録する。また予め組み込まれたプログラムを作動させ、インターネット回線を通じて取得した対象船舶のAIS情報と、工事用船舶の位置情報および航路横断基準情報に基づいて、行き会い判定に関する情報処理を実行する。行き会い判定結果は行き会い判定情報としてデータベースに登録される。
一般的な浚渫工事では、浚渫船と土運船および押船が作業船団を構成し、浚渫船が浚渫箇所に停船し、土運船が浚渫箇所と土捨場の間を移動して浚渫土砂を処分している。この場合、浚渫箇所と土捨場が航路を跨いでいれば、土運船は一日に何度も航路を横断する必要があり、一般船舶との行き会いの機会も多い。このような場合には、浚渫船と押船に行き会い判定手段による行き会い判定情報を閲覧する手段を搭載し、浚渫船と押船が行き会い判定情報を共有することにより、浚渫船側で土運船の安全航行管理を行うことができるようになり、押船の操船者の判断に全てを委ねることのない安全航行システムを構築することができる。
工事用船舶の操船者は、行き会い時間計算手段による行き会い時間の計算結果に基づいて工事用船舶の操船に係る判断を行い、対象船舶との衝突の可能性のない速力まで減速させて航路を横断するか、航路外で対象船舶の通過を待機する等、安全航行に必要な措置を講ずる。
本発明によれば、インターネット回線を通じて取得した対象船舶のAIS情報および工事用船舶の位置情報、さらには予め設定された航路横断基準情報に基づいて、工事用船舶と対象船舶との行き会い判定がなされるため、属人的な要素や人為的ミスを排除した安全航行に関する客観的な判断基準を工事用船舶の操船者に提示することができる。
本発明の実施の形態の安全航行システムのシステム構成図 土運船と対象船舶の行き会いの判定方法を示す概念図 土運船の航路横断の際の安全基準となる航路横断基準を示す図表 行き会い判定処理を示すフローチャート
本発明の実施の形態について、添付した図面を参照して説明する。図1に本発明の実施の形態の安全航行システムのシステム構成図を示す。安全航行システム10は、AIS基地局12、ウェブサーバ14、浚渫船局16、土運船局18で構成されている。浚渫船局16は、浚渫船20に搭載されたパーソナルコンピュータ22によって構成されており、土運船局18は、押船26に搭載されたパーソナルコンピュータ28およびPDA(Personal Digital Assistant)30、ウェブカメラ34によって構成されている。ウェブサーバ14はインターネット回線を通じて、AIS基地局12、浚渫船局16、土運船局18とそれぞれ通信ネットワークが構築されている。
AIS基地局12は、対象海域内を航行する一般船舶からAIS情報を受信する。AIS情報には、船名情報のほかに位置情報、速力情報、針路情報などの航海情報が含まれている。
PDA30は、インターネット回線と接続可能な情報端末であり、土運船局18からの情報を送信する情報送信手段として機能する。PDA30は、押船26に搭乗する作業員の操作によって作業開始および終了、その他の作業情報をインターネット回線を通じてウェブサーバ14に送信する。また操作に関係なく、土運船の位置情報をインターネット回線を通じてウェブサーバ14に定期的に送信する。
ウェブサーバ14は、AIS基地局12および土運船局18から発信される情報をインターネット回線を通じて受信し、受信した情報を情報ベースに登録する。データベースに登録された情報は、浚渫船20に搭載されたパーソナルコンピュータ22と土運船に搭載されたパーソナルコンピュータ28からウェブブラウザを用いて閲覧することができる。またウェブサーバ14は、AIS基地局12から受信したAIS情報と、土運船局16から受信した押船26の位置情報および航路横断基準情報に基づいて、土運船と対象船舶との行き会い判定を行う。
航路横断基準情報は、浚渫船および土運船の運行管理を行う者、例えばこれらの工事用船舶を用いて浚渫工事を施工する者が行き会い回避のために独自に定めた基準である。図2において、航路を航行する対象船舶40と航路を横断する土運船42は、それぞれの針路の交点が行き会い想定箇所44となる。土運船42と行き会い想定箇所44との距離が1300mの場合、土運船42の速力が4ノットであれば、土運船42が1300m離れた行き会い想定箇所44に到達するのは約10分後である。このとき対象船舶40の速力が14ノットであれば、行き会い想定箇所44との距離が4400mのときに約10分後に行き会い想定箇所44に到達し、両船舶の行き会いが発生する。このように例えば10分後に行き会いが発生するとした場合に、対象船舶40の速力と行き会い想定箇所44までの距離を関連付けた表を図3に示す。例えば対象船舶40の速力が13ノット以上であれば、行き会い想定箇所44までの距離が4400m以内まで接近したときに押船42との行き会いが発生する可能性が高まる。
ウェブサーバ14は、行き会い判定の結果、土運船42と対象船舶40との行き会い可能性が高いと判断した場合は、インターネット回線を通じて浚渫船局16と土運船局18に所定の指令を送信する。パーソナルコンピュータ22、28には予め警報に関するアプリケーションソフト(警報アプリ)がインストールされており、ウェブサーバ14からの指令を受信したら警報アプリが作動し、画面上に行き会い警報が表示される。また警報アプリの作動により警報灯が点滅し、周囲に注意を促す。
ウェブカメラ34は、土運船の船橋部に装着されており、土運船の進行方向の周辺海域を撮影範囲としている。ウェブカメラ34で撮影された画像情報は、インターネット回線を通じてウェブサーバ14にリアルタイムで送信される。航路を航行する一般船舶の中には小型漁船などAIS情報を発信していない船舶が存在することがあり、また漂流物や浮遊物など横断の際に障害となる物が存在することがあるため、これらの障害物はウェブカメラ34で撮影し、パーソナルコンピュータ22、28の画面上で確認することができる。
安全航行システム10における行き会い判定処理の流れについて、図4のフローチャートに示す。S1において、ウェブサーバ14は、AIS基地局12から発信される対象船舶40のAIS情報をインターネット回線を通じて受信する。S2において、ウェブサーバ14は、押船26から発信される現在位置情報、画像情報等の押船情報をインターネット回線を通じて受信する。S3において、ウェブサーバ14は、AIS基地局12と押船42から受信した各種情報および航路横断基準情報に基づいて対象船舶40と押船42との行き会い判定を行う。S4において、ウェブサーバ14は、行き会い判定情報をデータベースに順次登録する。
S5において、浚渫船局16は、ウェブサーバ14のデータベースに登録された行き会い判定情報をインターネット回線を通じて閲覧する。このとき押船42に搭載されたウェブカメラ34による画像情報も同時に閲覧することができる。これらの情報に基づいて、S6において、土運船42の安全航行を浚渫船側から管理する。
S7において、土運船局18は、ウェブサーバ14のデータベースに登録された行き会い判定情報をインターネット回線を通じて閲覧する。S8において、押船26の船長は、行き会い判定情報に基づいて航路横断の際の操船判断を行う。S9およびS10において、安全に航路を横断できると判断した場合は、浚渫土砂を積載しているときには土運船42を土捨場に押航し、空荷のときには浚渫箇所に押航する。一方、安全航行に支障をきたす可能性があると判断した場合は、対象船舶40の通過を待機し、再度、行き会い判定情報に基づいて、他の対象船舶40との行き会い判定情報に基づいて操船判断を行う。
10 安全航行システム
12 AIS基地局
14 ウェブサーバ
16 浚渫船局
18 土運船局
20 浚渫船
22、28 パーソナルコンピュータ
26 押船
30 PDA
34 ウェブカメラ
40 対象船舶
42 土運船
44 行き会い想定箇所

Claims (3)

  1. 航路を横断しようとする工事用船舶との行き会いが予想される対象船舶から発信されたAIS情報をインターネット回線を通じて受信するAIS情報受信手段と、
    前記工事用船舶から発信された位置情報をインターネット回線を通じて受信する工事用船舶情報受信手段と、
    前記AIS情報受信手段により受信されたAIS情報に含まれる前記対象船舶の針路情報・位置情報・速力情報と、前記工事用船舶情報受信手段により受信された前記工事用船舶の位置情報と、前記航路毎に前記工事用船舶の管理者が独自に定めた安全基準をもとに予め設定され、前記工事用船舶との行き会いが想定される前記対象船舶の速力と、行き会いが想定される箇所までの前記対象船舶の距離との相関を示した航路横断基準情報に基づいて、前記工事用船舶と前記対象船舶との行き会いの発生を判定する行き会い判定手段、
    を備えた工事用船舶の安全航行支援システム。
  2. 前記工事用船舶が、浚渫船と、前記浚渫船が浚渫作業を行う浚渫箇所と浚渫土砂を処分する土捨場との間を航行する土運船の押船とで構成されており、
    前記浚渫船と前記押船に前記行き会い判定手段による行き会い判定情報を閲覧する手段が搭載されている、請求項1に記載の工事用船舶の安全航行支援システム。
  3. 航路を横断しようとする工事用船舶との行き会いが予想される対象船舶から発信されたAIS情報をインターネット回線を通じて受信する工程と、
    前記工事用船舶から発信された位置情報をインターネット回線を通じて受信する工程と、
    前記AIS情報受信手段により受信されたAIS情報に含まれる前記対象船舶の針路情報・位置情報・速力情報と、工事用船舶情報受信手段により受信された前記工事用船舶の位置情報と、前記航路毎に前記工事用船舶の管理者が独自に定めた安全基準をもとに予め設定され、前記工事用船舶との行き会いが想定される前記対象船舶の速力と、行き会いが想定される箇所までの前記対象船舶の距離との相関を示した航路横断基準情報に基づいて、前記工事用船舶と前記対象船舶との行き会いの発生を判定する工程、
    を含む工事用船舶の安全航行支援方法。
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