上述の支援システムは、専ら船舶の航行に際し、他船舶との距離等を参酌しながら、自船の安全な航行が継続し得るか否かを判断するためのものであった。そのため、他船舶に対しても自船の情報を提供しつつ、相互関係において安全航行を支援するものであり、他船舶の状況に応じて自船の航行を変更するなどを前提としたものであった。そのため、特定の場所に留まっている船舶が利用できるものではなかった。
ところで、浚渫船や護岸工事船などの作業船は、所定の区域(施工区域)に留まって作業する(施工および施工のための準備や関連業務などをする)必要性から、他船舶との相対的な位置関係の監視は、航行中の船舶に比較すれば希薄なものとならざるを得なかった。しかし、これらの作業船においても、当該工事場所に船舶が入港もしくは寄港するような場合、または大型船や客船等が周辺を航行する場合などにおいては、一時的に当該工事場所から離れる(退避する)ことが要請されていた。また、浚渫等において回収した土砂などは廃棄場所へ搬送しなければならず、この搬送に際しては当然に港湾内を航行することが必要であった。そして、前述のような航行支援システムは、前記のような搬送の場合に利用可能であるとしても、施工中(作業中)は、航行中の他船舶の情報を受信するために搭載されるものであった。そのため、上記のような支援システムの導入には消極的なものとなっていた。
また、他船舶が入港する予定のある場所において作業する場合にあっては、入港予定船舶が到着するよりも前に退避し、当該入港予定船舶が停泊できる状態に原状を回復させるため、作業に使用する機器類とともに作業船を移動させることを厳守しなければならなかった。その結果、当該場所からの退避にはある程度の時間を要することから、当該時間を考慮したうえ、入港予定船舶の到着予定時間よりも以前に作業を中断することを余儀なくされるものであった。しかしながら、遠方より航行する船舶は、海洋環境等の諸条件により、予定時間どおりに着港することは稀であり、入港予定時間前に作業船を移動させたとしても、着港後、再度の出港まで時間のみならず、入港が遅延した時間を含めた長時間にわたって作業を中断せざるを得ないものとなっていた。
さらに、作業船が実施する作業の内容如何によっては、関係船舶および実施海域付近を航行する船舶の安全を確保するために警戒船の配備が義務づけられる場合がある。このような場合には、作業船が移動する場合に限らず、警戒船は、周辺海域を航行する船舶の状況を把握することが要求される。しかしながら、警戒船も作業船と同様に施工区域近傍に留まった状態であるため、周辺海域を航行する船舶には、自船の情報は把握され難く、また、航行の安全よりも周辺を航行する船舶の動向を注視するため、前掲の航行支援システムの導入には消極的にならざるを得なかった。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、作業船の特殊性から、入港予定の船舶の到着時刻を予測し、効率的な作業を可能にするとともに、移動時における航行支援を行うことのできる支援システムを提供し、また、警戒船の支援も可能となるシステムを提供することである。
そこで、作業船支援システムに係る本発明は、港湾内で施工する作業船に対する施工可能時間を推測するための作業船支援システムであって、一般船舶から発信されるAIS情報を受信するAIS情報受信手段と、個別の船舶から発信される船舶情報を受信する個別船舶情報受信手段と、各種船舶の航行予定情報を取得する航行予定情報取得手段と、管制信号に関する管制情報を取得する管制情報取得手段と、前記作業船に搭載されるGPS送受信装置により該作業船の施工位置情報を取得する施工位置情報取得手段と、前記AIS情報、船舶情報、航行予定情報および管制情報の中から選択される1以上の情報と前記施工位置情報との比較により、施工位置周辺における他船舶の航行時刻を推測する他船舶航行時刻推定手段と、前記作業船が、前記他船舶航行時刻推定手段によって推定された他船舶の航行時刻に退避すべきか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、旅客船および大型船舶はAISを搭載するため、AIS情報を受信することにより、これらの船舶の特定(識別)が可能であり、当該船舶の現在位置、航行方向および走行速度などに関する情報を得ることができる。また、AISを搭載しない船舶においては、航行に必要な情報交換のために無線機器を使用しており、当該無線機器によって送受信される情報を取得することにより、それらの船舶の種類、大きさ、位置、航行方向および航行速度等の情報を得ることができる。特定の大型船舶については、入出港に関する情報として、船名、航路名、航路入航予定日時等の通報情報(航行予定情報)が予め管制業務管理当局(海上交通センタ等)に通報されるため、当該航行予定情報を取得することにより、作業船の施工位置を基準とし、施工区域の周辺を航行する大型船舶の有無および予定時刻等の情報を得ることができる。さらに、上記航行予定情報の変更については管制情報を取得することにより得ることができる。
そして、これらの情報の中から作業船の施工位置(施工区域)の周辺の航行情報に関するものを選択し、またはこれらの情報を総合することにより、他船舶が施工位置(施工区域)周辺を航行する時刻を推定することができるのである。判定手段は、推定された他船舶の航行時刻および航行予定の他船舶の種類等に応じて、作業船を退避すべきか否かを判定するものであり、当該他船舶の安全な航行を阻害するおそれの有無によって判定される。そして、その結果の出力により、作業船は、当該施工場所における施工等の内容または手順や機材搬入の可否などを決定する基準として使用することができる。
上記構成の発明において、さらに、作業船の施工位置近隣に入港が予定されている入港予定船舶について、前記AIS情報、船舶情報もしくは航行予定情報またはこれらを組み合わせた情報に基づいて該入港予定船舶の位置および航行速度に係る入港船舶情報を生成する入港船舶情報生成手段を備え、前記船舶航行時刻推定手段が、前記入港予定船舶に関する到着時間を推定するものと構成することができる。
上記構成によれば、入港予定船舶が到着する時刻が推定されることにより、作業船が施工する場所の近隣における作業時間を予め想定することが可能となる。この作業時間の想定は、入港予定船舶の到着が遅延する場合に効果的である。すなわち、作業船は、入港予定船舶の入港により、一時的に施工区域から移動しなければならず、再び当該船舶が出航するまでの間、施工等を中断しなければならないが、その中断時間を可能な限り短縮することにより作業効率は向上する。入港予定船舶が予定時間に遅延して入港する場合、作業船は、入港予定時刻から逆算して機材等を撤収し、施工等を中断し、施工区域から離れて退避し、当該船舶が出航するまで待機せざるを得ないことから、施工等のできない時間が長期間継続することとなっていたが、概ね正確な到着時刻が推定されることにより、作業時間のロスを削減することができる。
上記の各構成の発明において、さらに、対象港湾の複数個所に船舶の映像を取得する船舶映像取得手段と、取得された船舶の映像から該船舶の位置および種類を特定し、かつ、映像の変化を解析して該船舶の航行方向および速度を解析する映像解析手段とを備え、前記他船舶航行時刻推定手段が、解析結果に基づき、前記船舶の施工位置周辺における航行時刻を推測するものと構成することができる。
上記構成によれば、第1に、前記AIS情報、船舶情報または航行予定情報によって得られる他船舶の状況と、現実の状況との差異を補うことができ、これにより正確な航行時刻を予測することが可能となる。第2に、AIS情報等によって得ることができない船舶(例えば、小型船など)の航行の状況などを得ることも可能となる。映像解析手段は、取得した船舶映像の位置、進行方向および進行速度などを解析し、前記AIS情報、船舶情報または航行予定情報によって得られた情報との異同(差分)を算出するものであり、前記AIS情報等によって得られる船舶と合致しない船舶を小型船等として、他船舶情報に追加するものである。なお、これらの各種の情報と映像解析手段により検出された船舶との異同は、出入港旗によって判断させることも可能である。当該出入港旗の設置方法は予め定められているため、港湾内における船舶の状況を確認することができるからである。
上記各構成の発明において、さらに、港湾の海図データに基づいて生成される海図画像を表示する表示手段と、前記AIS情報または船舶情報に基づき、情報の発信元である各船舶について、それぞれの位置および航行方向を前記海図画像に重ねて表示させるための船舶画像を生成する船舶画像生成手段とを備え、前記出力手段が、前記表示手段に出力するものと構成することができる。
上記構成によれば、表示手段には、港湾の海図画像が表示され、その港湾内を航行または停泊している船舶の画像を重ねて表示することにより、受信または取得した情報を同一画面上に表示させることで、大型船舶および一般船舶さらには小型船舶に至る港湾内の船舶の状態を把握することが可能となる。
上記のように表示手段を備える発明において、さらに、前記AIS情報、位置情報、管制情報および入港船舶情報のうち、音声情報または映像情報について入力処理が必要となるもの、または前記各種の情報とは異なる入手経路により取得される情報について手動入力を可能とする入力手段を備え、前記手動入力は、前記表示手段に表示される船舶ごとに、その位置、航行方向および航行速度を入力するものと構成してもよい。
上記構成の場合には、受信または取得されるべき情報は、本来的には、船種、位置、方向、速度等の各種の船舶に関する情報は、特定の数値情報として伝達されるため、これを変換することにより海図画像に表示させることが可能である。そして、一部の取得情報が音声情報である場合または映像情報である場合には、音声認識処理または映像解析処理等により海図画像に表示させることも可能であるが、手動入力可能な入力手段を有することにより、処理速度およびデータ量の肥大化を軽減するために、これらの情報を手入力することが可能となるのである。なお、入力手段は暫定的なものとしておき、音声情報または映像情報の手動入力により瞬時に海図画像に表示し、さらに順次解析が進むことにより修正させてもよい。これとは逆に、解析結果に誤差がある場合、これを手動入力により修正するものとしてもよい。入力手段による入力は、船舶画像を海図画像に追加させることができれば十分であるが、数値として入力するようなものであってもよい。さらに、入力手段は、前記各種情報を補う情報を入力可能とするものであってよく、船種や船名などを特定の船舶情報に関連付けて入力できるように構成してもよい。これにより、表示手段から得られる情報を順次に把握し得るものとすることができる。
表示手段を備える上記の各発明において、前記船舶画像生成手段が、前記表示手段に表示すべき船舶について、その種類により視覚上の識別可能な船舶画像を生成するものと構成することができる。
上記構成によれば、少なくとも大型船舶、旅客船舶、一般船舶などを視覚上において識別可能となり、表示手段から特定船舶を見出すことが容易となる。この視覚上識別可能な船舶画像とは、例えば色彩による区別などがあり得る。この場合、大型船舶や旅客船舶などを赤色系の色彩とし、その他を青色系の色彩とすることにより、特別に注意すべき船舶とそれ以外の船舶とを見分けることができる。また、作業船や警戒船などについて他の色を使用すれば、頻繁に移動しない船舶を見分けることも可能となる。
また、作業船支援システムに係る本発明は、表示手段を備える上記の各発明のいずれかにおいて、前記作業船が施工位置へ移動し、施工位置から退避場所へ移動し、または施工位置もしくは退避場所から他の場所へ移動するときの航行可能な経路を前記表示部に表示するためのシステムであって、前記作業船が移動するときの出発時刻および移動先地点を入力するための入力部と、予め定められた前記作業船の平均時速に基づき、前記GPS送受信装置から送信される該作業船の現在位置から移動先地点までの航行経路を航行する場合の航行可能経路を特定する航行経路特定手段とを備え、前記航行経路特定手段は、複数の経路を所要時間の短いものから選択して候補経路を形成し、前記表示手段に表示するものであることを特徴とするものである。
上記構成によれば、作業船の現在位置は、GPS送受信装置からの情報により特定されており、目的地(移動先地点)と出発時刻を入力することにより、特定地点の通過時刻が推定され得ることから、他船舶の航行状態との関係を時間ごとに比較すれば、航行可能な経路を創出することができる。そして、以後の挙動が不明確な他船舶の状態を考慮すれば、複数の航行可能な経路を創出しておき、目視で安全を確保しつつ、特定の航路を選択できるようにしている。その結果、作業船が作業の一環として、または退避等のために移動する際の移動経路(航行経路)について、安全な経路を得ることができ、安全かつ効率的に移動することが可能となる。複数の経路を表示させることにより、港湾内における進路を人為的に判断することができ、また、航行時の気象条件や航路条件に応じて、最適な経路を人為的に選択できるようになる。
警戒船支援システムに係る本発明は、表示手段を備える上記に示したいずれかの作業船支援システムを利用し、周辺船舶の安全を監視する警戒船を支援するシステムであって、前記表示手段に表示される各種情報を送信する送信手段を備え、前記警戒船は、前記送信手段から送信される情報を表示する表示手段を備えるものであることを特徴とするものである。
上記構成によれば、警戒船は、当該警戒船の情報ではなく、作業船のために表示される作業船とその他の船舶の情報を入手することができる。この作業船のための情報を入手することにより、警戒監視すべき対象の作業船に対し、施工位置、施工時間および移動の可否などの誘導を行うことができる。
作業船支援システムに係る本発明によれば、施工等をすべき施工区域において、入出港予定の船舶の情報を入手し、特に入港予定の船舶が到着する予定時刻の変更などを瞬時かつ詳細に入手することができることから、作業船の施工時間を可能限り引き延ばすことができる。この施工時間の長期化により効率的な作業を可能とするものである。すなわち、作業船は、入出港船舶が入出港または航行を予定する時刻に応じて、施工可能時間を想定し、その施工可能時間内において予定の作業を行うが、施工位置(施工区域)から退避するために、実質的な施工時間とは別に退避のために要する時間を考慮し、施工等を中断しなければならず、これまでは予定時刻を基準に施工等を中断していたところ、特に、入港船舶の到着時刻の遅延を事前に把握することにより、作業船舶の退避までの時間を延長させることができるのである。施工区域の周辺を航行する大型船舶や旅客船舶の航行予定時刻との関係においても同様に、その航行時刻の変更や遅延による施工時間の確保が可能となるものである。
また、作業船支援システムに係る本発明によれば、作業船舶の移動(航行)に際し、他船の状況を考慮しつつ、航行可能な航行経路を選定できることから、当初予定された移動はもちろん、突発的な移動の必要性を生じた場合、または施工時間の延長に伴って当初の予定時刻を逸脱した時間帯における移動に際しても、港湾内の他船舶の航行状況に応じて安全な移動が容易となる。また、退避すべき場合における退避場所への移動に際しても使用可能となる。
他方、警戒船支援システムに係る本発明よれば、第1に、作業船において把握される情報と同一の情報を入手することから、警戒監視に際しては、同一の情報を共有しつつ誘導等を行うことができ、第2に、作業船のための情報を入手することにより、警戒監視の対象となっている作業船を中心とする情報を基準とした誘導等を行うことができる。これにより、入港予定船舶の到着時刻遅延の際には、作業船と同様に施工区域近傍に継続して留まることができ、作業船の作業の効率化に沿った警戒監視が可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、作業船支援システムに係る実施形態の概要を示すブロック図である。本実施形態の作業船支援システムAは、各種の外部情報1を取得し、これらの外部情報1を処理装置2において処理し、表示手段に表示させるものである。表示手段としては、有線により出力情報を表示する表示画面3のほか、インターネット回線や無線を使用して表示可能としたスマートフォン等の携帯端末4があり得る。
外部情報1としては、船舶の航行・停泊などに関するあらゆる情報を含むが、ここでは、特に重要なものを例示する。船舶自動識別装置(AIS)による船舶情報(AIS情報)11、個別の船舶から発信される個別船舶情報12、特定船舶における航行予定である船舶航行予定情報13、港湾内に設置される管制信号に関する管制信号情報14などがある。また、支援すべき船舶(支援対象船舶、例えば作業船や警戒船など)に関する情報として、支援対象船舶の位置を把握するためのGPS情報15などがある。また、これらの外部情報1のほかに、突発的な情報や特殊な情報を入力し得るための入力部(入力手段)5を備え、手入力により各種情報を入力可能としている。
処理装置2は、入力支援モジュール21,22,23を備えており、各種情報に応じて必要な入力解析が行われる。これらの入力情報および港湾情報(海図情報、航路情報、監視ポイント情報など)を記憶する記憶部24が設けられている。これらの記憶情報から所定の演算処理をするための演算部25を備え、その演算結果は、必要に応じて画像作成部によって画像情報として出力部27から表示画面3または携帯端末4に出力されるようになっている。
AIS情報11は、AISを搭載する船舶が、VHF帯の電波を利用して、船舶同士または陸上局との間で航行情報などを交換するものであり、その情報には、船舶固有の識別(海上移動業務識別:MMSI(Maritime Mobil Service Identify))、船名、船種などの固定的な情報と、位置、進路、速度などの移動情報などが含まれる。これらの情報は、予め定められた順番に記号等を用いて送受信されることから、この送受信される電波を受信することにより、AIS情報を入手することができる。そのために、図示を省略するが、VHF帯の電波を受信する受信装置(AIS情報受信手段)を備えている。
個別船舶情報12は、AISを搭載しない船舶などにおいて、個別に情報を発信している情報を意味し、当該船舶が発信する信号を直接受信する場合もあるが、専ら陸上の基地局との間で交信されている情報を基地局から送信されることにより入手できるものである。各種の基地局から船舶情報を入手するには、基地局サーバからインターネット回線を介して提供を受けることとなり、そのためのクライアントサーバ(個別船舶情報受信手段)を備えることとなる。
船舶航行予定情報13は、管制対象船舶が報告済みの入出港予定の情報であり、船舶向けラジオ放送などから入手することができる。音声データは、音声解析ソフトによる音声解析モジュール23を介することにより入力可能である(航行予定情報取得手段)。なお、これらの情報を入力部5によって入力してもよい。
管制信号情報14は、港湾への水路に設置される管制信号に関する情報であり、海上交通センタ(管制基地局)が発表する各種の管制信号に関する情報である。これらの管制信号には、例えば、「I」入航可能(IN)、「O」出港可能(OUT)、「F」自由航行(FREE)、「×」入出港航禁止などがある。なお、これらの管制信号情報は、インターネット回線を介して管制基地局が発表する情報を入手可能である。但し、公表される情報が画面上の情報である場合には、画像解析ソフトを介して入力するか、場合によっては入力部によって入力することができる(管制情報取得手段)。
GPS情報15は、支援対象船舶の位置情報であり、GPS(Global Positioning System)を利用したものであり、衛生が送信する情報を支援対象船舶において受信し、さらに当該情報の転送を受けることにより支援対象船舶の位置情報を入手するのである。そして、支援対象船舶が作業船の場合には、所定時間を超えて同じ位置に留まる状況から作業船の施工位置を特定するのである(施工位置情報取得手段)。なお、支援対象船舶が警戒船のような場合には、警戒船の位置情報とともに作業船の位置情報を入手し、または作業船のみの位置情報を入手するものとしてもよい。また、作業船は支援対象のみに限らず、港湾内で活動する複数の作業船からの位置情報を全て入手するものとしてよい。
これら以外の外部情報として、港湾の状況を撮影するカメラによる情報(映像情報)などがある。カメラは、複数の箇所に設置したものを定点監視するものであり、撮影された映像は、有線または無線によって処理装置2に送信される(船舶映像取得手段)。映像情報は、送信された映像を解析し、映像上における変化をデータ化したものである。映像の解析は、所定時間ごとに変化したポイントを港湾内の船舶と関連付けながらデータ化することができる。
処理装置2には、入力解析モジュール21、映像解析モジュール22、音声解析モジュール23などが設けられ、各種の入力情報をそれぞれ解析し、船舶情報として処理される。特に映像解析モジュール22は映像解析手段として機能している。これらの情報は記憶部24に記憶されるが、記憶部24には、港湾の海図情報なども記憶されており、海図上の位置との関係が演算部25によって処理され、画像作成部26によって船舶画像が作成される(船舶画像生成手段)。この画像作成部26によって作成される船舶画像は、船首を頂点とし、船尾を底辺とする二等辺三角形のモデル画像として作成するものであり、作成された画像が出力部27を介して、前記海図情報と重畳して外部の表示画面3または携帯端末4に出力し得る構成となっている。
また、演算部25は、各種情報から、支援対象船舶(作業船)の施工位置周辺における他船舶の航行時刻を推測する(他船舶航行時刻推定手段)とともに、また入港予定の船舶が入港する時刻を推定する(入港船舶情報生成手段)ものである。これらの演算結果は、記憶部24に記憶されるものであり、記憶部24に記憶される各種のデータは、前記の入力情報が更新されることにより、演算結果が変更される場合には、逐次最新のデータに更新されるものとしている。演算部25は、さらに、支援対象船舶(作業船)の施工時間(作業時間)と周辺を航行する他船舶の航行状態から、支援対象船舶(作業船)と他船舶の航行との関係を推定し、他船舶の航行の阻害の可能性(退避の是非)を判定するものである(判定手段)。
これらの推定された演算結果は、画像作成部26によって、警告画像情報として出力部27に送られ、出力部27から出力された警告画像情報を表示画面3などに画像表示することにより、支援対象船舶(作業船)の施工可能時間(退避開始時刻)などの情報を得ることができる。
上記のように収集された情報および演算結果は、例えば、海図の画面とともに船舶画像によって表示画面3または携帯端末4に出力され、画像表示されることとなる。図2はその一例を示す表示画像である。
図2に示すように、表示画像の例としては、海図上に表示される複数の船舶画像で構成されたものがある。画像は海図を基本とし、陸地と海上を色分けして表示されており、海上には航行中の船舶または停泊中(岸壁係留中もしくは錨泊中)などの船舶を二等辺三角形(△形状)で示している。航行中の船舶は、二等辺三角形の頂点(船首)から延出させた直線により進行方向が示され、方向が直進でない場合には、その直線の先端を進路方向に曲げて表示するものとしている。ここで表示される船舶は、前述のAIS情報や個別船舶情報等によって入手可能な情報に基づくものであるが、映像情報その他の情報に基づき修正する場合には、その修正情報により表示されている。
さらに、表示される個々の船舶(△形状)には、作業船、大型船舶等の区別のために色分けまたは柄分けされており、作業船は、支援対象船舶であるため、特に明確に判別できる状態で表示されている。さらに、図示を省略しているが、作業船による施工区域周辺の岸壁に着岸を予定する船舶が存在する場合には、当該着岸予定船舶を特定するとともに、当該船舶の航行状況を明確に表示させるものとしている。着岸予定船舶が大型船である場合には、特に遠海部における位置情報を早期に取得し、同一画面内の隅部(図2では左下の隅部)に区別して表示するか、または、着岸予定時間を吹き出し表示により、文字情報として表示することができる。吹き出し表示を利用する場合は、文字情報とするため、他の情報として、到着までの時間について推測結果が算出できれば、その情報を表示することもできる。
上記の画像は、収集された情報を単純に海図上に表示したものであり、当該画像を確認することで、一瞥して作業船(自船)の周辺状況および港湾内の船舶の状況を把握することができるものである。ところで、作業船の周辺に航行する船舶が存在するか否か、その船舶がどの程度の後に航行するのかについては、これらの画像からは容易に判断することは困難である。そこで、さらに詳細な航行情報により作業船周辺の情報を処理し、表示画面に表示させるものとしている。
そこで、上記支援システムによる作業船を支援のための処理方法について説明する。図3〜図5は、作業船の位置と、その周辺を航行予定の船舶または入港予定の船舶との関係を推測しつつ、必要な場合には退避を促すための警告報知を行うことができる処理方法を示している。処理結果を表示画面に表示させる場合は、文字情報とするほか、退避の対象となる船舶をハイライトするなどの方法があるが、ここでは、専ら表示までの処理方法について詳述する。なお、ここでは、説明の便宜のために、退避義務がある対象船舶を大型船舶と旅客船舶に限定し、その他の小型船舶については退避義務がないことを前提とするが、当然に退避しなければならない船舶との関係においては、適宜退避の判断がなされるものである。
本実施形態の支援システムの作動開始により、まず、作業船の位置・施工内容等の作業船情報が記憶部から読み出される(S101)。読み出された情報から作業船の施工位置(施工区域)が特定される(S102)。この施工位置は、他船舶の状況との相対的な関係における基準となるものである。
引き続き、他船舶に関する情報が記憶部から読み出される(S103)。記憶部には、外部情報が入力されるたびに更新され、更新前の情報とともに最新の船舶情報が記憶されており、読み出された情報から、移動する船舶の場合には移動の状況(方角や速度など)を推定することができるものとしている。他船舶の読み出しは、移動しているものから順次読み出してもよいが、大型船舶、旅客船舶、小型船の順に読み出してもよい。読み出された他船舶の情報から、作業船の施工位置(施工区域)周辺を航行することが想定される船舶の存在を確認する(S104)。航行予定船舶の確認は、〇時間以内に施工位置周辺を航行するか否かによって判断される。〇時間以内は、例えは、通常の施工等に要する作業全般の時間として8時間を固定とすることも可能であるが、個別の施工予定としての時間(例えば2時間とか4時間)を予め入力することにより、航行監視の状態を設定することも可能である。
上記の航行予定の判断の結果、予定船舶が存在しない場合は、再度他船舶の情報を読み出し(S103)予定が変更された船舶、または当該施工位置の方向へ移動する船舶の存在を確認することとなる。これに対し、施工位置周辺を航行することが予想される船舶の存在を確認した場合(S104)には、当該船舶を特定し(S105)、その情報を出力する(S106)。この出力は、前述の表示画面上において、色分けして表示するなどにより、海上のどの位置から接近するかなどが確認できるように表示される。これと同時に吹き出し表示により、船種、船名、速度などの取得情報を文字で表示してもよい。この出力と同時に退避の要否についての処理(A)に移行することとなる。
退避の要否の判断は、航行船舶が単なる通過するものか(S201)、入港(係留)が予定されるものか(S301)によって異なる処理を行う。前述の航行予定船舶が特定された場合(S105)、その船舶(複数の船舶が存在する場合はその全部)の情報から、当該船舶が通過船舶であるか(通過船舶が含まれるか)が判断され(S201)、通過船舶が存在しない場合は、通過船舶に関する報知は行われない(S202)。他方、通過船舶が含まれている場合には、その数が単数か複数かを判断し(S203)、単数(1隻のみ)の場合には、その船種に応じて報知の方法を確定させ、複数の場合は、さらに異なる処理(B)が実行されるものである。
単数の通過船舶である場合は、まず、その船舶が大型船舶であるか否かが確認され(S204)、大型船舶でない場合には、旅客船舶であるか否かが確認される(S214)。これは、通過船舶が大型船舶である場合と、旅客船舶である場合とで、退避の程度(距離、時間など)が異なるためである。
通過船舶が大型船舶であると判断された場合(S204)には、当該船舶情報に関する最新情報が読み出され(S205)、最新情報に基づき、通過時刻が推定される(S206)。推定された時刻に基づき、現在時刻から通過時刻までに所定時間(△時間)を切っているか否かを判断し(S207)、所定時間以上である場合には、所定時間になるまで最新情報の読出し(S205)および通過時刻の推定(S206)が繰り返される。これは、進路変更等により、または一時的な減速などにより到着時刻が遅延するような場合には、可能な限り作業船の退避を遅らせる(施工時間を確保する)ためである。所定時間(△時間)は、例えば、1時間とか、0.5時間などの比較的短時間とすることが想定され、退避に要する時間を考慮して適宜設定された時間により処理される。この設定時間は、退避の警告を受けるべき時間を予め入力することにより処理される。施工の内容や場所等により、退避準備に掛かる時間を想定し、毎回変更可能とすることができる。
そして、通過船舶の到着時刻まで所定時間を切ったものと判断された場合(S207)には、その通過船舶の航行経路を推定し(S208)、退避の必要があるか否かが判断される(S209)。これは、作業船の施工位置周辺を大型船が通過する場合であっても、その航路によっては、退避の是非が異なるためである。例えば、十分に幅のある航路を通過する場合は退避の必要はないが、所定の深さを有する幅が狭い航路では退避が必要であるなど、どの場所でどの程度の大きさの船舶が航行するかにより退避の是非が異なる。
退避が必要であると判断された場合には、推定された船舶の到達時刻(通過時刻)とともに退避すべき旨が警告報知として出力される(S210)。この警告報知の出力は、画面上に表示されるものであるが、退避時間が接近した場合は警報音による報知とするものとしてもよい。
また、退避の必要がないと判断された場合には、通過船舶情報のみが表示画面に出力される(S211)。これは、船舶(大型船舶)は通過することを報知し、通過時における安全性を確保するために、船舶の通過情報を周知させることが目的である。なお、退避の必要性がないとしても、目視による安全確認は必要であるため、到達予定時刻とともに船種等の船舶情報が出力されるようになっている。このときの出力方法は、表示画面に中において、自船(作業船)と通行予定船舶をハイライトするなどにより、表示の画面上において明確に示すようにしてもよく、また、文字情報として表示してもよい。
また、通過船舶が大型船舶でなく、旅客船舶である場合(S214)においても、やはり最新情報を読み出し(215)、通過時刻を推定し(S216)、旅客船舶の到達が所定時間(▲時間)を切ったか否かが判断される(S217)。このときの所定時間(▲時間)は、大型船舶の場合よりも長い時間とし、通過する旅客船舶との距離を十分に確保できる場所まで退避可能な時間が設定される。これは、単なる大型船舶の場合に比べ、旅客船舶の場合には、航行時の安全性が厳密に確保されなければならず、その安全性確保に配慮して余裕を持って退避するためである。
そして、所定時間以上の場合は、最新情報を入手し(S215)通過時刻を推定する(S216)ステップが繰り返されるが、通過時刻が所定時間を切った場合には、航行経路が推定されたうえ(S218)、退避の是非が判断される(S219)。退避の必要性がある場合には、その時刻とともに退避すべき旨が警告報知として出力される(S220)、退避の必要性がない場合(221)には、通過時刻とともに通過船舶情報が表示画面に出力されること、大型船舶と同様である。
なお、通過船舶が大型船舶でなく、旅客船舶でもない場合(S214)には、その他の小型船舶と認定して、通過時刻を推定し(S231)、その時刻とともに、目視警戒すべき旨が警告報知として出力される(S232)。このような小型船舶との関係においては、作業船との位置関係等の状況により、双方が相互に譲り合うこととなり、必ずしも施工中の作業船に退避義務がなく、小型船舶が施工中の作業船を回避して航行する場合があるためである。なお、目視警戒は、小型船舶の航行状態を監視するためである。
周辺を航行する船舶については、前述のような通過船舶であるか否かの処理、および通過船舶の場合の退避に関する処理がなされると同時に、入港(係留)予定の船舶に関する処理も実行される。この場合には、まず、航行船舶が入港(係留)予定の船舶であるか否かが判断され(S301)、入港船舶でない場合には、入港船舶としての報知は行わないものとされる(S302)。他方、航行船舶が入港予定船舶であると判断された場合には、退避のための処理が実行される。この場合、最新情報が読み出され(S303)、入港時刻が推定される(S304)。
入港予定船舶の有能予定は、長距離を航行するため予定が大きく異なる場合が少なくないことから、特に入港船舶の現在地などを確認して入港時刻を推定する必要がある。航行予定時刻は、当該入港予定船舶から発信される予定時刻の修正情報のほかに、他情報から予測できる入港予定時刻が含まれる。例えば、AIS情報などから現在の位置情報、航行速度などを入手し、これらに基づいて着岸できる時刻を想定することにより、入港予定時刻を変更し、これを最新情報として更新することもあり得る。さらには、独自に設けた定点監視カメラの映像により現在位置を把握してもよい。そして、現実の入港予定船舶の現在位置および進行方向、進行速度などから到着時刻を算出するのである。このように、到着時刻を修正することにより、予定よりも早期に到着する場合には、急いで退避するという緊急避難的な行動をとる必要がなく、作業現場の混乱を回避できる。また、予定よりも遅れて到着する場合には、施工時間を延長することができ、効率よく作業することができる。これは、これまで到着が遅延した際に、作業船は予め退避しており、到着が遅延した時間分だけ作業が遅延するという事態を招来させていたが、そのような作業の遅延を防止することも可能となる。
なお、入港船舶が到着する場合には、作業船は当然に退避しなければならないことから、退避の可能性を判断するまでもなく、到着する時刻までの時間が所定時間を切った場合(S305)、直ちに到着時刻とともに退避すべき旨が警告報知として出力される(S306)。この警告報知は、通過船舶の場合と同様に、表示画面上に明確に表示される方法によって報知されるものである。
ところで、通過船舶が複数の場合(S203)には、図5に示すような処理(B)が実行される。通過船舶が複数の場合は、それらの船舶が全て大型船舶か、旅客船舶か、小型船舶か、またはこれらが混合しているのかによって処理が異なる。
そこで、まず、大型船舶のみであるか否かが判断され(S501)、大型船舶のみでない場合には、旅客船舶のみかを判断し(S502)、そうでない場合にはさらに小型船舶のみかが判断される(S503)。これらの判断に使用される情報は、先に読み出した他船舶の情報に基づくものである(図3のS103)。
大型船舶のみである場合には、さらに最新の他船舶の情報を読み出し(S511)、通過船舶の数を特定し、これら全てについて通過時刻および通過の順序が推定される(S512)。これらの複数の大型船舶のうち最先に通過する船舶の時刻から算出される時間が、所定時間(△時間)を切ったか否かが判断され(S513)、所定時間(△時間)以上である場合は、最新の情報の読出し(S511)および通過時刻等の推定(S512)が繰り返されるが、当該時間が所定時間(△時間)を切った場合には、退避等の処理が実行される。なお、このときの所定時間(△時間)は、大型船舶が単数(一隻)の場合と同様に定めることができる。
具体的には、複数の大型船舶の全てについて航行経路を推定し(S514)、これらの大型船舶の航行経路から退避が必要な船舶の有無を判断する(S515)。そして、退避が必要となる船舶が存在する場合には、当該船舶を特定し(S516)、当該船舶の通過時刻を推定するのであるが、複数の船舶について退避が必要な場合を考慮し、退避の必要な船舶が航行する最初の時刻と、最後の時刻を推定するのである(S517)。この場合、単一(一隻)の船舶の場合は、通過開始時刻と通過終了時刻は同じ時刻となり、複数存在する場合には、最先の船舶通過時刻が開始時刻となり、最終の船舶通過時刻が終了時刻となる。なお、判断されるべき船舶は、所定時間(△時間)を切った船舶(S513)に限定すれば、個別の通過船舶ごとに退避を繰り返す必要がなく、対象船舶の全てが通過した後に退避を終了することができる。
このように、退避が必要な船舶が通過する場合には、警告報知として、対象船舶の特定とともに、退避すべき時間(開始時刻と終了時刻)とともに表示画面に出力されるものである(S518)。なお、通過する大型船舶のうち、全てについて退避の必要がない場合には、当該通過の情報のみが表示画面の出力されるものとしている。
他方、全てが旅客船舶のみである場合には、やはり、当該船舶の最新情報が読み出され(S521)、旅客船舶の数を特定し、通過時刻および通過順序が推定される(S522)。この推定結果に基づき、通過時刻までの時間を所定時間(▲時間)と比較して(S523)、所定時間(▲時間)を切った場合に退避処理が実行される。この後の実行は、大型船舶の場合と同様であり、航行経路を推定し(S524)、退避の可否が判断され(S525)、退避に必要な処理がなされ(S526,S527)、適宜警告報知、通過船舶情報などが出力される(S518,S529)。なお、このときの所定時間(▲時間)は、単数(一隻)の旅客船舶の場合と同様に定めることができるものである。
またさらに、全てが小型船舶の場合には、退避の必要がないものと判断し、通過時刻が推定され(S504)、その情報が出力される(S505)ものとしている。出力情報には、特定された範囲での小型船舶の情報と、通過時刻であり、これらが通過する際には目視による警戒が必要となるため、出力情報には目視監視の指示が含まれる。
上記のような同一種類の船舶でなく、複数の船種の船舶が混合して通過する場合には、船種ごとの状況を推定しつつ総合的な処理が実行される。具体的には、全ての船舶についての最新情報を入手し(S531)、それぞれの船種、その数、最先の通過船舶の種類と時刻、および最後に通過する船舶の種類と時刻が推定される(S532)。このとき、当然のことながら、全ての船舶について、船種ごとに通過時刻が推定され、退避行動に反映されるようにしている。このとき、例えば、複数の船舶を船種ごとに区分し、大型船舶が何隻、旅客船舶が何隻、小型船舶が何隻通過し、区分ごと(船種ごと)に最先の通過時刻と最後の通過時刻を推定し、整理することが好ましい。そして、小型船舶の区分に集約された船舶情報については、予め通過船舶情報に含めるものに分類し、他の二種類については、異なる退避時間を考慮して、到達時間と比較するのである(S533)。すなわち、大型船舶については△時間を基準とし、旅客船舶については▲時間を基準として、いずれかがこれらの所定時間を切った時点で退避処理を実行する。
退避処理は、航行経路の推定(S534)の結果に基づき、退避が必要か否かの判断(S535)により、退避のための時間などが推定(S536,S537)され、警告報知がなされる(S538)か、または退避の必要がなければ、通過船舶の情報のみが出力される(S539)。
上記のような処理により、作業船の支援にあっては、混雑する港湾(航路)において施工等する場合、散発的かつ一隻ずつ周辺を通過するとは限らず、短時間に複数の船舶が通過する場合にも、それらをまとめて通過可能とすべく、連続的に退避時間を確保することとしているのである。
なお、作業船の近傍において、周辺船舶の安全を監視する警戒船を支援する場合には、上記処理により出力される情報を、そのまま警戒船が取得することにより、作業船と同様の退避行動を促すことができる。また、小型船舶の通過のように、退避の必要はないが、周辺を航行する船舶の移動を警戒監視することに利用することも可能となるのである。
次に、作業船を移動する際に支援するための処理方法について説明する。図6は、移動時の支援処理方法を示している。この図に示されるように、移動支援に際しては、作業船の現在位置を特定するため、作業船の最新の情報を読み出し(S601)、その情報から現在位置を特定する(S602)。これらが特定された後に、出発予定時刻および移動先(目的地)を手動で入力する(S603)のである。移動先の入力は表示画面上に表示される位置をポインタで示して地点登録するほか、移動先地点の緯度および経度の数値によって入力する方法などがある。現在位置から移動先位置までが確定すれば、移動経路が選択可能であるが、ここで、他船舶の情報(航行途中の船舶の有無など)を読み出し(S604)、安全に航行できる経路を複数選択し(S605)、これを表示画面に出力する(S606)。なお、移動先地点には退避場所を指定してもよく、退避場所までの経路の候補を選択表示させてもよい。また、移動先には、他の施工区域の場合もあり、施工区域への移動の場合には、当該移動先における退避の可否なども表示内容に含めることができる。
移動経路の候補を選択する場合、作業船の航行速度は、当該船の平均速度を基準とし、選択された移動可能経路は、移動時間が最短となるものから複数の経路を見出すものとしている。これは、表示画面上または周辺海域の目視による状況により、最も安全に移動できる経路を選択し得るためである。例えば、最短時間で移動できるものであっても周辺に小型船舶が多い航路を避けるとか、時間は掛かるが周辺に船舶が存在しない航路があるとか、種々の状況により、最適と判断できる移動経路を選択可能とするのである。なお、移動経路は、表示画面上において線図として表示され、その線図を色分けすることにより、移動時間の長短を示すようにしている。例えば、複数の移動経路の候補について、最短時間で到着するものを青色とし、順次、緑色、黄色、桃色、赤色などのような色分けの方法がある。また、線図に番号を付して表示してもよい。
候補として表示された移動可能経路の中から、いずれかの移動経路を選択し、これを手入力することにより、当該経路を選定する(S607)。選定は、線図をポインタで示して決定するか、線図に付された番号を入力する方法などがある。移動経路が選定されると、その移動経路によって移動した際の到着時刻を推定し(S608)、当該到着時刻における移動先の状態に応じてさらに処理を実行する。すなわち、到着時刻における移動先が一時的な作業のための停泊(または施工)が可能であるか否か(S609)、また、その停泊(または施工)に際して退避の必要性があるか否か(S610)を判断し、停泊可能(または施工可能)かつ退避の必要がない場合は、当該移動経路に決定し(S611)、表示画面に移動経路が出力されることとなる(S612)。
このような場合とは異なり、移動先において停泊(または施工)ができない場合には、移動先または出発時刻の変更を指示する旨が表示画面に出力される(S620)。移動先での施工等の内容により、適当な施工時間が必要な場合は、手入力により、出発時刻を変更して施工時間を確保するか、または移動先を変更して(S621)、他の移動場所での施工等を選択するなど、適宜変更することができる。これに対し、移動先での停泊(または施工)が不要な場合は、同じ内容を入力する(または変更なしとする)。入力が終了した後、入力条件の変更の有無を判断し(S622)、入力条件に変更がない場合は、停泊(または施工)が不要であるものとして、当初の移動経路に決定され(S611)、その経路が表示画面に出力される(S612)。これに対し、出発時刻または移動先のいずれか一方または双方が修正されている場合には、再び他船舶の情報を読み出し(S604)、移動可能経路の候補を選択する(S605)ことから処理を実行することとなる。
また、停泊(または施工)が可能であると判断された場合(S609)であっても、停泊中または施工中(到着後の所定時間内)に退避が必要な場合は、停泊可能時間(または施工可能時間)が表示画面に出力される(S603)。この停泊可能時間は参考情報であり、移動先において停泊するが、短時間であるような場合には、そのままの経路で移動することとし、長時間の停泊(例えば、施工するなど)が必要な場合などにおいては、出発時刻を変更し、または移動先を変更することができる(S631)。停泊可能時間(または施工可能時間)が表示された後、入力条件の変更がなされた否かを確認したうえ(S632) 、変更がなければ、当初選定された移動経路が決定され(S611)、その経路が表示画面上に表示されるが(S612)、変更した場合は、停泊(または施工)ができない場合と同様に、他船舶の情報の読出し(S604)から処理を実行する。
上記のような処理により、作業船の移動支援に際しては、移動経路の船底のみならず、移動先の状態を確認したうえで移動開始時刻などを決定できるようになっている。これにより、施工等の遅延、特に退避等に掛かる無駄な時間を可能な限り削減することが可能となるものである。
本発明の実施形態は、上記のような構成であるから、作業船にあっては、施工等のための場所(施工区域)において、入出港予定の船舶の情報に基づき、無駄な退避時間を省いて可能な限り長期間の施工時間を確保することができる。また、作業船舶の移動に際しては、他船の状況を考慮しつつ、航行可能な経路を選定できることから、港湾内の他船舶の航行状況に応じて安全な移動が容易となる。さらに、警戒船に対しては、作業船が取得できる支援情報と同一情報を共有しつつ誘導等を行うことができ、警戒監視の対象の作業船を中心とする情報を基準とした誘導等を行うことができる。これにより、作業船の施工等の効率化に沿った警戒監視が可能となる。
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、上記実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に制限されることを意図するものではない。従って、本発明の趣旨の範囲において種々の形態とすることができ、上記実施形態を適宜変更することも可能である。
例えば、他船舶航行時刻推定手段は、AIS情報、個別船舶情報、管制情報などの種々の情報を入手し、それらの情報を総合して他船舶の状態を推定するものとしたが、これらの全てを必須のもとすることなく、重要な情報のみに限定してもよく、複数の情報を組み合わせたものとしてもよい。特に、情報によっては、同一船舶に対する同一情報を異なる外部情報から入手できる場合があり、しかも、複数の情報が相互に異なる(完全同一でなく細部において相違する)場合もあるため、複数の情報を組み合わせて使用する場合には、情報の優劣を予め設定しておくことも可能である。そして、船舶の映像を取得する場合は、リアルタイムの情報として修正用としてのみ使用することも可能である。
また、上記実施形態では、出力方法として、海図を基本とする画像データとし、これを表示画面上に表示することによって専ら視覚的な把握を可能としているが、これを文字データとして、表示画面中に文字情報を表示させるものであってもよい。また、警告報知に際しては、緊急性を要する場合、例えば、退避開始時刻経過後において作業船の位置に変化がない場合などにおいて、音声によって報知させる手段を用いてもよい。
さらに、上記表示画面(出力画面)は、個々の作業船(または警戒船)に設置し、各船舶乗員において確認するものとしてもよいが、オペレータ等の操作担当者を基地局に配置し、基地局において出力内容をウォッチして、その内容(指示)のみを作業船(または警戒船)に伝達するような使用方法もあり得る。伝達方法としては無線(例えばIP無線)などを使用し、相互に情報確認をしつつ、基地局からの指示によって退避もしくは施工継続または移動経路の選定などを行ってもよい。
このようにオペレータによる継続的なウォッチの場合、外部情報のうち、重要かつデータ変換不可能なものについては、オペレータが手動により入力することによって、一層信頼性のある情報を得ることができる。また、情報の微調整(部分的な修正)をオペレータが手入力により操作してもよく、システム異常(入力変換ミス等)による修正を行うことにより正確性を確保し得ることとなる。さらに、オペレータを配置しつつ、表示画面を作業船(警戒船)にも設置し、同一画面上に表示される情報を共有しつつ、さらにオペレータとの交信を可能としてもよい。この場合には、移動支援の処理方法における入力をオペレータに指示し、当該オペレータが手動操作するような形態としてもよい。