以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。尚、説明に用いる各図は、概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
図1に示すように、本実施形態の車両10は、駆動源としてのエンジン11、クラッチ・ダンパ12、トランスミッション13、車輪14、及び、駆動源としての電動モータ15を備えている。エンジン11は、複数のシリンダ及びピストンを有する多筒内燃機関であり、ガソリンや軽油等を燃料として動力(エンジントルク)を発生させる。エンジン11は、エンジントルクを出力する出力軸としてのクランクシャフト16を備えている。クランクシャフト16は、クランクシャフト16と一体に回転するフライホイール16aを介して、クラッチ・ダンパ12に接続されている。
クラッチ・ダンパ12は、円環状のクラッチ部12aと、クラッチ部12aの内周に連結された円環状のトーションダンパ部12bと、を有している。クラッチ部12aは、フライホイール16aと、フライホイール16aに固定されたクラッチカバーのプレッシャープレート(図示省略)と、に挟持されるようになっている。クラッチ部12aは、フライホイール16aと摩擦係合することによってエンジントルクをトランスミッション13のインプットシャフト17に伝達し、フライホイール16aとの摩擦係合が解除されることによってエンジントルクのインプットシャフト17(トランスミッション13)への伝達を遮断する。即ち、クラッチ部12aは、エンジン11のクランクシャフト16及びトランスミッション13のインプットシャフト17を断接する。
トーションダンパ部12bは、内周にてトランスミッション13のインプットシャフト17に連結されている。トーションダンパ部12bは、クラッチ部12a(即ち、フライホイール16aでありクランクシャフト16)と一体に回転するアウタープレート(図示省略)と、インプットシャフト17と一体に回転するインナープレート(図示省略)と、インナープレートに固定されてアウタープレートに対して摺動するスラスト部材(図示省略)と、アウタープレート及びインナープレートを連結するように円周方向にて等間隔に配置された複数の圧縮コイルバネ(図示省略)と、を備えた周知のトーションダンパである。
トーションダンパ部12bは、クラッチ部12aが摩擦係合している(即ち、接続状態でエンジントルクを伝達している)ときにアウタープレートに対してインナープレートが相対回転するようになっている。これにより、トーションダンパ部12bは、クランクシャフト16に対してインプットシャフト17の相対回転を許容する。
トーションダンパ部12bは、クランクシャフト16とインプットシャフト17とが相対回転するとき、スラスト部材が円周方向にてアウタープレートに対して摺動し、且つ、圧縮コイルバネが円周方向にて弾性変形する。これにより、トーションダンパ部12bは、スラスト部材が発生する摩擦力及び圧縮コイルバネが伸縮して発生する弾性力によってエンジン11側から入力されるトルク変動(捩じり振動)を減衰する。そして、トーションダンパ部12bは、インプットシャフト17に対してトルク変動を減衰したエンジントルク(以下、このエンジントルクを「ダンパトルク」とも称呼する。)を伝達する。
ここで、相対回転によってクランクシャフト16とインプットシャフト17との間に相対角度差が生じた場合において、トーションダンパ部12bは、円周方向にて捩れ変形を生じる。この場合、トーションダンパ部12bは、スラスト部材が発生する摩擦力及び圧縮コイルバネが発生する弾性力により、捩れ変形に伴うトルクTdamp(以下、このトルクを「捩れトルクTdamp」と称呼する。)が発生する。従って、インプットシャフト17に伝達されるダンパトルクには、捩れトルクTdampが含まれる。尚、後述するように、捩れトルクTdampは、トーションダンパ部12bの捩れ方向について予め設定されたダンパ剛性Kと、クランクシャフト16とインプットシャフト17との相対角度差と、を乗算することにより、算出される。
トランスミッション13は、インプットシャフト17及びドライブシャフト18を有している。トランスミッション13は、前進用の複数(例えば、六つ)の変速段、後進用の一つの変速段、及び、ニュートラル段を有する周知の有段変速機(オートマチック・トランスミッションやマニュアル・トランスミッション等)である。トランスミッション13の変速段は、図示を省略するシフトレバー等の操作に応じて切り替えられる。具体的に、トランスミッション13の変速段は、減速比(ドライブシャフト18の回転数に対するインプットシャフト17の回転数の割合)が変更されることにより形成される。
電動モータ15は、後述する制御装置30によって駆動制御される。本実施形態において、電動モータ15は、インプットシャフト17、トランスミッション13及びドライブシャフト18のうちのトランスミッション13に対してモータシャフト19を介して直結されている。電動モータ15は、駆動回路20を介して制御装置30に接続されている。
車両10においては、トランスミッション13が、インプットシャフト17を介して入力されたダンパトルク及びモータシャフト19を介して入力された電動モータ15の動力(モータトルク)をドライブシャフト18から出力する。ドライブシャフト18は、図示省略のディファレンシャル等を介して、ダンパトルク及びモータトルクを車輪14に伝達する。尚、以下の説明において、エンジン11の動力(エンジントルク)を車輪14に伝達するクランクシャフト16、クラッチ・ダンパ12、インプットシャフト17、トランスミッション13、ドライブシャフト18及びモータシャフト19をまとめて「パワートレーン」と称呼する。
又、車両10は、クランク角センサ21、モータ回転角センサ22、アクセルポジションセンサ23、ストロークセンサ24、及び、シフトポジションセンサ25を備えている。クランク角センサ21は、エンジン11に設けられている。クランク角センサ21は、クランクシャフト16の回転角を表すクランク角θ1を検出して制御装置30に出力する。モータ回転角センサ22は、電動モータ15(より具体的には、モータシャフト19)に設けられている。モータ回転角センサ22は、電動モータ15の回転角を表すモータ回転角θ2を検出して制御装置30に出力する。
アクセルポジションセンサ23は、アクセルに設けられている。アクセルポジションセンサ23は、アクセルの開度を表すアクセル開度Paを検出して制御装置30に出力する。ストロークセンサ24は、クラッチ・ダンパ12に設けられている。ストロークセンサ24は、フライホイール16aに対するクラッチ部12aの接続方向に向けた位置(クランクシャフト16の軸方向における位置)を表すクラッチストローク量Scを検出して制御装置30に出力する。シフトポジションセンサ25は、トランスミッション13に設けられている。シフトポジションセンサ25は、トランスミッション13の変速段を表すシフトポジションMを検出して制御装置30に出力する。
車両10に適用される制御装置30は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース、タイマ等を有するマイクロコンピュータを主要構成部品とするものである。制御装置30は、上記センサ21〜25のそれぞれによって検出された検出値に基づいて、駆動回路20を介して電動モータ15を駆動制御する。
ところで、パワートレーンには、クラッチ・ダンパ12から捩れトルクTdampを含むダンパトルクが入力される。又、トランスミッション13には、モータシャフト19を介して、電動モータ15が直結されている。従って、パワートレーンには、電動モータ15から回転に伴って発生する粘性トルク成分や慣性トルク成分等を含むモータトルクTmgが入力される。捩れトルクTdamp及びモータトルクTmgは、パワートレーンに伝達されると、パワートレーンに振動を発生させる。
そこで、制御装置30は、パワートレーンに発生する(伝達される)振動を制振するように、電動モータ15を駆動制御する。制御装置30は、図2に示すように、制振要否判定部31と、周波数算出部32と、制振制御内容切替部33と、ゲイン算出部34と、トルク算出部35と、フィルタ処理部36と、指令トルク決定部37と、駆動制御部38と、を有している。そして、制御装置30において、ゲイン算出部34は、第一調整ゲイン算出部34−1、第二調整ゲイン算出部34−2、及び、第三調整ゲイン算出部34−3から構成される。又、制御装置30において、トルク算出部35は、第一トルク算出部35−1、第二トルク算出部35−2、及び、第三トルク算出部35−3から構成される。
制振要否判定部31は、エンジン11側からクラッチ・ダンパ12を介してインプットシャフト17以降のパワートレーンに入力された(伝達された)ダンパトルクに起因する振動を制振するか否かを判定する。具体的に、制振要否判定部31は、アクセルポジションセンサ23からアクセル開度Paを入力するとともに、ストロークセンサ24からクラッチストローク量Scを入力する。
そして、アクセル開度Paが、アクセルの操作がなされていない状態を表す「0」である場合、又は、クラッチストローク量Scが、クラッチ部12aがフライホイール16aから離間している状態を表す所定値Sc0以下である場合、ダンパトルクがインプットシャフト17以降のパワートレーンに入力されていない。このため、制振要否判定部31は、制振制御の要否を表す要否判定フラグFRG_Nの値を、制振制御が不要であることを表す「0」に設定する。
一方、制振要否判定部31は、アクセル開度Paが「0」ではなく、且つ、クラッチストローク量Scが所定値Sc0よりも大きい場合、ダンパトルクがパワートレーンに入力される。このため、制振要否判定部31は、要否判定フラグFRG_Nの値を、制振制御が必要であることを表す「1」に設定する。制振要否判定部31は、値を「0」又は「1」に設定した要否判定フラグFRG_Nを指令トルク決定部37に出力する。
周波数算出部32は、エンジントルクのトルク変動に関連して発生し、エンジン11の回転数Neに比例してエンジン11に発生するトルク脈動のエンジン脈動周波数feを算出する。又、周波数算出部32は、トルク脈動に伴うクランクシャフト16とインプットシャフト17との間の周期的な相対回転と、トーションダンパ部12bにおける円周方向の捩れと、が共振するダンパ共振周波数fsを算出する。
上述したように、エンジン11は、四サイクル(ストローク)ガソリンエンジンであるので、クランクシャフト16が二回転する間に一度、特定の気筒で燃焼が発生する。例えば、エンジン11が四気筒ガソリンエンジンである場合には、クランクシャフト16が180°回転する間に何れか一つのシリンダで燃焼が発生する。シリンダ内で燃焼が発生するとピストンを押し下げる力が発生し、その力がクランクシャフト16を回転させるトルクに変換される。従って、エンジン脈動周波数feは、エンジン11の回転数Ne(以下、「エンジン回転数Ne」と称呼する。)及びエンジン11の気筒数nに比例するとともに、エンジン11のサイクル数cに反比例する関係を有する。
このため、周波数算出部32は、クランク角センサ21から連続してクランク角θ1を入力し、クランク角θ1の変化に基づいてエンジン回転数Neを算出する。そして、周波数算出部32は、下記式1に従ってエンジン脈動周波数feを算出する。
尚、前記式1中の「Ne」はクランク角θ1から算出されるエンジン回転数であり、「n」はエンジン11の気筒数(例えば、n=4)であり、「c」はエンジン11のサイクル数(例えば、c=2)である。周波数算出部32は、算出したエンジン脈動周波数feを制振制御内容切替部33に出力する。
クラッチ・ダンパ12のトーションダンパ部12bは、インプットシャフト17を介してトランスミッション13に接続されている。この場合、トーションダンパ部12bのダンパ共振周波数fsは、図3に示すように、エンジン回転数Neの変化に対して、トーションダンパ部12bからインプットシャフト17を介してトランスミッション13に伝達される振動の振動伝達率(振動の伝え易さ)の極値(極大値)に対応する。
ここで、ダンパ共振周波数fs(振動伝達率の極大値)は、エンジン回転数Neに対応して変化するため、トランスミッション13の変速段、即ち、シフトポジションMに依存して変化する。具体的には、ダンパ共振周波数fs(振動伝達率の極大値)はシフトポジションMが高速側(高段)になるほどエンジン回転数Neの高回転数側に移動し、ダンパ共振周波数fs(振動伝達率の極大値)はシフトポジションMが低速側(低段)になるほどエンジン回転数Neの低回転数側に移動する関係を有する。このため、周波数算出部32は、シフトポジションセンサ25からシフトポジションMを入力し、入力したシフトポジションMを用いて図3に示すシフトポジション−振動伝達率マップを参照してクラッチ・ダンパ12のダンパ共振周波数fs(=F(M))を算出する。周波数算出部32は、算出したダンパ共振周波数fsを制振制御内容切替部33に出力する。
制振制御内容切替部33は、周波数算出部32によって算出されたダンパ共振周波数fsに対するエンジン脈動周波数feに応じて、電動モータ15がパワートレーンに発生した振動を制振するために発生するトルク指令Tmを切り替える。具体的に説明すると、制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feがダンパ共振周波数fsから予め設定された正の第一所定値Xを減じた第一周波数f1(=Fs−X)よりも小さい場合と、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上(第一周波数以上)であり、且つ、ダンパ共振周波数fsに予め設定された正の第二所定値Yを加えた第二周波数f2以下(第二周波数以下)である場合と、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい場合と、を判別する。そして、制振制御内容切替部33は、判別結果に基づいて、パワートレーンに発生する振動を抑制するために電動モータ15を駆動させる制振制御内容を切り替える。
制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい場合、第一調整ゲイン算出部34−1及び第一トルク算出部35−1がトルク指令Tmを算出する制御内容(以下、この制御内容を「制御A」と称呼する。)に切り替える。又、制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上(第一周波数以上)であり、且つ、第二周波数f2以下(第二周波数以下)である場合、第二調整ゲイン算出部34−2及び第二トルク算出部35−2がトルク指令Tmを算出する制御内容(以下、この制御内容を「制御B」と称呼する。)に切り替える。更に、制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい場合、第三調整ゲイン算出部34−3及び第三トルク算出部35−3がトルク指令Tmを算出する(以下、この制御内容を「制御C」と称呼する。)に切り替える。
このため、制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい場合には、算出トルクの切り替えを表す切替フラグFRG_Kの値を、制御Aを表す「1」に設定する。又、制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下の場合には、切替フラグFRG_Kの値を、制御Bを表す「2」に設定する。更に、制振制御内容切替部33は、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい場合には、切替フラグFRG_Kの値を、制御Cを表す「3」に設定する。制振制御内容切替部33は、値が「1」、「2」又は「3」に設定された切替フラグFRG_Kを第一調整ゲイン算出部34−1、第二調整ゲイン算出部34−2及び第三調整ゲイン算出部34−3に出力する。
次に、ゲイン算出部34を構成する第一調整ゲイン算出部34−1、第二調整ゲイン算出部34−2及び第三調整ゲイン算出部34−3を説明する。
上述したように、捩れトルクTdampは、クランクシャフト16とインプットシャフト17との間に生じる相対回転により、トーションダンパ部12bに生じる捩れに起因して発生するトルクである。クランクシャフト16とインプットシャフト17とはトーションダンパ部12bを介して連結されている。
このため、クランクシャフト16とインプットシャフト17との間の相対回転は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上であって、特に、ダンパ共振周波数fsと一致するように変化するとき、即ち、制御B、及び、制御Cにおいて大きくなる。一方、クランクシャフト16とインプットシャフト17との間の相対回転は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい場合に実行される制御Aにおいて小さくなる。
一方、モータトルクTmgに含まれる粘性トルク成分や慣性トルク成分等は、電動モータ15の回転数Nm(以下、「モータ回転数Nm」と称呼する。)の増大に伴って減少する。電動モータ15は、モータシャフト19を介してトランスミッション13に接続されており、トランスミッション13はインプットシャフト17及びクラッチ・ダンパ12を介して、クランクシャフト16即ちエンジン11に接続されている。
従って、電動モータ15は、エンジン脈動周波数feで脈動するダンパトルクが伝達される。エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい制御Aにおいてダンパトルクが電動モータ15に伝達されると、電動モータ15は比較的低いモータ回転数Nmで回転する。このため、電動モータ15のモータトルクTmgに含まれる粘性トルク成分や慣性トルク成分等が大きくなる。一方、制御B及び制御Cにおいてダンパトルクが電動モータ15に伝達されると、電動モータ15は比較的高いモータ回転数Nmで回転する。このため、電動モータ15のモータトルクTmgに含まれる粘性トルク成分や慣性トルク成分等が小さくなる。
このようにエンジン脈動周波数feに依存して大きさが変化する捩れトルクTdamp及びモータトルクTmg(より詳しくは、粘性トルク成分や慣性トルク成分等)は、インプットシャフト17以降のパワートレーンに無用な振動を生じさせる。従って、第一調整ゲイン算出部34−1〜第三調整ゲイン算出部34−3は、それぞれ、第一トルク算出部35−1〜第三トルク算出部35−3が捩れトルクTdamp及び/又はモータトルクTmgを相殺するように逆相のトルク指令Tmを算出するための第一ゲインG1、第二ゲインG2、第三ゲインG3及び第四ゲインG4のうちの何れかのゲインを算出する。
制振制御内容切替部33によって切替フラグFRG_Kの値が「1」に設定された制御Aにおいて、第一調整ゲイン算出部34−1は、第一トルク算出部35−1が下記式2に従ってトルク指令Tmを算出するための第一ゲインG1を算出する。第一ゲインG1は、モータトルクTmgに含まれる粘性トルク成分や慣性トルク成分等を低減するモータトルク低減成分Te_mである電動モータ15のモータ回転数Nmに乗算されるゲインである。
第一調整ゲイン算出部34−1は、周波数算出部32からエンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを入力する。第一調整ゲイン算出部34−1は、これら入力したエンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを用いて、図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照することにより、エンジン脈動周波数feに対応する第一ゲインG1を算出する。第一調整ゲイン算出部34−1は、算出した第一ゲインG1を第一トルク算出部35−1に出力する。ここで、第一ゲインG1は、図4に示すように、第一周波数f1よりも小さい周波数帯域におけるエンジン脈動周波数feの変化に対して一定となる。これにより、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1と一致するときに、第一ゲインG1は最小値となる。但し、第一ゲインG1は、G1>0となる値である。
制振制御内容切替部33によって切替フラグFRG_Kの値が「2」に設定された制御Bにおいて、第二調整ゲイン算出部34−2は、第二トルク算出部35−2が下記式3に従ってトルク指令Tmを算出するための第二ゲインG2及び第三ゲインG3を算出する。第二ゲインG2はモータトルク低減成分Te_mである電動モータ15のモータ回転数Nmに乗算されるゲインであり、第三ゲインG3はトーションダンパ部12bの捩れトルクTdampを低減する捩れトルク低減成分Te_dに乗算されるゲインである。
第二調整ゲイン算出部34−2は、周波数算出部32からエンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを入力する。第二調整ゲイン算出部34−2は、これら入力したエンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを用いて、図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照することにより、エンジン脈動周波数feに対応する第二ゲインG2及び第三ゲインG3を算出する。第二調整ゲイン算出部34−2は、算出した第二ゲインG2及び第三ゲインG3を第二トルク算出部35−2に出力する。
ここで、第二ゲインG2は、図4に示すように、第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下の周波数帯域において、エンジン脈動周波数feの増加に伴って第一ゲインG1の大きさから「0」まで変化する。即ち、第二ゲインG2は、0≦G2≦G1となる値である。一方、第三ゲインG3は、図4に示すように、第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下の周波数帯域において、エンジン脈動周波数feの増加に伴って「0」から後述する第四ゲインG4の大きさまで変化する。即ち、第三ゲインG3は、0≦G3≦G4となる値である。尚、本実施形態において、第二ゲインG2及び第三ゲインG3は、エンジン脈動周波数feがダンパ共振周波数fsに一致する場合、互いに等しい値となる。
制振制御内容切替部33によって切替フラグFRG_Kの値が「3」に設定された制御Cにおいて、第三調整ゲイン算出部34−3は、第三トルク算出部35−3が下記式4に従ってトルク指令Tmを算出するための第四ゲインG4を算出する。第四ゲインG4は、捩れトルク低減成分Te_dに乗算されるゲインである。
第三調整ゲイン算出部34−3は、周波数算出部32からエンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを入力する。第三調整ゲイン算出部34−3は、これら入力したエンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを用いて、図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照することにより、エンジン脈動周波数feに対応する第四ゲインG4を算出する。第三調整ゲイン算出部34−3は、算出した第四ゲインG4を第三トルク算出部35−3に出力する。ここで、第四ゲインG4は、図4に示すように、第二周波数f2よりも大きい周波数帯域におけるエンジン脈動周波数feの変化に対して一定となる。これにより、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2と一致するときに、第四ゲインG4は最大値となる。但し、第四ゲインG4は、G4>0となる値である。
次に、トルク算出部35を構成する第一トルク算出部35−1、第二トルク算出部35−2及び第三トルク算出部35−3を説明する。
第一トルク算出部35−1は、モータ回転角センサ22からモータ回転角θ2を入力し、モータ回転角θ2の変化に基づいてモータ回転数Nmを算出する。そして、第一トルク算出部35−1は、第一ゲインG1とモータ回転数Nm即ちモータトルク低減成分Te_mとを用いた下記式2に従い、インプットシャフト17以降のパワートレーンに発生する振動を制振するように電動モータ15を駆動させるためのトルク指令Tmを算出する。
前記式2に従って算出されるトルク指令Tmに対応して電動モータ15がトルクを出力すると、電動モータ15の回転に伴ってトランスミッション13に入力されるモータトルクTmgに対して逆相のモータトルク低減成分Te_mが作用する。第一トルク算出部35−1は、算出したトルク指令Tmをフィルタ処理部36に出力する。
第二トルク算出部35−2は、クランク角センサ21からクランク角θ1を入力するとともにモータ回転角センサ22からモータ回転角θ2を入力する。第二トルク算出部35−2は、入力したモータ回転角θ2の変化に基づいてモータ回転数Nmを算出する。そして、第二トルク算出部35−2は、第二ゲインG2、モータ回転数Nm即ちモータトルク低減成分Te_m、第三ゲインG3、クランク角θ1及びモータ回転角θ2を用いた下記式3に従ってトルク指令Tmを算出する。
但し、前記式3中の「K」は、トーションダンパ部12bが捩れ方向に弾性変形する際のダンパ剛性である。
前記式3において、右辺第一項は電動モータ15の回転に伴ってトランスミッション13に入力されるモータトルクTmgに対して逆相のモータトルク低減成分Te_mとして作用し、右辺第二項はトーションダンパ部12bの捩れに伴ってトランスミッション13に入力される捩れトルクTdampに対して逆相の捩れトルク低減成分Te_dとして作用する。即ち、制御Bにおけるトルク指令Tmは、モータトルク低減成分の値と捩れトルク低減成分の値とを合算して算出される。従って、前記式3に従って算出されるトルク指令Tmに対応して電動モータ15が出力するトルクは、モータトルクTmgに対して逆相として作用するとともに捩れトルクTdampに対して逆相として作用する。第二トルク算出部35−2は、算出したトルク指令Tmをフィルタ処理部36に出力する。
第三トルク算出部35−3は、クランク角センサ21からクランク角θ1を入力するとともにモータ回転角センサ22からモータ回転角θ2を入力する。そして、第三トルク算出部35−3は、第四ゲインG4、クランク角θ1及びモータ回転角θ2を用いた下記式4に従ってトルク指令Tmを算出する。
但し、前記式4中の「K」は、トーションダンパ部12bが捩れ方向に弾性変形する際のダンパ剛性である。前記式4に従って算出されるトルク指令Tmに対応して電動モータ15が出力するトルクは、トーションダンパ部12bの捩れに伴ってトランスミッション13に入力される捩れトルクTdampに対して逆相の捩れトルク低減成分Te_dとして作用する。第三トルク算出部35−3は、算出したトルク指令Tmをフィルタ処理部36に出力する。
フィルタ処理部36は、第一トルク算出部35−1、第二トルク算出部35−2又は第三トルク算出部35−3によって算出されたトルク指令Tmをバンドパスフィルタ処理する。具体的に、フィルタ処理部36は、周波数算出部32からエンジン脈動周波数feを入力し、エンジン脈動周波数feを通過させる通過帯域(周波数帯域)を有するバンドパスフィルタF(s)を設定する。フィルタ処理部36は、第一トルク算出部35−1、第二トルク算出部35−2又は第三トルク算出部35−3によって算出されたトルク指令Tmを入力し、入力したトルク指令TmにバンドパスフィルタF(s)を乗算してバンドパスフィルタ処理する。そして、フィルタ処理部36は、トルク指令Tmをバンドパスフィルタ処理したフィルタ後トルク指令Tm_bpf(=Tm×F(s))を指令トルク決定部37に出力する。
ここで、制御Aにおいて第一トルク算出部35−1によって算出されるトルク指令Tm、制御Bにおいて第二トルク算出部35−2によって算出されるトルク指令Tm及び第三トルク算出部35−3によって算出されるトルク指令Tmは、エンジン脈動周波数fe成分に加えて、エンジン11が車両10を加減速するための周波数成分(例えば、ダンパ共振周波数fsよりも低い周波数成分)を含んでいる。トルク指令Tmは、パワートレーンに発生する振動を制御するために電動モータ15が発生させるトルクである。従って、フィルタ処理部36は制御A、制御B又は制御Cにおいて算出されたトルク指令Tmをバンドフィルタ処理してフィルタ後トルク指令Tm_bpfを生成する。これにより、エンジン11が車両10を加減速させるための周波数成分を減衰させることなく、パワートレーンに発生する振動は制振される。
指令トルク決定部37は、制振要否判定部31による判別結果に応じて、電動モータ15に発生させる制振制御トルク指令Tm_reqを決定する。即ち、指令トルク決定部37は、制振要否判定部31から入力した要否判定フラグFRG_Nの値が「0」であればパワートレーンに振動が発生しておらず制振制御が不要であるため、制振制御トルク指令Tm_reqを「0」と決定する。そして、指令トルク決定部37は、「0」に決定した制振制御トルク指令Tm_reqを駆動制御部38に出力する。
一方、指令トルク決定部37は、制振要否判定部31から要否判定フラグFRG_Nの値が「1」であればパワートレーンに振動が発生して制振制御が必要である。このため、指令トルク決定部37は、フィルタ処理部36から入力したフィルタ後トルク指令Tm_bpfを、電動モータ15の性能及び予め設定されている制振性能目標によって決定された上下限値の範囲となるように上下限処理して、制振制御トルク指令Tm_reqを決定する。
駆動制御部38は、指令トルク決定部37から入力した制振制御トルク指令Tm_reqを用いて図5に示す制振制御トルク指令−目標電流値マップを参照し、電動モータ15に供給する目標電流値Idを決定する。目標電流値Idは、制振制御トルク指令Tm_reqが「0」の場合に「0」と決定され、制振制御トルク指令Tm_reqが大きくなるにつれて大きくなるように決定される。
駆動制御部38は、決定した目標電流値Idに基づき駆動回路20を制御する。この場合、駆動制御部38は、駆動回路20に設けられた電流検出器20aから電動モータ15に流れる電流値をフィードバック入力し、目標電流値Idの電流が電動モータ15に流れるように駆動回路20を制御する。これにより、電動モータ15は、制振制御トルク指令Tm_reqに応じた制振制御用トルクTvを、モータシャフト19を介してトランスミッション13即ちパワートレーンに出力する。尚、駆動制御部38は、例えば、アクセル開度Paに応じた走行用トルクが決定されて車両10を走行させるために電動モータ15を駆動させる場合、制振制御トルク指令Tm_reqに応じた制振制御用トルクTvに加えて走行用トルクを発生させるように電動モータ15を駆動させることも可能である。
次に、上述した制御装置30の作動を、図6に示す「制振制御プログラム」にフローチャートに従って説明する。「制振制御プログラム」は、制御装置30(マイクロコンピュータ)を構成するCPUによって実行される。尚、「制振制御プログラム」は、制御装置30(マイクロコンピュータ)を構成するROMに予め記憶されている。制御装置30は、「制振制御プログラム」の実行を、所定の短い時間が経過する毎にステップS10にて繰り返し開始する。
制御装置30(より詳しくは、CPU)は、ステップS10にて「制振制御プログラム」の実行を開始すると、ステップS11にて、クランク角センサ21、モータ回転角センサ22、アクセルポジションセンサ23、ストロークセンサ24及びシフトポジションセンサ25のそれぞれから検出値を入力する。制御装置30は、各センサ21〜25から、クランク角θ1、モータ回転角θ2、アクセル開度Pa、クラッチストローク量Sc、シフトポジションMを入力すると、ステップS12に進む。
ステップS12においては、制御装置30(制振要否判定部31)は、前記ステップS11にて入力したアクセル開度Pa及びクラッチストローク量Scに基づき、パワートレーンに対する制振制御の要否を判定する。具体的に、制御装置30は、アクセル開度Paが「0」ではなく、且つ、クラッチストローク量Scが所定値Sc0よりも大きければダンパトルクが入力されており、制振制御が必要であるため、「Yes」と判定してステップS13に進む。一方、制御装置30は、アクセル開度Paが「0」又はクラッチストローク量Scが所定値Sc0以下であればダンパトルクが入力されておらず、制振制御が不要であるため、「No」と判定してステップS25に進む。尚、ステップS25においては、制御装置30は、制振制御トルク指令Tm_reqをゼロ(「0」)とする。
ステップS13においては、制御装置30(周波数算出部32)は、エンジン脈動周波数feを算出する。即ち、制御装置30は、前記ステップS11にて入力したクランク角θ1に基づいてエンジン回転数Neを算出する。そして、制御装置30は、エンジン回転数Neを用いた前記式1に従ってエンジン脈動周波数feを算出し、ステップS14に進む。
ステップS14においては、制御装置30(周波数算出部32)は、ダンパ共振周波数fsを算出する。即ち、制御装置30は、前記ステップS11にて入力したシフトポジションMに対応するダンパ共振周波数fsを算出する。この場合、制御装置30は、入力したシフトポジションMを用いて、図3に示すシフトポジション−振動伝達率マップを参照してダンパ共振周波数fsを算出する。そして、制御装置30は、ダンパ共振周波数fsを算出すると、ステップS15に進む。
ステップS15においては、制御装置30(制振制御内容切替部33)は、エンジン脈動周波数feに応じて、算出するトルク指令Tmを、制御Aのトルク指令Tm、制御Bのトルク指令Tm又は制御Cのトルク指令Tmに切り替える。この場合、制御装置30は、前記ステップS13にて算出したエンジン脈動周波数fe及び前記ステップS14にて算出したダンパ共振周波数fsを用いて、算出するトルク指令Tmを切り替える。
具体的に、制御装置30は、エンジン脈動周波数feがダンパ共振周波数fsから正の第一所定値Xを減じた第一周波数f1(=fs−X)よりも小さい場合、制御Aのトルク指令Tmを算出するためにステップS16に進む。又、制御装置30は、エンジン脈動周波数feが、第一周波数f1以上、且つ、ダンパ共振周波数fsに正の第二所定値Yを加えた第二周波数f2(=fs+Y)以下の場合、制御Bのトルク指令Tmを算出するためにステップS18に進む。更に、制御装置30は、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい場合、制御Cのトルク指令Tmを算出するためにステップS20に進む。
前記ステップS15の切り替え判定に従い、制御Aの場合、制御装置30(第一調整ゲイン算出部34−1)は、ステップS16において、第一ゲインG1を算出する。即ち、制御装置30は、前記ステップS12にて算出したエンジン脈動周波数fe及び前記ステップS13にて算出したダンパ共振周波数fsを用いて、図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照する。これにより、制御装置30は、第一周波数f1よりも小さい周波数帯域においてエンジン脈動周波数feの変化に対して一定値となる第一ゲインG1を算出する。そして、制御装置30は、第一ゲインG1を算出すると、ステップS17に進む。
ステップS17においては、制御装置30(第一トルク算出部35−1)は、前記ステップS11にて入力したモータ回転角θ2から算出した電動モータ15のモータ回転数Nm(即ち、モータトルク低減成分Te_m)と、前記ステップS16にて算出した第一ゲインG1と、を用いた前記式2に従って制御Aにおけるトルク指令Tmを算出する。そして、制御装置30は、制御Aにおけるトルク指令Tmを算出すると、ステップS22に進む。
前記ステップS15の切り替え判定に従い、制御Bの場合、制御装置30(第二調整ゲイン算出部34−2)は、ステップS18において、第二ゲインG2及び第三ゲインG3を算出する。即ち、制御装置30は、前記ステップS12にて算出したエンジン脈動周波数fe及び前記ステップS13にて算出したダンパ共振周波数fsを用いて、図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照する。
これにより、制御装置30は、第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下において、エンジン脈動周波数feの増加に伴って第一ゲインG1から「0」まで減少する第二ゲインG2を算出する。又、制御装置30は、第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下において、エンジン脈動周波数feの増加に伴って「0」から第四ゲインG4の大きさまで増加する第三ゲインG3を算出する。尚、本実施形態においては、エンジン脈動周波数feがダンパ共振周波数fsと一致する場合、第二ゲインG2の大きさと第三ゲインG3の大きさとが一致する。そして、制御装置30は、第二ゲインG2及び第三ゲインG3を算出すると、ステップS19に進む。
ステップS19においては、制御装置30(第二トルク算出部35−2)は、前記ステップS11にて入力したクランク角θ1及びモータ回転角θ2とダンパ剛性Kとから算出される捩れトルク低減成分Te_dと、モータ回転角θ2から算出した電動モータ15のモータ回転数Nm(即ち、モータトルク低減成分Te_m)と、前記ステップS18にて算出した第二ゲインG2及び第三ゲインG3と、を用いた前記式3に従って制御Bにおけるトルク指令Tmを算出する。そして、制御装置30は、制御Bにおけるトルク指令Tmを算出すると、ステップS22に進む。
前記ステップS15の切り替え判定に従い、制御Cの場合、制御装置30(第三調整ゲイン算出部34−3)は、ステップS20において、第四ゲインG4を算出する。即ち、制御装置30は、前記ステップS12にて算出したエンジン脈動周波数fe及び前記ステップS13にて算出したダンパ共振周波数fsを用いて、図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照する。これにより、制御装置30は、第二周波数f2よりも大きい周波数帯域においてエンジン脈動周波数feの変化に対して一定値となる第四ゲインG4を算出する。そして、制御装置30は、第四ゲインG4を算出すると、ステップS21に進む。
ステップS21においては、制御装置30(第三トルク算出部35−3)は、前記ステップS11にて入力したクランク角θ1及びモータ回転角θ2とダンパ剛性Kとから算出される捩れトルク低減成分Te_dと、前記ステップS20にて算出した第四ゲインG4と、を用いた前記式3に従って制御Cにおけるトルク指令Tmを算出する。そして、制御装置30は、制御Cにおけるトルク指令Tmを算出すると、ステップS22に進む。
前記ステップS17、前記ステップS19又は前記ステップS21のステップ処理後、ステップS22にて、制御装置30(フィルタ処理部36)は、前記ステップS13にて算出したエンジン脈動周波数feを用いて、エンジン脈動周波数feを通過させるバンドパスフィルタF(s)を算出する。そして、制御装置30は、バンドパスフィルタF(s)を算出すると、ステップS23に進む。
ステップS23においては、制御装置30(フィルタ処理部36)は、前記ステップS22にて算出したバンドパスフィルタF(s)を、前記ステップS17にて算出した制御Aにおけるトルク指令Tm、前記ステップS19にて算出した制御Bにおけるトルク指令Tm又は前記ステップS21にて算出した制御Cにおけるトルク指令Tmに乗算してバンドパスフィルタ処理する。そして、制御装置30は、制御Aにおけるトルク指令Tm、制御Bにおけるトルク指令Tm又は制御Cにおけるトルク指令Tmをバンドパスフィルタ処理してフィルタ後トルク指令Tm_bpfを算出すると、ステップS24に進む。
ここで、制御Aにおけるトルク指令Tm、制御Bにおけるトルク指令Tm及び制御Cにおけるトルク指令Tmは、エンジン11が車両10を加減速する周波数成分(周波数帯域)を含んでいる。従って、エンジン脈動周波数feを通過させるバンドパスフィルタF(s)を用いて算出されたフィルタ後トルク指令Tm_bpfは、車両10の加減速に影響を与えることなくパワートレーンに発生する振動を制振するように、電動モータ15にトルクを発生させる。制御装置30は、フィルタ後トルク指令Tm_bpfを算出すると、ステップS24に進む。
ステップS24においては、制御装置30(指令トルク決定部37)は、前記ステップS23にて算出したフィルタ後トルク指令Tm_bpfを上下限処理する。そして、制御装置30は、上下限処理により制振制御トルク指令Tm_reqを決定し、ステップS26に進む。
前記ステップS12にて制御装置30(制振要否判定部31)が「No」と判定すると、制御装置30(指令トルク決定部37)はステップS25のステップ処理を実行する。ステップS25においては、制御装置30は、制振制御トルク指令Tm_reqをゼロ(「0」)と決定する。そして、制御装置30は、制振制御トルク指令Tm_reqを「0」と決定すると、ステップS26に進む。
ステップS26においては、制御装置30(駆動制御部38)は、前記ステップS24又は前記ステップS25にて決定した制振制御トルク指令Tm_reqに従って、電動モータ15を駆動制御する。即ち、制御装置30は、決定した制振制御トルク指令Tm_reqを用いて、図5に示す制振制御トルク指令−目標電流値マップを参照し、電動モータ15に供給する目標電流値Idを決定する。尚、制御装置30は、前記ステップS25にて制振制御トルク指令Tm_reqを「0」と決定した場合には、目標電流値Idを「0」と決定する。
そして、制御装置30は、駆動回路20の電流検出器20aから電動モータ15に流れる電流値をフィードバック入力し、目標電流値Idの電流が電動モータ15に流れるように駆動回路20を制御する。これにより、電動モータ15は、制振制御トルク指令Tm_reqに応じた制振制御用トルクTvをパワートレーンに対して出力する。
制御装置30は、前記ステップS26にて電動モータ15を駆動制御すると、ステップS27に進む。そして、制御装置30は、ステップS27にて「制振制御プログラム」の実行を一旦終了し、所定の短い時間が経過すると、再び、前記ステップS10にて「制振制御プログラム」の実行を開始する。
ところで、制御装置30は、制振制御トルク指令Tm_reqを決定して電動モータ15を駆動制御する。これにより、電動モータ15は、制振制御トルク指令Tm_reqに応じた制振制御用トルクTvをパワートレーンに入力することにより、パワートレーンに発生した振動を制振する。
上述したように、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1(=fs−X)よりも低周波数である場合、クランクシャフト16とインプットシャフト17との間の相対回転が小さくなるので、クラッチ・ダンパ12の捩れトルクTdampは小さくなる。一方、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも低周波数である場合、モータシャフト19を介してトランスミッション13に直結された電動モータ15は比較的低い回転数で回転する。このため、電動モータ15が回転に伴って発生するモータトルクTmg(粘性トルク成分や慣性トルク成分を含む)は大きくなる。従って、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも低周波数である場合には、主に、電動モータ15のモータトルクTmgに起因する振動がパワートレーンに発生する。
エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも低周波数である場合、換言すれば、制御Aにおいては、制御装置30は、前記式2に従って電動モータ15のモータ回転数Nmに基づくトルク指令Tmを算出する。そして、制御装置30が制振制御トルク指令Tm_reqを決定し制振制御トルク指令Tm_reqに基づいて電動モータ15を駆動制御することにより、電動モータ15が制振制御用トルクTvをパワートレーンに出力する。
制御Aが実行される状況は、図7に示すように、電動モータ15のモータ回転数Nmが粘性トルク成分や慣性トルク成分の影響を受けながら周期的に変化し、このモータ回転数Nmに応じたモータトルクTmgを含むダンパトルクが周期的に変化する。このダンパトルクに対して電動モータ15が、ダンパトルクと逆相となる制振制御用トルクTv(即ち、モータトルク低減成分Te_m)を発生させることにより、ドライブシャフト18に伝達されるトルクTd(以下、このトルクTdを「D/SトルクTd」と称呼する。)の変動を表す振幅が小さくなる。その結果、パワートレーンに発生する振動が抑制される。
又、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下の場合、換言すれば、エンジン脈動周波数feがダンパ共振周波数fsに近い場合、クランクシャフト16とインプットシャフト17との相対回転が大きくなる。従って、トーションダンパ部12bはパワートレーンに対して捩れトルクTdampを入力するようになる。このため、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下の場合には、換言すれば、制御Bにおいては、捩れトルクTdampとモータトルクTmgとに起因する振動がパワートレーンに発生する。
制御Bの場合、制御装置30は、前記式3に従ってモータトルク低減成分Te_m及び捩れトルク低減成分Te_dに基づくトルク指令Tmを算出する。そして、制御装置30が制振制御トルク指令Tm_reqを決定し制振制御トルク指令Tm_reqに基づいて電動モータ15を駆動制御することにより、電動モータ15が制振制御用トルクTvをパワートレーンに出力する。
制御Bが実行される状況では、図8に示すように、電動モータ15のモータ回転数Nmが図7に示す制御Aの場合に比べて高速で周期的に変化し、トーションダンパ部12bの捩れトルクTdampの影響を受けながらダンパトルクが周期的に変化する。このダンパトルクに対して電動モータ15が、ダンパトルクと逆相となる制振制御用トルクTv(即ち、捩れトルク低減成分Te_d)を発生させることにより、ドライブシャフト18に伝達されるD/SトルクTdの振幅が小さくなる。その結果、パワートレーンに発生する振動が抑制される。
更に、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも高周波数である場合、電動モータ15の粘性トルク成分や慣性トルク成分を含むモータトルクTmgが小さくなる一方で、クランクシャフト16とインプットシャフト17とは相対回転が容易になる。従って、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも高周波数である場合には、主に、トーションダンパ部12bの捩れトルクTdampに起因する振動がパワートレーンに発生する。
エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも高周波数である場合、換言すれば、制御Cにおいては、制御装置30は、前記式4に従ってトーションダンパ部12bの捩れ(θ1−θ2)に基づくトルク指令Tmを算出する。そして、制御装置30が制振制御トルク指令Tm_reqを決定し制振制御トルク指令Tm_reqに基づいて電動モータ15を駆動制御することにより、電動モータ15が制振制御用トルクTvをパワートレーンに出力する。
制御Cが実行される状況は、図9に示すように、電動モータ15のモータ回転数Nmが図8に示す制御Bの場合に比べて高速で周期的に変化し、トーションダンパ部12bの捩れトルクTdampの影響を受けながらダンパトルクが周期的に変化する。このダンパトルクに対して電動モータ15が、ダンパトルクと逆相となる制振制御用トルクTv(即ち、捩れトルク低減成分Te_d)を発生させることにより、パワートレーンに発生する振動が抑制される。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態の車両の制御装置30は、エンジン11と、トランスミッション13と、エンジン11のクランクシャフト16及びトランスミッション13のインプットシャフト17を断接するクラッチ・ダンパ12のクラッチ部12aと、クラッチ部12aの接続状態においてクランクシャフト16及びインプットシャフト17の相対回転を捩れ変形によって許容するクラッチ・ダンパ12のトーションダンパ部12bと、トランスミッション13のドライブシャフト18に接続された車輪14と、エンジン11の動力(エンジントルク)を車輪14に伝達するパワートレーンを構成するインプットシャフト17、トランスミッション13及びドライブシャフト18の何れかであるトランスミッション13に接続された電動モータ15と、を有する車両10に適用される。
制御装置30は、電動モータ15の駆動を制御するものであり、エンジン11のエンジン回転数Neに比例してエンジン11に発生するトルク脈動の周波数を表すエンジン脈動周波数feを算出するとともに、トーションダンパ部12bがエンジン脈動周波数feと捩れ方向にて共振するダンパ共振周波数fsを算出する周波数算出部32と、エンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを用いて、エンジン脈動周波数feがダンパ共振周波数fsから第一所定値Xを減じた第一周波数f1よりも小さい場合、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上であり、且つ、ダンパ共振周波数fsに第二所定値Yを加えた第二周波数f2以下である場合、及び、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい場合を判別して、パワートレーンに発生する振動を制振する制振制御内容を切り替える制振制御内容切替部33と、制振制御内容切替部33によって切り替えられた制振制御内容に応じて、電動モータ15を駆動さえるためのトルク指令Tmに用いられるゲインである第一ゲインG1〜第四ゲインG4を、エンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを用いて算出するゲイン算出部34と、トーションダンパ部12bが発生する捩れトルクTdampに対して逆相の捩れトルク低減成分Te_d及び電動モータ15の回転に伴って発生するモータトルクに対して逆相のモータトルク低減成分Te_mのうちの少なくとも一方と、ゲイン算出部34によって算出された第一ゲインG1〜第四ゲインG4と、を乗算して、トルク指令Tmを算出するトルク算出部35と、電動モータ15にパワートレーンに発生する振動を制振するための制振制御用トルクTvを発生させる制振制御トルク指令Tm_reqをトルク指令Tmに基づいて決定する指令トルク決定部37と、制振制御トルク指令Tm_reqに基づいて電動モータ15を駆動制御し、電動モータ15に制振制御用トルクTvを発生させる駆動制御部38と、を備える。この場合、指令トルク決定部37は、トルク指令Tmを上下限処理して制振制御トルク指令Tm_reqを決定することができる。
これらの場合、より具体的に、ゲイン算出部34は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい制御Aの場合において、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1と一致するときに最小値となる第一ゲインG1を算出する第一調整ゲイン算出部34−1と、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上であり、且つ、第二周波数f2以下である制御Bの場合において、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1から第二周波数f2に向けて増大するにつれて減少する第二ゲインG2、及び、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1から第二周波数f2に向けて増大するにつれて増大する第三ゲインG3を算出する第二調整ゲイン算出部34−2と、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい制御Cの場合において、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2と一致するときに最大値となる第四ゲインG4を算出する第三調整ゲイン算出部34−3と、から構成される。
又、トルク算出部35は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい制御Aの場合において、モータトルク低減成分と第一ゲインG1とを乗算してトルク指令Tmを算出する第一トルク算出部35−1と、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上であり、且つ、第二周波数f2以下である制御Bの場合において、モータトルク低減成分Te_mと第二ゲインとを乗算して算出される値、及び、捩れトルク低減成分Te_dと第三ゲインG3とを乗算して算出される値を合算してトルク指令Tmを算出する第二トルク算出部35−2と、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい場合において、捩れトルク低減成分Te_dと第四ゲインG4とを乗算してトルク指令Tmを算出する第三トルク算出部35−3と、から構成される。
これらによれば、制御装置30は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1よりも小さい制御A、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1以上、且つ、第二周波数f2以下の制御B、及び、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きい制御Cを判別し、制御A〜制御Cに応じて、制振制御内容を切り替えることができる。そして、制御装置30は、制御Aにおいてはモータトルク低減成分Te_mに乗算される第一ゲインG1、制御Bにおいてはモータトルク低減成分Te_mに乗算される第二ゲインG2及び捩れトルク低減成分Te_dに乗算される第三ゲインG3、制御Cにおいては捩れトルク低減成分Te_dに乗算される第四ゲインG4を算出してトルク指令Tmを算出し、最終的に制振制御トルク指令Tm_reqに基づいて電動モータ15を駆動制御することができる。これにより、車両10の走行時において、パワートレーンに発生する振動を良好に制振(減衰)させることができ、運転者が不快な振動や車室内に進入する音(こもり音等)を知覚して不快感を覚えることを抑制することができる。
又、これらの場合、制御装置30が、エンジン脈動周波数feを通過帯域とするバンドパスフィルタF(s)を設定し、トルク指令Tmをバンドパスフィルタ処理してフィルタ後トルク指令Tm_bpfを算出するフィルタ処理部を有しており、指令トルク決定部37は、フィルタ後トルク指令Tm_bpfに基づいて制振制御トルク指令Tm_reqを算出する。
この場合、指令トルク決定部37は、フィルタ後トルク指令Tm_bpfを上下限処理して制振制御トルク指令Tm_reqを決定することができる。
これらによれば、電動モータ15からパワートレーンに入力される制振制御用トルクTvは、エンジン11が車両10を加減速するための周波数帯域を含まない。これにより、制振制御用トルクTvは、車両10の加減速に影響を与えることなく、パワートレーンに発生した振動を良好に制振(抑制)することができる。
又、これらの場合、制御装置30はクラッチ・ダンパ12のクラッチ部12aの接続方向に向けたクラッチストローク量Scに応じて、電動モータ15に制振制御用トルクTvを発生させるか否かを判定する制振要否判定部31を有しており、指令トルク決定部37は、制振要否判定部31によって制振制御用トルクTvの発生が不要であると判定された場合、制振制御トルク指令Tm_reqをゼロ(「0」)と決定する。
これによれば、パワートレーンに振動が発生した場合にのみ、電動モータ15に制振制御用トルクTvを発生させることができる。これにより、制御装置30の構成を簡略化することができる。
又、これらの場合、トルク算出部35は、捩れトルク低減成分Te_dを、捩れ方向におけるトーションダンパ部12bに予め設定されたダンパ剛性Kとクランクシャフト16のクランク角θ1と電動モータ15のモータ回転角θ2とを用いて算出し、モータトルク低減成分Te_mを、電動モータ15のモータ回転角θ2を用いて算出することができる。
又、これらの場合、周波数算出部32は、エンジン脈動周波数feをクランクシャフト16のクランク角θ1から算出したエンジン11のエンジン回転数Neを用いて算出し、ダンパ共振周波数fsをトランスミッション13の変速段であるシフトポジションMに応じて算出することができる。
これらによれば、特殊なセンサ類を設けることなく、捩れトルク低減成分、モータトルク低減成分、エンジン脈動周波数fe及びダンパ共振周波数fsを算出することができる。従って、制御装置30の構成を簡略化することができる。
本発明の実施に当たっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態においては、制御装置30が算出したエンジン脈動周波数feを用いて図4に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照し、第一ゲインG1〜第四ゲインG4を算出するようにした。この場合、算出される第一ゲインG1及び第四ゲインG4は、エンジン脈動周波数feの変化にかかわらず一定であるとした。これにより、算出される第一ゲインG1はエンジン脈動周波数feが第一周波数f1と一致するときに最小値となり、第四ゲインG4はエンジン脈動周波数feが第二周波数f2と一致するときに最大値となるようにした。これに代えて、制御装置30が図10に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照して第一ゲインG1〜第四ゲインG4を算出することも可能である。
制御装置30が図10に示すマップを参照する場合、算出される第一ゲインG1は、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1に向けて大きくなるほど小さくなり、エンジン脈動周波数feが第一周波数f1と一致するときに最小値となるように算出される。又、算出される第四ゲインG4は、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2よりも大きくなるほど小さくなり、エンジン脈動周波数feが第二周波数f2と一致するときに最大値となるように算出される。更に、制御装置30が図10のマップを参照する場合、第二ゲインG2はエンジン脈動周波数feが第二周波数f2に向けて大きくなることに対して比例関数的に小さくなるように算出され、第三ゲインG3はエンジン脈動周波数feが第二周波数f2に向けて大きくなることに対して比例関数的に大きくなるように算出される。
このように、制御装置30が図10に示すエンジン脈動周波数−ゲインマップを参照して、第一ゲインG1〜第四ゲインG4を算出する場合であっても、上記実施形態の場合と同様に、制御装置30は前記式2〜前記式4に従って制御A〜制御Cに応じたトルク指令Tmを算出することができる。従って、この場合においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
又、上記実施形態においては、制御Aの場合、前記式2から明らかなように、モータトルク低減成分Te_mとして電動モータ15のモータ回転数Nmのみを用い、モータ回転数Nm即ちモータトルク低減成分Te_mに第一ゲインG1を乗算してトルク指令Tmを算出するようにした。又、制御Cの場合、前記式4から明らかなように、捩れトルク低減成分Te_dのみを用い、捩れトルク低減成分Te_dに第四ゲインG4を乗算してトルク指令Tmを算出するようにした。
これらに代えて、制御Bの場合と同様に、制御A及び制御Cにおいても、モータ回転数Nm(トルク低減成分Te_d)と第一ゲインG1とを乗算した値、及び、捩れトルク低減成分Te_dと第四ゲインG4とを乗算した値を合算してトルク指令Tmを算出することも可能である。この場合、制御Aにおいては、第一ゲインG1は第四ゲインG4よりも大きな値として決定され、制御Cにおいては、第四ゲインG4は第一ゲインG1よりも大きな値として決定される。このように、第一ゲインG1及び第四ゲインG4を決定することにより、制御Aにおいてはモータトルク低減成分Te_mがパワートレーンに入力されるモータトルクTmgを効果的に低減することができ、制御Cにおいては捩れトルク低減成分Te_dがパワートレーンに入力される捩れトルクTdampを効果的に低減することができる。従って、上記実施形態と同様の効果が得られる。
又、上記実施形態においては、制御装置30が、図3、図4及び図5に示すように予め設定された各種マップを参照することにより、所望の値を算出する(取得する)ようにした。これに代えて、制御装置30が、図3〜図5のマップに示された関係を表す予め設定された関数を用いて、直接的に所望の値を算出することも可能である。
又、上記実施形態においては、車両10に搭載されるトランスミッション13が有段変速機(オートマチック・トランスミッション(AT)、マニュアル・トランスミッション(MT)又はオートメイティッド・マニュアル・トランスミッション(AMT)等)であるとした。この場合、トランスミッション13が無段変速機(CVT等)であっても良い。
トランスミッション13が無段変速機の場合、シフトポジションMを検出するシフトポジションセンサ25が省略される。このため、制御装置30(周波数算出部32)は、例えば、変速比とダンパ共振周波数fsとの関係を予め記憶しておくことにより、トランスミッション13の変速比を取得(検出)してダンパ共振周波数fsを算出することができる。
又、上記実施形態においては、指令トルク決定部37は、第二トルク指令Tm_bpfを上下限処理して制振制御トルク指令Tm_reqを決定するようにした。しかしながら、指令トルク決定部37は、例えば、算出された第二トルク指令Tm_bpfが電動モータ15の性能及び予め設定されている制振性能目標の範囲内である場合には、上下限処理を省略して制振制御トルク指令Tm_reqを決定することも可能である。
又、上記実施形態においては、制御装置30がフィルタ処理部36を有するようにした。しかしながら、例えば、トルク算出部35によって算出された第一トルク指令Tmにエンジン11が車両10を加減速する周波数成分を含まれない場合、フィルタ処理部36を省略することも可能である。この場合、指令トルク決定部37は、第一トルク指令Tmを必要に応じて上下限処理して制振制御トルク指令Tm_reqを決定することができる。
又、上記実施形態においては、制御装置30が制振要否判定部31を有するようにした。しかしながら、制振要否判定部31を省略することも可能である。この場合には、制御装置30は、常に、電動モータ15に制振制御用トルクTvを発生させて、パワートレーンに発生した振動を制振する。
又、上記実施形態においては、制御装置30(周波数算出部32)がクランク角センサ21からクランク角θ1を入力することによりエンジン回転数Neを算出し、このエンジン回転数Neを用いてエンジン11のエンジン脈動周波数feを算出するようにした。このように、クランク角θ1を用いることに代えて、例えば、エンジン11のエンジン回転数Neを直接検出したり、電動モータ15のモータ回転数Nmや、トランスミッション13のインプットシャフト17又はアウトプットシャフトの回転数、ドライブシャフト18又はプロペラシャフトの回転数、車輪14の車輪速等からエンジン回転数Neを算出したりすることも可能である。この場合においても、エンジン回転数Neを用いて、前記式1に従ってエンジン脈動周波数feを算出することができる。
更に、上記実施形態においては、電動モータ15がモータシャフト19を介してパワートレーンを構成するトランスミッション13に接続されるようにした。これに代えて、パワートレーンを構成するインプットシャフト17又はドライブシャフト18に対して、モータシャフト19を介して、或いは、直接的に、電動モータ15を接続するようにすることも可能である。この場合であっても、電動モータ15は、制振制御用トルクTvをインプットシャフト17又はドライブシャフト18に入力することにより、上記実施形態と同様の効果が得られる。