JP6900686B2 - 方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板およびその製造方法に関し、具体的には、高効率変圧器の鉄心として用いるのに好適な方向性電磁鋼板およびその製造方法に関し、さらに具体的には、損失の低い低損失変圧器用の方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
COの排出削減や省エネ指向の潮流の中、変圧器の損失のさらなる低減が求められている。この動きに対して鉄心材料である方向性電磁鋼板の鉄損を下げる開発が精力的に進められている。しかし、方向性電磁鋼板の低鉄損化を図るだけでは、変圧器の損失を十分に低減することはできない。このため、鉄心全体としての低損失化も強く求められている。
特に、例えば発電所や変電所で用いられる大型の積み鉄心では、鉄心の内周側の磁路長と外周側の磁路長が大きく相違する。このため、板幅方向に均一な磁束密度を有する方向性電磁鋼板により大型の積み鉄心を製造すると、必然的に内周側に磁束が集中し、高磁束密度励磁による高鉄損は避けられない。もちろん、上述する大型の積み鉄心だけではなく、受電用や配電用の中〜小型の積み鉄心においても、内周側と外周側の磁路長は異なる。このため、中〜小型の積み鉄心においても、大型の積み鉄心程ではないものの、内周側への磁束の集中による高鉄損化は避けられない。
鉄心全体としての低損失化を図る発明がこれまでにも開示されている。
特許文献1には、[001]の圧延方向からのずれ角の平均値:4゜以内、圧延直角方向の最大長さが60mm以上の二次再結晶粒の面積率:85%以上である方向性電磁鋼板に係る発明が開示されている。この発明によれば、高磁束密度(B8≧1.96T)の方向性電磁鋼板の結晶粒サイズレベルでの磁束密度の不均一を解消でき、磁区細分化処理を施さなくても安定して低鉄損を得られるとしている。
特許文献2には、巻き鉄心または積み鉄心の内周側mと外周側nの材料を変更し、内周側の透磁率μm>外周側の透磁率μn、および内周側の鉄損Wm<外周側の鉄損Wnであり、ビルディングファクター(BF;変圧器の鉄心の鉄損を方向性電磁鋼板の圧延方向の鉄損で除した値であり、BFが小さいほど方向性電磁鋼板を鉄心に加工した際の鉄損の劣化度が小さいことを意味する)を改善する発明が開示されている。この発明によれば、異なる透磁率および鉄損を有する複数の材料を用いて鉄心を製造することにより、鉄心の損失を低減できるとしている。
さらに、特許文献3には、巻き鉄心の内周側を高配向性ケイ素鋼板とするとともに外周側を磁区制御ケイ素鋼板とし、内周側の電磁鋼板を巻き鉄心の積層全厚さの25%とすることにより、鉄損を、磁区制御ケイ素鋼板のみから構成される巻き鉄心の鉄損よりも改善する発明が開示されている。この発明によれば、異なる透磁率および鉄損の複数の材料を用いて巻き鉄心を製造することにより、鉄心の損失を低減できるとしている。
特開2000−26942号公報(特許3390345号明細書) 特開2006−185999号公報 特開2007−43040号公報(特許4959170号明細書)
本発明者らの検討結果によれば、特許文献1〜3により開示された発明では、積み鉄心の損失やBFを低減することはできない。例えば特許文献2により開示された発明では、鉄心における低鉄損の材料部分に磁束を集中させて鉄心全体としての低鉄損化を図る。しかし、方向性電磁鋼板の励磁磁束密度Bmが高くなると鉄損Wが概ねW∝Bmで急激に増加する。このため、むしろ鉄心全体が均一に励磁されるほうが鉄心の鉄損は低くなる。この現象は、大型の積み鉄心で特に顕著である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、圧延方向RDへの磁束密度B8が板幅方向(圧延方向と直交する方向)について変動する磁束密度分布を有する方向性電磁鋼板からブランクを切り出し、このブランクを用いて積み鉄心を組み立てることにより、積み鉄心の内周側および外周側の磁束密度(透磁率)の不均一を顕著に改善でき、これにより、積み鉄心の損失を大幅に低減できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
(1)圧延方向の磁束密度B8が板幅方向について変動する方向性電磁鋼板であって、
板幅方向の第1の特定位置であるA点における圧延方向の磁束密度B8A(T)と、板幅方向の第2の特定位置であるB点における圧延方向の磁束密度B8B(T)について、B8B>B8A、かつB8B−B8Aが0.02(T)以上、好ましくは0.03(T)以上、より好ましくは0.04(T)以上となるA点およびB点が少なくとも1つずつ存在する、方向性電磁鋼板。
(2)前記A点および前記B点が、nを1以上の自然数として、板幅の1/nで交互に存在する、1項に記載の方向性電磁鋼板。
(3)複数存在する前記A点の磁束密度B8A(T)の最大値および最小値の差が0.01T以下であるとともに、複数存在する前記B点の磁束密度B8B(T)の最大値および最小値の差が0.01(T)以下である、1または2項に記載の方向性電磁鋼板。
(4)前記A点から前記B点に亘る磁束密度B8が略直線的に変化する、1〜3項のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板。
(5)化学組成が、質量%で、C:0.005%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.02〜1.00%、SおよびSeの合計:0.005%以下、sol.Al:0.003%以上、N:0.005%以下、残部Feおよび不純物である、1〜4項のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板。
(6)質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.04〜0.50%、S:0.002〜0.05%、sol.Al:0.005〜0.05%およびN:0.001〜0.020%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する鋼材を素材とし、
熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程と、窒化焼鈍工程と、焼鈍分離剤塗布工程と、仕上げ焼鈍工程とを含む、方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記窒化焼鈍工程において、窒化量を鋼板の板幅方向について変化させる、1〜5項のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(7)質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.04〜1.0%、S:0.002〜0.05%、sol.Al:0.005〜0.05%およびN:0.001〜0.020%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する鋼材を素材とし、
熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程と、必要に応じた窒化焼鈍工程と、焼鈍分離剤塗布工程と、仕上げ焼鈍工程とを含む、方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上げ焼鈍工程において、コイルの板間隙間を板幅方向について変化させて巻き取ったコイルで仕上げ焼鈍を行う、1〜5項のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
別の観点からは、本発明は以下に列記の通りである。
(i)質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.04〜1.00%、S:0.002〜0.05%、sol.Al:0.005〜0.05%およびN:0.001〜0.020%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する熱延鋼板に、必要に応じて900℃以上の均熱温度で熱延板焼鈍を行った後、例えば80%以上の冷延率で冷間圧延を行って冷延鋼板とする冷間圧延工程と、
(ii)該冷延鋼板に800〜850℃の均熱温度で脱炭焼鈍を行って圧延による加工歪みを取り除き、一次再結晶を発現して結晶粒径を6〜25μm程度とする脱炭焼鈍工程と、
(iii)必要に応じて行われる、冷延鋼板にアンモニア含有雰囲気で鋼板中の窒素濃度を増加させる焼鈍を施す窒化焼鈍工程と、
(iv)鋼板の表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を含有する水性スラリーを塗布および乾燥(焼付け)し、コイルに巻取った後に1150℃以上で長時間の仕上げ焼鈍を行って二次再結晶を発現し、鋼板の圧延方向が<100>方向で鋼板の面方向は{110}方向であるGoss方位粒がその周囲の結晶粒を蚕食しながら1〜2cm程度の結晶粒径まで成長して結晶方位が揃うとともに、焼鈍分離剤中のMgOと、脱炭焼鈍時に冷延鋼板の表面に形成された内部酸化層中のSiOとが反応し、フォルステライト(MgSiO)を主成分とする一次被膜を表面に形成する仕上げ焼鈍工程とを含む、方向性電磁鋼板の製造方法において、例えば、
(a)窒化焼鈍工程での窒化量を、冷延鋼板の板幅方向について変化させて板幅方向のインヒビターの強度を変動させること、または
(b)仕上げ焼鈍におけるコイルの板間隙間を、コイルの板幅方向について変化させて脱インヒビター量を板幅方向について変動させること
により、製造される。
冷延鋼板の窒化量を板幅方向について変化させる方法としては、例えば、鋼板の窒化に関する特開平3−2324号公報や特開平5−112827公報の開示内容に、特開平11−21627公報により開示された幅方向吹付け流量変更装置に関する開示内容を組み合わせれば容易に実現できる。例えば、窒化焼鈍工程において、アンモニア含有雰囲気の吹付け流量を板幅方向について変化させる方法や、アンモニア含有雰囲気中のアンモニア含有濃度を板幅方向について変化させる方法等が適用可能である。この際のアンモニア濃度は、窒化量を高める領域では、1〜2体積%、窒化量を低める領域では、0.1〜0.9体積%などとすればよい。
仕上げ焼鈍におけるコイル板間隙間を板幅方向について変化させる方法としては、粒度の異なるMgO焼鈍分離剤を板幅方向について塗り分け、乾燥後の空隙率をコイルの板幅方向について変化させる方法や、静電塗布によってコイルの板幅方向について部分的に粗粒のMgOを塗布することにより板幅方向の空隙率を変化させる方法等が適用可能である。この際のMgOの粒度は、空隙率を高める領域では、5〜20μm、空隙率を低める領域では、0.1〜4μmなどとすればよい。
本明細書において「ブランク」とは、変圧器のヨーク鉄心や脚鉄心の素材であり、方向性電磁鋼板を略四角形、略六角形または多角形に切断して得られる鋼板片を意味する。
本明細書において「鉄心構成部材」とは、ブランク単独で、または略同一形状のブランクを複数枚積層した、略四角柱、略六角柱または多角柱の形状を有する、鉄心を構成する部材を意味し、例えばヨーク鉄心や脚鉄心が例示される。
さらに、本明細書において「変圧器の鉄心」とは、磁気的な閉回路を構成するように2個以上(通常の内鉄型の単相変圧器用の鉄心では4個、3相3脚変圧器の鉄心では5個)の鉄心構成部材を組み合わせて構成された積み鉄心であり、コイルなどの部材とさらに組み合わせることにより変圧器が構成される。
本発明により、例えば発電所や変電所で用いられる大型の積み鉄心や、受電用や配電用の中〜小型の積み鉄心の損失やBFを低減することができる。
図1は、本発明での磁束密度B8の板幅方向位置の変化(板幅方向についての磁束密度B8の分布)の一例を示すグラフである。 図2は、A点およびB点が板幅の1/nで交互に存在する状況の一例を示すグラフである。 図3は、複数存在するA点の磁束密度B8A(T)の最大値および最小値の差が0.01(T)以下であるとともに、複数存在するB点の磁束密度B8B(T)の最大値および最小値の差が0.01(T)以下であることの一例を示すグラフである。 図4は、A点からB点に至る領域での磁束密度B8の変化が略直線的であることの一例を示すグラフである。 図5(a)は、単相変圧器用の鉄心構成部材および積み鉄心を示す平面図であり、図5(b)は、単相変圧器用の鉄心構成部材および積み鉄心を示す斜視図である。 図6(a)は、3相3脚変圧器の鉄心構成部材および積み鉄心を示す平面図であり、図6(b)は、3相3脚変圧器の鉄心構成部材および積み鉄心を示す斜視図である。 図7(a)は、単相変圧器用の内鉄型の積み鉄心を模式的に示す平面図であり、図7(b)は、3相変圧器の内鉄型の積み鉄心を模式的に示す平面図である。また、図7(c)は、単相変圧器用の外鉄型の積み鉄心を模式的に示す平面図であり、図7(d)は、3相変圧器の外鉄型の積み鉄心を模式的に示す平面図である。
本発明に係る方向性電磁鋼板およびその製造方法を説明する。以降の説明では、化学組成に関する「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。また、本明細書におけるブランクは、本発明に係る方向性電磁鋼板から所定の形状に切り出されて得られるため、このブランクと本発明に係る方向性電磁鋼板をまとめて説明する。
1.ブランク,本発明に係る方向性電磁鋼板
(1)母材鋼板の化学組成
ブランクまたは本発明に係る方向性電磁鋼板の母材鋼板は、この種のブランクまたは方向性電磁鋼板の母材鋼板の一般的な化学組成を有すればよく、特定の化学組成には限定されない。以下に、ブランクまたは本発明に係る方向性電磁鋼板の母材鋼板の化学組成の一例を説明する。
(1−1)C:0.005%以下
Cは、製造工程における脱炭焼鈍工程の完了までの組織制御に有効である。しかし、C含有量が0.005%を超えると、長時間の使用中に鉄炭化物が析出する磁気時効現象によってブランクまたは方向性電磁鋼板の磁気特性が低下する。したがって、C含有量は、好ましくは0.005%以下であり、より好ましくは0.002%以下である。
一方、C含有量は低いほうが好ましいが、C含有量を0.0001%未満に低減しても、磁気時効抑制の効果は飽和し、製造コストが嵩むだけとなる。したがって、C含有量は、好ましくは0.0001%以上である。
(1−2)Si:2.0〜4.5%
Siは、鋼の電気抵抗を高めて渦電流損を低減する。Si含有量が2.0%未満では、ブランクまたは方向性電磁鋼板がフェライト単相ではなくなり、磁気特性が著しく劣化する。したがって、Si含有量は、好ましくは2.0%以上であり、より好ましくは2.8%以上であり、さらに好ましくは3.0%以上である。
一方、Si含有量が4.5%を超えると鋼の冷間加工性が低下する。したがって、Si含有量は、好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは4.2%以下であり、さらに好ましくは4.0%以下である。
(1−3)Mn:0.02〜1.00%
Mnは、製造工程中に後述するSおよびSeと結合してMnSおよびMnSeを形成する。これらの析出物は、インヒビター(正常結晶粒成長の抑制剤)として機能し、二次再結晶を発現する。Mnは、さらに鋼の熱間加工性も高める。一方でMnは、ブランクまたは方向性電磁鋼板の電気抵抗を高め、鉄損特性を向上させる。このため、Mn含有量は、優れた磁気特性を得るためには、高いほうが好ましい。
Mn含有量が0.02%未満であると、これらの効果を十分に得られない。したがって、Mn含有量は、好ましくは0.02%以上であり、より好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.07%以上である。
一方、Mn含有量が1.00%を超えると、フェライト相が不安定となり、磁気特性が低下する。したがって、Mn含有量は、好ましくは1.00%以下であり、より好ましくは0.40%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。
(1−4)SおよびSeの合計:0.005%以下
SおよびSeは、製造工程において、Mnと結合してインヒビターとして機能するMnSおよびMnSeを形成する。しかし、ブランクまたは方向性電磁鋼板のS,Se含有量が合計で0.005%を超えると、残存する析出物により、磁気特性が低下するとともに、SおよびSeの偏析により、ブランクまたは方向性電磁鋼板に表面欠陥が発生することがある。したがって、SおよびSeの合計含有量は、好ましくは0.005%以下である。
ブランクまたは方向性電磁鋼板におけるSおよびSeの合計含有量はなるべく低いほうが好ましい。しかし、ブランクまたは方向性電磁鋼板のSおよびSeの合計含有量を0.0001%未満に低減しても、製造コストが嵩むだけである。したがって、ブランクまたは方向性電磁鋼板のSおよびSeの合計含有量は、好ましくは0.0001%以上である。
(1−5)sol.Al:0.003%以上
Alは、方向性電磁鋼板の製造工程においてNと結合してAlNを形成し、インヒビターとして機能する。一方で、sol.Alは方向性電磁鋼板の電気抵抗を高め、鉄損特性を向上させる。このため、sol.Al含有量は、磁気特性のためには高いほうが好ましい。sol.Al含有量が0.003%未満であるとこの効果が小さいため、磁気特性が低下する。したがって、sol.Al含有量は、好ましくは0.003%以上であり、より好ましくは0.005%以上であり、さらに好ましくは0.02%以上である。なお、本明細書において、sol.Alは酸可溶Alを意味する。
(1−6)N:0.005%以下
Nは、製造工程においてAlと結合してAlNを形成し、インヒビターとして機能する。しかし、仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板のN含有量が0.005%を超えると、ブランクまたは方向性電磁鋼板に析出物が残存して磁気特性が低下する。したがって、N含有量は、好ましくは0.005%以下であり、より好ましくは0.003%以下であり、さらに好ましくは0.001%以下である。N含有量は低いほうが好ましい。
しかし、N含有量を0.0001%未満に低減しても、製造コストが嵩むだけである。したがって、N含有量は、好ましくは0.0001%以上である。
(1−7)残部:Feおよび不純物
ブランクまたは本発明に係る方向性電磁鋼板の母材鋼板の化学組成の残部は、Feおよび不純物である。ここで、不純物とは、母材鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるもの、仕上げ焼鈍中に鋼中から取り除かれず(純化されず)に鋼中に残存する下記の元素である。不純物は、ブランクまたは本発明に係る方向性電磁鋼板の作用に悪影響を及ぼさない含有量での含有を許容される元素を意味する。
ブランクまたは本発明に係る方向性電磁鋼板の母材鋼板の不純物は、Sn、Sb、Bi、TeまたはPbの1種以上であり、これらの元素の合計含有量は好ましくは0.030%以下である。
これらの元素はいずれもブランクまたは方向性電磁鋼板の磁束密度を高めるが、仕上げ焼鈍にて母材鋼板から除去されるためいずれも不純物である。このため、上述の通り、これらの元素の含有量は好ましくは合計で0.030%以下である。
(2)磁束密度分布
本発明に係る方向性電磁鋼板の圧延方向の磁束密度B8は、板幅方向について変動する。すなわち、方向性電磁鋼板には、板幅方向の第1の特定位置であるA点における圧延方向の磁束密度B8A(T)と、板幅方向の第2の特定位置であるB点における圧延方向の磁束密度B8B(T)とについて、B8B>B8A、かつB8B−B8Aが0.02(T)以上、好ましくは0.03(T)以上、より好ましくは0.04(T)以上となるA点およびB点が少なくとも1つずつ存在する。ブランクには、A点およびB点が1つ存在する。
図1は、この状況に適合する磁束密度B8の板幅方向位置の変化、すなわち板幅方向についての磁束密度B8の分布の一例を模式的に示すグラフである。図1のグラフにおいて、A点,B点は、本発明に係る方向性電磁鋼板の板幅方向についての任意の位置であり、その間の磁束密度B8の変化も任意である。
本発明に係る方向性電磁鋼板からブランクを、A点からB点にわたる磁束密度B8の変化に適合するように、切り出す。このため、磁束密度B8の分布が図1のグラフに例示されるような状況では、方向性電磁鋼板をその板幅方向について有効に活用することができない。
このため、A点およびB点は、nを1以上の自然数として、板幅の1/nで交互に板幅方向へ存在することが好ましい。図2は、A点およびB点が板幅の1/nで交互に存在する状況の一例を模式的に示すグラフである。図2のグラフでは、n=3として、方向性電磁鋼板の板幅の1/3の周期で、磁束密度B8が略N型に周期的に変動する。
図2のグラフに示すn=3の場合とは異なる場合を簡単に説明する。n=1の場合には、方向性電磁鋼板の全板幅においてA点からB点へ磁束密度B8が単調に増加する。n=2では、方向性電磁鋼板の板幅の1/2の周期でA点からB点へ磁束密度B8が略V型または逆V型に周期的に変動する。さらに、n=4では、方向性電磁鋼板の板幅の1/2の周期でA点からB点へ磁束密度B8が略M型または略W型に周期的に変動する。
大型の変圧器では、方向性電磁鋼板のコイルの幅をそのまま変圧器の鉄心として使用することがある。このような用途であれば、板幅方向の一方のエッジ部における磁束密度B8A1と、板幅方向の他方のエッジ部における磁束密度B8B2との差を0.02(T)以上とすること、すなわちn=1とする形態も例示される。
さらに、図2のグラフに示すように、方向性電磁鋼板の板幅方向において1/nの周期で特性が変化する場合、一のコイルから1/nの幅を有するブランクを切り出す場合、これらのブランクの特性は概ね均一であることが好ましい。このため、方向性電磁鋼板では、複数存在するA点それぞれの磁束密度B8A(T)の最大値および最小値の差が0.01(T)以下であることが好ましく、複数存在するB点それぞれの磁束密度B8B(T)の最大値および最小値の差が0.01(T)以下であることが好ましい。
図3は、この状況の一例を模式的に示すグラフである。図3のグラフを図2のグラフと比較すると、複数存在するA,B点それぞれの磁束密度B8の特性差が、図2のグラフでは大きいのに対し、図3のグラフでは小さいことが分かる。
さらに、A,B点以外の領域における磁束密度B8、すなわちA点からB点に至る領域での磁束密度B8の分布は、特に限定されるものではない。しかし、工業的な製造工程で製造された方向性電磁鋼板に通常見られる0.01(T)程度の増減が存在しても、本発明の効果は十分に奏される。
しかし、A点からB点に至る領域での磁束密度B8の変化は、略直線的であることが、工業的な製造管理および品質管理の点からも好ましい。図4は、この状況の一例を模式的に示すグラフである。
(3)一次被膜
本発明に係る方向性電磁鋼板は、基本的に、母材鋼板の表面に、フォルステライト(MgSiO)を主成分として含有する一次被膜を有する。しかし、特開平8−225900号公報により開示されるような、一次被膜を有さない方向性電磁鋼板(グラスレス材)であっても、その効果が損なわれることはない。
2.本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法
本発明に係る方向性電磁鋼板は、如何なる製造方法により製造されてもよく、特定の製造方法には、限定されない。本発明に係る方向性電磁鋼板は、例えば、以下に示す冷間圧延工程、脱炭焼鈍工程、必要に応じて採用される窒化焼鈍工程、および仕上げ焼鈍工程を経て製造される。
(1)冷間圧延工程
質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.04〜1.00%、S+Se:0.002〜0.05%、sol.Al:0.005〜0.05%およびN:0.001〜0.030%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する熱延鋼板に、必要に応じて900℃以上の均熱温度で熱延板焼鈍を行った後、例えば80%以上の冷延率で冷間圧延を行って冷延鋼板とする。
上記冷間圧延工程における熱延鋼板の化学組成を説明する。はじめに必須元素を説明する。
熱延鋼板のC含有量が0.1%を超えると、脱炭焼鈍に必要な時間が長くなり、製造コストが嵩み、かつ、生産性も低下する。したがって、熱延鋼板のC含有量は、好ましくは0.1%以下であり、より好ましくは0.08%以下であり、さらに好ましくは0.07%以下である。
Siは、鋼の電気抵抗を高めるが、過剰に含有すると冷間加工性が低下する。Si含有量が2.0〜4.5%であれば、仕上げ焼鈍工程後の方向性電磁鋼板のSi含有量が2.0〜4.5%となる。
Mnは、製造工程中においてSおよびSeと結合して析出物を形成し、インヒビターとして機能する。さらに、Mnは鋼の熱間加工性を高める。熱延鋼板のMn含有量が0.04〜1.00%であれば、仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板のMn含有量が0.02〜1.00%となる。
SおよびSeは、製造工程において、Mnと結合して、MnSおよびMnSeを形成する。MnSおよびMnSeは、いずれも、二次再結晶中の結晶粒成長を抑制するために必要なインヒビターとして機能する。
SおよびSeの合計含有量が0.002%未満であると、MnSおよびMnSeを形成する効果を得られ難い。したがって、SおよびSeの合計含有量は、0.002%以上であり、好ましくは0.01%以上である。
一方、SおよびSeの合計含有量が0.05%を超えると、製造工程において二次再結晶が発現せず、鋼の磁気特性が低下する。したがって、SおよびSeの合計含有量は、0.05%以下であり、好ましくは0.03%以下である。
Alは、製造工程中において、Nと結合してAlNを形成する。AlNはインヒビターとして機能する。sol.Al含有量が0.005%未満であると、Nと結合してAlNを形成する効果を得られない。したがって、熱延鋼板のsol.Al含有量は、0.005%以上であり、好ましくは0.01%以上であり、さらに好ましくは0.02%以上である。
一方、熱延鋼板のsol.Al含有量が0.05%を超えると、AlNが粗大化し、AlNがインヒビターとして機能し難くなり、二次再結晶が発現しないことがある。したがって、熱延鋼板のsol.Al含有量は、0.05%以下であり、好ましくは0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。
Nは、製造工程中にAlと結合してインヒビターとして機能するAlNを形成する。N含有量が0.001%未満であると、この効果を得られない。したがって、N含有量は0.001%以上であり、好ましくは0.005%以上であり、さらに好ましくは0.007%以上である。
一方、N含有量が0.020%を超えると、すべてのNが溶鋼中に溶解せず、方向性電磁鋼板にボイドが発生することがある。したがって、N含有量は、0.020%以下であり、好ましくは0.012%以下であり、さらに好ましくは0.010%以下である。
次に、任意元素を説明する。熱延鋼板は、さらに、Sb、SnまたはCuの1種以上を任意元素として合計で0.3%以下含有してもよい。
Sb、SnまたはCuは、いずれも必要に応じて含有する任意元素であり、含有しなくてもよい。Sb、SnまたはCuを含有することにより、方向性電磁鋼板の磁束密度を高める効果を得られる。
しかし、Sb、SnまたはCuの合計含有量が0.3%を超えると、脱炭焼鈍時に内部酸化層が形成され難くなる。このため、仕上げ焼鈍時に、焼鈍分離剤のMgOおよび内部酸化層のSiOが反応して進行する一次被膜の形成が遅延し、形成される一次皮膜の密着性が低下する。したがって、Sb、SnまたはCuの合計含有量は、0〜0.3%である。
Sb、SnまたはCuの合計含有量は、好ましくは0.005%以上であり、さらに好ましくは0.007%以上である。一方、Sb、SnまたはCuの合計含有量は、好ましくは0.25%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。
Bi、TeまたはPbは、いずれも必要に応じて含有する任意元素であり、含有しなくてもよい。Bi、TeまたはPbを含有することにより、方向性電磁鋼板の磁束密度を高めることができる。
しかし、これらの元素の合計含有量が0.03%を超えると、仕上げ焼鈍時にこれらの元素が表面に偏析する。このため、一次被膜と鋼板の界面が平坦化し、一次被膜の密着性が低下する。
したがって、Bi、TeおよびPbの1種以上の合計含有量は0〜0.03%である。Bi、TeおよびPbの1種以上の合計含有量は、好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.001%以上である。
熱延鋼板の化学組成の残部はFeおよび不純物である。ここで、不純物とは、熱延鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものである。不純物は、ブランクまたは方向性電磁鋼板の作用に悪影響を及ぼさない含有量での含有は許容される元素を意味する。
次に、熱延鋼板の製造方法を説明する。
上述の化学組成を有する熱延鋼板は、周知の方法により製造される。熱延鋼板の製造方法の一例は次のとおりである。上述の熱延鋼板と同じ化学組成を有するスラブを準備する。スラブは周知の精錬工程および鋳造工程を経て、製造される。
次に、スラブを加熱する。スラブの加熱温度は、例えば1150℃超1400℃以下である。加熱されたスラブに対して熱間圧延を行い、熱延鋼板を製造する。
次に、冷間圧延の条件を説明する。準備された熱延鋼板に冷間圧延を行って、母材鋼板である冷延鋼板を製造する。冷間圧延は1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。冷間圧延を複数回行う場合には、冷間圧延を行った後に軟化を目的として中間焼鈍を行い、その後に冷間圧延を行う。1回または複数回の冷間圧延を行うことにより、製品板厚(製品としての板厚)を有する冷延鋼板を製造する。
1回または複数回の冷間圧延における冷延率の内、1回の冷延率は80%以上であることが好ましい。ここで、冷延率(%)は次のとおりに定義される。
冷延率(%)={1−(最後の冷間圧延後の冷延鋼板の板厚)/(最初の冷間圧延開始前の熱延鋼板の板厚)}×100
なお、冷延率は好ましくは95%以下である。また、熱延鋼板に冷間圧延を行う前に、熱延鋼板に熱処理を行ってもよいし、酸洗を行ってもよい。熱延板焼鈍の条件は、延伸した熱延鋼板の金属組織を再結晶・粒成長により等軸粒へと整粒化するため、900℃以上であることが好ましい。また長時間の箱焼鈍を用いるときには、800℃程度でも構わない。
(2)脱炭焼鈍工程および窒化焼鈍工程
脱炭焼鈍工程では、冷間圧延工程を経た冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を行って一次再結晶を発現し、必要に応じて窒化焼鈍を行う。
脱炭焼鈍は、周知の水素−窒素含有湿潤雰囲気中で行われる。脱炭焼鈍により、方向性電磁鋼板のC濃度が50ppm以下に低減される。脱炭焼鈍では、鋼板に一次再結晶が発現して、冷間圧延により導入された加工ひずみが解放される。さらに、脱炭焼鈍工程では、鋼板の表層部にSiOを主成分とする内部酸化層が形成される。脱炭焼鈍での焼鈍温度は、周知であり、例えば750〜950℃である。焼鈍温度での保持時間は例えば1〜5分間である。
窒化焼鈍は、必要に応じて、脱炭焼鈍工程の加熱後から仕上げ焼鈍前までの間に行われる。窒化焼鈍では、冷延鋼板に、アンモニア含有雰囲気で鋼板中の窒素濃度を増加させる焼鈍を施す。
(3)仕上げ焼鈍工程
冷延鋼板の表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を含有する水性スラリーを塗布および乾燥(焼付け)する。この冷延鋼板をコイルに巻取った後に仕上げ焼鈍を行って二次再結晶を発現する。さらに、焼鈍分離剤中のMgOと、脱炭焼鈍時に冷延鋼板の表面に形成された内部酸化層中のSiOとが反応し、フォルステライト(MgSiO)を主成分とする一次被膜が表面に形成される。
仕上げ焼鈍工程では、はじめに、脱炭焼鈍後の冷延鋼板の表面に、焼鈍分離剤を含有する水性スラリーを塗布し、冷延鋼板の表面上の水性スラリーを乾燥する。水性スラリーを塗布および乾燥された鋼板に対して焼鈍(仕上げ焼鈍)を行う。水性スラリーは、焼鈍分離剤に水を加え攪拌して精製する。
仕上げ焼鈍工程は、例えば次の条件で行う。仕上げ焼鈍の前に焼付け処理を行う。初めに、鋼板の表面に水性スラリーの焼鈍分離剤を塗布する。表面に焼鈍分離剤が塗布された鋼板を400〜1000℃に保持した炉内に装入して保持する(焼付け処理)。これにより、鋼板の表面に塗布された焼鈍分離剤が乾燥する。保持時間は例えば10〜90秒間である。
焼鈍分離剤を乾燥した後に仕上げ焼鈍を行う。仕上げ焼鈍では、焼鈍温度を1150〜1250℃とし、母材鋼板(焼鈍分離剤を塗布および乾燥させた鋼板)を均熱する。均熱時間は例えば15〜30時間である。仕上げ焼鈍における炉内雰囲気は周知の雰囲気である。
以上の製造工程により製造された方向性電磁鋼板には、MgSiOを主成分として含有する一次被膜が形成される。
脱炭焼鈍工程および仕上げ焼鈍工程により、熱延鋼板の化学組成の各元素が鋼中成分からある程度取り除かれる。特に、インヒビターとして機能するS,N等は仕上げ焼鈍工程において大幅に取り除かれる。そのため、熱延鋼板の化学組成と比較して、方向性電磁鋼板の母材鋼板の化学組成中の元素含有量は上記のように低くなる。上述の化学組成を有する熱延鋼板を用いて上記製造方法を行うことにより、上記化学組成を有する母材鋼板を備える方向性電磁鋼板を製造できる。
以上の製造方法において、例えば、
(a)窒化焼鈍工程での窒化量を冷延鋼板の板幅方向について変化させて板幅方向のインヒビターの強度を変動させること、または
(b)仕上げ焼鈍におけるコイルの板間隙間を、コイルの板幅方向について変化させて脱インヒビター量を板幅方向について変動させること
により、製造される。
冷延鋼板の窒化量を板幅方向について変化させる方法としては、上述したように、例えば、窒化焼鈍工程において、アンモニア含有雰囲気の吹付け流量を板幅方向について変化させる方法や、アンモニア含有雰囲気中のアンモニア含有濃度を板幅方向について変化させる方法等が例示される。
仕上げ焼鈍におけるコイル板間隙間を板幅方向について変化させる方法としては、上述したように、粒度の異なるMgO焼鈍分離剤を板幅方向について塗り分け、乾燥後の空隙率をコイルの板幅方向について変化させる方法や、静電塗布によってコイルの板幅方向について部分的に粗粒のMgOを塗布することにより板幅方向の空隙率を変化させる方法等が例示される。
3.本発明に係る方向性電磁鋼板の使用方法
(1)単相変圧器用の鉄心構成部材2,3および積み鉄心1
図5(a)は、単相変圧器用の鉄心構成部材2,3および積み鉄心1を示す平面図であり、図5(b)は、単相変圧器用の鉄心構成部材2,3および積み鉄心1を示す斜視図である。図5(a)および図5(b)において、符号1は鉄心であり、符号2は脚鉄心であり、符号3はヨーク鉄心であり、符号4は、脚鉄心2とヨーク鉄心3がL字型に交わるコーナー部であり、符号5は直辺部であり、符号8は磁束であり、RDは圧延方向である。なお、図5(b)には、脚鉄心2に巻かれたコイル7を模式的に示す。
本発明に係る方向性電磁鋼板を素材として用い、単相変圧器用の積み鉄心1を構成することができる。図5(a)および図5(b)に示すように、この積み鉄心1は、本発明に係る方向性電磁鋼板から切り出したブランクを素材として用いて構成される。
積み鉄心1は、ブランクを単独で、または複数枚積層して形成される鉄心構成部材2,3を含む、複数の鉄心構成部材2,3を組合わせて、組立てられる。図5(a)および図5(b)に示す積み鉄心1では、2つのヨーク鉄心3および2つの脚鉄心2の合計4つの鉄心構成部材2,3が用いられる。
複数の鉄心構成部材2,3のうちの少なくとも一つが本発明に係る方向性電磁鋼板からなる鉄心構成部材であればよい。全ての鉄心構成部材2,3が本発明に係る方向性電磁鋼板からなる鉄心構成部材であることが好ましいことは言うまでもない。
良好な磁化特性を得るために、ヨーク鉄心3および脚鉄心2それぞれのブランクは、ヨーク鉄心3および脚鉄心2それぞれの磁化方向が素材である方向性電磁鋼板の圧延方向(RD)と平行になるように、方向性電磁鋼板から板取りされる。
さらに、ブランクにおける磁束密度が低いA点側を磁気抵抗の低い鉄心内周側に配置し、ブランクにおける磁束密度が高いB点側を磁気抵抗の高い鉄心外周側に配置する。
ここで、「磁気抵抗」は、透磁率(磁束密度/磁場)と磁路長(鉄心中の磁束の流れる経路長)に対して概略、(磁路長)/(透磁率)となるため、上記のように電磁鋼板を配置することにより、鉄心幅方向で磁束流れが均一化される。
鉄心構成部材2,3では、鉄心1の磁化方向(図5(b)における両方向矢印が示す方向)に垂直な方向の第1の特定位置であるA点における磁化方向の磁束密度B8A(T)と、鉄心の磁化方向に垂直な方向の第2の特定位置であるB点における磁化方向の磁束密度B8B(T)とが、B8B>B8A、かつB8B−B8Aが0.02(T)以上、好ましくは0.03(T)以上、より好ましくは0.04(T)以上となる関係を有する。
鉄心構成部材2,3では、磁化方向に平行な方向へのブランク存在領域の長さの最小値をLSとし、この長さの最大値をLLとし、それぞれの部位での磁化方向の磁束密度をB8S,B8Lとしたとき、B8L/B8S:1.0超LL/LS以下であることが好ましい。これにより、積み鉄心1の損失やBFをいっそう低減することができる。
すなわち、本発明に係る方向性電磁鋼板を用いる鉄心構成部材2,3および鉄心1では、ヨーク鉄心3および脚鉄心2それぞれの磁化方向が方向性電磁鋼板の圧延方向(RD)と平行になるように配置され、かつ、方向性電磁鋼板における磁束密度が低いA点側が磁気抵抗の低い鉄心内周側に配置され、磁束密度が高いB点側が磁気抵抗の高い鉄心外周側に配置される。
(2)3相3脚変圧器の鉄心構成部材2,3および積み鉄心1−1
図6(a)は、3相3脚変圧器の鉄心構成部材2,3および積み鉄心1−1を示す平面図であり、図6(b)は、3相3脚変圧器の鉄心構成部材2,3および積み鉄心1−1を示す斜視図である。図6(a)および図6(b)において、符号2は脚鉄心であり、符号3はヨーク鉄心であり、符号4は脚鉄心2とヨーク鉄心3がL字型に交わるコーナー部であり、符号4は脚鉄心2とヨーク鉄心3がT字型に交わるコーナー部であり、符号5は直辺部であり、符号8は磁束であり、符号10は窓部であり、RDは圧延方向である。
本発明に係る方向性電磁鋼板を素材として用い、3相3脚変圧器の積み鉄心1−1を構成することができる。図6(a)および図6(b)に示すように、この積み鉄心1−1は、方向性電磁鋼板から切り出されて得られるブランクを、単独で、または複数枚積層して形成される鉄心構成部材2,3を含む、複数の鉄心構成部材2,3を組合わせて形成される。図6(a)および図6(b)に示す例では2つのヨーク鉄心3および3つの脚鉄心2の合計5つの鉄心構成部材2,3が用いられる。
複数の鉄心構成部材2,3のうちの少なくとも一つが本発明に係る方向性電磁鋼板からなる鉄心構成部材であればよい。全ての鉄心構成部材2,3が本発明に係る方向性電磁鋼板からなる鉄心構成部材であることが好ましいことは言うまでもない。
良好な磁化特性を得るために、ヨーク鉄心3および脚鉄心2それぞれのブランクは、ヨーク鉄心3および脚鉄心2それぞれの磁化方向が方向性電磁鋼板の圧延方向(RD)に平行になるように、方向性電磁鋼板から板取りされる。
さらに、ブランクにおける磁束密度が低いA点側を磁気抵抗の低い側に配置し、ブランクにおける磁束密度が高いB点側を磁気抵抗の高い側に配置することは、上述した単相変圧器と同様であるが、特に中央脚については以下に示す配置が考えられる。
一つは、板幅方向にA点およびB点が1/2周期で存在するブランクを用いる場合である。この場合は、B点を中央脚の幅方向の中央側に配置し、A点を中央脚の幅方向の両端側に配置する。
もう一つは、板幅方向にA点およびB点が1/1周期で存在するブランクを用いる場合である。この場合は、B点が中央脚の幅方向の中央側に位置し、A点が中央脚の両端に位置するように、2枚のブランクを配置する。
この鉄心構成部材2,3では、鉄心の磁化方向に垂直な方向の第1の特定位置であるA点における磁化方向の磁束密度B8A(T)と、鉄心の磁化方向に垂直な方向の第2の特定位置であるB点における磁化方向の磁束密度B8B(T)とが、B8B>B8A、かつB8B−B8Aが0.02(T)以上、好ましくは0.03(T)以上、より好ましくは0.04(T)以上の関係を満足する。
この鉄心構成部材2,3では、磁化方向に平行な方向へのブランク存在領域の長さの最小値をLSとし、この長さの最大値をLLとし、それぞれの部位での磁化方向の磁束密度をB8S,B8Lとしたとき、B8L/B8S:1.0超(LL/LS)以下であることが好ましい。これにより、積み鉄心1−1の損失やBFをいっそう低減することができる。
鉄心構成部材2,3および鉄心1−1では、板幅方向の中央部で剪断された上述した本発明に係る方向性電磁鋼板における、磁束密度B8RおよびB8Lのうちで磁束密度が低い側が中央脚の両端に配置され、または、中央部の磁束密度B8に較べ両端部の磁束密度が低い方向性電磁鋼板が中央脚に配置され、あるいは十分に幅の広い中央脚の場合には、磁束密度B8RおよびB8Lが異なる2本の方向性電磁鋼板コイルを中央脚の両端に磁束密度が低い側が配置されるようにすることが有効である。
このように、本発明では、板幅方向へ磁束密度分布(透磁率分布)を有する方向性電磁鋼板から板取りされたブランクを鉄心構成部材の一部または全部に用い、積み鉄心の内周側にこのブランクの透磁率が低い部分を配置するとともに外周側にこのブランクの透磁率が高い部分を配置することによって、例えば発電所や変電所で用いられる大型の積み鉄心や、受電用や配電用の中〜小型の積み鉄心を構成する。これにより、鉄心全体として磁束密度の不均一を抑制でき、積み鉄心の鉄心損失やBFを低減できる。
(3)磁化方向に垂直な断面での鉄心構成部材の形状
上述したように、積み鉄心は、方向性電磁鋼板から切り出された本発明に係るブランクを、一枚または複数枚積層した鉄心構成部材を、磁気的な閉回路を構成するように2個以上(図5(a)および図5(b)に示す単相変圧器用の鉄心では4個、図6(a)および図6(b)に示す3相3脚変圧器用の鉄心では5個)組み合わせて、構成される。鉄心構成部材の磁化方向に垂直な断面での鉄心構成部材の形状を説明する。
一般的に、鉄心構成部材は、図5(a),図5(b)および図6(a),図6(b)に示すように、板幅が略同一の複数枚のブランクを、ブランク板厚方向へ積層して形成される。この場合には、鉄心構成部材の磁化方向に垂直な断面での鉄心構成部材の形状は、四角形となる。
一方、大型の変圧器の鉄心では、鉄心構成部材の磁化方向に垂直な断面での鉄心構成部材の形状が円形である鉄心構成部材を用いることがある。この鉄心構成部材は、
(a)複数枚のブランクをブランク板厚方向へ積層した際に、磁化方向に垂直な断面での鉄心構成部材の形状が円形になるように、板幅が徐々に変化するように調整して切り出した複数枚のブランクをブランク板厚方向へ積層すること、または
(b)板幅が略同一の複数枚のブランクをブランク板厚方向へ積層した後に、切削加工等により、磁化方向に垂直な断面での形状を円形に加工すること
により、形成される。
しかし、本発明は、鉄心構成部材の上記断面形状が四角形であるか、あるいは円形であるかには関係なく、積層したブランクの一部において本発明で規定するA点およびB点を有してれば、本発明の効果を得られる。
磁化方向に垂直な断面での鉄心構成部材の形状が円形である場合、板幅が徐々に変化する複数枚のブランクの全てが、本発明で規定するA点およびB点を有することが最も好ましい。しかし、板幅が狭いブランクでは、板幅方向への位置による磁束密度の変動幅が小さくなり、A点およびB点を有さないことが避けられない。また、同一形状のブランクを積層した、磁化方向に垂直な断面の形状が四角形の鉄心構成部材においても、板取りの関係などからA点およびB点を有さないブランクが混在することもある。
このため、好ましくは積層枚数の30%以上、より好ましくは積層枚数の60%以上、さらに好ましくは積層枚数の80%以上のブランクが、A点およびB点を有するように、鉄心構成部材を形成することが好ましい。
(4)外鉄型の鉄心11,11−1
図7(a)は、単相変圧器用の内鉄型の積み鉄心1を模式的に示す平面図であり、図7(b)は、3相変圧器の内鉄型の積み鉄心1−1を模式的に示す平面図である。また、図7(c)は、単相変圧器用の外鉄型の積み鉄心11を模式的に示す平面図であり、図7(d)は、3相変圧器の外鉄型の積み鉄心11−1を模式的に示す平面図である。図7(a)〜図7(d)において、符号2は脚鉄心を示し、符号3はヨーク鉄心を示し、符号7は脚鉄心2に巻かれたコイルを示す。
以上の説明では、本発明を図7(a)および図7(b)に示す内鉄型の積み鉄心に本発明を適用した場合を例にとった。しかし、本発明は、内鉄型の積み鉄心1,1−1に限定されるものではなく、図7(c)および図7(d)に示す外鉄型の積み鉄心11,11−1にも同様に適用される。
質量%で、C:0.045%、Si:3.4%、Mn:0.09%、S:0.01%、sol.Al:0.03%、N:0.007%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する鋼材を素材とし、1200℃でスラブ加熱を行った後、板厚2.5mmまで熱間圧延し、1000℃で熱延板焼鈍を施した後、板厚0.30mmまで冷間圧延して、840℃で2分間の脱炭焼鈍を施す際にアンモニア含有雰囲気で窒化焼鈍を行った。
この際、アンモニア含有雰囲気の流量を板幅方向で変化させ、鋼板の窒化量を板幅方向で変化させた。この脱炭焼鈍板にMgOを主体とする焼鈍分離剤を水スラリーで塗布した後乾燥し、コイル状に巻き取ったものを1200℃で20時間焼鈍した。
このようにして、C:0.002%、Si:3.4%、Mn:0.07%、S:0.001%、sol.Al:0.02%、N:0.001%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有するとともに、板幅が1000mm、板幅方向への磁束密度B8の分布を有する、表1に示す本発明例の方向性電磁鋼板S2,S3を製造した。
また、上述した製造工程において、窒化焼鈍の際に、アンモニア含有雰囲気の流量を板幅方向で変化させずに鋼板の窒化量を板幅方向で変化させないことにより、上記化学組成を有するとともに、板幅方向への磁束密度B8の分布を有さない、表1に示す比較例の方向性電磁鋼板S1を製造した。
これらの素材である方向性電磁鋼板S1〜S3について、前述の方法にて、10cm幅の測定試料により幅方向にわたる磁束密度B8を測定し、一方の端からもう一方の端に向かう10点(a〜j)のデータを得た。表1に、a点(板幅の一方の端)、j点(板幅のもう一方の端)での磁束密度B8a,B8jに加え、板幅中央での磁束密度、b点〜e点の平均の磁束密度B8b−e,f点〜i点の平均の磁束密度B8f−i、さらには鋼板全体の特性として、a点〜j点の10点の平均の磁束密度B8a−jを示す。
表1に示すように、方向性電磁鋼板S1の板幅方向への磁束密度の変化はほぼ均一で小さい。一方、方向性電磁鋼板S2,S3の板幅方向への磁束密度の変化は大きい。、a点側が本発明のA点側となり、測定のj点が本発明のB点側となるように、略直線で磁束密度が変化(n=1)している。また、板幅全体での平均の磁束密度は、方向性電磁鋼板S1〜3でほぼ同等である。
Figure 0006900686
これらの方向性電磁鋼板S1〜S3から切り出された、表2および図5(a)〜図5(b)に示すブランクA〜Dを、鉄心の内周側に磁束密度が低い側が配置されるとともに外周側に磁束密度が高い側が配置されるようにして、表2に示す試験No.1〜8の100MVAの容量の単相積み鉄心変圧器(上下のヨーク鉄心:ブランクA,B、左右の脚鉄心:ブランクC,D)を作製した。
本実施例では、同一幅のブランクを積層しており、変圧器の鉄心断面は四角形とした。変圧器サイズはAB=3200mm、DB=3800mmである。またブランクA、B、C、Dの幅は全て1000mmであり、鋼板を全幅そのままで使用した。
また、表2および図5(a)〜図5(b)では、各ブランクA〜Dの短磁路側(内側)をAと表記し(例えばブランクDの内周側をDAとする)、長磁路側(外側)をBと表記した。例えば、ブランクDの外周側をDBと表記した。
そして、試験No.1〜8の100MVAの容量の単相積鉄心変圧器の鉄損およびBFを測定した。
Figure 0006900686
表2における試験No.2〜6は本発明の規定を全て満足する本発明例であり、試験No.1は本発明を実施しない従来例であり、試験No.7はブランクC,Dの配置が本発明を満足しない比較例であり、試験No.8はブランクA〜Dの配置が本発明を満足しない比較例である。
試験No.2ではブランクC,Dに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S2を使用し、試験No.3ではブランクA,B,C,Dに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S2を使用し、試験No.4ではブランクCに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S3を使用し、試験No.5ではブランクC,Dに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S3を使用し、さらに試験No.6ではブランクA,B,C,Dに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S3を使用した。このため、鉄損:11.5〜12.7kW,BF:0.94〜1.03の優れた値が得られた。
これに対し、試験No.1では、ブランクA,B,C,Dともに従来例の方向性電磁鋼板S1を使用したため、鉄損およびBFともに劣った値であった。
試験No.7では、ブランクC,Dに本発明を満足しないように方向性電磁鋼板S2を使用したため、鉄損およびBFともに劣った値であった。
さらに、試験No.8では、ブランクA,B,C,Dに本発明を満足しないように方向性電磁鋼板S3を使用したため、鉄損およびBFともに劣った値であった。
このように、本発明によれば、例えば発電所や変電所で用いられる大型の積み鉄心や、受電用や配電用の中〜小型の積み鉄心の損失やBFを低減できることが分かる。
C:0.07%、Si:3.1%、Mn:0.08%、S:0.03%、sol.Al:0.025%、N:0.008%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する鋼材を素材とし、1400℃でスラブ加熱を行った後、板厚2.2mmまで熱間圧延し、1100℃で熱延板焼鈍を施した後、板厚0.27mmまで冷間圧延して、850℃で1分間の脱炭焼鈍を施した。
この脱炭焼鈍板にMgOを主体とする焼鈍分離剤を水スラリーで塗布する際に、粗い粒と細かい粒のMgOを板幅方向に分布させて塗布し、乾燥後の板間の空隙率を板幅方向で変化させた。こうして得られた鋼板コイルを1200℃で20時間焼鈍した。
このようにして、C:0.002%、Si:3.1%、Mn:0.07%、S:0.0005%、sol.Al:0.015%、N:0.0008%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有し、板幅が900mmであるとともに、板幅方向への磁束密度B8の分布を有する、表3に示す本発明例の方向性電磁鋼板S5,S6を製造した。
また、上述した製造工程において、焼鈍分離剤を水スラリーで塗布する際に、粗い粒と細かい粒のMgOを板幅方向に分布させずに塗布し、鋼板の窒化量を板幅方向で変化させないことにより、上記化学組成を有するとともに、板幅方向への磁束密度B8の分布を有さない、表3に示す比較例の方向性電磁鋼板S4を製造した。
これらの素材である方向性電磁鋼板S4〜S6について、前述の方法にて、10cm幅の測定試料により幅方向にわたる磁束密度B8を測定し、一方の端からもう一方の端に向かう9点(a〜i)のデータを得た。表3には、a点(板幅の一方の端),i点(板幅のもう一方の端)での磁束密度B8a,B8iに加え、板幅中央での特性として、b点〜d点の平均の磁束密度B8b−d、e点(板幅中央)の磁束密度B8e、f点〜h点の平均の磁束密度B8f−h、さらには鋼板全体の特性として、a点〜i点の9点の平均の磁束密度B8a−iを示す。
表3に示すように、方向性電磁鋼板S4の板幅方向への磁束密度の変化は、ほぼ均一で小さい。一方、方向性電磁鋼板S5,6の板幅方向への磁束密度変化は大きい。方向性電磁鋼板S5のa点側が本発明のA点側となり、方向性電磁鋼板S5のi点側が本発明のB点側となるように略直線的に変化(n=1)している。また、方向性電磁鋼板S6のa,i点側が本発明のA点側となり、方向性電磁鋼板S6のe点側が本発明のB点側となるように板幅方向の中央の磁束密度が高い(n=2)分布となっている。また、板幅全体での平均の磁束密度B8a−iは、方向性電磁鋼板S4〜6について略同等である。
Figure 0006900686
これらの素材である方向性電磁鋼板S4〜S6から切り出された、表2および図6(a)〜図6(b)に示すブランクA〜Eを、鉄心の内周側に磁束密度が低い側が配置されるとともに外周側に磁束密度が高い側が配置されるようにし、表4に示す試験No.9〜15の160MVAの容量の3相積み鉄心変圧器(上下のヨーク鉄心:ブランクA,B、左右の脚鉄心:ブランクC,D、中央脚の鉄心:ブランクE)を作製した。
変圧器サイズはAB=5800mm、DB=3600mmである。またブランクA、B、C、D、Eの幅は全て900mmであり、鋼板を全幅そのままで使用している。
本実施例では、同一幅のブランクを積層しており、変圧器の鉄心断面は四角形とした。また、表4および図6(a)〜図6(b)では、各ブランクA〜Eの短磁路側(内側)をAと表記し(例えばブランクEの内周側をEAとする)、長磁路側(外側)をBと表記し(例えばブランクEの外周側をEBとする)、中央側をEと表記した。例えば、ブランクEの中央側をEEと表記した。
そして、試験No.9〜15の160MVAの容量の3相積み鉄心変圧器の鉄損およびBFを測定した。
Figure 0006900686
表4における試験No.10〜13は本発明の規定を全て満足する本発明例であり、試験No.9は本発明を実施しない従来例であり、試験No.14はブランクC,Dの配置が本発明を満足しない比較例であり、試験No.15はブランクC,Dの配置が本発明を満足しない比較例である。
試験No.10〜13では、ブランクA〜Dには方向性電磁鋼板S5(特性変動n=1)を用い、ブランクEには方向性電磁S6(特性変動n=2)を用いた。すなわち、試験No.10ではブランクC,Dに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S5を使用し、試験No.11ではブランクEに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S6を使用し、試験No.12ではブランクC,Dに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S5を使用するとともにブランクEに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S6を使用し、さらに、試験No.13ではブランクA,B,C,D,Eに本発明を満足するように方向性電磁鋼板S5、S6を使用した。このため、鉄損:28.5〜29.5kW,BF:1.23〜1.27の優れた値が得られた。
これに対し、試験No.9では、ブランクA,B,C,D,Eともに従来例の方向性電磁鋼板S4を使用したため、鉄損およびBFともに劣った値であった。
試験No.14では、ブランクC,Dの配置が本発明を満足しないように方向性電磁鋼板S5を使用したため、鉄損およびBFともに劣った値であった。
さらに、試験No.15では、ブランクC,Dに本発明を満足しないように方向性電磁鋼板S5を使用したため、鉄損およびBFともに劣った値であった。
このため、本発明によれば、例えば発電所や変電所で用いられる大型の積み鉄心や、受電用や配電用の中〜小型の積み鉄心の損失やBFを低減できることが分かる。
1,1−1 内鉄型の積み鉄心
2 脚鉄心
3 ヨーク鉄心
4 脚鉄心とヨーク鉄心がL字型に交わるコーナー部
脚鉄心とヨーク鉄心がT字型に交わるコーナー部
5 直辺部
8 磁束
10 窓部
11,11−1 外鉄型の鉄心
RD 圧延方向

Claims (6)

  1. 圧延方向の磁束密度B8が板幅方向について変動し、切り出したブランクが積み鉄心に用いられる方向性電磁鋼板であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.005%以下、
    Si:2.0〜4.5%、
    Mn:0.02〜1.00%、
    SおよびSeの合計:0.005%以下、
    sol.Al:0.003〜0.02%、
    N:0.005%以下、
    残部Feおよび不純物であり、
    板幅方向の第1の特定位置であるA点における圧延方向の磁束密度B8A(T)と、板幅方向の第2の特定位置であるB点における圧延方向の磁束密度B8B(T)について、B8B>B8A、かつB8B−B8Aが0.03(T)以上となるA点およびB点が少なくとも1つずつ存在し、
    前記積み鉄心の内周側の特定位置の磁束密度がB8A(T)、前記積み鉄心の外周側の特定位置の磁束密度がB8B(T)となるように配置された、積み鉄心用方向性電磁鋼板。
  2. 前記A点および前記B点が、nを1以上の自然数として、板幅の1/nで交互に存在する、請求項1に記載の積み鉄心用方向性電磁鋼板。
  3. 複数存在する前記A点の磁束密度B8A(T)の最大値および最小値の差が0.01T以下であるとともに、複数存在する前記B点の磁束密度B8B(T)の最大値および最小値の差が0.01(T)以下である、請求項1または2に記載の積み鉄心用方向性電磁鋼板。
  4. 前記A点から前記B点に亘る磁束密度B8が略直線的に変化する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積み鉄心用方向性電磁鋼板。
  5. 質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.04〜0.50%、SおよびSeの合計:0.002〜0.05%、sol.Al:0.005〜0.05%およびN:0.001〜0.020%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する鋼材を素材とし、
    熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程と、窒化焼鈍工程と、焼鈍分離剤塗布工程と、仕上げ焼鈍工程とを含む、積み鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記窒化焼鈍工程において、窒化量を鋼板の板幅方向について変化させる、請求項1〜4のいずれかに記載の積み鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.04〜1.0%、SおよびSeの合計:0.002〜0.05%、sol.Al:0.005〜0.05%およびN:0.001〜0.020%を含有し、残部Feおよび不純物である化学組成を有する鋼材を素材とし、
    熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、脱炭焼鈍工程と、焼鈍分離剤塗布工程と、仕上げ焼鈍工程とを含む、積み鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記仕上げ焼鈍工程において、コイルの板間隙間を板幅方向について変化させて巻き取ったコイルで仕上げ焼鈍を行う、請求項1〜4のいずれかに記載の積み鉄心用方向性電磁鋼板の製造方法。
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