JP3430426B2 - 板幅方向に均一な磁気特性を有する方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

板幅方向に均一な磁気特性を有する方向性珪素鋼板の製造方法

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JP3430426B2 JP01449994A JP1449994A JP3430426B2 JP 3430426 B2 JP3430426 B2 JP 3430426B2 JP 01449994 A JP01449994 A JP 01449994A JP 1449994 A JP1449994 A JP 1449994A JP 3430426 B2 JP3430426 B2 JP 3430426B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、方向性珪素鋼板の製
造方法に関し、特に粗圧延前の予備処理とその後の粗圧
延条件を規定して組織を制御することによって、磁気特
性を始めとする製品品質の向上を図ろうとするものであ
る。 【0002】 【従来の技術】方向性珪素鋼板は、主として変圧器その
他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度及び
鉄損等の磁気特性に優れることが基本的に要求される。
このような方向性珪素鋼板を製造するに当たって、特に
重要なことは、いわゆる仕上げ焼鈍工程でにおいて、1
次再結晶粒を{110}<001>方位の結晶粒に優先
的に2次再結晶させることである。 【0003】このような2次再結晶を効果的に促進させ
るためには、まず1次再結晶の正常成長を抑制するイン
ヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズに
分散させることが重要である。かかるインヒビターは鋼
中への溶解度が極めて小さい物質が用いられるため、従
来は熱間圧延前にスラブを高温に加熱してインヒビター
成分を完全に固溶させる方法がとられており、その後の
熱間圧延工程以降、2次再結晶工程までの間の析出状態
を制御している。 【0004】従来、方向性珪素鋼板を製造するには、厚
さ100 〜300 mm程度のスラブを、1250℃以上の温度で長
時間にわたって加熱し、インヒビター成分を完全に固溶
させた後、熱間圧延し、次いでこの熱延板を1回又は中
間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし
た後、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、2次再
結晶及び純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行うのが一
般的である。 【0005】しかし、このようなスラブ加熱を長時間施
すと、加熱終了後の結晶粒の粗大化が著しくなる。スラ
ブ中の粗大結晶粒は、その後の熱間圧延で再結晶しにく
く、未再結晶粒内の亜粒界や転位が析出サイトとして働
くため、一旦固溶させたインヒビター成分が粗大に析出
し、製品の磁気特性の劣化原因となっていた。しかも、
方向性珪素鋼板はインゴットに鋳込んだ分塊スラブを用
いて製造して、その鋳込みの際に生成される柱状晶はそ
の後の高温加熱により粗大化してしまうため、上記の理
由により2次再結晶は不安定化するのである。 【0006】その解決策として、特公昭50−37009 号お
よび特開昭51−107499号各公報には、スラブを加熱した
後、分塊圧延を行うことにより、柱状晶を破壊してその
後の再加熱で大部分を再結晶組織とする方法が提案され
ている。さらに、特公昭52−44743 号公報には、加熱さ
れたスラブの粗大結晶粒が存在する両端不要部を除去し
た後に、分塊圧延を行って良好な組織とすることが示さ
れている。 【0007】近年では、連続鋳造によりスラブが製造さ
れるようになったが、上記のスラブの柱状晶は依然とし
て問題であって、スラブを高温に加熱する際の結晶粒の
粗大化を防止するための結晶粒制御を目的として、高温
加熱前に予備圧延を行う方法が、特開昭48−53919 号、
特公昭54−27820 号、特開昭61−246317号、特開昭62−
10213 号および特開平2−263911号各公報に提案されて
いる。 【0008】また、ヘゲや割れなどの表面欠陥が少な
く、かつ低鉄損の珪素鋼を得るため、特開昭62−149815
号公報では、熱間圧延に先立ち予備圧延を行う方法が提
案されている。 【0009】しかしながら、上記の全ての提案は、幅方
向に均一に歪が導入されるために、特にスラブ端部の柱
状晶に限って粗大化が防止できるものではなく、スラブ
の幅および厚みの両方向の中央部に当たる等軸晶部にお
いても同様に作用するため、結果的に加熱後の結晶粒サ
イズが幅方向にばらつくことになる。このばらつきの影
響は、その後の工程においても残るために、各部分に対
応した最適処理条件も異ってきて、鋼板幅方向に均一な
磁気特性を得ることができない。 【0010】そこで、スラブの幅端の柱状晶部に限定し
て、その結晶粒の粗大化を回避する手段として、連続鋳
造における鋳込み形状をスラブの幅方向両端部の厚みが
中央の厚みよりも厚い異形断面の凹型スラブとする方法
が、特開昭61−3837号公報に、また粗圧延前に幅圧化を
行う方法が、特開昭60−200916号および特開平4−1571
18号各公報に提案されている。さらに、この柱状晶によ
るリッジング発生を防止する、スラブの幅圧下が特開昭
60−177901号公報に提案されている。 【0011】また、スラブエッジの耳荒れや耳割れ等の
耳きず防止対策として幅圧下を行い、歩留りの向上をは
かるものに、特開昭62−116721号、特公昭3−6842号お
よび特開平4−304315号各公報がある。さらに発展した
方法としては、特開平4−365818号公報において、板幅
方向に均一で優れた磁気特性を得るために、スラブエッ
ジ部を中央より50℃以上高い温度で幅圧下することが提
案されている。 【0012】一方、連続鋳造法で得た一定サイズの広幅
スラブに幅圧下を施し、種々のサイズの熱延板を得るこ
とにより、連続鋳造工程における生産性の向上を図るこ
とを目的とした技術も、特開平3−47601 号公報に提案
されている。 【0013】しかし、これらの技術は全て、凹型スラブ
を鋳込むか、あるいは幅圧下を行うため、スラブは幅方
向に厚みが不均一(ドッグボーン形状に代表される)と
なり、その後の加熱炉装入に際し、スラブの直立性を確
保することができず、炉壁の損傷を招くため実用化には
至っていない。また、再加熱において、形状の不均一に
よる温度むらを助長し、これが組織不均一化の原因とな
り磁気特性の劣化を招くことも問題であった。 【0014】そこで、近年、熱間圧延に先立って、スラ
ブ加熱後に幅圧下をした後、水平ロール圧延を行って再
加熱する方法が行われるようになってきている。例え
ば、特開平1−162725号公報には、スラブ加熱後5%以
上の増厚をはかる圧延を行い、引き続き圧延によって厚
みを200 mm以上とした後、誘導加熱によりスラブ表面温
度を1350〜1500℃の温度範囲に加熱し、該温度範囲で1
〜60分間保持し、引き続き熱間圧延することを特徴とす
る磁気特性の良好な方向性珪素鋼板の製造方法が開示さ
れている。しかし、この提案は粗圧延での圧延率を確保
するためのスラブ厚の維持についてのみ言及しており、
単にスラブ厚みを規制するのであれば、所望厚みのスラ
ブを予め鋳込むことで解決できる程度の問題である。な
お、上記公報で提案されているスラブ厚は特別なもので
はなく、通常の工程で十分鋳込み可能な厚さである。 【0015】また、特開平5−140650号公報には、高温
加熱に先立ち、該スラブを熱間にて圧下率8%以上の幅
圧下加工と、圧下率2%以上30%以下の平たん化予備圧
延を施し、引き続いて、スラブ端部表面温度とスラブ中
央部表面温度との温度差ΔTを−50℃≦ΔT≦+30℃の
温度範囲内に調整してから、誘導加熱により1380℃以上
1440℃以下の温度範囲に加熱し、圧下率80%以上の粗圧
延に続いて仕上げ圧延を行うことが提案されている。こ
の技術は、表面疵を防ぎ、スラブ加熱後の粗大結晶粒に
よる製品の帯状細粒の発生を抑えて、磁気特性の良好か
つ均一な方向性珪素鋼板を、その生産性を阻害すること
なく得ることを可能としている。 【0016】しかし、予備圧延後にスラブ端部温度と幅
中央温度との差が−50℃以上+30℃以下になるように加
熱する場合、スラブの端部をこの温度範囲内に調整する
には長時間を要し、スラブ全体での平均温度が低下して
しまう。したがって、その後の加熱に長時間を要する結
果となり、幅方向での温度均一化効果よりも、スラブ粒
粗大化の影響が著しくなり、改善効果を期待できない。 【0017】一方、目的は異なるが、同様な方法の提案
が特開平3−133501号公報にある。これは、一方向性電
磁鋼熱延板の耳割れの助長を伴わないばかりでなく、そ
れを更に改善できる一方向性電磁鋼スラブの大幅圧下圧
延を可能とし、もって連続鋳造工程での一方向性電磁鋼
スラブの製造における生産性の向上を図ることを目的と
している。つまり、同一スラブから所望の幅サイズの製
品を造りだすことを提案しており、生産性向上には有効
な方法である。しかし、方向性珪素鋼板の製造において
は、同時に良好な磁気特性を得ることが重要であり、そ
の点については何ら開示されておらず、この技術では磁
気特性を含む製品品質を確保することが難しい。 【0018】以上3つの公報での提案に共通した問題点
は、粗圧延前の条件については種々の検討を加えている
にもかかわらず、それに対応したその後の熱延条件につ
いては詳細に検討されていないため、より優れた方向性
珪素鋼板を製造することが困難なことにある。 【0019】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、特に、加
熱後のスラブ粒径に応じて適切な粗圧延条件を選定する
ことにより、さらに効果的な組織改善を実現し、良好な
磁気特性を得ることができる方向性珪素鋼板の製造方法
について提案することを目的とする。 【0020】 【課題を解決するための手段】この発明は、含珪素鋼ス
ラブに熱間圧延を施し、その後1回又は中間焼鈍を挟む
2回の冷間圧延にて最終板厚に仕上げたのち脱炭焼鈍を
施し、次いで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから仕上
げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性珪素鋼板を製造
するに当たり、上記スラブを900 〜1300℃の温度範囲に
加熱したのち、50〜300 mmの範囲内で幅圧下を行い、次
いで、この幅圧下により発生したドッグボーン形状を水
平圧下圧延によって消去した後、スラブを1300〜1450℃
の温度範囲で5〜90分間保持し、その後、下記式(1) を
満足する熱間粗圧延を行うことを特徴とする板幅方向に
均一な磁気特性を有する方向性珪素鋼板の製造方法であ
る。 【数2】 記 an =an-1 ×An −Bn >0 (n≧1) -----(1) ここで、 an :n+1 パス目直前で残留する未再結晶粒のシートバー幅中央部の厚み 方向半径(mm) o =1.25t 1/2 ただし、 t:1300℃以上での保持時間(min)n =(100 −Rn )/100 ただし、 Rn :nパス目の圧下率(%) Bn =Gn (T) ×(tn+1 −tn ) ただし、 Gn (T) :nパス目の圧延温度での再結晶進行速度(mm/s)で 次式(2) で表される lnGn (T) =6.20−(1.65×104)1/Tn -----(2) なお、 Tn :nパス目におけるシートバー幅中央部の表面から 1/4 厚みの位置での圧延温度(K) tn :誘導加熱炉抽出後nパス目までの時間(s) 【0021】以下に、この発明を導くに到った実験結果
について詳述する。発明者らは、上記した目的を達成す
るうえで最も重要である磁気特性について、2次再結晶
開始温度(以下、TSRを示す)との関連から調査した結
果、粗圧延前に幅圧下と水平圧下圧延を行い、その後は
通常の工程に従って方向性珪素鋼板を製造したとき、コ
イルエッジ部における最適なTSRが幅中央部に比べ低い
ことがわかった。これはコイルエッジ部におけるインヒ
ビター抑制力が低下していることを示している。なお、
最終仕上げ焼鈍における、TSRと2次再結晶保定温度
(以下、TFAと示す)との差を図1に示すように、現工
程では優れた磁気特性を得るために、TFAをTSRより0
〜50℃高めの焼鈍を行っている。したがって、スラブ
幅中央部に最適なTFAで最終仕上げ焼鈍を行うと、コイ
ルエッジ部ではその温度が不適当であるために、磁気特
性が劣化する結果となる。 【0022】ここで、TSRはインヒビター強度と組織の
2つの要因によって決まり、このインヒビター強度は主
に熱間圧延工程での加熱温度に依存することがわかって
いる。そして、理想的には、インヒビター強度及び組織
の両方が幅方向で均一となることが、方向性珪素鋼板の
製造においては重要である。ところが、実際の製造工程
においてはスラブ端部の温度低下を防ぐことは難しい。
すなわち、2次再結晶におけるスラブ幅方向の各種評価
を示す図2の(c) から明らかなように、スラブを加熱す
ると、その幅方向で温度勾配を生じるために、温度に依
存するインヒビター強度を均一とすることは困難であ
る。 【0023】また、スラブ柱状晶部分においてはインヒ
ビター濃度が等軸晶部に比べて低いことも、図2(b) に
示すように、確認された。すなわち、スラブ組織には、
図2(a) に示すように、柱状晶領域と等軸晶領域とが存
在して、たとえ熱延温度を幅方向で一定とした場合にお
いてもインヒビター濃度が異なるために、TSRを幅方向
で一定にすることは不可能である。 【0024】そこで、TSRを決めるもう一つの因子であ
る組織に注目した。図2(a) で示したような一般的な連
鋳スラブに、幅圧下と水平圧延を行い、その後、通常の
粗圧延を行った際のシートバー組織を、図2(e) に示
す。未再結晶粒が幅方向でほぼ均一に分散している様子
がわかる。そして、この未再結晶粒は、TSRの低下を招
くことが実験により確認された。つまり、従来の幅プレ
スと水平圧延を含む製造方法における、組織要因による
SRは、図2(g) に示すように、幅方向でほぼ一定とな
っていると考えられる。 【0025】以上の実験結果から、TSRの要因であるイ
ンヒビター強度と組織を相互に制御することにより、幅
方向のTSRを一定とすることを想到した。すなわち、イ
ンヒビター強度は、スラブの柱状晶に依存するインヒビ
ター濃度と温度とに従うことは、図2(b), (c)から明ら
かである。一方、組織においては、未再結晶粒を、図3
(a) に示すように、エッジ部でなくしかつ幅中心部に残
留させておくことにより、未再結晶粒に依存するT
SRを、図3(c) で示すところに変更して、インヒビター
濃度と温度によるTSRの幅方向変動を、同様の組織によ
る変動で打ち消して、全体的には図3(d) に示すよう
に、TSRを一定とすることが可能である。かようにし
て、板幅方向に均一な磁気特性を得ることができるので
ある。 【0026】次に、上記の知見に基づいて、スラブエッ
ジ部でのみ未再結晶粒を無くす手段について検討した。
まず、幅圧下と水平圧延が加熱後のスラブ粒径に及ぼす
影響について詳細に検討した結果、以下のことが明らか
となった。すなわち、幅圧下によるスラブの幅方向板厚
分布を実験的に測定したところ、図4に示すように、幅
方向エッジ部で厚みが増加する、いわゆるドッグボーン
形状となること、またこのような幅方向で厚みが不均一
な形状にあるスラブを圧延することにより、特にエッジ
部で歪を多く取り入れることが可能であること、が確認
された。さらに、一定量の歪を幅圧下および水平圧延に
より取り入れたスラブを再加熱すると、図5に示すよう
に、加熱後のスラブ幅中央部の粒半径a0 (mm)は、次
式(3) に示すように、1300℃以上の加熱時間に依存して
増加することも確認した。なお、スラブエッジ部には予
め中央部より多量の歪が導入されているため、スラブ柱
状晶部の影響があるにもかかわらず、加熱後の粒径は中
央部より小さくなる。 【数3】ao =1.25t1/2 -----(3) t:1300℃以上での保持時間(min) 【0027】すなわち、上式(3) を用いることによっ
て、熱間粗圧延に先立つ加熱を経たスラブにおける粒径
を知ることができる。 【0028】次に、スラブからシートバーを得る際の粗
圧延条件について綿密な検討を加えた。ここで、重要な
点はシートバーにおいて最適な再結晶組織、具体的には
幅中央部では未再結晶粒がわずかに残留し、一方エッジ
部では全てが再結晶粒からなる組織を得ることにあり、
このような観点から粗圧延における再結晶進行状態につ
いて調査した。 【0029】まず、通常の工程で得たスラブを用いて、
加熱後に幅圧下と水平圧下を行って予め粒径制御を行っ
た後に、通常の粗圧延と同様な条件で圧延を行い、シー
トバーを得た。各パス直後およびパス間それぞれにおい
てサンプルを切り出し組織を観察した。まず、再結晶の
核生成位置を観察したところ、核は加熱後のスラブ粒界
から生成していることを新たに見出した。次に、粒成長
に注目し、各パス間における再結晶について調査した。
この調査結果を、図6に示すように、再結晶は時間の経
過とともに進行し、その進行速度は、上記した式(2) で
表されるように、温度が一定のとき進行速度も一定であ
ることが確認された。換言すると、再結晶の進行速度は
圧延時の温度に依存し、圧延後の温度にはほとんど影響
されないことが判明した。 【0030】以上の知見をふまえた、再結晶の進行過程
を、図7に模式的に示す。同図に示すように、加熱後に
炉から抽出されたスラブは、1パス目で適当量に圧下さ
れ歪が導入されると、その歪は粒界に蓄積しやすいため
に、再結晶の核が粒界に析出する。その後、2パス目に
至るまでの間に再結晶の核は粒成長をし、さらに2パス
目の圧下で新たに歪が導入されると、同様の理由で再結
晶の核が生成し成長する。このようにしてnパス目まで
再結晶が進行する。なお、温度一定では再結晶の成長速
度は一定であるので、初期粒径が小さいほうがより早く
再結晶が完了する。 【0031】この考え方を基に、粗圧延条件(圧下率、
圧延温度、保持時間)を種々に変化させて、シートバー
における再結晶組織を定量的に評価した。その結果、最
適な再結晶組織を得るには、粗圧延の各パスを、上記し
た式(1) を満足する条件下で行うことが極めて有効であ
ることを見出したのである。すなわち、方向性珪素鋼板
を製造するに当たり、粗圧延前の予備処理及びその後の
粗圧延条件を上記の式(1) に従って規定して、スラブ組
織を制御することで、磁気特性を始めとする製品品質の
向上が可能となった。 【0032】 【作用】次に、この発明の各構成要件の限定理由につい
て説明する。この発明では、方向性珪素鋼の一般に従う
成分組成からなる珪素鋼スラブを、まずガス加熱炉で90
0 〜1300℃の温度範囲に加熱する。すなわち、加熱温度
が900 ℃未満であると、その後の再加熱に長時間を要し
てしまい粒成長が通常より進行して再加熱後により小さ
い結晶粒径を得ることができなくなるため、900 ℃以上
とした。当然ながら、粒成長は高温ほど顕著となる。一
方、1300℃を越えるとスラブが非常に軟らかくなるため
に、その後の予備圧延で導入する、ある程度の歪が確保
できなくなるので1300℃以下とした。 【0033】この加熱炉から抽出されたスラブに施す幅
圧下は、その圧下量が50mm未満であると、エッジ部での
未再結晶粒が消滅しないために50mm以上の幅圧下量が必
要である。一方、幅圧下量が300 mmを越えると、ドック
ボーン形状とはならずに幅中心部にまで圧下が及び、そ
の後の軽圧下では、スラブの幅端部にのみ歪みを多量に
導入することは不可能であるため、幅圧下量は300 mm以
下とする。 【0034】次に、幅圧下により形成されたドッグボー
ン形状を水平圧下圧延を行うことにより消去した後、誘
導加熱によりスラブ温度を1300〜1450℃の温度範囲に加
熱する。これは連続鋳造スラブに含有されているインヒ
ビター形成成分の固溶を十分に行うことを目的としてお
り、加熱温度は1300℃未満であると、インヒビターの固
溶が不十分となり、均一微細なインヒビターの析出を得
ることができないので1300℃以上とした。一方、加熱温
度が1450℃を越えると、スラブが溶解し始めて極めて危
険であるため、1450℃以下とした。 【0035】また、歪を導入したスラブを再加熱中に再
結晶させるため、加熱保持時間が5分未満であると、歪
が完全には緩和されずに再結晶しないので5分以上とし
た。一方、90分を越えると引き続き粒成長するために結
晶粒は粗大化し、その後の熱間圧延において良好な再結
晶組織を得ることが難しくなるので90分以下とした。 【0036】引き続き、熱間粗圧延を行うが、この圧延
条件は、上記した式(1) を満足することが肝要である。
ここで、上記した式(1) は以下に示すように圧延後の組
織に注目して導いた。加熱後のスラブ粒は1パス目の熱
間圧延後楕円形状に偏平され、歪みの蓄積されやすい粒
界から核が生成し、2パス目までは時間の経過にともな
い粒内部に向かって再結晶する。さらに2パス目で圧下
が加えられると未再結晶粒はさらに偏平され、先と同様
に核生成し粒内部に向かって再結晶が進行していく。こ
れをパス回数分繰り返す。パス回数が増すにつれて未再
結晶粒は偏平されていくので、未再結晶粒の厚み方向半
径における再結晶の進行を考えることにより、圧延後の
組織の再結晶進行状況を捉えることができる。すなわ
ち、未再結晶粒の厚み方向半径an をan <0とする
と、粗圧延組織は幅方向で均一となるが、インヒビター
濃度は幅方向で不均一であるために両者によって決まる
2次再結晶開始温度は幅方向で不均一となり磁気特性の
劣化を招く。したがって良好な磁気特性を得るために
は、幅中心部で未再結晶粒を残留させ得る圧延条件であ
るan >0を満足する必要がある。 【0037】 【実施例】 実施例1 C:0.06wt%、Si:3.2 wt%、Mn:0.07wt%、Se:0.01
8 wt%、Al:0.030 wt%およびN:0.0065wt%を含み残
部実質的にFeの組成になる、215 mm厚の連鋳スラブを、
3本製造した。各スラブを1200℃まで加熱して両側から
140 mmの幅圧下を行った後に、圧下率15%の水平圧下圧
延を施し、1300℃以上での加熱時間が45分となるよう
に、誘導加熱炉で1420℃まで加熱した。抽出後、表1に
示すパススケジュールの粗圧延により、40mmのシートバ
ーを得た。なお、表中の圧延温度はスラブ幅中央の表面
から1/4 厚み位置でのスラブ温度を示しており、また最
終圧延パス後の保持時間は仕上げスタンドに噛み込むま
での時間を示している。 【0038】ここで、スラブNo. 1および2はシートバ
ー幅中心部分で未再結晶粒が残留しているが、エッジ部
分では完全な再結晶組織となっていた。一方、スラブN
o. 3の比較例は、式(1) を満足しないため、幅中心部
においても完全に再結晶が進行していた。 【0039】その後、仕上げ圧延を行って2.2 mm厚の熱
延コイルとした。そして、1次冷間圧延で0.60mm厚とし
た後、1100℃1分間の中間焼鈍を行い、2次冷間圧延で
0.23mm厚の製品に仕上げた。次いで、840 ℃3分間の脱
炭焼鈍を湿水素中で行い、MgO を主成分とする焼鈍分離
剤を塗布し、N2 中での850 ℃の2次再結晶焼鈍とH 2
中での純化焼鈍からなる仕上げ焼鈍を行った。 【0040】かくして得られた最終製品の幅方向の電磁
特性を表1に併記するように、シートバー組織が完全に
再結晶化したスラブNo. 3に比較して、幅方向エッジ部
で完全な再結晶組織とするとともに、幅中心部で未再結
晶粒を残留させた組織としたスラブNo. 1および2で、
板幅方向に均一で良好な磁気特性が得られることがわか
る。 【0041】 【表1】 【0042】実施例2 C:0.04wt%、Si:3.4 wt%、Mn:0.07wt%およびSe:
0.020 wt%を含み、残部実質的にFeの組成になる、200
mm厚の連鋳スラブを4本製造した。各スラブを1200℃ま
で加熱して両側から200 mmの幅圧下を行った後に、圧下
率20%の水平圧下圧延を施し、1300℃以上での加熱時間
が50分となるように、誘導加熱炉で1430℃まで加熱し
た。抽出後、表2に示すパススケジュールの粗圧延によ
り30mmのシートバーを得た。なお、表中の圧延温度はス
ラブ幅中央の表面から1/4 厚み位置でのスラブ温度を示
しており、また最終圧延パス後の保持時間は仕上げスタ
ンドに噛み込むまでの時間を示している。 【0043】ここで、スラブNo. 4および5はシートバ
ー幅中心部分では未再結晶粒が残留しているが、エッジ
部分では完全な再結晶組織となっていた。一方、スラブ
No.6および7の比較例は、スラブ加熱後、幅圧下とそ
の後の水平圧下圧延を行わずに再加熱して粗圧延を行っ
ているため、エッジ部に未再結晶粒が残留した組織とな
っていた。 【0044】その後、仕上げ圧延を行って2.2 mm厚の熱
延コイルとした。そして、1次冷間圧延で0.60mm厚とし
た後1100℃1分間の中間焼鈍を行い、2次冷間圧延で0.
23mm厚の製品に仕上げた。次いで、840 ℃3分間の脱炭
焼鈍を湿水素中で行い、MgOを主成分とする焼鈍分離剤
を塗布し、N2 中での850 ℃の2次再結晶焼鈍とH2
での純化焼鈍からなる仕上げ焼鈍を行った。 【0045】かくして得られた最終製品の幅方向の電磁
特性を表2に示すように、シートバー組織を幅方向で均
一とするか、あるいは幅中心部だけ完全に再結晶化させ
た、スラブNo. 6および7よりも、逆に幅方向端部では
完全な再結晶組織とするとともに、幅中心では未再結晶
粒が残留した組織となるように組織形態を幅方向で制御
したスラブNo. 4および5で、板幅方向に均一で良好な
磁気特性が得られることがわかる。 【0046】 【表2】 【0047】 【発明の効果】以上詳述したようにこの発明は、スラブ
加熱後に幅圧下と水平圧下圧延を行い、引き続き再加熱
した後に粗圧延を行う際に、その粗圧延条件を加熱時間
も含めて規定して、シートバー幅方向中心部と端部で異
なった組織形態に制御することにより、鋼板の幅方向に
均一な磁気特性を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】 【図1】方向性珪素鋼板の製造過程である最終仕上げ焼
鈍における、2次再結晶保定温度および2次再結晶開始
温度の差と磁気特性との関係を示すグラフである。 【図2】従来の製造方法を基にして2次再結晶開始温度
(TSR)を幅方向に評価した図である。 【図3】この発明に従う製造方法を基にして2次再結晶
開始温度(TSR)を幅方向に評価した図である。 【図4】幅プレスによるスラブの幅方向板厚分布の長手
中央での測定例を示すグラフである。 【図5】加熱時間がスラブ粒半径に及ぼす影響を示す図
である。 【図6】種々の圧延温度における圧延後の経過時間と平
均再結晶粒径との関係を示す図である。 【図7】観察結果に基づいて模式化した粗圧延における
再結晶進行過程を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−133501(JP,A) 特開 平3−115527(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C21D 9/46 501 B21B 3/02

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 含珪素鋼スラブに熱間圧延を施し、その
    後1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延にて最終板厚
    に仕上げたのち脱炭焼鈍を施し、次いで鋼板表面に焼鈍
    分離剤を塗布してから仕上げ焼鈍を施す一連の工程によ
    って方向性珪素鋼板を製造するに当たり、上記スラブを
    900 〜1300℃の温度範囲に加熱したのち、50〜300 mmの
    範囲内で幅圧下を行い、次いで、この幅圧下により発生
    したドッグボーン形状を水平圧下圧延によって消去した
    後、スラブを1300〜1450℃の温度範囲で5〜90分間保持
    し、その後、下記式(1) を満足する熱間粗圧延を行うこ
    とを特徴とする板幅方向に均一な磁気特性を有する方向
    性珪素鋼板の製造方法。 【数1】 記 an =an-1 ×An −Bn >0 (n≧1) -----(1) ここで、 an :n+1 パス目直前で残留する未再結晶粒のシートバー幅中央部の厚み 方向半径(mm) o =1.25t 1/2 ただし、 t:1300℃以上での保持時間(min)n =(100 −Rn )/100 ただし、 Rn :nパス目の圧下率(%) Bn =Gn (T) ×(tn+1 −tn ) ただし、 Gn (T) :nパス目の圧延温度での再結晶進行速度(mm/s)で 次式(2) で表される lnGn (T) =6.20−(1.65×104)1/Tn -----(2) なお、 Tn :nパス目におけるシートバー幅中央部の表面から 1/4 厚みの位置での圧延温度(K) tn :誘導加熱炉抽出後nパス目までの時間(s)
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