JP2872404B2 - 磁気特性に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法

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JP2872404B2 JP2506701A JP50670190A JP2872404B2 JP 2872404 B2 JP2872404 B2 JP 2872404B2 JP 2506701 A JP2506701 A JP 2506701A JP 50670190 A JP50670190 A JP 50670190A JP 2872404 B2 JP2872404 B2 JP 2872404B2
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 この発明は、優れた磁気特性を有する方向性けい素鋼
板の製造方法に関する。
背景技術 一方向性けい素鋼板は周知のように、変圧器その他の
電気機器の鉄心材料として主に使用され、板面に{11
0}面、圧延方向に<001>軸が揃った2次再結晶粒によ
って構成される。このような結晶方位の2次再結晶粒を
発達させるにはインヒビターと呼ばれるMnS,MnSeおよび
AlNなどのような析出物を鋼中に均一微細に分散させ、
最終の高温仕上げ焼鈍中に{110}<001>方位以外の方
位の結晶粒の成長を効果的に抑制することが必要であ
る。そのためのインヒビター分散形態のコントロール
は、熱間圧延に先立つスラブ加熱中にこれらの析出物を
一旦固溶させ、その後適当な冷却パターンの熱間圧延を
施すことにより行われる。
ここで、熱間圧延の重要な役割の一つは、固溶してい
るインヒビター成分をインヒビターとして微細均一に析
出させることである。
例えば特開昭53−39852号公報には、1200℃以下、850
℃以上の温度範囲に60〜360秒間保持することによっ
て、MnSeの適正な分散相が得られることが報告されてい
る。しかしながらこの方法では、インヒビターはかなり
の頻度で不均一かつ粗大に析出する。とくに1100℃付近
に長時間保持されるとインヒビターは著しく粗大化する
ことが経験的に知られている。従ってこの方法では、イ
ンヒビターの抑制力が低下するため、完全な2次再結晶
組織を得ることは難しい。
その他特公昭58−13606号公報には、950℃〜1200℃の
温度域で圧下率10%以上の連続した熱間圧延を施しつ
つ、3℃/s以上の冷却速度で冷却する方法が提案されて
いる。しかしながらこの方法では、必ずしもインヒビタ
ーが微細に析出するわけではなく、結晶粒によっては粗
大あるいは不均一にインヒビターが析出する。特に板厚
方向の分散が不均一になり易い。この原因としては高温
変形に特有の歪の不均一性が挙げられる。
このように従来の方法では、インヒビターの分散状態
を完全に微細均一にすることができず、その結果最終仕
上げ焼鈍工程の2次再結晶焼鈍工程において1次粒の正
常成長を効果的に抑制することができなかったため、完
全な2次再結晶組織を得ることはできなかった。
また熱間圧延のもう一つの役割は、スラブ鋳造組織を
再結晶によって微細化し、2次再結晶に最適な集合組織
とすることである。なおかかる結晶組織の微細化処理
は、従来、インヒビターの固溶処理とは別個のものとし
て行われていた。
まずインヒビターの固溶に関しては、例えば特開昭63
−10911号公報に、スラブ表面温度が1420〜1495℃の温
度域に5〜60分保持するに際し、1320℃以上において、
1420〜1495℃の温度に達するまで8℃/分以上の昇温速
度で昇温することにより、表面欠陥が少なく特性も良好
な一方向性けい素鋼板が得られることが報告されてい
る。この方法により、確かにインヒビターの完全固溶は
達成され、また原理的にはスラブ表面粒の粗大化が抑制
され表面性状も改善できるかもしれないけれども、スラ
ブのような重量物に対して均一に上記の条件を満足させ
ることは実際には極めて難しく、特にスラブ全長にわた
って結晶粒の粗大化を完全に抑制することは事実上不可
能であり、従って組織の均一性を保証するためには熱間
圧延時に何らかの結晶粒微細化処理を加えることが必要
である。
一方、組織の微細化に関しては、1190〜960℃の温度
域での再結晶高圧下圧延による方法(特開昭54−120214
号公報)や、1230〜960℃の温度域においてγ相を3%
以上含んだ状態での30%以上の高圧下圧延による方法
(特開昭55−119126号公報)、粗圧延開始温度を1250℃
以下にする方法(特開昭57−11614号公報)、1050〜120
0℃の温度域において歪速度15S -1以下、圧下率15%/パ
ス以上で圧延する方法(特開昭59−93828号公報)など
多くの方法が知られている。これらはいずれも1200℃付
近の温度域で高圧下圧延を行うことによって組織の微細
化を図るという点で共通している。すなわちこれらはい
ずれも「鉄と鋼」67(1981) S 1200に発表されている
再結晶限界に関する知見またはそれと同一の技術思想に
基づくものである。第4図はこの知見を示すものであ
る。この図の示すところは、高温での圧延は再結晶にほ
とんど寄与せず、低温再結晶域で大きな歪を付加した場
合のみが、再結晶に寄与するということである。従って
高温に加熱したスラブでも再結晶による組織の微細化を
図るためには、1250℃以下まで冷却したのち圧延するこ
とが必須なわけである。
なお上記の技術はいずれも、加熱温度については1250
℃以上としているだけで上限は特に規定してなく、炉内
に長時間保持することにより、スラブの粒成長はある程
度容認しつつインヒビターを固溶し、結晶粒については
熱間圧延によって微細化するという点で共通している。
しかしながらこれらの技術の実際を考えると、インヒ
ビターを完全固溶させるべくスラブを高温加熱した場合
には、ホットストリップミルの上流に冷却装置が必要と
なるだけでなく、低温熱延のために余計なミルパワーが
必要となるなど、省エネルギー、高生産性を目的とする
ホットストリップミルの思想と矛盾する。しかも低温圧
延の効果に関しても必ずしも明確ではなかった。
つまり上記の方法を実工程に適用するには、その効果
のわりには多くの問題を抱えていたのである。
発明の開示 この発明の第一の目的は、熱間圧延工程でインヒビタ
ーの十分な均一微細分散を図ることにより、優れた磁気
特性が安定して得られる方向性けい素鋼板の有利な製造
方法を提案するところにある。
またこの発明の第二の目的は、インヒビターの完全固
溶および表面性状の改善に有利な高温スラブ加熱を適用
した条件下でも、ホットストリップミルの量産性という
メリットを最大限に活かしつつ均一微細な結晶組織を確
実に得て、磁気特性さらには表面性状に優れた方向性け
い素鋼板の有利な製造方法を提案するところにある。
さてこの発明の要旨構成は次のとおりである。
1.含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延ついで仕上げ圧
延と続く熱間圧延を施し、その後1回または中間焼鈍を
はさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、脱
炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布して
から、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程において、1150℃を超える温度域で
の粗圧延に引き続き、仕上げ圧延を1000〜850℃の温度
域にて圧下率40%以上で実施し、かつこの温度域に2〜
20秒間保持することを特徴とする磁気特性に優れた一方
向性けい素鋼板の製造方法(第1発明)。
2.含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延ついで仕上げ圧
延と続く熱間圧延を施し、その後1回または中間焼鈍を
はさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、脱
炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布して
から、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の仕上げ圧延段階において、鋼板厚
み方向中心部の温度を1150℃以上に保持しつつ鋼板を冷
却し、表面から板厚の1/20深さにおける温度が1000℃〜
950℃の温度域に到達した時点で、圧下率40%以上の圧
下を加え、かつこの温度域に3〜20秒間保持したのち冷
却し、ついで中心部の温度が950〜850℃の温度域に到達
した時点で圧下率40%以上の圧下を加え、かつこの温度
域に2〜20秒間保持することを特徴とする磁気特性に優
れた一方向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)。
3.含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延ついで仕上げ圧
延と続く熱間圧延を施し、その後1回または中間焼鈍を
はさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、脱
炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布して
から、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、1パス目
を、圧延温度T1が1280℃以上でかつ、圧下率R1が次式 60≧R1(%)≧−0.5T1+670 を満足する条件下に実施すると共に、次パスまで30秒間
以上保持し、さらに最終パスを、圧延温度T2が1200℃以
上でかつ、圧下率R2が次式 70≧R2(%)≧−0.1T2+165 を満足する条件下に実施することを特徴とする磁気特性
に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法(第3発明)。
4.含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延ついで仕上げ圧
延と続く熱間圧延を施し、その後1回または中間焼鈍を
はさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、脱
炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布して
から、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、1パス目
を、圧延温度T1が1280℃以上でかつ、圧下率R1が次式 60≧R1(%)≧−0.5T1+670 を満足する条件下に実施すると共に、次パスまで30秒間
以上保持し、さらに最終パスを、圧延温度T2が1200℃以
上でかつ、圧下率R2が次式 70≧R2(%)≧−0.1T2+165 を満足する条件下に実施し、引き続く仕上げ圧延を1000
〜850℃の温度域にて圧下率40%以上で実施し、かつこ
の温度域に2〜20秒間保持することを特徴とする磁気特
性に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法(第4発
明)。
5.含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延ついで仕上げ圧
延と続く熱間圧延を施し、その後1回または中間焼鈍を
はさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚としたのち、脱
炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布して
から、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって一方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、1パス目
を、圧延温度T1が1280℃以上でかつ、圧下率R1が次式 60≧R1(%)≧−0.5T1+670 を満足する条件下に実施すると共に、次パスまで30秒間
以上保持し、さらに最終パスを、圧延温度T2が1200℃以
上でかつ、圧下率R2が次式 70≧R2(%)≧−0.1T2+165 を満足する条件下に実施し、引き続く仕上げ圧延段階に
おいて、鋼板厚み方向中心部の温度を1150℃以上に保持
しつつ鋼板を冷却し、表面から板厚の1/20深さにおける
温度が1000℃〜950℃の温度域に到達した時点で、圧下
率40%以上の圧下を加え、かつの温度域に3〜20秒間保
持したのち冷却し、ついで中心部の温度が950〜850℃の
温度域に到達した時点で圧下率40%以上の圧下を加え、
かつこの温度域に2〜20秒間保持することを特徴とする
磁気特性に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法(第5
発明)。
6.上記の第1,2,3,4および5発明において、スラブ加熱
温度をスラブ中心部温度で1370℃以上でとした一方向性
けい素鋼板の製造方法(第6発明)。
以下、上記の各発明を由来するに至った実験結果につ
いて説明する。
まずインヒビターの均一微細分散についての実験結果
について説明する。
一般にインヒビターとなるSe等の元素を溶体化処理後
の冷却過程でMnSe等として析出成長させる場合、冷却速
度、保持温度および保持時間などによって析出粒子の大
きさと平均間隔を制御することは提案されている。しか
しながら上記の制御に必要な熱間圧延中における析出挙
動の詳細についてはこれまでほとんど明らかにされてな
く、とくに熱間歪とインヒビターの析出との関連が明ら
かではなかったため、鋼板全面にわたってインヒビター
を均一微細に析出させることはできなかった。
これに対し、発明者らは種々の温度域でのインヒビタ
ー析出挙動について多くの研究を行った結果、高温で付
与した歪量およびその温度での保持時間によって、イン
ヒビターの析出挙動が大幅に変化することを見出した。
さて発明者らは、鋼片を加熱しSeをすべて完全に固溶
させた後、各温度域で歪を付与し、一定時間その温度で
保持する実験を実験室的に行った。なおこのときの歪量
は圧下率を0〜70%とすることで変化させ、また保持時
間も変化させた。なおこの実験から、インヒビターの析
出は歪を加えることによりその析出速度が増し、歪を与
えない場合の析出とは析出挙動が全く異なることが判明
した。従って歪を与えずに行う実験は、熱間圧延時にお
けるインヒビターの析出について調査する場合は不適当
なわけである。また析出処理前の冷却過程で一旦室温ま
で冷却してしまうと、本来の冷却過程での析出とは挙動
が大きく異なることも併せて知見した。従って実験は正
確なヒートサイクルの下で適当な熱間加工歪を与えて行
った。
以下、第1発明を由来するに至った実験の一例を示
す。
C:0.045wt%(以下単に%で示す),Si:3.25%,Mn:0.0
7%,Se:0.020%を含有し、残部は実質的にFeよりなる、
30mm厚のけい素鋼スラブに、1350℃,30分間の固溶化処
理を施したのち、熱間加工歪を与える温度まで速やかに
冷却し、圧下率:50%の圧下を加えて歪を与え、その温
度に種々の時間保持した。
第1図に、インヒビターの析出状況に及ぼす各圧延温
度およびその温度での各保持時間の影響について調べた
結果を示す。
なおこのとき歪を与えず、同じ冷却パターンで処理し
た場合についても調査したところ、保持時間が60秒まで
はインヒビターの析出は全く起こらなかことから、歪を
付与することによる効果は非常に大きく、従って熱間圧
延時におけるインヒビター析出には、歪の導入が不可欠
であることが確認された。
第1図から、1000℃を超える温度域で歪を加えると不
均一で粗大な析出が生じることが判る。ただし1150℃を
こえるとインヒビターの析出は起こらない。
これに対し1000〜850℃の温度域では、インヒビター
は微細均一に析出し、このときの1秒以上の保持時間が
必要であることも判る。しかしながら保持時間をあまり
に長くし過ぎるとインヒビターの析出サイズが大きくな
り、抑制力の低下を招く。従って20秒を超えての保持は
好ましくない。
また第1図に、不均一析出域(1)、粗大析出域
(2)および均一微細析出域(3)として示したとお
り、高温ではインヒビターが不均一かつ粗大に析出する
のに対し、低温側では均一微細に析出することが判っ
た。
さらに高温における析出挙動は、第1図の模式図
(1)に示すように、熱間加工歪によって導入された転
位上への析出が中心であり、結晶内の転位密度に影響さ
れることがわかる。このためインヒビターは、粒界や亜
粒界上に析出し易く、粒内での均一な析出が起こりにく
い。これに対し、模式図(3)で示す低温における析出
挙動は、粒内の転位とは関係なく析出するため、結晶粒
内で均一となる。ここに低温での析出挙動は、加工歪に
よって導入された格子欠陥上への析出と考えられ、この
とき高温時にみられた転位上への析出よりはるかに均一
微細となり、鋼板全面で均一微細に析出する。この点、
高温時に転位上での析出が多くなるのは、加工時に導入
された格子欠陥が高温のためすぐに転位、亜粒界、粒界
に移動することによるものと考えられる。
また必要とする熱間加工歪量は、上記した温度域にお
いて累積圧下率が40%以上となる圧下で導入される程度
の量が必要である。というのは鋼板の結晶粒に導入され
る歪量は、実際には結晶粒ごとに異なるため、軽い圧下
率では結晶粒ごとの歪量の差が大きくなって、インヒビ
ターの分散析出形態が結晶粒ごとに異なるおそれが大き
いからである。
さて、以上の実験結果から以下のことが判明した。
すなわち1000〜850℃の温度域で熱間歪を付与すると
非常に遠い速度で結晶粒内全面にインヒビターの析出核
ができ、またこの温度域で2〜20秒間保持することによ
って析出が完了し、しかもこのときのインヒビターの分
散形態はどの結晶粒でも同様に微細均一となる。すなわ
ち鋼板全面にわたってインヒビターの完全な微細均一析
出が達成され、ひいては磁気特性が極めて優れた製品が
得られる。
次に、第2発明について説明する。
上述した処理によって、インヒビターの均一微細分散
が達成されるわけであるけれども、熱間圧延の後続工程
たとえば1次再結晶焼鈍工程において、焼鈍温度の変化
などによって鋼板表面の状態が変化した場合には、表面
近傍のインヒビターが不安定になり易い。従って磁気特
性の優れた製品をより安定に、すなわち工業的規模でも
安定して生産するためには、板厚方向におけるインヒビ
ターの分散析出形態をより綿密に制御する必要があるこ
とが判明した。
そこで前掲第1図に示した結果を、さらに詳細に検討
したところ、均一析出領域内においても、高温の方がや
や大きめのインヒビターが得られることが判った。すな
わち1000〜950℃の温度域で歪を付与しかつこの温度域
に3秒以上保持した場合には、均一ではあるがやや大き
めのインヒビターを得られることが判明した。この理由
は、均一析出領域においても高温側は、析出開始時の核
生成場所が少なくまた拡散も速いため、低温側に比べる
とインヒビターが幾分成長するためと考えられる。
従って上記の挙動を利用すれば、インヒビターのサイ
ズの制御ができることになる。
そこで次に、表面近傍のインヒビターの安定化につい
て検討したところ、表面近傍のインヒビターのサイズを
幾分大きめにしておくと、とくに後工程でのインヒビタ
ー成分の表面からの拡散による分解等の変化がおきにく
くなることが判明した。具体的には表面から板厚の1/20
深さの層(以下1/20層という)での温度が1000℃〜950
℃の範囲にあるときに、歪を付与し、引続きこの温度域
に3〜20秒間保持することが最もよい結果が得られるこ
とが判明したのである。このように1/20層での温度と表
面近傍のインヒビターの析出状態とが相関関係にあるこ
とが確認できたことから、1/20層での温度を制御すれ
ば、表面近傍におけるインヒビターの析出をも制御し得
ることが究明されたのである。
以上、まとめるとインヒビターを微細均一に析出させ
るには950〜850℃の温度域で加工歪を付与すればよく、
一方やや大きめのインヒビターを均一に析出させるには
1000〜950℃の温度域で加工歪を付与すれば良いわけで
ある。
従って、これらの手段を用いれば表層近傍および中心
部のインヒビターの分散形態を個別にコントロールする
ことも可能となり、1次再結晶焼鈍や脱炭焼鈍時に表面
インヒビターを変化せることなしに、2次再結晶焼鈍時
において安定した抑制力を維持させることができるので
ある。
なお実際の熱間圧延工程においては、スラブをガス加
熱したのち、誘導加熱炉にてスラブ中心部の温度を1370
℃以上に上昇させ、表面との温度差を十分に確保し、か
つインヒビター成分を完全に固溶させたのち、粗圧延中
にシートバー段階のけい素鋼板を水冷することにより表
面と中心温度をさらに調整する。
ついで仕上げ圧延中に、板厚中心部の温度を1150℃以
上に保持しつつ表面近傍すなわち板厚の1/20層の位置に
おける温度が1000〜950℃の範囲にあるときに、圧下率4
0%以上で加工歪を付与し、引続きこの温度域に3〜20
秒保持したのち、さらに水冷して中心部の温度が950〜8
50℃の範囲にあるときに、圧下率40%以上で加工歪を付
与し、この温度域での保持時間を2〜20秒間確保し、熱
間仕上げ圧延を完了する。
第2図に、仕上げ圧延中における温度履歴の好適例を
示す。なお1/20層および中心層の温度は、有限要素法を
用い、電子計算機で正確にシミュレートした。
すなわち中心部が1150℃以上の温度でかつ1/20層が10
00℃をわずかに下回ったときに、仕上げ圧延の第1パス
を施し、1/20層の温度が950℃未満になるまでに少なく
とも3秒間の保持時間を確保する。なおこの保持の間に
さらに圧下を施してもかまわない。ついで中心部温度が
950〜850℃の温度域にある間に合計40%以上の圧下率で
圧下を施す。なお圧下は1パスまたは複数パスのどちら
でもよく、要は上記の各温度域にある間にそれぞれ40%
以上の圧下率が付加できればよい。
なおこの発明において重要なことは、仕上げ圧延直前
に表層と中心部の温度差を十分に保つことであり、この
ためには誘導加熱によって中心部の温度を十分にあげる
ことが好ましい。また中心部と表層部の温度差を確保す
るために、シートバー段階で表層部を積極的に水冷する
ことが好ましい。
次に、第3発明の解明経緯について説明する。
前述したとおり、より高温域において結晶粒の微細化
が達成できれば、ホットストリップミルの量産性という
メリットを活かす上で極めて有用である。
そこで発明者らはさらに、高温度域での再結晶挙動に
関し数多くの実験と検討を行った結果、従来は歪回復域
であるとして全く興味の対象とされなかった高温度域に
おいても、歪量が充分大きければ再結晶が十分に進行す
ることを新たに見出した。この点についてはこれまで全
く報告はない。というのは工業的には高温加熱が非常に
難しかったこと、また実験室的に検討する場所でも、高
温圧延のためには高温加熱を行う必要があるが、スケー
ル生成や実験炉の補修などの問題があり、かような高温
圧延は極めて難しかったからである。
なお普通鋼については多数の実験報告があるが、1200
℃以上の高温域は動的復旧領域であって回復または動的
再結晶が主であるとされ、それ以上の検討は十分にはな
されていなかった。特に方向性けい素鋼の場合は、3%
程度のSiを含むのでほとんどがα相であり、このα相は
回復し易いとされているので動的再結晶は起こらないで
あろうということで、全く興味の対象とはされていなか
ったのである。
しかしながら発明者らは、この通説に疑問を持ち、超
高温加熱が可能なスケールの影響の少ない高温炉を開発
し、この高温炉を用いて鋭意研究を重ねた末に、上述し
たような結果を初めて見出したのである。
以下、この発明を由来するに至った実験について説明
する。
C:0.04%,Si:3.36%,Mn:0.05%およびSe:0.022%を含
み、残部実質的にFeからなるけい素鋼スラブを、1350℃
で30分間加熱し、種々の温度において種々の圧下率で1
パス圧延を実施し、水冷後、断面組織を観察して再結晶
率を測定した。
得られた結果を、圧延温度と圧下率との関係で第3図
に示す。
同図より明らかなように、従来の知見では全く再結晶
しないとされていた高温域たとえば1350℃でも、圧下率
が30%以上であれば再結晶が進むことが判明した。しか
も圧延後30秒以上、より好ましくは60秒間以上等温保持
することにより、さらに再結晶完了域が拡張することも
併せて見出された。
かかる現象は次のように理解される。
まず圧延後の未再結晶粒内には粗いネットワーク状の
転位組織で構成されるサブグレインが形成されているの
が観察された。従って回復は圧延後のかなり速い時点で
終了していると推察される。しかも結晶粒間でこのネッ
トワークの粗さすなわち転位密度が異なることから、こ
の転位密度の差が再結晶の駆動力となると考えられる。
高温では粒界が熱活性化されて移動可能となり、その移
動した粒界がある程度以上の曲率をもつとそれは再結晶
の核となり得る。
上記のような現象が生じる結果、従来は動的再結晶を
起こすほど歪は蓄積されないとされていた高温域でも実
際には再結晶が可能であることが究明されたのである。
ただしこの再結晶挙動は上述したように未再結晶域の転
位密度が低いためその成長の駆動力は非常に小さい。し
かしながら粒界の易動度が非常に大きいとき、すなわち
温度が高いとき(1280℃以上)には、時間はある程度か
かるけれども十分再結晶可能なのである。
この現象は、従来のよく知られている静的再結晶とは
様相がかなり異なる。
ここまで述べた内容は、3%けい素鋼で1300℃以上の
温度域での圧延の場合、すなわちα相単相状態での再結
晶機構であり、今回はじめて明らかになった事柄であ
る。これに対し、3%けい素鋼で従来知られていた前掲
第4図に示されるような再結晶限界曲線を与えるのは硬
質のγ相が析出しその近傍のみで再結晶が促進された場
合である。つまり従来は圧延実験でデータは得ていたけ
れども、その圧延前の熱処理方法が省略され過ぎていた
ため、この発明の基となった実験結果とは異なった結果
が得られたものと考えられる。その原因は、従来は高温
で溶体化処理したサンプルを室温まで一度冷却してから
再加熱して所定の圧延温度として圧延に供していたこと
によるものと考えられる。すなわちこの場合には組織中
には必ずγ相が一部生成する。このγ相はα粒の粒界付
近に優先的に生成し、そこでは再結晶が容易に進行す
る。しかしこの場合でも、元の粒径がスラブ鋳造粒のよ
うに粗大な場合には再結晶は完了し難く、旧粒子中心部
にはどうしても未再結晶部が残り易い。またγ相分率と
その分散は温度のみならず、C,Si量や歪量さらには冷却
速度(保持時間)にも大きく依存する。従って処理条件
のわずかの変化でもその効果は大きく変動することが知
られている。これが従来低温熱延による粒微細化効果が
安定して得られなかった大きな理由であったと推定され
る。また一方で、C量を増加すること(粗大カーバイト
の増加)により、後工程で集積の高い圧延集合組織が得
難くなるという欠点もある。
これに対し、今回発明者らが見出した高温でのα単相
域における再結晶挙動は、従来の低温でのγ相存在下に
おける再結晶と異なり、γ相を再結晶核生成サイトとせ
ず、単に粒界が核生成サイトとなり、また再結晶粒径も
比較的大きくなりやすいので、未再結晶部が残存しにく
く、均一な再結晶粒組織が得やすいのである。
上述した高温での再結晶条件下では、高温加熱スラブ
をそのまま圧延しても粗大粒を微細化することが可能と
なる。また加熱途中で圧延待ちなどにより低温化する必
要もないので、ホットストリップミルのメリットを最大
限利用することができる。
第3発明は、以上の基本的知見を基に完成されたもの
である。
以下、第3発明の構成についてさらに詳述する。
この発明では、後で述べる成分組成からなるけい素鋼
スラブを加熱炉に装入し加熱する。なお加熱温度および
加熱時間はインヒビターの種類や量によって幾分異なる
けれども、インヒビターの完全固溶を達成できる時間が
確保されればよい。ただし在炉時間があまり長すぎると
多量のスケールが発生するので、表面性状に悪影響を及
ぼさない程度の加熱時間とする。かくして高温加熱さ
れ、インヒビターが完全固溶状態のスラブは粗圧延に供
せられる。
粗圧延は通常5〜6パスで行われるが、今回の実験結
果によれば、特に重要なのは第1パスとそれに続く保持
および最終パスであることが判明した。第1パス終了後
の保持中すなわち第2パス直前では、ほぼ完全に再結晶
した組織(再結晶率:95%以上)を得ることが重要であ
る。
第5図に、実際に工場で実験した再結晶に及ぼす圧延
温度と圧下率との関係を示す。
通常の圧延方法ではパス間時間は圧延機列によって決
まり、粗1スタンドと粗2スタンド間のパス間時間は20
秒程度である。従って、圧延直後に95%以上の再結晶率
を得ることは非常に困難であるが、第5図から明らかな
ように、圧延後に30秒以上好ましくは60秒間以上保持す
ることにより、容易に95%以上の再結晶率を得ることが
できるようになる。
次に第6図に、圧延温度:1280℃,1300℃で圧下率:30
%の第1パス圧延を行った場合の再結晶進行状況につい
て調べた結果を、圧延後保持時間と再結晶率との関係で
示す。
同図より明らかなように、圧延温度が高いほど再結晶
進行状況は良好で、圧延温度が1300℃の場合には約10秒
で再結晶率:95%に達する。この点、圧延温度が幾分低
い1280℃の場合には再結晶率:95%に達するのは約30秒
である。
そこでこの発明では、1パス目の圧延を施すべき圧延
温度をして1280℃以上に定めた。
次に前掲第5および6図に示した結果から、目標とす
る再結晶率:95%を達成できる1パス目の圧延温度T
1(℃)と圧下率R1(%)との関係を求めたところ次式
が得られた。
60≧R1(%)≧−0.5T1+670 ここに所望の再結晶率を確保するためには、圧延後、
30秒以上好ましくは60秒以上の保持が必要である。
また第1パス目で完全に再結晶を完了させれば表層で
の熱間割れに起因したヘゲの発生もかなり抑制されるこ
とも併せて知見した。さらに未再結晶部の残存による最
終焼鈍での2次再結晶不良域の抑制にも効果があること
も判明した。
ところで粗圧延では再結晶組織を微細化する以上に未
再結晶部を残さないことが重要である。そのためには粗
圧延最終パスもα単相域で再結晶させることが必要であ
る。というのは(α+γ)2相域圧延ではγ粒の方が硬
質であるため歪はγ粒近傍に集中して蓄積し、γ粒近傍
が優先的に再結晶するが、γ粒は主に旧α粒界に出現す
るので、どうしても組織が不均一になるからである。
ところで粗最終パス直前では、それまでの圧延の効果
によって結晶粒は再結晶微細化されているので、再結晶
限界は先に示した工場での実験結果である第5図よりや
や下方にシフトして第7図に示すようになる。なお第7
図にはγ相が出現する領域を斜線で示しているが、圧下
率が高くなるに伴ってγ相出現温度も高くなっている。
これは歪誘起変態によるものである。
ここに最終パスにおいて、γ相の出現がないα単相域
で圧下を加えるには少なくとも1200℃の圧延温度T
2(℃)が必要である。また、第7図および前掲第4図
の示された結果等から、最終パス後に未再結晶部の残存
が最終焼鈍での2次再結晶不良に影響しないとされる75
%以上の再結晶率を安定して得るために必要な圧延温度
T2と圧下率R2(%)との関係を求めたところ次式が得ら
れた。
70≧R2(%)≧−0.1T2+165 なお粗圧延での圧下率の上限は次パス以降においても
十分な圧下率が確保されるよう設定する必要があり、こ
の観点から第1パスおよび最終パスの圧下率の上限はそ
れぞれ60%、70%に定めた。
引き続く熱間仕上げ圧延は、常法に従う条件下でも一
向にかまわないけれども、前述した第1発明または第2
発明と組み合わせればより一層の効果が得られる。
なおその後の冷間圧延、脱炭焼鈍、最終仕上げ焼鈍
は、従来公知の方法いずれもが適用できる。
次に、この発明の素材である含けい素鋼スラブの好適
成分組成について説明する。
C:0.01〜0.10% Cは、熱間圧延、冷間圧延中の組織の均一微細化のみ
ならず、ゴス方位の発達に有用な元素であり、少なくと
も0.01%以上の添加が好ましい。しかしながら0.10%を
超えて含有されるとかえってゴス方位に乱れが生じるの
で上限は0.10%程度が好ましい。
Si:2.0〜4.5% Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に有効に寄与す
るが、4.5%を上回ると冷延性が損なわれ、一方2.0%に
満たないと比抵抗が低下するだけでなく、2次再結晶・
純化のために行われる最終高温焼鈍中にα−γ変態によ
って結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善効果
が得られないので、Si量は2.0〜4.5%程度とするのが好
ましい。
Mn:0.02〜0.12% Mnは、熱間脆化を防止するため少なくとも0.02%程度
を必要とするが、あまりに多すぎると磁気特性を劣化さ
せるので上限は0.12%程度に定めるのが好ましい。
インヒビターとしては、いわゆるMnS,MnSe系とAlN系
とがある。
・MnS,MnSe系の場合 Se,Sのうちから選ばれる少なくとも1種:0.005〜0.06% Se,Sはいずれも、方向性けい素鋼板の2次再結晶を制
御するインヒビターとして有力な元素である。抑制力確
保の観点からは、少なくとも0.005%程度を必要とする
が、0.06%を超えるとその効果が損なわれるので、その
下限、上限はそれぞれ0.01%,0.06%程度とするのが好
ましい。
・AlN系の場合 Al:0.005〜0.10%,N:0.004〜0.015% AlおよびNの範囲についても、上述したMnS,MnSe系の
場合と同様な理由により、上記の範囲に定めた。ここに
上記したMnS,MnSe系およびAlN系はそれぞれ併用が可能
である。
インヒビター成分としては上記したS,Se,Alの他、Cu,
Sn,Cr,Ge,Sb,Mo,Te,BiおよびPなども有利に適合するの
で、それぞれ少量併せて含有させることもできる。ここ
に上記成分の好適添加範囲はそれぞれ、Cu,Sn,Cr:0.01
〜0.15%、Ge,Sb,Mo,Te,Bi:0.005〜0.1%、P:0.01〜0.2
%であり、これらの各インヒビター成分についても、単
独使用および複合使用いずれもが可能である。
なおスラブは、連続鋳造されたものまたはインゴット
より分塊されたものを対象とするが、連続鋳造された後
に、分塊再圧されたスラブも対象に含まれることはいう
までもない。
図面の簡単な説明 第1図は、圧延温度とその温度での保持時間がインヒ
ビターの析出状態に与える影響を示した図、 第2図は、第2発明の実施に好適な熱履歴の一例を示
した模式図、 第3図は、α単相域における再結晶限界(再結晶率95
%以上)を圧延温度と圧下率との関係で示した図、 第4図は、(α+β)2相域での再結晶限界を示した
グラフ、 第5図は、熱間粗圧延第1パス後のα単相域での再結
晶限界を示したグラフ、 第6図は、圧延後の保持時間と再結晶率との関係を示
したグラフ、 第7図は、熱間粗圧延複数パス後のα単相域での再結
晶限界を示したグラフ、 第8図は、鋼板長手方向にわたる磁束密度変化を発明
例と比較例とで比較して示したグラフ、 第9図は、鋼板板幅方向にわたる磁束密度変化を発明
例と比較例とで比較して示したグラフ、 第10図は、鋼板長手方向にわたる磁束密度変化を発明
例と比較例とで比較して示したグラフである。
発明を実施するための最良の形態 実施例1 (A)C:0.040%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.022
%、およびSb:0.024%を含有し、残部実質的にFeよりな
る連鋳スラブ。
(B)C:0.035%、Si:2.98%、Mn:0.072%、Se:0.024
%、0.023%およびN:0.008%を含有し、残部実質的にFe
よりなる連鋳スラブ。
上記(A),(B)の各スラブを加熱炉に装入し、N2
雰囲気中で均熱保持し、均熱終了後直ちに粗圧延に供し
た。粗圧延はスラブ厚に応じて、5〜6パスで、各パス
の圧下率がほぼ均等になるような条件で行い、30mm厚の
シートバーとした。ついで仕上タンデムミルで2.0mm厚
の熱延鋼板とした。このときの粗圧延終了パス温度 および仕上げ圧延1パス目の条件を表1に示す。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表1に併記する。
また長手方向と幅方向の磁気特性のばらつきについて
調べた結果を第8図、第9図に示す。
表1および第8,9図から明らかなように、仕上げ圧延
における1パスを、温度:1000〜850℃、圧下率:40%以
上で実施し、その温度に2〜20秒間保持したものは、単
に磁気特性に優れるだけでなく、幅方向および長手方向
にわたる磁気特性の均一性にも優れていた。
実施例2 (C)C:0.040%、Si:3.14%、Mn:0.054%、Se:0.023
%、Sb:0.024%およびMo:0.020%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(D)C:0.039%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.019%
およびSn:0.082%を含有し、残部実質的にFeよりなる連
鋳スラブ。
(E)C:0.040%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.022
%、Sb:0.024%およびAs:0.020%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(F)C:0.040%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.022
%、Sb:0.024%およびCu:0.04%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(G)C:0.040%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.022
%、Sb:0.024%およびBi:0.02%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(H)C:0.040%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.022%
を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(I)C:0.036%、Si:3.01%、Mn:0.069%、Se:0.023
%、Sb:0.020%、Al:0.021%およびN:0.008%を含有
し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
上記の各スラブを加熱炉に装入し、N2雰囲気中で均熱
保持し、均熱終了後直ちに粗圧延に供した。粗圧延はス
ラブ厚に応じて、5〜6パスで各パスの圧下率がほぼ均
等になる条件で行い、30mm厚のシートバーとした。つい
で仕上げタンデムミルで2.0mm厚の熱延鋼板とした。こ
のときの粗圧延終了パス温度、仕上げ圧延1パス目の条
件を表2に示す。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表2に併記したが、いずれの成分系でもこの発明に従
って得られた製品の方が、比較例よりも優れていた。
実施例3 (J)C:0.040%、Si:3.14%、Mn:0.054%、Se:0.023
%、Sb:0.024%、Al:0.022%、N:0.008%およびMo:0.02
0%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(K)C:0.039%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.019
%、Sb:0.022%、Al:0.023%、N:0.008%およびSn:0.08
0%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(L)C:0.039%、Si:3.29%、Mn:0.053%、Se:0.020
%、Sb:0.023%、Al:0.020%、N:0.009%およびAs:0.02
0%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(M)C:0.040%、Si:3.29%、Mn:0.054%、Se:0.021
%、Sb:0.024%、Al:0.022%、N:0.008%およびCu:0.04
%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(N)C:0.038%、Si:3.31%、Mn:0.054%、Se:0.022
%、Sb:0.024%、Al:0.024%、N:0.008%およびBi:0.02
%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
上記の各スラブを加熱炉に装入し、N2雰囲気中で均熱
保持し、均熱終了後直ちに粗圧延に供した。粗圧延はス
ラブ厚に応じて、5〜6パスで各パスの圧下率がほぼ均
等になるような条件で行い、30mm厚のシートバーとし
た。ついで仕上タンデムミルで2.0mm厚の熱延鋼板とし
た。このときの粗圧延終了パス温度、仕上げ圧延1パス
目の条件を表3に示す。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表3に併記したが、いずれの成分系でもこの発明に従
って得られた製品の方が、比較例よりも優れていた。
実施例4 (O)C:0.041%、Si:3.10%、Mn:0.074%およびSe:0.0
21%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(P)C:0.040%、Si:3.29%、Mn:0.064%、Se:0.020%
およびSb:0.024%を含有し、残部実質的にFeよりなる連
鋳スラブ。
(Q)C:0.035%、Si:3.00%、Mn:0.072%、Se:0.023
%、Al:0.023%およびN:0.008%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
上記の各スラブを、直ちにガス加熱炉に装入してN2
囲気中で均熱保持し、さらに誘導加熱炉に装入し、中心
部の温度を1430℃とし、一方表層部を1370℃とし温度差
を十分に確保したのち、直ちに粗圧延に供した。粗圧延
はスラブ厚に応じて5〜6パスで各パスの圧下率がほぼ
均等になるような条件で行い、40mm厚のシートバーとし
た。なお粗圧延中は積極的に表面を冷却した。ついで仕
上げタンデムミルで3.0mm厚の熱延鋼板とした。またこ
の仕上げ圧延に先だってシートバー表面は高圧水をつか
って十分に冷却した。このときの仕上げ圧延の条件を表
4に示す。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表4に併記する。
表4から明らかなように、仕上げ圧延における1パス
目を、1/20層での温度が1000℃〜950℃において圧下率4
0%以上とし、かつこの温度に3〜20秒保持し、さらに
中心部の温度が950℃〜850℃の範囲のときに圧下率:40
%以上の加工歪を付与し、かつこの温度域に2〜20秒保
持したものは、優れた磁気特性が安定して得られること
がわかる。
また表4には、誘導加熱炉を使わなかった場合につい
ても例示したが、この場合は温度差をつけることが非常
に難しく、表層と中心部との温度差が確保しにくいこと
から、安定した特性は得られなかった。
実施例5 C:0.043%、Si:3.08%、Mn:0.070%、Se:0.022%およ
びSb:0.020%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳ス
ラブを、直ちにガス加熱炉に装入してN2雰囲気中で均熱
保持し、中心部の温度を1370℃、一方表層部の温度を14
10℃としたのち、直ちに粗圧延に供した。粗圧延はスラ
ブ厚に応じ5〜6パスで各パスの圧下率がほぼ均等にな
るような条件で行い、30mm厚のシートバーとした。つい
で仕上タンデムミルで2.0mm厚の熱延鋼板とした。この
ときの仕上げ圧延の条件を表5に示す。
また上記の組成になる連鋳スラブを、直ちにガス加熱
炉に装入してN2雰囲気中で均熱保持し、さらに誘導加熱
炉に装入し、中心部の温度を1430℃、一方表層部の温度
を1370℃として温度差を十分に確保したのち、直ちに粗
圧延に供した。粗圧延はスラブ厚に応じ5〜6パスで各
パスの圧下率がほぼ均等になるような条件で行い、40mm
厚のシートバーとした。なお粗圧延中は積極的に表面を
冷却した。ついで仕上タンデムミルで2.0mm厚の熱延鋼
板とした。このときの仕上げ圧延の条件を表5に示す。
ついでこれらの熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、つ
いで中間焼鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の
製品厚に仕上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgO
を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶
焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製
品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表5に併記する。
また表5には、上記の工程中で脱炭焼鈍の温度が最適
温度より20℃ずれた場合の調査結果についても併記し
た。
同表から、熱延板のインヒビターを板厚方向で制御す
れば、実際のラインで多発する処理条件の変動下におい
ても安定した磁気特性の向上を図り得ることがわかる。
実施例6 C:0.040%、Si:3.30%、Mn:0.054%、Se:0.022%およ
びSb:0.024%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳ス
ラブを、加熱炉に装入し、N2雰囲気中で均熱保持し、均
熱終了後直ちに表6に示す条件下で粗圧延を施し、30mm
厚のシートバーとした。
ついで仕上タンデムミルで2.0mm厚の熱延鋼板とし
た。この熱延鋼板を酸洗後、1次冷延−中間焼鈍−2次
冷延で0.23mm厚の製品厚に仕上げた。その後脱炭焼鈍を
ほどこしたのち、MgOを塗布してから、2次再結晶焼鈍
および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品と
した。
得られた製品の磁気特性、表面性状および2次再結晶
不良部の幅方向での比率について調べた結果を表6に示
す。
また第10図に、鋼板長手方向の磁束密度のばらつきに
ついての調査結果を示す。
表6および第10図から明らかなように、この発明に従
い粗圧延を高温大圧下で行った場合には、幅方向で均一
な2次再結晶が進行して優れた磁気特性得られるだけで
なく、表面性状も良好で、さらには長手方向における磁
気特性の均一性の面でも優れていた。
実施例7 C:0.035%、Si:2.98%、Mn:0.072%およびS:0.018%
を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブを、加熱
炉に装入し、N2雰囲気中で均熱保持し、均熱終了後直ち
に表7に示す条件下で粗圧延を施し、35mm厚のシートバ
ーとした。
ついで仕上タンデムミルで2.4mm厚の熱延鋼板とし
た。この熱延鋼板を酸洗後、1次冷延−中間冷延−2次
冷延で0.35mm厚の製品厚に仕上げた。その後脱炭焼鈍を
ほどこしたのち、MgOを塗布してから、2次再結晶焼鈍
および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品と
した。
得られた製品の磁気特性、表面性状および2次再結晶
不良部の幅方向での比率について調べた結果を表7に示
す。
表7から明らかなように、この発明に従い粗圧延を高
温大圧下で行った場合には、幅方向で均一な2次再結晶
が進行して優れた磁気特性得られるだけでなく、表面性
状も良好で、さらには長手方向における磁気特性の均一
性の面でも優れていた。
実施例8 C:0.050%,Si:3.10%,Mn:0.078%,S:0.024%,Al:0.03
2%およびN:0.006%を含有し、残部実質的にFeよりなる
連鋳スラブを、加熱炉に装入し、N2雰囲気中で均熱保持
し、均熱終了後直ちに表6に示す条件下で粗圧延を施
し、30mm厚のシートバーとした。
ついで仕上タンデムミルで2.3mm厚の熱延鋼板とし
た。この熱延鋼板を酸洗後、1次冷延−中間冷延−2次
冷延で0.23mm厚の製品厚に仕上げた。その後脱炭焼鈍を
ほどこしたのち、MgOを塗布してから、2次再結晶焼鈍
および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品と
した。
得られた製品の磁気特性、表面性状および2次再結晶
不良部の幅方向での比率について調べた結果を表8に示
す。
表8から明らかなように、この発明に従い粗圧延を高
温大圧下で行った場合には、幅方向で均一な2次再結晶
が進行して優れた磁気特性得られるだけでなく、表面性
状も良好で、さらには長手方向における磁気特性の均一
性の面でも優れていた。
(実施例) 実施例9 (イ)C:0.042%、Si:3.34%、Mn:0.062%、Se:0.021
%、およびSb:0.025%を含有し、残部実質的にFeよりな
る連鋳スラブ。
(ロ)C:0.052%、Si:3.04%、Mn:0.070%、Se:0.023
%、Al:0.025%およびN:0.0077%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
上記の各スラブをを加熱炉に装入し、N2雰囲気中で均
熱保持し、均熱終了後直ちに粗圧延に供して30mm厚のシ
ートバーとしたのち、仕上タンデムミルで2.3mm厚の熱
延鋼板とした。このときの粗圧延条件および仕上げ圧延
1パス目の条件を表9に示す。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性、表面性状および2
次再結晶不良部の幅方向での比率について調べた結果を
表9に示す。
同表より明らかなように、この発明に従って粗圧延お
よび仕上げ圧延を行ったものはいずれも、磁気特性およ
び表面性状の点で勝っていた。
実施例10 (ハ)C:0.041%、Si:3.18%、Mn:0.058%、Se:0.022
%、Sb:0.023%およびMo:0.020%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(ニ)C:0.040%、Si:3.32%、Mn:0.056%、Se:0.020
%、およびSn:0.081%を含有し、残部実質的にFeよりな
る連鋳スラブ。
(ホ)C:0.041%、Si:3.33%、Mn:0.058%、Se:0.021
%、Sb:0.025%およびAs:0.019%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(ヘ)C:0.042%、Si:3.28%、Mn:0.055%、Se:0.023
%、Sb:0.025%およびCu:0.05%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(ト)C:0.039%、Si:3.33%、Mn:0.059%、Se:0.021
%、Sb:0.023%およびBi:0.03%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
(チ)C:0.041%、Si:3.35%、Mn:0.060%およびSe:0.0
24%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(リ)C:0.038%、Si:3.08%、Mn:0.067%、Se:0.024
%、Sb:0.024%、Al:0.022%およびN:0.007%を含有
し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(ヌ)C:0.041%、Si:3.17%、Mn:0.056%、Se:0.022
%、Sb:0.025%、Al:0.024%、N:0.007%およびMo:0.02
3%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(ル)C:0.040%、Si:3.35%、Mn:0.061%、Se:0.020
%、Sb:0.023%、Al:0.021%、N:0.007%およびSn:0.08
4%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(ヲ)C:0.041%、Si:3.34%、Mn:0.058%、Se:0.022
%、Sb:0.025%、Al:0.023%、N:0.008%およびAs:0.02
3%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(ワ)C:0.039%、Si:3.35%、Mn:0.062%、Se:0.023
%、Sb:0.023%、Al:0.021%、N:0.009%およびCu:0.05
%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(カ)C:0.040%、Si:3.37%、Mn:0.052%、Se:0.020
%、Sb:0.026%、Al:0.027%、N:0.007%およびBi:0.03
%を含有し:残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
上記の各スラブをを加熱炉に装入し、N2雰囲気中で均
熱保持し、均熱終了後直ちに粗圧延に供して30mm厚のシ
ートバーとしたのち、仕上タンデムミルで2.0mm厚の熱
延鋼板とした。このときの粗圧延条件および仕上げ圧延
1パス目の条件を表10に示す。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性、表面性状および2
次再結晶不良部の幅方向での比率について調べた結果を
表10に併記したが、いずれの成分系でもこの発明に従っ
て得られた製品の方が、比較例よりも優れていた。
実施例11 C:0.034%,Si:3.01%,Mn:0.070%およびS:0.017%を
含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブを、加熱炉
に装入し、N2雰囲気中で均熱保持し、均熱終了後直ちに
表11に示す条件で粗圧延を施して35mm厚のシートバーと
したのち、同じく表11に示す条件で仕上げタンデム圧延
を施して2.4mm厚の熱延鋼板とした。
この熱延鋼板を、酸洗後、1次冷延−中間焼鈍−2次
冷延で0.35mm厚の製品厚に仕上げた。その後脱炭焼鈍を
施したのち、MgOを塗布してから、2次再結晶焼鈍およ
び純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とし
た。
得られた製品の磁気特性、表面性状および2次再結晶
不良部の幅方向での比率について調べた結果を表11に示
す。
同表より明らかなように、この発明に従って粗圧延お
よび仕上げ圧延を行ったものはいずれも、磁気特性およ
び表面性状のみならず、長手方向にわたる磁気特性の均
一性の点で勝っていた。
実施例12 (i)C:0.038%、Si:3.20%、Mn:0.070%およびSe:0.0
21%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳スラブ。
(ii)C:0.041%、Si:3.28%、Mn:0.065%、Se:0.017%
およびSb:0.023%を含有し、残部実質的にFeよりなる連
鋳スラブ。
(iii)C:0.036%、Si:3.11%、Mn:0.071%、Se:0.022
%、Al:0.022%およびN:0.008%を含有し、残部実質的
にFeよりなる連鋳スラブ。
上記の各スラブを、直ちにガス加熱炉に装入してN2
囲気中で均熱保持し、さらに誘導加熱炉に装入し、中心
部の温度を1430℃とし、一方表層部を1370℃として温度
差を十分に確保したのち、直ちに表12に示す条件下で粗
圧延を施して30mm厚のシートバーとした。なお粗圧延中
は積極的に表面を冷却した。ついで同じく表12に示す条
件下で仕上げタンデム圧延を施して2.7mm厚の熱延鋼板
とした。またこの仕上げ圧延に先だってシートバー表面
は高圧水をつかって十分に冷却した。
この熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、ついで中間焼
鈍を施してから、2次冷間圧延で0.27mm厚の製品厚に仕
上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgOを主成分と
する焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶焼鈍および
純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表12に併記する。
表12から明らかなように、粗圧延を高温大圧下で行
い、ついで仕上げ圧延における1パス目を、1/20層での
温度が1000℃〜950℃において圧下率40%以上とし、か
つこの温度域に3〜20秒保持し、さらに中心部の温度が
950℃〜850℃の範囲のときに圧下率:40%以上の加工歪
を付与し、かつこの温度域に2〜20秒保持したものは、
優れた磁気特性および表面性状が安定して得られてい
る。
また表12には、誘導加熱炉を使わなかった場合につい
ても例示したが、この場合は温度差をつけることが非常
に難しく、表層と中心部との温度差が確保しにくいこと
から、特性が安定していない。
実施例13 C:0.043%、Si:3.41%、Mn:0.072%、Se:0.020%およ
びSb:0.020%を含有し、残部実質的にFeよりなる連鋳ス
ラブを、直ちにガス加熱炉に装入してN2雰囲気中で均熱
保持し、中心部の温度を1370℃、一方表層部の温度を14
10℃としたのち、直ちに表13に示す条件下で粗圧延を施
して30mm厚のシートバーとした。ついで同じく表13に示
す条件下で仕上げタンデム圧延を施して2.0mm厚の熱延
鋼板とした。
また上記の組成になる連鋳スラブを、直ちにガス加熱
炉に装入してN2雰囲気中で均熱保持し、さらに誘導加熱
炉に装入し、中心部の温度を1430℃、一方表層部の温度
を1370℃として温度差を十分に確保したのち、上記した
ところと同様に、表13に示す条件下で粗圧延および仕上
げ圧延を施して2.0mm厚の熱延鋼板とした。なおこの場
合に、粗圧延中は積極的に表面を冷却した。
ついでこれらの熱延鋼板を酸洗後、1次冷間圧延、つ
いで中間焼鈍を施してから、2次冷間圧延で0.23mm厚の
製品厚に仕上げた。その後脱炭焼鈍を施したのち、MgO
を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、2次再結晶
焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を施して製
品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果
を表13に併記する。
また表13には、上記の工程中で脱炭焼鈍の温度が最適
温度より20℃ずれた場合の調査結果についても併記し
た。
同表から、熱延板のインヒビターを板厚方向で制御す
れば、実際のラインで多発する処理条件の変動下におい
ても安定した磁気特性の向上を図り得るだけでなく、粗
圧延を高温大圧下圧延とすることで表面性状の改善も併
せて達成できることがわかる。
産業上の利用可能性 この発明によれば、鋼板全体にわたって優れた磁気特
性さらには良好な表面性状を有する方向性けい素鋼板を
安定して製造することができる。
またこの発明によれば、方向性けい素鋼板の製造にお
いて、ホットストリップミルの利点を最大限に活かすこ
とができるので、生産性の向上のみならず省エネルギー
を図り得る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社 技術研究本部内 (72)発明者 飯田 嘉明 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通2番88号 川崎製鉄株式会社 阪神製造所内 (56)参考文献 特開 平2−263924(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/12

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延つい
    で仕上げ圧延と続く熱間圧延を施し、その後1回または
    中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚とし
    たのち、脱炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤
    を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によ
    って一方向性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程において、1150℃を超える温度域での
    粗圧延に引き続き、仕上げ圧延を1000〜850℃の温度域
    にて圧下率40%以上で実施し、かつこの温度域に2〜20
    秒間保持することを特徴とする磁気特性に優れた一方向
    性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延つい
    で仕上げ圧延と続く熱間圧延を施し、その後1回または
    中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚とし
    たのち、脱炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤
    を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によ
    って一方向性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の仕上げ圧延段階において、鋼板厚み
    方向中心部の温度を1150℃以上に保持しつつ鋼板を冷却
    し、表面から板厚の1/20深さにおける温度が1000℃〜95
    0℃の温度域に到達した時点で、圧下率40%以上の圧下
    を加え、かつこの温度域に3〜20秒間保持したのち冷却
    し、ついで中心部の温度が950〜850℃の温度域に到達し
    た時点で圧下率40%以上の圧下を加え、かつこの温度域
    に2〜20秒間保持することを特徴とする磁気特性に優れ
    た一方向性けい素鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延つい
    で仕上げ圧延と続く熱間圧延を施し、その後1回または
    中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚とし
    たのち、脱炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤
    を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によ
    って一方向性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、1パス目を、
    圧延温度T1が1280℃以上でかつ、圧下率R1が次式 60≧R1(%)≧−0.5T1+670 を満足する条件下に実施すると共に、次パスまで30秒間
    以上保持し、さらに最終パスを、圧延温度T2が1200℃以
    上でかつ、圧下率R2が次式 70≧R2(%)≧−0.1T2+165 を満足する条件下に実施することを特徴とする磁気特性
    に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延つい
    で仕上げ圧延と続く熱間圧延を施し、その後1回または
    中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚とし
    たのち、脱炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤
    を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によ
    って一方向性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、1パス目を、
    圧延温度T1が1280℃以上でかつ、圧下率R1が次式 60≧R1(%)≧−0.5T1+670 を満足する条件下に実施すると共に、次パスまで30秒間
    以上保持し、さらに最終パスを、圧延温度T2が1200℃以
    上でかつ、圧下率R2が次式 70≧R2(%)≧−0.1T2+165 を満足する条件下に実施し、引き続く仕上げ圧延を1000
    〜850℃の温度域にて圧下率40%以上で実施し、かつこ
    の温度域に2〜20秒間保持することを特徴とする磁気特
    性に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】含けい素鋼スラブを、加熱後、粗圧延つい
    で仕上げ圧延と続く熱間圧延を施し、その後1回または
    中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を施して最終板厚とし
    たのち、脱炭焼鈍を施し、ついで鋼板表面に焼鈍分離剤
    を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によ
    って一方向性けい素鋼板を製造するに当たり、 上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、1パス目を、
    圧延温度T1が1280℃以上でかつ、圧下率R1が次式 60≧R1(%)≧−0.5T1+670 を満足する条件下に実施すると共に、次パスまで30秒間
    以上保持し、さらに最終パスを、圧延温度T2が1200℃以
    上でかつ、圧下率R2が次式 70≧R2(%)≧−0.1T2+165 を満足する条件下に実施し、引き続く仕上げ圧延段階に
    おいて、鋼板厚み方向中心部の温度を1150℃以上に保持
    しつつ鋼板を冷却し、表面から板厚の1/20深さにおける
    温度が1000℃〜950℃の温度域に到達した時点で、圧下
    率40%以上の圧下を加え、かつこの温度域に3〜20秒間
    保持したのち冷却し、ついで中心部の温度が950〜850℃
    の温度域に到達した時点で圧下率40%以上の圧下を加
    え、かつこの温度域に2〜20秒間保持することを特徴と
    する磁気特性に優れた一方向性けい素鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】請求の範囲1,2,3,4または5において、ス
    ラブ加熱温度がスラブ中心部温度で1370℃以上である一
    方向性けい素鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114196809A (zh) * 2021-12-21 2022-03-18 新疆八一钢铁股份有限公司 一种降低钢坯加热脱碳的方法

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