JP6897759B2 - 架橋重合体又はその塩の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はリチウムイオン二次電池等に使用可能な非水電解質二次電池電極用バインダー及びその用途、並びに、該バインダーに用いられる架橋重合体又はその塩の製造方法に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年3月28日に出願された日本国特許出願である特願2017−063036及び特願2017−063037の関連出願であり、この日本出願に記載された全ての内容を参照により援用するものである。また、本出願は、特願2017−063037に基づく優先権を主張するものである。
非水電解質二次電池としては、例えばリチウムイオン二次電池がよく知られている。非水電解質二次電池電極は、活物質及びバインダー等を含む電極合剤層を形成するための組成物を集電体上に塗布・乾燥等することにより作製される。負極合剤層組成物に用いられるバインダーとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水系のバインダーが使用されている。また、分散性及び結着性に優れるバインダーとして、アクリル酸系重合体水溶液又は水分散液を含むバインダーが知られている。一方、正極合剤層に用いられるバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液が広く使用されている。しかし、近年の環境意識の高まりを背景に、正極合剤層組成物に対しても有機溶剤を使用しない水系化の要求が高まっている。
一方、リチウムイオン二次電池の用途が拡大するにつれて、その信頼性及び耐久性向上への要求が強まる傾向にある。このため、電極合剤層の剥離又は脱落等を抑制して耐久性を向上する目的で、バインダーの結着性向上に関する検討が行われている(特許文献1〜3)。
例えば、特許文献1では、リチウムイオン二次電池の負極塗膜を形成する結着剤としてポリアルケニルエーテルにより架橋したアクリル酸重合体が開示されている。特許文献2には、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位及びエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を含み、特定の水溶液粘度を有する水溶性高分子を含有する二次電池用水系電極バインダーが開示されている。特許文献3には、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を含む架橋重合体の塩を含む特定粘度の水分散液が開示されている。
特開2000−294247号公報 特開2015−18776号公報 国際公開第2016/158939号
特許文献1は、いずれも架橋型ポリアクリル酸を結着剤として用いることを開示するものであるが、得られる電極の耐屈曲性等については改善が望まれるものであった。特許文献2に記載のバインダーは、可撓性の点では良好なものであるが、結着性の点では十分に満足できるものではなかった。また、特許文献3に記載のバインダーでも結着性のさらなる向上の余地があった。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優れた結着性を備える非水電解質二次電池用水系バインダー、該バインダーに用いられる重合体又はその塩並びにその製造方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アクリル酸系架橋重合体であって、疎水性部分を有するアクリル酸系架橋重合体を含む非水電解質二次電池用水系バインダーが、電極に用いる活物質等によく結着することで、当該バインダーを含む電極合剤層は、優れた結着性と密着性を示すという知見を得た。本開示によれば、こうした知見に基づき以下の手段が提供される。
本明細書の開示は、非水電解質二次電池電極用バインダーに用いられるカルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩の製造方法を提供する。この架橋重合体又はその塩の製造方法は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上99.9質量%以下含む単量体成分と、
以下の式(1);
[化1]
2C=CR1−X (1)
(式中、R1は、水素又はメチル基を表し、Xは、C(=O)OR2又はCNを表し、R2は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は脂環構造を有する炭素数3〜8のアルキル基を表す。)
で表される化合物から選択される少なくとも1種を構成単量体とするマクロモノマーを0.1質量%以上50質量%以下とを、沈殿重合する重合工程を備えることができる。
本開示は、本発明の非水電解質二次電池電極用バインダー及び該バインダーに用いられる架橋重合体の製造方法、並びに、該バインダーを用いて得られる非水電解質二次電池電極合剤層用組成物、非水電解質二次電池電極及び非水電解質二次電池に関する。
本開示の製造方法により得られるカルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩を含む非水電解質二次電池電極用バインダーによれば、マクロモノマー中の構造単位中の要素が、炭素系材料やケイ素系材料に由来する電極活物質又は導電助剤に対して相互作用を発揮するため、こうした電極材料の結着性に優れている。また、このバインダーは、集電体とも良好な接着性を発揮することができる。このため、このバインダーを用いることで、電極材料をよく結着するとともに集電体とよく接着して優れた一体性の電極合剤層を形成できる。このため、充放電に伴う活物質の体積変化、及び形状変化によって電極合剤層が劣化することが抑制され、耐久性(サイクル特性)の高い二次電池を得ることができる。
本明細書に開示される非水電解質二次電池電極合剤層用組成物は、電極材料に対する良好な結着性と集電体に対する良好な接着性とを有するため、一体性の良好な電極合剤層を形成でき、電極特性の良好な非水電解質二次電池電極を得ることが可能となる。
本明細書に開示される非水電解質二次電池電極用バインダーは、架橋重合体又はその塩を含有するものであり、活物質及び水と混合することにより電極合剤層組成物とすることができる。上記の組成物は、集電体への塗工が可能なスラリー状態であってもよいし、湿粉状態として調製し、集電体表面へのプレス加工に対応できるようにしてもよい。銅箔又はアルミニウム箔等の集電体表面に上記組成物から形成される合剤層を形成することにより、本発明の非水電解質二次電池電極が得られる。
以下、本明細書に開示されるカルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩、非水電解質二次電池用バインダー及び当該バインダーを用いた種々の実施態様について説明する。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
<バインダー>
本明細書に開示されるバインダーは、カルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩を含む。カルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩は、エチレン性不飽和カルボン酸に由来する構造単位と、マクロモノマーに由来する構造単位と、を有する。
<架橋重合体の構造単位>
<エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位>
架橋重合体は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位(以下、単に「(a)成分」ともいう。)を有することができる。架橋重合体が、かかる構造単位を有することで、架橋重合体がカルボキシル基を有する場合、集電体への接着性が向上するとともに、リチウムイオンの脱溶媒和効果及びイオン伝導性に優れるため、抵抗が小さく、ハイレート特性に優れた電極が得られる。また、水膨潤性が付与されるため、合剤層組成物中における活物質等の分散安定性を高めることができる。
上記(a)成分は、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を含む単量体を重合することにより架橋重合体に導入することができる。その他にも、(メタ)アクリル酸エステル単量体を(共)重合した後、加水分解することによっても得られる。また、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリル等を重合した後、強アルカリで処理してもよいし、水酸基を有する重合体に酸無水物を反応させる方法であってもよい。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミドヘキサン酸及び(メタ)アクリルアミドドデカン酸等の(メタ)アクリルアミドアルキルカルボン酸;コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体またはそれらの(部分)アルカリ中和物が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の中でも、重合速度が大きいために一次鎖長の長い重合体が得られ、バインダーの結着力が良好となる点でアクリロイル基を有する化合物が好ましく、特に好ましくはアクリル酸である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてアクリル酸を用いた場合、カルボキシル基含有量の高い重合体を得ることができる。
架橋重合体における(a)成分の含有量(ただし、後述する(b)成分中に含まれうるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来構造単位は含まない。)は、特に限定するものではないが、例えば、架橋重合体の全構造単位に対して50質量%以上99.9質量%以下含むことができる。かかる範囲で(a)成分を含有することで、集電体に対する優れた接着性を容易に確保することができる。下限は、例えば、60質量%以上であり、また例えば70質量%以上であり、また例えば80質量%以上である。また、上限は、例えば、99.5質量%以下であり、また例えば99.0質量%以下であり、また例えば95.0質量%以下である。範囲としては、こうした下限及び上限を適宜組み合わせた範囲とすることができるが、例えば、60質量%以上99.5質量%以下であり、また例えば70質量%以上99.5質量%以下であり、また例えば80質量%以上、99.5質量%以下などとすることができる。全構造単位に対する(a)成分の割合が50質量%未満の場合、分散安定性、結着性及び電池としての耐久性が不足する場合がありうる。
<マクロモノマーに由来する構造単位>
架橋重合体は、以下の式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種を構成単量体とするマクロモノマーに由来する構造単位(以下、単に、「(b)成分」ともいう。)を有している。(b)成分は、電極材料と強い相互作用を奏することができ、活物質に対して良好な結着性を発揮することができる。これにより、堅固で一体性の良好な電極合剤層を得ることができる。また、マクロモノマーとして(b)成分を提供することで、電極材料との結着性をより向上させることができる。以下、(b)成分が由来するマクロモノマーにおける単量体について説明し、後段にて、マクロモノマーの態様及び製造について説明する。
[化2]
2C=CR1−X (1)
式(1)中、R1は、水素又はメチル基を表し、Xは、C(=O)OR2又はCNを表すことができる。XがC(=O)OR2を表すとき、式(1)で表される化合物は、(メタ)アクリル酸エステルであり、XがCNを表すとき、式(1)で表される化合物は、(メタ)アクリロニトリルである。
ここで、式(1)中、R2は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は脂環構造を有する炭素数3〜8のアルキル基を表すことができる。直鎖状又は分枝状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
また、脂環構造を有する炭素数3〜8のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基などのシクロアルケニル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基などのアルキル置換シクロアルキル基、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル置換アルキル基等が挙げられる。
(b)成分には、式(1)で表される化合物由来構造単位のほか、当該式(1)で表される化合物と共重合可能な他の単量体に由来する構造単位を有することができる。かかる単量体としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体が挙げられる。かかる単量体については、既に説明したとおりであり、例えば、メタクリル酸等が挙げられる。
(b)成分におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来構造単位の割合は、特に限定するものではないが、例えば、マクロモノマーの全構造単位に対して0質量%以上50質量%以下とすることができる。かかる単量体由来の構造単位がかかる範囲であれば、(a)成分が由来する単量体などと好適な架橋構造の架橋重合体を構成することができる。下限は、例えば、5質量%以上であり、また例えば、10質量%以上であり、また例えば、15質量%以上である。上限は、例えば、40質量%以下であり、また例えば、25質量%以下である。範囲としては、また例えば、5質量%以上40質量%以下などとすることができる。
(b)成分には、さらに、連鎖移動剤(分子量調整剤)に由来する構造単位を含んでいてもよい。マクロモノマーの分子量を制御するために周知の連鎖移動剤を用いる場合には、かかる単位を有することができる。連鎖移動剤としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、アルキルサルファイド、アルキルジサルファイド、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、などのチオグリコール酸エステル、α−メチルスチレンダイマー、β−メルカプトプロピオン酸などのメルカプト酸、ベンジルメルカプタン、チオフェノール、チオクレゾール、チオナフトールなどの芳香族メルカプタン等が挙げられる。特に限定するものではないが、かかる構造単位は、例えば、マクロモノマーの全構造単位に対して1質量%以上20質量%以下とすることができ、また例えば、2質量%以上15質量%以下、また例えば5質量%以上10質量%以下とすることができる。
(b)成分における式(1)で表される化合物由来構造単位の割合は、特に限定するものではないが、例えば、マクロモノマーの全構造単位に対して50質量%以上とすることができる。式(1)で表される化合物由来の構造単位が50質量%以上であれば、マクロモノマー中の上記化合物由来構造単位によって、活物質との相互作用を確実に向上させることができる。また例えば、同60質量%以上、また例えば、同65質量%以上、また例えば、同70質量%以上とすることができる。
<マクロモノマー>
以下、(b)成分が由来するマクロモノマーについて説明する。(b)成分が由来するマクロモノマーは、分子鎖の途中及び/又は末端に、エチレン性不飽和基を有することができる。すなわち、このマクロモノマーに含まれるエチレン性不飽和基は、マクロモノマーを構成している分子鎖(重合体鎖)の末端にのみ結合(存在)していてもよいし、分子鎖(重合体鎖)の途中の位置にのみ結合(存在)していてもよいし、その双方であってもよい。例えば、エチレン性不飽和基をマクロモノマーの分子鎖の途中に位置することで、得られる架橋重合体の微粒子表面において電極材料と相互作用が容易となり、電極材料の結着性をより向上させることができる。
マクロモノマーに含まれるエチレン性不飽和基は、マクロモノマーの分子鎖の途中に直接結合していてもよいし、マクロモノマーの分子鎖の途中に所定の結合基を介して懸垂状態で結合してもよい。更には、これら2つの結合形式が混在していてもよい。
エチレン性不飽和基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、スチリル基等を挙げることができ、これらの基の1種又は2種以上を有することができる。ラジカル重合性官能基としてのエチレン性不飽和基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
マクロモノマーに含まれるカルボキシル基は、分子鎖の途中に存在していてもよいし、分子鎖の末端に存在していてもよいし、これらの両方に存在してもよい。また、このカルボキシル基は、マクロモノマーの分子鎖の途中に存在する場合、分子鎖に直接結合していてもよいし、分子鎖に所定の結合基を介して懸垂状態で結合してもよい。更には、これら2つの結合形式が混在していてもよい。
マクロモノマーが有するカルボキシル基は、塩基によって中和されていることが好ましい。カルボキシル基が中和されることで、例えば沈殿重合法により架橋重合体を製造する場合に凝集抑制効果が得られ、結果として架橋重合体のスラリーを安定に製造することができる。なお、カルボキシル基の中和剤は、後述するように、アンモニア及び/又は低沸点アミン化合物が好ましく用いられる。
マクロモノマーは、電極材料に対する結着性の向上等の観点から、鎖状の分子構造を有する鎖状重合体であることが好ましい。マクロモノマーが鎖状重合体である場合、その鎖状構造としては、直鎖状、分岐鎖状、星形、櫛形等のいずれであってもよく、そのうちでも、直鎖状であるか又はほぼ直鎖状であることが、活物質に対する結着性の向上のほか、製造の容易性、取り扱い易さ等の点から好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、分散安定化性能、取り扱い性、製造の容易性等の点から、例えば、1,000〜20,000であり、また例えば、2,000〜10,000である。
マクロモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、分子鎖の途中及び/又は末端にカルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基の一部に、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物を付加反応させて得られたマクロモノマーが好ましい。かかるマクロモノマーは、構造設計の自由度が高く、架橋重合性に優れる。
かかるマクロモノマーは、前駆体としての、分子鎖の途中及び/又は末端にカルボキシル基を有する重合体(A)と、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(α)とを反応させることで得ることができる。
重合体(A)は、既に説明した(b)成分を構成し得る各種単量体を重合することによって得ることができる。すなわち、式(1)で表される化合物、エチレン性不飽和カルボン酸単量体のほか、必要に応じて用いられる分子量制御のための連鎖移動剤である。
連鎖移動剤として、カルボキシル基を有する連鎖移動剤を使用した場合、重合体(A)の末端には、当該連鎖移動剤に由来するカルボキシル基を導入することができる。
ここで、重合体(A)の製造に用いるエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸のマイケル付加反応生成物である2量体以上のオリゴマー;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、上記したマクロモノマーにおいて好適な範囲であることが好ましい。
重合体(A)を得るための重合法としては、乳化重合法が好ましい。乳化重合法は、重合速度が大きく、重合体における組成分布を狭くすることができる。重合体(A)を得るための乳化重合は、上記した単量体を用いて、水中又は水性媒体中で従来汎用の乳化重合と同様の方法、重合条件等を採用して実施することができる。乳化重合に当たっては、後段で説明する有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸系化合物等の重合開始剤(重合触媒)を適宜用いることができる。また、必要に応じて、乳化剤を用いてもよい。重合開始剤切片による安定化効果により乳化剤を用いることなく、安定に乳化重合を行うことができる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸系化合物を開始剤とすることがより好ましい。
上記の通り、重合体(A)とエポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(α)とを反応させることでマクロモノマーを得ることができる。
化合物(α)が有するエチレン性不飽和基を含む基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、スチリル基等を挙げることができる。そのうちでも、反応性及び分散安定化効果の高いマクロモノマーが得られる点から、化合物(α)が(メタ)アクリロイル基を含むことが好ましい。化合物(α)の好ましい具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(A)に、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(α)を反応させると、重合体(A)の分子鎖の途中及び/又は末端に存在するカルボキシル基の一部に、化合物(α)中のエポキシ基が付加されて、重合体(A)の分子鎖の途中及び/又は末端にエチレン性不飽和基が導入されたマクロモノマーが得られる。即ち、分子鎖の途中及び/又は末端にカルボキシル基と共にエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーが生成される。尚、反応系には、マクロモノマーと、未反応の重合体(A)とが存在しうる。
上記重合体(A)を乳化重合により製造した場合、重合体(A)への化合物(α)の付加反応は、重合体(A)の微粒子分散液を用いて行うことができる。重合体(A)を製造した後、その分散状態(サスペンジョン状態)を維持したままで、重合体(A)の分散液に化合物(α)を添加して行うことが、好ましい。
重合体(A)への化合物(α)の付加反応に際して、化合物(α)の付加反応量は、重合体(A)1モルに対して、例えば、0.5〜2.2モル(即ち、0.5〜2.2当量)、また例えば、0.8〜2.0モル(0.8〜2.0当量)である。化合物(α)の付加反応量が上記範囲の場合、本発明の架橋重合体を沈殿重合により製造する際に、析出粒子間の凝集を抑制し易い点で好ましい。尚、重合体(A)のモル数は、実際に使用した重合体(A)の質量を、重合体(A)の数平均分子量(Mn)で除す(割る)ことにより求めることができる。即ち、重合体(A)1モルに対する化合物(α)の付加モル数は、マクロモノマーの、1分子当たり(ポリマー鎖1本当たり)のエチレン性不飽和基の平均導入率(f値)を意味する。
得られたマクロモノマーを含有する重合体組成物(重合体からなる混合物)において、マクロモノマーを含む重合体全体における、重合体1分子当たりのエチレン性不飽和基の含有量の平均は0.5〜2.5個であり、また例えば、0.8〜2.2個、また例えば、1.0〜2.0個である。重合体1分子当たりのエチレン性不飽和基の含有量の平均が上記範囲の場合、本発明の架橋重合体を沈殿重合により製造する際に、析出粒子間の凝集を抑制し易い点で好ましい。
重合体(A)への化合物(α)の付加反応に当たっては、付加反応速度を大きくするために、触媒として、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩化合物、ホスフィン化合物等を使用することができる。特に、トリエチルアミン等の3級アミン化合物は、重合体(A)が有するカルボキシル基の中和剤としての役割も果たすため、好ましく用いられる。特に、水媒体中で付加反応を実施する場合には、化合物(α)が水と付加反応する副反応が低減されることから、触媒を用いることがより好ましい。
重合体(A)が有するカルボキシル基の一部に、化合物(α)を付加反応させて得られるマクロモノマー中に残存するカルボキシル基は、上記したように塩基によって中和することによって安定化される。なお、反応条件は、限定されるものではないが、重合体(A)への化合物(α)の付加反応は、重合体(A)の溶液又は分散液に、化合物(α)を添加して、通常、50℃〜120℃に加熱することによって行われる。
<その他の構造単位>
架橋重合体は、(a)成分及び(b)成分以外に、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、単に「(c)成分」ともいう。)を含むことができる。(c)成分としては、例えば、スルホン酸基及びリン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性基を有するエチレン性不飽和単量体化合物、または非イオン性のエチレン性不飽和単量体等に由来する構造単位が挙げられる。これらの構造単位は、スルホン酸基及びリン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性基を有するエチレン性不飽和単量体化合物、または非イオン性のエチレン性不飽和単量体を含む単量体を共重合することにより導入することができる。これらの内でも、(c)成分としては、耐屈曲性の観点から非イオン性のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位が好ましい。
(c)成分が非イオン性のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位である場合、その割合は、特に限定するものではないが、架橋重合体の全構造単位に対して、(b)成分に由来する全構造単位と合わせて0.1質量%以上50質量%以下とすることができる。(c)成分は、(b)成分とともに、活物質との結着性を向上させることができるからである。また、(c)成分は、架橋重合体の全構造単位に対して1質量%以上とすることができる。この場合、柔軟性のより高い合剤層が得られるため、耐屈曲性に優れた電極を得やすい。また、電解液への親和性が向上するため、リチウムイオン電導性が向上する効果も期待できる。架橋重合体の全構造単位に対して、5質量%以上40質量%以下であり、また例えば、10質量%以上30質量%以下である。なお、(c)成分は、(a)成分とともに、共重合されることができる。
非イオン性のエチレン性不飽和単量体としては、バインダーの結着性が優れる点で(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等が好ましい。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
その他に非イオン性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシルの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェニルメチル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物等が挙げられ、これらの内の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。活物質との密着性及びサイクル特性の観点からは、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル化合物を好ましく用いることができる。
(c)成分のための非イオン性のエチレン性不飽和単量体として(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、該(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、架橋重合体の全構造単位に対し、例えば、1質量%以上30質量%以下とすることができ、また例えば、5質量%以上30質量%以下であり、また例えば、10質量%以上30質量%以下である。また、この場合、上記(a)成分の割合は、架橋重合体の全構造単位に対し、例えば、70質量%以上99質量%以下であり、また例えば、70質量%以上95質量%以下であり、また例えば、70質量%以上90質量%以下である。
リチウムイオン伝導性及びハイレート特性がより向上する観点から、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類等、エーテル結合を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましい。
非イオン性のエチレン性不飽和単量体の中でも、重合速度が速いために一次鎖長の長い重合体が得られ、バインダーの結着力が良好となる点でアクリロイル基を有する化合物が好ましい。また、非イオン性のエチレン性不飽和単量体としては、得られる電極の耐屈曲性が良好となる点でホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以下の化合物が好ましい。
架橋重合体は塩であってもよい。塩の種類としては特に限定しないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マグネシウム塩、アルミニウム塩等のその他の金属塩;アンモニウム塩及び有機アミン塩等が挙げられる。これらの中でも電池特性への悪影響が生じにくい点からアルカリ金属塩及びマグネシウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。特に好ましいアルカリ金属塩は、リチウム塩及びナトリウム塩である。低温特性の観点からは、リチウム塩が好適である。
<架橋重合体の態様>
架橋重合体における架橋の態様は特に制限されるものではなく、例えば以下の方法による態様が例示される。
1)架橋性単量体の共重合
2)ラジカル重合時のポリマー鎖への連鎖移動を利用
3)反応性官能基を有する重合体を合成後、必要に応じて架橋剤を添加して後架橋
上記の内でも、操作が簡便であり、架橋の程度を制御し易い点から架橋性単量体の共重合による方法が好ましい。
<架橋性単量体>
架橋性単量体としては、2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体、及び加水分解性シリル基等の自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体等が挙げられる。
上記多官能重合性単量体は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの内でも、均一な架橋構造を得やすい点で多官能アルケニル化合物が好ましく、分子内に複数のアリルエーテル基を有する多官能アリルエーテル化合物が特に好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート;メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等のビスアミド類等を挙げることができる。
多官能アルケニル化合物としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等を挙げることができる。
上記自己架橋可能な架橋性官能基を有する単量体の具体的な例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、加水分解性シリル基を少なくとも1個有するビニル単量体であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有メタクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。
架橋重合体が架橋性単量体により架橋されたものである場合、上記架橋性単量体の使用量は、架橋性単量体以外の単量体(非架橋性単量体)の総量に対して0.02〜0.7モル%であることが好ましく、0.03〜0.4モル%であることがより好ましい。架橋性単量体の使用量が0.02モル%以上であれば結着性及び合剤層スラリーの安定性がより良好となる点で好ましい。0.7モル%以下であれば、架橋重合体の安定性が高くなる傾向がある。
また、上記架橋性単量体の使用量は、架橋重合体の全構成単量体中、例えば、0.05〜5質量%であり、また例えば0.1〜4質量%であり、また例えば0.2〜3質量%であり、また例えば0.3〜2質量%である。
一般に、架橋重合体は、そのポリマー鎖の長さ(一次鎖長)が長いほど強靭さが増大し、高い結着性を得ることが可能となるとともに、その水分散液の粘度が上昇する。また、長い一次鎖長を有するポリマーに比較的少量の架橋を施して得られた架橋重合体又はその塩は、水中では水に膨潤したミクロゲル体として存在する。本発明の電極合剤層用組成物においては、このミクロゲル体の相互作用により増粘効果や分散安定化効果が発現される。ミクロゲル体の相互作用はミクロゲル体の水膨潤度、およびミクロゲル体の強度によって変化するが、これらは架橋重合体の架橋度により影響を受ける。架橋度が低すぎる場合はミクロゲルの強度が不足して、分散安定化効果や結着性が不足する場合がある。一方架橋度が高すぎる場合は、ミクロゲルの膨潤度が不足して分散安定化効果や結着性が不足する場合がある。すなわち、架橋重合体としては、十分に長い一次鎖長を有する重合体に適度な架橋を施した微架橋重合体であることが望ましい。
架橋重合体又はその塩は、合剤層組成物中において、中和度が20〜100モル%となるように、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来のカルボキシル基等の酸基が中和され、塩の態様として用いることが好ましい。上記中和度は50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、60モル%以上95モル%以下であることがさらに好ましい。中和度が20モル%以上の場合、水膨潤性が良好となり分散安定化効果が得やすいという点で好ましい。本明細書では、上記中和度は、カルボキシル基等の酸基を有する単量体及び中和に用いる中和剤の仕込み値から計算により算出することができる。なお、中和度は架橋重合体又はその塩を、減圧条件下、80℃で3時間乾燥処理後の粉末をIR測定し、カルボン酸のC=O基由来のピークとカルボン酸LiのC=O基由来のピークの強度比より確認することができる。
架橋重合体又はその塩は、上記中和度を備えていることが好ましいが、架橋重合体又はその塩は、その0.5質量%水溶液のpHが、例えば7.5以上とすることができる。pHが7.5以上であれば、良好な分散性及び塗工性ほか、密着性やサイクル特性等を確保することができ、ひいては一体性の優れた電極を作製することができる。また例えば、8.0以上であり、また例えば、8.2以上である。また例えば、8.5以上である。上限は、特に限定するものではないが、例えば、10.0以下であり、また例えば9.0以下である。
上記0.5質量%水溶液のpHは、架橋重合体の中和度によって調整することができ、中和度が高い場合には、pHがアルカリ側となる。
<架橋重合体又はその塩の製造方法>
架橋重合体は、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、逆相乳化重合等の公知の重合方法を使用して製造することが可能であるが、生産性の点で沈殿重合及び懸濁重合(逆相懸濁重合)が好ましい。結着性等に関してより良好な性能が得られる点で、沈殿重合法がより好ましい。沈殿重合は、原料である不飽和単量体を溶解するが、生成する重合体を実質溶解しない溶媒中で重合反応を行うことにより重合体を製造する方法である。重合の進行とともにポリマー粒子は凝集及び成長により大きくなり、数十nm〜数百nmの一次粒子が数μm〜数十μmに二次凝集したポリマー粒子の分散液が得られる。尚、分散安定剤や重合溶剤等を選定することにより上記二次凝集を抑制することもできる。一般に、二次凝集を抑制した沈殿重合は、分散重合とも呼ばれる。
沈殿重合の場合、重合溶媒は、使用する単量体の種類等を考慮して水及び各種有機溶剤等から選択される溶媒を使用することができる。より一次鎖長の長い重合体を得るためには、連鎖移動定数の小さい溶媒を使用することが好ましい。
具体的な重合溶媒としては、メタノール、t−ブチルアルコール、アセトン、アセトニトリル及びテトラヒドロフラン等の水溶性溶剤の他、ベンゼン、酢酸エチル、ジクロロエタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン及びn−ヘプタン等が挙げられ、これらの1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。又は、これらと水との混合溶媒として用いてもよい。本開示において水溶性溶剤とは、20℃における水への溶解度が10g/100mlより大きいものを指す。
上記の内、粗大粒子の生成や反応器への付着が小さく重合安定性が良好であること、析出した重合体微粒子が二次凝集しにくい(若しくは二次凝集が生じても水媒体中で解れやすい)こと、連鎖移動定数が小さく重合度(一次鎖長)の大きい重合体が得られること、及び後述する工程中和の際に操作が容易であること等の点で、アセトニトリルが好ましい。
また、同じく工程中和において中和反応を安定かつ速やかに進行させるため、重合溶媒中に高極性溶媒を少量加えておくことが好ましい。係る高極性溶媒としては、好ましくは水及びメタノールが挙げられる。高極性溶媒の使用量は、媒体の全質量に基づいて,例えば、0.05〜10.0質量%であり、また例えば、0.1〜5.0質量%、また例えば、0.1〜1.0質量%である。高極性溶媒の割合が0.05質量%以上であれば、上記中和反応への効果が認められ、10.0質量%以下であれば重合反応への悪影響も見られない。また、アクリル酸等の親水性の高いエチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合では、高極性溶媒を加えた場合には重合速度が向上し、一次鎖長の長い重合体を得やすくなる。高極性溶媒の中でも特に水は上記重合速度を向上させる効果が大きく好ましい。
本製造方法では、(a)成分の由来となるエチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上99.9質量%以下と、(b)成分の由来となるマクロモノマーを0.1質量%以上50質量%以下と、を沈殿重合する重合工程を備えることが好ましい。該重合工程により、架橋重合体には、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位((a)成分)が、例えば、50質量%以上99.9質量%以下導入され、マクロモノマーに由来する構造単位((b)成分)が0.1質量%以上50質量%以下が導入される。エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、また例えば、60質量%以上99.9質量%以下であり、また例えば、70質量%以上99.9質量%以下である。上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、未中和の状態であってもよいし、中和された塩の状態であってもよい。また、使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体の一部を中和した部分中和塩の状態であってもよい。重合速度が大きいことから、分子量が高く結着性に優れる重合体が得られる点で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の中和度は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、未中和であることがさらに好ましい。
本製造方法では、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体及びマクロモノマー以外にこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を単量体成分、すなわち、(c)成分の由来となる単量体成分として含んでよい。当該他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スルホン酸基及びリン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性基を有するエチレン性不飽和単量体化合物、または非イオン性のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これらの内でも、耐屈曲性の観点から非イオン性のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位が好ましい。非イオン性のエチレン性不飽和単量体は、架橋重合体の単量体成分(マクロモノマーにおける単量体成分も含む。)の全量に対して,例えば、1質量%以上50質量%以下含んでもよく、また例えば、5質量%以上40質量%以下であり、また例えば、10質量%以上30質量%以下である。
架橋重合体が(c)成分を1質量%以上有する場合、柔軟性のより高い合剤層が得られる非イオン性のエチレン性不飽和単量体としては、(c)成分を構成する単量体として上述した単量体を使用することができるが、バインダーの結着性が優れる点で(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等が好ましい。その他に、非イオン性のエチレン性不飽和単量体として、例えば(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、該(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、単量体成分の全量に対し、例えば、1質量%以上30質量%以下であり、また例えば、5質量%以上30質量%以下であり、また例えば、10質量%以上30質量%以下である。
重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等の公知の重合開始剤を用いることができるが、特に限定されるものではない。熱開始、還元剤を併用したレドックス開始、UV開始等、公知の方法で適切なラジカル発生量となるように使用条件を調整することができる。一次鎖長の長い架橋重合体を得るためには、製造時間が許容される範囲内で、ラジカル発生量がより少なくなるように条件を設定することが好ましい。
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記有機過酸化物としては、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油社製、商品名「パーテトラA」)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサHC」)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(同「パーヘキサC」)、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート(同「パーヘキサV」)、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(同「パーヘキサ22」)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(同「パーブチルH」)、クメンハイドロパーオキサイド(日油社製、商品名「パークミルH」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(同「パーオクタH」)、t−ブチルクミルパーオキサイド(同「パーブチルC」)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(同「パーブチルD」)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(同「パーヘキシルD」)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(同「パーロイル355」)、ジラウロイルパーオキサイド(同「パーロイルL」)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(同「パーロイルTCP」)、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルOPP」)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(同「パーロイルSBP」)、クミルパーオキシネオデカノエート(同「パークミルND」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーオクタND」)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(同「パーヘキシルND」)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(同「パーブチルND」)、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート(同「パーブチルNHP」)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(同「パーヘキシルPV」)、t−ブチルパーオキシピバレート(同「パーブチルPV」)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン(同「パーヘキサ250」)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(同「パーオクタO」)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(同「パーヘキシルO」)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(同「パーブチルO」)、t−ブチルパーオキシラウレート(同「パーブチルL」)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(同「パーブチル355」)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーヘキシルI」)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(同「パーブチルI」)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(同「パーブチルE」)、t−ブチルパーオキシアセテート(同「パーブチルA」)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(同「パーヘキシルZ」)及びt−ブチルパーオキシベンゾエート(同「パーブチルZ」)等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。また、レドックス開始の場合、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、亜硫酸ガス(SO2)、硫酸第一鉄等を還元剤として用いることができる。
重合開始剤の好ましい使用量は、用いる単量体成分及びマクロモノマーの総量を100質量部としたときに、例えば、0.001〜2質量部であり、また例えば、0.005〜1質量部であり、また例えば、0.01〜0.1質量部である。重合開始剤の使用量が0.001質量部以上であれば重合反応を安定的に行うことができ、2質量部以下であれば一次鎖長の長い重合体を得やすい。
重合時の単量体成分及びマクロモノマーの濃度については、より一次鎖長の長い重合体を得る観点から高い方が好ましい。ただし、単量体成分の濃度が高すぎると、重合体粒子の凝集が進行し易い他、重合熱の制御が困難となり重合反応が暴走する虞がある。このため、重合開始時の単量体濃度は、例えば、2〜30質量%程度の範囲が一般的であり、また例えば、5〜30質量%の範囲である。重合温度は、使用する単量体の種類及び濃度等の条件にもよるが、例えば、0〜100℃であり、また例えば、20〜80℃である。重合温度は一定であってもよいし、重合反応の期間において変化するものであってもよい。また、重合時間は、例えば、1分間〜20時間であり、また例えば、1時間〜10時間である。
重合工程を経て得られた架橋重合体分散液は、乾燥工程において減圧及び/又は加熱処理等を行い溶媒留去することにより、目的とする架橋重合体を粉末状態で得ることができる。この際、上記乾燥工程の前に、未反応単量体(及びその塩)を除去する目的で、重合工程に引き続き、遠心分離及び濾過等の固液分離工程、有機溶剤又は有機溶剤/水の混合溶剤を用いた洗浄工程を備えることが好ましい。上記洗浄工程を備えた場合、架橋重合体が二次凝集した場合であっても使用時に解れやすく、さらに残存する未反応単量体が除去されることにより結着性や電池特性の点でも良好な性能を示す。
本製造方法では、エチレン性不飽和カルボン酸単量体等及びマクロモノマーとして未中和又は部分中和塩を用いた場合、重合工程により得られた重合体分散液にアルカリ化合物を添加して重合体を中和(以下、「工程中和」ともいう)した後、乾燥工程で溶媒を除去してもよい。また、未中和若しくは部分中和塩状態のまま架橋重合体の粉末を得た後、電極合剤層スラリーを調製する際にアルカリ化合物を添加して、重合体を中和(以下、「後中和」ともいう)してもよい。上記の内、工程中和の方が、二次凝集体が解れやすい傾向にあり好ましい。
<非水電解質二次電池電極合剤層用組成物>
本発明の非水電解質二次電池電極合剤層用組成物は、上記架橋重合体又はその塩を含有するバインダー、活物質及び水を含む。本発明の電極合剤層組成物における架橋重合体又はその塩の使用量は、活物質の全量に対して,例えば、0.1質量%以上20質量%以下である。上記使用量は,また例えば、0.2質量%以上10質量%以下であり、また例えば、0.3質量%以上8質量%以下であり、また例えば、0.4質量%以上5質量%以下である。架橋重合体及びその塩の使用量が0.1質量%未満の場合、炭素系材料やケイ素系材料などの電極材料に対する十分な結着性が得られないことがある。また、活物質等の分散安定性が不十分となり、形成される合剤層の均一性が低下する場合がある。一方、架橋重合体及びその塩の使用量が20質量%を超える場合、電極合剤層組成物が高粘度となり集電体への塗工性が低下することがある。その結果、得られた合剤層にブツや凹凸が生じて電極特性に悪影響を及ぼす虞がある。
架橋重合体及びその塩の使用量が上記範囲内であれば、分散安定性に優れた組成物が得られるとともに、集電体への密着性が極めて高い合剤層を得ることができ、結果として電池の耐久性が向上する。さらに、上記架橋重合体及びその塩は、活物質に対して少量(例えば5質量%以下)でも十分高い結着性を示し、かつ、カルボキシアニオンを有することから、界面抵抗が小さく、ハイレート特性に優れた電極が得られる。
上記活物質の内、正極活物質としては主に遷移金属酸化物のリチウム塩が用いられ、例えば、層状岩塩型及びスピネル型のリチウム含有金属酸化物を使用することができる。層状岩塩型の正極活物質の具体的な化合物としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、並びに、三元系と呼ばれるNCM{Li(Nix,Coy,Mnz)、x+y+z=1}及びNCA{Li(Ni1-a-bCoaAlb)}等が挙げられる。また、スピネル型の正極活物質としてはマンガン酸リチウム等が挙げられる。酸化物以外にもリン酸塩、ケイ酸塩及び硫黄等が使用され、リン酸塩としては、オリビン型のリン酸鉄リチウム等が挙げられる。正極活物質としては、上記のうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて混合物又は複合物として使用してもよい。
尚、層状岩塩型のリチウム含有金属酸化物を含む正極活物質を水に分散させた場合、活物質表面のリチウムイオンと水中の水素イオンとが交換されることにより、分散液がアルカリ性を示す。このため、一般的な正極用集電体材料であるアルミ箔(Al)等が腐食される虞がある。このような場合には、バインダーとして未中和又は部分中和された架橋重合体を用いることにより、活物質から溶出するアルカリ分を中和することが好ましい。また、未中和又は部分中和された架橋重合体の使用量は、架橋重合体の中和されていないカルボキシル基量が活物質から溶出するアルカリ量に対して当量以上となるように用いることが好ましい。
正極活物質はいずれも電気伝導性が低いため、導電助剤を添加して使用されるのが一般的である。導電助剤としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛微粉、炭素繊維等の炭素系材料が挙げられ、これらの内、優れた導電性を得やすい点からカーボンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー、が好ましい。また、カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。導電助剤は、上記の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。導電助剤の使用量は、導電性とエネルギー密度を両立するという観点から活物質の全量に対して、例えば、0.2〜20質量%とすることができ、また例えば、0.2〜10質量%とすることができる。また正極活物質は導電性を有する炭素系材料で表面コーティングしたものを使用してもよい。
一方、負極活物質としては、例えば炭素系材料、リチウム金属、リチウム合金及び金属酸化物等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの内でも、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン及びソフトカーボン等の炭素系材料からなる活物質(以下、「炭素系活物質」ともいう)が好ましく、天然黒鉛及び人造黒鉛等の黒鉛、並びにハードカーボンがより好ましい。また、黒鉛の場合、電池性能の面から球形化黒鉛が好適に用いられ、その粒子サイズの好ましい範囲は、例えば、1〜20μmであり、また例えば、5〜15μmである。また、エネルギー密度を高くするために、ケイ素やスズなどのリチウムを吸蔵できる金属又は金属酸化物等を負極活物質として使用することもできる。その中でも、ケイ素は黒鉛に比べて高容量であり、ケイ素、ケイ素合金及び一酸化ケイ素(SiO)等のケイ素酸化物のようなケイ素系材料からなる活物質(以下、「ケイ素系活物質」ともいう)を用いることができる。しかし、上記ケイ素系活物質は高容量である反面充放電に伴う体積変化が大きい。このため、上記炭素系活物質と併用するのが好ましい。この場合、ケイ素系活物質の配合量が多いと電極材料の崩壊を招き、サイクル特性(耐久性)が大きく低下する場合がある。このような観点から、ケイ素系活物質を併用する場合、その使用量は炭素系活物質に対して、例えば、60質量%以下であり、また例えば、30質量%以下である。
炭素系活物質は、それ自身が良好な電気伝導性を有するため、必ずしも導電助剤を添加する必要はない。抵抗をより低減する等の目的で導電助剤を添加する場合、エネルギー密度の観点からその使用量は活物質の総量に対して、例えば、10質量%以下であり、また例えば、5重量%以下である。
非水電解質二次電池電極合剤層用組成物がスラリー状態の場合、活物質の使用量は、組成物全量に対して、例えば、10〜75質量%の範囲であり、また例えば、30〜65質量%の範囲である。活物質の使用量が10質量%以上であればバインダー等のマイグレーションが抑えられるとともに、媒体の乾燥コストの面でも有利となる。一方、75質量%以下であれば組成物の流動性及び塗工性を確保することができ、均一な合剤層を形成することができる。
また、湿粉状態で電極合剤層用組成物を調製する場合、活物質の使用量は、組成物全量に対して、例えば、60〜97質量%の範囲であり、また例えば、70〜90質量%の範囲である。また、エネルギー密度の観点から、バインダーや導電助剤等の活物質以外の不揮発成分は、必要な結着性や導電性が担保される範囲内で出来る限り少ない方がよい。
非水電解質二次電池電極合剤層用組成物は、媒体として水を使用する。また、組成物の性状及び乾燥性等を調整する目的で、メタノール及びエタノール等の低級アルコール類、エチレンカーボネート等のカーボネート類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の水溶性有機溶剤との混合溶媒としてもよい。混合媒体中の水の割合は、例えば、50質量%以上であり、また例えば、70質量%以上である。
電極合剤層用組成物を塗工可能なスラリー状態とする場合、組成物全体に占める水を含む媒体の含有量は、スラリーの塗工性、および乾燥に必要なエネルギーコスト、生産性の観点から、例えば、25〜90質量%の範囲とすることができ、また例えば、35〜70質量%とすることができる。また、プレス可能な湿粉状態とする場合、上記媒体の含有量はプレス後の合剤層の均一性の観点から、例えば、3〜40質量%の範囲とすることができ、また例えば、10〜30質量%の範囲とすることができる。
本明細書に開示されるバインダーは、上記架橋重合体又はその塩のみからなるものであってもよいが、これ以外にもスチレン/ブタジエン系ラテックス(SBR)、アクリル系ラテックス及びポリフッ化ビニリデン系ラテックス等の他のバインダー成分を併用してもよい。他のバインダー成分を併用する場合、その使用量は、活物質に対して、例えば、0.1〜5質量%以下とすることができ、また例えば、0.1〜2質量%以下とすることができ、また例えば、0.1〜1質量%以下とすることができる。他のバインダー成分の使用量が5質量%を超えると抵抗が増大し、ハイレート特性が不十分なものとなる場合がある。上記の中でも、結着性及び耐屈曲性のバランスに優れる点で、スチレン/ブタジエン系ラテックスが好ましい。
上記スチレン/ブタジエン系ラテックスとは、スチレン等の芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び1,3−ブタジエン等の脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位を有する共重合体の水系分散体を示す。上記芳香族ビニル単量体としては、スチレンの他にα−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。上記共重合体中における上記芳香族ビニル単量体に由来する構造単位は、主に結着性の観点から、例えば、20〜60質量%の範囲とすることができ、また例えば、30〜50質量%の範囲とすることができる。
上記脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエンの他に2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。上記共重合体中における上記脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位は、バインダーの結着性及び得られる電極の柔軟性が良好なものとなる点で、例えば、30〜70質量%の範囲とすることができ、また例えば、40〜60質量%の範囲とすることができる。
スチレン/ブタジエン系ラテックスは、上記の単量体以外にも、結着性等の性能をさらに向上させるために、その他の単量体として(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体、(メタ)アクリル酸、イタンコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体を共重合単量体として用いてもよい。
上記共重合体中における上記その他の単量体に由来する構造単位は、例えば、0〜30質量%の範囲とすることができ、また例えば、0〜20質量%の範囲とすることができる。
本発明の非水電解質二次電池電極合剤層用組成物は、上記の活物質、水及びバインダーを必須の構成成分とするものであり、公知の手段を用いて各成分を混合することにより得られる。各成分の混合方法は特段制限されるものではなく、公知の方法を採用することができるが、活物質、導電助剤及びバインダーである架橋重合体粒子等の粉末成分をドライブレンドした後、水等の分散媒と混合し、分散混練する方法が好ましい。電極合剤層用組成物をスラリー状態で得る場合、分散不良や凝集のないスラリーに仕上げることが好ましい。混合手段としては、プラネタリーミキサー、薄膜旋回式ミキサー及び自公転式ミキサー等の公知のミキサーを使用することができるが、短時間で良好な分散状態が得られる点で薄膜旋回式ミキサーを使用して行うことが好ましい。また、薄膜旋回式ミキサーを用いる場合は、予めディスパー等の攪拌機で予備分散を行うことが好ましい。また、上記スラリーの粘度は、60rpmにおけるB型粘度として、例えば、500〜100,000mPa・sの範囲とすることができ、また例えば、1,000〜50,000mPa・sの範囲とすることができる。
一方、電極合剤層用組成物を湿粉状態で得る場合、ヘンシェルミキサー、ブレンダ―、プラネタリーミキサー及び2軸混練機等を用いて、濃度ムラのない均一な状態まで混練することが好ましい。
<非水電解質二次電池用電極>
本発明の非水電解質二次電池用電極は、銅又はアルミニウム等の集電体表面に上記電極合剤層用組成物から形成される合剤層を備えてなるものである。合剤層は、集電体の表面に本発明の電極合剤層用組成物を塗工した後、水等の媒体を乾燥除去することにより形成される。合剤層組成物を塗工する方法は特に限定されず、ドクターブレード法、ディップ法、ロールコート法、コンマコート法、カーテンコート法、グラビアコート法及びエクストルージョン法などの公知の方法を採用することができる。また、上記乾燥は、温風吹付け、減圧、(遠)赤外線、マイクロ波照射等の公知の方法により行うことができる。
通常、乾燥後に得られた合剤層には、金型プレス及びロールプレス等による圧縮処理が施される。圧縮することにより活物質及びバインダーを密着させ、合剤層の強度及び集電体への密着性を向上させることができる。圧縮により合剤層の厚みを、例えば、圧縮前の30〜80%程度に調整することができ、圧縮後の合剤層の厚みは4〜200μm程度が一般的である。
本発明の非水電解質二次電池用電極にセパレータ及び非水電解液を備えることにより、非水電解質二次電池を作製することができる。
セパレータは電池の正極及び負極間に配され、両極の接触による短絡の防止や電解液を保持してイオン導電性を確保する役割を担う。セパレータにはフィルム状の絶縁性微多孔膜であって、良好なイオン透過性及び機械的強度を有するものが好ましい。具体的な素材としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等を使用することができる。
非水電解液は、非水電解質二次電池に一般的に使用される公知のものを用いることができる。具体的な溶媒としては、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネート等の高誘電率で電解質の溶解能力の高い環状カーボネート、並びに、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等の粘性の低い鎖状カーボネート等が挙げられ、これらを単独で又は混合溶媒として使用することができる。非水電解液は、これらの溶媒にLiPF6、LiSbF6、LiBF4、LiClO4、LiAlO4等のリチウム塩を溶解して使用される。非水電解質二次電池は、セパレータで仕切られた正極板及び負極板を渦巻き状又は積層構造にしてケース等に収納することにより得られる。
以上説明したように、本明細書に開示される非水電解質二次電池電極用バインダーは、合剤層において電極材料との優れた結着性と集電体との優れた接着性とを示すこのため、上記バインダーを使用して得られた電極を備えた非水電解質二次電池は、良好な一体性を確保でき、充放電を繰り返しても良好な耐久性(サイクル特性)を示すと予想され、車載用二次電池等に好適である。
以上の説明に従えば、本明細書は以下に示す態様を含むことができる。
[1]非水電解質二次電池電極用バインダーに用いられるカルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩の製造方法であって、
エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上99.9質量%以下含む単量体成分と、
以下の式(1);
[化1]
2C=CR1−X (1)
(式中、R1は、水素又はメチル基を表し、Xは、C(=O)OR2又はCNを表し、R2は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は脂環構造を有する炭素数3〜8のアルキル基を表す。)
で表される化合物から選択される少なくとも1種を構成単量体とするマクロモノマーを0.1質量%以上50質量%以下とを、沈殿重合する重合工程を備えた前記架橋重合体又はその塩の製造方法。
[2]前記重合工程の後に乾燥工程を備え、
前記重合工程の後、前記乾燥工程の前に、当該重合工程により得られた重合体分散液にアルカリ化合物を添加して重合体を中和する工程を備える[1]に記載の架橋重合体又はその塩の製造方法。
[3]前記重合工程の後、固液分離工程、洗浄工程及び乾燥工程を備える[1]又は[2]に記載の架橋重合体又はその塩の製造方法。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
(マクロモノマーの製造)
(合成例1:マクロモノマーMM−1の製造)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応器に、イオン交換水200部を仕込んだ。さらにメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう。)0.95部、メタクリル酸イソブチル(以下、「IBMA」ともいう。)2.685部、メタクリル酸(以下、「MAA」ともいう。)1.0部及びチオグリコール酸2−エチルヘキシル(以下、「OTG」ともいう。)0.365部を仕込み(単量体合計:5部)、攪拌及び窒素ガスの吹き込みを行いながら、反応器の内温を80℃に調整した。
一方、定量ポンプによる送液配管を取り付けたガラス製容器に、MMA18.05部、IBMA51.015部、MAA19.0部及びOTG6.935部を仕込み、攪拌して単量体の混合液(単量体合計:95部)を調製した。上記反応器の内温が80℃で安定したことを確認した後、反応器に、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.8部をイオン交換水3.0部に溶解した重合開始剤水溶液を添加した。次いで、その5分後に、定量ポンプを使用して、上記単量体の混合液の反応器への供給を開始し、単量体の混合液95部を一定速度で240分かけて反応器に供給した。供給完了後より30分間かけて反応器の内温を90℃に昇温し、その後4.5時間内温を維持して、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A)(以下、重合体(A−1)という。)の分散液を得た。
次に、上記反応器内の重合体(A−1)の分散液の温度を30分間かけて80℃に降温した後、窒素ガスの吹き込みを空気の吹き込みに変更し、直ちにメトキシハイドロキノン0.03部を添加した。メトキシハイドロキノンを添加した5分後に、トリエチルアミン(以下、「TEA」ともいう。)9.4部を一定速度で30分間に渡り反応器に供給した。そして、その15分後にグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」ともいう。)10.15部を一定速度で30分間に渡り反応器に供給し、内温80℃で3時間加熱して、重合体(A−1)のカルボキシル基の一部にGMAを付加させて、メタクリロイル基を有するマクロモノマーを含む重合体組成物(重合体からなる混合物)の分散液を製造した。以下、この重合体組成物を、「重合体組成物(MM−1)」という。
その後、上記で得られたマクロモノマーを含む分散液(MM−1)から一部をサンプリングして、上記の方法によりGC分析を行った。測定の結果、GMAは検出されなかった。また、GPCにより測定した重合体組成物(MM−1)の重量平均分子量(Mw)は4,000であった。分散液(MM−1)を60℃に加熱し、減圧下(10kPa以下)で12時間乾燥することにより揮発分を除去し、マクロモノマーMM−1の乾燥粉末品を得た。
(合成例2〜3:マクロモノマーMM−2〜3の製造)
下記の表1に示す組成の単量体を用いて、合成例1と同様の操作を行って、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A−2)〜(A−3)の分散液を製造した。上記で得られた重合体(A−2)〜(A−3)の分散液に、合成例1と同様の操作を行い、重合体(A−2)〜(A−3)のカルボキシル基の一部にGMAを付加させて、マクロモノマーを含む重合体組成物(重合体組成物(MM−2)〜(MM−3))の分散液を製造した。
その後、上記で得られた重合体組成物(MM−2)〜(MM−3)を含む分散液から一部をサンプリングして、上記の方法によりGC分析を行った。測定の結果、各分散液において、GMAは検出されなかった。また、GPCにより測定した重合体組成物(MM−2)〜(MM−3)の重量平均分子量(Mw)はいずれも4,000であった。合成例1と同様に各分散液を減圧下で乾燥処理することにより揮発分を除去し、マクロモノマーMM−2及びMM−3の乾燥粉末品を得た。
Figure 0006897759
(架橋重合体塩の製造)
(製造例1:架橋重合体塩P−1の製造)
重合には、攪拌翼、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応器を用いた。反応器内にアセトニトリル875.6部、イオン交換水4.40部、マクロモノマーMM−1を2.0部、アクリル酸(以下、「AA」という)98.0部、及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー社製、商品名「ネオアリルP−30」)0.5部を仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温した。内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤としてV−65、0.0625部を添加したところ、反応液に白濁が認められたため、この点を重合開始点とした。外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点で反応液の冷却を開始し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(以下、「LiOH・H2O」という)の粉末51.5部を添加した。添加後室温下12時間撹拌を継続して、架橋重合体塩P−1(Li塩、中和度90モル%)の粒子が媒体に分散したスラリー状の重合反応液を得た。
得られた重合反応液を遠心分離して重合体粒子を沈降させた後、上澄みを除去した。その後、重合反応液と同重量のアセトニトリルに沈降物を再分散させた後、遠心分離により重合体粒子を沈降させて上澄みを除去する操作を2回繰り返した。沈降物を回収し、減圧条件下、80℃で3時間乾燥処理を行い、揮発分を除去することにより、架橋重合体塩P−1の粉末を得た。架橋重合体塩P−1は吸湿性を有するため、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。なお、架橋重合体塩P−1の粉末をIR測定し、カルボン酸のC=O基由来のピークとカルボン酸LiのC=O由来のピークの強度比より中和度を求めたところ、仕込みからの計算値に等しく90モル%であった。
(製造例2〜13:架橋重合体塩P−2〜P−13の製造)
各原料の仕込み量、中和塩種類及び中和度を表2に記載の通りとした以外は製造例1と同様の操作を行い、粉末状の架橋重合体塩P−2〜P−13を得た。各架橋重合体塩は、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。尚、製造例6では、LiOH・H2Oの代わりに48%NaOH水溶液を用いることにより。架橋重合体Na塩(中和度90モル%)を得た。なお、P−3〜P−5については、0.5質量%水溶液を調製してそのpHを測定した。
Figure 0006897759
MM−4
東亞合成株式会社製、粉末状マクロモノマー「AA−6」
主鎖:ポリメタクリル酸メチル
反応性基:片末端メタクリロイル基
分子量(Mw):6,000
MM−5
東亞合成株式会社製、粉末状マクロモノマー「AN−6」
主鎖:アクリロニトリル/スチレン共重合体
反応性基:片末端メタクリロイル基
分子量(Mw):6,000
AA:アクリル酸
PEA:アクリル酸フェニルエチル
MMA:メタクリル酸メチル
IBMA:メタクリル酸イソブチル
P−30:ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー社製、商品名「ネオアリルP−30」)
(実施例1)
架橋重合体塩P−1を用いた電極を作製し、その評価を行った。具体的な手順及び評価方法等について以下に示す。
(負極極板の作製、及び塗工性の評価)
SiOx(0.8<x<1.2)の表面にCVD法で炭素を10%コートしたものを準備し、これと黒鉛を5:95の重量比率で混合したものを活物質として用いた。また、バインダーとしては、架橋重合体塩P−1、スチレン/ブタジエン系ラテックス(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)の混合物を用いた。水を希釈溶媒として、活物質:P−1:SBR:CMC=95.5:1.5:1.5:1.5(固形分)の重量比でプライミクス社製T.K.ハイビスミックスを用いて混合し、固形分50%の負極合剤スラリーを調製した。上記負極合剤スラリーを銅箔の両面に塗布し、乾燥することにより合剤層を形成した。その後、片面当たりの合剤層の厚みが80μm、充填密度が1.60g/cm3になるよう圧延した。
尚、乾燥後、圧延前の合剤層の外観を目視により観察し、以下の基準に基づいて塗工性を評価した結果、「○」と判断された。
<塗工性判断基準>
◎:表面に筋ムラ、ブツ等の外観異常が全く認められない。
○:表面に筋ムラ、ブツ等の外観異常がわずかに認められる。
×:表面に筋ムラ、ブツ等の外観異常が顕著に認められる。
(密着性の評価)
120mm×30mmのアクリル板上に両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW−20)を介して100mm×25mmサイズの負極極板の合剤層面を貼付けた。日本電産シンポ株式会社製小型卓上試験機(FGS−TV及びFGP−5)を用いて測定温度25℃、引張速度50mm/分における90°剥離を行い、合剤層と銅箔間の剥離強度を測定することにより密着性を評価した。
(電池特性の評価)
次いで、架橋重合体塩P−1を用いた上記負極極板を含む電池を作製し、その評価を行った。具体的な手順及び評価方法等について以下に示す。
(正極極板の作製)
N−メチルピロリドン(NMP)溶媒中、正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.052と、炭素導電剤であるアセチレンブラックと、平均分子量が110万のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、95:2.5:2.5の重量比で混合機を用いて混合し、固形分50%の正極合剤スラリーを調整した。調製したスラリーをアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、片面当たりの合剤層の厚みが95μm、充填密度が3.60g/cm3になるよう圧延した。
(電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とからなる混合溶媒(体積比でEC:DMC=1:3)に、ビニレンカーボネート(VC)を5質量部添加し、LiPF6を1モル/リットル溶解して非水電解質を調製した。
(電池の作製)
電池の構成は、正・負極それぞれにリード端子を取り付け、セパレータ(ポリエチレン製:膜厚16μm、空孔率47%)を介して渦巻状に巻き取ったものをプレスして、扁平状に押し潰した電極体を電池外装体としてアルミニウムラミネートを用いたものに入れて注液を行い、封止して試験用電池とした。尚、本試作電池の設計容量は800mAhである。電池の設計容量としては、4.2Vまでの充電終止電圧を基準にして設計を行った。
(サイクル特性の評価)
上記で得られた電池について以下に示す充放電試験を25℃で100サイクル繰り返し、容量維持率を評価した。
(1)充電試験
0.3C(240mA)の電流で4.2Vまで定電流充電を行い、4.2V定電圧で電流が1/20C(40mA)になるまで定電圧充電した。
(2)放電試験
0.5C(400mA)の電流で2.75Vまで定電流放電を行った。
(3)休止
充電試験と放電試験の間隔は10分間とした。
(交流インピーダンス(初期抵抗値)の測定)
25mm×57mmサイズの負極極板と50mm×120mmサイズのリチウム箔にそれぞれリード端子を取り付けた。セパレータを介して渦巻状に巻き取った電極体を電池外装体としてアルミニウムラミネートを用いたものに入れて注液を行い、封止して試験用単極電池とした。尚、本試作単極電池の設計容量は80mAhである。電池の設計容量としては、0.01VvsLiまでの充電終止電圧を基準にして設計を行った。
(1)充電条件
単極電池に対して0.01C(0.8mA)で0.05VvsLiになるまで25℃条件下で定電流充電を行った。
(2)交流インピーダンス測定条件
0℃環境下で振幅を10mVとし、周波数を0.01Hzから100000Hzまで変化させて、電池の交流インピーダンスを測定し、負極の反応抵抗(Rct)を求める、初期抵抗値を得た。
(実施例2〜11、比較例1〜2)
架橋重合体塩を表3に記載の通りとした以外は実施例1と同様の操作を行い、負極極板および電池を得た。得られた負極極板および電池について実施例1と同様の評価を行い、結果を表3に示した。
Figure 0006897759
表3に示すように、本製造方法により得られた架橋重合体を用いた架橋重合体をバインダーとして使用した実施例1〜11は、いずれも、塗工性を確保しつつ、良好な密着性と電池特性を発揮した。また、マクロモノマーにおいてIBAを含み、その比率が高いと、密着性及びサイクル特性が向上しやすいこと(実施例1、2及び8)、単量体成分としてPEA(アクリル酸フェニルエチル)を含むと、密着性及びサイクル特性が向上しやすいこと(実施例7)、pHが8.0以上であると、高いサイクル特性が得られやすいことなどがわかった(実施例3〜5)。また、初期抵抗の点では、ナトリウム塩よりもリチウム塩の方が良好であることもわかった(実施例3と実施例6)。さらに、分子鎖の途中に重合性官能基を有するマクロモノマーのほうが、末端に重合性官能基を有するマクロモノマーよりも、密着性及びサイクル特性が向上しやすいこともわかった(実施例1〜9と実施例10、11)。
一方、マクロモノマーを用いない架橋重合体の場合、密着性を向上させることが困難であり、疎水性アルキル基を分子鎖中に有する架橋重合体を用いても、密着性を向上させることが困難であることがわかった(比較例1、2)。
以上の結果から、疎水性アルキル基を有するマクロモノマーを用いた架橋重合体によれば、電極材料との結着性が向上し、一体性の良好な合剤層及び電極を形成できることがわかった。
本発明の製造方法により得られる架橋重合体又はその塩を含む非水電解質二次電池電極用バインダーは、車載用二次電池などの各種の二次電池への適用が期待される。

Claims (3)

  1. 非水電解質二次電池電極用バインダーに用いられるカルボキシル基を有する架橋重合体又はその塩の製造方法であって、
    エチレン性不飽和カルボン酸単量体を50質量%以上99.9質量%以下含む単量体成分と、
    以下の式(1);
    [化1]
    2C=CR1−X (1)
    (式中、R1は、水素又はメチル基を表し、Xは、C(=O)OR2又はCNを表し、R2は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又は脂環構造を有する炭素数3〜8のアルキル基を表す。)
    で表される化合物から選択される少なくとも1種を構成単量体とするマクロモノマーを0.1質量%以上50質量%以下とを、沈殿重合する重合工程を備えた前記架橋重合体又はその塩の製造方法。
  2. 前記重合工程の後に乾燥工程を備え、
    前記重合工程の後、前記乾燥工程の前に、当該重合工程により得られた重合体分散液にアルカリ化合物を添加して重合体を中和する工程を備える請求項1に記載の架橋重合体又はその塩の製造方法。
  3. 前記重合工程の後、固液分離工程、洗浄工程及び乾燥工程を備える請求項1又は2に記載の架橋重合体又はその塩の製造方法。
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