JP6896240B2 - 医療用縫合糸 - Google Patents

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Description

本発明は、手術または怪我の治療などの医療行為に用いられる医療用縫合糸に関する。
従来から、手術または怪我の治療などの医療行為に用いられる医療用縫合糸が用いられている。この医療用縫合糸においては、縫合の操作性、縫合部分に対する摺動性または滑りおろし性(結ぶ際における結び目の移動のし易さ)を向上させる目的で医療用縫合糸の外表面に各種樹脂材料のコーティングが行われている。例えば、下記特許文献1には、縫合糸に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」という)をコーティングすることで外科医が縫合糸を結ぶ際の容易さおよび保持性を高めることが開示されている。
特開2010−513678号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された縫合糸においては、縫合糸にコーティング、すなわち、縫合糸の外表面にMPCからなる樹脂層が形成されているため、複数の繊維状の極細糸の集合で一本の糸を構成したマルチフィラメントの縫合糸においては縫合糸の内部に配置された極細糸同士の摩擦によって縫合糸全体が屈曲し難くなって医療行為時における縫合糸の操作性が低下するという問題がある。
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、屈曲し易く良好な操作性を確保できるマルチフィラメントの医療用縫合糸を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、複数の繊維状の極細糸の集合で一本の糸を構成したマルチフィラメントの医療用縫合糸であって、極細糸は、マルチフィラメントの内部に配置されて同マルチフィラメントの外表面に露出しない極細糸の外表面に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる内線カバー層が形成されており、内線カバー層は、極細糸を構成して内線カバー層が形成される線材の総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量で、かつ、線材の外表面における一部を露出させた状態で線材の軸方向および周方向にそれぞれ均一な形成密度で線材の表面積の50%以上を覆う状態で形成されていることにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、複数の繊維状の極細糸の集合で一本の糸を構成したマルチフィラメントの医療用縫合糸であって、極細糸は、マルチフィラメントの内部に配置されて同マルチフィラメントの外表面に露出しない極細糸の外表面に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる内線カバー層が形成されており、内線カバー層は、極細糸を構成して内線カバー層が形成される線材の総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量で、かつ、線材の外表面を完全に覆った状態で形成されていることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、医療用縫合糸は、マルチフィラメントの外表面に露出することなく内部に配置された極細糸の外表面にMPCからなる内線カバー層が形成されているため、極細糸同士の摩擦を抑えることで縫合糸全体が屈曲し易くなって良好な操作性を確保することができる。
また、このように構成した本発明の特徴によれば、医療用縫合糸は、内線カバー層の重量が内線カバー層が形成される線材の総重量に対して0.05%以上かつ0.3%未満の重量で形成されているため、極細糸同士の貼り付きの防止および医療用縫合糸の巻き癖の付き難さを保ちながら医療用縫合糸の外径の大型化を抑えつつ医療用縫合糸全体の屈曲性を向上させて良好な操作性を確保することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記医療用縫合糸において、マルチフィラメントは、複数の極細糸の集合で構成されてマルチフィラメントの中心部に配置された芯糸と、芯糸の外側に配置されて芯糸を露出させることなく覆う外層糸とを備え、内線カバー層は、芯糸を構成する極細糸に形成されていることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、前記医療用縫合糸は、複数の極細糸の集合で構成されてマルチフィラメントの中心部に配置された芯糸と、芯糸の外側に配置されて芯糸を露出させることなく覆う外層糸とを備えるとともに、内線カバー層が芯糸を構成する極細糸に形成されているため、芯糸における極細糸同士の摩擦を抑えて縫合糸全体の屈曲性を向上させて良好な操作性を確保することができる。この場合、芯糸は、複数の極細糸を互いに直線的に平行配置した直線配置の束のほか、複数の極細糸を編んだ編み糸または撚った撚糸で構成することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記医療用縫合糸において、芯糸は、複数の極細糸を編んだ編み糸または撚った撚糸で構成されていることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用縫合糸は、芯糸が複数の極細糸を編んだ編み糸または撚った撚糸で構成されていても芯糸における極細糸同士の摩擦を抑えて縫合糸全体の屈曲性を向上させて良好な操作性を確保することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記医療用縫合糸において、マルチフィラメントの外表面に露出する極細糸の外表面に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる外層カバー層が形成されており、内線カバー層は、外層カバー層よりも厚さが薄く形成されていることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用縫合糸は、内線カバー層がマルチフィラメントの外表面に露出する極細糸の外表面に形成された2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる外層カバー層よりも厚さが薄く形成されているため、縫合糸の外径の大型化を抑えつつ縫合糸全体の屈曲性を向上させて良好な操作性を確保することができる。
本発明の一実施形態に係る医療用縫合糸の外観構成および内部構成の概略を模式的に示した分解側面図である。 図1に示した医療用縫合糸における芯糸および外層糸をそれぞれ構成する極細糸の外観構成および内部構成の概略を模式的に示した分解側面図である。 本発明の変形例に係る医療用縫合糸を構成する極細糸の外表面上に部分的に形成されるカバー層の状態を示す部分拡大側面図である。
以下、本発明に係る医療用縫合糸の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る医療用縫合糸100の外観構成および内部構成の概略を模式的に示した分解側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この医療用縫合糸100は、人間または動物の皮膚、筋肉または臓器などの身体組織の一部を縫合するための器具である。
(医療用縫合糸100の構成)
医療用縫合糸100は、主として、芯糸110および外層糸120を備えて構成されている。芯糸110は、医療用縫合糸100の内部に配置される糸であり、複数の極細糸111の集合によって構成されている。本実施形態においては、芯糸110は、複数の極細糸111の集合からなる2つの束を撚って1つの糸に形成して構成されている。これにより、芯糸110は、本実施形態においては、約0.27mmの太さに形成されている。
極細糸111は、図2に示すように、芯糸110を構成する最小単位の糸であり、樹脂素材、天然素材または金属素材からなる線材111aによって構成されている。この場合、樹脂素材としては、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルまたはポリビニリデンフルオライド(ポリフッ化ビニリデン)などを用いることができる。また、天然素材としては、カトグット(動物の腸を糸にしたもの)または絹糸を用いることができる。また、金属素材としては、ステンレス、チタンまたはマグネシウムなどを用いることができる。
また、極細糸111の太さは、医療用縫合糸100の太さに応じて種々の太さに形成されるが、概ね1μm以上かつ1mm以下に形成される。本実施形態においては、極細糸111は、約10μmの太さのポリエステル製の糸で構成されている。
この極細糸111には、線材111aの表面に内線カバー層112が形成されている。内線カバー層112は、極細糸111の線材111aの外表面をMPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)で覆った樹脂層である。この場合、内線カバー層112は、MPCのみで構成されていてもよいが、内線カバー層112の構成成分中においてMPCが他の成分に対して最も含有率が高い主成分として含まれるように構成されていればよい。本実施形態においては、内線カバー層112は、MPCのみで構成されている。
また、内線カバー層112は、線材111aの外表面を完全に覆った状態で形成されることが好ましいが、線材111aの軸方向および周方向にそれぞれ略均一な形成密度で線材111aの表面積の50%以上(より好ましくは80%以上)を覆う状態で形成されるとよい。つまり、内線カバー層112は、図3に示すように、線材111aの外表面上に斑に形成されて外表面の一部が露出した状態で形成されていてもよい。
ここで、線材111aの軸方向および周方向にそれぞれ略均一な形成密度とは、線材111aの外表面が露出した部分(内線カバー層112が形成されていない部分)と内線カバー層112が形成された部分とが線材111aの軸方向および周方向にそれぞれ実質的に均等に配置されている状態である。そして、この略均一な形成密度は、線材111aの外表面を電子顕微鏡などの拡大鏡を用いて観察した際に、線材111aの外表面が露出した部分と内線カバー層112が形成された部分とが均等に配置されているように見える程度でよく、必ずしも厳密に均等である必要はない。
この内線カバー層112は、線材111aの総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量の範囲内で線材111aの外表面上に形成されている。内線カバー層112は、線材111aの総重量の0.3%を超えた重量で線材111aの外表面上に形成されてもよいが、内線カバー層112の重量および厚さが増すに従って医療用縫合糸100の硬さが硬くなるまたは曲げ難くなるなどの特性が現れる。
すなわち、内線カバー層112は、線材111aの総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量の範囲内で線材111aの外表面上に形成されることで医療用縫合糸100の硬化を抑えて柔軟性を保つことができる。この場合、内線カバー層112の厚さは、医療用縫合糸100の用途または使用者の好みに応じて設定される。本実施形態においては、内線カバー層112は、線材111aの総重量の0.1%の重量で線材111aの外表面上に形成される。なお、内線カバー層112は、線材111aの総重量の0.1%以上かつ0.3%未満の重量の範囲内で形成されることで、内線カバー層112を線材111aの総重量の0.1%未満で形成する場合に比べて容易に形成することができる。
外層糸120は、前記した芯糸110の外表面を覆った状態で配置される糸であり、複数の極細糸121の集合によって構成されている。本実施形態においては、外層糸120は、複数の極細糸121の集合からなる6つの束を編んで1つの糸に形成して構成されている。これにより、外層糸120は、本実施形態においては、約0.6mmの太さに形成されている。すなわち、本実施形態においては、医療用縫合糸100は、約0.6mmの太さに形成されている。この外層糸120は、芯糸110の外表面を完全に覆った状態で形成されている。
極細糸121は、外層糸120を構成する最小単位の糸であり、樹脂素材、天然素材または金属素材からなる線材121aによって構成されている。この場合、樹脂素材としては、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルまたはポリビニリデンフルオライド(ポリフッ化ビニリデン)などを用いることができる。また、天然素材としては、カトグット(動物の腸を糸にしたもの)または絹糸を用いることができる。また、金属素材としては、ステンレス、チタンまたはマグネシウムなどを用いることができる。
また、極細糸121の太さは、医療用縫合糸100の太さに応じて種々の太さに形成されるが、概ね1μm以上かつ1mm以下に形成される。本実施形態においては、極細糸121は、約10μmの太さのポリエステル製の糸で構成されている。すなわち、極細糸121は、本実施形態においては、極細糸111と全く同一の糸で構成されている。なお、極細糸121は、医療用縫合糸100の仕様に応じて適宜形成されるものであるため、極細糸111と異なる材料および/または異なる線径で構成されてもよいことは当然である。
この極細糸121には、図2に示すように、線材121aの表面に外線カバー層122が形成されている。外線カバー層122は、線材121aの外表面をMPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)で覆った樹脂層である。この場合、外線カバー層122は、MPCのみで構成されていてもよいが、外線カバー層122の構成成分中においてMPCが他の成分に対して最も含有率が高い主成分として含まれるように構成されていてもよい。さらに、外線カバー層122は、MPC以外の樹脂材またはMPC以外の樹脂を主成分とする合成樹脂で構成されていてもよい。本実施形態においては、外線カバー層122は、MPCのみで構成されている。
また、外線カバー層122は、線材121aの外表面を完全に覆った状態で形成されることが好ましいが、線材121aの軸方向および周方向にそれぞれ略均一な形成密度で極細糸121の表面積の50%以上(より好ましくは80%以上)を覆う状態で形成されるとよい。つまり、外線カバー層122は、図3に示すように、線材121aの外表面上に斑に形成されて外表面の一部が露出した状態で形成されていてもよい。なお、ここで、線材121aの軸方向および周方向にそれぞれ略均一な形成密度は、前記内線カバー層112と同様であるため、その説明は省略する。
この外線カバー層122は、線材121aの総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量の範囲内で線材121aの外表面上に形成されている。外線カバー層122は、線材121aの総重量の0.3%を超えた重量で線材121aの外表面上に形成されてもよいが、外線カバー層122の重量および厚さが増すに従って医療用縫合糸100の硬さが硬くなる、曲げ難くなるまたは手触り感としてザラツキ感が増すなどの特性が現れる。なお、外線カバー層122は、線材121aの総重量の0.1%以上かつ0.3%未満の重量の範囲内で形成されることで、外線カバー層122を線材121aの総重量の0.1%未満で形成する場合に比べて容易に形成することができる。
すなわち、外線カバー層122は、線材121aの総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量の範囲内で線材121aの外表面上に形成されることで医療用縫合糸100の柔軟性または滑らかな手触り感を得ることができる。この場合、外線カバー層122の厚さは、医療用縫合糸100の用途または使用者の好みに応じて設定される。本実施形態においては、外線カバー層122は、前記内線カバー層112と同様に、線材121aの総重量の0.1%の重量で線材121aの外表面上に形成される。
すなわち、極細糸121は、本実施形態においては、極細糸111と全く同一に構成されている。なお、極細糸121は、内線カバー層112とは異なる構成の外線カバー層122が形成されていてもよいし、外線カバー層122が省略されて構成されていてもよい。なお、図1においては、医療用縫合糸100の内部構造の理解を容易にするため、1つの極細糸111および1つの極細糸121を抽出して示すとともに内線カバー層112および外線カバー層122の図示を省略している。また、図2および図3においては、極細糸111および極細糸121を共通の1つの図で示している。
(医療用縫合糸100の製造)
次に、この医療用縫合糸100の製造過程について説明する。医療用縫合糸100を製造する作業者は、まず、内線カバー層112が形成されていない極細糸111および外線カバー層122が形成されていない極細糸121をそれぞれ用意する。具体的には、極細糸111,121のベースとなる線材111a,121aをそれぞれ用意する。
この場合、線材111a,121aは、従来の縫合糸を製造する手法によってそれぞれ製造される。したがって、作業者は、極細糸111,121のベースとなる線材111a,121aを自ら製造してもよいが市販されている線材を購入して入手することができる。本実施形態においては、作業者は、11−0号サイズ(約20μm)(薬事法による縫合糸の規格)のポリエステル製の線材111a,121aをそれぞれ用意する。
次に、作業者は、線材111a,121aに対して内線カバー層112および外線カバー層122をそれぞれ形成する。具体的には、作業者は、MPCを含む溶液(例えば、エタノール溶液)に線材111a,121aを浸漬することで各線材111a,121aの表面に内線カバー層112および外線カバー層122をそれぞれ形成することができる。
この場合、作業者は、線材111a,121aを複数集めて束ねた状態、線材111a,121aを環状に巻いたロール状態またはロール状に巻いた線材111a,121aを線状に引き出した状態でMPCを含む溶液に浸漬することができる。また、MPCを含む溶液の濃度および線材111a,121aを浸漬する時間は、形成する内線カバー層112および外線カバー層122の厚さに応じて適宜決定される。
そして、作業者は、MPCを含む溶液から引き上げた線材111a,121aに対して乾燥処理および滅菌処理を行う。これにより、作業者は、線材111a,121aの各外表面にそれぞれ内線カバー層112および外線カバー層122がそれぞれ形成された極細糸111,121を得ることができる。なお、作業者は、線材111a,121a乾燥時に振動を与えたり乾燥温度を高く設定したりすることで、内線カバー層112および外線カバー層122を線材111a,121aの各表面上で斑に形成することができる。
次に、作業者は、芯糸110を形成する。具体的には、作業者が、複数の極細糸111を集めた2つの束を図示しない撚糸機を用いて撚り合わせて一本の芯糸110を形成する。これにより、作業者は、本実施形態においては、芯糸110を約0.27mmの太さに形成することができる。
次に、作業者は、外層糸120を形成する。具体的には、作業者が、図示しない編み機を用いて複数の極細糸121を集めた5つの束を前記芯糸110の外側で編み込んで一本の糸を形成する。すなわち、この外層糸120の形成工程によって芯糸110が外層糸120によって完全に覆われた医療用縫合糸100が形成される。この医療用縫合糸100は、本実施形態においては、約0.6mmの外径に形成されている。
次に、作業者は、医療用縫合糸100を滅菌処理工程、検査工程および包装工程を得て医療用縫合糸100を完成させることができる。この場合、医療用縫合糸100は、円環状に巻かれた状態で包装容器(図示せず)内に収容される。また、医療用縫合糸100は、医療用縫合糸100の先端部に縫合針などの医療器具が連結された状態で包装されてもよい。なお、作業者は、内線カバー層112および外線カバー層122がそれぞれ形成されていない医療用縫合糸100に対して内線カバー層112および外線カバー層122をそれぞれ形成することもできる。
具体的には、作業者は、前記図示しない撚糸機を用いて線材111aを加工して芯糸110を形成した後、前記図示しない編み機を用いて芯糸110の外周部に線材121aを用いて極細糸121を編んで医療用縫合糸100を形作る(つまり、医療用縫合糸100の半製品)。次に、作業者は、前記半製品の医療用縫合糸100をMPCを含む溶液に浸漬する。この場合、作業者は、医療用縫合糸100における芯糸110を構成する各極細糸111(線材111a)まで十分に溶液を浸み込ませる。
この場合、作業者は、MPCを含む溶液内において前記半製品の医療用縫合糸100に加える張力を断続的に変化させることで芯糸110を構成する各極細糸111(線材111a)まで十分に溶液を浸み込ませることができる。これにより、作業者は、線材111a,121aの各外表面に内線カバー層112および外線カバー層122がそれぞれ形成された極細糸111,121からなる医療用縫合糸100を得ることができる。
(医療用縫合糸100の作動)
次に、上記のように構成した医療用縫合糸100の作動について説明する。医者などの使用者は、包装から解いた医療用縫合糸100を縫合針などの医療器具(図示せず)に連結して手術または怪我の治療などの医療行為を行う。また、使用者は、患者の患部に縫合された医療用縫合糸100を抜糸するなどの医療行為を行う。この場合、医療用縫合糸100は、外層糸120のほかに、この外層糸120の内側に配置された芯糸110を構成する各極細糸111の外層としてMPCからなる内線カバー層112が形成されているため、極細糸111同士の摩擦が抑えられる。これにより、使用者は、医療用縫合糸100が屈曲し易くなっていることで医療用縫合糸100の操作が行い易くなる。
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、医療用縫合糸100は、マルチフィラメントの外表面に露出することなく内部に配置された極細糸111の外表面にMPCからなる内線カバー層112が形成されているため、極細糸111同士の摩擦を抑えることで医療用縫合糸100の全体が屈曲し易くなって良好な操作性を確保することができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、医療用縫合糸100は、芯糸110および外層糸120をそれぞれ構成する極細糸111,121にそれぞれ内線カバー層112および外線カバー層122をそれぞれ形成した。しかし、医療用縫合糸100は、医療用縫合糸100の外表面に露出しない極細糸111の外表面に内線カバー層112が形成されていればよい。
したがって、医療用縫合糸100は、芯糸110を構成する極細糸111にのみ内線カバー層112を形成して外層糸120を構成する極細糸121には外線カバー層122を省略して構成することができる。また、医療用縫合糸100は、芯糸110を構成する極細糸111に内線カバー層112を形成して外層糸120のうちの極細糸121の重なりによって外表面に露出しない部分を除いて外表面に露出する部分にのみ外線カバー層122を形成して構成することもできる。
また、上記実施形態においては、医療用縫合糸100は、芯糸110を構成する極細糸111における内線カバー層112と外層糸120を構成する極細糸121における外線カバー層122とを互いに同じ厚さ(極細糸111,121の総重量の0.1%の重量)に形成した。しかし、内線カバー層112と外線カバー層122とは、互いに異なる厚さで形成することができる。
したがって、例えば、内線カバー層112は、外線カバー層122よりも薄く形成することで医療用縫合糸100の外径の大型化を抑えつつ医療用縫合糸100全体の屈曲性を向上させて良好な操作性を確保することができる。また、内線カバー層112は、外線カバー層122よりも厚く形成することで摩耗による内線カバー層112の消失を抑制して長期間に亘って屈曲性を維持することができる。
また、上記実施形態においては、芯糸110は、複数の極細糸111を撚って構成した。具体的には、芯糸110は、複数の極細糸111を集めた2つの束を撚って構成した。しかし、芯糸110は、3つ以上の束を撚って構成することもできる。また、芯糸110は、複数の極細糸111からなる複数の束を編んで構成することができるとともに、複数の極細糸111を互いに直線的に平行配置して構成することもできる。また、芯糸110は、一本の極細糸111によって構成されていてもよい。
また、上記実施形態においては、外層糸120は、複数の極細糸121を編んで構成した。具体的には、外層糸120は、複数の極細糸121を集めた5つの束を編んで構成した。しかし、外層糸120は、4つ以下または6つ以上の束を編んで構成することもできる。また、外層糸120は、複数の極細糸121からなる複数の束を撚って構成することもできる。
また、上記実施形態においては、医療用縫合糸100は、芯糸110の外側に外層糸120を形成して構成した。しかし、医療用縫合糸100は、複数の繊維状の極細糸の集合で一本の糸を構成したマルチフィラメントで構成されていればよい。したがって、医療用縫合糸100は、芯糸110と外層糸120とが明確に区別できない場合であっても、マルチフィラメントの内部に配置されて同マルチフィラメントの外表面に露出しない前記極細糸に内線カバー層112が形成されていればよい。
100…医療用縫合糸、
110…芯糸、111…極細糸、111a…線材、112…内線カバー層、
120…外層糸、121…極細糸、121a…線材、122…外線カバー層。

Claims (5)

  1. 複数の繊維状の極細糸の集合で一本の糸を構成したマルチフィラメントの医療用縫合糸であって、
    前記極細糸は、
    前記マルチフィラメントの内部に配置されて同マルチフィラメントの外表面に露出しない前記極細糸の外表面に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる内線カバー層が形成されており、
    前記内線カバー層は、
    前記極細糸を構成して前記内線カバー層が形成される線材の総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量で、かつ、前記線材の外表面における一部を露出させた状態で前記線材の軸方向および周方向にそれぞれ均一な形成密度で前記線材の表面積の50%以上を覆う状態で形成されていることを特徴とする医療用縫合糸。
  2. 複数の繊維状の極細糸の集合で一本の糸を構成したマルチフィラメントの医療用縫合糸であって、
    前記極細糸は、
    前記マルチフィラメントの内部に配置されて同マルチフィラメントの外表面に露出しない前記極細糸の外表面に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる内線カバー層が形成されており、
    前記内線カバー層は、
    前記極細糸を構成して前記内線カバー層が形成される線材の総重量の0.05%以上かつ0.3%未満の重量で、かつ、前記線材の外表面を完全に覆った状態で形成されていることを特徴とする医療用縫合糸。
  3. 請求項1または請求項2に記載した医療用縫合糸において、
    前記マルチフィラメントは、
    複数の前記極細糸の集合で構成されて前記マルチフィラメントの中心部に配置された芯糸と、
    前記芯糸の外側に配置されて前記芯糸を露出させることなく覆う外層糸とを備え、
    前記内線カバー層は、
    前記芯糸を構成する前記極細糸に形成されていることを特徴とする医療用縫合糸。
  4. 請求項3に記載した医療用縫合糸において、
    前記芯糸は、前記複数の極細糸を編んだ編み糸または撚った撚糸で構成されていることを特徴とする医療用縫合糸。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した医療用縫合糸において、
    前記マルチフィラメントの外表面に露出する前記極細糸の外表面に前記2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)からなる外層カバー層が形成されており、
    前記内線カバー層は、
    前記外層カバー層よりも厚さが薄く形成されていることを特徴とする医療用縫合糸。
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