JP6895784B2 - 水電解装置、水電解システム、水電解・燃料電池装置及び水電解・燃料電池システム - Google Patents

水電解装置、水電解システム、水電解・燃料電池装置及び水電解・燃料電池システム Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子形の水電解セルを用いた水電解装置、水電解システム、並びに、固体高分子形の水電解燃料電池一体型セルを用いた水電解・燃料電池装置及び水電解・燃料電池システムに関するものである。
従来から、電解質膜の両側に給電体を配置してさらにセパレータを各々の外側に配置した固体高分子形の水電解セルを、複数積層して水電解装置として利用されている(特許文献1)。
より詳述すると、特許文献1の技術は、水電解の原料水を水流路に均等に分配して水流路全体に原料水を均一且つ確実に供給して水電解処理を行うことを目的としており、そのため水電解セルは水平に配置し、かつこれを鉛直方向に積層した構成を有している。具体的には、水供給連通孔と水流路とを連通する複数の入口連結流路が設けられるとともに、前記水供給連通孔は、前記複数の入口連結流路が開口する連通孔内側壁面及び前記連通孔内側壁面に対向する連通孔外側壁面が長尺な開口断面長円形状を有するようにしている。
これによって、原料水は、長円形状の水供給連通孔から複数の入口連結流路に均等に分岐された後、水流路に供給され、当該水流路では、特に水供給連通孔に近接する中央側に、水が優先的に流れることを阻止するようにしていた。その結果、水流路内で圧力損失のばらつきが発生することを抑え、水流路全域に水を均等に分配することになるというものである。
特開2011−127209号公報
しかしながら、前記した従来技術は、水電解の原料水を水流路に均等に分配して水流路全体に原料水を均一且つ確実に供給して水電解処理を行うことを目的としてはいるが、各流路の長さに基づく圧力損失については格別示唆することはなく、また原料水を各水電解セルに対して大量に流すためには、別途原料水を供給するポンプの圧力を上げるなどする必要があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ポンプの動力を抑えつつ水電解の原料水を大量にセルの反応領域に流して、好適な水電解処理を行うことを目的としている。
前記目的を達成するため、本発明は、電解質膜の両側に給電体を配置してさらにセパレータを各給電体の外側に配置した固体高分子形の水電解セルを、複数積層した水電解装置であって、前記固体高分子形の水電解セルは長方形であって、かつ当該水電解セルは横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層されており、前記長方形の各水電解セルの下側の長辺側に、水供給のための連通口が配置され、各水電解セルの上側の長辺側に、電解水と酸素ガスの排出用の連通口が配置され、前記長方形の各水電解セルの短辺側に、水素ガス排出用の連通口が配置されていることを特徴としている。
別な観点による本発明は、電解質膜の両側に給電体を配置してさらにセパレータを各給電体の外側に配置した固体高分子形の水電解セルを、複数積層した水電解装置であって、
前記固体高分子形の水電解セルは長方形であって、かつ当該水電解セルは横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層されており、
前記長方形の各水電解セルの下側の長辺側に、水供給のための連通口が配置され、各水電解セルの上側の長辺側に、電解水と酸素ガスの排出用の連通口が配置され、
前記長方形の各水電解セルの1の短辺側の端部近傍に、水素ガス排出用の連通口が配置されていることを特徴としている。
さらにまた前記セパレータには、縦方向、横方向のいずれにも流体が流通可能な流路が形成されているものを用いることが好ましい。このようなセパレータとしては、その構成材としてたとえば、エンボス加工されたプレート、メッシュ、パンチングメタル等の公知のものを使用することができる。
またさらに別な観点によれば、本発明は、そのような水電解装置を用いた水電解システムであって、当該水電解装置に対して(直接的には、電解質膜の両側に給電体に対して)直流電力を供給する電源装置と、前記水電解装置に原料水を供給する原料水供給路と、前記水電解装置で発生した水素ガスをシステム外に放出する水素ガス放出路と、前記水電解装置で発生した酸素ガスをシステム外に放出する酸素ガス放出路と、を有することを特徴としている。
さらに前記した水電解方法、水電解装置、水電解システムで採用した水電解セルの特徴に鑑み、さらに以下の発明を提案できる。
すなわち、電解質膜の両側に給・集電体を配置してさらにセパレータを各給・集電体の外側に配置した、固体高分子形の水電解燃料電池一体型セルを、複数積層した水電解・燃料電池装置であって、前記固体高分子形の水電解燃料電池一体型セルは長方形であって、かつ当該水電解燃料電池一体型セルは横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層されており、前記長方形の各水電解燃料電池一体型セルの下側の長辺側に、水電解運転の際の原料水供給のための連通口、及び冷却水供給のための連通口が配置され、各水電解燃料電池一体型セルの上側の長辺側に、水電解運転の際の電解水と酸素ガスの排出用の連通口が配置され、各水電解燃料電池一体型セルの短辺側に、水電解運転の際の水素ガス排出用の連通口、及び燃料電池運転の際の水素ガス供給用の連通口、及び空気または酸素ガス供給用の連通口が形成されていることを特徴とする、水電解・燃料電池装置が提案できる。
この場合、前記セパレータには、縦方向、横方向のいずれにも流体が流通可能な流路が形成されているものを用いることが好ましい。このセパレータは、前記したような、たとえば、エンボス加工されたプレート、メッシュ、パンチングメタル等の公知のものを使用することができる。
さらにまたかかる水電解・燃料電池装置において、水電解燃料電池一体型セルの短辺側に、空気又は酸素ガス、及び反応生成水が排出される連通口が形成され、水電解燃料電池一体型セルの電極面の最下部よりも、空気又は酸素ガス、及び反応生成水が排出される連通口の最下部の方が下方に位置しているようにしてもよい。
そのような水電解・燃料電池装置を用いた水電解・燃料電池システムとして、例えば次のようなものを提案できる。すなわち、前記水電解・燃料電池装置に直流電力を供給する電源装置と、前記水電解・燃料電池装置に原料水を供給する原料水供給路と、前記水電解・燃料電池装置で発生した水素ガスをシステム外に放出する水素ガス放出路と、前記水電解・燃料電池装置で発生した酸素ガスをシステム外に放出する酸素ガス放出路と、前記水電解・燃料電池装置に水素ガスを供給する水素ガス供給路と、前記水電解・燃料電池装置に酸素ガスまたは空気を供給するガス供給路と、前記水電解・燃料電池装置で発生した水をシステム外に放出する酸素ガス放出路と、を有することを特徴とする、水電解・燃料電池システムである。
本発明によれば、原料水を供給するポンプの動力を抑えつつ原料水を大量にセルの反応領域に流すことが可能であり、好適な水電解処理を行うことが可能である。
実施の形態にかかる水電解セルスタックを組み入れた水電解システムの系統の概略を示した説明図である。 実施の形態にかかる水電解セルスタックで使用された水電解セルの分解斜視図である。 実施の形態にかかる水電解セルスタックにおける酸素極側セパレータ上に流れる流体の様子を示す酸素極側セパレータの正面図である。 実施の形態にかかる水電解セルスタックにおける水素極側セパレータ上に流れる流体の様子を示す水素極側セパレータの正面図である。 実施の形態にかかる水電解・燃料電池セルのスタックを組み入れた水電解・燃料電池システムの系統の概略を示した説明図である。 実施の形態にかかる水電解・燃料電池セルのスタックで使用された固体高分子形の一体型セルにおける、水電解運転時の流体の流れる様子を示す分解斜視図である。 実施の形態にかかる水電解・燃料電池セルのスタックで使用された固体高分子形の一体型セルにおける、燃料電池運転時の流体の流れる様子を示す分解斜視図である。 電極の縦横比に対する流路圧損の倍率を示すグラフである。 固体高分子形の一体型セルにおけるセパレータにおいて、空気及び反応生成水が排出される連通口が、電極面の最下部及びシール材における下方側の最上部よりも、下側まで位置するように設定した様子を示す正面側の説明図である。
本発明の実施の形態について説明すると、図1は実施の形態にかかる水電解システム1の構成の概略を示しており、この水電解システム1においては、図2に示される固体高分子形の水電解セル(単位セル)10を鉛直方向に正立させた状態で、複数枚直列に水平方向に接続、積層し、両側からエンドプレート11、12で挟持することによって構成された、水電解装置としての水電解セルスタック13を有している。
水電解セル10は、図2に示したように、電解質膜を両側から集電体で挟持した構成を有する電極体21、及びこの電極体21を両側から挟持する水素極側のセパレータ31、酸素極側のセパレータ41を有している。
電極体21、水素極側のセパレータ31、酸素極側のセパレータ41には、夫々中央に、電極部分22、当該電極部分22に対応する領域32、42を有している。そして電極部分22、領域32、42外側の上下に、連通口23、24、33、34、43、44が形成されている。これら連通口23、24、33、34、43、44は、電解水、及び水電解によって発生した酸素ガスのマニホールドとして機能する。連通口23、24、33、34、43、44の水平方向の長さは、電極部分22、領域32、42と同一の長さに設定されている。
また電極体21、水素極側のセパレータ31、酸素極側のセパレータ41における夫々中央の電極部分22、電極部分22に対応する領域32、42の外側の一側下方(本実施の形態では、図2中の右側下方)には、水電解の際に発生する水素ガスのマニホールドとして機能する縦長の連通口25、35、45が夫々形成されている。
そして水素極側のセパレータ31についていうと、連通口33、34の背面の外周には、夫々連通口33、34を独立して囲むようにシール材36、37(破線で示す)が配置されている。また中央の領域32の背面と連通口35の背面を一緒に囲むようにシール材38(破線で示す)が配置されている。また酸素極側のセパレータ41についていうと、中央の領域42と連通口43、44を一緒に囲むようにシール材46が配置され、連通口45のみを独立して囲むように、シール材47が連通口45の外周に設けられている。これらシール材36〜38、46、47によって、所定の経路以外に各流体が流れ出ることが防止されている。
また本実施の形態においては、水素極側のセパレータ31及び酸素極側のセパレータ41における、反応流路となる少なくとも中央の領域32、42には、一般的なストレート流路やサーペンタイン流路を構成する材料とは異なり、表面に多数の凹凸が形成されるようなエンボス加工されたプレート、メッシュ、パンチングメタル等からなる材料が使用されている。これによって、水素極側のセパレータ31及び酸素極側のセパレータ41セパレータには、縦方向、横方向のいずれの方向にも流体が流通可能な流路が形成される。
以上の構成にかかる水電解セル(単位セル)10が、既述したように、複数枚、鉛直方向に正立させた状態、かつ図2に示したように、横長の状態で複数枚水平方向に直列に接続、積層され、両側からエンドプレート11、12で挟持されて、水電解セルスタック13が構成されている。
次に図1に戻って、この水電解セルスタック13が採用された水電解システム1について説明する。水電解セルスタック13の純水入口ポートP1には、原料水となるたとえば純水が供給される。具体的には、水電解セルスタック13の原料水入口となる純水入口ポートP1に対しては、酸素側の気液分離機能を有するタンク51から原料水(純水)が供給されて、水電解運転がなされる。
より詳述すると、タンク51の底部と水電解セルスタック13の純水入口ポートP1との間には、配管52が接続されている。そして配管52に設けられたポンプ53によって、水電解セルスタック13の純水入口ポートP1に対して、タンク51から原料水としての純水が供給されるようになっている。配管52には、ポンプ53の下流側において逆止弁54が設けられ、さらにその下流側には、配管52内の圧力を計測する圧力計55が設けられている。純水入口ポートP1は、前記各水電解セル10における既述した、図2に示す連通口24、34、44と連通している。
配管52には、ポンプ53の下流側において、配管52内を流れる水の一部をタンク51に戻すための戻し管56が接続されており、この戻し管56には、流量調整弁V1、熱交換器57、イオン交換樹脂塔58、フィルタ59が設けられており、これらの装置を通じて戻し水が処理されることで、タンク51内の水の水質が維持される。なおタンク51内には、タンク内の水の水位を検出する液面センサ51aが設けられている。またタンク51内には、液面センサ51aからの信号に基づいて、外部の純水供給源(図示せず)から、配管60を通じて適宜原料水となる純水の補充がなされる。またタンク51内の気層部に滞留する酸素ガスは、配管63を通じて外部や外部の需要先へと放出される。
配管52を通じて純水入口ポートP1から水電解セルスタック13に供給された原料水は、水電解セルスタック13において電気分解され、酸素、並びに酸素に随伴する水が、酸素側の出口となる純水出口ポートP2から配管61を通じて、タンク51に戻され、タンク51内にて気液分離される。配管61には、配管61内の圧力を計測する圧力計62、及び電磁弁V2が設けられている。純水出口ポートP2は、前記各水電解セル10における既述した、図2に示す連通口23、33、43と連通している。
水電解セルスタック13の水素側出口となる水素出口ポートP3には、配管71が接続され、この配管71は、水素側の気液分離機能を有するタンク72に通じている。水素出口ポートP3は、前記各水電解セル10における既述した図2に示す、連通口25、35、45と連通している。
タンク72とタンク51の気層部(タンク内において貯留する水の液面より上の部分であり、貯留する液面が上昇しても、液面が達することのない部分)との間には、配管73が接続されている。配管73には、電磁弁V3、バルブV4が設けられている。タンク72内には、タンク内の水の水位を検出する液面センサ72aが設けられている。
前記したように、水電解によって発生した水素は、随伴水と共に、配管71を通じてタンク72に送られ、タンク72内において気液分離される。タンク72において気液分離された後の水素ガスは、配管74を通じて、たとえば需要側や水素貯蔵タンク(高圧容器、図示せず)へ送られる。配管74には背圧弁V5が設けられ、また配管74における背圧弁V5の上流側には、放出管75が接続され、放出管75には、電磁弁V6が設けられている。
そして水電解セルスタック13には、直流電源2が接続されており、その出力に応じて純水入口ポートP1から供給された電解用の純水が水素イオン、酸素イオンに電気分解される。そのうち酸素イオンは水電解セル10内の触媒上で酸素分子となり、前記したように、純水と共に純水出口ポートP2からセル外に排出され、一方電気分解によって発生した水素イオンは、随伴水を伴って水電解セル10内の水素側に移動し、水素側触媒上で水素分子となって水素出口ポートP3からセル外に排出される。
以上の構成にかかる水電解システム1によれば、直流電源2からの電力によって、純水入口ポートP1から水電解セルスタック13の各水電解セル10に供給された純水は、各水電解セル10において、水の電気分解が行なわれ、酸素分子は純水とともに純水出口ポートP2からセル外に排出されるのであるが、このとき、図3に示したように、酸素極側のセパレータ41では、純水入口ポートP1と連通している下方の連通口44から、純水出口ポートP2と連通している上方の連通口43へと原料水である純水が流れて行く。一方、水素極側のセパレータ31では、図4に示したように、発生した水素ガスが、中央の領域32を斜め方向から連通口35に向かって流れて行く(図中の矢印)。
ここで水電解セル10の反応流路に求められる主な要件は、ポンプ53の動力の低減や、流路上下流の圧力差低減の観点から酸素極の反応流路圧損が低いことと、並びに電極面まで純水を十分に供給したり、セルの冷却機能を確保すること、さらにはボイド率(純水中の気泡の割合)の上昇による流路下流での水枯れ防止の観点から供給純水流量を十分確保できることである。
この点に照らして図3に示した酸素極側のセパレータ41における反応流体の流れをみれば、下方の連通口44から、上方の連通口43へと原料水である純水が流れて行き(図中の矢印)、電極部分22と対応する中央の領域42で発生した酸素分子は、水電解されなかった電解水(水電解に供された純水)とともに、上方の連通口43から純水出口ポートP2へと流れて行く。したがって、同一反応面積の下で考えると、実施の形態で示したように、領域42、及びセパレータ41が横長の長方形であり、しかも純水の供給口となる連通口44は、長辺側に沿って配置されて供給口が長手方向に亘っているから、連通口44の長さを長く確保することができ、原料水である純水を大量に領域42に流すことができる。しかもその流路長は短辺方向であるから、電極部分22に対応する領域32、42を流れるときの反応流路の圧損も低く抑えられている。
一方、この水電解セル10では、供給した電解水がセルの冷却の役割も担うため、そのように供給純水流量を多くできるということは、セルの冷却にも有利である。電解水の流量が少ないと、反応の際に発生する熱を十分取り除けなくなり、異常過熱してセルが破損する恐れがある。また冷却が不十分の場合、水電解セル10の上流、下流で大きな温度変化が発生することがあるが、実施の形態の水電解セル10によれば、供給純水流量を多くでき、しかも流路長が短いので、そのような事態を抑えることができる。
なお、実施の形態の水電解セル10では、システムの簡素化のために、水素ガス排出用には1か所の連通口25、35、45のみを設けたが、水素ガスの排出性を高めたければ、電極部分22、領域32、42の両側に水素出口ポートP3と連通する連通口を適宜増加して設ければよい。
また水素ガス排出用の連通口の垂直方向の位置は、電極面下部から上部を完全に覆うように、縦長に全面にしてもよい(すなわち、セパレータ31、41の短辺にほぼ相当するように長さを設置するようにしてもよい)。但し、その場合には運転中に、当該連通口部分に大量の水素が滞留することになり、水電解セルスタック13内の水素ガス量が多くなる。したがって安全性の観点からは水素ガス排出用の連通口35のサイズを小さくし、水電解セルスタック13内に滞留する水素の量を減らした方がよい。
その配置の仕方としては、たとえば、連通口35を電極面の下側部分のみに設け、当該連通口35に通ずる外部配管71を、電極面22の下端よりも低い位置に設け、酸素極側からの配位水をスムーズに排出できるようにしてもよい。また、電解質膜の湿潤状態を少しでも確保するために、連通口35を電極面22の上側部分に設け、外部配管71を電極面22の上端よりも高い位置に設けて電極面22を水没させるようにしてもよい。
以上は、固体高分子形の水電解セル10を用いた水電解システム1についての例であったが、固体高分子形の水電解セルと燃料電池セルを一体化した固体高分子形の一体型セル(水電解燃料電池一体型セル、一体型セル、可逆セルとも呼称される)については、これまで下記のような問題があった。
すなわち、固体高分子形の一体型セルは、固体高分子形の水電解セルと燃料電池セルを一体化して、双方の機能を1つのセルで選択的に発揮させるエネルギー変換器であるが、前記したように、水電解セルでは、酸素発生極の反応流路に純水を供給し、外部から電力を供給することで純水を電気分解するものである。そして固体高分子製の隔膜で隔離された酸素発生極には酸素が、水素発生極には水素が発生する。発生した水素は水素発生極の反応流路を通ってセル外に排出され、必要に応じて貯蔵容器に貯蔵したり、直接水素需要に供給される。このとき、酸素発生極の反応流路に供給された純水は全てが水素と酸素に分解されるわけではなく、分解されなかった純水は発生した酸素と一緒に反応流路を通ってセル外に排出される。
一方、燃料電池セルでは、水素極(水電解セルの水素発生極;以降、「水素極」と言うことがある)の反応流路に水素を、酸素極(水電解セルの酸素発生極;以降、「酸素極」と言うことがある)の反応流路に空気や酸素など酸素を含むガスを、必要に応じて加湿した状態で供給し、外部に負荷を接続することで発電する。
このような発電に伴って、酸素極では水が生成し、反応に使われなかった空気や酸素と共に反応流路を通ってセル外に排出される。水素極側についてもセル内で発生する水が、反応に使われなかった水素と共に反応流路を通ってセル外に排出される。
通常の水電解セルや燃料電池セルは、既述した水電解セルと同様、単位セルを複数積層したスタックの形状をしているため、セル外部から反応流体を各極に供給したり、各極から反応流体をセル外部に排出するときには、セル外部と反応流路を繋ぐマニホールドとして機能する連通口を介して行われる。この連通口は、従来は水電解セルと燃料電池セルの各極で共通となっている(例えば特開2006−127807)。
ここで水電解セルの反応流路に求められる主な要件は、先にも述べたように、ポンプ動力の低減や、流路上下流の圧力差低減の観点から酸素極の反応流路圧損が低いことと、電極面まで純水を十分に供給したりセルの冷却機能の確保、ボイド率の上昇による、流路下流での水枯れ防止の観点から供給純水流量を多くできることである。一方、燃料電池セルの反応流路に求められる主な要件は、電極面への酸素の拡散性向上や、発生水による反応流路の閉塞を防ぐ観点からの、酸素極の反応流路内の流速を速めることである。
この場合、水電解セルの酸素極反応流路に求められる要件を確保するには、流路断面積を大きくする必要があるが、燃料電池セルの酸素極反応流路に求められる要件を確保するには、流路断面積を小さくする必要がある。また、水電解セルの酸素極に供給する純水と、燃料電池セルの酸素極に供給する加湿空気(酸素)では、密度が約1,000倍異なる。このため、仮に純水と加湿空気を同一流量で流した場合には、水を流した時の圧力損失の方が圧倒的に大きくなる。つまり、双方の反応流路、特に酸素極の反応流路に求められる要件には相反するものがあり、それをいかに満足させるかが重要である。
この点に関し、従来は、水電解と燃料電池のうち、より重要な機能の方に合わせて反応流路を設計したり、双方のニーズの中間点辺りで反応流路を設計していた。そのため、双方にとって最適な反応流路設計はなされていなかった。
かかる点に鑑み、以下に、これまで水電解セルと燃料電池セルで共通に使用していた酸素極の連通口(マニホールドとして機能する)を、水電解セルの酸素極の連通口(マニホールドとして機能する)と燃料電池セルの酸素極の連通口(マニホールドとして機能する)を、それぞれ専用に設けて、そのような問題の解決を図る実施の形態について説明する。
図5は実施の形態にかかる水電解・燃料電池システム101の構成の概略を示しており、この水電解・燃料電池システム101においては、図6に示される固体高分子形の一体型セル(単位セル)110を鉛直方向に正立させた状態で、複数枚、水平方向に直列に接続、積層し、両側からエンドプレート111、112で挟持することによって構成された、水電解・燃料電池セルのスタック113を有している
図6は、実施の形態にかかる水電解セルと燃料電池セルが一体化された一体型セル110を示している。なお図6は、後で水電解運転時の流体の流れを説明する際の流体の流れも併せて示している。
一体型セル110は、電解質膜を両側から給・集電体で挟持した構成を有する電極体121、及びこの電極体121を両側から挟持する水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141を有している。
電極体121、水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141には、夫々中央の電極部分122、この電極部分122に対応する領域132の背面、142の外側に、下記に述べる種々の連通口が設けられている。
まず、長方形の電極体121、水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141における電極部分122、電極部分122に対応する領域132、142の外側の両側には、水素極連通口123a、123b、133a、133b、143a、143bが設けられている。また同様に、長方形の電極体121、水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141における電極部分122、電極部分に対応する領域132、142の外側の両側には、燃料電池用の酸素極連通口124a、124b、134a、134b、144a、144bが設けられている。
一方、長方形の電極体121、水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141における電極部分122、電極部分122に対応する領域132、142の外側の下方には、各々冷却水用連通口125a、酸素極連通口126a、冷却水用連通口135a、酸素極連通口136a、冷却水用連通口145a、酸素極連通口146aが交互に設けられている。また電極体121、水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141における、電極部分122、電極部分122に対応する領域132、142の外側の上方には、各々酸素極連通口126b、冷却水用連通口125b、酸素極連通口136b、冷却水用連通口135b、酸素極連通口146b、冷却水用連通口145bが交互に設けられている。
そしてこれら水素極側のセパレータ131、酸素極側のセパレータ141の各連通口の周囲には、下記に述べるようにシール材が配置されている。まず、水素極側のセパレータ131について言うと、酸素極連通口134a、134bの外周には、各々独立して各連通口を囲むシール材137(破線で示す)が配置されている。また水素極連通口133a、133b及び中央の領域132の周囲には、これらを一体的に囲むシール材138(破線で示す)が配置されている。そして、冷却水用連通口135a、135b及び酸素極連通口136a、136bの外周には、各々独立してこれらを囲む、シール材139(破線で示す)が配置されている。
一方、酸素極側のセパレータ141についていうと、燃料電池用の酸素極連通口143a、143bの周囲には、各々独立して各連通口を囲むシール材147が配置されている。また冷却水用連通口145a、145bの周囲には、各々独立して各連通口を囲むシール材148が配置されている。そして残りの酸素極連通口146a、146b及び中央の領域142については、これらを一体にして囲むシール材149が配置されている。
これらシール材137〜139、147〜149によって、所定の経路以外に各流体が流れることが防止されている。また本実施の形態では、水素極側のセパレータ131及び酸素極側のセパレータ141における、反応流路となる、少なくとも中央の領域132、142には、一般的なストレート流路やサーペンタイン流路を構成する材料とは異なり、エンボス加工、メッシュ、パンチングメタル等からなる材料が使用されている。これによって、これによって、水素極側のセパレータ131及び酸素極側のセパレータ141には、縦方向、横方向のいずれの方向にも流体が流通可能な流路が形成される
次に図5に戻って、この一体型セル110を積層した水電解・燃料電池セルのスタック113が採用された水電解・燃料電池システム101について説明する。図5において、図1で説明した際に使用した符号と同一の符号によって特定される部材、装置等の構成は、図1の水電解システム1と同一の部材、装置等の構成を示しているので、重複した説明は省略する。
この水電解・燃料電池システム101に採用された一体型セル110は、既述したように、マニホールドとして機能する連通口の種類が多いので、各連通口に連通する水電解・燃料電池セルのスタック113に設けられたポートの数も多くなっている。すなわち、まず純水入口ポートP1は、酸素極連通口126a、136a、146aに連通し、純水出口ポートP2は、酸素極連通口126b、136b、146bと連通し、水素出口ポートP3は水素極連通口123b、133b、143bと連通している。そして水電解・燃料電池システム101は燃料電池運転が可能であるから、原料ガスとなる水素ガスの導入口となる水素入口ポートP4が新たに設けられている。
水素入口ポートP4は、水素極連通口123a、133a、143aと連通している。さらに燃料電池用の酸素極連通口124a、134a、144aと連通する空気入口ポートP5が設けられ、燃料電池用の酸素極連通口124b、134b、144bと連通する空気出口ポートP6が設けられている。またさらに、冷却水用連通口125a、135a、145aと連通する冷却水出口ポートP7、冷却水用連通口125b、135b、145bと連通する冷却水入口ポートP8が新たに設けられている。
水素入口ポートP4には、流路151が接続されており、水素ガス供給源(図示せず)からの水素ガスが、水素入口ポートP4に導入可能である。流路151には、調整弁V7、電磁弁V8、圧力計152が設けられている。そして流路151における電磁弁V8の下流側には、タンク72の気層部に通ずる流路153が接続されている。流路153には、水素ポンプ154が設けられている。
空気入口ポートP5には、ブロワ161によって供給される空気が、湿度交換器162を経て導入される流路163が接続されている。流路163には逆止弁164が設けられている。空気出口ポートP6には、流路165が接続されており、水電解・燃料電池セルのスタック113から出た空気を、湿度交換器162を経て外部に放出されるようになっている。流路165には、電磁弁V9が設けられている。
冷却水出口ポートP7には、配管181が接続されており、昇温した冷却水は、水素ポンプ182によって、熱交換器183送られて、外部からの冷却用水と熱交換され降温した後、配管184を通じて、冷却水入口ポートP8から水電解・燃料電池セルのスタック113内に導入されるようになっている。なお冷却用水の水源は、例えば水道水等の市水、地下水等を用いることができる。また熱交換後に昇温した冷却用水は、適宜温熱の需要先に供給するようにしてもよい。
また水電解・燃料電池セルのスタック113には、直流電源2以外に、電力需要先となる電力負荷3が接続されている。
水電解・燃料電池システム101は以上のように構成されており、次にその運転方法について説明する。
[水電解運転]
まず電磁弁V2を開、それ以外の電磁弁V3、V6、V8、V9を閉とする。タンク51に貯留されている純水は、ポンプ53を起動することで配管52を通って、水電解・燃料電池セルのスタック113の純水入口ポートP1に供給される。純水入口ポートP1は酸素極連通口126a、136a、146aと連通しており、図6に示したように、酸素極側のセパレータ141では、これら酸素極連通口126a、136a、146aから中央の領域142を通って、酸素極連通口126b、136b、146bを経て、純水出口ポートP2から水電解・燃料電池セルのスタック113外へと排出され、配管61からタンク51へと返水される。
この状態で直流電源2から水電解・燃料電池セルのスタック113に直流電力を供給すると、酸素極の電極上でプロトン(H)と酸素が発生する。発生したプロトン(H)は電極体121の中を酸素極から水素極へ配位水を伴って移動し、図6に示したように、セパレータ131の領域132を通って、水素極連通口133bを通って、水素出口ポートP3から、水電解・燃料電池セルのスタック113外に排出される。そしてタンク72において、気液分離された水素ガスは、配管71を通って背圧弁V5に送られ、そこで圧力調整された後に、システム外の水素需要先や水素貯蔵タンク(図示せず)に送られる。
タンク72で分離された純水は、配管73を通って水素側と酸素側の圧力差を利用してタンク51に送水される。タンク72の純水をタンク51に送水するにあたっては、既存の公知技術を使用すればよい。
一方、水電解・燃料電池セルのスタック113で発生した酸素は、分解されなかった純水と共に、連通口126b、136b、146bから純水出口ポートP2を経由して、配管61を通ってタンク51に返水される。タンク51で気液分離された酸素ガスは配管63を通ってシステムの系外に放出される。なお、酸素ガスが必要な場合には、酸素貯蔵タンク(図示せず)を別途設け、当該酸素貯蔵タンクに送るようにしてもよい。タンク51で分離された純水は、再び電解用の純水として水電解・燃料電池セルのスタック113に供給される。
なお既述したように、配管181、184は冷却水系統であり、電解に伴い発生する熱を取り除く役割を果たす。取り除いた熱は、既述したように、熱交換器183を介して温熱需要に供給しても良い。但し、水電解運転の場合には、電気分解用の電解水(純水)で冷却できるため、冷却水は循環しなくてもよい。
[燃料電池運転]
次に燃料電池運転の場合について説明する。燃料電池運転時には、電磁弁V8、V9を開、それ以外の電磁弁V2、V3、V6を閉とする。水素側では、調整弁V7で圧力調整された水素が流路151を通って水素入口ポートP4に供給される。水素入口ポートP4に供給された水素は、図7に示したように、連通口123a、中央の電極部分122、水素極連通口123bを通って水素出口ポートP3からセル外に排出される。ここで水素ポンプ154を起動することで、排出された水素ガスは水素ポンプ154に吸い込まれ、再び水電解・燃料電池セルのスタック113に供給される。
一方酸素側では、ブロワ161を起動することで大気中から空気が吸い込まれ、湿度交換器162で適宜加湿された後、配管163を通って、空気入口ポートP5から水電解・燃料電池セルのスタック113内に供給される。空気入口ポートP5は、酸素極連通口144aと連通しているので、酸素極連通口144aから中央の領域142を通って連通口144bから、空気出口ポートP6から水電解・燃料電池セルのスタック113外に排出される。そして配管165、湿度交換器162を通って大気に排気される。この状態で外部の電力負荷3との接続をONにすると、水素極の電極上で水素がプロトンに分解され、酸素極の電極上でプロトンと酸素が結合して水と電気が発生する。発生した電気は電力負荷3に供給されることになる。
このような燃料電池運転の反応に使われなかった水素ガスは、水素極連通口123bを通じて、水素出口ポートP3から水電解・燃料電池セルのスタック113外に排出され、配管71を通ってタンク72に供給される。そしてタンク72で気液分離された水素ガスは水素ポンプ154により再び水電解・燃料電池セルのスタック113に供給される。反応で消費された分の水素は、調整弁V7の機能により、適宜外部から一定圧力で供給される。
他方、反応に使われなかった空気と反応生成水は、連通口144bを通って、空気出口ポートP6から水電解・燃料電池セルのスタック113外に排出される。そして配管165を経由して湿度交換器162に送られる。湿度交換器162では、ブロワ161から送られる空気を加湿した後に、配管165から系外に排気される。したがってブロワ161から送られる空気は、低湿度のものであっても、湿度交換器162で十分加湿されてから、水電解・燃料電池セルのスタック113に供給される。なお、燃料電池運転を行う場合には、配管181、184によって構成されている冷却水系統の冷却水の循環は必須である。
なお、水電解運転から燃料電池運転へと運転切り替えをするときは、まず直流電源2からの電力供給を停止する。次に、水素側については電磁弁V6を開とし、水素系全体の圧力を外部に放出して系内圧力を常圧近傍まで低下させる。酸素側については、ポンプ53を停止し、電磁弁V2を閉、電磁弁V9を開としてから、ブロワ161を起動して、電極体121の電極部分122やその周辺に残存した純水を、連通口144bから、空気出口ポートP6を経由して水電解・燃料電池セルのスタック113外へと排出する。その後の水電解・燃料電池セルのスタック113内の乾燥方法については、適宜従来技術を適用すればよい。
また、燃料電池運転から水電解運転へと運転の切り替えにあたっては、まず電力負荷3との接続を切断する。次に水素側については水素ポンプ154を停止してから、電磁弁V8を閉とする。酸素側については、ブロワ161を停止してから電磁弁V9を閉とする。その後は通常通り水電解運転を起動すればよい。
以上のような水電解運転、燃料電池運転に関し、従来の一体型セルの場合、既述したように、水電解運転時と燃料電池運転時では、酸素極の連通口を共通に使用していたため、水電解運転時と燃料電池運転時で反応流体を流すときの流路断面積と流路長が、どちらの運転モードにおいても同一であった。そのため、先に述べたように、双方の反応流路に求められる要件を満足することは不可能であった。
これに対し、実施の形態にかかる一体型セル110を使用した例では、水電解運転時と燃料電池運転時では、流路断面積も流路長も大幅に変えることが可能になっている。
すなわち、水電解運転時では、図6に示したように、酸素極側のセパレータ141における反応流体の流れをみれば、下方の酸素極連通口146aから、上方の酸素極連通口146bへと原料水である純水が流れて行き(図中の矢印)、電極部分122と対応する中央の領域142で発生した酸素分子は、水電解されなかった電解水(水電解に供された純水)とともに、上方の酸素極連通口146bから純水出口ポートP2へと流れて行く。したがって、同一反応面積の下で考えると、実施の形態で示したように、領域142、及びセパレータ141が横長の長方形であり、しかも純水の供給口となる酸素極連通口146aは、長辺側に沿って配置されて供給口が長手方向に亘っているから、供給口を多く確保することができ、原料水である純水を大量に電極部分122、領域142に流すことができる。しかもその流路長は短手方向であるから、反応流路における圧損も低く抑えられている。
一方、燃料電池運転時では、酸素極反応流路に求められる要件を確保するには、流路断面積を小さくする必要があるが、図7に示したように、空気については、長方形の短辺側に位置している酸素極連通口144aから領域142を通って反対側の短辺に位置している酸素極連通口144bに向かって流れて行くので、流路断面積は、前記した、水電解運転時の長辺側から長辺側に流れて行く場合よりも小さい。また水素ガスについても、同様に、短辺側に位置している連通口123aから反対側の短辺側に位置している水素極連通口123bに向かって流れて行くので、その時の流路断面積は、水電解運転時よりも小さいものである。
このように、本発明の実施の形態での一体型セル110は、従来は水電解セルと燃料電池セルで共通に使用していた酸素極の連通口を、水電解セルの酸素極の連通口と燃料電池セルの酸素極の連通口とに分けて、それぞれ専用に設けている。さらに電極体121、及びセパレータ131、141の形状を、長方形にするとともに横長配置にしてこれを鉛直方向にした状態で配置しているから、水電解運転では原料水である純水を短手方向に流し、一方燃料電池運転では加湿空気を長手方向に流すことが可能である。
これにより、同一セルを使用していながら、水電解運転時と燃料電池運転時では、反応流路の断面積を大幅に変えることができ、また圧力損失への影響度が大きい流路長も大幅に変えることができる。その結果、水電解セルの反応流路に求められる要件と、燃料電池セルに求められる要件を、同一のセルであってもより理想的な条件で満足することができる。
このことを定量的に示すために、従来型セパレータと実施の形態にかかるセパレータとで、電極形状が同一としながら流路の圧力損失や流速をどの程度変えることができるのかを以下に示す。
まず流路圧損:ΔPについては、以下の式で示される。
ΔP=λ・(L/D)・(ρ・v2/2) ・・・・・式(1)
なお式(1)において、λは管摩擦係数、Lは流路長、Dは流路断面積、ρは流体密度、vは流速である。
電極面積を一定に固定した条件で、電極の縦横比を変えたときに流路圧損がどのように変化するかの概略を図8に示す。この図8のグラフは、管摩擦係数の値を仮に一定として評価した結果である。電極の縦横比(短手方向X:長手方向Y)を1:2とした場合、長手方向に流体を流すときに対して短手方向に流体を流したときの方が流路圧損は1/16倍に低減できる。さらに、電極の縦横比を1:4とした場合には1/258倍に低減できる。管摩擦抵抗はレイノルズ数や流れが層流か乱流かによって異なるが、縦横比が1:4程度の範囲では最大差を見積もっても5倍程度である。単純計算して縦横比が1:2の場合で1/3倍以下、1:4の場合で1/51倍以下に低減できる。ここで、ガスと水の密度は、約1000倍異なるが、従来の一体型セルで実際に燃料電池運転するときの加湿空気の流量は、水電解するときの純水の流量の10倍前後である。
これらの点を考慮すると、実際に一体型セルに加湿空気を流した場合と純水を流した場合の流路圧損の差は、長手方向に加湿空気を流した場合を基準とする短手方向に純水を流した場合において、縦横比が1:2の場合で3.3倍以下、1:4の場合で1/5倍以下となる。
従来通りに連通口を共通にした場合、流路の縦横比に関係無く加湿空気を流したときに対して純水を流したときは流路圧損の差は10倍となる(水の密度:1,000倍vs加湿空気の密度、水の流量:1/10倍vs加湿空気の流量)ことから、本発明の実施の形態によって、水電解時の流路圧損を飛躍的に低減できることがわかる。但し、水電解運転時は、電気分解に伴い酸素極では酸素が発生するため、酸素極反応流路の流動形式は純水の単相流からセル出口に向かうにつれて酸素ガスが増加していく気液二相流となる。気液二相流の流路圧損は単相流の場合よりも高くなるため、その点を考慮して、流路の縦横比を決定する必要がある。
次に電極の縦横比を変えたときに流路内の流速vがどのように変化するかについてであるが、これは流量をQで固定すれば、あとは断面積Aの差による違いだけであるので、v=Q/Aの単純計算で求まる。流量Qを短手方向に流すのと長手方向に流すのとでは、縦横比が1:2の場合は2倍、縦横比が1:4の場合は4倍の差となる。物質伝達と熱伝達のアナロジーから、物質伝達率は流れが層流の場合で流速の0.5乗、乱流の場合で流速の0.8乗に比例して増加する。このため、流速が4倍であれば物質伝達率は流れが層流の倍で2倍、乱流の場合で3倍となり、反応流路から電極面への酸素の拡散を促進させることができるだけでなく、反応生成水の排出効果も大きくなる。
電極面への酸素拡散が促進されれば、従来よりも高い電流密度(=電流値/電極面積)での燃料電池運転が可能になり、単位セル当たりの出力密度を向上させることができる。この点に関しても、従来通りに連通口を共通にした場合で、水電解時の流路圧損が小さくなるようにセルを設計した場合には、縦横比を1:4にした場合だと流速が1/4倍になるため、物質伝達率は1/2倍や1/3倍となり電極面への酸素拡散が十分に行われなくなり、また反応生成水の排出効果も低減する。その結果、より低い電流密度でしか運転ができなくなってしまう。
以上のことから、本発明の実施の形態の一体型セル110で採用した流路、セパレータの形状により、水電解時の流路圧損の低減と燃料電池時の流速確保を両立できることがわかる。
なお図6、図7に示した一体型セル110で採用した電極体121、セパレータ131、141では、純水の連通口126a、126b、136a、136b、146a、146bと、冷却水の連通口125a、125b、135a、135b、145a、145bを複数に分割している。これによって流体が反応流路に均一に分配することが可能になっている。また単に複数に分割するだけではなく、上下に対向する連通口の用途が、互い違いになるように設けられているため、かかる点からも流体を均一に分配させることが可能になっている。
ところで、前記した実施の形態では、水電解セル10、一体型セル110は、いずれも横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層して各々水電解セルスタック13、水電解・燃料電池セルのスタック113を構成していたが、これら長方形のセルを縦長に配置して、側方から原料水等を流す(長辺側から原料水等を流す)構成とした場合には、次のような問題がある。すなわち、長方形のセルを縦長に配置して側方から原料水等を流すようにした場合、水電解運転の際には、セルの上部と下部とで水頭圧による圧力差が大きくなる(セルの下部が、強い圧力を受ける)。したがって、このセル下部が受ける強い圧力に耐えられるように、セル全体を設計する必要がある。そのため、セル内で受ける圧力差を小さくできるように横長に設置するほうが好ましい。
また、燃料電池運転の際には、酸素側、水素側ともに発生水を(重力による自由落下で)電極面からマニホールドを通ってセル外に排水させるが、長方形のセルを縦長設置とすると、ガスの流れが上下方向となり、酸素側、水素側の少なくとも一方は、ガスの流れが上向きとなるので排水を妨げることになる。この観点からも、前記した長方形の各セルは、横長に設置するほうが好ましい。
ところで、前記した一体型セル110は、正立状態(横長に配置して鉛直方向に立てた状態)で使用されるため、燃料電池運転の際、図9に示されるシール材149の下縁部分(図中、波線aで示した)に反応生成水が溜まる可能性がある。そのようにして反応生成水が溜まって、電極面(中央の領域142に対応する部分)が水没してしまうと、反応に寄与できる電極面積が減少し、発電効率が落ちてしまう。
かかる事態に対処するため、空気及び反応生成水が排出される酸素極連通口144bが、電極面の最下部(図中の波線bで示した)、及びシール材149における下方側の最上部(図中の波線cで示した)よりも、下側まで位置するように、すなわち、酸素極連通口144bの下縁(図中の波線dで示した)が、波線bで示される電極面の最下部、及び波線cで示されるシール材149における下方側の最上部よりも下側に位置するように、その配置を設定することが提案できる。
これによって、反応生成水が電極面まで達して電極面が水没することなく、酸素極連通口144bから排出される。したがって、反応生成水の貯留による電極の水没は防止され、電極面積が減少して発電効率が落ちてしまうことは防止できる。
本発明は、電解質膜の両側に給電体を配置してさらにセパレータを各々の外側に配置した固体高分子形の水電解セルを用いた水電解、電解質膜の両側に給・集電体を配置してさらにセパレータを各々の外側に配置した固体高分子形の水電解燃料電池一体型セルを用いた水電解・燃料電池に有用である。
1 水電解システム
2 直流電源
3 外部負荷
10 水電解セル
11、12 エンドプレート
13 水電解セルスタック
21 電極体
22 電極部分
23、24、25、33、34、35、43、44、45 連通口
31 水素極側のセパレータ
32、42 領域
36、37、38、46、47 シール材
41 酸素極側のセパレータ
51、72 タンク
52、59、74 配管
53 ポンプ
P1 純水入口ポート
P2 純水出口ポート
P3 水素出口ポート
P4 水素入口ポート
P5 空気入口ポート
P6 空気出口ポート
P7 冷却水出口ポート
P8 冷却水入口ポート
101 水電解・燃料電池システム101
110 一体型セル
111、112 エンドプレート
113 水電解・燃料電池セルのスタック
121 電極体
122 電極部分
123a、123b、133a、133b、143a、143b 水素極連通口
124a、124b、134a、134b、144a、144b 酸素極連通口
131 水素極側のセパレータ
132、142 領域
137、138、139、147、148、149 シール材
141 酸素極側のセパレータ
151、153、163、165 流路
154 水素ポンプ

Claims (7)

  1. 電解質膜の両側に給電体を配置してさらにセパレータを各給電体の外側に配置した固体高分子形の水電解セルを、複数積層した水電解装置であって、
    前記固体高分子形の水電解セルは長方形であって、かつ当該水電解セルは横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層されており、
    前記長方形の各水電解セルの下側の長辺側に、水供給のための連通口が配置され、各水電解セルの上側の長辺側に、電解水と酸素ガスの排出用の連通口が配置され、
    前記長方形の各水電解セルの短辺側に、水素ガス排出用の連通口が配置されていることを特徴とする、水電解装置。
  2. 電解質膜の両側に給電体を配置してさらにセパレータを各給電体の外側に配置した固体高分子形の水電解セルを、複数積層した水電解装置であって、
    前記固体高分子形の水電解セルは長方形であって、かつ当該水電解セルは横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層されており、
    前記長方形の各水電解セルの下側の長辺側に、水供給のための連通口が配置され、各水電解セルの上側の長辺側に、電解水と酸素ガスの排出用の連通口が配置され、
    前記長方形の各水電解セルの1の短辺側の端部近傍に、水素ガス排出用の連通口が配置されていることを特徴とする、水電解装置。
  3. 請求項1または2のいずれか一項に記載の水電解装置を用いた水電解システムであって、
    前記水電解装置に直流電力を供給する電源装置と、
    前記水電解装置に原料水を供給する原料水供給路と、
    前記水電解装置で発生した水素ガスをシステム外に放出する水素ガス放出路と、
    前記水電解装置で発生した酸素ガスをシステム外に放出する酸素ガス放出路と、
    を有することを特徴とする、水電解システム。
  4. 電解質膜の両側に給・集電体を配置してさらにセパレータを各給・集電体の外側に配置した、固体高分子形の水電解燃料電池一体型セルを、複数積層した水電解・燃料電池装置であって、
    前記固体高分子形の水電解燃料電池一体型セルは長方形であって、かつ当該水電解燃料電池一体型セルは横長かつ鉛直方向に配置され、かつ水平方向に積層されており、
    前記長方形の各水電解燃料電池一体型セルの下側の長辺側に、水電解運転の際の原料水供給のための連通口、及び冷却水供給のための連通口が配置され、
    各水電解燃料電池一体型セルの上側の長辺側に、水電解運転の際の電解水と酸素ガスの排出用の連通口が配置され、
    各水電解燃料電池一体型セルの短辺側に、水電解運転の際の水素ガス排出用の連通口、及び燃料電池運転の際の水素ガス供給用の連通口、及び空気または酸素ガス供給用の連通口が形成されていることを特徴とする、水電解・燃料電池装置。
  5. 前記セパレータには、縦方向、横方向のいずれにも流体が流通可能な流路が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の水電解・燃料電池装置。
  6. 水電解燃料電池一体型セルの短辺側に、空気又は酸素ガス、及び反応生成水が排出される連通口が形成され、水電解燃料電池一体型セルの電極面の最下部よりも、空気又は酸素ガス、及び反応生成水が排出される連通口の最下部の方が下方に位置していることを特徴とする、請求項またはのいずれか一項に記載の水電解・燃料電池装置。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の水電解・燃料電池装置を用いた水電解・燃料電池システムであって、
    前記水電解・燃料電池装置に直流電力を供給する電源装置と、
    前記水電解・燃料電池装置に原料水を供給する原料水供給路と、
    前記水電解・燃料電池装置で発生した水素ガスをシステム外に放出する水素ガス放出路と、
    前記水電解・燃料電池装置で発生した酸素ガスをシステム外に放出する酸素ガス放出路と、
    前記水電解・燃料電池装置に水素ガスを供給する水素ガス供給路と、
    前記水電解・燃料電池装置に酸素ガスまたは空気を供給するガス供給路と、
    前記水電解・燃料電池装置で発生した水をシステム外に放出する酸素ガス放出路と、を有することを特徴とする、水電解・燃料電池システム。
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