JP6895108B2 - 水分吸着材 - Google Patents

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Description

本発明は、水分吸着材に関する。本発明は、特には、自重を超える大容量の水を吸着することが可能な水分吸着材、並びにこれを用いた吸着式冷凍機及びデシカント調湿機に関する。
調湿に広く利用されている活性炭やシリカゲル、ゼオライト等の吸着材は自重の20〜30%の水分を吸着する事ができる。これら吸着材は、調湿だけでなく排熱から冷熱を製造する吸着式冷凍機の中核材料として使用されている。
一般的な吸着式冷凍機は、減圧下で冷媒となる水を吸脱着する2つの熱交換器と、水の蒸発を利用して熱媒体を冷却する蒸発器、水蒸気を液化する凝縮器で、冷凍サイクルを構成する。2つの熱交換機は独立した区画に配置され交互に冷却水と温水が通じ、吸着材に水蒸気を交互に吸着・脱着させて、蒸発器を設置した区画内を減圧状態に保ち水の蒸発を促進する。この気化熱により蒸発器内部を流れる熱媒体を冷却することで冷熱を得る。蒸発した水蒸気は、凝縮器により液化され、再び蒸発器に供給することにより冷却を連続して行う。熱交換器を加熱する温水の温度は一般に80℃前後の排熱を想定しており、冷却水は30度前後の水を用いる(例えば、非特許文献1)。
2つの熱交換機に使用される吸着材がより低い相対湿度で水蒸気を吸着すれば、より低温の排熱を利用することができるし、また、冷却水の温度が高くなっても運転することが可能となる。したがって、吸着材が水分吸着を開始する相対湿度を下げることが課題となっている。用いられる吸着材量は冷却能力によるが数百kgに達し、装置自体が体積と重量共に大型になってしまうため、導入コストが高くなり普及を妨げている。そのため、吸着容量増大が課題となっている。
吸着相対蒸気圧を下げるために、低い臨界相対蒸気圧を示す金属塩化物塩をゼオライトに担持させ、吸着相対蒸気圧を0.1〜0.3とした吸着材技術が開示されている(例えば、特許文献1)。ここで使用されている塩は塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムで、臨界相対蒸気圧以上で完全に溶解する。最大吸着量は0.517g−HO/g−DMである。いずれの塩も溶解時に発熱する塩であるため、吸着時に吸着材の温度が上昇する。その結果、吸着材周囲の飽和水蒸気圧が上がり吸着が抑制されるから吸着量を劇的に上げることができないという問題があった。
その他に、多孔質体と、多孔質体の表面上に配置された潮解性物質とから構成される再生質吸湿剤が知られている(例えば、特許文献2)。しかし、吸着量が充分とはいえない。
特表2016-517350号公報 特開2012-66157号公報
日本機械学会誌、2010. 1 Vol. 113, No. 1094, p 56
従来と比較して大幅に水分吸着量を向上させ、任意選択的に臨界相対蒸気圧を低減させた水分吸着材が求められる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、多孔質体に複数の塩の組み合わせを内包させること、さらに、塩全体として水への溶解熱が負となるように塩の組み合わせを選択することで、水分吸着量の大幅な向上と低い臨界相対蒸気圧との両方の性能を確保することを発見し、本発明を完成させるに至った。また、多孔質体に水への溶解熱が負となる単塩を内包させることで、吸着量を大幅に向上させることを発見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、一実施形態によれば、[1]水分吸着材であって、多孔質体と、前記多孔質体に内包された複合塩とを含む水分吸着材であって、前記複合塩の水への溶解熱が負である。
[2] [1]に記載の前記水分吸着材において、前記複合塩が、水への溶解熱が正である塩と、水への溶解熱が負である塩との組み合わせであることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の前記水分吸着材において、前記複合塩が、NaCl、NaBr・2HO、KBr、KCl、CaCl・6HO、KIから選択される塩を含むことが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の前記水分吸着材において、前記多孔質体が、SiO、TiO、ZrO、Al、MgOから選択される1以上を主成分として含む金属酸化物ナノ粒子凝集物であることが好ましい。
[5] [3]または[4]に記載の前記水分吸着材において、前記金属酸化物ナノ粒子が、Al、CaO、MgO、Yから選択される1以上の添加剤を含むことが好ましい。
本発明は、別の実施形態によれば、[6] 多孔質体と、前記多孔質体に内包されたKCl、NaCl、NaBrから選択される単塩とを含む。
[7] [6]に記載の前記水分吸着材において、前記多孔質体が、Al添加剤を含むZrOナノ粒子凝集物であることが好ましい。
本発明は、別の実施形態によれば、[8] 吸着カプセルであって、[1]〜[7]のいずれかに記載の前記水分吸着材と、前記水分吸着材を内包する透湿性樹脂を含む。
本発明は、また別の実施形態によれば、[9] 吸着組成物であって、[1]〜[8]のいずれかに記載の前記水分吸着材と、保水性高分子ゲルとを含む。
本発明は、さらにまた別の実施形態によれば、[10] 吸着式冷凍機であって、[1]〜[7]のいずれかに記載の水分吸着材、[8]に記載の吸着カプセル、または[9]に記載の吸着組成物を備えてなる。
本発明は、さらにまた別の実施形態によれば、[11] デシカント調湿機であって、[1]〜[7]のいずれかに記載の水分吸着材、[8]に記載の吸着カプセル、または[9]に記載の吸着組成物を備えてなる。
本発明は、さらにまた別の実施形態によれば、[12] 水分吸着材の製造方法であって、金属酸化物ゾルを調製する工程と、前記金属酸化物ゾルと、水への溶解熱が負である塩もしくは複合塩とを混合する塩置換工程と、前記塩置換工程で得られた混合物を、噴霧乾燥する工程とを含む。
[13] [12]に記載の前記水分吸着材の製造方法において、前記塩置換工程で空孔形成剤をさらに混合し、前記噴霧乾燥する工程の後に、噴霧乾燥して得られた粒子を焼成する工程をさらに含むことが好ましい。
本発明に係る吸着材によれば、吸着材の自重を超える水分を吸着することにより、デシカントや吸着式冷凍機が必要とする吸着材量を減量することができ、コストと装置サイズを小さくすることができる。また、デシカントで問題となる吸着材による発熱がなくなるため装置構成が簡単になる。更に、臨界相対湿度を塩の種類や組み合わせにより調整することができるため、吸着式冷凍機においては、広い温度範囲で排熱利用が可能となる。特に、臨界相対湿度を0.3以下にできれば、80℃以下の低温排熱を利用して冷熱を製造することができ、社会的な省エネニーズに対応することができる。単なる吸湿材として使用しても、湿度を臨界相対湿度で一定とできるため、文化財保護や食品等の鮮度維持を簡単に実現することができる。
従来から用いられているシリカゲルや活性アルミナ、ゼオライト等の固体水分吸着材は、細孔構造を維持する骨格が必要であり、自身は膨張することができないため、せいぜい自重の20〜30%程度の水を吸着するにすぎなかった。本発明に係る水分吸着材によれば、水への溶解熱が負となる塩を内包させることで、水の生成のために発生する凝縮熱を除去する冷却機構とすることができる。これにより、吸着材内部だけに水分を維持するのではなく、外部にも水を保持することを可能とし、吸着量を自重の500%以上にまで劇的に増加させることに成功した。また、特に複合塩を用いることで、吸着量の大幅な増加のみならず、低い臨界相対湿度を可能とした。
図1は、本発明の一実施形態による水分吸着材の模式的な構成を示す概念図である。 図2は、本発明の一実施形態による水分吸着材の模式的な構成を示す概念図であり、(A)は水分吸着材の球状凝集物を示しており、(B)は(A)の部分Xの拡大概念図を示す。 図3は、本発明の一実施形態による水分吸着材による水の吸着を模式的に説明する図である。 図4は、実施例1による焼成前の水分吸着材の顕微鏡写真であり、(A)は球状凝集物の透過型顕微鏡写真、(B)は(A)を拡大した透過型顕微鏡写真である。 図5は、実施例1による焼成後の水分吸着材の顕微鏡写真であり、(A)は球状凝集物の透過型顕微鏡写真、(B)は(A)を拡大した透過型顕微鏡写真であり、焼成後は、凝集物を構成するナノ粒子が焼結によりサイズが大きくなっていることが示される。 図6は焼成後の粒子の透過型顕微鏡写真であり、焼結により、ナノ粒子間にネッキングが生じていることを示す写真である。 図7は、実施例及び比較例の水分吸着材について、臨界相対湿度Φに対する水吸着率(mg/g)を示すグラフである。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
[第1実施形態:水分吸着材(複合塩)]
本発明は第1実施形態によれば、水分吸着材である。図1は、本実施形態に係る水分吸着材を模式的に示す概念図である。図1を参照すると、水分吸着材1は、金属酸化物ナノ粒子1の凝集体である多孔質体と、多孔質体に内包された複合塩12とを含み、空孔13が形成されて、球状凝集物を構成している。
本発明において、多孔質体としては特には限定されず、孔内部に複合塩を内包することができるものであればよい。ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、活性アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物ナノ粒子により形成される多孔質体や、規則的な多孔質構造であるメソポーラスシリカやポーラスアルミナが挙げられるが、これらには限定されない。多孔質体は、使用温度や吸着量、耐候性等に応じて適宜選択することができる。特には、図1に例示する態様である、金属酸化物ナノ粒子が乱雑に凝集した多孔質体を用いることが好ましい。製造コスト上有利であり、メソポーラスシリカやポーラスアルミナに比べ、水分子が侵入できる経路が多いからである。中でも、酸化ジルコニウムから主として構成され、平均一次粒子径が3〜10nm、好ましくは3〜5nm程度の粒子が凝集し、平均二次粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜30μmとなっている多孔質体が好ましい。酸化ジルコニウムは、粒径数nmのナノ粒子を形成しやすく、微細な細孔構造形成に好適である。空隙サイズが小さいと毛管凝縮により低い相対圧で水蒸気を液化する観点から特に有利である。
多孔質体が、金属酸化物ナノ粒子凝集体の場合、添加剤(ドーパント)を含む金属酸化物ナノ粒子であってよい。ドーパントは、金属酸化物ナノ粒子に好ましい特性を付与し、かつ、噴霧乾燥温度である100〜250℃で崩壊しない化合物であればよい。金属酸化物ナノ粒子の主成分が、ジルコニアナノ粒子である場合、好ましいドーパントは、例えば、アルミナ、カルシア、マグネシア、イットリアから選択される一以上の酸化物であってよい。ジルコニアナノ粒子とドーパントの総質量を100%とした場合に、ドーパントの添加量が、1〜50mol%程度とすることができ、5〜15mol%程度とすることがより好ましいが、これらには限定されない。ジルコニアナノ粒子にドーパントを含めることで、ナノ粒子表面の親水性を制御することができる。さらに具体的には、ドーパントにより細孔内壁の水酸基を多くして親水化することができ、塩を内包した多孔質構造で素早く水分の吸着を行うことができる。中でもアルミナを、ドーパントとして用いることが好ましい。アルミナ表面は水酸基が多く親水的であるためである。
多孔質体に内包される塩12は、二以上の塩から形成され、塩の水への溶解熱が負(吸熱)となる複合塩である。すなわち、複合塩の溶解エンタルピーΔH>0であることが必要である。このような塩を用いることにより、吸着材付近の温度が低下し、飽和水蒸気圧が低下するため、水が凝縮し、吸着材による水の吸着量が増大する。
複合塩としては、例えば、NaCl、NaBr・2HO、KBr、KCl、CaCl・6HO、KI、NaNO、CHCOONa・3HO、クエン酸カリウム、NHClから選択される化合物を少なくとも1種以上含み、全体として塩の水への溶解熱が負であるものが好ましい。中でも、NaCl、NaBr・2HO、KBr、KCl、CaCl・6HO、KIから選択される化合物が好ましい。融点が高く、後述する製造方法において、600℃程度で高温焼成しても、分解することがないためである。複合塩が「全体として塩の水への溶解熱が負である」とは、複合塩を構成する複数の単塩のすべてが塩の水への溶解熱が負である化合物であるか、あるいは、複数の単塩のそれぞれの溶解エンタルピーに各単塩の占めるモル分率を乗じて得られる値を、単塩の数だけ加算して得られる全体の溶解エンタルピーが負であるものをいう。
したがって、上記水への溶解熱が負である化合物と、例えば、水への溶解熱が正(発熱)である塩、すなわち溶解エンタルピーΔH<0である塩との組み合わせであってもよい。溶解エンタルピーが負である塩としては、例えば、LiCl・2HO、CaCl、MgCl・2HO、NaI、CHCOOK、LiNO、BaCl、Ca(NOが挙げられるが、これらには限定されない。これらの化合物の中でも、耐熱性の観点からは、LiCl・2HO、CaCl、MgCl・2HO、NaI、BaClが好ましい。この場合、水への溶解熱が負である化合物と、正である化合物とのモル比率は、全体の溶解エンタルピーが負となるように決定することができる。特に好ましい組み合わせとして、以下が挙げられるが、これらには限定されない。NaClとCaCl、NaClとMgCl・2HO、NaClとNaI、NaBr・2HOとCaCl、NaBr・2HOとMgCl・2HO、NaBr・2HOとNaI、KBrとCaCl、KBrとMgCl・2HO、KBrとNaI、KClとCaCl、KClとMgCl・2HO、KClとNaI、CaCl・6HOとCaCl、CaCl・6HOとMgCl・2HO、CaCl・6HOとNaI、KIとCaCl2、KIとMgCl・2HO、KIとNaI。
これらの中でも、NaCl、NaBr、NaBr・2HO、KBr、KCl、KIから選択される2以上の塩の任意のモル比からなる複合塩、例えば、NaClとNaBr、NaClとNaBr・2HO、NaClとKBr、NaClとKCl、NaClとKI、NaBrとNaBr・2HO、NaBrとKBr、NaBrとKCl、NaBrとKI、NaBr・2HOとKBr、NaBr・2HOとKCl、NaBr・2HOとKI、KBrとKCl、KBrとKI、またはKClとKIの組み合わせから選択される任意のモル比からなる複合塩、酢酸カリウムと酢酸ナトリウム三水和物の任意のモル比からなる複合塩、NaBr・2HOとCaClの0.8:0.2〜0.9:0.1のモル比からなる複合塩、あるいはNaBrとCaCl・6HOの0:1〜0.96:0.04のモル比からなる複合塩が好ましい。これらの組み合わせでは、特に複合塩の室温(25℃)における臨界相対蒸気圧が0.01〜0.4程度となり、低圧条件から吸水を開始することができるためである。臨界相対蒸気圧は、水分活性値ともいい、水蒸気吸着等温線測定装置を使用して測定することができる。
水分吸着材において、多孔質体が金属酸化物である場合、金属酸化物のモル量に対し、複合塩のモル量が、0.01〜3倍であることが好ましく、0.2〜1.8倍であることがより好ましい。0.01倍未満では、水吸着の効果が小さすぎる場合があり、3倍より多いと、塩を多孔質構造内部に完全に内包しきれないなどの弊害が生じる場合があるためである。内包する塩は、上述のように吸熱であり、吸熱量を最大化することで、結露を最大にできるため、弊害が生じない範囲で可能な限り高濃度にすることが好ましい。この時の複合塩量は吸熱量を決めるが、この吸着材を使用する熱交換器との間の熱抵抗にも依存する。したがって塩量は熱交換器の材質と形状等に基づき、当業者が適宜決定することが好ましい。
水分吸着材において、多孔質体が金属酸化物ナノ粒子の凝集物である場合、凝集物は、金属酸化物ナノ粒子間がネッキングされたものであることが好ましい。金属酸化物ナノ粒子間がネッキングされたものは、製造方法において、焼成処理を施すことで製造することができ、詳細は後述する。水分吸着材として使用される際に、水を吸着しても構造を維持するためである。一般的に、金属酸化物ナノ粒子の凝集物、中でも塩含有ジルコニアナノ粒子凝集物は、粒子間距離が短いため、ネッキングされたものでなくても構造的に安定であるが、大量の水を吸着すると構造を維持できなくなる場合がありうる。
空孔13は、多孔質体が金属酸化物ナノ粒子の凝集物である場合には、後述する製造方法において、空孔形成剤に起因して形成されるものであって、径が概ね0.5nm以下であることが好ましいが、特定の径には限定されない。その体積率は、目的に合わせて当業者が適宜決定することができる。例えば、概ね70〜90%とすることができるが、この範囲には限定されない。なお、空孔の体積率は、水銀圧入法やガス吸着法などにより測定することができる。多孔質体がゼオライトやメソポーラスシリカの場合には、空孔が形成された市販の多孔質体を利用することができ、空孔の径や体積率も、所望の物を選択することができる。
水分吸着材には、多孔質体と複合塩に加えて、触媒となる無機化合物などのさらなる成分を含んでもよい。これにより、水分とともに吸着する有機分子を加水分解することができ、脱臭や防毒等の機能を付与することができる。その場合、当該成分は、多孔質体内の空隙に対して10〜50%の体積といった分量で含むことができる。
次に、本実施形態における水分吸着材を製造方法の観点から説明する。特に、多孔質体が金属酸化物ナノ粒子の凝集物である場合の製造方法について詳細に説明する。水分吸着材の製造方法は、金属酸化物ゾルを調製する工程と、前記金属酸化物ゾルと、水への溶解熱が負である複合塩と、任意選択的に空孔形成剤とを混合する塩置換工程と、前記混合する工程で得られた混合物を噴霧乾燥する工程と、任意選択的に噴霧乾燥した粒子を焼成する工程とを含む。
金属酸化物ゾルを調製する工程においては、金属酸化物ナノ粒子の主成分となる金属源と、任意選択的にドーパントとなる金属源とを含む化合物を出発物質として、例えば、特開2011-57531号公報に開示された方法、あるいはその他の公知の方法を用いて金属酸化物ゾルを調製する。
塩置換工程では、上記で得られた金属酸化物ゾル中の塩を含んだ水と固形分を遠心法により分離し、上澄みを純水と置換することでゾル中に含まれる出発物質由来の塩(本発明の実施例においてはKClとNHCl)を除去する。その後、水への溶解熱が負である複合塩を混合することにより、金属酸化物ゾル中の出発物質由来の塩を、内包させる複合塩で置換する。なお、金属酸化物ゾルを調製する工程において、出発物質に由来して内包させる複合塩が生成する場合もあり、この場合には、塩置換工程で複合塩を添加する必要が無い。後続の噴霧工程の後に粒子を焼成する場合には、塩置換工程において、空孔形成剤を添加することが好ましい。空孔形成剤により、吸着材の内部に微細な空隙を形成し、水分保持に有利になるためである。空孔形成剤としては、噴霧乾燥工程における乾燥温度で分解せず、焼成する工程における焼成温度で分解し、かつ、金属酸化物や塩の物性に悪影響を与えないものであればよく、塩化アンモニウム、尿酸、メラミン等を用いることができるが、これらには限定されない。空孔形成剤の添加量は、金属酸化物に対して、モル比で0.1〜2とすることができるが、特定の量には限定されない。なお、焼成する工程を経ないで製造される水分吸着材も本実施形態には含まれており、この場合、空孔形成剤は添加しない。
噴霧乾燥工程では、塩置換工程で得られたスラリーを、100〜250℃で噴霧乾燥する。噴霧乾燥は市販の噴霧乾燥装置を用いて、スラリー供給速度100g/h〜1000g/hで実施することができる。また、噴霧乾燥に代わる乾燥方法としてスラリーを乾燥炉等で加熱し水分を除去した後、得られた固形物をボールミルや乳鉢で粉砕してもよい。この工程により、金属酸化物ナノ粒子が複合塩を内包して凝集した凝集物である水分吸着材を得ることができる。さらなる任意選択的な工程として、焼成工程を実施することが好ましい。金属酸化物ナノ粒子間をネッキングして、より強固な凝集体を得るためである。焼成工程では、噴霧乾燥工程で得られた粒子を、例えば、300〜800℃で、4〜8時間にわたって、焼成炉などで焼成することができるが、ネッキングが生じる条件であれば焼成方法は問わず、また上記焼成条件には限定されない。
なお、本発明の水分吸着材は、多孔質体が金属酸化物ナノ粒子の凝集物である場合には限定されない。多孔質体がゼオライトやメソポーラスシリカである水分吸着材を製造する場合には、市販の多孔質体と、内包させる複合塩溶液とを混合し、減圧脱気して孔内に溶液を十分含浸させた後、乾燥・必要に応じて焼成して、本実施形態の水分吸着材を製造することができる。
図2は、上記製造方法により得られた金属酸化物ナノ粒子の球状凝集物の構造を説明する概念図である。(A)は、凝集粒子径がおよそ1〜30μmの球状凝集体からなる水分吸着材1を示す。(B)は、(A)の位置Xにおける拡大概念図である。(B)において、多孔質体は、複数の金属酸化物ナノ粒子11により構成され、金属酸化物ナノ粒子11は、主成分の金属酸化物11aと、その表面に形成されるドーパント11bとから構成される。金属酸化物ナノ粒子の直径は、約3〜7nmであってよいが、特定の直径には限定されない。図中、金属酸化物ナノ粒子の周囲に点線で表されるのは、ナノ粒子表面から空孔形成剤が除去されて形成された空孔を示す。金属酸化物ナノ粒子11間には複合塩12が内包されており、また、空孔13が形成される。なお、本発明に係る水分吸着材1において、複合塩12が内包されるとは、図2に示すように、複合塩12が複数の金属酸化物ナノ粒子11間に存在することをいうが、凝集物の表面に露出した複合塩12が存在する場合も、本発明の範囲内にある。複合塩が内包されていることは、超薄切片法により凝集物を厚さ100nm程度に切断し、組成分析装置を備えた透過型電子顕微鏡を用いて内部の組成分布を画像化するといった方法で確認できる。
本実施形態による水分吸着材1による、水の吸着は、図2に示すように水分子2が、複合塩の周囲で凝集し、空孔13内に吸着することによる。さらに図3を参照すると、水分吸着材1の内部のみならず、外部周囲にも水2を保持することができる。これは、特に本実施形態による複合塩の吸熱効果による。これにより、自重以上の質量の水、場合により、自重の500%以上もの水を吸着することができる。
本実施形態による水分吸着材は、高い水分吸着量と、低い臨界相対湿度を両立することができる点で、従来技術と大きく異なる。特に、臨界相対湿度Φが0.3以下となる吸着材は80℃程度の低温で運転される吸着式冷凍機において用いることができ、吸着式冷凍機のサイズを小さくし、かつ環境適合性を高めることができる。さらに、後述する実施例に実証されるように、複合塩を構成する塩の組み合わせを変えることにより、臨界相対湿度Φを調整することができる点でも有利である。
[第2実施形態:水分吸着材(単塩)]
本発明は第2実施形態によれば、水分吸着材である。第2実施形態に係る水分吸着材は、多孔質体と、多孔質体に内包された単塩とを含み、多くの空孔が形成されている。
本実施形態においては、第1実施形態による複合塩に代えて単塩を含む以外は、第1実施形態と概ね同様である。したがって、多孔質体は、第1実施形態で例示した中から選択することができ、特に、金属酸化物ナノ粒子の凝集物であることが好ましく、アルミナをドープしたジルコニアナノ粒子の凝集物であることが好ましい。
第2実施形態において、単塩は、溶解エンタルピーΔH>0(吸熱)である化合物であることが必要である。このような化合物としては、第1実施形態でも挙げたとおり、例えば、NaCl、NaBr、NaBr・2HO、KBr、KCl、CaCl・2HO、KI、NaNO、CHCOONa・3HO、クエン酸カリウム、NHClを用いることができる。中でも、NaCl、NaBr、NaBr・2HO、KBr、KCl、KIが好ましい。融点が高く、後述する製造方法において、600℃程度で高温焼成しても、分解することがないためである。
第2実施形態による水分吸着材の製造方法は、第1実施形態と同様であってよく、また得られた吸着材の構造的形態も、第1実施形態における複合塩が単塩になっている以外は、第1実施形態と同様である。第2実施形態による水分吸着材は、自重の500%程度の高い吸着量を備えており、デシカント調湿機において有用である。
[第3実施形態:吸着カプセル、吸着組成物]
本発明は、第3実施形態によれば、吸着カプセルまたは吸着組成物であって、第1または第2実施形態による水分吸着材を構成成分とするものに関する。以下、本実施形態において、単に水分吸着材と指称する場合、第1または第2実施形態による水分吸着材を意味するものとする。
本実施形態に係る吸着カプセルは、水分吸着材と、前記水分吸着材を内包する透湿性樹脂を含む。透湿性樹脂は、使用温度条件下で水分子を透過させ、かつ、水分吸着材に含まれる塩もしくは複合塩を透過させない樹脂である。このような樹脂としては、例えば、酢酸セルロースや芳香族ポリアミドが挙げられるが、これらには限定されない。内包する塩が溶解してイオン化し水和すると、水分子より大きくなるため、カプセル内に閉じ込められるが、水和イオンの透過性をより低くするため、樹脂内部やカプセル表面に解離基を導入し、静電的なエネルギー障壁を設けることもできる。透湿性樹脂は、カプセル好ましくはマイクロカプセルを形成して水分吸着材を内包する。カプセルの径は、例えば、10〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがさらに好ましいが、これらには限定されない。内包する水分吸着材との関係でサイズを決定することができる。また、この際、1つのカプセルあたり、1〜200000個、好ましくは、200〜25000個程度の水分吸着材(図1、2で示す凝集体)を内包することが好ましいが、これらには限定されない。
吸着性カプセルの製造方法、すなわち水分吸着材のマイクロカプセル化の方法は、水分吸着材がその水分吸着特性を保持したままカプセル化される任意の公知の方法であってよく、特には限定されない。例えば、界面重合法や液中乾燥法といった方法が挙げられ、これらの方法を用いれば、当業者が適宜、マイクロカプセル化を実施することができる。
本実施形態による吸着性カプセルは、水分吸着時の塩漏洩を防ぎ、吸着式冷凍機やデシカントにおける繰り返し使用を可能とすることができる。なお、繰り返し使用のためには、カプセルに内包された水分を吸着した水分吸着材に、熱交換器やマイクロ波照射による加熱操作をすることで、水分吸着材の構成はそのままで水分を除去することができる。
また、本実施形態による吸着組成物は、第1または第2実施形態による水分吸着材と、保水性高分子を含む。保水性高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウムやポリアクリルアミド、n−イソプロピルアクリルアミドゲル等が挙げられるが、これらには限定されない。水分を一定期間保持することができる任意の高分子化合物を使用することができる。本実施形態の組成物において、水分吸着材と、保水性高分子との組成比は、水分吸着材が吸着し得る水分量と、保水性高分子が保持し得る水分量から適宜決定することができる。また、吸着組成物にその他の成分として、水分に溶解する有機物を特異的に吸着する官能基を有する化合物などを含んでいてもよく、あるいはそのような吸着能を持つ官能基を保水性高分子に導入してもよい。なお、吸着組成物は、第1または第2実施形態による水分吸着材を、保水性高分子中に混合し、好ましくは均一に分散することにより調製することができる。水分吸着材を保水性高分子あるいは保水性高分子ゲルに分散させるためには、吸着材と高分子モノマー溶液を混合したのち、重合開始剤を加え高分子化、あるいは、架橋剤と共に重合開始剤を加えゲル化させる。この時、官能基となる別のモノマーを加えてもよい。これは、高分子、あるいは、ゲル中に水分吸着材が分散している状態であるから、これを湿式ボールミルや乳鉢で粉砕し、周りに保水性高分子やゲルが接着した状態の水分吸着材とする。高分子やゲルは透湿性が高いので、水蒸気はそれらを通過して水分吸着材内部に侵入する事ができる。そして塩の溶解により温度が低下し、周囲の水蒸気が吸着組成物表面に結露するため高分子やゲル内部に保水され、高分子やゲルは大きく体積を増加させるので、さらに大きな吸着が可能となる。
本実施形態による保水性高分子は、吸水により乾燥時体積の数百倍膨張することができるから、吸着容量を更に飛躍的に大きくすることができる。そのため、大きな調湿機能を少量の吸着材で実現することができる。更に、n-イソプリピルアクリルアミドゲルは30度前後で急峻な体積変化をするため、わずかな加熱により吸水した水を排除することが可能となる。この加熱に30〜40℃の低温排熱を利用することができるため、調湿を極めて低コストで行うことができる。
[第4実施形態:吸着式冷凍機及びデシカント調湿機]
本発明は、第4実施形態によれば、第1または第2実施形態による水分吸着材を備える吸着式冷凍機及びデシカント調湿機に関する。
吸着式冷凍機としては、任意の構成のものを用いることができる。例えば、減圧下で熱媒体となる水を吸脱着する2つの熱交換器と、水の蒸発を利用して熱媒体を冷却する蒸発器と、水蒸気を液化する凝縮器とを備える一般的な吸着式冷凍機において、熱交換器において、任意の態様で、本発明の第1または第2実施形態による水分吸着材を備えることができる。このような吸着式冷凍機の装置構成の一例としては、特開2006-329560号公報、特開2012-37203号公報、特開2015-048987号公報に開示された構成を持つものであってよいが、これらには限定されない。
デシカント調湿機としても、任意の構成のものを用いることができる。例えば、デシカントロータに、第1または第2実施形態による水分吸着材、あるいは、第3実施形態による水分吸着カプセルもしくは組成物の態様で添着させて使用することができる。
本実施形態によれば、吸水特性が従来と比較して飛躍的に高い本発明の水分吸着材を吸着式冷凍機及びデシカント調湿機に備えることで、水分吸着材の使用量を低減し、装置の小型化、低コスト化を実現することができる。
以下に、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
単塩KCl、NaCl、NaBr、複合塩KBr/NaCl、酢酸カリウム/酢酸ナトリウム・3水和物、CaCl/NaBrをジルコニアナノ粒子凝集物に内包した水分吸着材を製造し、その水分吸着能を水蒸気吸着等温線測定により評価した。また、塩を全く含まないジルコニア粒子凝集物の水分吸着特性を同様に評価した。
[実施例1:KCl]
(ゾル作成)
ジルコニアゾル(以下、スラリーとも指称する)は、特開2011-57531号公報に開示された方法を用い、以下のようにして作成した。オキシ塩化ジルコニウム八水和物91.2gを純水1.39Lに溶解し塩化ジルコニウム水溶液に、炭酸水素アンモニウム31.2gを0.38Lに溶かした水溶液を攪拌しながら加えジルコニアゾル前駆体を調整した。この前駆体に硝酸アルミニウム九水和物11.2gを加えて溶解させ、アルミニウムイオンを含む前駆体を得た。次に前駆体ゾルに炭酸カリウム34.9gを純水1.22Lに溶かした水溶液を攪拌しながら加えたところ、アルミニウムとジルコニウムの酸化物としての組成比(モル比)が5:95である粒径5nmのジルコニア粒子が分散した白色スラリーを得た。このスラリーはジルコニウム1Mに対して、塩化カリウムを1.8M、塩化アンモニウムを0.2M、アンモニアを1.2M含みpHは11〜12であった。全体の体積は3Lであった。
(噴霧乾燥)
このスラリーをスプレードライ法で乾燥させ、アルミナドープジルコニアナノ粒子と塩を内包した球状凝集物(粉末)60gを得た。得られた粉末量は仕込み量から推定される収量とほぼ同じであった。スラリーは次の条件で噴霧乾燥しジルコニア粒子と塩が混合した凝集物を得た。噴霧乾燥には、噴霧乾燥装置(株式会社プリス、SB39)を用いた。噴霧条件は、入り口温度180℃、出口温度100℃、スラリー供給速度は、500g/時であった。
(焼成処理)
噴霧乾燥で得られた粉末は、600℃で4時間、大気中で焼成し、塩化アンモニウム(融点338℃)を除去し、細孔を持つ多孔質構造からなる水分吸着材を得た図4(A)は焼成前の凝集物の透過型電子顕微鏡写真であり、図4(B)は、同じ球状凝集物の透過型電子顕微鏡写真である。また、図5(A)は焼成後に得られた水分吸着材の透過型電子顕微鏡写真であり、図5(B)は、同じ水分吸着材の透過型電子顕微鏡写真である。図6は、焼結後のジルコニアナノ粒子の拡大写真であり、微粒子間にネッキングが生じていることが示された。
(水分吸着特性)
水分吸着特性の測定は、水蒸気吸着等温線測定装置(日本ベル、BELSORP18PLUS-HT)を用いて実施した。測定の前処理条件として、焼成処理して得られた吸着材を、150℃で5時間減圧脱気した。測定温度は25℃とした。温度25℃でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は相対蒸気圧Φ=0.85で吸着量が急激に立ち上がり(図7)、Φ=0.99では初期重量1gに対して4.6gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。塩化カリウムの融点は770℃なので焼成処理後も粉末の中に存在しており、かつ、溶解熱が吸熱(17kJ/mol)であるため、水分吸着により溶解した事により吸着材温度が下がり、水分の結露が吸着材周囲で生じたため大きな吸着量となった。
[実施例2:NaCl]
実施例1と同様にしてスラリーを得たのち、遠心分離器を用い、純水で計9回洗浄を行い未反応のイオンを除去した。その後、1.8MのNaCl、0.2M塩化アンモニウムとなるように塩を添加し、NaCl含有スラリーを得た。その後、実施例1と同様に噴霧乾燥した後焼成しNaCl含有吸着材を得た。温度25度でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は、相対蒸気圧Φ=0.75で吸着量が急激に立ち上がり(図7)、Φ=0.99では初期重量1gに対して4.7gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。塩化ナトリウムの融点は801℃なので焼成処理後も粉末の中に存在しており、溶解熱が吸熱(3.9kJ/mol)であるため、実施例1と同様に水分吸着により溶解した事により吸着材温度が下がり、水分の結露が吸着材の周囲で生じたため大きな吸着量となった。
[実施例3:KBr/NaCl]
実施例1と同様にしてスラリーを得たのち、遠心分離器を用い、純水で計9回洗浄を行い未反応のイオンを除去した。その後、NaBrが0.9M、KClが0.9M、塩化アンモニウムが0.2Mとなるように塩を添加したスラリーを得た。実施例1と同様に噴霧乾燥と焼成しKBr/NaCl含有吸着材を得た。温度25度でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は、相対蒸気圧Φ=0.65で吸着量が急激に立ち上がり(図7)、Φ=0.99では初期重量1gに対して5.0gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。臭化カリウムと塩化ナトリウム融点はそれぞれ734℃と801℃なので焼成処理後も粉末の中に存在していると考えられる。両塩とも溶解熱は吸熱(19.9kJ/mol、3.9kJ/mol)であるため、実施例1と同様に水分吸着により溶解した事により吸着材温度が下がり、水分の結露が吸着材周囲で生じたため大きな吸着量となった。
[実施例4:NaBr]
実施例1と同様にしてスラリーを得たのち、遠心分離器を用い、純水で計9回洗浄を行い未反応のイオンを除去した。その後、NaBrが1.8M、塩化アンモニウムが0.2Mとなるように塩を添加したスラリーを得た。実施例1と同様に噴霧乾燥後焼成しNaBr含有吸着材を得た。温度25℃でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は、相対蒸気圧Φ=0.4で吸着量が急激に立ち上がりΦ=0.6まで吸着量が増加した後、また吸着量が急激に増加した(図7)。これは水和の影響と考えられる。Φ=0.99では初期重量1gに対して4.9gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。臭化ナトリウムの融点は755℃なので粉末の中に存在していると考えられる。無水物の溶解熱は若干発熱であるが、水和物の溶解熱は吸熱であるため、実施例1と同様に水分吸着により溶解した事により吸着材温度が下がり、水分の結露が吸着材周囲で生じたため大きな吸着量となったと考えられる。
[実施例5:酢酸カリウム/酢酸ナトリウム三水和物]
実施例1と同様にしてスラリーを得たのち、遠心分離器を用い、純水で計9回洗浄を行い未反応のイオンを除去した。その後、0.9MのCHCOOK、0.9MのCHCOONa・3HO、0.2M塩化アンモニウムとなるように塩を添加したスラリーを得た。実施例1と同様に噴霧乾燥したが、焼成はしなかった。温度25度でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は、Φ=0から0.38まで、吸着量がΦに比例して増加し、Φ=0.38で吸着量が立ち上がり、Φ=0.6近傍まで吸着量が増加した(図7)。Φ=0.99では初期重量1gに対して5.3gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。
[実施例6:CaCl:NaBr=0.3M:1.5M]
実施例1と同様にしてスラリーを得たのち、遠心分離器を用い、純水で計9回洗浄を行い未反応のイオンを除去した。その後、CaClが0.3M、NaBrが1.5M、塩化アンモニウムが0.2Mとなるように塩を添加したスラリーを得た。実施例1と同様に噴霧乾燥と焼成し、CaClとNaBrを、CaCl:NaBr=0.3M:1.5Mで含有する吸着材を得た。温度25度でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は、相対蒸気圧Φ=0.52で吸着量が急激に立ち上がり(図7)、Φ=0.99では初期重量1gに対して3gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。
[実施例7:CaCl:NaBr=1.5M:0.3M]
実施例6において、未反応のイオンを除去した後、CaClの添加量を1.5M、NaBrの添加量を0.3Mとした以外は、実施例6と同様にして、スラリーを得た。実施例1と同様に噴霧乾燥と焼成し、CaClとNaBrを、CaCl:NaBr=1.5M:0.3Mで含有する吸着材を得た。温度25度でのこの粉末の水分吸着等温線から、吸着材は、相対蒸気圧Φ=0.01から立ち上がり、更に0.16で立ち上がり(図7)、Φ=0.99では初期重量1gに対して4.5gの水分を吸着した。このことから、この粉末は水分吸着材ということができる。
[比較例1:塩無し]
実施例1と同様にスラリーを作成し、イオンを除去した後、体積を3Lとしたスラリーから噴霧乾燥によりジルコニア粒子凝集物を得た。これを同様に焼成し吸着材とした。水分吸着等温線はΦ=0から1に向かって緩やかな上昇をするだけで、Φ=0.95付近で吸着量は0.148g−HO/g−DMであった(図7)。比較例1から、実施例1〜5での塩の吸着量への効果は非常に大きいことが分かる。
[比較例2:ゼオライト]
市販のゼオライト(関東化学製、製品名:モレキュラーシーブ5A)を吸着剤とした。温度25度での水分吸着等温線から、吸着材は、相対蒸気圧Φ=0.01から急激に立ち上がった。しかし、Φ=0.03以降、緩やかな上昇をするだけで、Φ=0.97付近で吸着量は、初期重量1gに対して241mg程度であった(図7)。
なお、図7には、吸着曲線のみ表示しているが、実施例1〜7及び比較例1、2の吸着材について、脱着についても測定しており、吸着曲線と概ね同様の脱着曲線が得られた。これにより、吸脱着を繰り返す吸着式冷凍機等において好適に使用可能であることが示された。
本発明による水分吸着材は、一般的な吸湿材として用いることができ、また吸着式冷凍機やデシカント調湿機に内蔵する用途にも用いることができる。特に、臨界相対湿度が比較的小さい水分吸着材は、80℃以下の低温排熱を利用して冷熱を製造することができ、社会的な省エネ対応の冷熱装置において有効に用いることができる。
1 水分吸着材
11 金属酸化物ナノ粒子
11a 金属酸化物
11b ドーパント
12 複合塩
13 空孔
2 水

Claims (11)

  1. 多孔質体と、前記多孔質体に内包された複合塩とを含む水分吸着材であって、前記複合塩の水への溶解熱が負である水分吸着材。
  2. 前記複合塩が、水への溶解熱が正である塩と、水への溶解熱が負である塩との組み合わせである、請求項1に記載の水分吸着材。
  3. 前記複合塩が、NaCl、NaBr・2HO、KBr、KCl、CaCl・6HO、KIから選択される塩を含む、請求項1または2に記載の水分吸着材。
  4. 前記多孔質体が、SiO、TiO、ZrO、Al、MgOから選択される1以上を主成分として含む金属酸化物ナノ粒子凝集物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分吸着材。
  5. 前記金属酸化物ナノ粒子が、Al、CaO、MgO、Yから選択される1以上の添加剤を含む、請求項4に記載の水分吸着材。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の水分吸着材と、前記水分吸着材を内包する透湿性樹脂を含む吸着カプセル。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の水分吸着材と、保水性高分子ゲルとを含む吸着組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の水分吸着材、請求項に記載の吸着カプセル、または請求項に記載の吸着組成物を備えてなる吸着式冷凍機。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の水分吸着材、請求項に記載の吸着カプセル、または請求項に記載の吸着組成物を備えてなるデシカント調湿機。
  10. 金属酸化物ゾルを調製する工程と、
    前記金属酸化物ゾルと、水への溶解熱が負である複合塩とを混合する塩置換工程と、
    前記塩置換工程で得られた混合物を、噴霧乾燥する工程と
    を含む、水分吸着材の製造方法。
  11. 前記塩置換工程で空孔形成剤をさらに混合し、前記噴霧乾燥する工程の後に、噴霧乾燥して得られた粒子を焼成する工程をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
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