以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の空気入りタイヤの一例を示す幅方向片側断面図を示す。図示する本発明の空気入りタイヤ10は、1層以上、例えば1〜3層、図示する例では1層のカーカスプライ1、および、1層以上、例えば2〜6層、図示する例では2層のベルト層3を備え、カーカスプライ1およびベルト層3は、それぞれ切断コードが並列配置されてなる。また、図中の符号CLは、タイヤ赤道面を意味する。
図示するように、本発明のタイヤにおいては、カーカスプライ1が、その側部部分をビードコア2の周りに巻き返してトロイダルに配設されるとともに、カーカスプライ1のクラウン部タイヤ半径方向外側に、ベルト層3が配設されてなる。
また、本発明のタイヤにおいては、主コード補強層としての、カーカスプライ1およびベルト層3のうち少なくとも1層のコード切断端近傍、または、ビード部におけるカーカスプライの外側に配置されたチェーファーのタイヤ幅方向外側端部近傍に隣接して、補助補強層4が配設されている。この補助補強層4は、少なくとも隣接する主コード補強層のコード切断端、または、チェーファーのタイヤ幅方向外側端部近傍を、タイヤ内側および/または外側から覆う位置に配設される。例えば、図1に示す例では、補助補強層4は、カーカスプライ1のうち、ビードコア2の周りに巻き返された折返し端部のコード切断端1a近傍に隣接して、このコード切断端1aをタイヤ外側から覆う位置に、カーカスプライ1のコード切断端1aよりもタイヤ半径方向内側および外側の双方に延在して配設されている。
ここで、本発明において主コード補強層の「コード切断端近傍」とは、コード切断端を含むコード領域を示し、領域の幅は特に制限されないが、コード切断端から好ましくは3mm以内のコード区間を含み、特にはコード切断端から5mm以内、さらには8mm以内のコード区間を含むことが好ましい。すなわち、コード切断端近傍に沿って延びる補強材の長さDが、3mm以上、特には5mm、さらには8mm以上であることが好ましい。この長さDは、補助補強層の延在方向に沿って測ったものである。この理由は、従来コードによる補助補強層を主コード補強層に配置するときに、8mm未満の延在長さDであると、主コード補強層のコード端の亀裂が発生するような歪領域であるために、補助補強層においても従来コードのような切断端では、亀裂が発生しやすくなるためである。また、補強材の長さDが5mm未満であると、主コード補強層のコード切断端面の空隙と補助補強層の端面の空隙が近接するために、互いの空隙間に亀裂が入り、早期に故障しやすくなるためである。さらに、補強材の長さDが3mm未満であると、製造時の配置のバラツキで互いのコード端位置が同じ場所になることがあるためである。また、主コード補強層のコード切断端近傍に「隣接して」とは、主コード補強層と補助補強層とが並行している部分の、主コード補強層と補助補強層との間の、主コード補強層の厚み方向の距離が3mm以内、好ましくは1mm以内であることを意味する。なお、主コード補強層のコード切断端から主コード補強層のコード区間とは反対側に延びる補助補強層については、必ずしもコードと並行に配設されることを意味しない。コード切断端近傍に沿って延びる補強材の長さDが、3mm未満であると、コード端部を剥離する応力を、補助補強層で負担する効果が少なくなり好ましくない。また、コード切断端近傍に沿って延びる補助補強層とのコードの間隔が3mmを超えて離れると、やはりコード端部を剥離する応力を、補助補強層で負担する効果が少なくなるので好ましくない。
本発明のタイヤにおいては、カーカスプライ1の折返し端部のコード切断端1a近傍に補助補強層4を配設したことにより、負荷転動時のリムフランジからの突き上げによる、カーカスプライ1の折返し端部におけるそれに沿った剪断歪の集中を抑制することができ、カーカスプライ1の剛性段差に起因する亀裂の発生を抑制することができる。また、本発明に係る補助補強層4のコード切断端は、後述するようにゴムと融着しているために、補強繊維層4のコード切断端に起因する亀裂の発生も抑制できる。よって、本発明によれば、補助補強層4自体に起因する問題を生ずることなく、主コード補強層のコード切断端からの亀裂、さらには主コード補強層と補助補強層との間からの亀裂の発生や進展を抑制して、耐久性をより向上し、より一層の長ライフ化を図ったタイヤを実現することができる。また、チェーファーのタイヤ幅方向外側端部近傍に補助補強層を配設することによっても、チェーファーのタイヤ幅方向外側端部に起因する亀裂の発生を抑制することができる。
さらに、後述するように、補助補強層4に用いた複合繊維(C)は、通常のタイヤ使用温度においては本発明の目的とする耐久性向上に寄与できるコード剛性を持つとともに、高温時においてはコード剛性あるいは荷重下におけるクリープ特性が柔軟であることから、タイヤ加工における加硫工程などの製造時に、主コード補強層のコード切断端部分に隣接させて補助補強層を配設したときに、例えば、グリーンタイヤがモールドに押し付けられて加硫されるときの変形で、補助補強層が伸びずに、主コード補強層のコード切断端部分を屈曲させるなどの変形を起こさないために、主コード補強層と補助補強層とが隣接する局所でのコードの配列の乱れが少なくなり、タイヤ補強層の形状乱れによる性状の変動が少なくなるために、好ましい。
本発明に係る補助補強層4は、芯部が融点150℃以上の高融点樹脂(A)からなり、鞘部が、タイヤ加硫温度以下の融点を有するオレフィン系重合体(D)を含む樹脂材料(B)からなる芯鞘型の複合繊維(C)が埋設されてなる。ここで、「タイヤ加硫温度」とは、特に限定されないが、一般的には、工業的なタイヤ加硫温度である160℃以下を意味する。なお、重量が重いタイヤはタイヤ表面のみが過加硫でタイヤは未加硫状態とならないよう145℃程度で長時間加硫するため、145℃以下であると更に好ましい。
以下、この複合繊維(C)について説明する。
本発明に用いる芯鞘型の複合繊維(C)において、鞘部を構成する樹脂材料(B)は、タイヤ加硫時の温度以下の融点を有するオレフィン系重合体(D)を含むために、ゴム物品の補強用途に適用する際に、加硫時の加熱により、ゴムと熱融着することによって直接密着することが可能であるとのメリットを有する。すなわち、本発明に係る芯鞘繊維はゴム内に埋設されるが、かかる芯鞘繊維は、ゴムと複合するに際して、従来より、タイヤコードの接着に用いられているようなレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤等の接着剤組成物を付着させるディップ処理を行う必要がないので、接着加工工程を簡素化することができる。また、タイヤ等の補強用途において接着剤組成物を用いて有機繊維とゴムとを接着する際には、一般に、接着力を確保するために、有機繊維を繊維コーティング用ゴム(Skim Rubber)により被覆することが必要であったが、本発明に係る芯鞘繊維は、トレッドゴムと、熱融着により、繊維コーティング用ゴムを介さずに直接強い密着力を得ることが可能である。
また、本発明者の検討によれば、本発明に係る芯鞘繊維を加硫すると、その切断端部において、加硫前には露出していた芯部の切断端面が鞘部の樹脂により被覆されて、この部分においても、鞘部の樹脂とゴムとの強固な融着が得られることがわかっている。これは、加硫時の加熱により、鞘部をなす低融点の樹脂材料が流動して、高融点樹脂からなる芯部の切断端面とゴムとの間の間隙に入り込むためであると考えられ、これにより、加硫後における歪に対する耐久性を、より向上することができる。
なお、この加硫時のコード端の被覆は、加硫のときに融解しない芯部はコードの長さ方向にコードが熱収縮するが、鞘部は収縮せずに融解して流動化するので、図16A〜図16Dに図示されるような順でコード端に鞘部の樹脂が被覆されるようになる。まず最初に、加硫前の芯鞘繊維を並列に引き揃えてゴム被覆してシート状のゴム−繊維複合体のストリップを作製したのち、タイヤの補強層として補強材を配設したい任意の角度で芯鞘コードを切断する。この芯鞘コード200の芯部221と鞘部222の長さは同位置で切断したコード端面である(図16A)。次にグリーンタイヤを成形して、140℃〜190℃で加硫をおこなう時に鞘部221と芯部222のコード樹脂は、より高融点である芯部樹脂(A)は融解しないので、芯部221はコード長の方向に熱で収縮(図16B)するが、鞘部222のより低融点の樹脂材料(B)は融解して液状となり、芯が縮んでできる空隙部分に鞘部222の樹脂が流動(図16C)して、加硫時に被着ゴムと溶着できる鞘部222の樹脂材料(B)が芯部221の端面を被覆(図16D)するため、加硫後の芯鞘コード200の端面は、図17の蛍光顕微鏡写真に示されるように、芯部221のコード方向の熱収縮部分を鞘部222が被覆した状態の芯鞘繊維のゴム−繊維複合体となることによる。
本発明に係る芯鞘型の複合繊維において、芯部を形成する高融点樹脂(A)の融点は、150℃以上、好ましくは160℃以上とする。上記高融点樹脂(A)の融点が150℃未満であると、ゴム物品の加硫時に、複合繊維の芯部が溶融変形して細くなったり、繊維樹脂分子の配向性が低下するなどにより、十分に補強性能を有しないものとなる。また、本発明に係る芯鞘型の複合繊維において、鞘部を形成するオレフィン系重合体(D)は、融点の下限が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは135℃以上の範囲とする。オレフィン系重合体(D)の融点が80℃未満であると、加硫初期に充分に樹脂材料(B)の表面にゴムが流動により密着しないと、表面に微細な空隙ができるなどにより、十分な密着力が得られないおそれがある。また、オレフィン系重合体(D)の融点が120℃以上であると、硫黄と加硫促進剤とを配合したゴム組成物で工業的に用いられる可能性がある加硫処理温度としての130℃以上において、ゴムと低融点の樹脂材料とが熱融着すると同時に、ゴム組成物の加硫架橋反応を行うことができるために好ましい。なお、工業的に加硫時間を短くするために加硫温度を170℃以上とした場合には、オレフィン系重合体(D)の融点が80℃未満のときには、溶融した樹脂の粘性が低くなりすぎて加硫時に熱流動性が大きくなり、加硫時の圧力により鞘の厚みが薄くなる箇所が発生して、接着試験などの歪応力が、鞘樹脂が薄い箇所に集中し、この部位で破壊を起こしやすくなる場合があるため、オレフィン系重合体(D)の融点は、120℃以上であることがより好ましい。一方、オレフィン系重合体(D)の融点の上限が150℃未満であると、加硫温度が175℃以上の高温で、樹脂材料の熱流動性により、ゴム組成物との加硫初期での相溶性が得られる場合がある。また、オレフィン系重合体(D)の融点が145℃以下であると、一般的な加硫温度で加硫初期の樹脂の相溶性が得られるので好ましい。
本発明において用いるゴム補強用の複合繊維は、鞘部が融点の低いオレフィン系重合体(D)を含む樹脂材料(B)で、ゴムと熱融着により直接密着することが可能であり、同時に、芯部の融点が150℃以上の高融点樹脂(A)である、芯鞘構造を有する複合繊維(C)であることを特徴とする。これが例えば、単一組成のモノフィラメントコードの場合には、本発明の効果を得ることができない。従来の単一組成のポリオレフィン系樹脂などからなるモノフィラメントコードでは、低融点の場合、ゴム物品のゴムと熱融着により融体となることで濡れ広がり、被着ゴムに密着させることはできても、溶融した融体となりコード方向に配向した繊維樹脂の分子鎖が無配向になると、ゴムを補強するコード材料としての引張剛性を保持することができなくなる。一方、加熱下においても樹脂が融体とならない高融点の場合、ゴムとの溶着性が低くなる。このため、本発明の芯鞘構造をもつ複合繊維でない、単一組成のモノフィラメントコードでは、引張剛性の保持とゴムへの溶着性との背反する機能を両立させることは困難であった。
本発明に係る複合繊維(C)において、芯部を形成する融点150℃以上の高融点樹脂(A)としては、溶融紡糸により糸状形成が可能である既知の樹脂であれば、特に制限はなく、好適には、融点150℃以上であるポリオレフィン系樹脂(P)、ポリエステル樹脂(Q)、および、ポリアミド樹脂(R)のうちから選ばれる重合体を含むものとすることができる。具体的には例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル樹脂(Q)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド樹脂(R)などが挙げられ、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂などが好ましい。ポリエステル系樹脂においては特に、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂が好ましく挙げられる。
本発明の芯部を形成するポリトリメチレンテレフタレート系樹脂としては、ポリトリメチレンテレフタレートのホモ重合体、共重合体、あるいは他の混合可能な樹脂との混合物であってもよい。ポリトリメチレンテレフタレート共重合体の共重合可能な単量体としては、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等の酸成分や、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール等のグリコール成分、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール等が挙げられる。これらの共重合が可能な単量体の含量は特に制限されないが、共重合体の曲げ剛性が低下するため、10質量%以下であることが好ましい。ポリトリメチレンテレフタレート系重合体と混合可能なポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられ、50質量%以下で混合してもよい。
上記ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度[η]は、0.3〜1.2が好ましく、より好ましくは、0.6〜1.1である。極限粘度が0.3未満であると繊維の強伸度が低くなり、1.2を超えると紡糸による糸切れの発生で生産性が難しくなる。なお極限粘度[η]については、35℃のo‐クロロフェノール溶液で、オストワルド粘度計により測定することができる。また、ポリトリメチレンテレフタレートのJIS‐K‐7121に従って測定したDSCより求められる融解ピーク温度は、180℃〜240℃であることが好ましい。より好ましくは200℃〜235℃である。融解ピーク温度が180〜240℃の範囲であると、耐候性が高く、得られる複合繊維の曲げ弾性率を高くすることができる。
なお、上記ポリエステル系樹脂からなる混合物の添加物として、例えば、可塑剤、柔軟化剤、帯電防止剤、増量剤、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
また、芯部と鞘部との界面における相溶性を向上するために、後述する、不飽和カルボン酸またはその無水物の単量体を含むオレフィン系共重合体の金属塩による中和度が20%以上のアイオノマーを、1〜20質量部範囲で混合することができる。
また、芯部を形成する、融点150℃以上であるポリオレフィン系樹脂(P)としては、高融点ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に好ましくはポリプロピレン樹脂であり、さらに好ましくは結晶性のホモポリプロピレン重合体であり、さらに好ましくはアイソタクチックポリプロピレンを挙げることができる。
なお、本発明に用いる芯鞘型の複合繊維においては、芯部が融点150℃以上の高融点樹脂により構成されており、この芯部はゴムの加硫工程においても溶融することがない。本発明者らにおいて、通常の工業的な加硫条件より高温度の195℃で15分間の加硫を行い、加硫後のゴムに埋設されたコードの断面を観察したところ、鞘部の低融点オレフィン系重合体は円形であった断面が溶融して変形したが、芯部の高融点樹脂は芯鞘複合紡糸後の円形の芯部の断面形状を保ち、完全に溶融した融体とならずに、繊維破断強度も150N/mm2以上の強度を保持していた。
このように、本発明者らはコードの芯部の樹脂の融点が150℃以上であれば、ゴム物品の加硫時に195℃の加熱処理を受けても、芯鞘繊維が溶融して切断せずに、本発明にの所期の効果が得られることを見出した。なお、このように樹脂固有の融点より高い加工温度でも材料強度を保てる耐熱性がある理由は、ゴム中に埋設されることでコードが定長で加硫されるときには、JIS−K7121などの樹脂形状を拘束しないで融点を測定する方法とは異なり、繊維を収縮しない定長拘束の条件となるため、樹脂固有の融点より高融点化したと考えられる。このような繊維が収縮しない「定長拘束」の測定条件下では、繊維材料に特有な状況下の熱的現象として、高融点化する場合があることが知られている(第2版 繊維便覧、平成6年3月25日発行、編者:社団法人 繊維学会、発行:丸善株式会社、207頁13行)。この現象については、物質の融点はTm=ΔHm/△Smの式で表されるが、この式において、同じ繊維樹脂であれば結晶化度および平衡融解エンタルピーΔHmは変わらない。しかしながら、コード方向に張力がかかり定長に(あるいは延伸)して、融解時のコードの熱収縮を禁じると、コード方向に配向した分子鎖は融解で配向緩和し難くなるため、融解のエンタルピーΔSmが小さくなる結果、融点が上昇するとの考察がなされている。しかしながら、本発明のような樹脂材料で、JIS法による樹脂融点以上で融体になると想定されていたコード材料で、ゴム加硫工程に相当する温度で検討し、かつ、ゴムと熱融着により直接密着させると同時に、加硫工程における加熱下においても芯部の樹脂の剛性を両立する、ゴム物品に補強に好適な樹脂材料を検討実施した知見は、本発明者らの検討まで知られていなかった。
また、本発明の好適な例として、芯部を構成する融点が150℃以上の樹脂として、ポリプロピレン樹脂またはPPT樹脂を用いた場合、従来よりタイヤコードに用いられている公知の66ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アラミドなどの高弾性のコードよりモジュラスは低いものの、これら従来コードとゴムとの中間の弾性率になるようコード材質あるいは紡糸時の延伸倍率などの製造条件で調整できるので、従来のタイヤコードではできなかった、タイヤ内の位置にコードを配設することができるようになることが特徴として挙げられる。
例えば、タイヤなどのゴム物品の製造では、ゴムや被覆したコード材料からなる部材を組み上げて、生タイヤなどの成型された加硫前の原形を金型に入れ、ブラダーというゴム風船状の圧縮装置で、内側から金型に向け、高温・高圧の蒸気で押し付ける加硫工程がある。この際にコードのモジュラスが高すぎると、生タイヤなどの成型された加硫前の原形に配設された状態から、高温・高圧の蒸気で金型に押し付ける状態で、ゴム材料とともにコード材料が伸びて拡張されない場合があり、この場合、コードがいわゆる「切り糸(粘土などの塊を切る糸)」となって、加硫前の原形に組み上げられたゴム材料を切り離すなどの不具合が発生する。そのため、高モジュラスのコードは、従来の製造方法のままで製造上の対策を行わないと、タイヤに配設することが困難であった。特に、タイヤサイド部においてタイヤ周方向に近い角度でコードを配置する構造では、高温・高圧の蒸気の押し付けで、張力がかかったコードがタイヤ半径方向よりビード側にゴム材料を切って移動するなどの、製造上の課題が発生しやすい。
これに対し、本発明のコードは、従来の高弾性のコードに比較して、コード材料も伸びやすい材料であるので、タイヤなどのゴム物品の製造加工時にコードが「切り糸」となりコードを配置できなかった製品構造や配設位置であっても、従来の方法のままで製造が可能になる。このような、タイヤ部材を配設する設計における自由度を広くできることも、本発明の一つの特徴である。
また、鞘部を形成する樹脂材料に用いるオレフィン系重合体(D)としては、プロピレン−αオレフィン共重合体(H)、プロピレン‐非共役ジエン系共重合体(I)、不飽和カルボン酸またはその無水物の単量体を含むオレフィン系共重合体の金属塩による中和度が20%以上のアイオノマー(J)、オレフィン系単独重合体(K)等のオレフィンからなるものであればよい。
本発明に係る、プロピレン−αオレフィン系ランダム共重合体(H)は、プロピレンと共重合するコモノマーとして、既知のα−オレフィン単量体を使うことができる。また、コモノマーとして用いられるモノマーは1種類に限られず、ターポリマーのようにモノマーを2種類以上用いた多元系共重合体も好ましいものとして含まれる。また、本発明の目的とする効果が得られる範囲であれば、その他のポリプロピレンと共重合が可能なモノマーを、例えば5モル%以下の範囲含ませることができる。
これらのプロピレン−αオレフィン系ランダム共重合体(H)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、ブテン−プロピレンランダム共重合体が好ましく挙げられ、中でも、プロピレン−エチレンランダム共重合体が最も好ましい。
α−オレフィンとしては、炭素数2または4〜20のもの、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1の直鎖状または分岐状のα−オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンなどの環状オレフィン等を挙げることができる。これらのα−オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく、特に好ましいのはエチレン、1−ブテンである。
また、上記プロピレン−αオレフィン系ランダム共重合体におけるプロピレン含量としては、好ましくは20〜99.7モル%、より好ましくは75〜99.5モル%、さらに好ましくは95〜99.3モル%である。プロピレン含量が20モル%より少ないと、ポリエチレン結晶成分が生成することなどから、耐衝撃強度が不十分となることがある。また、一般的にプロピレン含量が75モル%以上であると、紡糸性が良くなるために好ましい。さらに、プロピレン含量が99.7モル%以下になると、ポリプロピレンに共重合するエチレンなどの他の単量体の付加重合により、分子鎖のランダムさが増して熱融着しやすいコードになる。さらにまた、エチレン含量は0.3モル%〜80モル%が好適である。エチレンの含量が80モル%を超えると、鞘部と被着ゴムとの融着において、鞘部の耐破壊抗力が充分でなく、鞘部の中で亀裂が生じて破壊しやすくなるので好ましくない。また、エチレンの含量が5%以下であると、紡糸時に鞘樹脂同士が接触したときの融着性が小さくなり紡糸性が好ましくなる。さらに、エチレン含量が0.3モル%未満であると、ポリプロピレンからなる重合体に、エチレン単量体が付加重合されることによる分子鎖の配向の乱れが少なく、ひいては結晶性が高くなるため、鞘部の樹脂の熱融着性が低下する。
上記プロピレン−αオレフィン共重合体(H)については、同じビニル化合物部分の繰り返し単位のNMR測定でのブロック量が、全芳香族ビニル化合物部分の20%以下である、ランダム共重合体が好ましい。ランダム共重合体が好ましい理由は、プロピレン−αオレフィン共重合体(H)の結晶性が低くより無配向であると、配向性の低い被着ゴム成分と、加熱時に分子鎖の相溶による融着性が得られやすくなるためである。
本発明に係る、プロピレン−非共役ジエン系共重合体(I)は、プロピレンと既知の非共役ジエンとを重合させて得ることができる。これらコモノマーとして用いられるモノマーは1種類に限られず、ターポリマーのようにモノマーを2種類以上用いた多元系共重合体も好ましいものとして含まれる。また、本発明の目的とする効果が得られる範囲であれば、その他のポリプロピレンと共重合が可能なモノマーを、例えば5モル%以下の範囲含ませることができ、これらモノマーが含まれる重合体についても、プロピレン−非共役ジエン系共重合体(I)とする。好ましい例としては、1−ブテン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。
非共役ジエンのモノマーとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4− エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等を挙げることができる。特に、エチレンとプロピレンに第三成分として非共役ジエンを導入する場合は、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体(EPDM)の成分が含まれると、被着ゴムとの界面の密着性とともに硫黄による共加硫性をもつ成分が含まれるので、好ましい。例えば、プロピレン−非共役ジエン系共重合体(I)としては、ジエン分として5−エチリデン−2−ノルボルネンを含むエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を好適に用いることができる。
また、上記プロピレン−非共役ジエン共重合体(I)におけるプロピレン含量としては、好ましくは20〜99.7モル%、より好ましくは30〜75モル%、さらに好ましくは40〜60モル%である。プロピレン含量が20モル%より少ないと、紡糸後にコードの鞘樹脂同士が互いにくっ付き合うブロッキング現象が発生しやすくなる。また、30モル%以下であると、紡糸時の表面の摩擦で、鞘樹脂表面が乱れやすい。一方、プロピレン含量が99.7モル%以上となると、ポリプロプレンに共重合する他の単量体が少なくなると、分子鎖のランダムさが少なくなり、ポリプロピレンの結晶性が高くなるので、融着性が低いコードになる。また、非共役ジエンの単量体の含量が、80モル%を超えると、鞘部と被着ゴムとの融着において、鞘部の耐破壊抗力が充分でなくなり、鞘部の中で亀裂が生じて破壊しやすくなるので好ましくない。さらに、エチレン含量が0.3モル%未満となると、被着ゴムとの相容性や、共加硫による接着の向上が少なくなる。
本発明に係る、不飽和カルボン酸またはその無水物の単量体を含むオレフィン系共重合体の金属塩による中和度が20%以上のアイオノマー(J)としては、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体、あるいはポリオレフィンの不飽和カルボン酸による変性体、などのカルボキシル基の一部または全部を金属で中和したアイオノマーを使用することができる。アイオノマーを構成する金属種としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの一価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉛、鉄などの多価金属などが挙げられる。これらの1種あるいは複数種の金属種を用いることができる。これらのうち、好ましくは、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、あるいは、亜鉛が好ましい。特に好ましくは、ナトリウムあるいは亜鉛である。
なお、本発明者らの検討では、鞘部の樹脂材料(B)の使用においては、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体を金属塩で20%以上を中和したアイオノマーが好ましい。この理由は、鞘部の樹脂材料が、カルボン酸などの官能基によりプロトンH+供与性の酸性雰囲気になると、被着ゴムから鞘樹脂材料に硫黄が移行して活性化しても、プロトンH+が多加硫物を還元するので、多加硫物が形成できなるため、被着ゴムとの接着性を強固にできない環境となり易いためである。なお、カルボン酸と金属塩との中和度は、100%以上であることが好ましいが、カルボン酸は弱酸であるため、カルボン酸の中和度が20%でも、本発明の効果が得られる。また、好ましいカルボン酸の中和度は20%から250%であり、さらに好ましくは、70〜150%である。
例えば、エチレン性不飽和カルボン酸のモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチルなどのメタクリル酸エステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが好ましい。例えば、アイオノマー(J)としては、エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマーを好適に用いることができる。
なお、本発明における中和度は、下記式で定義される。
中和度(%)=100×[(樹脂成分の陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数)+(塩基性無機金属化合物の金属成分のモル数×金属成分の価数)]/[(樹脂成分のカルボキシル基のモル数)
これらの陽イオン成分量および陰イオン成分量は、中和滴定などのアイオノマーの中和度の検討方法により求めることができる。
本発明に係る、オレフィン系単独重合体(K)としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンあるいは直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプリピレン、あるいは、シンジオタクティックポリプロピレンなどのプロピレン単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、1−ブテンの単独重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリノルボルネンなどが挙げられる。特に制限されないが、本発明では、高密度ポリエチレン、あるいは、ポリブタジエンなどが好ましい例として挙げられる。
これらオレフィン系共重合体樹脂の製造方法としては、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒などのオレフィン重合触媒を用いてのスラリー重合、気相重合あるいは液相塊状重合が挙げられ、重合方式としては、バッチ重合および連続重合のどちらの方式も採用することができる。
本発明における、鞘部の樹脂材料(B)に含まれるオレフィン系重合体(D)は、プロピレン−αオレフィン共重合体(H)、プロピレン−非共役ジエン系共重合体(I)、不飽和カルボン酸またはその無水物の単量体を含むオレフィン系共重合体の金属塩による中和度が20%以上のアイオノマー(J)、オレフィン系単独重合体(K)を単独で用いることができるが、2種以上を混合して用いることもできる。
また、鞘部の樹脂材料(B)には、オレフィン系重合体(D)とともに、スチレン単量体を主として連続して配列してなる単独分子鎖を含むスチレン系エラストマー(L)、加硫促進剤(M)、加硫促進助剤(N)、および、充填剤(O)のうちから選ばれる1種以上を含ませることができる。
本発明において、鞘部を構成する樹脂材料は、さらに、スチレン単量体を主として連続して配列してなる単独分子鎖を含むスチレン系エラストマー(L)を相溶化剤として含有することが好ましい。スチレン系エラストマー(L)を配合することで、樹脂材料とゴムとの相容性を高めて、接着性を向上することができる。
すなわち、低融点の樹脂材料は、本発明で規定する融点範囲を有する樹脂組成物となる、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのホモポリマー、エチレン−プロピレンランダム共重合体などの、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする組成物であるが、これらは一般的に混合した樹脂組成物は相分離した構造となることが知られている。よって、ソフトセグメントとハードセグメントとからなるブロック共重合体としてのスチレン系エラストマー(L)を添加することで、相の界面の相容化を促進することができる。スチレン系エラストマー(L)は、芯成分である高融点樹脂と鞘成分である樹脂材料との界面の密着性や、鞘成分および被着ゴムに含まれるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ポリイソプレンの構造をもつ天然ゴム(IR)などの分子構造と相互作用をもつセグメントを有すると、被着ゴムとの密着性が向上するために好ましい。特に被着ゴムにスチレン・ブタジエンゴム(SBR)が含まれるときは、鞘成分にスチレン成分を含むスチレン系ブロック共重合体を含有させると、融着における被着ゴムとの界面との相容性が高くなり、接着力が向上するために、好ましい。
なお、本発明におけるブロック共重合体は、2種類以上のモノマー単位からなる高分子であって、その少なくとも1つのモノマー単位を、主として長く連続して配列してなる単独分子鎖(ブロック)を形成している共重合体を意味する。また、スチレン系ブロック共重合体は、スチレン単量体を主として長く連結して配列したブロックを含むブロック共重合体を意味する。
スチレン系エラストマー(L)としては、具体的には、スチレン系ブロックコポリマーを用いることができ、スチレンと共役ジオレフィン化合物とを含むものが好ましい。より具体的には、スチレン系エラストマー(L)としては、スチレン−ブタジエン系重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系のブロック重合体、および、これらスチレンとブタジエンとのブロックコポリマーの二重結合を水素添加して完全水添化または部分水添化したポリマーなどが挙げられる。また、スチレン系エラストマーは、マレイン酸変性されていてもよい。
スチレン−ブタジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、あるいは、旭化成ケミカルズ(株)商品S.O.E.などの両末端にスチレンブロックを、主鎖にスチレンのブロックとブタジエンのランダム共重合体からなるブロックを有するブロック共重合体の水素添加物などを挙げることができる。ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)系ブロック重合体としては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS)などが挙げられる。スチレン−イソプレン系ブロック重合体としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIBS)などが挙げられる。本発明においては、これらの中でも特に、ゴムとの接着性および相容性の観点から、スチレン‐イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体およびスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を、好適に用いることができる。また、被着ゴムがBR、SBR、NRなどの極性が少ないゴムからなる組成物の場合は、スチレン系ブロック共重合体あるいはその水添化物は、変性などにより極性が強い官能基を持たない方が、相溶性が高くなるので、好ましい。
スチレン−ブタジエン系重合体の水素添加物に、さらに極性基を導入する場合の変性は、例えば、水素添加物にアミノ基、カルボキシル基または酸無水物基を導入することによって行うことができる。これら特に限定されないが、本発明においては、極性基を導入する変性として、3−リチオ−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノプロパン、2−リチオ−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノプロパン等など、不飽和アミノ基の導入による変性を、好ましい例として挙げることができる。
スチレン系エラストマー(L)の含有量は、鞘部を構成する樹脂材料に含まれるオレフィン系重合体等の樹脂成分の総量100質量部に対し、0.1〜30質量部、特には、1〜15質量部とすることができる。スチレン系エラストマー(L)の含有量を上記範囲内とすることで、樹脂材料とゴムとの相容性向上効果を、良好に得ることができる。これらスチレン系エラストマー(L)は、エラストマーであるために結晶構造がなく非結晶部分のみであるので、高分子の加熱・加温により結晶部分がこわれて流動性を示すようになる融点がない。従って、同様にアモルファスである被着ゴムとは、一般の融解を示すオレフィン系重合体(D)のように高分子鎖の結晶部分をこわして流動性をもたせるためにポリマーの融点以上に加熱・加温しなくても、熱により流動性が得られる。本発明に係るスチレン系エラストマー(L)は、被着ゴムとのポリマーとの相溶性を高める成分であるため、樹脂材料(B)に含ませて、熱によりオレフィン系重合体(D)が流動すると、被着ゴムとの相溶性を高くすることにより、より被着ゴムと樹脂材料(B)との溶着性を高めることができる。
また、本発明において、鞘部を構成する樹脂材料は、さらに、加硫促進剤(M)を含有することができる。加硫促進剤(M)を含有することで、被着ゴムに含まれる硫黄分が、加硫促進剤と多加硫物の遷移状態になる効果により、ゴム界面での相互作用が得られ、ゴム中から鞘部樹脂の表面分布あるいは樹脂内部への移行する硫黄量が増大する。また鞘部樹脂の成分に硫黄加硫可能な共役ジエンが含まれると、被着ゴムとの共反応を促進して、樹脂材料とゴムとの接着性をより向上することができる。
加硫促進剤としては、塩基性シリカ、第1級、第2級、第3級アミン、該アミンの有機酸塩もしくはその付加物並びにその塩、アルデヒドアンモニア系促進剤、アルデヒドアミン系促進剤などのルイス塩基性化合物が挙げられ、その他の加硫促進剤としては、加硫促進剤の硫黄原子は系内の環状硫黄に接近するとこれを開環し、遷移状態となり、活性な加硫促進剤−多加硫物を生成するなどにより硫黄を活性化できる、スルフェンアミド系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤など、が挙げられる。
ルイス塩基性化合物としては、ルイスの酸塩基の定義におけるルイス塩基であり、電子対を供与し得る化合物であれば、特に限定されることはない。これらは窒素原子上に孤立電子対を有する窒素含有化合物などを挙げることができ、具体的には、ゴム業界で既知の加硫促進剤のうち塩基性のものを用いることができる。
塩基性化合物としては、具体的には、炭素数5〜20の脂肪族の第1級、第2級もしくは第3級アミンが挙げられ、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、ココナッツアミン、ラウリルアミン、1−アミノオクタデカン、オレイルアミン、牛脂アミンなどのアルキルアミン、ジブチルアミン、ジステアリルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミンなどのジアルキルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルココナッツアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルチミルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、などのトリアルキルアミン等に挙げられる非環式モノアミンおよびその誘導体並びにこれらの塩、エチレンジアミン、牛脂プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレンイミン等に挙げられる非環式ポリアミンおよびその誘導体並びにその塩、シクロヘキシルアミンなどの脂環式ポリアミン及びその誘導体並びにこれらの塩、ヘキサメチレンテトラミンなどの脂環式ポリアミン及びその誘導体並びにこれらの塩、アニリン、アルキルアニリン、ジフェニルアニリン、1−ナフチルアニリン、N−フェニル−1−ナフチルアミン等に挙げられる芳香族モノアミンおよびその誘導体ならびにこれらの塩、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、N―アルキルフェニレンジアミン、ベンジジン、グアニジン類、n−ブチルアルデヒドアニリン、などの芳香族ポリアミン化合物およびその誘導体、などが挙げられる。
なお、グアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられる。これらのうち1,3−ジフェニルグアニジンの反応性が高いので好ましい。
上記アミンと塩を形成する有機酸としては、カルボン酸、カルバミン酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジチオリン酸等が例示される。また上記アミンと付加物を形成する物質としては、アルコール類、オキシム類等が例示される。アミンの有機酸塩もしくは付加物の具体例としては、n−ブチルアミン・酢酸塩、ジブチルアミン・オレイン酸塩、ヘキサメチレンジアミン・カルバミン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのジシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
また例えば、窒素原子上に孤立電子対を有することで塩基性となる含窒素複素環式化合物としては、ピラゾール、イミダゾール、ピラゾリン、イミダゾリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジンなどの単環式の含窒素化合物およびその誘導体、ベンズイミダゾ−ル、プリン、キノリン、ペテリジン、アクリジン、キノキサリン、フタラジンなどの複環式の含窒素化合物およびその誘導体、等を挙げることができる。
さらに例えば、窒素原子以外のヘテロ原子を有する複素環式化合物としては、あるいは、オキサゾリン、チアゾリン等の窒素およびその他のヘテロ原子を含有する複素環式化合物及びその誘導体が挙げられる。
その他の加硫促進剤としては、具体的には、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸類、キサントゲン酸類、の既知の加硫促進剤が挙げられる。
チオウレア類としては、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3−ジ(o−トリル)チオ尿素、1,3−ジ(p−トリル)チオ尿素、1,1−ジフェニル−2−チオ尿素、2,5−ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1−(1−ナフチル)−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、p−トリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素等が挙げられる。これらのうち、N,N’−ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素およびN,N’−ジメチルチオ尿素は、反応性が高いので好ましい。
チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト−ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらのうち、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールは、反応性が高く好ましい。また例えば、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩は、比較的に無極性のポリマーに添加する場合でも溶解度が高いため、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、特に好ましい例である。
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらのうち、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドおよびN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドは、反応性が高いので好ましい。また例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドは、比較的に無極性のポリマーに添加する場合でも溶解度が高いため、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、特に好ましい例である。
チウラム類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらのうち、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドは反応性が高いので好ましい。また、促進剤化合物に含まれるアルキル基が大きくなると比較的に無極性であるポリマーの場合では溶解度が高くなる傾向があり、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、テトラブチルチウラムジスルフィドあるいはテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどは、特に好ましい例である。
ジチオカルバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。
これらのうち、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛は、反応性が高いため望ましい。また、促進剤化合物に含まれるアルキル基が大きくなると比較的に無極性であるポリマーの場合では溶解度が高くなる傾向があり、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛などは、特に好ましい例である。
キサントゲン酸塩類としては、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2−エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛は、反応性が高いので好ましい。
上記加硫促進剤(M)は、無機充填剤、オイル、ポリマー等に予備分散させた形で、ゴム補強用芯鞘繊維の鞘部樹脂に配合に用いてもよい。また、これらの加硫促進剤および遅延剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
加硫促進剤(M)の含有量は、鞘部を構成する樹脂材料に含まれるオレフィン系重合体等の樹脂成分の総量100質量部に対し、0.05〜20質量部、特には、0.2〜5質量部とすることができる。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることで、樹脂材料とゴムとの接着性向上効果を、良好に得ることができる。
鞘部を構成する樹脂材料には、被着ゴム組成物との界面の密着性を高めるなどの目的のために、上述した成分以外に、ポリプロピレン系共重合体に架橋された熱可塑性ゴム(TPV)、あるいは、JIS K6418に記載の熱可塑性エラストマーの分類における「その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)」などを含有させることができる。これらは、部分的にまたは高度に架橋されたゴムを、樹脂材料の熱可塑性樹脂組成物のマトリックスの連続相に細かく分散させることができる。架橋された熱可塑性ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴムなどが挙げられる。また、その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)としては、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂、あるいは、トランス−ポリイソプレン樹脂などが挙げられる。
なお、上記高融点樹脂およびオレフィン系重合体には、耐酸化性などの他の性質を付加させるために、本発明の効果や、紡糸時などにおける作業性を著しく損なわない範囲内で、通常樹脂に添加される添加剤を配合することもできる。この付加的成分としては、ポリオレフィン樹脂用配合剤等として使用される従来公知の核剤、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、プロセスオイル、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤(O)、金属不活性剤、過酸化物、抗菌防黴剤、蛍光増白剤、およびゴム組成物用配合剤等として使用される加硫促進助剤(N)といった各種添加剤や、それ以外の添加物を使用することができる。
加硫促進助剤(N)としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの一価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉛、鉄などの多価金属などのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物あるいはアルコキシド等の塩基性無機金属化合物が挙げられる。
具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。
これらの中でも、アルカリ金属塩としては、金属酸化物あるいは水酸化物が好ましく、特に、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛が好適である。
充填剤(O)としては、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、カーボンブラック、雲母族などの無機粒子状担体や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンゼン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体などを挙げることができる。これら充填剤は、鞘部と被着ゴムとの接着において、鞘部の耐破壊抗力が充分でなく、鞘部の中で亀裂が生じて破壊する場合などにおいて、鞘部を補強するフィラーとして配合することができる。
カーボンブラックとしては、SAFカーボンブラック、SAF−HSカーボンブラック、ISAFカーボンブラック、ISAF−HSカーボンブラック、ISAF−LSカーボンブラック等のファーネスブラック等が挙げられる。
核剤としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウムなどを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤として、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルペンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤としては、トリス(ミックスド、モノおよびジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。硫黄系酸化防止剤としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。
ヒンダードアミン系の安定剤としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアロイドなどの高級脂肪酸アミド、シリコンオイル、高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
帯電防止剤としては、高級脂肪酸グリセリンエステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミド脂肪酸モノエステルなどを挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ロジン系プロセスオイルおよび天然植物性プロセスオイル等が挙げられる。好ましくは、ナフテン系プロセスオイルあるいはナフテン系プロセスオイルとストレートアスファルトの混合物などが挙げられる。
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等を挙げることができる。
特に、芯部と鞘部との組合せの観点からは、同じオレフィン系樹脂として、芯部について高融点ポリオレフィン系樹脂を用いるとともに、鞘部について低融点ポリオレフィン系樹脂を用いることが、芯部と鞘部の相溶性が良好である点から、好ましい。芯部と鞘部とにいずれもオレフィン系樹脂を用いることで、芯部と鞘部とに異なる種類の樹脂を用いた場合と異なり、芯鞘重合体界面における接合力が高く、芯部/鞘部間での界面剥離に対して十分な耐剥離抗力を有するものとなるので、長期間にわたり十分に複合繊維としての特性を発揮することができるものとなる。具体的には、芯部の高融点ポリオレフィン系樹脂として、融点が150℃以上の結晶性のプロピレン単独重合体を用い、鞘部の低融点ポリオレフィン系樹脂として、エチレン‐プロピレン共重合体あるいはエチレン‐ブテン‐プロピレン三元共重合体などの、ポリプロピレンと共重合が可能な成分とポリプロピレンとの共重合によるポリプロピレン系共重合樹脂、特には、エチレン−プロピレンランダム共重合体を用いることが好ましい。芯部の高融点ポリオレフィン系樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンであると、紡糸時の繊維形成性などが良好で、特に好ましい。
この場合の高融点ポリオレフィン系樹脂の溶融流動指数(メルトフローレート,MFR)(MFR1)および低融点ポリオレフィン系樹脂の溶融流動指数(MFR2)は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはないが、0.3〜100g/10minが好ましい。高融点ポリオレフィン系樹脂以外の、芯部に用いる高融点樹脂の溶融流動指数についても、同様である。
特に、高融点ポリオレフィン系樹脂を含む高融点樹脂の溶融流動指数(MFR1)は、好ましくは0.3〜18g/10min、特に好ましくは0.5〜15g/10min、さらに好ましくは1〜10g/10minの範囲のものから選ぶことができる。高融点樹脂のMFRが上記の範囲内にあることにより、紡糸引取性、延伸性が良好になり、またゴム物品を製造する加硫工程での加熱下で芯部の高融点樹脂の融体が流動せずに、コードの形態を保持することができるためである。
また、低融点ポリオレフィン系樹脂の溶融流動指数(MFR2)は、好ましくは5g/10min以上、特に好ましくは5〜70g/10min、さらに好ましくは10〜30g/10minである。鞘部の低融点ポリオレフィン系樹脂の熱融着性を上げるには、被着するゴムとの間隙に樹脂が流動して埋まりやすいため、MFRが大きな樹脂がよい。その反面、MFRが大きすぎると、複合繊維が配置される近傍に他の補強部材、例えば、プライコードやビードコアなどがある場合には、複合繊維を被覆するゴムに意図しない空隙があると、プライコードの繊維材料の表面に、低融点ポリオレフィン系樹脂の溶融した融体が濡れ広がってしまう場合があるため、特には、70g/10min以下であることが好ましい。さらに好ましくは30g/10min以下であり、この場合、複合繊維同士が接触している場合に溶融した低融点ポリオレフィンの融体が互いに濡れ広がり塊状の繊維結合体となるような、繊維間で融着する現象の発生が少なくなるので、好ましい。また、20g/10min以下であると、融着するゴムを剥離するときに鞘部分の樹脂の耐破壊抗力が高くなるために、ゴムと強固に密着するものとなり、さらに好ましい。
なお、MFR値(g/10min)は、JIS−K−7210に準じて、ポリプロピレン系樹脂材料のメルトフローレートは温度230℃、21.18N(2160g)荷重下で、ポリエチレン系樹脂材料のメルトフローレートは温度190℃、21.18N(2160g)荷重下で、それぞれ測定されたメルトフローレートである。
本発明における複合繊維における芯部と鞘部との比率としては、複合繊維に占める芯部の比率が10〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜80質量%である。芯部の比率が小さすぎると、複合繊維の強度が低下して、十分な補強性能が得られないおそれがある。特には、芯部の比率が50質量%以上であると、補強性能を高くすることができるために好ましい。一方、芯部の比率が大きすぎると、鞘部の比率が少なすぎて、複合繊維において芯部が露出しやすくなり、ゴムとの密着性が十分得られないおそれがある。
本発明において、補助補強層に適用する際の複合繊維(C)の形態は、特に限定されないが、モノフィラメント、または、10本以下のモノフィラメントを束ねてなるコードであることが好ましく、更に好ましくは、モノフィラメントコードである。この理由は、本発明における複合繊維(C)の繊維集合体は、10本以上のモノフィラメントを束ねてなるコード、撚りコード、不織布、あるいは織物の繊維形態であると、ゴム中で繊維集合体を加硫したときに、鞘部を構成する低融点の樹脂材料(B)が溶融するため、互いのフィラメントが溶着し合って、融体が互いに浸透することで、ゴム物品中で塊状の異物を形成する場合があるためである。このような異物が生成すると、タイヤ使用時の転動による歪で、ゴム物品中の塊状の異物から亀裂が進展し、セパレーションが発生するおそれがある。このため、複合繊維(C)がゴム物品中で繊維集合体となるときには、フィラメントを束ねられる本数が多くなるほどコード間にゴムが浸透しにくくなって、塊状の異物が形成しやすくなるため、一般に束ねるフィラメントの本数は10本以下が好ましい。
また特には、補助補強層としては、複合繊維(C)がモノフィラメントコードであると好ましい。この理由は、モノフィラメントコードは通常の撚りコードに比して、初期伸びが小さいので、補助補強層の主コード補強層に対する拘束力をより高めて、前記剪断歪をより効果的に分散し、抑制して、前記亀裂抑制効果をより高めることができるためである。
本発明の複合繊維(モノフィラメント)の製造方法は、芯材用および鞘材用の2台の単軸押出機により、芯鞘型複合紡糸口金を用いて、湿式加熱延伸方式で行うことができる。紡糸温度は、鞘成分については140℃〜330℃、好ましくは160〜220℃、芯成分については200〜330℃、好ましくは210℃〜300℃とすることができる。湿式加熱は、例えば、湿式加熱装置100℃、熱水浴55〜100℃、好適には95〜98℃で実施できる。一度冷却してから再加熱して延伸すると、鞘部の結晶化が進むため、熱融着性の点から好ましくない。延伸倍率は、芯部の結晶化の点から、1.5倍以上とすることが好ましい。
また、本発明において、複合繊維(C)の繊度、すなわち、繊維太さは、50dtex以上4000dtex以下の範囲が好ましく、より好ましくは500dtex以上1200dtex以下である。補強材の繊維太さが50dtex未満であると、強度が低くなってコードが破断しやすい。特に、タイヤの場合、製造時の各種工程において加工時のコード切れを抑制するためには、補強材の繊維太さが500dtex以上であるとより好ましい。補強材の繊維太さは、タイヤ等のゴム物品の各部材に配設できるものであれば特に上限はないが、4000dtex以下とすることが好ましい。この理由は、モノフィラメントコードの場合、紡糸時に繊維太さが大きいと、紡糸速度を遅くするため加工時の経済性が低下するほか、糸の太さが太くなると、ボビンなどの巻き付け治具に巻き付けるときに曲がり難くなり、作業性が低下するためである。なお、本発明における繊維太さは、モノフィラメントの場合はモノフィラメント単独で測定した、繊維サイズ(JIS L 0101に準拠)を意味する。
なお、本発明に係る複合繊維(C)からなるモノフィラメントコードは、単繊維の太さが50dtex以上であっても、ゴムとの密着が高いことが、一つの特徴である。複合繊維(C)の繊維太さが50dtex未満になると、接着剤組成物の接着や、繊維樹脂とゴムの融着が無い繊維でも、ゴムとの密着での課題が発生しにくい。これは、単繊維の径が細くなると、接着の剥離する力より、コードが切断する応力の方が小さくなるために、剥離などにより接着性を評価すると、コードとゴムとの界面が剥離される前に、コードが切断してしまうためである。これらはいわゆる「毛羽接着」とも呼ばれ、毛羽程度の単繊維太さである50dtex未満において、観察されうる現象である。
また、本発明のタイヤにおいて、複合繊維をゴム被覆してなる補助補強層4の、加硫後における引張破断強度は、好適には29N/mm2以上である。
さらに、本発明のタイヤにおいて複合繊維(C)は、タイヤ半径方向から0°以上90°以下の、任意の方向に配設することができる。なお、好ましい補強材の配向方向は、端部に接着処理の被覆がない主コード補強層の補強コードが配設された方向から0°であると、コード端面から垂直方向への剥離を抑制できるため好ましいが、それ以外の角度で配設しても、コード端付近を被覆するため、コード端の剥離を抑制する効果を得ることができる。
本発明において、芯鞘繊維の打込み数としては、5〜65本/50mmであることが好ましく、10〜60本/50mmであることがより好ましい。芯鞘繊維の埋設密度が、5本/50mm未満であると、亀裂発生の抑制効果が、不十分となるおそれがある。また、芯鞘繊維の打込み数が、65本/50mmを超えると、芯鞘繊維が近接したり、互いに融着したりすると繊維界面付近が歪応力で剥離しやすくなるため、好ましくない。
本発明のタイヤは、主コード補強層のコード切断端近傍に隣接して、少なくとも隣接する主コード補強層のコード切断端をタイヤ内側および/または外側から覆う位置に補助補強層が配設されており、この補助補強層が特定の芯鞘繊維からなるものであればよく、その内部構造については一般の空気入りタイヤと同様であり、所望に応じ適宜決定することができる。
図1に示すタイヤ10は、一対のビード部5と、一対のビード部5からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部6と、一対のサイドウォール部6間に跨って延び接地部を形成するトレッド部7とからなる。また、図示するタイヤ10は、一対のビード部5にそれぞれ埋設されたビードコア2間にトロイド状に跨って延在する1層以上のカーカスプライ1を骨格とし、そのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置された、1層以上のベルト層3を備えている。また、図示はしないが、カーカスプライ1のタイヤ半径方向内側にはインナーライナーが配設されており、ビードコア2のタイヤ半径方向外側には、通常、ビードフィラー8が配置される。
図2〜5に、本発明の空気入りタイヤの他の例を示す幅方向部分断面図を示す。
図2に示すタイヤ20においては、補助補強層14Aおよび14Bが、主コード補強層としてのカーカスプライ11の折返し端部のコード切断端11a近傍に隣接して、このコード切断端11aをタイヤ外側および内側から挟み込むように覆う位置に、カーカスプライ11のコード切断端11aよりもタイヤ半径方向内側および外側の双方に延在して配設されている。本発明においてはこのように、コード切断端11aのタイヤ内側に補助補強層を配置してもよい。この場合も、カーカスプライ11の折返し端部のコード切断端11aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号12は、ビードコアを示し、18はビードフィラーを示す。
また、図3に示すタイヤ30においては、補助補強層24が、主コード補強層としてのカーカスプライ21の折返し端部のコード切断端21a近傍に隣接して、このコード切断端21aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、カーカスプライ21のコード切断端21aよりもタイヤ半径方向内側に延在して、配設されている。この場合も、カーカスプライ21の折返し端部のコード切断端21aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号22はビードコアを示し、28はビードフィラーを示す。
さらに、図4に示すタイヤ40においては、補助補強層34Aおよび34Bが、主コード補強層としてのベルト層33のコード切断端33a近傍に隣接して、このコード切断端33aをそれぞれタイヤ外側から挟み込むように覆う位置に、ベルト層33のコード切断端33aよりもタイヤ幅方向内側および外側の双方に延在して配設されている。この場合も、ベルト層33のコード切断端33aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号31はカーカスプライを示す。
さらに、図5に示すタイヤ50においては、補助補強層44が、主コード補強層としてのベルト層43のうちの一部のコード切断端43a近傍に隣接して、このコード切断端43aを、タイヤ幅方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、ベルト層43のコード切断端43aよりもタイヤ幅方向内側に延在して、配設されている。この場合も、ベルト層43のコード切断端43aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号41はカーカスプライを示す。
さらにまた、図6に示すタイヤ60においては、補助補強層54が、主コード補強層としてのカーカスプライ51の折返し端部のコード切断端51a近傍に隣接して、このコード切断端51aをタイヤ内側から挟み込むように覆う位置に、カーカスプライ51のコード切断端51aよりもタイヤ半径方向内側および外側の双方に延在して配設されている。本発明においてはこのように、コード切断端51aのタイヤ内側に補助補強層を配置してもよい。この場合も、カーカスプライ51の折返し端部のコード切断端51aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号52は、ビードコアを示し、58はビードフィラーを示す。
さらにまた、図7に示すタイヤ70においては、補助補強層64が、主コード補強層としてのベルト層63のうちの一部のコード切断端63a近傍に隣接して、このコード切断端63aを、タイヤ幅方向外側から覆う位置に、ベルト層63のコード切断端63aよりもタイヤ幅方向内側に延在して、配設されている。この場合も、ベルト層63のコード切断端63aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号61はカーカスプライを示す。
さらにまた、図8に示すタイヤ80においては、補助補強層74が、主コード補強層としてのベルト層73のうちの一部のコード切断端73a近傍に隣接して、このコード切断端73aを、タイヤ幅方向外側から覆う位置に、ベルト層73のコード切断端73aよりもタイヤ幅方向内側に延在して、配設されている。この場合も、ベルト層73のコード切断端73aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号71はカーカスプライを示す。
さらにまた、図9に示すタイヤ90においては、補助補強層84が、主コード補強層としてのベルト層83のうちの一部のコード切断端83a近傍に隣接して、このコード切断端83aを、タイヤ幅方向内側から覆う位置に、ベルト層83のコード切断端83aよりもタイヤ幅方向内側に延在して、配設されている。この場合も、ベルト層83のコード切断端83aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号81はカーカスプライを示す。
なお、本発明においては、コード補強層が複数層ある場合、少なくともその一部に隣接して補助補強層が配置されていれば、本発明の効果を得ることができるが、好ましくは、タイヤ転動時に遠心力の負荷が大きくなるタイヤ半径方向外側に位置するコード補強層、あるいは、カーブなどでタイヤ横方向の応力による歪が大きくなるタイヤ幅方向外側に位置するコード補強層に配設することが、好ましい。
なお、本発明は、タイヤ種には制限なく、図示するタイヤは乗用車用タイヤであるが、トラック・バス用タイヤや大型タイヤなど、いかなるタイヤに適用することもできる。
図10は、本発明のタイヤの他の例のトラック・バス用タイヤを示す幅方向片側断面図である。図示するタイヤ100は、接地部を形成するトレッド部97と、このトレッド部97の両側部に連続してタイヤ半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部96と、各サイドウォール部96の内周側に連続するビード部95と、を備えている。トレッド部97、サイドウォール部96およびビード部95は、一方のビード部95から他方のビード部95にわたってトロイド状に延在する少なくとも1枚、図示例では2枚のカーカスプライ91からなるカーカスにより補強されている。また、図示するトラック・バス用タイヤ100においては、一対のビード部95にはそれぞれビードコア92が埋設され、カーカス91は、このビードコア92の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されている。さらに、ビードコア92のタイヤ半径方向外側には、ビードフィラー98が配置されている。
図10に示すタイヤ100においては、補助補強層94A,94Bが、主コード補強層としての2枚のカーカスプライ91の折返し端部のコード切断端91a近傍に隣接して、このコード切断端91aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、カーカスプライ91のコード切断端91aよりもタイヤ半径方向内側に延在して配設されている。この場合も、カーカスプライ91の折返し端部のコード切断端91aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。
図11に示すタイヤ110においては、補助補強層104A,104Bが、主コード補強層としてのカーカスプライ101の折返し端部のコード切断端101a、および、ビード部におけるカーカスプライ101の外側に配置されたチェーファー109のタイヤ幅方向外側端部109aの近傍に隣接して、このコード切断端101aおよびタイヤ幅方向外側端部109aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、カーカスプライ101のコード切断端101aまたはタイヤ幅方向外側端部109aよりもタイヤ半径方向内側に延在して配設されている。この場合も、カーカスプライ101の折返し端部のコード切断端101a、および、チェーファー109のタイヤ幅方向外側端部109aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号102は、ビードコアを示し、108はビードフィラーを示す。また、チェーファーとしては、例えば、ナイロンからなるナイロンチェーファーを用いることができる。
図12に示すタイヤ120においては、補助補強層114が、ビード部におけるカーカスプライ111の外側に配置されたチェーファー119のタイヤ幅方向外側端部119aの近傍に隣接して、このタイヤ幅方向外側端部119aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、タイヤ幅方向外側端部119aよりもタイヤ半径方向内側に延在して配設されている。この場合も、チェーファー119のタイヤ幅方向外側端部119aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号112は、ビードコアを示し、118はビードフィラーを示す。
図13に示すタイヤ130においては、補助補強層124A,124Bが、主コード補強層としての2枚のカーカスプライ121の折返し端部のコード切断端121a近傍に隣接して、このコード切断端121aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、カーカスプライ121のコード切断端121aよりもタイヤ半径方向内側に延在して配設されている。この場合も、カーカスプライ121の折返し端部のコード切断端121aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号122は、ビードコアを示し、128はビードフィラーを示す。
図14に示すタイヤ140においては、補助補強層134A,134Bが、主コード補強層としてのカーカスプライ131の折返し端部のコード切断端131a、および、ビード部におけるカーカスプライ131の外側に配置されたチェーファー139のタイヤ幅方向外側端部139aの近傍に隣接して、このコード切断端131aおよびタイヤ幅方向外側端部139aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、カーカスプライ131のコード切断端131aまたはタイヤ幅方向外側端部139aよりもタイヤ半径方向内側に延在して配設されている。この場合も、カーカスプライ131の折返し端部のコード切断端131a、および、チェーファー139のタイヤ幅方向外側端部139aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号132は、ビードコアを示し、138はビードフィラーを示す。
図15に示すタイヤ150においては、補助補強層144が、ビード部におけるカーカスプライ141の外側に配置されたチェーファー149のタイヤ幅方向外側端部149aの近傍に隣接して、このタイヤ幅方向外側端部149aを、タイヤ半径方向外側から包み込むようにして、タイヤ外側および内側から覆う位置に、タイヤ幅方向外側端部149aよりもタイヤ半径方向内側に延在して配設されている。この場合も、チェーファー149のタイヤ幅方向外側端部149aからの亀裂の発生を抑制する効果を得ることができる。なお、符号142は、ビードコアを示し、148はビードフィラーを示す。
本発明において、上記芯鞘繊維が埋設された複合体ストリップを製造する方法としては、まず、上記芯鞘繊維を、並列に引き揃えてゴム被覆することにより、シート状のゴム−繊維複合体を作製する(複合体作製工程)。この工程は、例えば、所定本数の芯鞘繊維を並列に引き揃えて、ロール間を通すことで上下からゴムにより被覆する手法の他、共押出、または、ノズルから芯鞘状に紡糸した繊維を、水平方向に移動するゴムシート上に載せて移送し、さらにその上からゴムにより被覆する手法などにより実施することができる。このシート状のゴム−繊維複合体は、厚み方向に1本の芯鞘繊維を含み、例えば、シート厚みは、0.5mm〜1.5mmとすることができる。この工程において、芯鞘繊維の引き揃え間隔(打込み間隔)を適宜調整することにより、トレッドゴムへの芯鞘繊維の打込み数を変更することができる。
次に、得られたゴム−繊維複合体を、芯鞘繊維の長手方向に対しタイヤの補助補強層として補強材を配設したい任意の角度、例えば垂直に、例えば20〜1000mm間隔で切断して、切断したシートを順次にジョイントして、ゴム−繊維複合体の複合体ストリップを得る(切断工程)。
次に、補助補強層をカーカスプライのコード切断端に隣接して配置する場合には、グリーンタイヤの1次成形において、得られた複合体ストリップを、カーカスプライの円筒状成形体におけるカーカス折返し部である、カーカスプライのコード切断端近傍に隣接して、少なくともコード切断端をタイヤ外側から全周にわたり覆うようにして貼り付ける(貼付け工程)。次に、グリーンタイヤの2次成形において、複合体ストリップをカーカスプライとともに所定の外径に拡張することにより(拡張工程)、成型済みグリーンタイヤを製造する。
また、補助補強層をベルト層のコード切断端に隣接して配置する場合には、特に限定されないが、例えば、グリーンタイヤの2次成形において、複合体ストリップを、ベルト層のコード切断端近傍に隣接して貼り付けて配設し、その上にトレッド部となるゴム組成物を被覆することなどにより、成型済みグリーンタイヤを製造することができる。補助補強層をチェーファーのタイヤ幅方向外側端部近傍に配置する場合も、これらに準じて行うことができる。
上記のようにして得られたグリーンタイヤを、常法に従い、140℃〜190℃の加硫温度で、3〜50分間加硫することにより(加硫工程)、本発明のタイヤを製造することができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
補助補強層の補強コードとしては、真空乾燥機を用いて乾燥させた、下記表1に記載された材料を鞘部材料および芯部材料として用いた複合繊維(C)を使用した。
1)供試繊維の製造
芯成分および鞘成分として、上記表1に示す材料を用いて、芯材用および鞘材用の2台のφ50mmの単軸押出機で、各表中に示す紡糸温度にて、口径が1.3mmの芯鞘型複合紡糸口金を用いて、鞘芯比率が質量比率で35:65となるように、吐出量5.9g/分程度で調整して、紡糸速度60m/分にて溶融紡糸し、95℃の熱水浴で1.7倍となるように延伸して、繊度550dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得た。
2)ゴム‐繊維複合体ストリップの製造
下記表2,3中に示す芯部および鞘部の材料を用いて得られた芯鞘型の複合繊維(繊度:550dtex)を、並列に引き揃えて、打込み数42本/50mmにてゴム被覆することにより、厚み0.60mmのシート状のゴム‐繊維複合体を製造した。このゴム‐繊維複合体を、表中に示す補強層の配向角度と幅に合わせて才断して、才断した複合体ストリップを横方向に隙間なく貼り合わせて、ゴム−繊維複合体トリートを得た。
3)供試タイヤの製造
i)補助補強層をカーカスプライのコード切断端に隣接して配置したタイヤの製造
グリーンタイヤの1次成形において、表中に記載された角度となるように上記複合体トリートを、幅30mmで、カーカスプライのコード切断端近傍に隣接して、少なくともコード切断端をタイヤ外側から全周にわたり覆うように、コード切断端位置がストリップ幅の中央になるように貼り付け(図1)た後、グリーンタイヤの2次成形において、複合体ストリップをカーカスプライとともに所定の外径に拡張したグリーンタイヤを、加硫温度188℃、加硫時間18分で加硫して、実施例1〜3、参考例1〜4および比較例1〜3の供試タイヤを作製した。この供試タイヤにおいて、カーカスプライと補助補強層との間の、カーカスプライの厚み方向の距離は0.8mmであった。
なお、補助補強層の配向角度は、タイヤ半径方向と補強材のなす角度とする。
ii)補助補強層をベルト層のコード切断部分に隣接して配置したタイヤの製造
グリーンタイヤの2次成形において、表中に記載する角度となるように複合体ストリップを、幅25mmで、ベルト層(1ベルト上、2ベルト下)のコード切断端近傍に隣接して、タイヤ周方向の全周にわたって、コード切断端位置がストリップ幅の中央になるように貼り付けて配設した(図8)後、その上にトレッド部となるゴム組成物を被覆し、カーカスプライと共に所定の外径に拡張して、成形済みグリーンタイヤを製造した。なお、タイヤ径方向外側の補助補強層端は、1ベルトプライ外側端から7mm外側になるように配置した。
このグリーンタイヤを、加硫温度188℃、加硫時間18分で加硫して、実施例4および比較例4の供試タイヤを作製した。この供試タイヤにおいて、ベルト層と補助補強層との間の、ベルト層の厚み方向の距離は0.85mmであった。
なお、補助補強層の配向角度は、タイヤ幅方向と補強材のなす角度とする。
(ドラム走行耐久距離)
得られた実施例1〜3、参考例1〜4および比較例1〜3の供試タイヤ(タイヤサイズ:205/60R15)について、タイヤへの充填空気圧を200kPaとし、6.0J×15インチのリムに装着して、JATMA YEAR BOOK(2014、日本自動車タイヤ協会規格)で定めるタイヤサイズ荷重の負荷能力555kgの1.8倍である荷重999kgを作用させて、速度60km/hとして、ビード部が破壊するまで連続負荷転動させ、破壊するまでの距離を測定して比較した。なお、その結果は、比較例1の走行距離を100としたライフ指数として示す。指数値が大きいほど耐久性に優れ、良好である。
(ベルト端耐久性評価)
得られた実施例4および比較例4の供試タイヤ(タイヤサイズ:205/60R15)を、直径3mのスチール製のドラムに、タイヤを押し付けて高速回転させることにより、ベルト端耐久性評価を行った。タイヤは、キャンバー角が−1度、スリップ角が0度、荷重8kNで押し付けた。6.0J×15インチのリムに装着して、タイヤ内圧は指定内圧220kPaよりも低めの180kPaとした。タイヤ内圧を指定内圧よりも低めに設定したのは、タイヤのたわみ量を大きくして、タイヤの故障を促進させるためである。速度130km/hで100時間連続走行させた後、ドラムを止め、その後タイヤを分解し、2ベルトプライ端からの亀裂の長さを両サイドでベルト周上64か所で測定して、亀裂長さの平均値を算出し、比較例1の亀裂長さを100とした指数として示した。なお、ドラムの周りの温度は10℃に管理し、タイヤに向けて風速10m/sの風を吹き付け続けることで、タイヤの極端な発熱を防止し、実際の走行状態をなるべく再現させるようにした。指数値が小さいほど亀裂長さが小さく、良好である。
下記の表2および表3に、評価結果を示す。
上記表中に示すように、本発明によれば、補助補強層自体に起因する問題を生ずることなく、主コード補強層としてのカーカスプライまたはベルト層のコード切断端からの亀裂の発生を抑制して、従来と比較して耐久性をより向上した空気入りタイヤを実現することが可能となった。