JP6577325B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ランフラットタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、サイドウォール部にサイド補強ゴムを備えるサイド補強タイプのランフラットラジアルタイヤに関する。
従来より、パンクなどにより内圧が低下した状態でも、荷重支持能力を失うことなくある程度の距離を安全に走行することが可能なタイヤとして、タイヤのサイドウォール部に断面三日月状のサイド補強ゴムを配設したサイド補強タイプのランフラットタイヤが知られている。
しかし、サイド補強タイプのランフラットタイヤでは、タイヤ断面高さが115mm以上と高くなると、内圧が低下した状態での走行時(ランフラット走行時)において、タイヤの変形量が増加するために車両の旋回内側でリム外れを生じやすくなるという問題があった。これは、車両の旋回に伴いスリップアングルが付与されることで、タイヤサイド部がタイヤ内側に折れ曲がるバックリング変形が発生し、これに伴い、トレッドのタイヤ幅方向端部からタイヤ赤道面側にかけての領域でも大きな曲げが発生して、プライ内側のサイド補強ゴムの内面がタイヤ半径方向への引張負荷を受けて伸長することに起因する。
サイド補強タイプのランフラットタイヤに係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、内圧充填時の通常走行での性能を高レベルに維持しながら、軽量性を有し、ランフラット走行性能が大幅に改善された空気入り安全タイヤを提供することを目的として、サイドウォールのカーカス層内周面に、断面が三日月状の補強ゴム層を備え、カーカス層に脂肪族ポリアミド系繊維からなる補強コードを用い、かつ、サイドウォール部に、有機繊維のモノフィラメントのゴム被覆コード補強層を少なくとも一層配設した空気入り安全タイヤが開示されている。
一方、タイヤの補強材としては、従来より、有機繊維や金属材料などが種々検討され、使用されてきている。また、有機繊維の一種として、断面構造が中心をなす芯部とその外周を被覆する鞘部とからなる、いわゆる芯鞘繊維を補強材として用いることについても、これまでに種々検討されている。例えば、特許文献2には、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリロニトリル、レ−ヨン、ヘテロ環含有ポリマ−の少なくとも一種から選ばれる樹脂を芯成分とし、ゴムに熱融着可能な熱可塑性樹脂を鞘成分とした芯鞘型繊維からなるコ−ドを未加硫ゴムに埋設し、加硫一体化してなるコ−ド・ゴム複合体が開示されている。
特開平11−278017号公報(特許請求の範囲等) 特開平10−6406号公報(特許請求の範囲等)
しかしながら、従来、サイド補強タイプのランフラットタイヤにおいて、ランフラット走行性能を良好に確保しつつ、リム外れの防止を図るための技術については、十分検討されていなかった。
そこで本発明の目的は、ランフラット走行性能を良好に確保しつつ、耐リム外れ性を向上したランフラットタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、サイド補強ゴムの内面に、所定の芯鞘型の複合繊維(以下、単に「芯鞘繊維」ともいう)を用いた補強層を配設することで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のランフラットタイヤは、一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、サイドウォール部に該カーカスの内面に沿ってサイド補強ゴムを備えるランフラットタイヤにおいて、
タイヤ断面高さSHが115mm以上であって、前記サイド補強ゴムの内面に沿って、該サイド補強ゴムの少なくとも一部を覆う補強層が配設され、かつ、該補強層が、芯部が融点150℃以上の高融点樹脂からなり、鞘部が、オレフィン系重合体を含み該高融点樹脂よりも融点の低い樹脂材料からなる芯鞘型の複合繊維のゴム引き層よりなることを特徴とするものである。
ここで、タイヤ断面高さ(セクションハイト)SHとは、タイヤを適用リムに装着して規定の空気圧を充填したときの無負荷状態でのタイヤの外径とリム径との差の1/2をいう。また、適用リムとは下記の規格に規定されたリムをいい、規定の空気圧とは下記の規格において最大負荷能力に対応して規定される空気圧をいう。そして規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格により定められており、例えば、アメリカ合衆国では“The Tire and Rim Association Inc.のYear Book”であり、欧州では“The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”であり、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA Year Book”である。
本発明のタイヤにおいては、前記補強層における前記複合繊維の配設角度が、タイヤ半径方向から20°以内の範囲であることが好ましい。また、本発明のタイヤにおいて、前記補強層は、前記サイド補強ゴムの内面の全体を覆って、タイヤ半径方向両側において前記カーカスの内面に隣接する位置まで配設されていることが好ましい。
さらにまた、本発明のタイヤにおいては、前記樹脂材料が、スチレン系ブロック共重合体あるいはその水添化物を含むことが好ましく、前記スチレン系ブロック共重合体あるいはその水添化物が、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体であることがより好ましい。さらにまた、本発明のタイヤにおいては、前記樹脂材料が、加硫促進剤を含むことが好ましく、前記加硫促進剤としては、好適にはジフェニルグアニジンまたはジブチルジチオカルバミン酸亜鉛を用いることができる。
本発明によれば、ランフラット走行性能を良好に確保しつつ、耐リム外れ性を向上したランフラットタイヤを提供するを実現することが可能となった。
本発明の空気入りタイヤの一例を示す幅方向断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のランフラットタイヤの一例を示す幅方向断面図を示す。図示する本発明のタイヤ10は、一対のビード部11間にトロイド状に跨って延在する少なくとも1枚のカーカスプライ、図示する例では2枚のカーカスプライ1a,1bからなるカーカス1を骨格とし、サイドウォール部12に、カーカス1の内面に沿ってサイド補強ゴム2を備える、いわゆるサイド補強タイプのランフラットタイヤである。
本発明は、タイヤ断面高さSHが115mm以上、例えば、120〜200mmのランフラットタイヤに適用される。前述したように、タイヤ断面高さSHが115mm以上と高い場合、ランフラット走行時において、タイヤサイド部のバックリング変形に起因して、車両の旋回内側でリム外れを生じやすくなるという問題があったが、本発明においては、この問題の解消を図ったものである。
本発明のタイヤにおいては、サイド補強ゴム2の内面に沿って、サイド補強ゴム2の少なくとも一部を覆う補強層3が配設されており、かつ、この補強層3が、所定の芯鞘型の複合繊維のゴム引き層よりなる点に特徴がある。サイド補強ゴム2の内面に、所定の芯鞘繊維を用いた補強層3を設けたことで、この部分の剛性を高めて、車両旋回時におけるサイド補強ゴム2の内面の伸長を抑制することができ、結果として、耐リム外れ性を向上させることが可能となった。一方、サイド補強ゴムの内面に補強層を配置する場合、補強層を構成するコードとゴムとの間の接着性が低いと、ランフラット走行時に、サイド補強ゴムが破壊する前にゴム−コード間の接着破壊が発生してしまうために、ランフラット走行距離が予想より低下してしまう。これに対し、本発明に係る芯鞘繊維は、後述するように、ゴムに対する接着が良好であるため、接着破壊が起きにくく、サイド補強ゴムに亀裂が生じることに起因してコード切断が生ずるまで、ランフラット走行が可能である。よって、本発明のタイヤにおいては、ランフラット走行耐久性についても、良好に確保することができる。また、本発明に係る芯鞘繊維は、通常の撚りコードよりロスが少ないため、補強層の配置に伴う転がり抵抗の低下が少なく、この点でも、タイヤに求められる各種性能が両立できるメリットがある。
本発明のタイヤにおいて、補強層3における芯鞘繊維の配設角度としては、特に制限はされないが、タイヤ半径方向から20°以内の範囲であることが好ましい。すなわち、補強層3における芯鞘繊維が、タイヤ半径方向、または、タイヤ半径方向から20°以内の方向に配向されていることが好ましい。これにより、補強層3のタイヤ半径方向の剛性を最も高めることができるので、耐リム外れ性の向上効果を最も効果的に得ることができる。
また、本発明のタイヤにおいて、補強層3は、サイド補強ゴム2の内面の少なくとも一部を覆うものであれば、本発明の所期の効果を得ることができる。特には、補強層3は、図示するように、サイド補強ゴム2の全体を覆って、タイヤ半径方向両側においてカーカス1の内面に隣接する位置まで、配設することが好ましい。この理由は、タイヤのサイドウォール部での前述のバックリング変形とともにサイド補強ゴム2が外側に湾曲すると、サイド補強ゴム2の内面側が全体的に伸長する変形をするため、補強層3を、サイド補強ゴム2内面の一部に挿入して一部の領域の変形を抑制するよりは全面に配設した方が効果が大きくなり、また、外側に湾曲したときには、伸長が最も大きくなる内面側に挿入すると効果的であるためである。これにより、車両旋回時におけるサイド補強ゴム2の内面の伸長を効果的に抑制することができ、耐リム外れ性の向上効果をより良好に得ることができる。なお、補強層3は複数層配設してもよく、特に制限はない。
本発明に用いる芯鞘型の複合繊維は、芯部が融点150℃以上の高融点樹脂からなり、鞘部が、オレフィン系重合体を含み高融点樹脂よりも融点の低い樹脂材料からなるものである。かかる芯鞘型の複合繊維において、鞘部を構成する樹脂材料は、芯部よりも融点が低いために、ゴム物品の補強用途に適用する際に、加硫時の加熱により、ゴムと熱融着することによって直接密着することが可能であるとのメリットを有する。すなわち、本発明に係る芯鞘繊維は、ゴム被覆されて補強層を形成するが、かかる芯鞘繊維は、ゴムと複合するに際して、従来よりタイヤコードの接着に用いられているようなレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤等の接着剤組成物を付着させるディップ処理を行う必要がないので、接着加工工程を簡素化することができる。また、タイヤ等の補強用途において接着剤組成物を用いて有機繊維とゴムとを接着する際には、一般に、接着力を確保するために、有機繊維を繊維コーティング用ゴム(Skim Rubber)により被覆することが必要であったが、本発明に係る芯鞘繊維は、ゴムと、熱融着により、繊維コーティング用ゴムを介さずに直接強い密着力を得ることが可能である。よって、本発明に係る芯鞘繊維は、芯部により補強性能を担保しつつ、鞘部によりディップ処理やゴムコーティングなしでゴムとの融着が可能であるので、薄ゲージ化によりタイヤ軽量化にも寄与することができるものである。
また、本発明者らの検討によれば、本発明に係る芯鞘繊維を加硫すると、その切断端部において、加硫前には露出していた芯部の切断端面が鞘部の樹脂により被覆されて、この部分においても、鞘部の樹脂とゴムとの強固な融着が得られることがわかっている。これは、加硫時の加熱により、鞘部をなす低融点の樹脂材料が流動して、高融点樹脂からなる芯部の切断端面とゴムとの間の間隙に入り込むためであると考えられ、これにより、加硫後における歪に対する耐久性を、より向上することができる。
従来よりタイヤコードの接着に用いられているようなレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤等の接着剤組成物で被覆されたゴム物品補強向けの有機繊維では、ゴムや被覆したコード材料からなる部材を組み上げるまでの過程で、部材寸法でコードを切断するため、コード切断した端となる側面には接着剤組成物が処理されていない。このようなゴム物品においては、コード端とゴム間を剥離するような歪が高歪で入力すると、コード端とゴム間で非接着の部位から亀裂が進展して、ゴム物品が破壊に至る場合がある。従って、市販されるタイヤなどのゴム物品では、構造を設計する上で、高歪となるタイヤ部位にはコード端部を配置しないか、あるいは、ゴム部材を厚くするなどの方法でコード端とゴムとの間を剥離させるような歪を小さくする、などのコード端からの亀裂を発生させないための制約があった。これに対し、本発明においては、このようなコードの端部の切断面がゴムと融着するため、歪によりコード端とゴムとの間で非接着の部位から亀裂が進展することに起因する制約がなくなるので、コード端付近を薄ゲージ化して、コード端とゴムとの間を剥離させるような歪の増加を懸念する必要がなくなるため、タイヤの軽量化が可能である。
本発明に係る芯鞘型の複合繊維において、芯部を形成する高融点樹脂の融点は、150℃以上、好ましくは160℃以上とする。上記高融点樹脂の融点が150℃未満であると、タイヤの加硫時に、複合繊維の芯部が溶融変形して細くなったり、繊維樹脂分子の配向性が低下するなどにより、十分に補強性能を有しないものとなる。また、本発明に係る芯鞘型の複合繊維において、鞘部を形成する樹脂材料は、融点の下限が80℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは135℃以上の範囲とする。樹脂材料の融点が80℃未満であると、加硫初期に充分に樹脂材料の表面にゴムが流動により密着しないと、表面に微細な空隙ができるなどにより、十分な密着力が得られないおそれがある。また、樹脂材料の融点が120℃以上であると、硫黄と加硫促進剤とを配合したゴム組成物で工業的に用いられる可能性がある加硫処理温度としての130℃以上において、ゴムと低融点の樹脂材料とが熱融着すると同時に、ゴム組成物の加硫架橋反応を行うことができるために好ましい。なお、工業的に加硫時間を短くするために加硫温度を170℃以上とした場合には、樹脂材料の融点が80℃未満のときには、溶融した樹脂の粘性が低くなりすぎて加硫時に熱流動性が大きくなり、加硫時の圧力により鞘の厚みが薄くなる箇所が発生して、接着試験などの歪応力が、鞘樹脂が薄い箇所に集中し、この部位で破壊を起こしやすくなる場合があるため、樹脂材料の融点は、120℃以上であることがより好ましい。一方、樹脂材料の融点の上限が150℃未満であると、加硫温度が175℃以上の高温で、樹脂材料の熱流動性により、ゴム組成物との加硫初期での相溶性が得られる場合がある。また、樹脂材料の融点が145℃以下であると、一般的な加硫温度で加硫初期の樹脂の相溶性が得られるので好ましい。
本発明において用いる複合繊維は、鞘部が融点の低い樹脂材料で、ゴムと熱融着により直接密着することが可能であり、同時に、芯部が融点が150℃以上の高融点樹脂である、芯鞘構造を有する複合繊維であることを特徴とする。これが例えば、単一組成のモノフィラメントコードの場合には、本発明の効果を得ることができない。従来の単一組成のポリオレフィン系樹脂などからなるモノフィラメントコードでは、低融点の場合、ゴム物品のゴムと熱融着により融体となることで濡れ広がり、ゴムに密着させることはできても、溶融した融体となりコード方向に配向した繊維樹脂の分子鎖が無配向になると、ゴムを補強するコード材料としての引張剛性を保持することができなくなる。一方、加熱下においても樹脂が融体とならない高融点の場合、ゴムとの溶着性が低くなる。このため、本発明の芯鞘構造をもつ複合繊維でない、単一組成のモノフィラメントコードでは、引張剛性の保持とゴムへの溶着性との背反する機能を両立させることは困難であった。
本発明のゴム−繊維複合体において、芯部を形成する融点150℃以上の高融点樹脂としては、特に制限はなく、具体的には例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド樹脂などが挙げられ、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂などが好ましい。ポリエステル系樹脂においては特に、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂が好ましく挙げられる。
本発明の芯部を形成するポリトリメチレンテレフタレート系樹脂としては、ポリトリメチレンテレフタレートのホモ重合体、共重合体、あるいは他の混合可能な樹脂との混合物であってもよい。ポリトリメチレンテレフタレート共重合体の共重合可能な単量体としては、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等の酸成分や、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール等のグリコール成分、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール等が挙げられる。これらの共重合が可能な単量体の含量は特に制限されないが、共重合体の曲げ剛性が低下するため、10質量%以下であることが好ましい。ポリトリメチレンテレフタレート系重合体と混合可能なポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられ、50質量%以下で混合してもよい。
上記ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度[η]は、0.3〜1.2が好ましく、より好ましくは、0.6〜1.1である。極限粘度が0.3未満であると繊維の強伸度が低くなり、1.2を超えると紡糸による糸切れの発生で生産性が難しくなる。なお極限粘度[η]については、35℃のo‐クロロフェノール溶液で、オストワルド粘度計により測定することができる。また、ポリトリメチレンテレフタレートのJIS‐K‐7121に従って測定したDSCより求められる融解ピーク温度は、180℃〜240℃であることが好ましい。より好ましくは200℃〜235℃である。融解ピーク温度が180〜240℃の範囲であると、耐候性が高く、得られる複合繊維の曲げ弾性率を高くすることができる。
上記ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂からなる混合物の添加物として、例えば、可塑剤、柔軟化剤、帯電防止剤、増量剤、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
また、芯部を形成するポリオレフィン系樹脂としては、高融点ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に好ましくはポリプロピレン樹脂であり、さらに好ましくは結晶性のホモポリプロピレン重合体であり、さらに好ましくはアイソタクチックポリプロピレンを挙げることができる。
なお、本発明に用いる芯鞘型の複合繊維においては、芯部が融点150℃以上の高融点樹脂により構成されており、この芯部はゴムの加硫工程においても溶融することがない。本発明者において、通常の工業的な加硫条件より高温度の195℃で15分間の加硫を行い、加硫後のゴムに埋設されたコードの断面を観察したところ、鞘部の低融点オレフィン系重合体は円形であった断面が溶融して変形したが、芯部の高融点樹脂は芯鞘複合紡糸後の円形の芯部の断面形状を保ち、完全に溶融した融体とならずに、繊維破断強度も150N/mm以上の強度を保持していた。
このように、本発明者らはコードの芯部の樹脂の融点が150℃以上であれば、ゴム物品の加硫時に195℃の加熱処理を受けても、芯鞘繊維が溶融して切断せずに、本発明における補強層の配設効果が得られることを見出した。なお、このように樹脂固有の融点より高い加工温度でも材料強度を保て耐熱性がある理由は、ゴム中に埋設されることでコードが定長で加硫されることから、JIS−K7121などの樹脂形状を拘束しないで融点を測定する方法とは異なり、繊維を収縮しない定長拘束の条件となるため、樹脂固有の融点より高融点化したと考えられる。このような繊維が収縮しない「定長拘束」の測定条件下では、繊維材料に特有な状況下の熱的現象として、高融点化する場合があることが知られている(第2版 繊維便覧、平成6年3月25日発行、編者:社団法人 繊維学会、発行:丸善株式会社、207頁13行)。しかしながら、本発明のような樹脂材料で、JIS法による樹脂融点以上で融体になると想定されていたコード材料で、ゴム加硫工程に相当する温度で検討し、かつ、ゴムと熱融着により直接密着させると同時に、加硫工程における加熱下においても芯部の樹脂の剛性を両立する、ゴム物品に補強に好適な樹脂材料を検討実施した知見は、これまでに知られていない。
また、本発明の好適な例として、芯部を構成する融点が150℃以上の樹脂として、ポリプロピレン樹脂またはPPT樹脂を用いた場合、従来よりタイヤコードに用いられている公知の66ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アラミドなどの高弾性のコードよりモジュラスは低いものの、これら従来コードとゴムとの中間の弾性率になるので、従来のタイヤコードではできなかった、タイヤ内の位置にコードを配設することができるようになることが特徴として挙げられる。
例えば、タイヤの製造時には、ゴムや被覆したコード材料からなる部材を組み上げて、生タイヤなどの成型された加硫前の原形を金型に入れ、ブラダーというゴム風船状の圧縮装置で、内側から金型に向け、高温・高圧の蒸気で押し付ける加硫工程がある。この際にコードのモジュラスが高すぎると、生タイヤなどの成型された加硫前の原形に配設された状態から、高温・高圧の蒸気で金型に押し付ける状態で、ゴム材料とともにコード材料が伸びて拡張されない場合があり、この場合、コードがいわゆる「切り糸(粘土などの塊を切る糸)」となって、加硫前の原形に組み上げられたゴム材料を切り離すなどの不具合が発生する。そのため、高モジュラスのコードは、従来の製造方法のままで製造上の対策を行わないと、タイヤに配設することが困難であった。特に、タイヤサイド部においてタイヤ周方向にコードを配置する構造では、コードを円環状にジョイントするので、高温・高圧の蒸気の押し付けで、張力がかかったコードがタイヤ半径方向でビード側のゴム材料を切って移動する、製造上の課題が発生しやすい。これに対し、本発明のコードは、従来の高弾性のコードに比較して、コード材料も伸びやすい材料であるので、タイヤなどのゴム物品の製造加工時にコードが「切り糸」となりコードを配置できなかった製品構造や配設位置であっても、従来の方法のままで製造が可能になる。このような、タイヤ部材を配設する設計における自由度を広くできることも、本発明の一つの特徴である。
また、鞘部を形成する樹脂材料に用いるオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン等のオレフィンからなるものであればよい。これらのオレフィン系重合体は、エチレン、プロピレンなどの付加重合が可能なモノマーのホモ重合体、あるいはランダム共重合体あるいはブロック共重合体などのオレフィン系共重合体が好ましい。
上記オレフィン系重合体がホモ重合体であるときは、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンなどが好適な例として挙げられる。これらのホモ重合体を単体で使用せず、混合物として使用することも可能である。ポリエチレン系重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、特に制限されないが、本発明の好適な例として、直鎖状低密度ポリエチレンを使用できる。上記オレフィン系重合体がオレフィン系共重合体であるときは、ランダム共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであっても構わないが、好ましくは熱収縮性を考慮すると、オレフィン系ランダム共重合体である。
上記オレフィン系重合体の他の好適な例としては、エチレンと、エチレンと共重合が可能なα‐オレフィン単量体等とのエチレン系共重合体、あるいは、プロピレンと、プロピレンと共重合が可能なα‐オレフィン単量体等とのプロピレン系共重合体が好ましく挙げられる。上記共重合が可能なα‐オレフィン単量体の含量は特に制限されないが、80モル%未満の範囲で共重合するとゴムとの融着が得やすくなり、50モル%以下の範囲で共重合するとゴムとの融着性が更に高くなるので好適である。
エチレンまたはプロピレンと共重合するコモノマーは、α−オレフィン単量体の他、非共役ジエン、その他のポリプロピレンと共重合が可能なモノマーなどが挙げられる。コモノマーとして用いられるモノマーは1種類に限られず、ターポリマーのようにモノマーを2種類以上用いた多元系共重合体も好ましいものとして含まれる。
α−オレフィンとしては、炭素数2または4〜20のもの、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。非共役ジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等を挙げることができる。特に、エチレンとプロピレンに第三成分として非共役ジエンを導入する場合は、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体(EPDM)の成分が含まれると、被着ゴムとの界面の密着性とともに硫黄による共加硫性をもつ成分が含まれるので、好ましい。
また、上記オレフィン系重合体の他の好適な例として、エチレン−プロピレン系共重合体、中でも、エチレン−プロピレンランダム共重合体が挙げられる。エチレン−プロピレン系共重合体におけるプロピレン含量は、好ましくは20〜99.7モル%、より好ましくは75〜99.5モル%、さらに好ましくは85〜98モル%である。プロピレン含量が20モル%より少ないとポリエチレン結晶成分が生成することなどから耐衝撃強度が不十分となることがある。また、一般的にプロピレン含量が75モル%以上であると、紡糸性が良くなるために好ましい。さらに、プロピレン含量が99.7モル%以下になると、ポリプロピレンに共重合するエチレンなどの他の単量体の付加重合により、分子鎖のランダムさが増して熱融着しやすいコードになる。さらにまた、エチレン含量は0.3モル%〜80モル%が好適である。80モル%を超えると、鞘部と被着ゴムとの融着において、鞘部の耐破壊抗力が充分でなく、鞘部の中で亀裂が生じて破壊しやすくなるので好ましくない。エチレン含量が0.3モル%未満であると、ポリプロピレンからなる重合体にエチレン単量体が付加重合されることによる結晶の配向乱れが小さくなり、鞘部の樹脂の熱融着が低くなる傾向がある。
プロピレン系共重合体樹脂の製造方法としては、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒などのオレフィン重合触媒を用いてのスラリー重合、気相重合あるいは液相塊状重合が挙げられ、重合方式としては、バッチ重合および連続重合のどちらの方式も採用することができる。
また、本発明において、鞘部を構成する樹脂材料は、さらに相容化剤として、スチレン単量体を主として連続して配列してなる単独分子鎖(以下、「スチレンブロック」とも称する)を含むスチレン系エラストマーを含有することが好ましい。スチレン系エラストマーを配合することで、樹脂材料とゴムとの相容性を高めて、接着性を向上することができる。
すなわち、低融点の樹脂材料は、本発明で規定する融点範囲を有する樹脂組成物となる、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのホモポリマー、エチレン−プロピレンランダム共重合体などの、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする組成物であるが、これらは一般的に混合した樹脂組成物は相分離した構造となることが知られている。よって、ソフトセグメントとハードセグメントとからなるブロック共重合体としてのスチレン系エラストマーを添加することで、相の界面の相容化を促進することができる。スチレン系エラストマーは、芯成分である高融点樹脂と鞘成分である樹脂材料との界面の密着性や、鞘成分および被着ゴムに含まれるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ポリイソプレンの構造をもつ天然ゴム(IR)などの分子構造と相互作用をもつセグメントを有すると、被着ゴムとの密着性が向上するために好ましい。特に被着ゴムにスチレン・ブタジエンゴム(SBR)が含まれるときは、鞘成分にスチレン成分を含むスチレン系ブロック共重合体を含有させると、融着における被着ゴムとの界面との相容性が高くなり、接着力が向上するために、好ましい。
なお、本発明におけるブロック共重合体は、2種類以上のモノマー単位からなる高分子であって、その少なくとも1つのモノマー単位を、主として長く連続して配列してなる単独分子鎖(ブロック)を形成している共重合体を意味する。またスチレン系ブロック共重合体は、スチレン単量体を主として長く連結して配列したブロックを含むブロック共重合体を意味する。
スチレン系エラストマーとしては、具体的には、スチレン系ブロックコポリマーを用いることができ、スチレンと共役ジオレフィン化合物とを含むものが好ましい。より具体的には、スチレン系エラストマーとしては、スチレン系ブロック共重合体またはその水添化物若しくはその変性体が用いられ、スチレン−ブタジエン系重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系のブロック重合体、および、これらスチレンとブタジエンとのブロックコポリマーの二重結合を水素添加して完全水添化または部分水添化したポリマーなどが挙げられる。また、スチレン系エラストマーは、マレイン酸変性あるいはアミン変性されていてもよい。
スチレン−ブタジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができる。ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)系ブロック重合体としては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS)などが挙げられる。スチレン−イソプレン系ブロック重合体としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体(SIS)、あるいは、旭化成ケミカルズ(株)商品S.O.E.などの、両末端にスチレンブロックを、主鎖にスチレンのブロックとブタジエンのランダム共重合体からなるブロックを有するブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。本発明においては、これらの中でも特に、ゴムとの接着性および相容性の観点から、スチレン−ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体およびスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を、好適に用いることができる。また、被着ゴムがBR、SBR、NRなどの極性が少ないゴムからなる組成物の場合は、スチレン系ブロック共重合体あるいはその水添化物は、変性などにより極性が強い官能基を持たない方が、相溶性が高くなるので、好ましい。
スチレン系エラストマーは、1種を単独で、または、2種以上を適宜組合わせて用いることができる。
スチレン−ブタジエン系重合体の水素添加物に、さらに極性基を導入する場合の変性は、例えば、水素添加物にアミノ基、カルボキシル基または酸無水物基を導入することによって行うことができる。これら特に限定されないが、本発明においては、極性基を導入する変性として、3−リチオ−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノプロパン、2−リチオ−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−〔N,N−ビス(トリメチルシリル)〕アミノプロパン等など、不飽和アミノ基の導入による変性を、好ましい例として挙げることができる。
スチレン系エラストマーの含有量は、鞘部を構成する樹脂材料に含まれるオレフィン系重合体等の樹脂成分の総量100質量部に対し、0.1〜30質量部、特には、1〜15質量部とすることができる。スチレン系エラストマーの含有量を上記範囲内とすることで、樹脂材料とゴムとの相容性向上効果を、良好に得ることができる。
また、本発明において、鞘部を構成する樹脂材料は、さらに、加硫促進剤を含有することが好ましい。加硫促進剤を含有することで、被着ゴムに含まれる硫黄分が、加硫促進剤と多加硫物の遷移状態になる効果により、ゴム界面での相互作用が得られ、ゴム中から鞘部樹脂の表面分布あるいは樹脂内部への移行する硫黄量が増大する。また鞘部樹脂の成分に硫黄加硫可能な共役ジエンが含まれると、被着ゴムとの共反応を促進して、樹脂材料とゴムとの接着性をより向上することができる。
加硫促進剤としては、塩基性シリカ、第1級、第2級、第3級アミン、該アミンの有機酸塩もしくはその付加物並びにその塩、アルデヒドアンモニア系促進剤、アルデヒドアミン系促進剤などのルイス塩基性化合物が挙げられ、その他の加硫促進剤としては、加硫促進剤の硫黄原子は系内の環状硫黄に接近するとこれを開環し、遷移状態となり、活性な加硫促進剤−多加硫物を生成するなどにより硫黄を活性化できる、スルフェンアミド系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤など、が挙げられる。
ルイス塩基性化合物としては、ルイスの酸塩基の定義におけるルイス塩基であり、電子対を供与し得る化合物であれば、特に限定されることはない。これらは窒素原子上に孤立電子対を有する窒素含有化合物などを挙げることができ、具体的には、ゴム業界で既知の加硫促進剤のうち塩基性のものを用いることができる。
塩基性化合物としては、具体的には、炭素数5〜20の脂肪族の第1級、第2級もしくは第3級アミンが挙げられ、n−ヘキシルアミン、オクチルアミンなどのアルキルアミン、ジブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミンなどのジアルキルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどのトリアルキルアミン等に挙げられる非環式モノアミン及びその誘導体並びにこれらの塩、
エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレンイミン等に挙げられる非環式ポリアミン及びその誘導体並びにその塩、
シクロヘキシルアミンなどの脂環式ポリアミン及びその誘導体並びにこれらの塩、
ヘキサメチレンテトラミンなどの脂環式ポリアミン及びその誘導体並びにこれらの塩、アニリン、アルキルアニリン、ジフェニルアニリン、1−ナフチルアニリン、N−フェニル−1−ナフチルアミン等に挙げられる芳香族モノアミン及びその誘導体ならびにこれらの塩、
フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、N‐アルキルフェニレンジアミン、ベンジジン、グアニジン類、n−ブチルアルデヒドアニリン、などの芳香族ポリアミン化合物及びその誘導体、などが挙げられる。
なお、グアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられる。これらのうち1,3−ジフェニルグアニジンが反応性が高いので好ましい。
上記アミンと塩を形成する有機酸としては、カルボン酸、カルバミン酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジチオリン酸等が例示される。また上記アミンと付加物を形成する物質としては、アルコール類、オキシム類等が例示される。アミンの有機酸塩もしくは付加物の具体例としては、n−ブチルアミン・酢酸塩、ジブチルアミン・オレイン酸塩、ヘキサメチレンジアミン・カルバミン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのジシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
また例えば、窒素原子上に孤立電子対を有することで塩基性となる含窒素複素環式化合物としては、ピラゾール、イミダゾール、ピラゾリン、イミダゾリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジンなどの単環式の含窒素化合物及びその誘導体、
ベンズイミダゾ−ル、プリン、キノリン、ペテリジン、アクリジン、キノキサリン、フタラジンなどの複環式の含窒素化合物及びその誘導体、等を挙げることができる。
また例えば、窒素原子以外のヘテロ原子を有する複素環式化合物としては、あるいは、オキサゾリン、チアゾリン等の窒素およびその他のヘテロ原子を含有する複素環式化合物及びその誘導体が挙げられる。
その他の加硫促進剤としては、具体的には、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸類、キサントゲン酸類、の既知の加硫促進剤が挙げられる。
チオウレア類としては、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3−ジ(o−トリル)チオ尿素、1,3−ジ(p−トリル)チオ尿素、1,1−ジフェニル−2−チオ尿素、2,5−ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1−(1−ナフチル)−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、p−トリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素等が挙げられる。これらの内、N,N’−ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素及びN,N’−ジメチルチオ尿素は、反応性が高いので好ましい。
チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト−ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの内、2−メルカプトベンゾチアゾール及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールは、反応性が高く好ましい。また例えば、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩は、比較的に無極性のポリマーに添加する場合でも溶解度が高いため、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、特に好ましい例である。
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらの内、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドは、反応性が高いので好ましい。また例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−べンゾチアゾリルスルフェンアミドは、比較的に無極性のポリマーに添加する場合でも溶解度が高いため、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、特に好ましい例である。
チウラム類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらの内、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドは反応性が高いので好ましい。また促進剤化合物に含まれるアルキル基が大きくなると比較的に無極性であるポリマーの場合では溶解度が高くなる傾向があり、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、テトラブチルチウラムジスルフィドあるいはテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどは、特に好ましい例である。
ジチオカルバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。
これらのうち、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛は、反応性が高いため望ましい。また促進剤化合物に含まれるアルキル基が大きくなると比較的に無極性であるポリマーの場合では溶解度が高くなる傾向があり、析出などによる表面性状の悪化による紡糸性の低下などが発生しにくいため、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛などは、特に好ましい例である。
キサントゲン酸塩類としては、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2−エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの内、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛は、反応性が高いので好ましい。
上記、加硫促進剤は、無機充填剤、オイル、ポリマー等に予備分散させた形で、ゴム補強用芯鞘繊維の鞘部樹脂に配合に用いても良い。また、これらの加硫促進剤および遅延剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
加硫促進剤の含有量は、鞘部を構成する樹脂材料に含まれるオレフィン系重合体等の樹脂成分の総量100質量部に対し、0.05〜20質量部、特には、0.2〜5質量部とすることができる。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることで、樹脂材料とゴムとの接着性向上効果を、良好に得ることができる。
鞘部を構成する樹脂材料には、被着ゴム組成物との界面の密着性を高めるなどの目的のために、上述した成分以外に、ポリプロピレン系共重合体に架橋された熱可塑性ゴム(TPV)、あるいは、JIS K6418に記載の熱可塑性エラストマーの分類における「その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)」などを含有させることができる。これらは、部分的にまたは高度に架橋されたゴムを、樹脂材料の熱可塑性樹脂組成物のマトリックスの連続相に細かく分散させることができる。架橋された熱可塑性ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴムなどが挙げられる。また、その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)としては、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂、あるいは、トランス−ポリイソプレン樹脂などが挙げられる。
なお、上記高融点樹脂および鞘部の樹脂材料には、耐酸化性などの他の性質を付加させるために、本発明の効果や、紡糸時などにおける作業性を著しく損なわない範囲内で、通常樹脂に添加される添加剤を配合することもできる。この付加的成分としては、ポリオレフィン樹脂用配合剤等として使用される従来公知の核剤、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、金属不活性剤、過酸化物、抗菌防黴剤、蛍光増白剤といった各種添加剤や、それ以外の添加物を使用することができる。
添加剤の具体例としては、核剤として、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウムなどを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤として、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルペンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤としては、トリス(ミックスド、モノおよびジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。硫黄系酸化防止剤としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。
ヒンダードアミン系の安定剤としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアロイドなどの高級脂肪酸アミド、シリコンオイル、高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
帯電防止剤としては、高級脂肪酸グリセリンエステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミド脂肪酸モノエステルなどを挙げることができる。
充填剤としては、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などの無機粒子状担体や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンゼン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体などを挙げることができる。これら充填剤は、鞘部と被着ゴムとの接着において、鞘部の耐破壊抗力が充分でなく、鞘部の中で亀裂が生じて破壊する場合などにおいて、鞘部を補強するフィラーとして配合することができる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等を挙げることができる。
特に、芯部と鞘部との組合せの観点からは、同じオレフィン系樹脂として、芯部について高融点ポリオレフィン系樹脂を用いるとともに、鞘部について低融点ポリオレフィン系樹脂を用いることが、芯部と鞘部の相溶性が良好である点から、好ましい。芯部と鞘部とにいずれもオレフィン系樹脂を用いることで、芯部と鞘部とに異なる種類の樹脂を用いた場合と異なり、芯鞘重合体界面における接合力が高く、芯部/鞘部間での界面剥離に対して十分な耐剥離抗力を有するものとなるので、長期間にわたり十分に複合繊維としての特性を発揮することができるものとなる。具体的には、芯部の高融点ポリオレフィン系樹脂として、融点が150℃以上の結晶性のプロピレン単独重合体を用い、鞘部の低融点ポリオレフィン系樹脂として、エチレン‐プロピレン共重合体あるいはエチレン‐ブテン‐プロピレン三元共重合体などの、ポリプロピレンと共重合が可能な成分とポリプロピレンとの共重合によるポリプロピレン系共重合樹脂、特には、エチレン−プロピレンランダム共重合体を用いることが好ましい。芯部の高融点ポリオレフィン系樹脂は、アイソタクチックポリプロピレンであると、紡糸時の繊維形成性などが良好で、特に好ましい。
この場合の高融点ポリオレフィン系樹脂の溶融流動指数(メルトフローレート,MFR)(MFR1)および低融点ポリオレフィン系樹脂の溶融流動指数(MFR2)は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはないが、0.3〜100g/10minが好ましい。高融点ポリオレフィン系樹脂以外の、芯部に用いる高融点樹脂の溶融流動指数についても、同様である。
特に、高融点ポリオレフィン系樹脂を含む高融点樹脂の溶融流動指数(MFR1)は、好ましくは0.3〜18g/10min、特に好ましくは0.5〜15g/10min、さらに好ましくは1〜10g/10minの範囲のものから選ぶことができる。高融点樹脂のMFRが上記の範囲内にあることにより、紡糸引取性、延伸性が良好になり、またゴム物品を製造する加硫工程での加熱下で芯部の高融点樹脂の融体が流動せずに、コードの形態を保持することができるためである。
また、低融点ポリオレフィン系樹脂の溶融流動指数(MFR2)は、好ましくは5g/10min以上、特に好ましくは5〜70g/10min、さらに好ましくは10〜30g/10minである。鞘部の低融点ポリオレフィン系樹脂の熱融着性を上げるには、被着するゴムとの間隙に樹脂が流動して埋まりやすいため、MFRが大きな樹脂がよい。その反面、MFRが大きすぎると、複合繊維が配置される近傍に他の補強部材、例えば、プライコードやビードコアなどがある場合には、複合繊維を被覆するゴムに意図しない空隙があると、プライコードの繊維材料の表面に、低融点ポリオレフィン系樹脂の溶融した融体が濡れ広がってしまう場合があるため、特には、70g/10min以下であることが好ましい。さらに好ましくは30g/10min以下であり、この場合、複合繊維同士が接触している場合に溶融した低融点ポリオレフィンの融体が互いに濡れ広がり塊状の繊維結合体となるような、繊維間で融着する現象の発生が少なくなるので、好ましい。また、20g/10min以下であると、融着するゴムを剥離するときに鞘部分の樹脂の耐破壊抗力が高くなるために、ゴムと強固に密着するものとなり、さらに好ましい。
なお、MFR値(g/10min)は、JIS−K−7210に準じて、ポリプロピレン系樹脂材料のメルトフローレートは温度230℃、21.18N(2160g)荷重下で、ポリエチレン系樹脂材料のメルトフローレートは温度190℃、21.18N(2160g)荷重下で、それぞれ測定されたメルトフローレートである。
本発明における複合繊維における芯部と鞘部との比率としては、複合繊維に占める芯部の比率が10〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜80質量%である。芯部の比率が小さすぎると、複合繊維の強度が低下して、十分な補強性能が得られないおそれがある。特には、芯部の比率が50質量%以上であると、補強性能を高くすることができるために好ましい。一方、芯部の比率が大きすぎると、鞘部の比率が少なすぎて、複合繊維において芯部が露出しやすくなり、ゴムとの密着性が十分得られないおそれがある。
本発明の複合繊維(モノフィラメント)の製造方法は、芯材用および鞘材用の2台の単軸押出機により、芯鞘型複合紡糸口金を用いて、湿式加熱延伸方式で行うことができる。紡糸温度は、鞘成分については140℃〜330℃、好ましくは160〜220℃、芯成分については200〜330℃、好ましくは210℃〜300℃とすることができる。湿式加熱は、例えば、湿式加熱装置100℃、熱水浴95〜100℃、好適には95〜98℃で実施できる。一度冷却してから再加熱して延伸すると、鞘部の結晶化が進むため、熱融着性の点から好ましくない。延伸倍率は、芯部の結晶化の点から、1.5倍以上とすることが好ましい。
また、本発明において、芯鞘繊維の繊度、すなわち、繊維太さは、100dtex以上5000dtex以下の範囲が好ましい。補強材の繊維太さが100dtex未満であると、強度が低くなってコードが破断しやすい。特に、タイヤの場合、製造時の各種工程において加工時のコード切れを抑制するためには、補強材の繊維太さが500dtex以上であるとより好ましい。補強材の繊維太さは、特に上限はないが、5000dtex以下、特には4000dtex以下とすることが好ましい。この理由は、モノフィラメントコードの場合、紡糸時に繊維太さが大きいと、紡糸速度を遅くするため加工時の経済性が低下するほか、糸の太さが太くなると、ボビンなどの巻き付け治具に巻き付けるときに曲がり難くなり、作業性が低下するためである。なお、本発明における繊維太さは、モノフィラメントの場合はモノフィラメント単独で、束ねたモノフィラメントの場合はモノフィラメントを束ねたコードで測定した、繊維サイズ(JIS L 0101に準拠)を意味する。
なお、本発明のモノフィラメントコードは、補強材の単繊維の太さが50dtex以上であっても、ゴムとの密着が高いことが、一つの特徴である。補強材の繊維太さが50dtex未満になると、接着剤組成物の接着や、繊維樹脂とゴムの融着が無い繊維でも、ゴムとの密着での課題が発生しにくい。これは、単繊維の径が細くなると、接着の剥離する力より、コードが切断する応力の方が小さくなるために、剥離などにより接着性を評価すると、コードとゴムとの界面が剥離される前に、コードが切断してしまうためである。これらはいわゆる「毛羽接着」とも呼ばれ、毛羽程度の単繊維太さである50dtex未満において、観察されうる現象である。
従って、モノフィラメントの径が50dtex未満のコード、不織布、補強材などで課題にならない場合でも、単繊維の太さが50dtex以上では、接着剤組成物による接着や、繊維樹脂とゴムとの融着などがないと、ゴムとの繊維との間の密着が課題となる。本発明のモノフィラメントは、芯鞘繊維の単繊維の太さが50dtex以上においても、ゴムとの密着が高く、また、コード端部が融着できることが特徴である。
さらに、本発明に係る補強層3に用いる被覆ゴムとしては、特に制限されるものではないが、好ましくは、スチレン−ジエン系ゴムなどのジエンを含むゴム組成物であり、特に好ましくは、さらに硫黄系加硫剤を含むゴム組成物である。ジエン系のゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられるが、好ましくは、天然ゴム、ブタジエンゴムを含むゴム組成物である。
本発明において、補強層に用いる芯鞘繊維の形態は特に限定されないが、モノフィラメント、または、10本以下のモノフィラメントを束ねてなるコードであることが好ましく、更に好ましくは、モノフィラメントコードである。この理由は、本発明における芯鞘繊維を10本を超えるモノフィラメントを束ねてなるコード、撚りコード、不織布または織物の形態で用いると、ゴム中で芯鞘繊維を加硫したときに、鞘部を構成する低融点ポリオレフィン系樹脂が溶融するため、互いのフィラメントが溶着し合って、融体が互いに浸透することで、ゴム物品中で塊状の異物を形成する場合があるためである。このような異物が生成すると、タイヤ使用時の転動による歪で、ゴム中の塊状の異物から亀裂が進展し、セパレーションが発生するおそれがある。このため本発明に係る芯鞘繊維をタイヤの補強材に用いるときには、フィラメントを束ねられる本数が多くなるほどコード間にゴムが浸透しにくくなって、塊状の異物が形成しやすくなり耐久上の課題が発生することから、撚りコードの形態で用いる場合には、一般的にコードが束ねられるフィラメントの本数が10本以下になることが好ましい。
なお、本発明に係る芯鞘複合繊維は、他の、表面に接着処理をしたコードの表面に接触させないことが好ましく、接着処理をしたコードと芯鞘複合繊維の間にゴムを介在させると更に好ましい。この理由は、本発明のような低融点オレフィン系重合体の溶融流動指数であっても、他の、表面に接着処理をしたコードの表面に溶融した融体が濡れ広がると、接着処理されたコードとゴム間に融体が介在して、接着処理されたコード表面とゴム間の接着を妨げる課題が発生するためである。従って、補強層3をカーカス1の内面まで配設する場合には、カーカスコードと芯鞘複合繊維との間にゴムを介在させるなどにより、カーカスコードの外周と本発明に係る芯鞘複合繊維とを接触させない配置とすることが好ましい。
補強層3における芯鞘繊維の打込み数としては、幅50mmあたり10〜70本とすることが好ましい。打込み数が少なすぎると十分な耐リム外れ性の向上効果が得られないおそれがあり、多すぎると、コード間隔が狭くなりすぎて走行時のコード間のせん断歪でコード間のゴムに亀裂が発生して、故障の核になるおそれがあるので、好ましくない。
本発明に係る補強層3の、加硫後における引張破断強度は、好適には29N/mm以上、より好適には40N/mm以上であり、さらに好適には90N/mm以上、特に好適には150N/mm以上であって、高いほど好ましい。本発明に係る複合繊維は、鞘部についてはゴムと融着するためにゴム加工時における加硫温度で熱変形するが、芯部については熱変形がほとんどなく、複合繊維の繊維軸方向において溶断されることがない。よって、繊維軸方向に沿って樹脂部分が連続して配設されるため、ゴム破断強度より高い29N/mm以上の強度が得られるものである。これにより、かかる補強層は、繊維軸方向に十分なゴム破断強度を持った異方性材料となる。引張破断強度が29N/mm未満であると、十分な耐リム外れ性の向上効果が得られないおそれがある。本発明に係る補強層3は、タイヤ内に配設した後、一般的な150℃〜200℃の加硫温度で加硫した場合でも、十分な補強性能を得ることができるものである。
本発明のタイヤは、サイド補強ゴム2の内面に沿って、上記芯鞘繊維を用いた補強層3が配設されているものであればよく、内部構造については一般のサイド補強タイプのランフラットタイヤと同様であり、所望に応じ適宜決定することができる。図1に示すタイヤ10は、一対のビード部11と、一対のビード部11からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12間に跨って延び接地部を形成するトレッド部13とからなり、サイドウォール部12には、カーカス1の内面に沿って、断面三日月状のサイド補強ゴム2が配設されている。
また、図示するタイヤ10は、一対のビード部1にそれぞれ埋設されたビードコア4間にトロイド状に跨って延在する少なくとも1枚のカーカスプライ1a,1bからなるカーカス1を骨格とし、そのクラウン部タイヤ半径方向外側には、少なくとも2枚のベルトからなるベルト層6が設けられている。2枚のカーカスプライ1a,1bはビードコア4で折り返されてタイヤ半径方向外側に巻き上げられ、このうちタイヤ半径方向外側のカーカスプライ1aの端部は、ビードコア4のタイヤ半径方向外側に配設されたビードフィラー5近傍に配置され、タイヤ半径方向内側のカーカスプライ1bの端部は、ベルト層6の端部とオーバーラップする位置まで延在して、ベルト層6の内側に配置されている。
また、図示はしないが、本発明のタイヤにおいては必要に応じ、ベルト層6のタイヤ半径方向外側に、ベルト層6の全体を覆うキャップ層や、ベルト層6の端部のみを覆うレイヤー層を、それぞれ1枚以上で配置することもできる。さらに、図示はしないが、タイヤの最内面には、通常、インナーライナーが配設されている。
本発明は、特に制限されないが、扁平率が40%以上、例えば、55〜90%であるタイヤに適用した場合に有用である。なお、扁平率については特に制限されないが、扁平率が小さくなるとこれに応じてタイヤ断面高さが低くなるためにリム外れが発生し難くなるが、一般的な乗用車向けタイヤで大きめのタイヤ幅ではタイヤ断面高さ(SH)が高くなるので、リム外れが発生する可能性がある。なおここで、扁平率とは、リムに装着した状態における{(タイヤ断面高さ(SH))/(タイヤの幅)}×100(%)で表される。
本発明のタイヤは、上記芯鞘繊維を所定の打込み数で並列に引き揃えてゴム被覆して形成された補強層を、生タイヤの成形時において、上記所定の部位に配置した後、常法に従い、140℃〜190℃の加硫温度で、3〜50分間加硫することにより、製造することができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1〜4および比較例4)
タイヤサイズ235/65R17にて、図1に示すような、サイドウォール部にカーカスの内面に沿ってサイド補強ゴムを備え、サイド補強ゴムの内面に沿って1層の補強層を設けた、ランフラットタイヤを作製した。補強層は、下記の表1中に示す芯部および鞘部を有する芯鞘型の複合繊維のゴム引き層により形成し、図示するように、サイド補強ゴムの全体を覆って、タイヤ半径方向両側においてカーカスの内面に隣接する位置まで、芯鞘繊維の配設角度がタイヤ半径方向となるように配設した。補強層の被覆ゴムとしては、下記の表2中に示す配合ゴムを用いた。この供試タイヤのタイヤ断面高さSHは152mmであり、扁平率は65%であった。
(比較例1)
補強層を配置しない以外は実施例1等と同様にして、比較例1の供試タイヤを作製した。
(比較例2,3,5)
補強層を、下記の表1中に示すコードのゴム引き層により形成した以外は実施例1等と同様にして、比較例2,3,5の供試タイヤを作製した。
得られた各供試タイヤについて、以下に従い、耐リム外れ性およびランフラット走行性能を評価した。その結果を、下記の表1中に併せて示す。
(1)耐リム外れ性
各供試タイヤをJATMA規格の標準リムに組み付け、空気を充填せずに(内圧0kPa)車両に装着して、20km/hの速度で5kmの距離を慣らし走行した。その後、所定の速度で曲率半径25mの旋回路に進入して、この旋回路の1/3周の位置で停止することを2回連続で実施した(Jターン試験)。このJターン試験を進入速度を2km/hずつ上げながら実施し、ビード部がリム(リムのハンプ)から外れたときの旋回加速度を測定して、比較例1の供試タイヤのビード部がリムから外れたときの旋回加速度を基準値100として指数表示した。指数値が大きいほど、耐リム外れ性に優れていることを示す。
(2)ランフラット走行性能
各供試タイヤをJATMA規格の標準リムに組み付け、空気を充填せずに(内圧0kPa)車両に装着して、速度80km/hの条件でランフラット走行試験を行い、故障するまでの走行距離を測定して、比較例1の供試タイヤが故障した距離を基準値100として指数表示した。指数値が大きいほど、ランフラット走行耐久性に優れていることを示す。
また、ランフラット走行試験後に、故障タイヤの補強層におけるゴム−補強材間の接着剥離の有無などを、下記の表3に示す基準に従い評価した。
Figure 0006577325
*1)プロピレン単独重合体、株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ F113G」、230℃におけるMFR:4.0g/10min、融解ピーク温度(融点):165℃)
*2)プロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製、商品名「FY6」、230℃におけるMFR:2.5g/10min、融解ピーク温度(融点):162℃)
*3)ポリメチレンテレフタレート、シェルケミカルズジャパン(株)製、品名「CORTERRA 9240」、融解ピーク温度(融点):228℃、IV値0.92、融解開始温度213℃
*4)プロピレン−エチレンランダム共重合体、日本ポリプロ(株)製、品名「WSX02」、190℃におけるMFR:25g/10min、融解ピーク温度(融点):126℃)
*5)プロピレン−エチレンランダム共重合体、プライムポリマー(株)製、品名「Y−2045GP」、190℃におけるMFR:20g/10min、融解ピーク温度(融点):134℃)
*6)ポリブタジエン、(株)JSR製、品名「RB840」、190℃におけるMFR:4g/10min、1,2−ビニル結合含量=94%、結晶化度=36%、融解ピーク温度(融点):126℃
*7)エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、三井化学(株)製、品名「EPT X−3012P」、190℃におけるMFR:5g/10min、ジエン含量:3.6%、融解ピーク(融点)温度:160℃(ポリプロピレン由来ピーク:160℃、ポリエチレン由来ピーク:129℃)
*8)スチレン−ブタジエン−ブチレン―スチレンブロック共重合体(SBBS)、旭化成ケミカルズ(株)製、品名「タフテックP1083」、190℃におけるMFR:3g/10min、スチレン含量:20%
*9)アミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、(株)JSR、品名:ダイナロン 8630P、230℃におけるMFR:15g/10min、スチレン含有:15%
*10)ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業(株)製、品名「ノクセラーBZ−P」、JIS略号:ZnBDC
*11)ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業(株)製、品名「ノクセラーD」、JIS略号:DPG
*12)スチール製タイヤコード、撚り構造:1×3、フィラメント径:0.12mm、ピッチ長さ:8mm、コードサイズ:0.26g/m
*13)ポリエチレンテレフタレートタイヤコード、特開平9−67732公報の実施例4で示される製造方法により試作された接着剤組成物処理コード(固有粘度IV=1.01)
Figure 0006577325
Figure 0006577325
上記表1中に示すように、本発明に係る芯鞘繊維を用いた補強層をサイド補強ゴムの内面に沿って配置した各実施例の供試タイヤにおいては、耐リム外れ性と、ランフラット走行性能とが、良好に両立されていることが確かめられた。また、ランフラット走行後の故障タイヤの観察結果から、各実施例の供試タイヤでは、ランフラット走行後においても、芯鞘繊維の補強材とゴムとの接着が良好に保持されていることが確かめられた。
1 カーカス
1a,1b カーカスプライ
2 サイド補強ゴム
3 補強層
4 ビードコア
5 ビードフィラー
6 ベルト層
10 タイヤ
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部

Claims (7)

  1. 一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、サイドウォール部に該カーカスの内面に沿ってサイド補強ゴムを備えるランフラットタイヤにおいて、
    タイヤ断面高さSHが115mm以上であって、前記サイド補強ゴムの内面に沿って、該サイド補強ゴムの少なくとも一部を覆う補強層が配設され、かつ、該補強層が、芯部が融点150℃以上の高融点樹脂からなり、鞘部が、オレフィン系重合体を含み該高融点樹脂よりも融点の低い樹脂材料からなる芯鞘型の複合繊維のゴム引き層よりなることを特徴とするランフラットタイヤ。
  2. 前記補強層における前記複合繊維の配設角度が、タイヤ半径方向から20°以内の範囲である請求項1記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記補強層が、前記サイド補強ゴムの内面の全体を覆って、タイヤ半径方向両側において前記カーカスの内面に隣接する位置まで配設されている請求項1または2記載のランフラットタイヤ。
  4. 前記樹脂材料が、スチレン系ブロック共重合体あるいはその水添化物を含む請求項1〜3のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
  5. 前記スチレン系ブロック共重合体あるいはその水添化物が、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体である請求項4記載のランフラットタイヤ。
  6. 前記樹脂材料が、加硫促進剤を含む請求項1〜5のうちいずれか一項記載のランフラットタイヤ。
  7. 前記加硫促進剤が、ジフェニルグアニジンまたはジブチルジチオカルバミン酸亜鉛である請求項6記載のランフラットタイヤ。
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