JP6891607B2 - 乗物用シート - Google Patents
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Description
シートクッション4は、上述の基本構成4F,4P,4Sと、シートヒータ10と、サーモスタット12を有している(各部材の詳細は後述)。そしてシートヒータ10とサーモスタット12は、シートクッション4に着座した乗員を効率良く加温する必要上、着座状態の乗員に近いシートカバー4Sの裏側に配置されている。この種の構成では、シートカバー4Sの裏側に配置されているサーモスタット12によって、シート性能(着座性や意匠性等)が悪化することは極力回避すべきである。そこで本実施例では、後述する構成によって、シートヒータ10を、サーモスタット12とともにシートカバー4Sの裏側に性能よく配置することとした。以下、各構成について詳述する。
図1に示すシートクッション4では、シートパッド4Pが、シートフレーム4F(図示省略)上に配置された状態で後述のシートカバー4Sで被覆されている。ここでシートフレーム4Fは、典型的に上方視で略矩形の枠体であり、金属や硬質樹脂などの剛性に優れる素材にて形成できる。またシートパッド4Pは、乗員を弾性的に支持可能な上方視で略矩形状の部材であり、後述する土手部位20を有している。このシートパッド4Pの材質は特に限定しないが、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂を例示できる。そして後述の土手部位20を除くシートパッド4P部分は、上面(天板メイン部4a,左右一対の天板サイド部4b)と、周面(カマチ部4c,フロント部4d)に区分けできる。天板メイン部4aは、本発明の着座面に相当する略平坦な上面部分であり、シート幅方向である左右方向の中央に形成されている。この天板メイン部4aは、乗員の着座が可能な幅寸法を有して前後方向に延びている。また各天板サイド部4bは、天板メイン部4aの左方と右方において相対的に上側に突出している上面部分であり、コーナリング走行時等に乗員の側方を支持することができる。またカマチ部4cは、シートパッド4Pの左側面と右側面をなす周面部分であり、フロント部4dは、シートパッド4Pの前面をなす周面部分である。
また土手部位20は、図1及び図3を参照して、シートパッド4Pの後部で上方に向けて盛り上がっている部位である。この土手部位20は、シートパッド4Pそのもので形成されているとともに、天板メイン部4aと左右の天板サイド部4bの後方でこれらを左右方向に横断するように形成されている。そして土手部位20は、断面視で略矩形状をなして上方に盛り上がっており、図3を参照して、前面部21aと、上面部21bと、上方後面部21cと、下方後面部21dを有している。前面部21aは、天板メイン部4a等の後方で上方且つ後方に延びている傾斜面である。また上面部21bは、前面部21aの上端から後方に向けて延長している概ね平坦な面であり、シートバック6の直下に配置されている。また上方後面部21cと下方後面部21dは、土手部位20を含むシートパッド4Pの後面をなす部位であり、上面部21bの後縁から下方に概ね垂直に延びている。
シートカバー4Sは、図2〜図4を参照して、シートの意匠面を構成する面材であり、後述する被覆部材36を有している。そしてシートカバー4Sは、シートクッション4を正面から見た場合の露出度合を基に、後述の第一シートカバー部位31と第二シートカバー部位32とに区分けでき、これら各シートカバー部位31,32はいずれも複数の表皮ピースSP,SP1〜SP4(詳細後述)で構成されている。ここで各表皮ピースSP,SP1〜SP4の材質として、例えば布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)を用いることができる。また各表皮ピースSP,SP1〜SP4の裏側には、パッド材や裏基布を取付けることができる。そして隣り合う表皮ピース同士は、図3及び図4を参照して、これらの縁端同士が中表状に重ねられている縫い代部34,34A,34Bで縫合されている(図3及び図4では、便宜上、特定の縫い代部に特定の符号34A,34Bを付し、その他の縫い代部には共通の符号34を付している)。そして各縫い代部34,34A,34Bは、シートカバー4Sの裏側に突出して配置されており、シートパッド4Pの対応する溝部(符号省略)内に適宜収納することができる(なお各図では、便宜上、着座面の溝部のみ図示している)。
そして第一シートカバー部位31は、図2及び図3を参照して、相対的に目につきやすいシートカバー部分であり、複数の表皮ピースSPを縫合することで形成されている(図2及び図3では、便宜上、第一シートカバー部位をなす各表皮ピースに共通の符号SPを付す)。この第一シートカバー部位31は、シートクッション4を正面(図1の前方)から見た場合に、シートの着座側に露出して配置されている表皮ピースSPで構成されている。例えば本実施例の乗物用シート2は、前方と左方と右方に別部材が隣接配置されていない状態である。このような場合の第一シートカバー部位31は、シートパッド4Pの上面及び周面(天板メイン部4a,左右の天板サイド部4b,左右のカマチ部4c,フロント部4d)と土手部位20の前面部21aを被覆している表皮ピースSPで構成できる。
また第二シートカバー部位32は、図2及び図3を参照して、第一シートカバー部位31以外のシートカバー部分であり、複数の表皮ピース(第一表皮ピースSP1〜第四表皮ピースSP4)を縫合することで形成されている。この第二シートカバー部位32は、シートクッション4を正面から見た場合に、第一シートカバー部位31に比して目立ちにくい箇所に配置されている表皮ピースSP1〜SP4で構成されている。すなわち第二シートカバー部位32は、図3に示す土手部位20の上面部21b及び後面部21c,21dを被覆している表皮ピースSP1〜SP4で構成できる。そして第一表皮ピースSP1は、土手部位20の上面部21bを覆う表皮ピースであり、上方に配置するシートバック6が邪魔となって、シートの着座側に実質的に露出しない表皮ピースである。また第二表皮ピースSP2〜第四表皮ピースSP4は、土手部位20を含むシートパッド4Pの後面部21c,21dを被覆する表皮ピースであり、シートの着座側に露出しない表皮ピースである。これら第二表皮ピースSP2と第三表皮ピースSP3と第四表皮ピースSP4は、この順で第一表皮ピースSP1の後端から下方に連なった状態で対応する縫い代部で縫合されている。例えば図4を参照して、第一表皮ピースSP1の後縁端と第二表皮ピースSP2の上縁端とが上方縫い代部34Aのステッチ部SEWで縫合されている。また第二表皮ピースSP2の下縁端と第三表皮ピースSP3の上縁端も同様に下方縫い代部34Bで縫合されている。
被覆部材36は、図3及び図4を参照して、シートカバー4Sよりも断熱性に優れる部材であり、シートカバー4Sに縫合可能な部材であることが望ましい。この種の被覆部材36の素材として、ウレタンラミなどの発泡樹脂からなるシート体やボード体やマット体、合成繊維や無機繊維や天然繊維からなる繊維積層体、熱を反射可能な金属層を備えた樹脂フィルムや樹脂板を例示できる。そして被覆部材36は、後述するサーモスタット12を網羅可能な略矩形の面材であり、第二表皮ピースSP2の裏側に配置されて、上方後面部21cに対面状に配置されている。この被覆部材36の上端は、第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2の縫合箇所となる上方縫い代部34Aのステッチ部SEWに共縫いされて固定されている。また被覆部材36の下端は、第二表皮ピースSP2と第三表皮ピースSP3の縫合箇所となる下方縫い代部34B付近まで延長されているが、この下方縫い代部34Bには共縫いされておらず自由状態とされている。このように被覆部材36の上端だけをシートカバー4Sに取付ける構成とすることで、第二シートカバー部位32が、被覆部材36からの張引などで過度に変形することを好適に回避することができる。なお被覆部材36の図示しない右端と左端も、第二シートカバー部位32には固定されておらず自由状態とされている。
シートヒータ10は、図1〜図3を参照して、上方視で略矩形の面材で構成されており、複数の発熱部位HAと、複数の連結部位JAと、後述のサーモスタット12を有している(図3では、便宜上、各発熱部位に共通の符号HAを付し、各連結部位にも共通の符号JAを付している)。このシートヒータ10は、着座面となる天板メイン部4aに配置可能な幅寸法と、天板メイン部4aから土手部位20にかけての部分を網羅可能な長さ寸法とを有している。ここでシートヒータ10の素材は特に限定しないが、フェルトや布帛や皮革や軟質樹脂シートなどの可撓性を備える素材であることが好ましく、シートカバー4Sよりも剛性に優れる素材であることが更に好ましい。
サーモスタット12は、図1〜図4を参照して、各発熱部位HAの温度を調節する部材であり、略立方体状の筐体と、筐体内に配置されている制御機構を有している(各図では、便宜上、サーモスタットを示す符号12を筐体に付す)。このサーモスタット12は、シートヒータ10の後部に固定されて一体化されており、各発熱部位HAよりも後方に配置されている。そして筐体は、図4に示す展開状態の第二表皮ピースSP2よりも小寸とされており、典型的に金属や樹脂などの剛性に優れる素材で形成されている。また制御機構として、バイメタル式、電子式、油圧式及びロッド・チューブ式の制御機構を用いることができる。そしてサーモスタット12と発熱部位HAを、各種部材(発熱線の一部や電極の一部や配線)を介してつなげることで、サーモスタット12にて発熱部位HAの温度を調節可能とする。例えばバイメタル式の制御機構を、発熱線や電極や配線の接点部分(図示省略)に密着可能に配置しておくことにより、各発熱部位HAの通電と非通電の切り替えが可能となる。
図3を参照して、シートパッド4Pをシートカバー4Sで被覆するに際して、シートヒータ10を、サーモスタット12とともにシートカバー4Sの裏側に配置しておく。そしてシートヒータ10が、サーモスタット12によって温度調節されることにより、シートカバー4S上に着座した乗員を加温する。この種の構成では、シートカバー4Sの裏側に配置されているサーモスタット12によって、シート性能(着座性や意匠性等)が悪化することは極力回避すべきである。そこで本実施例では、シートヒータ10の各発熱部位HAが、シートの着座面をなす第一シートカバー部位31の裏側に配置され、サーモスタット12が、第二シートカバー部位32の裏側に配置されている。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4F シートフレーム
4P シートパッド
4S シートカバー
4a 天板メイン部(本発明の着座面)
4b 天板サイド部
4c カマチ部
4d フロント部
10 シートヒータ
HA 発熱部位
JA 連結部位
12 サーモスタット
20 土手部位
21a 前面部
21b 上面部
21c 上方後面部
21d 下方後面部
31 第一シートカバー部位
32 第二シートカバー部位
34 縫い代部
34A 上方縫い代部
34B 下方縫い代部
36 被覆部材
SEW ステッチ部
SP 表皮ピース
SP1 第一表皮ピース
SP2 第二表皮ピース
SP3 第三表皮ピース
SP4 第四表皮ピース
Claims (2)
- シートの意匠面を構成するシートカバーと、前記シートカバーの裏側に配置されたシートヒータとを備え、前記シートヒータが、通電により発熱可能な発熱部位と、前記発熱部位の温度を調節するサーモスタットとを有する乗物用シートにおいて、
前記シートカバーが、シートの着座側に露出して配置されている第一シートカバー部位と、前記第一シートカバー部位とは異なる第二シートカバー部位とを有し、
シートの着座面を覆っている前記第一シートカバー部位の裏側に前記発熱部位が配置され、前記第二シートカバー部位の裏側に前記サーモスタットが配置されており、
前記サーモスタットの前記シートカバーを臨む側が、前記シートカバーよりも断熱性に優れている被覆部材で覆われており、
前記第二シートカバー部位が、複数の表皮ピースを縫合することで形成されており、
前記被覆部材の一端が、隣り合う表皮ピースを縫合しているステッチ部に共縫いされて固定されており、前記被覆部材の一端とは反対の他端が、前記第二シートカバー部位に非固定状態で配置されている乗物用シート。 - シートの意匠面を構成するシートカバーと、前記シートカバーの裏側に配置されたシートヒータとを備え、前記シートヒータが、通電により発熱可能な発熱部位と、前記発熱部位の温度を調節するサーモスタットとを有する乗物用シートにおいて、
前記シートカバーが、シートの着座側に露出して配置されている第一シートカバー部位と、前記第一シートカバー部位とは異なる第二シートカバー部位とを有し、
シートの着座面を覆っている前記第一シートカバー部位の裏側に前記発熱部位が配置され、前記第二シートカバー部位の裏側に前記サーモスタットが配置されており、
前記乗物用シートが、シートクッションと、前記シートクッションの後部で上方に盛り上がっている土手部位と、前記土手部位の上方に配置されているシートバックとを備えるとともに、前記シートクッションが、前記シートバックに対面配置されている前記土手部位の上面部と、前記上面部の後端から下方に向けて延びている後面部と、前記土手部位の前方に設けられている着座面とを有し、
前記着座面をなす前記第一シートカバー部位の裏側に前記発熱部位が配置され、前記上面部と前記後面部の少なくとも一方を覆っている前記第二シートカバー部位の裏側に前記サーモスタットが配置され、
前記サーモスタットが、前記シートクッションの高さ方向において、前記着座面の配置されている位置以上の高さ位置に配置されている乗物用シート。
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