以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、単層型の感光層を「単層型感光層」といい、電子写真感光体を「感光体」ということがある。単層型感光層とは、電荷発生能と共に、正孔輸送能及び電子輸送能を有する感光層である。
<電子写真感光体>
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、導電性基体上に配置された単層型感光層であって、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、及び疎水性シリカ粒子を含有する単層型感光層と、を備える。そして、単層型感光層は、単層型感光層全体に占める疎水性シリカ粒子の質量割合が30質量%以上70質量%以下である。
感光体が備える感光層においては、電荷発生材料は結晶構造を有することでその機能を発現するが、それ故に感光層中に分子分散されず、感光層において分布の均一性が低い傾向がある。電荷発生材料の分布の均一性が低い場合、特に電荷発生材料が凝集体を形成している場合、感光層の光に対する感度が低下する。また、電荷発生材料は空気中の水を吸着しやすく、低湿環境と高湿環境とで電荷発生材料の水分吸着度に差が生じ、その結果、感光層に感度差が生じることがある。この感度差は、電荷発生材料を含有する層が他の層によって覆われ得る積層型感光層に比べて、単層型感光層において顕著である。
これに対し、本実施形態に係る感光体は、高感度で且つ環境による感度差が抑制される。この理由は、次のように推測される。
感光層は、一般的に、感光層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、塗布膜を乾燥させて形成するところ、感光層形成用塗布液において、疎水性シリカ粒子が電荷発生材料の周りに配位し、電荷発生材料の凝集を抑制する故、感光層における電荷発生材料の分布の均一性が高まり、感光層の感度が向上すると推測される。そして、単層型感光層は環境による感度差が現れやすいところ、電荷発生材料の周りに存在する疎水性シリカ粒子が、電荷発生材料が空気中の水を吸着することを抑制する故、環境による感度差が抑制されると推測される。単層型感光層全体に占める疎水性シリカ粒子の質量割合が30質量%未満であると上記の作用が得られにくく、一方、単層型感光層全体に占める疎水性シリカ粒子の質量割合が70質量%超であると、疎水性シリカ粒子の凝集が発生する場合があり、感光層の感度を低下させる。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る感光体を説明する。
図1は、本実施形態に係る感光体7の一部の断面を概略的に示している。図1に示した感光体7は、導電性基体1を備え、導電性基体1上に単層型感光層2が配置されている。感光体7は、必要に応じてその他の層を備えていてもよく、例えば、導電性基体1と単層型感光層2との間に下引層が配置されていてもよい。
以下、本実施形態に係る感光体の各層について詳細に説明する。
[導電性基体]
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1×1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
[単層型感光層]
本実施形態において単層型感光層は、結着樹脂と、電荷発生材料と、正孔輸送材料と、電子輸送材料と、疎水性シリカ粒子とを含有する。
−疎水性シリカ粒子−
疎水性シリカ粒子としては、シリカ粒子の表面が疎水化剤で表面処理されたシリカ粒子が好ましい。
疎水化が施されるシリカ粒子としては、乾式シリカ粒子、湿式シリカ粒子のいずれでもよい。乾式シリカ粒子としては、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ(ヒュームドシリカ);金属珪素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカ;が挙げられる。湿式シリカ粒子としては、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式シリカ粒子(アルカリ条件で合成・凝集した沈降法シリカ、酸性条件で合成・凝集したゲル法シリカ粒子);酸性珪酸をアルカリ性にして重合することで得られるコロイダルシリカ粒子(シリカゾル粒子);有機シラン化合物(例えばアルコキシシラン)の加水分解によって得られるゾルゲル法シリカ粒子;が挙げられる。
シリカ粒子の疎水化剤としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン等の周知のシラン化合物が挙げられる。これらの中でも、疎水化剤としては、残留電位の発生を抑制する観点から、トリメチルシリル基、デシルシリル基又はフェニルシリル基を有するシラン化合物が好ましい。つまり、疎水性シリカ粒子はその表面に、トリメチルシリル基、デシルシリル基又はフェニルシリル基を有することが好ましい。
トリメチルシリル基を有するシラン化合物としては、例えば、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。デシルシリル基を有するシラン化合物としては、例えば、デシルトリクロロシラン、デシルジメチルクロロシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。フェニルシリル基を有するシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
疎水化剤によるシリカ粒子の処理方法としては、例えば、シリカ粒子と水と疎水化剤とを反応容器に入れ、50℃乃至250℃で1時間乃至6時間攪拌し、次いで窒素気流下で攪拌して乾燥させ、次いで冷却する。
シリカ粒子の疎水化率は、疎水化前のシリカ粒子表面に存在していたシラノール基(Si−OH)への疎水性基の結合割合で評価する。シリカ粒子の疎水化率は、90%以上が好ましく、91%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。シリカ粒子表面に存在する基及びその割合はNMR(nuclear magnetic resonance)で検出し得る。
疎水性シリカ粒子の体積平均粒径は、20nm以上200nm以下が好ましく、30nm以上180nm以下がより好ましく、40nm以上150nm以下が更に好ましい。
疎水性シリカ粒子の体積平均粒径は、以下のとおりに測定する。
感光層の断面を走査型電子顕微鏡により4万倍の倍率で観察し、一次粒子100個について粒子ごとの長径及び短径を測定し、両者の中間値を粒子ごとの球相当径とする。ここで、長径及び短径は、粒子像(二次元図形)の重心をとおる径のうち最大及び最小の径である。粒子ごとの球相当径をもとに、体積基準の累積50%径(D50v)を求め、これをシリカ粒子の体積平均粒径とする。
感光層全体に占める疎水性シリカ粒子の質量割合は、30質量%以上70質量%以下であり、35質量%以上70質量%以下がより好ましく、40質量%以上65質量%以下が更に好ましく、45質量%以上65質量%以下が更に好ましい。
感光層において、疎水性シリカ粒子の含有量は、電荷発生材料の含有量よりも多いことが好ましい。疎水性シリカ粒子の含有量は、電荷発生材料1質量部に対して、50質量部以上250質量部以下が好ましく、60質量部以上200質量部以下がより好ましく、80質量部以上150質量部以下が更に好ましい。
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
結着樹脂としては、感光層の機械的強度の観点から、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。結着樹脂としては、感光層の成膜性の観点から、粘度平均分子量30000以上80000以下のポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量30000以上80000以下のポリアリレート樹脂が好ましい。
感光層全体に占める結着樹脂の質量割合は、25質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上40質量%以下がより好ましい。
−電荷発生材料−
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
電荷発生材料としては、感光層の高感度化の観点から、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料としては、具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンが挙げられる。
電荷発生材料としては、電荷発生効率の観点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンの少なくともいずれかが好ましく、ヒドロキシガリウムフタロシアニンがより好ましく、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンが更に好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、600nmから900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおいて810nmから839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニンが、分散性に優れる観点から好ましい。
810nmから839nmの範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニンは、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより好ましく、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、55m2/g以上120m2/g以下であることが更に好ましい。平均粒径は、体積平均粒径であり、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所LA−700)にて測定した値である。BET比表面積は、流動式比表面積自動測定装置(島津製作所フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンの最大粒径(一次粒径の最大値)は、1.2μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、平均粒径が0.2μm以下であり、且つ、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、BET比表面積が45m2/g以上であることが好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3°、16.0°、24.9°、28.0°に回折ピークを有するV型であることが好ましい。
クロロガリウムフタロシアニンとしては、感光層の高感度化の観点から、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°、28.3°に回折ピークを有する化合物が好ましい。クロロガリウムフタロシアニンの最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及びBET比表面積の好ましい範囲は、ヒドロキシガリウムフタロシアニンと同様である。
電荷発生材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
単層型感光層に含まれる電荷発生材料の量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上8質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上5質量部以下が更に好ましい。
−正孔輸送材料−
正孔輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等が挙げられる。正孔輸送材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
正孔輸送材料としては、一般式(B−1)で表される化合物、一般式(B−2)で表される化合物、一般式(B−3)で表される化合物、一般式(1)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、感光層の高感度化の観点から、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(B−1)中、RB1はメチル基を表し、n11は0以上2以下の整数を表す。ArB1及びArB2は各々独立に、置換若しくは無置換のアリール基、−C6H4−C(RB3)=C(RB4)(RB5)、又は−C6H4−CH=CH−CH=C(RB6)(RB7)を表し、RB3乃至RB7は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
一般式(B−2)中、RB8及びRB8’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基を表す。RB9、RB9’、RB10及びRB10’は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(RB11)=C(RB12)(RB13)又は−CH=CH−CH=C(RB14)(RB15)を表し、RB11乃至RB15は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。m12、m13、n12及びn13は各々独立に、0以上2以下の整数を表す。上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
一般式(B−3)中、RB16及びRB16’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基を表す。RB17、RB17’、RB18及びRB18’は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(RB19)=C(RB20)(RB21)又は−CH=CH−CH=C(RB22)(RB23)を表し、RB19乃至RB23は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。m14、m15、n14及びn15は各々独立に、0以上2以下の整数を表す。上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
正孔輸送材料としては、感光層の高感度化の観点から、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基又はフェノキシ基を表し、m及びnは各々独立に0又は1を表す。
一般式(1)中、R1〜R6が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
一般式(1)中、R1〜R6が表すアルキル基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、更に好ましくは1以上3以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、ネオドデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、tert−トリデシル基、ネオトリデシル基、イソテトラデシル基、sec−テトラデシル基、tert−テトラデシル基、ネオテトラデシル基、1−イソブチル−4−エチルオクチル基、イソペンタデシル基、sec−ペンタデシル基、tert−ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、イソヘキサデシル基、sec−ヘキサデシル基、tert−ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、1−メチルペンタデシル基、イソヘプタデシル基、sec−ヘプタデシル基、tert−ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、イソオクタデシル基、sec−オクタデシル基、tert−オクタデシル基、ネオオクタデシル基、イソノナデシル基、sec−ノナデシル基、tert−ノナデシル基、ネオノナデシル基、1−メチルオクチル基、イソイコシル基、sec−イコシル基、tert−イコシル基、ネオイコシル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基が好ましい。
一般式(1)中、R1〜R6が表すアルコキシ基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、更に好ましくは1以上3以下)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。直鎖状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等が挙げられる。分岐状のアルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、1−イソブチル−4−エチルオクチルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、イソヘキサデシルオキシ基、sec−ヘキサデシルオキシ基、tert−ヘキサデシルオキシ基、ネオヘキサデシルオキシ基、1−メチルペンタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基、イソノナデシルオキシ基、sec−ノナデシルオキシ基、tert−ノナデシルオキシ基、ネオノナデシルオキシ基、1−メチルオクチルオキシ基、イソイコシルオキシ基、sec−イコシルオキシ基、tert−イコシルオキシ基、ネオイコシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
一般式(1)中、R1〜R6が表すフェニル基は、1個乃至5個(好ましくは1個又は2個)の置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基等);炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等);が挙げられる。
一般式(1)中、R1〜R6が表すフェノキシ基は、ベンゼン環に1個乃至5個(好ましくは1個又は2個)の置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基等);炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等);が挙げられる。
一般式(1)中、m及びnは各々独立に0又は1であり、感光層の高感度化の観点から、m及びnが共に0又は共に1であることが好ましく、m及びnが共に1であることがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、感光層の高感度化の観点から、R1〜R6が各々独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数1以上4以下のアルコキシ基を表し、m及びnが共に0又1を表す化合物が好ましい。
以下に、一般式(1)で表される化合物の例示化合物を示す。一般式(1)で表される化合物は、これに限定されるわけではない。置換基の前に付す番号は、ベンゼン環に対する置換位置を示す。
一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。一般式(1)で表される化合物を用いる場合、一般式(1)で表される化合物以外の他の正孔輸送材料と併用してもよい。一般式(1)で表される化合物とそれ以外の他の正孔輸送材料を併用する場合、正孔輸送材料全量に対して、一般式(1)で表される化合物を75質量%以上とすることが好ましい。
正孔輸送材料の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、50質量部以上90質量部以下が好ましく、60質量部以上85質量部以下がより好ましく、70質量部以上80質量部以下が更に好ましい。
−電子輸送材料−
電子輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物;などが挙げられる。電子輸送材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子輸送材料としては、感光層の高感度化の観点から、フルオレノン化合物が好ましく、フルオレノン化合物の中でも、一般式(2)で表される化合物が好ましい。
一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を表し、R18は、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は−L19−O−R20(但し、L19はアルキレン基を表し、R20はアルキル基を表す。)を表す。
一般式(2)中、R11〜R17が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
一般式(2)中、R11〜R17が表すアルキル基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、更に好ましくは1以上3以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、ネオドデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、tert−トリデシル基、ネオトリデシル基、イソテトラデシル基、sec−テトラデシル基、tert−テトラデシル基、ネオテトラデシル基、1−イソブチル−4−エチルオクチル基、イソペンタデシル基、sec−ペンタデシル基、tert−ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、イソヘキサデシル基、sec−ヘキサデシル基、tert−ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、1−メチルペンタデシル基、イソヘプタデシル基、sec−ヘプタデシル基、tert−ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、イソオクタデシル基、sec−オクタデシル基、tert−オクタデシル基、ネオオクタデシル基、イソノナデシル基、sec−ノナデシル基、tert−ノナデシル基、ネオノナデシル基、1−メチルオクチル基、イソイコシル基、sec−イコシル基、tert−イコシル基、ネオイコシル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基が好ましい。
一般式(2)中、R11〜R17が表すアルコキシ基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、更に好ましくは1以上3以下)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。直鎖状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等が挙げられる。分岐状のアルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、1−イソブチル−4−エチルオクチルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、イソヘキサデシルオキシ基、sec−ヘキサデシルオキシ基、tert−ヘキサデシルオキシ基、ネオヘキサデシルオキシ基、1−メチルペンタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基、イソノナデシルオキシ基、sec−ノナデシルオキシ基、tert−ノナデシルオキシ基、ネオノナデシルオキシ基、1−メチルオクチルオキシ基、イソイコシルオキシ基、sec−イコシルオキシ基、tert−イコシルオキシ基、ネオイコシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
一般式(2)中、R11〜R17が表すアリール基としては、炭素数6以上30以下(好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上16以下)のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。これらアリール基は、1個乃至5個(好ましくは1個又は2個)の置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基等);炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等);が挙げられる。
一般式(2)中、R11〜R17が表すアラルキル基としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等)にフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基等が結合した基が挙げられ、ベンジル基、フェネチル基が好ましい。これらアラルキル基のベンゼン環は、1個乃至5個(好ましくは1個又は2個)の置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基等);炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等);が挙げられる。
一般式(2)中、R18が表すアルキル基としては、R11〜R17が表すアルキル基と同様の基が挙げられる。R18が表すアルキル基としては、炭素数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素数4以上10以下のアルキル基がより好ましく、炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基が更に好ましい。
一般式(2)中、R18が表すアリール基としては、R11〜R17が表すアリール基と同様の基が挙げられる。R18が表すアリール基としては、有機溶剤への溶解性の観点からは、アルキル基で置換されたアルキル置換アリール基が好ましい。R18が表すアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基が好ましい。
一般式(2)中、R18が表すアラルキル基としては、R11〜R17が表すアラルキル基と同様の基が挙げられる。R18が表すアラルキル基としては、有機溶剤への溶解性の観点からは、アルキル基で置換されたアルキル置換アラルキル基が好ましい。R18が表すアラルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基が好ましい。
一般式(2)中、R18が表す−L19−O−R20(但し、L19はアルキレン基を表し、R20はアルキル基を表す。)において、L19としては、炭素数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等)が挙げられ、R20としては、R11〜R17が表すアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物としては、感光層の高感度化の観点から、R11〜R17が各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基であり、R18が炭素数4以上10以下のアルキル基である化合物が好ましい。
以下に、一般式(2)で表される化合物の例示化合物を示す。一般式(2)で表される化合物は、これに限定されるわけではない。
一般式(2)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。一般式(2)で表される化合物を用いる場合、一般式(2)で表される化合物以外の他の電子輸送材料と併用してもよい。一般式(2)で表される化合物とそれ以外の他の電子輸送材料を併用する場合、電子輸送材料全量に対して、一般式(2)で表される化合物を90質量%以上とすることが好ましい。
電子輸送材料の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下がより好ましく、30質量部以上40質量部以下が更に好ましい。
−その他の成分−
単層型の感光層には、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤が含まれていてもよい。また、単層型の感光層が表面層となる場合、単層型の感光層には、フッ素樹脂粒子、シリコーンポリマー等の離型剤が含まれていてもよい。
[単層型感光層の形成方法]
単層型感光層は、結着樹脂と、電荷発生材料と、電子輸送材料と、正孔輸送材料と、疎水性シリカ粒子とを含む感光層形成用塗布液を準備し、この感光層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、塗布膜を乾燥させて形成することが好ましい。
感光層形成用塗布液は、例えば、結着樹脂と電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料と疎水性シリカ粒子とを、溶剤に溶解又は分散させた液状組成物である。
電荷発生材料としてフタロシアニン顔料を用いる場合、感光層形成用塗布液は、波長830nmにおける吸光度A830と、波長1000nmにおける吸光度A1000との吸光度比A1000/A830が25以下であることが好ましい。吸光度比A1000/A830は、感光層形成用塗布液中でのフタロシアニン顔料の分散状態を表す指標である。波長830nmでの吸光度は、フタロシアニン顔料特有の吸光度を表し、波長1000nmでの吸光度は、感光層形成用塗布液中でのフタロシアニン顔料の分散状態を表す。感光層形成用塗布液中でのフタロシアニン顔料の分散状態を良化させることにより、フタロシアニン顔料の粒径が小さくなり、フタロシアニン顔料による光の散乱が少なくなる故、感光層形成用塗布液は光が透過しやすくなる。それにより、吸光度A1000の値は小さくなるので、吸光度比A1000/A830は25以下となる。上記吸光度比は、感光層の高感度化の観点から、22以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましく、15以下であることが更に好ましい。
吸光度比A1000/A830は、次のようにして求める。感光層形成用塗布液を吸光度A830が、0.95以上1.05以下となるように希釈し、分光光度計(例えば、島津製作所社製UV−2600)にて測定する。次いで、測定波長を1000nmに設定して吸光度A1000を測定する。得られたA1000とA830の値から、吸光度比A1000/A830を求める。
感光層形成用組成物を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類;などの有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
感光層形成用組成物中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
感光層形成用組成物を導電性基体上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
導電性基体上に塗布された感光層形成用組成物を乾燥することによって、導電性基体上に感光層が形成される。感光層形成用組成物の乾燥のために、加熱処理(例えば、120℃乃至150℃、10分間乃至60分間)を行ってもよい。
単層型感光層の層厚は、5μm以上60μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましく、20μm以上40μm以下が更に好ましい。
[下引層]
導電性基体と感光層との間には、下引層を設けてもよい。下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)1×102Ωcm以上1×1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。無機粒子の中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法又は湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤を除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤の除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤の除去後には、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として、溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに下引層に添加してもよい。
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
下引層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
[中間層]
下引層と感光層との間には、中間層を設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。中間層を下引層としてもよい。
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体と、感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電した感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、感光体として、本実施形態に係る感光体が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を備える装置等の公知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。プロセスカートリッジは、感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば紙)に転写する二次転写装置も有している。中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、感光体7の表面に接触するように配置されている。クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
図2には、画像形成装置として、潤滑剤14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
[帯電装置]
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
[露光装置]
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
[現像装置]
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、公知のものが適用される。
[クリーニング装置]
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
[転写装置]
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
[中間転写体]
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの感光体が使用される構成となっている。画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<疎水性シリカ粒子の作製>
[シリカ粒子A]
未処理(親水性)シリカ粒子「商品名:OX50」(アエロジル社製)を準備し、これをシリカ粒子Aとした。
[疎水性シリカ粒子Bの作製]
未処理(親水性)シリカ粒子「商品名:OX50」(アエロジル社製)100質量部に、疎水化剤としてトリメチルシラン化合物(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)(東京化成工業社製)30質量部を添加し、24時間反応させ、次いで濾取し、疎水化処理されたシリカ粒子を得た。これを疎水性シリカ粒子Bとした。
[疎水性シリカ粒子Cの作製]
疎水化処理シリカ粒子「商品名:RX200」(アエロジル社製)を準備し、これを疎水性シリカ粒子Cとした。
[疎水性シリカ粒子Dの作製]
疎水性シリカ粒子「商品名:X24−9163A」(信越化学工業社製)を準備し、これを疎水性シリカ粒子Dとした。
[疎水性シリカ粒子Eの作製]
未処理(親水性)シリカ粒子「商品名:SFP−20M」(電気化学工業社製)100質量部に、テトラヒドロフラン200質量部、疎水化剤としてトリメチルシラン化合物(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)(東京化成工業社製)30質量部を添加し、12時間反応させ、次いで濾取し、疎水化処理されたシリカ粒子を得た。これを疎水性シリカ粒子Eとした。
[疎水性シリカ粒子Fの作製]
未処理(親水性)シリカ粒子「商品名:OX50」(アエロジル社製)100質量部に、テトラヒドロフラン200質量部、疎水化剤としてデシルシラン化合物(デシルトリメトキシシラン、「商品名:KBM−3103」(信越化学工業社製))30質量部を添加し、24時間反応させ、次いで濾取し、疎水化処理されたシリカ粒子を得た。これを疎水性シリカ粒子Fとした。
[疎水性シリカ粒子Gの作製]
未処理(親水性)シリカ粒子「商品名:OX50」(アエロジル社製)100質量部に、テトラヒドロフラン200質量部、疎水化剤としてフェニルシラン化合物(フェニルトリエトキシシラン、「商品名:KBE−103」(信越化学工業社製))30質量部を添加し、24時間反応させ、疎水化処理されたシリカ粒子を得た。これを疎水性シリカ粒子Gとした。
シリカ粒子A及び疎水性シリカ粒子B〜Gの物性を表6に示す。表6に記載の粒径は、感光体を製造した後、感光層に含有されているシリカ粒子について、既述の方法で計測して求めた値である。
<感光体の製造>
[実施例1]
ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量5万)47.2質量部と、電荷発生材料0.8質量部と、正孔輸送材料34質量部と、電子輸送材料18質量部と、疎水性シリカ粒子B 54質量部と、テトラヒドロフラン250質量部との混合物を高圧ホモジナイザーにて分散し、感光層形成用塗布液を得た。電荷発生材料などの化合物種は、表7に記載のとおりである。
導電性基体として、直径30mm、長さ244.5mm、肉厚1mmのアルミニウム基材を用意した。感光層形成用塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材上に塗布し、温度135℃において35分間の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型感光層をアルミニウム基材上に形成した。こうして、実施例1の感光体を得た。
[実施例2〜15、比較例1〜4]
表7に記載の組成となるように、シリカ粒子の種類と量、電荷発生材料の種類、正孔輸送材料の種類、及び電子輸送材料の種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、各例の感光体を作製した。
表7中の略称は以下の化学物質を意味する。
−電荷発生材料−
・CGM1:V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン。CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3°、16.0°、24.9°、28.0°の位置に回折ピークを有する。600nmから900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長820nm、平均粒径0.12μm、最大粒径0.2μm、BET比表面積60m2/g。
・CGM2:クロロガリウムフタロシアニン。CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有する。600nmから900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長780nm、平均粒径0.15μm、最大粒径0.2μm、BET比表面積56m2/g。
・CGM3:チタニルフタロシアニン。
・CGM4:X型無金属フタロシアニン。フタロシアニン骨格の中心に2個の水素原子が配位したフタロシアニン。
−正孔輸送材料−
・HTM1:一般式(1)で表される化合物の例示化合物(1−41)。
・HTM2:一般式(1)で表される化合物の例示化合物(1−1)。
・HTM3:下記構造の化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン。
−電子輸送材料−
・ETM1:一般式(2)で表される化合物の例示化合物(2−11)。
・ETM2:一般式(2)で表される化合物の例示化合物(2−14)。
・ETM3:下記構造の化合物、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン。
<評価>
[感光層形成用塗布液の吸光度比]
感光層形成用塗布液について、既述の方法にしたがって吸光度を測定し、吸光度比A1000/A830を算出し、下記のとおり分類した。
G1:吸光度比A1000/A830が4.5以下であった。
G2:吸光度比A1000/A830が4.5を超え5.0以下であった。
G3:吸光度比A1000/A830が5.0を超えていた。
[感光体の感度]
感光体の感度の評価は、+800Vに帯電させたときの半減露光量として評価した。具体的には、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−8100、川口電気社製)を用いて、温度20℃/相対湿度40%の環境下、+800Vに帯電させた後、タングステンランプの光をモノクロメーターを用いて800nmの単色光にし、感光体表面上で1μW/cm2になるように調整して照射した。帯電直後における感光体表面電位Vo(V)が、光照射により2分の1となる半減露光量(μJ/cm2)を測定し、下記のとおり分類した。
G1:半減露光量が0.15μJ/cm2以下であった。
G2:半減露光量が0.15μJ/cm2を超え0.18μJ/cm2以下であった。
G3:半減露光量が0.18μJ/cm2を超えていた。
[環境による感光体の感度差]
上記の半減露光量を、温度28℃/相対湿度85%の環境と、温度10℃/相対湿度15%の環境とにおいて測定し、その差の絶対値を算出し、下記のとおり分類した。
G1:半減露光量の差の絶対値が0.04μJ/cm2以下であった。
G2:半減露光量の差の絶対値が0.04μJ/cm2を超え0.06μJ/cm2以下であった。
G3:半減露光量の差の絶対値が0.06μJ/cm2を超えていた。