JP6891500B2 - 電磁波調整用分散体及び電磁波調整素子 - Google Patents

電磁波調整用分散体及び電磁波調整素子 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波調整用分散体及び電磁波調整素子に関する。
省エネルギー、プライバシー保護、防眩等の観点から、可視光線、近赤外線等の電磁波の透過率又は散乱強度を電気的に制御可能な電磁波調整素子への関心が高まっている。これまで、電磁波調整素子としては、電磁波調整方式としてエレクトロクロミック現象、液晶、粒子分散液等を用いたタイプのものがそれぞれ実用化されている。この中で、エレクトロクロミック現象を用いたタイプは大面積化が困難であるという課題がある。また、液晶を用いたタイプは光の透過状態と散乱状態とを切り替えるものであり、遮光状態にできないという課題がある。
それに対して粒子分散液を用いたタイプは、電圧を印加して粒子の非配向状態(粒子がランダムに分散した状態)と、配向状態(粒子が方向性をもって配向した状態、整列状態ともいう)とを切り替えることによって電磁波の透過率を制御するものであり、大面積化が可能であることから、自動車、航空機、建築物等の窓等への適用が進んでいる。粒子分散液を用いたタイプの電磁波調整素子では、分散状態と配向状態(整列状態)とで電磁波の透過率が異なる性質を有する粒子に電圧を印加してその配向状態を制御することにより、電磁波の透過率を制御する。例えば、紫外線を照射することにより硬化する高分子媒体と、ポリ過ヨウ化物(以下、本明細書ではポリヨウ素化物ともいう)の針状小結晶等の粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散した光偏光懸濁液と、を含有する調光材料を用いて調光フィルムを形成し、作製した調光フィルムに電界を印加することで入射光の透過を調整する方法が特許文献1に記載されている。
特開2002−189123号公報
しかしながら、ポリヨウ素化物は溶剤による劣化が顕著であるために、ポリヨウ素化物を用いた電磁波調整素子を作製するにあたり、選択できる溶剤が限定されるという課題がある。したがって本発明は、ポリヨウ素化物に耐溶剤性を付与し、耐溶剤性の良好な電磁波調整粒子を用いた電磁波調整用分散体、及び電磁波調整素子を提供することを目的とする。
本実施態様は以下を含む。
<1> ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に、高分子共重合体を有してなる、長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであり、アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)の平均値が2.0以上である電磁波調整粒子と、分散媒とを含む、電磁波調整用分散体。
<2> 前記高分子共重合体が、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位、(メタ)アクリレートモノマー由来の構造単位、及びシリコーンモノマー由来の構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を有する、<1>に記載の電磁波調整用分散体。
<3> 前記電磁波調整粒子の粒子表面にマクロモノマーが付与されている、<1>又は<2>に記載の電磁波調整用分散体。
<4> 前記マクロモノマーが、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位、(メタ)アクリレートモノマー由来の構造単位及びシリコーンモノマー由来の構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を有する、<3>に記載の電磁波調整用分散体。
<5> 前記分散媒は25℃での粘度が1mPa・s〜5000mPa・sである、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の電磁波調整用分散体。
<6> さらにマトリックス樹脂を含み、前記マトリックス樹脂が液滴を含み、前記液滴が前記電磁波調整粒子と前記分散媒とを含む、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電磁波調整用分散体。
<7> 一対の導電性基材と、前記一対の導電性基材の間に配置される<1>〜<6>のいずれか1項に記載の電磁波調整用分散体と、を有する電磁波調整素子。
本発明によれば、耐溶剤性の良好な電磁波調整粒子を用いた電磁波調整用分散体、及び電磁波調整素子が提供される。
電磁波調整素子の一例を説明する断面概略図である。 実施例2で得られた、表面に高分子共重合体を有し、さらにマクロモノマーが付与されたポリヨウ素化物の構造を示す電子顕微鏡写真である。 高分子共重合体の付与されたポリヨウ素化物のシリコーン分散液を用いた電磁波調整素子の電圧停止時と電圧印加時の350nm〜900nmの波長の全光線透過率を表すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語は、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において、「(メタ)アクリレートモノマー」はアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」はアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一方を意味する。
<電磁波調整用分散体>
本実施の形態の電磁波調整用分散体(以下、単に分散体とも称する)は、ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に、高分子共重合体を有してなる、長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであり、アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)の平均値が2.0以上である電磁波調整粒子と、分散媒とを含む。
電磁波調整用分散体中のポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に高分子共重合体を有することで、ポリヨウ素化物が溶剤と接する領域が減り、耐溶剤性が向上する傾向にある。
電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであると、電磁波調整粒子の分散状態及び配向状態における電磁波の透過率の適切な調整が可能となり、さらに電圧の印加に対する応答性が良好に維持される傾向にある。このため、ポリヨウ素化物の表面に高分子共重合体が存在する場合であっても、電磁波調整粒子として優れた機能を発揮できる傾向にある。
電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値が2.0以上であると、電磁波調整粒子が分散媒中にランダムに分散している状態と、電場の方向に沿うように配向している状態とで、電磁波調整粒子による電磁波透過率を充分に変化させることができる。このため、ポリヨウ素化物の表面に高分子共重合体が存在する場合であっても、電磁波調整粒子として優れた機能を発揮できる傾向にある。
本実施の形態では、分散体に電圧を印加していない状態の電磁波調整粒子は分散媒中にランダムに分散しており、電磁波調整粒子による電磁波の吸収が電磁波調整粒子の長軸表面で行われるか、短軸で行われるかは個々の電磁波調整粒子の分散体中における向きによって異なる。他方、分散体に電圧を印加した状態では、個々の電磁波調整粒子は長軸が電場の方向に沿うように配向し、電磁波の吸収は主に電磁波調整粒子の短軸の表面で行われる。このような電磁波調整粒子の動きを利用して、電圧の印加の有無によって電磁波の透過率を変化させたり、吸収波長を変化させたりしている。
[電磁波調整粒子]
本実施の形態で使用する電磁波調整粒子は、ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に、高分子共重合体を有する。電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値は100nm〜700nmであり、アスペクト比の平均値は2.0以上である。さらに高分子共重合体の表面にマクロモノマーが付与されていてもよい。
本明細書において電磁波調整粒子の長軸及びその長さは、電磁波調整粒子の撮影像を観察したときに、電磁波調整粒子表面の任意の点aから点aと異なる電磁波調整粒子表面の任意の点bまでの距離が最長となる線分及びその長さとする。電磁波調整粒子の短軸及びその長さは、長軸に垂直であって電磁波調整粒子表面の二点を結ぶ線分のうち、長さが最長となる線分及びその長さとする。電磁波調整粒子の長軸の長さ及び短軸の長さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察によって測定できる。また、電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値及び短軸の長さの平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡で電磁波調整粒子を撮影し、撮影した画像より任意に100個の電磁波調整粒子を抽出し、各電磁波調整粒子の長軸の長さ及び短軸の長さのそれぞれの算術平均値として算出することができる。
電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値は100nm〜700nmであり、150nm〜670nmであることが好ましく、200nm〜650nmであることがより好ましい。電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値が100nm以上であると、分散状態の電磁波調整粒子により電磁波が充分に吸収され、電磁波透過率を有効に低下させることができる傾向にある。電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値が700nm以下であると、分散状態の電磁波調整粒子による電磁波の散乱が抑制されてヘイズの上昇が抑制される傾向にあり、また、電圧の印加に対する応答性(配向性)が良好に維持される傾向にある。
電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値は、電磁波の透過率の適切な調整を可能とする観点から、2.0以上であり、2.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。アスペクト比の平均値の上限は特に制限されず、電磁波調整粒子の材料、調製方法等に応じて適宜決定することができる。例えば、20以下であってよく、10以下であってよい。
電磁波調整粒子の含有率は特に限定されないが、電磁波調整粒子と分散媒の合計量に対して0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.2質量%〜25質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜20質量%であることがさらに好ましい。電磁波調整粒子と分散媒の合計量に対して電磁波調整粒子の含有率が0.1質量%以上であると、電圧を印加していない状態での電磁波を充分に吸収できる傾向にあり、30質量%以下であると、電圧を印加した状態での電磁波透過率を充分に維持できる傾向にある。
電磁波調整用分散体は、長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであり、アスペクト比の平均値が2.0以上であって、本実施の形態の効果が充分に達成される限りにおいて、長軸の長さが100nm〜700nmであり、アスペクト比が2.0以上であるという条件を満たす電磁波調整粒子のみを含んでもよく、長軸の長さ及びアスペクト比の両方又はいずれかを満たさない電磁波調整粒子を含んでもよい。本発明の効果を充分に得る観点からは、長軸の長さが100nm〜700nmであり、アスペクト比が2.0以上であるという条件をいずれも満たす電磁波調整粒子の、電磁波調整粒子全体に対する割合が60個%以上であることが好ましく、75個%以上であることがより好ましい。前記割合は、例えば、電子顕微鏡像等を観察した際に任意に選択される電磁波調整粒子100個中における条件を満たす電磁波調整粒子の割合とすることができる。
(ポリヨウ素化物)
ポリヨウ素化物は特に限定されず、前駆体であるピラジン−2,3−ジカルボン酸2水和物、ピラジン−2,5−ジカルボン酸水和物、及びピリジン−2,5−ジカルボン酸1水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質とヨウ素とヨウ化物とニトロセルロースとを反応させて得られるポリヨウ素化物の針状結晶が好ましく用いられる。ヨウ化物としてはヨウ化カルシウム等が挙げられる。
ポリヨウ素化物の粒子サイズは、電磁波調整粒子の長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであり、アスペクト比の平均値が2.0以上となる限り限定されないが、印加電圧に対する応答時間と、ポリヨウ素化物分散液中の凝集及び沈殿との関係から、以下のサイズが好ましい。
ポリヨウ素化物の長軸の長さの平均値は、70nm〜625nmが好ましく、80nm〜550nmがより好ましく、90nm〜500nmがさらに好ましい。ポリヨウ素化物のアスペクト比の平均値は3.0〜8.0が好ましく、3.3〜7.0がより好ましく、3.6〜6.0がさらに好ましい。
前記ポリヨウ素化物の長軸の長さ及び短軸の長さ、並びにそれらの平均値は、電磁波調整用分散体の長軸の長さ及び短軸の長さ、並びにそれらの平均値と同様の方法で決定することができる。
製造されたポリヨウ素化物には、未反応物又は副生成物、サイズが小さい粒子又は大きい粒子、アスペクト比が小さい粒子又は大きい粒子が含まれる場合がある。通常は精製して用いることが好ましい。この精製方法としては、例えば、遠心分離を行う方法が挙げられる。また、処理回数は2回以上が好ましい。遠心後は上澄みを傾斜して廃棄し、粒子が凝集せずに分散可能な有機溶剤を加えることが好ましい。このとき、加える有機溶剤に制限はないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルケトン等が挙げられ、中でも、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、及び酢酸ヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種を好適に使用することができる。溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、遠心分離処理を2回以上行う場合、最初の遠心分離処理にはニトロセルロースを溶解させた溶剤を用いてもよい。このとき、ニトロセルロースの濃度に特に制限はないが、例えば3質量%〜20質量%であり、好ましくは5質量%〜15質量%である。また、溶剤を加えた後は、ポリヨウ素化物が溶剤中で分散しやすいように、ホモジナイザー又は超音波で処理することが好ましい。
以上のようにしてポリヨウ素化物の溶剤分散液を得ることができる。
(高分子共重合体)
電磁波調整粒子はポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に、高分子共重合体を有してなる。
本実施の形態において、ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に高分子共重合体を有するとは、ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に高分子共重合体が配置されている状態を意味し、ポリヨウ素化物の表面全体に高分子共重合体が配置されていてもよい。高分子共重合体はポリヨウ素化物の表面に化学的に結合していてもよく、化学的に結合していなくてもよい。
本実施の形態における「高分子共重合体」とは、数平均分子量が1,000以上の共重合体を表す。
前記高分子重合体の材料は特に制限されないが、良好な電磁波透過率を達成する観点からは、分散媒と屈折率の近い材料が好ましく、例えば、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位、(メタ)アクリレートモノマー由来の構造単位、及びシリコーンモノマー由来の構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を有する材料が好ましい。さらに、ポリヨウ素化物に高分子共重合体を付与する際に使用する溶剤に対して、未重合のモノマーは溶解し、重合してポリマーになると不溶となる材料が好ましく、そのような高分子共重合体の構造単位としては、例えば、アクリロニトリルモノマー、メチルメタクリレートモノマー等が挙げられる。高分子共重合体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に高分子重合体を付与することで、ポリヨウ素化物が溶剤と接する領域が減り、耐溶剤性が向上する傾向にある。
ポリヨウ素化物への高分子重合体の付与方法は特に限定されず、例えば、ポリヨウ素化物に重合性官能基を付与した後、高分子重合体の材料を重合させて付与してもよい。
(マクロモノマー)
ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に高分子共重合体を有する電磁波調整粒子は、粒子表面にマクロモノマーが付与されていてもよい。
本実施の形態において、マクロモノマーとは、分子内に重合性官能基を有し、数平均分子量が1,000以上である化合物をいう。
本実施の形態において、高分子共重合体表面にマクロモノマーが付与されるとは、高分子共重合体の表面の少なくとも一部にマクロモノマーが配置されている状態を意味し、高分子共重合体の表面全体にマクロモノマーが配置されていてもよい。マクロモノマーは高分子共重合体の表面に化学的に結合していてもよく、化学的に結合していなくてもよい。電磁波調整粒子の分散性の観点から、マクロモノマーは高分子共重合体の表面に化学的に結合していることが好ましい。また、電磁波調整粒子の分散性の観点から、マクロモノマーは、その一部が高分子共重合体表面に接するように配置され、他の一部が分散媒に接するように配置されることが好ましい。電磁波調整粒子の分散性の観点から、マクロモノマーは一端が高分子共重合体に結合し、他の一端が分散媒に接するように(ヘア状に)配置されていることがより好ましい。ヘア状に配置されたマクロモノマーが高分子共重合体に複数配置されている(コロナ状に配置されている)ことがさらに好ましい。
前記マクロモノマーの材料は特に制限されないが、良好な電磁波透過率を達成する観点からは、分散媒と屈折率の近い材料が好ましく、例えば、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位、(メタ)アクリレートモノマー由来の構造単位、及びシリコーンモノマー由来の構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を有する材料が好ましい。さらに、電磁波調整粒子の分散性の観点からは、分散媒と相溶性の高い材料が好ましく、例えば分散媒がシリコーン樹脂の場合には、シリコーンモノマー由来の構造単位を有する材料が好ましい。マクロモノマーの構造単位は1種の構造単位からなるものでも、2種以上の構造単位を含むものでもよい。マクロモノマーは調製したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ジメチルシリコーンマクロモノマー(FM−0721、JNC株式会社)が挙げられる。
マクロモノマーの高分子共重合体への付与方法は特に制限されない。ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体の付与と共通の反応系で付与してもよく、ポリヨウ素化物の表面へ高分子共重合体を付与した後に、異なる反応系で付与してもよい。
(電磁波調整粒子の調製方法)
電磁波調整粒子を、長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであり、アスペクト比の平均値が2.0以上となるよう調製する方法は特に限定されない。例えば、長軸の長さが目的の長さよりも短いポリヨウ素化物を用いて高分子共重合体を付与することができる。また、高分子共重合体をポリヨウ素化物に付与する反応において、ポリヨウ素化物、高分子共重合体等の組成に応じて反応時間を調整することによって電磁波調整粒子の長軸の長さ及びアスペクト比を調整してもよい。
[分散媒]
本実施の形態で使用する分散媒の種類は特に制限されず、電磁波調整粒子及びその材料の種類、電磁波調整素子の使用環境等に応じて選択できる。電磁波調整粒子の材質が水溶性である場合は、例えば、非水系又は低極性のアクリル樹脂、シリコーン樹脂等の非水溶性の分散媒などを分散媒として選択することが好ましい。一方で電磁波調整粒子の材質が脂溶性である場合は、水、低級アルコール等の極性溶媒、極性基を有する樹脂などを用いることが好ましい。電磁波調整素子を温度変化の大きい環境で使用する場合は、温度変化による応答速度の差を小さくする観点から、粘度の温度依存性が小さい分散媒を選択することが好ましい。
非水溶性の分散媒としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂とシリコーン樹脂とからなるグラフト共重合体等の構造を有する樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂は一般に疎水性であるため、吸湿による性能低下を抑制する観点からも好ましい。シリコーン樹脂は、直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。また、ジアルキルシリコーン樹脂、アルキルアリールシリコーン樹脂、ジアリールシリコーン樹脂等のいずれであってもよい。中でも低ガス透過性、低含水率、後述するマトリックス樹脂と組み合わせた場合の屈折率制御等の観点からは、ジメチルジフェニルシリコーン樹脂が好ましい。
分散媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
変性シリコーン樹脂は、直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。また、変性シリコーン樹脂は、主鎖であるポリシロキサン鎖の側鎖に変性基を有する側鎖型、主鎖であるポリシロキサン鎖の両末端に変性基を有する両末端型、主鎖であるポリシロキサン鎖の片末端に変性基を有する片末端型、主鎖であるポリシロキサン鎖の側鎖及び末端の両方に変性基を有する側鎖両末端型、主鎖であるポリシロキサン鎖の側鎖及び末端の片方に変性基を有する側鎖片末端型等のいずれであってもよい。変性シリコーン樹脂における変性基は、目的等に応じて適宜選択することができる。変性基としては、例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基等を挙げることができる。これらの変性基をもつ変性シリコーンを樹脂適宜選択することにより、電磁波調整粒子との親和性が向上して電磁波調整粒子の分散が安定したり、後述するマトリックス樹脂に対して安定的に液滴を形成したりすることができる。
アクリル樹脂とシリコーン樹脂とを含むグラフト共重合体は、主鎖がアクリル樹脂に由来する構造の化合物であっても、主鎖がシリコーン樹脂に由来する構造の化合物であってもよい。
分散媒は調整したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ジメチルフェニルシリコーン(KF−53、信越化学工業株式会社)が挙げられる。
分散媒の粘度は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択できる。電磁波調整素子の応答速度の観点からは、25℃での粘度が1mPa・s〜5000mPa・sであることが好ましく、100mPa・s〜5000mPa・sであることがより好ましい。本明細書において、分散媒を2種以上併用する場合には、分散媒の粘度とは、併用する分散媒の混合物の粘度を意味する。温度変化による電磁波調整素子の応答速度の変動を小さくする観点からは、−20℃〜100℃の温度範囲での分散媒の粘度変化率(%)が、2桁以内であることが好ましい。なお、分散媒の粘度は、レオメーター(例えば、MCR302、株式会社Anton Paar)を用いて、常法により測定できる。
分散媒の屈折率は特に制限されず、目的とする吸収波長、及び、電磁波調整粒子、後述のマトリックス樹脂、絶縁層等の電磁波調整素子の構成材料の種類などに応じて適宜選択できる。電磁波調整素子における可視光調整の観点からは、屈折率は1.33〜1.58であることが好ましく、1.39〜1.51であることがより好ましい。分散媒を2種以上併用する場合には、分散媒の屈折率についても粘度と同様に、併用する分散媒の混合物の屈折率を意味する。なお、分散媒の屈折率はアッべ屈折計(例えば、DR−A1、株式会社アタゴ)、デジタル屈折計(例えば、RX−9000α、株式会社アタゴ)等を用いて、25℃で常法により測定できる。
分散媒の含有量は、電磁波調整粒子の分散性に応じて適宜調整してよい。電磁波調整粒子の分散性の観点からは、分散媒の含有量は、電磁波調整粒子と分散媒の合計量に対して70質量%〜99.9質量%であることが好ましく、75質量%〜99.8質量%であることがより好ましく、80質量%〜99.7質量%であることがさらに好ましい。
[マトリックス樹脂]
分散体は、さらにマトリックス樹脂を含んでもよく、当該マトリックス樹脂が液滴を含み、当該液滴が電磁波調整粒子と分散媒とを含む状態で、電磁波調整粒子が存在していてもよい。分散体がさらにマトリックス樹脂を含み、当該マトリックス樹脂が液滴を含み、当該液滴が電磁波調整粒子と分散媒とを含む状態で電磁波調整粒子が存在すると、電磁波調整素子を構成したときに電磁波調整粒子の凝集、沈降等が抑制され、ムラのない電磁波調整効果が得られる傾向にある。また、マトリックス樹脂を硬化させることで、マトリックス樹脂中に液滴状に存在している分散体の位置が安定し、よりムラのない電磁波調整効果が得られる傾向にある。
マトリックス樹脂は、分散媒と相分離しうるものであって、分散媒と混合した際にマトリックス樹脂中に分散媒が液滴状に存在しうるものであれば特に制限されない。マトリックス樹脂は、紫外線照射等により硬化するものであることが好ましい。このような分散媒とマトリックス樹脂の組み合わせとしては、例えば、分散媒が(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーであり、マトリックス樹脂が紫外線硬化型シリコーン樹脂である組み合わせが挙げられる。良好な電磁波透過率を達成する観点からは、マトリックス樹脂と分散媒の屈折率差は0.01以内であることが好ましく、0.005以内であることがより好ましい。
マトリックス樹脂が液滴を含み、当該液滴が電磁波調整粒子と分散媒とを含む状態とする方法は特に制限されない。例えば、特開2002−189123号公報(特許文献1)の[0009]〜[0036]に記載の方法を参照することができる。
マトリックス樹脂が液滴を含み、当該液滴が電磁波調整粒子と分散媒とを含む場合、マトリックス樹脂の含有量は特に限定されない。分散体の均一性及び良好な電磁波調整効果を両立する観点からは、マトリックス樹脂の含有量は、マトリックス樹脂を含む分散体の総質量に対して、55質量%〜99質量%であることが好ましく、60質量%〜98質量%であることがより好ましく、65質量%〜97質量%であることがさらに好ましい。
[その他の成分]
分散体は、必要に応じて電磁波調整粒子、分散媒及びマトリックス樹脂以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば、界面活性剤等の分散安定剤、粘度調整のための増粘剤、遮光及び透過状態における電磁波調整素子の色調を補正するための顔料、染料等の着色剤などが挙げられる。分散体が顔料を含む場合、ヘイズ抑制の観点から、顔料の平均粒子径は500nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。なお、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察によって測定できる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡で顔料を撮影し、撮影した画像より任意に100個の顔料を抽出し、顔料のそれぞれの最大直径の長さの算術平均値として算出することができる。
<電磁波調整素子>
本実施の形態の電磁波調整素子は、一対の導電性基材と、前記一対の導電性基材の間に配置される電磁波調整用分散体と、を有する。電磁波調整用分散体は、電磁波調整粒子と、分散媒とを含み、その詳細及び好ましい態様は上述したとおりである。
電磁波調整素子の構造の一例とその駆動原理について、図1を参照して説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
電磁波調整素子1は、導電層5、7がそれぞれコーティングされた基材4、6からなる導電性基材2、3を備えている。導電性基材2と導電性基材3との間には、電磁波調整用分散体8が層状に配置されている。電磁波調整用分散体8は、電磁波調整粒子9及び分散媒10を含有している。電磁波調整粒子9の材料が低抵抗である場合は必要に応じ、電磁波調整粒子9の分散状態変化等による短絡を防止するために、導電層5、7と電磁波調整用分散体8との間に絶縁層を形成してもよい。絶縁層は透明性が高く、導電性基材2、3を損傷せずに作製できることが好ましい。また、分散媒に対して親和性を持つが、変質したり分散体中に溶出したりせず、分散媒との屈折率差が小さいものが好ましい。材質は特に制限されず、例えば、SiO、Al等の酸化物、層状ケイ酸鉱物等のアルミノケイ酸塩、シリコン窒化物などの無機物;ポリイミド系、アクリル系等の有機樹脂;これらの無機物と有機樹脂の複合物などが挙げられ、電磁波調整用分散体8、マトリックス樹脂、透明導電性基材2、3、後述の封着剤に対する親和性、化学的な安定性、さらには温度、湿度、日射等の使用環境条件などに応じて選択される。
また、電磁波調整粒子9を含めた電磁波調整素子構成材料の耐久性向上のため、基材4、6の外側に、水、酸素等の雰囲気ガス、紫外線、赤外線などが電磁波調整素子内に進入するのを遮断するフィルムを設置したり保護膜を形成しても構わない。
電磁波調整素子1には、スイッチ11を介して電源12が接続されている。電磁波調整素子1を作動させるための使用電源は、例えば、交流で、5V〜300Vの電圧範囲(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。
図1(a)に示す状態では、電磁波調整素子1のスイッチ11が切られ、電界が印加されていないため、電磁波調整用分散体8中の電磁波調整粒子9は、ブラウン運動により、それぞれランダムな方向を向いている。そのため、電磁波調整素子1に入射した電磁波は、個々の電磁波調整粒子9の向きによって、短軸又は長軸で吸収される。主には、電磁波調整粒子9の長軸方向での吸収により、透過率が低下する。
図1(b)に示すように電磁波調整素子1のスイッチ11を接続して電界を印加すると、電磁波調整粒子9の長軸が電場に沿うように配列する。入射した電磁波の電磁波調整粒子9による吸収は、長軸よりも吸収の小さい短軸によって主に行われるため、電磁波調整素子1に電界が印加されていない状態に比べて小さい。その結果、電磁波調整素子1に電界が印加されていない状態に比べて電磁波透過率が高く維持される。
[電磁波調整素子の製造方法]
電磁波調整素子の製造方法は特に制限されない。例えば、以下の工程(1)及び(2)を含む方法によって製造することができる。
(1)一対の導電性基材を対向させて配置し、その間に封着剤を付与し、一対の導電性基材を接着する。これにより、電磁波調整用分散体の厚みに相当する空間が一対の導電性基材の間に形成される。封着剤を付与する位置は、例えば、導電性基材の端部とすることができる。また、封着剤がスペーサービーズ等を含む場合には、導電性基材の対向面の全体又は一部とすることができる。導電性基材間の距離は、特に制限されない。例えば、25μm〜300μmの範囲内とすることができる。導電性基材間の距離が25μm以上であると、電磁波調整素子の厚みの均一性を保持しやすい傾向があり、300μm以下であると、駆動電圧を小さくできる傾向がある。
(2)次いで、一対の導電性基材間の空間に分散体を充填する。分散体は、例えば、上述した分散体の調製方法によって調製することができる。分散体の充填方法は特に制限されない。例えば、導電性基材の端部の封着剤で封止していない場所から毛細管現象によって充填することができる。導電性基材の間に分散液を充填後、導電性基材の端部の封着剤で封着していない場所を封着剤で封止する。これにより、分散液は外気から隔離される。
他の方法としては、例えば、分散体を一方の導電性基材の面上に付与し、その後、分散体を付与した面にもう一方の導電性基材を貼り合わせて接着し、封止する方法が挙げられる。分散液の付与方法としては、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等を用いる方法、真空下での滴下注入法(ODF)などが挙げられる。分散体を導電性基材に付与する際は、必要に応じて、電磁波調整粒子等の構成材料の溶解性等に応じて適当な溶剤で分散液を希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、導電性基材上に分散液を付与した後で溶剤を揮発させることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔比較例1〕
<ポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液の調製>
ヨウ素(JIS試薬特級、和光純薬工業株式会社)と酢酸イソアミル(試薬特級、和光純薬工業株式会社)から8.5質量%ヨウ素の酢酸イソアミル溶液(ヨウ素溶液)を調製し、ニトロセルロース(1/4LIG、ベルジュラックNC社)と酢酸イソアミルから20.0質量%ニトロセルロースの酢酸イソアミル溶液(ニトロセルロース溶液)を調製した。ヨウ化カルシウム水和物(化学用、和光純薬工業株式会社)を加熱乾燥して無水化して酢酸イソアミルに溶解させ、20.9質量%ヨウ化カルシウム溶液を調製した。20Lフラスコに撹拌機と冷却管を備え、ヨウ素溶液6905g及びニトロセルロース溶液8723gを加え水浴温度を35℃〜40℃としてフラスコを加熱した。ニトロセルロース溶液中の水分比(質量%)を平沼産業株式会社、平沼水分測定装置AQ−7(発生液:ハイドラナールアクアライトRS、対極液:アクアライトCN)を用いて測定したところ、0.61質量%であり、加えた溶液質量からニトロセルロース溶液中の水分量は53.2gと算出された。
フラスコ内容物の温度が35℃〜40℃となった後、脱水メタノール(試薬特級、和光純薬工業株式会社)260g及び精製水(和光純薬工業株式会社)55.6gを加えて撹拌した。ここにヨウ化カルシウム溶液1643gを加え、次いでピラジン−2,5−ジカルボン酸(日立化成テクノサービス株式会社)390gを加えた。水浴温度を42℃〜44℃として4時間撹拌した後、放冷した。
得られた合成液を9260Gで5時間遠心分離後、傾斜して上澄み液を除き、底部に残存した沈殿に、この沈殿の質量の5倍に相当する酢酸イソアミルを加えて、超音波で沈殿を分散した。次に710Gで10分間遠心分離後、上澄みを9260Gで3時間遠心分離した。再び傾斜して上澄みを除き、底部に残存した沈殿に、この沈殿の質量の5倍に相当する酢酸イソアミルを加え、超音波で沈殿を分散して、電磁波調整粒子としてのポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液を調製した。
得られた電磁波調整粒子100個を透過型電子顕微鏡で観察したところ、形状異方性があることが確認され、アスペクト比の平均値は4.7、長軸の長さの平均値は420nmであった。
<ポリヨウ素化物の耐溶剤性の評価>
メタノール及びエタノール1mLに対して、得られたポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液を加え、ポリヨウ素化物の濃度が1質量%になるよう調製した。得られた溶液を3分間静置し、電磁波調整粒子の様子を観察したところ、ポリヨウ素化物はメタノール及びエタノールに溶解した。
<ポリヨウ素化物のシリコーン分散液の調製>
ナスフラスコに前記電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液10gとジメチルジフェニルシリコーン樹脂(KF−53、信越化学工業株式会社)を10g加え、湯浴で50℃〜60℃に加温しながらエバポレーターで酢酸イソアミルを留去したところ、ポリヨウ素化物が凝集してしまい、ポリヨウ素化物のシリコーン分散液は作製できなかった。
〔実施例1〕
<ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体付与とマクロモノマーの付与>
ポリヨウ素化物の合成は比較例1に記載の通り行った。
ナスフラスコに6質量%の前記ポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液16.7g、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)(アルドリッチ株式会社)0.24g、酢酸イソアミル83.3g、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社)2.96gを加え、真空雰囲気下、60℃で21時間撹拌した。得られた分散溶液を分散溶液質量の4倍に相当するヘキサン(関東化学株式会社)に加え、9000rpm(回転/分)で10分間遠心分離を行い、上澄みを除去し、酢酸イソアミル40gを加え、30分間超音波処理を施した。この操作を2回繰り返し行い、重合性官能基を付与した1.8質量%のポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液を得た。ナスフラスコに10分間超音波処理を施した。
上記の重合性官能基を有するポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液2.79g、アクリロニトリル(関東化学株式会社)0.159g、メチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社)0.034g、ジメチルシリコーンマクロモノマー(FM−0721、JNC株式会社)を0.170g、酢酸イソアミル1.849gを加えて10分間窒素バブリングを行い脱気した。その後窒素雰囲気下、60℃で24時間撹拌した。得られた分散液を分散液の質量の4倍に相当するエタノール(和光純薬工業株式会社)に加え、6000rpm(回転/分)で10分間遠心分離を行い、上澄みを除去し、酢酸イソアミル4gを加え、30分間超音波処理を施した。この操作を3回繰り返し行い、ポリヨウ素化物の粒子表面に高分子共重合体を付与し、さらに高分子共重合体表面にシリコーンマクロモノマーが付与された電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液を得た。
得られた電磁波調整粒子100個を透過型電子顕微鏡で観察したところ、形状異方性があることが確認された。電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値は6.3、長軸の長さの平均値は560nmであった。また、透過型電子顕微鏡により、ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体の付与を確認した。
<電磁波調整粒子のシリコーン分散液の調製>
前記電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液2gをエタノール8gに加え、6000rpm(回転/分)で10分間遠心分離を行い、上澄みを除去し、ヘキサン1.7gを加え、30分間超音波処理を施した。ナスフラスコに得られたヘキサン分散液1.7gとジメチルジフェニルシリコーン(KF−53、信越化学工業株式会社)を1.0g加え、湯浴で40℃〜50℃に加温しながらエバポレーターで酢酸イソアミル、ヘキサン、エタノールを留去し、40℃で5時間以上真空乾燥して、1.0質量%の電磁波調整粒子のシリコーン分散液を得た。
<電磁波調整特性の評価>
電磁波調整特性の評価用のガラスセルを作製した。ITO電極を片面に有するガラス基板(20mm×30mm×0.7mm)を2枚用意し、1枚のガラス基板のITO電極が形成された面上の端部の周囲に厚み50μmのPETフィルムを配置した。もう1枚のガラス基板のITO電極が前記シリコーン分散液に接するように、PETフィルムを介して重ね合わせ、向かい合う端部2箇所に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線を照射することで封止し、2枚のガラス板を貼り合わせた。次いで貼り合わせたガラス板の封止していない端部に電磁波調整粒子のシリコーン分散液0.04gを滴下し、毛細管現象によって前記分散液を充填した。前記分散液が充填されたら、封止していない残りの2箇所に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線を照射することで2枚のガラス板の4辺を封止し、ガラスセルを作製した。これにより、分散液は外気から隔離される。
ガラス板の全光線透過率は89%、ヘイズは0.3%であった。ガラス基板の厚さはマイクロメータで測定した。なお、ガラス板の全光線透過率は分光式測色ヘイズメーター(商品名:TC−1800H、(有限会社東京電色製)を用いて測定した。なお、全光線透過率測定におけるブランクは空気とした。
作製したガラスセルを用いて、電圧を印加していない状態(OFF)、280Vの電圧を印加した状態での透過率を測定した。駆動電圧は500Hzとした。測定は紫外可視近赤外分光光度計(V−670、日本分光株式会社)を用いて、室温(25℃)で行った。結果を図3に示す。
〔実施例2〕
ポリヨウ素化物の表面へ高分子共重合体を付与する際の窒素雰囲気下での反応時間を18時間としたことを除いては、実施例1と同様にしてポリヨウ素化物の粒子表面に高分子共重合体を付与し、さらに高分子共重合体表面にシリコーンマクロモノマーが付与された電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液を作製した。得られた電磁波調整粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、形状異方性があることが確認された。電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値は6.0、長軸の長さの平均値は550nmであった。得られた電磁波調整粒子の電子顕微鏡写真を図2に示す。
また、透過型電子顕微鏡によるポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体付与の確認、電磁波調整粒子のシリコーン分散液の調製、及び電磁波調整特性の評価用のガラスセル作製は実施例1と同様にして行った。
〔実施例3〕
ナスフラスコに6質量%の前記ポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液26.7g、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)(アルドリッチ株式会社)0.40g、酢酸イソアミル(和光純薬工業株式会社)133.2g、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工株式会社)4.79gを加え、真空雰囲気下、60℃で21時間撹拌した。得られた分散液を分散液の質量の4倍に相当するヘキサン(関東化学株式会社)に加え、9000rpm(回転/分)で10分間遠心分離を行い、上澄みを除去し、酢酸イソアミル70gを加え、30分間超音波処理を施した。この操作を2回繰り返し行い、重合性官能基を付与した3.0質量%のポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液を得た。ナスフラスコに上記の重合性官能基を有するポリヨウ素化物の酢酸イソアミル分散液3.31g、アクリロニトリル(関東化学株式会社)0.545g、メチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社)0.054g、ジメチルシリコーンマクロモノマー(FM−0721、JNC株式会社)0.558g、酢酸イソアミル5.53gを加えて10分間窒素バブリングを行い脱気した。その後窒素雰囲気下、60℃で8時間撹拌した。得られた分散液を分散液の質量の4倍に相当するエタノール(和光純薬工業株式会社)に加え、6000rpm(回転/分)で10分間遠心分離を行い、上澄みを除去し、酢酸イソアミル6gを加え、30分間超音波処理を施した。この操作を3回繰り返し行い、ポリヨウ素化物の粒子表面に高分子共重合体を付与し、さらに高分子共重合体表面にシリコーンマクロモノマーが付与された電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液を得た。
得られた電磁波調整粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、形状異方性があることが確認された。電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値は5.4、長軸の長さの平均値は580nmであった。
また、透過型電子顕微鏡によるポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体付与の確認、電磁波調整粒子のシリコーン分散液の調製、及び電磁波調整特性の評価用のガラスセル作製は実施例1と同様にして行った。
〔実施例4〕
ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体付与する際の、窒素雰囲気下での反応時間を12時間としたことを除いては実施例3と同様にして、ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体を有する電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液を作製した。得られた電磁波調整粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、形状異方性があることが確認された。電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値は4.2、長軸の長さの平均値は590nmであった。
また、透過型電子顕微鏡によるポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体付与の確認、電磁波調整粒子のシリコーン分散液の調製、及び電磁波調整特性の評価用のガラスセル作製は実施例1と同様にして行った。
〔実施例5〕
ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体を付与する際の、窒素雰囲気下での反応時間を18時間としたことを除いては実施例3と同様にして、ポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体を有する電磁波調整粒子の酢酸イソアミル分散液を作製した。得られた電磁波調整粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、形状異方性があることが確認された。電磁波調整粒子のアスペクト比の平均値は3.3、長軸の長さの平均値は550nmであった。
また、透過型電子顕微鏡によるポリヨウ素化物の表面への高分子共重合体付与の確認、電磁波調整粒子のシリコーン分散液の調製、及び電磁波調整特性の評価用のガラスセル作製は実施例1と同様にして行った。
<電磁波調整粒子の耐溶剤性の評価>
比較例1のポリヨウ素化物の耐薬剤性評価と同様の方法で、実施例1〜5で得られた電磁波調整粒子の耐溶剤性を評価した。実施例1〜実施例5の電磁波調整粒子はメタノール及びエタノールに溶解せず、ポリヨウ素化物の表面の高分子共重合体を付与することで耐溶剤性が向上した。
Figure 0006891500
1 :電磁波調整素子
2、3:導電性基材
4、6:基材
5、7:導電層
8 :電磁波調整用分散体
9 :電磁波調整粒子
10 :分散媒
11 :スイッチ
12 :電源

Claims (7)

  1. ポリヨウ素化物の表面の少なくとも一部に、重合により前記ポリヨウ素化物の表面に結合している高分子共重合体を有してなる、長軸の長さの平均値が100nm〜700nmであり、アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)の平均値が2.0以上である電磁波調整粒子と、分散媒とを含む、電磁波調整用分散体。
  2. 前記高分子共重合体が、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位、(メタ)アクリレートモノマー由来の構造単位、及びシリコーンモノマー由来の構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を有する、請求項1に記載の電磁波調整用分散体。
  3. 前記電磁波調整粒子の粒子表面にマクロモノマーが付与されている、請求項1又は請求項2に記載の電磁波調整用分散体。
  4. 前記マクロモノマーが、アクリロニトリルモノマー由来の構造単位、(メタ)アクリレートモノマー由来の構造単位及びシリコーンモノマー由来の構造単位からなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を有する、請求項3に記載の電磁波調整用分散体。
  5. 前記分散媒は25℃での粘度が1mPa・s〜5000mPa・sである、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電磁波調整用分散体。
  6. さらにマトリックス樹脂を含み、前記マトリックス樹脂が液滴を含み、前記液滴が前記電磁波調整粒子と前記分散媒とを含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電磁波調整用分散体。
  7. 一対の導電性基材と、前記一対の導電性基材の間に配置される請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電磁波調整用分散体と、を有する電磁波調整素子。
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