JP6889004B2 - 水処理ろ材 - Google Patents
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しかしながら、ろ過しようとする対象水に応じた機能性を付与したろ材が望まれるようになり、例えば、苛性ソーダ製造過程において80℃程度の高温水中でろ過するニーズがあるが、従来の水処理ろ材は80℃程度の高温水中では繊維が軟化し水処理ろ材同士が膠着してしまい、逆洗後の繰返し使用が困難であるという問題があった。
1. 融点が200℃以上のポリエステル系短繊維と熱可塑性エラストマーとを含む水処理ろ材であって、
(i)水処理ろ材は、ポリエステル系短繊維同士の複数の繊維交絡点を有し、
(ii)繊維交絡点の一部ないし全部は、熱可塑性エラストマーによって固着し、
(iii)熱可塑性エラストマーは、ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとし、融点が200℃未満のポリエーテルエステル系ブロック共重合体であり、水処理ろ材中の熱可塑性エラストマー含有量は、水処理ろ材を基準として8重量%以上36重量%以下であり、
(iv)水処理ろ材は、30℃における圧縮率が20%以上70%以下である、
前記水処理ろ材。
2. ポリエステル系短繊維を構成するポリエステルは、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートである前項1に記載の水処理ろ材。
3. 熱可塑性エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステルをハードセグメントとし、ポリオキシブチレン系ポリエーテルをソフトセグメントとする、融点が200℃未満のポリエーテルポリエステルブロック共重合体である、前項1に記載の水処理ろ材。
4. 90℃の雰囲気下で、水処理ろ材同士が膠着しない前項1に記載の水処理ろ材。
5. (a)入水部および出水部が配されたハウジング、および
(b)ハウジング内に嵩密度50〜120kg/m3で充填された、前項1〜4のいずれか一項に記載の水処理ろ材、
を含むろ過装置。
6. 前項5に記載のろ過装置のハウジングの上方から下方にろ過対象水を通過させる水処理方法。
本発明の水処理ろ材は、融点が200℃以上のポリエステル系短繊維と熱可塑性エラストマーとを含む。
[熱可塑性エラストマー]
熱可塑性エラストマーは、ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとし、融点が200℃未満のポリエーテルエステル系ブロック共重合体である。
また、ソフトセグメントとしては、平均分子量が400〜5000程度の、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキシド)グリコールを挙げることができる。
特に、ハードセグメントが、主たる酸成分を40〜100モル%のテレフタル酸成分と0〜50モル%のイソフタル酸成分とし、主たるグリコール成分を1,4−ブタンジオール成分からなるポリエステルとし、主たるソフトセグメント成分が平均分子量400〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分とし、且つ該ハードセグメント成分と該ソフトセグメント成分との共重合割合(重量比)が95:5〜20:80重量%であるポリエーテルエステル系ブロック共重合体であることが好ましい。
水処理ろ材中の熱可塑性エラストマー含有量は、水処理ろ材を基準として、好ましくは8重量%以上36重量%以下である。熱可塑性エラストマー重量の下限は好ましくは10重量%、より好ましくは15重量%である。熱可塑性エラストマー重量の上限は好ましくは35重量%、より好ましくは33重量%である。
本発明において、ポリエステル系短繊維を形成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリピバロラクトン、またはこれらの共重合体等のいずれであってもよい。最終的に得られる水処理ろ材の弾性回復性の点から、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートが好ましい。
上記ポリエステルは、前掲の熱可塑性エラストマーの融点以上である200℃以上である限り、前掲のポリエーテルエステル系ブロック共重合体におけるハードセグメント成分を構成するポリエステルと同様の種々の共重合成分を共重合することができる。
ポリエステル系短繊維の融点は200℃以上である。融点の上限に関する制限は、本発明の効果を奏する限り特にないが、ポリエステル系短繊維であれば、融点の上限は300℃以下となる。ポリエステル系短繊維の長さは、好ましくは5mm以上200mm以下である。ポリエステル系短繊維の長さの下限は10mm、より好ましくは20mmである。ポリエステル系短繊維の長さの上限は180mm、より好ましくは150mmである。
本発明の水処理ろ材の内部には、ポリエステル系短繊維同士による複数の繊維交絡点が存在するが、その繊維交絡点の一部ないし全部が、前掲の熱可塑性エラストマーによって固着している。
繊維交絡点がこのような形態となっていることで、ポリエステル系短繊維同士を分散させることなく集合形態を保持することができるとともに、固着点が熱可塑性エラストマーで形成されていることで水処理ろ材全体としての弾力性を発揮するので、繰り返しの外力に対する耐久性(形状回復性)も有する。
本発明の水処理ろ材は、30℃での圧縮率が20%以上70%以下であることが必要である。この範囲内であると使用時の圧損が高くなり過ぎず、かつろ材が圧縮されることによりろ材間空隙、ろ材内空隙が減少しろ過性能が向上するという利点を有する。この観点から、更に好ましくは20%以上60%以下、特に好ましくは、20%以上50%以下である。20±10℃での圧縮率が20%以上70%以下であることが好ましい。
本発明の水処理ろ材は、90℃の雰囲気下で、水処理ろ材同士が膠着しないことが好ましい。60℃以上90℃以下の雰囲気下で、水処理ろ材同士が膠着しないことが特に好ましい。
本発明の水処理ろ材は、主体繊維としてポリエステル系短繊維を用い、熱融着繊維として鞘部に熱可塑性エラストマーを含むポリエステル系短繊維を用い、これらを混合し、成形し、熱処理して、繊維交絡点を形成させることにより製造することができる。
繊維交絡点は、主体繊維と熱融着繊維との接触点において形成される。また熱融着繊維同士の接触点において形成される。
熱処理条件としては、熱可塑性エラストマーが溶融し、ポリエステル系短繊維は形状を保持する温度および時間を採用すればよく、具体的には、熱処理温度としては100〜215℃程度、熱処理時間としては10秒〜10分間程度が好ましい。上記製造方法で得られるものであれば、水処理ろ材の形状、サイズは問わないが、例えば形状は円柱状、サイコロ状などが挙げられる。例えば円柱状の場合、直径3mm以上30mm以下、長さ3mm以上500mm以下が好ましい。直径の下限は好ましくは4mm、より好ましくは5mmであり、直径の下限は好ましくは25mm、より好ましくは20mmである。長さの下限は好ましくは4mm、より好ましくは5mmであり、上限は好ましくは400mm、より好ましくは350mmである。
熱融着繊維は、繊維横断面において、前掲の熱可塑性エラストマーとポリエステルとが、E:P=20:80〜80:20の面積比率となるように複合化された複合繊維であることが好ましく、この際、両成分の複合状態は、芯鞘型の他、偏心芯鞘型、並列(サイドバイサイド)型、海島型複合紡糸繊維あるいは海島型混合紡糸繊維、蜜柑の房型配位(分割)繊維等、公知の複合状態のいずれであってもよいが、該エラストマーの一部が繊維表面に露出して、好ましくは繊維断面においてその円周の30%以上を該エラストマーが占めるように、配されていることが必要である。なかでも並列型、偏心芯鞘型の場合、繊維構造体を成型する際の熱処理時に微細な捲縮が顕在化するような潜在捲縮能を容易に付与できるため、繊維同士の絡まり合いが増し接着性を向上させることができるため特に好ましい。
熱融着繊維の単繊維繊度は、0.5〜200dtexの範囲が好ましく、より好ましくは2〜100dtexの範囲である。上記の範囲内とすることにより、繊維構造体とするために熱接着処理した際に、該繊維構造体中に形成される熱固着点の数が適度なものとなり、十分な強度が得られると共に、熱融着繊維を製造する際の膠着現象も極度に抑制することができる点で好ましい。
また、繊維横断面の形状は、真円である必要はなく、多角形やフィン付、団子型等をとっても構わないが、短繊維を形成してカード工程を通過させる場合を勘案すれば、真円形状であることが好ましい。さらに1個以上の中空部を有していてもかまわない。
熱融着繊維を製造するには、従来公知の方法により製造することができる。
上記の熱融着繊維をカットして短繊維とする際、カット長としては5〜100mmの範囲内であることが好ましく、特に10〜90mmの範囲であることが望ましい。この範囲ではカード性や繊維構造体の接着性が特に良好である。
また、熱融着繊維には、工程上問題が発生しない程度であれば捲縮が付与されていてもよく、その際、捲縮数は5〜20山/25mmの範囲、捲縮率は5〜20%の範囲が望ましい。
本発明において、熱融着繊維とともに水処理ろ材を構成する主体繊維はポリエステル系短繊維である。ポリエステル系短繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
上記のポリエステル系短繊維の繊度は、水処理ろ材の接着性の観点から、3〜100dtexの範囲が好ましい。また、水中での使用中の繊維脱落低減のためには、潜在捲縮を有していることが好ましく、潜在捲縮の程度を200℃の乾熱寸法変化率で表す場合、−2%〜−30%の範囲であることが好ましい。
本発明の水処理ろ材中の熱可塑性エラストマー重量は、水処理ろ材を基準として8重量%以上36重量%である。この範囲内にあると80℃高温水でろ過でき、かつろ材同士が膠着しないため逆洗による繰り返し使用ができるろ材を得ることができる。
本発明の、ろ過装置は、(a)入水部および出水部が配されたハウジング、および(b)ハウジング内に嵩密度50〜120kg/m3で充填された、本発明の水処理ろ材を含む。
嵩密度は、好ましくは50〜120kg/m3、より好ましくは55〜110kg/m3、さらに好ましくは60〜100kg/m3である。この範囲であれば80℃温水でも十分なろ過性能を保ちろ過することが可能である。
本発明の、ろ過方法は、前記ろ過装置のハウジングの上方から下方にろ過対象水を通過させることを特徴とする。
ろ過対象水として、苛性ソーダ製造工程での高温水循環系など高温水をろ過する工程での水等が挙げられる。ろ過対象水の温度は、好ましくは60℃以上90℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下である。
[融点]
DSCにより求めた。昇温速度は20℃/minとした。
[ろ材の圧縮率]
30℃で次の通り測定した。直径100mmの円筒にろ層高さが300mmになるようろ材を充填し、荷重をかける前の、ろ材充填高さと16kgの重りをのせることで荷重をかけ5分経過した後の、ろ材充填高さの差を圧縮量とし、この圧縮量を、荷重をかける前の、ろ材充填高さで割ることで圧縮率を求めた。
[SS除去率]
JIS K 0102に記載の方法で原水とろ過後の処理水のSS濃度を求め、原水SS濃度と処理水SS濃度の差分を原水SS濃度で割ることで求めた。処理水の温度に関わらず、上記手法でSS除去率を求めた。ここで、SS(Suspended Solids)とは、水中に懸濁している不溶解性物質のことである。
(水処理ろ材の製造)
主体繊維として、繊度7.7dtex、カット長32mm、融点253℃のポリエチレンテレフタレート系繊維を40重量%用いた。熱融着繊維として、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部に熱可塑性エラストマーを熱融着繊維を基準として40重量%配した、繊度6.6dtex、カット長64mm、鞘部分の融点が154℃の芯鞘型複合ポリエステル繊維を60重量%用いた。
主体繊維と熱融着繊維とを混合し成形しスライバーとした。ろ材全体に対する熱可塑性エラストマーは24重量%であった。
得られたスライバーを200℃で熱処理した後、直径10mmの口金に通し、直径8〜10mmの成形繊維束を得た。得られたこの成形繊維束を長さ15mmに切断し、円柱状の水処理ろ材とした。この水処理ろ材の圧縮率は40%(30℃)であった。また、同様に10℃における圧縮率、25℃における圧縮率もほとんど変化は認められなかった。
(ろ過処理、常温水)
得られた水処理ろ材を高さ450mmのハウジング内に充填し、常温水(25℃)をハウジングの上方の入水部から供給し、ハウジングの下方の出水部から排出しながら、16kgの重りにて水処理ろ材を圧縮させ、その際の圧縮率と形状変化を確認した。ろ過時間10分での圧縮率55%(30℃)であり、形状変化はなかった。また、同様に10℃における圧縮率、250℃における圧縮率も測定したがほとんど変化は認められなかったことを確認した。
常温水(25℃)の代わりに高温水(80℃、90℃)を同様に処理した。その際の圧縮率と形状変化を確認した。
ろ過時間10分での圧縮率は約65%(30℃)であった。ろ過時間10分での高温水使用時の圧縮率は、常温水に比べ約10ポイント上がったが、ろ過時間10分以降では圧縮率の変化はなく、高温水(80℃、90℃)中でもろ材が融着せず使用可能であることが示された。
高温水の使用により水処理ろ材の形状は、若干断面が楕円形に潰れるが、弾力性は確認でき、その後の使用に問題ないことが分かった。
(ろ過処理後の洗浄)
また、ろ過処理後、ハウジングの下方から空気を供給し同時に下方から上方に向かって水を流しろ材を洗浄することで、ろ層が崩れるか否かを確認した。ろ過処理後の洗浄では、常温水(25℃)の処理に用いた水処理ろ材、高温水(80℃、90℃)の処理に用いた水処理ろ材のいずれも、水処理ろ材同士がブロック状に固まることなくパラパラと崩れるため、逆洗後の繰返し使用可能であると確認できた。
(洗浄後の再ろ過処理)
洗浄を行った後、再度ろ過処理を行い、SS除去率を測定した。常温水(25℃)の、ろ過処理に用いた水処理ろ材のSS除去率は約70%であった。また、高温水(80℃、90℃)の、ろ過処理に用いた水処理ろ材のSS除去率も約70%であり、常温水の処理に用いた水処理ろ材と同等の性能を示した。
実施例1において、熱接着性繊維について鞘成分として熱可塑性エラストマーに代えて、低融点ポリエステル(ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体)を配したこと以外は、実施例1と同様にして水処理ろ材を得た。得られた水処理用ろ材は圧縮率(30℃)は40%であった。
80℃の高温水を用いたろ過処理テストでは、テスト後にろ過塔内の水処理ろ材がブロック状に固まったことにより、逆洗ができないため繰返しての使用ができないことが分かった。
実施例1において、熱接着繊維の鞘成分の熱可塑性エラストマーが、水処理ろ材全体を基準として5重量%となるように配したこと以外は同様の方法にて成形し、圧縮率(30℃)15%の水処理ろ材を得た。得られた水処理ろ材は、ろ過の最中に壊れてしまい、安定してろ過することができなかった。ろ過時に壊れて流れ出た繊維が処理液に流出し、ろ過後のSS除去率は25%と、ろ過性能が低く水処理ろ材として使用できないことが分かった。
実施例1において、熱接着繊維の鞘成分の熱可塑性エラストマーが、水処理ろ材全体を基準として80重量%となるように配したこと以外は同様の方法にて成形し、圧縮率(30℃)90%の水処理用ろ材を得た。
得られた水処理ろ材は、高温下でも使用は可能であったが、80℃の高温水を用いたろ過テストでは、圧量損失が大きく、今回の実験系ではポンプ圧がかけられず、連続通水することができなかった。
Claims (6)
- 融点が200℃以上のポリエステル系短繊維と熱可塑性エラストマーとを含む水処理ろ材であって、
(i)水処理ろ材は、ポリエステル系短繊維同士の複数の繊維交絡点を有し、
(ii)繊維交絡点の一部ないし全部は、熱可塑性エラストマーによって固着し、
(iii)熱可塑性エラストマーは、ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとし、融点が200℃未満のポリエーテルエステル系ブロック共重合体であり、水処理ろ材中の熱可塑性エラストマー含有量は、水処理ろ材を基準として8重量%以上36重量%以下であり、
(iv)水処理ろ材は、30℃における圧縮率が20%以上70%以下である、
前記水処理ろ材。 - ポリエステル系短繊維を構成するポリエステルは、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートである請求項1に記載の水処理ろ材。
- 熱可塑性エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステルをハードセグメントとし、ポリオキシブチレン系ポリエーテルをソフトセグメントとする、融点が200℃未満のポリエーテルポリエステルブロック共重合体である、請求項1に記載の水処理ろ材。
- 90℃の雰囲気下で、水処理ろ材同士が膠着しない請求項1に記載の水処理ろ材。
- (a)入水部および出水部が配されたハウジング、および
(b)ハウジング内に嵩密度50〜120kg/m3で充填された、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理ろ材、
を含むろ過装置。 - 請求項5に記載のろ過装置のハウジングの上方から下方にろ過対象水を通過させる水処理方法。
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