JP5647564B2 - 濾過材及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、各種分野に使用される汚濁油水の浄化に使用する各種濾過器用濾過材及びその製造方法に関する。
圧延鋼板製造時の冷却油や工作機械の切削油などは、濾過器を通して循環使用される。濾過器には、小型で効率の良い円筒状濾過器が多く使用されている。例えば、特許文献1にその構造及びそれに使用される濾過材についても記載されている。
円筒状濾過器及びそれに用いる濾過材はかなり古い時代から使用され、昭和20〜40年代にその記述がみられ、特許文献2や特許文献3に、その記載がある。しかし、円筒状濾過器についてはほぼその構造は固まっており、濾過材についても微細繊維材であればなんでも使用可能なような記述であって、例えば、ガラス繊維、金属ウール、化学繊維、アスベスト、コットン、ウール等が列挙されてはいるものの、もっぱらガラス繊維(グラスウール)が一貫して用いられている。このガラス繊維は濾過材とした場合、逆洗に弱い欠点があるところを、濾過材が支持体により圧縮方向への変形が抑えられるように支持して、ガラス繊維の圧力方向への移動を支持体による圧縮のため、このガラス繊維間の摩擦力を強くして、逆洗時の圧縮空気による剥離力よりも強力になっており、逆洗時であっても圧縮方向と略直交する方向へのガラス繊維の移動は抑えられて剥離を押さえるものである。さらに、処理液の速度が毛管浸透速度を越えてしまった場合でも、濾過材内に夾雑物が入り込みにくく、フィルタエレメントが目詰まりを起こした場合でも逆洗を行なうことにより繰り返し使用することができるということが、特許文献4に記載されている。
円筒状濾過器の詳細は特許文献1の図面にその詳細記載があり、その図2及び図4のようなシステム構成によって、例えば冷間圧延機で使用された冷却油を浄化するようになっている。
このような円筒状濾過器に対して、濾過材として化学繊維を用いる提案は特許文献3のように、1960年代には既に提案はあったものの、具体的には最近になって2000年には、特許文献1に見られるように化学繊維としてのポリエチレンテレフタレート繊維、いわゆるポリエステル繊維(PET)を用いることが提案されている。しかし、その後においても、それ以上に突っ込んだ技術的検討はなされておらず、その性能もガラス繊維に比べて若干の改善はみられるものの、決して優れた性能を発揮するものではなかった。
特開2001−314715号公報 特公昭30−6991号公報 特公昭46−33668号公報 特開2001−129320号公報
本発明において解決しようとする問題点は、円筒状濾過器用の濾過材として、現在汎用されているガラス繊維製濾過材による無機繊維の油への混入による金属加工面の傷つきを排除すること、繰り返し再生使用が可能なこと、使用後の廃棄物処理、特に、焼却処理に際してダイオキシンなどの有害物質の排出がなくて処理が容易であることなど、取り扱いの容易性はもちろんのこと、汎用の濾過材として、合成繊維を用いて使用に便利、かつ、濾過効率の良好な濾過材及びその製造方法についての提案をすることにある。
本発明は、液体の円筒状濾過器に取付けるドーナツ状積層濾過材であって、その濾過材がポリエステル系合成繊維で、繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートの複数枚の集合体からなり、主繊維の太さは15〜60デシテックスであり、繋ぎ繊維の太さは1〜10デシテックスであり、繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートの混合比は、5:5〜9:1の範囲であり、不織布シートの集合体は、熱圧着により繊維の細い繋ぎ繊維が溶融して主繊維と一体化してり、かつ、ドーナツ状積層濾過材の嵩密度が100kg/m 3 〜500kg/m 3 の間に圧縮されてなる濾過材であることを特徴とする。
ここで主繊維の太さは15〜60デシテックスであり、繋ぎ繊維の太さは1〜10デシテックスの範囲であり、更に好ましくは、主繊維の太さは20〜50デシテックスであり、繋ぎ繊維の太さは2〜8デシテックスの範囲である。
このような繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートの混合比は、重量比で表した場合、5:5〜9:1の範囲であり、更に好ましくは、6:4〜8:2の範囲である。繊維の太い主繊維が半分以下になると不織布シートの腰がなくなり9割を超すと今度は不織布シートが硬過ぎ、繋ぎ繊維が1割以下となって、不織布の一体性が損なわれることとなって、好ましくなく、繊維の細い繋ぎ繊維が半分以上になると不織布シートの充填密度が小さくなって、これも好ましくない結果を与える。
繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートは、熱圧着により繊維の細い繋ぎ繊維が先行して溶融し、このように繊維の太さのみを変更して使用する場合は、再生に際してほとんど気にすることがなくなり繊維のリサイクルが可能となる。しかし、本発明の技術思想は、若干の融点の差があったとしても、繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートは濾過材として好適な性質をもたらす。
濾過装置に装着するドーナツ状積層濾過材は、以上のような条件に適合する不織布シートを複数枚重ねた集合体とし、必要とする濾過条件に適合するように圧縮締め付け固定する。このような濾過材の嵩密度は通常、100kg/m3〜500kg/m3の間に圧縮されるが、外径55mm,内径22mmのドーナツ状積層濾過材の積層方向外周面から内周面への静止濾過時の濾液の透過量が15000cc/min〜100cc/min 好ましくは15000cc/min〜300cc/minの範囲であるから、従来のガラス繊維の1600cc/min〜360cc/minの範囲に比べて、濾過抵抗が小さくて処理能力が大となるにも拘らず、濾液の清浄化に優れた濾過材となっている。
本発明では、上記の性能を得るための効率的な濾過材の製造方法も提案している。すなわち、液体の円筒状濾過器に取付けるドーナツ状積層濾過材にポリエステル系合成繊維を用い、15〜60デシテックスの太い主繊維と1〜10デシテックスの細い繋ぎ繊維を所定比率に混合して平面上に厚さが均一になるように広げ、ニードルパンチングして形成した前記主繊維と繋ぎ繊維の絡みを繋ぎ繊維の溶融により融着するように熱処理をして不織布シートの集合体に仕上げた後、所定の大きさのドーナツ状に裁断したものを複数枚積重ねて上部にねじ圧縮板を下部に受け板付中空穴明きパイプに挿通し、嵩密度が100kg/m 3 〜500kg/m 3 の間に圧縮して仕上げることを特徴とする濾過材の製造方法である。
このような構成にすることにより、大きなプレス圧を用いなくても濾過材全体が均一かつ形崩れすることなく製造することができる。また、必要に応じて,濾過装置に装着した後でプレス圧を調整して目的とする汚染油の濾過を効率的に実施することができる。合成繊維自体が従来に比べて太く、かつ弾性があるため、従来のグラスウールのようなヘタリや繊維屑の濾過液への混入もなく、長期にわたり使用できる、さらに、濾過材の再生も可能で、経済効果も高いものとなっている。
本発明の濾過材及び従来のグラスウール濾過材の嵩密度と原料油の透過量の関係を対比したグラフである 本発明の濾過材の嵩密度と濾過油の透明度の関係を示す写真である。 本発明の他の濾過材の嵩密度と濾過油の透明度の関係を示す写真である 従来のグラスウール系濾過材の嵩密度と濾過油の透明度の関係を示す写真である。
以下、本発明の濾過材の性能につき、従来のグラスウール濾過材と対比しながら詳細に説明する。原料油には機械汚れの洗浄に使用する灯油系洗浄液を用い、濾過装置には公知の円筒状濾過器を、小型化して使用した。濾過器のテストセグメントは上部にねじ圧縮板、下部に受け板付中空穴明きパイプを有し、これに上記ドーナツ状フィルターを挿通し、充填するドーナツ数を変更することで、濾過材の充填密度を変化させた。円筒状濾過器に濾過材を装着したテストセグメントを、原料油を満たしたタンク内に各2本宛セットして前記中空穴明きパイプに出てくる濾過量と濾過液の透明度につき測定した。次に実施例によって本発明の濾過材の性能を更に具体的に説明する。
[実施例1]
ポリエステル系合成繊維平均繊維長51mm,平均直径28デシテックスの太い主繊維と、同じく平均繊維長51mm,平均直径4デシテックスの細い繋ぎ繊維を7:3の重量比率に密度66kg/m2で均一になるように広げ、熱風を吹き付けて前記主繊維の絡みを繋ぎ繊維の溶融により融着して厚さが40mmの不織布シートに仕上げた。このほぼ40mm厚みのシート外径55mm、内径22mmのドーナツ状に切り抜き、これを設定充填密度になるようにドーナツ数を重ねて圧縮し、上記のテストセグメントに仕上げた。
これら複数枚不織布シートの集合体からなる濾過材の嵩密度は100kg/m3〜500kg/m3の間に圧縮されて濾過器のテストセグメントを得た。この場合、濾液の透過量は15000cc/min〜100cc/minの範囲で調節できた。
圧縮してセットされた濾過材の嵩密度は、その全重量と容積及び比重(1.38)から計算で求めた。濾過液の透明度は印字した紙の上に底面が平らなガラスコップで深さが120mmのものを用意し、濾過液をコップ内に注入し底面の印字が見えなくなる境界の深さ(mm)を測定して、透明度の目安とした。したがって、透明度は数値が大きいほど良好であると判断される。表1にその結果を示す。
表1においては、P1〜P10の10種類の試料によって、嵩密度156から331kg/m3とほぼ2倍まで変化させた。その場合、嵩密度は2倍程度の変化に拘らず,濾過量は9000cc/minから1200cc/min、透明度は14mmから103mmの範囲で大きく変化した。結果は図1のグラフ(a)の曲線で示される通り、そして、図2の濾過材の嵩密度と濾過油の透明度の関係を示す写真で明らかである。
[実施例2]
実施例2は、本発明のほかの実施例を示すもので、ポリエステル系合成繊維平均繊維長51mmはほぼ同一であるが、平均直径16デシテックスの太い主繊維と、同じく平均繊維長51mm,平均直径4デシテックスの細い繋ぎ繊維を7:3の重量比率に密度66kg/mm2で均一になるように広げ、熱風を吹き付けて前記主繊維の絡みを繋ぎ繊維の溶融により融着して厚さが40mmの不織布シートに仕上げた。このほぼ40mm厚みのシート外径55mm、内径22mmのドーナツ状に切り抜き、これを設定密度になるようにドーナツ数を積重ねて圧縮し、上記のテストセグメントに仕上げた。結果を表2に示す。
表2においては、p0〜p8の9種類の試料によって、嵩密度136から291kg/m3と、実施例1と同様にほぼ2倍まで変化させた。その場合、嵩密度は2倍程度の変化に拘らず,濾過量は2900cc/minから320cc/min、透明度は34mmから102mmの範囲で大きく変化した。結果は図1のグラフ(b)の曲線で示される通り、そして、図3の濾過材の嵩密度と濾過油の透明度の関係を示す写真で明らかである。
[比較例1]
比較例1は、従来例を示すもので、グラスウール(比重2.4)は市販の密度96kg/m3厚さが25mmで、910mm×1820mmのシートを使用した。このほぼ25mm厚みのシートから外径55mm、内径22mmのドーナツ状に切り抜き、これを設定密度になるようにドーナツ数を積重ねて圧縮し、上記のテストセグメントに仕上げた。このものの嵩密度と濾過量及び濾過液の透明度の測定結果を表3に示す。
表3においては、G1〜G5の5種類の試料によって、嵩密度116から174kg/m3と、実施例のようにほぼ2倍まで変化させることはできなかった。その場合、嵩密度は2倍にまで変化できないのに,濾過量は1600cc/minから360cc/min、透明度は16mmから僅か65mmの範囲で大きく変化しなかった。結果は図1のグラフ(c)の曲線で示される通り、そして、図4の濾過材の嵩密度と濾過油の透明度の関係を示す写真で明らかである。
以上の実施例1及び2と比較例1との対比から明らかなように、本発明は、濾過材がポリエステル系合成繊維であって、繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートの複数枚の集合体からなる濾過材であることを特徴とする。そして主繊維の太さは15〜60デシテックスであり、繋ぎ繊維の太さは1〜10デシテックスの範囲で用いると、大きなプレス圧を用いなくても濾過材全体が均一かつ形崩れすることなく製造することができ。必要に応じて,濾過装置に装着した後でプレス圧を調整して目的とする汚染油の濾過を効率的に実施することができる。合成繊維自体が従来に比べて太く、かつ弾性があるため、従来のグラスウールのようなヘタリや繊維屑の濾過液への混入は極度に少なく、長期にわたり使用できる。さらに、濾過材の再生も可能で、経済効果も高いものとなっている。
a ポリエステル不織布濾過材(実施例1)の嵩密度と濾過流量の関係曲線
b ポリエステル不織布濾過材(実施例2)の嵩密度と濾過流量の関係曲線
c グラスフィルタ濾過材の嵩密度と濾過流量の関係曲線
P ポリエステル不織布濾過材のサンプル(実施例1)
p ポリエステル不織布濾過材のサンプル(実施例2)
G グラスフィルタ濾過材のサンプル

Claims (2)

  1. 液体の円筒状濾過器に取付けるドーナツ状積層濾過材であって、
    該濾過材がポリエステル系合成繊維で、その繊維は太い主繊維と細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートの複数枚の集合体からなり、
    主繊維の太さは15〜60デシテックスであり、繋ぎ繊維の太さは1〜10デシテックスであり、
    繊維の太い主繊維と繊維の細い繋ぎ繊維が混在した不織布シートの混合比は、5:5〜9:1の範囲であり、
    不織布シートの集合体は、熱圧着により繊維の細い繋ぎ繊維が溶融して主繊維と一体化してり、
    かつ、ドーナツ状積層濾過材の嵩密度が100kg/m 3 〜500kg/m 3 の間に圧縮されてなる濾過材。
  2. 液体の円筒状濾過器に取付けるドーナツ状積層濾過材にポリエステル系合成繊維を用い、15〜60デシテックスの太い主繊維と1〜10デシテックスの細い繋ぎ繊維を所定比率に混合して平面上に厚さが均一になるように広げ、ニードルパンチングして形成した前記主繊維と繋ぎ繊維の絡みを繋ぎ繊維の溶融により融着するように熱処理をして不織布シートの集合体に仕上げた後、所定の大きさのドーナツ状に裁断したものを複数枚積重ねて上部にねじ圧縮板を下部に受け板付中空穴明きパイプに挿通し、嵩密度が100kg/m 3 〜500kg/m 3 の間に圧縮して仕上げることを特徴とする濾過材の製造方法。
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