JP3947946B2 - 濾材 - Google Patents

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  • Filtering Of Dispersed Particles In Gases (AREA)
  • Filtering Materials (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建物内に外気を取り入れる際や室内空気を循環させながら空気調和を行う際に使用されるエアーフィルターや自動車、列車等の車両用や家庭用、業務用の空気清浄機などに用いられるエアーフィルター用途に好適な濾材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建物室内や自動車や列車等の車両室内等の人が生活する空間内の粒子状物質を除去するエアーフィルターには、ガラス繊維濾紙や合成繊維からなる不織布が濾材として一般に使用されている。
特に最近は、廃棄物低減のために、使用後に焼却処理により減容化が可能な合成繊維からなる不織布がより広く使用されるようになってきている。
【0003】
かかる不織布を構成する合成繊維の繊維径は2〜3μm程度までしか細くすることができず、1μm以下の繊維径を持つ繊維が容易に製造できるガラス繊維からなる濾紙に比べ、合成繊維からなる不織布は微細な粒子状物質に対する捕集効率は低い。この欠点を補うために、静電気力を粒子に作用させて微細な粒子を捕集することができるように、該不織布はエレクトレット化されることが多い。
【0004】
一方、健康・清潔に対する関心が高まっており、生活空間の空気中に浮遊する細菌やかび等の除去が要求されている。空気中に浮遊する細菌やかびは、他の粒子状物質と同様に一般に使用されているガラス繊維濾紙や不織布などの濾材で捕捉できるが、捕捉された細菌やかびが濾材内で繁殖して悪臭を発生したりするという問題がある。
この問題に対して、濾材に捕捉された細菌やかびが繁殖しないように濾材に抗菌性や抗かび性等を付与することが提案されている。
【0005】
特開昭62−42715には抗菌不織布とエレクトレット不織布を積層した濾材、特開昭62−42716には抗菌剤加工を施したエレクトレット不織布濾材、特開平9−117623には補強不織布とメルトブローン不織布の2層からなる不織布の補強不織布の面に抗菌・抗かび剤を塗布又は吹き付け加工を施したフィルター、特開平9−299724には酸化亜鉛微粒子をフィルター基体表面に被着した抗菌性エアーフィルターが開示されている。さらに、特開平7−323206には4級アンモニウム化したイオン交換繊維を用いた抗菌性エアーフィルターが提案されている。しかし、これらの抗菌性を有する濾材を使用したとしても、一旦捕捉された細菌やかびが再飛散を起こして濾材から空気中に放散されるという問題点がある。
【0006】
また特開平6−269619には通気性を有するシート同士を通気性の抗菌性ホットメルトシートで接合したものが提案されているが、細菌、かびのほとんどは、抗菌性ホットメルトシート部分ではなく他のシート部分で捕捉されるためこの方法では、細菌やかびの繁殖を抑制する十分な効果が期待できないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑み、高い効率で粒子状物質を除去でき、捕捉した細菌やかびの繁殖を抑制するとともに捕捉した細菌やかびが放散されない濾材を提供しようとするものである。
【0008】
本発明者らは、高い効率で粒子状物質を除去でき、捕捉した細菌やかびの繁殖を抑制するとともに、それらの放散を起こさない濾材を得るために、抗菌不織布と微細な粒子状物質を除去できるエレクトレット不織布を含む複数の不織布の接着積層について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、複数の層が積層されてなる濾材であって、少なくとも1層のエレクトレット不織布からなる層と少なくとも1層の抗菌不織布からなる層を含み、且つ、各層が抗菌接着剤により接着されてなる濾材を提供するものである。
【0010】
本発明の好ましい実施態様は、前記エレクトレット不織布からなる層よりも前記濾材の上流側(被濾過流体の入口側)に、少なくとも1層の前記抗菌不織布からなる層を配置してなる濾材である。
【0011】
本発明の好ましい実施態様は、前記濾材の最上流(被濾過流体の入口部)に、前記抗菌不織布からなる層を配置してなる濾材である。
【0012】
本発明の好ましい実施態様は、前記抗菌不織布が、抗菌性を有する金属イオン又は第4級アンモニウムイオンから選ばれた1以上のイオンを置換、導入されたイオン交換繊維を含む濾材である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の濾材は、少なくとも1層の抗菌不織布からなる層を含むことが必要である。濾材中のこの抗菌不織布に細菌やかびが捕捉・不活性化され、繁殖が抑制されるからである。
【0014】
本発明の濾材は、エレクトレット不織布からなる層よりも濾材の上流側に、少なくとも1層の抗菌不織布からなる層を配置してなることが好ましく、最上流に少なくとも1層の抗菌不織布からなる層を配置してなることがより好ましい。エレクトレット不織布が抗菌不織布よりも上流側に存在すると、該エレクトレット不織布に細菌やかびの多くが捕捉されてしまい、十分な抗菌効果が得られない可能性があるからである。細菌やかびはその大きさが0.5〜30μmと大きく、それらは単独あるいは比較的大きな他の粒子状物質に付着して空気中に浮遊しているので、エレクトレット化されていない通常の不織布でも捕捉されるため、エレクトレット不織布よりも上流側に抗菌不織布を配置すれば、該抗菌不織布で細菌やかびが捕捉され、不活性化されるのである。特に最上流に抗菌性不織布を配置すれば、細菌やかびの捕捉・不活性化がより確実なものとなる。
【0015】
本発明の濾材は、各層が抗菌接着剤により接着されていることが必要である。抗菌不織布で捕捉された細菌やかびは、濾材に振動が加えられたり、濾材に流入する空気流量の急激な変化が与えられたりすると一部が再飛散を起こす。その再飛散した細菌やかびは下流側に配置されている不織布との境界面に再捕捉されるが、各層の不織布間が抗菌接着剤により接着されているため、そこで再び不活性化され、繁殖することが防止される。
【0016】
本発明の濾材は、上流側から下流側に向かって、1μm以上の粒子の捕集効率の高い不織布が積層されてなることが好ましい。再飛散した細菌やかびが濾材内の抗菌接着剤が存在する不織布境界でより効率的に再捕捉することができ、再飛散した細菌やかびの繁殖をより効果的に抑制することができるからである。
なお、上記の不織布とは、エレクトレット不織布、抗菌不織布並びにそれら以外の不織布の全てを含むものである。
【0017】
本発明の濾材は、少なくとも1層のエレクトレット不織布からなる層を含むことが必要である。生活空間の空気中に浮遊している粒子状物質は一般に平均粒径が0.1μm前後と微細な粒子が多いが、先に述べたように、通常の不織布では微細な粒子状物質を除去することができない。しかし、エレクトレット不織布は静電気力により微細な粒子状物質の除去が可能なため、エレクトレット不織布を積層する事により、微細な粒子状物質を高い効率で除去できる濾材が得られるのである。
【0018】
かかるエレクトレット不織布を得る方法は、特に限定されず、エレクトレット化が可能な原料繊維からなる不織布にコロナ荷電処理などを施したり、エレクトレット化されたフィルムを割繊繊維化して不織布にするなど公知の方法が使用できる。また、エレクトレット不織布には、不織布の補強などを目的として他のエレクトレット化されていない繊維を混合したり、ネットなどを積層することもできる。
【0019】
本発明の濾材に用いられる不織布の原料繊維は、特に限定されるものではなく、例えば、セルロース、ビスコースなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル、ポリスルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリ弗化ビニリデンなどの合成繊維があげられ、これらの繊維を単独にあるいは混合して構成してなる不織布等が挙げられるが、エレクトレット不織布にはポリオレフィンなどのエレクトレット化が可能な原料繊維が含まれていることが必要である。 また、濾材により多くの機能性を持たせるために、難燃性を持つ繊維や脱臭作用を持つ繊維などを適宜使用することもできる。
【0020】
本発明の濾材に用いられる抗菌不織布は、繊維の表面及び/又は内部に、抗菌剤を保持した繊維を含んだ不織布をいう。
【0021】
上記の抗菌剤は、特に限定されるものではなく、無機系、有機系や天然系の各種抗菌剤を用途や目的に応じて単独あるいは複合して使用することができるが、無機系抗菌剤であれば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンを含有するものが好ましく、有機系抗菌剤であれば、第4級アンモニウムイオンを含有するものが好ましい。
【0022】
繊維の表面及び/又は内部に、抗菌剤を保持させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、含浸加工、添着加工、スプレー加工などにより繊維表面に添着する方法や繊維の製造段階で練り込む方法や抗菌性を有するイオンを繊維にイオン交換で導入する方法などが挙げられる。
これらのうちで、抗菌性能を長期間維持することができる抗菌性を有するイオンを繊維にイオン交換で導入した繊維がより好ましい。
【0023】
本発明の濾材に用いられる抗菌接着剤は、表面及び/又は内部に抗菌剤を保持した接着剤をいう。
【0024】
上記の接着剤は、特に限定されるものではないが、化学反応により接着固化する樹脂や粘着性あるいは熱融着性を有する樹脂などが使用できる。化学反応により接着固化する樹脂とは、2液を混合することや、熱や空気中の水分により反応を起こして接着固化する樹脂であり、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、シアノアクリレート樹脂などがあげられる。粘着性を有する樹脂とは、10〜30℃の常温で粘着性を有し、押圧することにより該樹脂を介した2層の不織布が接着できるものであり、合成ゴム系樹脂などがあげられる。また、熱融着性を有する接着剤とは、粘着性を有する温度以上に加熱した後冷却して接着固化する熱可塑性樹脂であり、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などがあげられる。これらのうちで粘着性を有する樹脂が特に好ましい。この理由は、濾材の中に積層されているエレクトレット不織布は熱が加えられるとエレクトレットが劣化し、粒子状物質の除去性能が低下するが、粘着性を有する樹脂を使用すれば加熱することなく接着できるので、該エレクトレット不織布の粒子状物質の除去性能の低下が防止でき、また、短時間で不織布を接着することができるからである。これら接着剤は通気性と抗菌性の観点から微細な粒状、繊維状で不織布に均一な間隔で塗布されていることが好ましい。また、粘着性や熱融着性を有する樹脂などをあらかじめネットや薄い不織布状などに成形された接着剤を使用してもよい。
【0025】
本発明の濾材に用いられる不織布の接着は、各層の不織布の間に接着剤を介して一度に行ってもよいし、何層かに分割して接着して最終的に積層一体化してもよい。また、各層間の接着剤は同一のものを使用してもよいし、各層間で異なった接着剤を使用してもよい。
【0026】
本発明の濾材に用いられる抗菌接着剤に保持させる抗菌剤は、特に限定されるものではなく、無機系、有機系や天然系の各種抗菌剤を用途や目的に応じて使用できるが、無機系抗菌剤であれば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンを含有するものが好ましく、有機系抗菌剤であれば、第4級アンモニウムイオンを含有するものが好ましい。該接着剤に抗菌剤を保持させる方法としては、特に限定されないが、接着剤樹脂が接着固化する前の粘着性を有している状態で抗菌剤を該接着剤樹脂表面に付着させる方法や接着剤樹脂が流動性を有している状態で、抗菌剤を練り込んで混ぜる方法などがある。また、層間の接着剤に含有する抗菌剤は全て同一のものを使用してもよいし、各層間毎で異なった抗菌剤を使用してもよい。さらに、種類の異なる抗菌剤を接着剤に混合して使用することもできる。
【0027】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何等限定されるものではない
【0028】
【実施例】
まず、本実施例で用いた濾材の試験方法を以下に示す。
【0029】
(抗菌性能)
直径47mmの円板状の濾材を濾過面積12.5cm2 のステンレス製フィルターホルダーに装着し、該フィルターホルダーの下流側は真空ポンプに接続した。また、該フィルターホルダーの上流側の空気取り入れ口には、液体が微細な霧状に噴霧できるアトマイザーを装着した。該アトマイザーには細菌としてPseudomonus aeruginosaとKlebsiella pneumoniaeを混合した水が入れられている。このフィルターホルダーは複数個が並列に真空ポンプに接続されており、同時に複数の濾材の試験が行えるようにした。細菌を含んだ水をアトマイザーで、濾材が装着されているそれぞれのフィルターホルダーに10分間噴霧し導入した後、真空ポンプにより、室内の空気を濾材が装着されたそれぞれのフィルターホルダーに30日連続して通気し、その間24時間毎に濾材を装着したフィルターホルダーにハンマーで衝撃を与えた。その後、それぞれの濾材を別のフィルターホルダーに装着した。該フィルターホルダーの上流側にはHEPAフィルターが取り付けられており、下流側には滅菌した純水50ccを入れたガラス製インピンジャーを接続し、さらにその下流側は真空ポンプに接続した。真空ポンプにより、HEPAフィルターで粒子状物質や細菌やかびを完全に除去した空気を濾材が装着されたフィルターホルダーにハンマーで衝撃を与えながら30分間通気し、この後、インピンジャー内の水中の生菌数を測定した。この生菌数が少ないほど内部での細菌の繁殖および放散が少ない濾材といえる。
【0030】
(粒子状物質除去性能)
直径47mmの円板状の濾材を下流側が真空ポンプに接続されている濾過面積12.5cm2 のステンレス製フィルターホルダーに装着した。該フィルターホルダーにはフィルターの上下流側にサンプリング管が取り付けられており、そのサンプリング管から空気をサンプリングしてレーザーパーティクルカウンターで粒子個数濃度が測定できるようにした。真空ポンプにより、濾材に流速10cm/sで室内空気を導入し、フィルターの上下流側の0.1μmの粒子個数濃度を測定し、その比から粒子捕集効率を求めた。この粒子捕集効率が高いものほど粒子状物質除去性能が高い濾材といえる。
【0031】
[実施例1]
繊維径28μm、目付50g/m2 のポリエステルスパンボンド不織布にビニル樹脂系バインダーを使用してイミダゾール系抗菌剤を4g/m2 添着し、抗菌不織布を作製した。該抗菌不織布を最上流層とし、繊維径4μm、目付20g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット化し、エレクトレット不織布とし抗菌不織布の下流側に配置した。これら不織布間を難溶性リン酸塩と塩化ベンザルコニウムからなる抗菌剤を3重量%練り込んだ合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0032】
[実施例2]
銀系抗菌剤を練り込んだ原料ポリマーから繊維径20μm、目付20g/m2 のポリプロピレンスパンボンド不織布を作製し抗菌不織布とし、最上流側の第1層にした。第2層に繊維径4μm、目付20g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布を配置し、繊維径2μm、目付30g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット化し、エレクトレット不織布とし第3層に配置した。これら不織布間を難溶性リン酸塩と塩化ベンザルコニウムからなる抗菌剤を3重量%練り込んだ合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0033】
[実施例3]
銀イオンをイオン交換で導入した繊維径10μmのアクリル系繊維25重量%、繊維径15μmのポリプロピレンとポリエチレンからなる熱融着繊維75重量%を混繊し、ニードルパンチでシート化したのち加熱し、熱融着繊維で熱融着した目付15g/m2 の抗菌不織布を最上流側の第1層に配置し、第4級アンモニウムイオンをイオン交換で導入した、繊維径10μmのアクリル系繊維25重量%、繊維径15μmのポリプロピレンとポリエチレンからなる熱融着繊維を75重量%を混繊し、ニードルパンチでシート化したのち加熱し、熱融着繊維で熱融着した目付15g/m2 の抗菌不織布を第2層に配置し、繊維径2μm、目付30g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット化したエレクトレット不織布を第3層に配置した。これら不織布間を難溶性リン酸塩と塩化ベンザルコニウムからなる抗菌剤を3重量%練り込んだ合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0034】
[実施例4]
銀イオンをイオン交換で導入した繊維径10μmのアクリル系繊維25重量%、第4級アンモニウムイオンをイオン交換で導入した、繊維径10μmのアクリル系繊維25重量%、繊維径15μmのポリプロピレンとポリエチレンからなる熱融着繊維50重量%を混繊し、ニードルパンチでシート化したのち加熱し、熱融着繊維で熱融着した目付30g/m2 の抗菌不織布を最上流側の第1層に配置し、繊維径20μm、目付20g/m2 のポリプロピレンスパンボンド不織布をエレクトレット化したエレクトレット不織布を第2層に配置し、繊維径2μm、目付30g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット化したエレクトレット不織布を第3層に配置した。これら不織布間を難溶性リン酸塩と塩化ベンザルコニウムからなる抗菌剤を3重量%練り込んだ合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0035】
[比較例1]
繊維径28μm、目付50g/m2 のポリエステルスパンボンド不織布を最上流層とし、繊維径4μm、目付20g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布を下流側に配置した。これら不織布間を合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0036】
[比較例2]
銀系抗菌剤を練り込んだ原料ポリマーから繊維径20μm、目付20g/m2 のポリプロピレンスパンボンド不織布を作製し抗菌不織布とし、最上流側の第1層にした。第2層に繊維径4μm、目付20g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布を配置し、繊維径2μm、目付30g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布を第3層に配置した。これら不織布間を合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0037】
[比較例3]
銀系抗菌剤を練り込んだ原料ポリマーから繊維径20μm、目付20g/m2 のポリプロピレンスパンボンド不織布を作製し抗菌不織布とし、最上流側の第1層にした。第2層に繊維径4μm、目付20g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布を配置し、繊維径2μm、目付30g/m2 のエレクトレット化されたポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット不織布として第3層に配置した。これら不織布間を合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0038】
[比較例4]
繊維径25μm、目付50g/m2 のポリエステルスパンボンド不織布を最上流側の第1層にした。第2層に繊維径4μm、目付20g/m2 のポリプロピレンメルトブローン不織布を配置し、繊維径2μm、目付30g/m2 のエレクトレット化されたポリプロピレンメルトブローン不織布をエレクトレット不織布として第3層に配置した。これら不織布間を難溶性リン酸塩と塩化ベンザルコニウムからなる抗菌剤を3重量%練り込んだ合成ゴム系接着剤を繊維状で3g/m2 塗布し、接着して濾材を得た。
【0039】
上述した濾材について、先に説明した方法により抗菌性能と粒子状物質除去性能の試験を実施した。抗菌性能については、同一条件下で性能比較を行うために、真空ポンプに接続されている複数のステンレス製フィルターホルダーにそれぞれの濾材を装着して、全ての濾材について同時に試験を行った。結果を第1表に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003947946
【0041】
比較例1の濾材は抗菌不織布、エレクトレット不織布、抗菌接着剤ともに使用していないため、抗菌性能が低く、粒子状物質除去性能も低い。比較例2の濾材は、抗菌不織布を使用しているが、エレクトレット不織布、抗菌接着剤は使用していない。抗菌接着剤が使用されておらず、一旦捕捉された細菌が再飛散して濾材内の抗菌不織布の下流層で繁殖し、その細菌が濾材から放散されるため抗菌性能が低く、また、エレクトレット不織布を使用していないため、粒子状物質除去性能が低い。
【0042】
比較例3の濾材は、抗菌不織布とエレクトレット不織布を使用しているが、抗菌接着剤は使用していない。そのため、一旦捕捉された細菌が再飛散して濾材内の抗菌不織布の下流層で繁殖し、その細菌が濾材から放散され抗菌性能が低い。比較例4の濾材は、抗菌接着剤とエレクトレット不織布を使用しているが、抗菌不織布は使用していない。抗菌不織布を使用していないことから、細菌が捕捉された不織布内で非常に大きく繁殖し再飛散する細菌の数が多く、一部の細菌が濾材内で再捕捉されず濾材から放散されるため抗菌性能が低い。
【0043】
これら比較例に対して、抗菌不織布とエレクトレット不織布及び抗菌接着剤を使用している実施例1〜4では、抗菌不織布を使用しているため、捕捉した細菌を不活性化し繁殖を抑制し、また、抗菌接着剤を使用しているため、一旦捕捉された細菌が再飛散しても再捕捉して不活性化して繁殖することを抑制できる。この結果として、濾材内での細菌の繁殖及び濾材からの細菌の放散が防止できる。さらに、エレクトレット不織布を使用しているので、粒子状物質の除去性能が高い。
【0044】
【発明の効果】
本発明は以上述べたように抗菌不織布とエレクトレット不織布を含む複数の不織布が抗菌接着剤で接着積層されているため、粒子状物質が高い効率で除去できるとともに、捕捉された細菌やかびの繁殖と放散を抑制した濾材を提供できるものである。

Claims (4)

  1. 複数の層が積層されてなる濾材であって、少なくとも1層のエレクトレット不織布からなる層と少なくとも1層の抗菌不織布からなる層を含み、且つ、各層が抗菌接着剤により接着されてなることを特徴とする濾材。
  2. 前記エレクトレット不織布からなる層よりも前記濾材の被濾過流体の入口側である上流側に、少なくとも1層の前記抗菌不織布からなる層を配置してなることを特徴とする請求項1記載の濾材。
  3. 前記濾材の最も被濾過流体の入口側である最上流に、前記抗菌不織布からなる層を配置してなることを特徴とする請求項1記載の濾材。
  4. 前記抗菌不織布が、抗菌性を有する金属イオン又は第4級アンモニウムイオンから選ばれた1以上のイオンを置換、導入されたイオン交換繊維を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の濾材。
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