JP2011195967A - 嵩高不織布用繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、嵩高性と生産性に優れたエアレイド不織布用繊維を提供することである。
【解決手段】特定の中空率、150℃乾熱収縮率及び繊維長を有する潜在捲縮性繊維とすることで、上記課題を解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、エアレイド法による不織布の製造に適し、嵩高な不織布を高い生産性で与えるポリエステル短繊維に関する。
エアレイド法は乾式不織布の製造方法の一つであり、高速生産性や、嵩高性で繊維配向が均一な不織布が得られる等の特徴がある(例えば、特許文献1を参照。)。元来は、ドライパルプを叩解し、空気開繊してウェブを成型し、接着剤で固定したパルプ不織布が主流であったが、高強度、高通気性、耐水性等を狙い、全て合成繊維からなるエアレイド不織布も検討されており、自動車フィルター等の用途に用いられている(例えば、特許文献2等を参照。)。
かかる不織布は、元来嵩高な性質を持つが、近年、フィルター等の用途においては、粉体又は液体の保持性能を高めるために、更なる嵩高性が求められている。一般的に、不織布の嵩高性を向上させる有力な方法のひとつは、不織布を構成する繊維に三次元的な捲縮を付与することである。そのような方法として、例えば、紡糸口金から吐出された直後の糸条を断面方向に非対称に冷却することにより、該糸条に断面異方性を生じさせる方法(以下、異方冷却紡糸法という。)等が知られている(例えば、特許文献3等参照。)。かかる方法により三次元的な捲縮が付与された繊維を適当な繊維長に切断し、エアレイド法に供することで嵩高な不織布を得ることができる。しかしながら、該繊維は、エアレイド不織布を製造する際、金網又はスリットを有するスクリーンを通過する過程で三次元的な捲縮が障害となり、繊維の紡出量が著しく減少するため、不織布の生産性に劣るものであった。また、繊維の絡まり等により、得られる不織布の均一性、外観に劣るものとなることがあった。
米国特許第4640810号明細書 国際公開第1997/48846号パンフレット 特公昭38−007511号公報
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、生産性に優れた嵩高な不織布を得るのに適したエアレイド不織布用繊維を提供するものである。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、エアレイド不織布用短繊維において、適当な中空率と繊維長を有し、異方冷却紡糸法等により潜在捲縮性を有する特定の繊維長を有する短繊維が、嵩高性と生産性に優れた、エアレイド不織布用短繊維として好適に用いられることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、10〜40%の中空率を有する、繊維長5mm〜15mmの潜在捲縮性のエアレイド不織布用中空ポリエステル繊維であって、当該発明によって、上記課題を解決することができる。
本発明のエアレイド不織布用ポリエステル短繊維によって、生産性に優れた嵩高な不織布を得ることができる。
嵩高性を評価する為のエアレイド法不織布製造装置の一例である。
以下本発明を詳細に説明する。先ず、繊維を構成する合成重合体としては、アルキレンテレフタレートを主たる繰返し成分とするポリエステルが好ましい。アルキレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルとは、構成する繰返し単位の80モル%以上がアルキレンテレフタレートの繰返しで占められるポリエステルであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを意味する。好ましくは構成する繰返し単位の90モル%以上がアルキレンテレフタレートで占められていることである。またエチレンテレフタレートの繰返し単位で80モル%以上が占められていることが好ましい。また必要に応じて、他のジカルボン酸成分、オキシカルボン酸成分、他のジオール成分の1種又は2種以上を共重合単位として有するものを含んでも良い。
その場合、他の共重合成分として好適なジカルボン酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)エステル等の金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸誘導体、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を挙げることができる。また、オキシカルボン酸成分の例としては、p−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸又はそれらのエステル形成性誘導体等を挙げることができる。
共重合成分として好適なジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオールや、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を挙げることができる。
また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、着色顔料等を添加することができる。
この中から、使用される目的に応じて適切なポリアルキレンテレフタレートを選択し、本発明の要件を満たす中空率、乾熱収縮率、捲縮性能、繊維長を付与する。
本発明におけるエアレイド不織布用繊維は、弛緩状態における熱処理により三次元的な捲縮を発現する、いわゆる、潜在捲縮性繊維である必要がある。そのような繊維は、例えば、上述の異方冷却紡糸法で得ることができる。すなわち、ポリエステルポリマーを溶融し、口金面より吐出させた直後の糸条に0.4m/sec以上の流速を有する冷却気流を糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な方向±20度の範囲の角度で吹き当てることにより、冷却気流が直接当てられた面とそうでない面とを対比すると、単糸内の複屈折度に高度の断面異方性を有する未延伸糸とし、次いで該糸条を延伸することで得ることができる。冷却気流の流速が0.4m/sec未満の場合には、高度な断面異方性を付与することが困難であり、そのため、得られた繊維は三次元捲縮を得ることが難しく、捲縮数を3山/25mm以上にすることが出来ない。また、冷却気流の吹き当て方向は糸条の片面から糸条の進行方向に垂直な方向±20度より大きいと、紡糸調子が悪くなったり、異方性が出難くなり、好ましくない。得られた延伸糸の中空率は、10〜40%、さらに好ましくは、15〜35%である。中空率が10%未満では、見かけ繊度の増加が不十分となり、嵩高性が不足するため、好ましくない。また、中空率が40%を超えると中空がつぶれやすくなり、特に不織布が積層されたり、圧縮を受けたりした際に嵩高性能が低下する懸念がある。
中空繊維を製造するには、公知の方法にて通常以下のようにして製造される。上記のアルキレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルの溶融樹脂を吐出口に設けられた分割された円弧からなる円形の、一部が分割された異形の、あるいは連続した円からなる円形の吐出口から押し出し、冷却することによって繊維断面形状が円形または異形の中空糸が一般に製造される。従って溶融樹脂が分割された吐出口から吐出されるばあいは、吐出口近傍では中空糸に分割の孔が形成され、その下流で樹脂が互いに接続して完全な中空糸となる。冷却固化した糸条を紡糸口金面の下方の位置で集束した後、引き取ることが好ましい。
さらに、得られた延伸糸は、150℃における乾熱収縮率が10%以上であり、かつ、150℃の弛緩熱処理を実施した後に発現する三次元捲縮数は、5〜20山/25mm、好ましくは、8〜15山/25mmである。乾熱収縮率が10%未満であると、熱処理後に発現する三次元捲縮数が不十分となり、嵩高な不織布が得ることができない。また、150℃の熱処理後に発現する三次元捲縮数が5山/25mm未満では、単一の短繊維に含まれうる三次元捲縮が少なくなり、望ましい嵩高性が得られず、不適である。また、三次元捲縮が20山/25mmを超えると、三次元捲縮が細かくなりすぎるため、嵩高性が得られない上に、繊維同士が絡みやすくなり、好ましくない。また、三次元捲縮の捲縮率は、5〜50%が、好ましい。捲縮率が、5%未満であると繊維の捲縮が浅く、所望の嵩高さを得ることができない。50%を超えると、繊維同士が絡みやすくなり、毛玉状の欠点等の原因となるため、好ましくない。上述した中空率の数値範囲と三次元捲縮によってエアレイド法により不織布を製造した場合に嵩高な不織布を得ることができる。
通常三次元捲縮を有する短繊維においては、溶融紡糸次いで延伸を実施後、弛緩状態で熱処理(140℃以上)し、立体を発現させます(後述の比較例1参照のこと。)。一歩本願のエアレイド不織布用ポリエステル繊維を製造するには、溶融紡糸次いで延伸を実施後、弛緩熱処理を行うことなく、そのままカットするため、残留歪みが大となり、150℃乾熱収縮率が10%以上となると出願人は考える。また本発明のポリエステル繊維から得られる原綿は、150℃の乾熱処理前は立体捲縮が殆ど発現していないため、エアレイド製造装置での繊維の絡みがすくなく、毛玉も発生しにくいという効果がある。一方一旦ウェブを形成させ、150℃乾熱処理した後には立体捲縮が発現するために嵩高な不織布を得ることができるのである。
得られた延伸糸は、繊維長5mm〜15mmにカットされていることが好ましい。繊維長が5mm未満では単一の短繊維内に含まれうる三次元捲縮数が少なくなるため、不織布を作製した際に、十分な嵩高性を得ることができない。また、繊維長が15mmを超えると、金網又は細孔を有するスクリーンの通過性が不良となり、生産性に劣るものとなる。
以下に本発明の構成及び効果を具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明は、これら実施例になんら限定を受けるものではない。なお、実施例中の各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)固有粘度([η])
ポリマー試料を一定量計量し、35℃のo−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解してから、常法に従って求めた。
(2)融点(Tm)、ガラス転移点(Tg)
TAインスツルメント・ジャパン(株)社製のサーマル・アナリスト2200を使用し、昇温速度20℃/分で常法に従って測定した。
(3)繊度
JIS L−1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。
(4)強度・伸度
JIS L−1015:2005 8.7.1法に記載の方法により測定した。
(5)捲縮数、捲縮率
JIS L−1015:2005 8.12.1〜2法に記載の方法により測定した。
(6)150℃乾熱収縮率
JIS L−1015:2005 8.15 b)において、150℃において実施した。
(7)嵩高性
特開2004−11027号公報記載のエアレイド法不織布製造装置(図1)において、内径310mmで10メッシュ(孔径1.9mm、針金径0.635mm)のステンレス金網からなる多孔平板スクリーン(1)、中央上部に内径25mmの円形の開孔部を有し、内径310mm、高さ600mm(h1)、厚み5mmで下部が開放である円筒状柱状体をスクリーン上に0.8mmの間隙を配して設けられる短繊維開繊室(2)、内径310mmで100メッシュ(孔径0.14mm、針金径0.114mm)のステンレス金網からなる短繊維捕集用ネット(3)、上下が開放の内径310mm、高さ400mm(h2)、厚み5mmの円筒状柱状体を(1)及び(3)と密着させてなる気密室(4)および上部がネット(3)と合同の外形であって、上部が開放であり、上部がネット(3)と密着されている漏斗型気密室(5)をもつ、図1に図示されるエアレイド法不織布製造装置を作製した。さらにその漏斗型気密室(5)の下部にホースを介して排気装置を接続し、排気装置を作動させて(5)内部を負圧とした上で、(2)の開孔部より8gの短繊維試料を投入し、短繊維を開繊してウェブを作製した。排気装置としては、ワンダーガン OSAWA製 J−75 で0.4MPaの圧空を使用した(理論排気量20m/分)。作製したウェブの平均厚さを嵩高性の指標とし、5mm以上を嵩高性良好とした。
(8)スクリーン通過時間
上記「嵩高性」の測定方法において、短繊維がスクリーンを通過する秒数により、以下の3段階で評価した。
レベル1:120秒未満で8g全量が通過する。
レベル2:120〜180秒で8g全量が通過する。
レベル3:180秒を超えても繊維がスクリーン上に残存する。
(9)中空率
20本の単繊維について繊維断面写真を撮影し、撮影写真から中空率を計算し平均値を求めた。
[実施例1]
[η]0.64dL/g、Tm256℃のポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する。)ペレットを、170℃で4時間乾燥した後、スクリュー式押出機にて290℃で溶融し、280℃に保たれたスピンブロックに導入し、吐出孔を150個穿設した中空繊維形成用紡糸口金を通して吐出量500g/分で吐出し、紡糸口金面下20mmの位置で、25℃の冷却用空気を1.2m/秒の流速でポリマー流の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て、冷却・固化し、1000m/分の速度で引き取り、未延伸PET繊維を得た。
次いで、得られた未延伸PET繊維を13万デシテックスのトウに引き揃えた後、第1段延伸温度70℃で2.10倍、第2段延伸温度90℃で1.15倍、総延伸倍率2.75倍に温水延伸し、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコン/第4級アンモニウム塩を50/35/15の重量比で混合してなる油剤を0.10重量%付与した後、5mmの繊維長にカットし、単繊維繊度13.1デシテックスであり、中空率31%のPET繊維(以下繊維Aと称する。)を得た。
この繊維Aの顕在捲縮は、捲縮数で0山/25mm及び捲縮率で0%であり明瞭な平面捲縮は認められなかった。150℃乾熱収縮率は、15%であった。150℃で2分間の熱処理後に発現した捲縮は、捲縮数13山/25mm及び捲縮率40%の三次元スパイラル捲縮であった。
繊維Aとは別途、[η]0.64dL/g、Tm256℃のPETを芯成分とし、酸成分がモル比でテレフタル酸成分:イソフタル酸成分=70:30、ジオール成分がモル比でエチレングリコール:ジエチレングリコール=92:8の割合で共重合された[η]0.57dL/g、Tg64℃の非晶性共重合ポリエチレンテレフタレート(以下co−PETと称する。)とを鞘成分として、芯/鞘重量比50/50となした同芯芯鞘型複合繊維であり、中実断面の、単繊維繊度11デシテックス、繊維長5mm、捲縮数11山/25mm及び捲縮率12%の平面ジグザグ捲縮を有する複合繊維(以下繊維Bと称する)を準備した。この繊維Bには、繊維Aと同じくステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコン/第4級アンモニウム塩を50/35/15の重量比で混合してなる油剤を0.10重量%付与した。明瞭な三次元捲縮は認められなかった。
次に、繊維Aをウェブを構成する主体繊維となし、繊維Bを熱接着成分となすように、繊維A:繊維Bの重量比を85:15の割合として混綿し、エアレイド成型し、180℃の熱風乾燥器中で2分間熱処理して、目付105g/mのエアレイドウェブを得た。スクリーン通過時間は、レベル1であった。未開繊繊維塊は全く認められなかった。ウェブ嵩高性は8mmであり、充分な嵩高性が発現していた。結果を表1に示した。
[比較例1]
延伸し、油剤を付与するまでは、実施例1と同様とし、160℃で弛緩熱処理を実施して、三次元的捲縮を発現させた後、5mmにカットした。繊度は、14.1デシテックス、中空率28%、150℃熱処理後の捲縮数12山/25mm、捲縮率10%で、150℃乾熱収縮率は、0.2%であった。実施例1と同様に繊維Bと混綿して、エアレイドウェブの作製を試みたが、スクリーン通過時間がレベル3、180秒経過後のスクリーン上に相当量の短繊維が残存したため、ウェブを作製することができなかった。結果を表1に示した。
[比較例2]
カット長を3mmとする以外は、実施例1と同様とし、実施例1と同様に繊維Bと混綿して、エアレイドウェブの作製を試みた。スクリーン通過時間がレベル1であったが、嵩高性は、4mmであり、嵩高性は不十分であった。結果を表1に示した。
[比較例3]
カット長を20mmとする以外は、実施例1と同様とし、実施例1と同様に繊維Bと混綿して、エアレイドウェブの作製を試みた。スクリーン通過時間がレベル3、180秒経過後のスクリーン上に相当量の短繊維が残存したため、ウェブを作製することができなかった。結果を表1に示した。
Figure 2011195967
本発明によって、生産に優れ、嵩高なエアレイド不織布を得ることができる短繊維を実現した。この発明により得られる短繊維は、フィルター等の用途において好適に用いることができる。
1 開口部材(多孔平板スクリーン)
2 短繊維開繊室
3 短繊維捕集用ネット
4 気密室
5 漏斗型気密室
6 排気装置
7 ダクト
s 短繊維投入口(開孔部)
d 間隙
h1 開繊室の長さ
h2 気密室の長さ

Claims (1)

  1. 繊維断面形状が中空率10〜40%の中空断面であり、繊維長5mm〜15mmの潜在捲縮性中空ポリエステル繊維であって、下記の特徴を有するエアレイド不織布用ポリエステル繊維。
    (1)150℃乾熱収縮率が10%以上であること。
    (2)150℃乾熱処理後に三次元捲縮が発現し、その捲縮数が5〜20山/25mm、捲縮率が5〜50%であること。
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