JP6887649B1 - Cd39発現促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物抽出物等の天然由来成分からなる、新規なCD39発現促進剤を提供すること。【解決手段】本発明のCD39発現促進剤は、ダルマギク(Aster spathulifolius)の抽出物を含有している。【選択図】なし

Description

本発明はCD39発現促進剤に関し、特に、皮膚のランゲルハンス細胞に発現しており、皮膚免疫応答に関与すると共に、細胞外ATPに由来する炎症抑制に関与するCD39の発現を促進することができるCD39発現促進剤に関する。
CD39は、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、NTPDase1としても知られる膜タンパク質であり、細胞外表面に触媒作用部位を有し、ATPやADPをAMPに加水分解するエクトヌクレオチダーゼである。CD39はB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞及び血管内皮細胞等に発現しており、細胞外ATP・ADPを分解することによって、炎症反応の抑制や血小板機能の活性化等に関与している。
細胞が物理的又は化学的な外部刺激を受けると、細胞外ATPが分泌され、アラームシグナル伝達物質となることが知られている。この細胞外ATPの放出量は加齢と共に増大する。そして、細胞外ATPが老化細胞を刺激すると、炎症性サイトカイン、ケモカイン及びプロテアーゼを主成分とする様々な分泌因子を高発現するSASPと呼ばれる現象(SASP:senescence-associated secretory phenotype)が生じ、周囲の組織に炎症を引き起こす。SASP因子の一部は、老化した細胞周期の停止を強化する等の生体にとって有益な作用を有するが、他のSASP因子は炎症及び腫瘍形成の促進に関連しており、慢性炎症やがん等の様々な疾患の発症に関与することが報告されている(非特許文献1)。それゆえ、細胞外ATPを分解することにより細胞外ATPの蓄積を防ぎ、SASPを抑制する、というCD39の機能が注目されている。
他方、皮膚は表皮、真皮及び皮下組織から構成されている。このうち、皮膚バリア機能を担う皮膚の最外層である表皮は、主に角化細胞(ケラチノサイト)又はこの角化細胞が変化した細胞から構成され、外側から角質層、顆粒細胞層、有棘細胞層及び基底細胞層の順に構成されている。表皮は機械的、物理的又は化学的な外力や異物の侵入から体内を保護する機能を有するところ、角質化されて厚く積み重なった角質層のみがバリアとして機能するのではなく、表皮に特異的に存在する免疫細胞が外部から侵入する異物を排除することで、そのバリア機能を確実なものとしている。代表的な皮膚免疫細胞として、表皮の有棘細胞層に存在するランゲルハンス細胞が挙げられる。ランゲルハンス細胞は樹状細胞であり、角質層を通過した外来抗原を補足すると特定のリンパ節に移動してT細胞に抗原提示を行い、T細胞を活性化させる。活性化したT細胞は皮膚に移行し、抗原を認識するとサイトカインを産生して細菌等の異物を殺傷する。その一方で、外来抗原を感知しない定常状態では、ランゲルハンス細胞は免疫寛容の誘導にも関与している。
この表皮ランゲルハンス細胞には、上述したCD39が発現しており、それゆえ、このCD39によるATPase活性はランゲルハンス細胞のマーカーとして用いられてきた。ケラチノサイトは、剪断力や伸縮等の物理的刺激及び化学的刺激によって細胞外ATPを放出するところ、放出された細胞外ATPはシグナル伝達物質となり、アポトーシスや皮膚の炎症を引き起こす。そこで、CD39を発現するランゲルハンス細胞は、細胞外ATPが蓄積しないように、CD39により細胞外ATPを分解することで、炎症反応の抑制及び免疫応答機能の調節を行っている(非特許文献2)。また、亜鉛摂取量が不足することによりランゲルハンス細胞の数が減少すると、CD39も減少して細胞外ATPの分解が十分になされなくなり、細胞外ATPが蓄積して皮膚の炎症が生じることが報告されている(非特許文献3)。
そこで、炎症の抑制及びSASP等による過剰免疫応答の抑制を図るために、CD39の発現量を増加させること、又はランゲルハンス細胞の減少抑制若しくは活性化についての研究が進められている。特許文献1では、CD39遺伝子発現促進剤として、カルボキシメチル・ベータグルカン・ナトリウム、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)ランダム共重合体ジメチルエーテル及びローズ水の3成分を含むCD39遺伝子発現促進剤が提案されている。また、特許文献2では、クジン、エンジュ、オウバク、カンゾウ、シコン、テンチャ又はトウキから選択される植物抽出物を有効成分とするランゲルハンス細胞減少抑制剤が提案され、特許文献3では、アミガサタケ由来のノイラミン酸誘導体がランゲルハンス細胞活性化作用を呈することが記載されている。
他方、ダルマギク(Aster spathulifolius)は、日本原産のキク科シオン属の多年草である。ダルマギクは海岸の岩場等に自生する野生植物であるが、花色が淡紫色と美しく、耐寒性及び耐暑性があり丈夫な植物であるため、園芸的にも栽培されている。葉は食用とすることができるが、薬用植物としての利用にあたっては、特許文献4において、ダルマギクの全草が糖尿病、膀胱炎に使用されるほか、ダルマギクの地上部抽出物が抗肥満及び脂質状態改善に用いられることが報告されている。
特表2017−511790号公報 特開2000−239144号公報 特開2017−140000号公報 特表2008−533196号公報
Shin Yoshimoto et al., "Obesity-induced gut microbial metabolite promotes liver cancer through senescence secretome", Nature, Vol. 499, 2013年, p.97-101 Norikatsu Mizumoto et al., "CD39 is the dominant Langerhans cell-associated ecto-NTPDase: Modulatory roles in inflammation and immune responsiveness", Nature Medicine, Vol. 8, No. 4, 2002年, p.358-365 Tatsuyoshi Kawamura et al., "Severe dermatitis with loss of epidermal Langerhans cells in human and mouse zinc deficiency", The Journal of Clinical Investigation, Vol. 122, No. 2, 2012年, p.722-732
しかしながら、特許文献1で報告されたCD39遺伝子発現促進剤には、化学合成により製造された成分が含まれており、それゆえ、人体に対して高い安全性を有する天然由来成分、例えば植物抽出物からなるCD39遺伝子発現促進剤が依然として期待されている。また、特許文献2、3には、それぞれランゲルハンス細胞の減少抑制作用又は活性化作用を有する特定の植物抽出物が記載されているものの、CD39の発現促進に関する作用は検討されていない。
そして、特許文献4には、ダルマギク抽出物を抗肥満及び脂質状態改善のために用いることは記載されているが、ダルマギクをCD39の増加、すなわち、CD39の発現促進のために用いることについての検討はこれまでなされておらず、その有効性はまったく不明であった。
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、植物抽出物等の天然由来成分からなる、新規なCD39発現促進剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、新規なCD39発現促進剤を含む皮膚外用剤及び化粧料を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、植物抽出物等の天然由来成分からなる、細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤を提供することにある。
本発明者らは、ランゲルハンス様細胞として学術的に広く利用され、CD39を発現するTHP−1細胞を用い、200種を超える植物から得た植物抽出物それぞれについて、CD39発現に与える影響を研究したところ、ダルマギク抽出物がCD39発現量を増加させる作用を有することを見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するため、本発明のCD39発現促進剤は、ダルマギク(Aster spathulifolius)抽出物を含有する。ダルマギク抽出物を投与することにより、対象細胞でのCD39発現が促進され、CD39を増加させることができる。それゆえ、外部刺激や加齢などによって放出された細胞外ATPの分解が促進され、炎症及びSASP等による過剰免疫応答が抑制される。
また、本発明のCD39発現促進剤は、ダルマギク抽出物が、ダルマギクの葉部、茎部又は花部由来の抽出物であることも好ましい。これにより、CD39発現促進剤として好適なダルマギクの抽出物が選択される。
また、本発明のCD39発現促進剤は、ダルマギク抽出物が、ダルマギクの葉部又は茎部の含水アルコール抽出物であることも好ましい。これにより、高いCD39発現促進作用を有するダルマギクの抽出物が選択される。
また、本発明の皮膚外用剤は、上述したダルマギク抽出物をCD39発現促進剤として含んでいる。これにより、皮膚等の炎症の抑制及び過剰免疫応答の抑制を図ることのできる皮膚外用剤が得られる。
また、本発明の化粧料は、上述したCD39発現促進剤をCD39発現促進剤として含んでいる。これにより、皮膚等の炎症の抑制作用及び過剰免疫応答の抑制作用を有する化粧料が得られる。
また、本発明の炎症抑制剤は、ダルマギク抽出物を含有し、細胞外ATPにより生じる炎症を抑制する。ダルマギク抽出物を投与することにより、対象細胞でのCD39発現が促進されてCD39が増加するため、細胞外ATPが十分に分解され、細胞外ATPに起因する炎症を抑制することができる。
本発明によれば、以下のような優れた効果を有するCD39発現促進剤、皮膚外用剤、化粧料及び細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤を提供することができる。
(1)対象細胞でのCD39発現量を増加させることができる。
(2)発現促進されたCD39によって細胞外ATPが十分に分解されるため、細胞外ATPに起因する炎症反応が抑制される。
(3)食用可能なダルマギクの抽出物を有効成分とするものであるため、人体に対する安全性が高い。
(4)皮膚炎症の抑制作用及び過剰免疫応答の抑制作用を有する皮膚外用剤及び化粧料が得られる。
実施例3における、ダルマギクの葉部及び茎部抽出液を添加したTHP−1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。 実施例3における、ダルマギクの花部抽出液を添加したTHP−1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。 比較例1における、クジャクソウ抽出液を添加したTHP−1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。黒抜きで示されるP4は試験で使用したTHP−1細胞の継代数が4であることを示し、ハッチングで示されるP19はTHP−1細胞の継代数が19であることを示す。 比較例2における、他のキク科植物の抽出液を添加したTHP−1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。
以下、本発明のダルマギク抽出物を含有するCD39発現促進剤、これを含む皮膚外用剤及び化粧料、並びにダルマギク抽出物を含有する細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤について説明する。
本発明におけるCD39とは、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1(Ectonucleoside triphosphate diphosphohydrolase 1)、ENTPD1又はNTPDase1等と呼ばれ、基質として主にATP・ADPをAMPに分解するエクトヌクレオチダーゼである。CD39はそのN末端とC末端に膜貫通ドメインを有する膜タンパク質であり、細胞外表面に触媒作用部位を有している。CD39はB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞及び血管内皮細胞等に発現しており、皮膚を構成する細胞では、ランゲルハンス細胞の他、メラノサイトにも発現する。
本発明におけるCD39発現促進とは、CD39遺伝子の発現促進又はCD39(タンパク質)の発現促進のことをいい、本発明のCD39発現促進剤を添加又は投与されない状態のコントロールと比較して、CD39遺伝子又はCD39(タンパク質)の発現が亢進していることを意味する。より具体的には、CD39遺伝子の発現レベルがコントロールの1.2倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましく、さらには1.6倍以上であることが好ましく、1.8倍以上であることが特に好ましい。CD39遺伝子の発現レベルは、例えば、リアルタイムPCR(QPCR)やマイクロアレイ等の公知の方法で測定でき、CD39の発現レベルは、例えば、免疫染色、ウエスタンブロッティング等の公知の方法で測定され得る。
また、本発明で用いられるダルマギクとは、学名をAster spathulifoliusといい、キク科シオン属の植物である。海岸の岩場等に見られ、日本の本州西部及び九州地方、朝鮮半島などに分布するほか、園芸的にも栽培されている。本発明においては、産地や栽培環境は特に限定されず、あらゆる産地及び栽培環境のダルマギクを用いることができる。
本発明におけるダルマギク抽出物について説明する。本発明におけるダルマギク抽出物とは、ダルマギクの植物体に抽出溶媒を加えて抽出処理を施すことによって得られた抽出物をいう。ダルマギクの植物体としては、全草を用いるほか、ダルマギクの花部、葉部、茎部、根部、幼芽及び種子等のうちの1つ又は複数の部位を選択して用いることも可能である。CD39発現促進効果の観点から、ダルマギクの花部、葉部及び茎部からなる群から選択された1つ以上の部位を用いることが好ましく、ダルマギクの葉部及び/又は茎部を用いることがより好ましい。
抽出処理は、採取された状態、すなわち、生の状態のダルマギクの植物体、又は乾燥処理が施された乾燥状態の植物体に対して行われるが、抽出効率の向上を図るため、又は取り扱いを容易とするために種々の前処理が施された植物体に対して抽出処理を施すことも可能である。前処理としては、特に限定されないが、細切処理、粉砕処理、乾燥処理、圧搾処理又は発酵処理等が挙げられ、これら前処理が施されたダルマギクの植物体に抽出処理を施し、ダルマギク抽出物を得てもよい。
抽出溶媒としては、ダルマギクからCD39発現促進作用を有する成分を抽出できるものであれば特に限定されず、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール又は2−ブタノール等の低級1価アルコール、及びグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール又は1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール等)、酢酸エチル又は酢酸ブチル等の低級エステル、ベンゼン、ヘキサン又はペンタン等の液状炭化水素、アセトン又はメチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジプロピルエーテル等のエーテル類、及びアセトニトリル等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組合わせた混合溶媒を用いることも可能である。このうち、人体への安全性及び抽出効率等の観点から、抽出溶媒としては、水又は含水アルコールが好適に用いられ、アルコールとしては、エチルアルコール又は1,3−ブチレングリコールが好適に選択される。抽出溶媒として含水アルコールを選択した際のアルコール濃度としては、1〜90w/w%が好ましく、20〜70w/w%がより好ましく、40〜60w/w%が特に好ましい。また、抽出溶媒には、ダルマギクからの有用成分の抽出を妨げない範囲において、pH調整剤や防腐剤(フェノキシエタノール又はパラオキシ安息香酸エステル類等)、酵素、抽出助剤等の他の成分を含有させることも可能である。
ダルマギクの抽出方法としては、抽出溶媒にダルマギクの植物体を加えて浸漬させ、抽出することが好ましい。例えば、ダルマギクの植物体を含水率10%未満の乾燥破砕物とした場合には、植物体1重量部に対し、抽出溶媒を2〜200重量部用いることが好ましく、2〜100重量部用いることがより好ましく、5〜50重量部用いることが特に好ましい。また、抽出方法としては、室温(1〜30℃)での抽出、加温抽出、熱水抽出、加圧熱水抽出又は亜臨界抽出等のいずれの方法でも行うことが可能である。一例として、含水アルコールを用いた場合には1〜30℃の室温下、好ましくは10〜30℃、より好ましくは20〜30℃で抽出することができる。また、抽出時間は、抽出方法、植物体の状態、抽出溶媒の種類又は抽出温度等に応じて種々設定されるが、含水アルコールを用いて室温での抽出を行う場合には、1時間〜2週間程度とすることが好ましく、1日〜10日間程度とすることがより好ましく、2日〜8日間程度とすることが特に好ましい。
上述した抽出処理後、残渣をデカンテーション、遠心分離又はろ過等により取り除くことによりダルマギク抽出物が得られる。本発明のダルマギク抽出物としては、抽出処理により得られた抽出液そのもののほか、この抽出液を減圧濃縮等の濃縮処理により濃縮液としたもの、凍結乾燥処理等の乾燥処理を施して、固形状・粉末状としたものなども含まれる。また、上述した抽出処理後に回収したろ液を−15℃〜30℃の温度条件下にて更に数日から1週間程放置して熟成させ、再びろ過を行って回収したろ液をダルマギク抽出物として用いてもよい。
本発明のCD39発現促進剤は、上述したダルマギク抽出物を有効成分として含むものであって、CD39を発現する細胞において、CD39発現を促進し、CD39発現量を増加させる作用を有する。CD39の発現が促進されることにより、対象細胞でのCD39が増加するため、細胞外ATPの分解が促進され、細胞外ATPの蓄積も抑制される。その結果、細胞外ATPに起因する炎症を抑制でき、SASPの発生も防ぐことができるため、過剰免疫応答も抑制される。特に、CD39は皮膚免疫細胞であるランゲルハンス細胞に発現し、細胞外ATPを分解して炎症誘導シグナルの伝達を阻害する作用を有している。本発明のCD39発現促進剤をランゲルハンス細胞に付与することにより、ランゲルハンス細胞におけるCD39の発現量が増加するため、皮膚の炎症が抑制又は鎮静され、皮膚における過剰免疫応答も抑制される。
本発明のCD39発現促進剤は、皮膚の炎症を抑制し、過剰免疫応答を抑制すると共に、皮膚を安定した状態に保つための皮膚外用剤として用いることができる。皮膚に付与することにより、ランゲルハンス細胞におけるCD39発現量が増加するため、外部刺激や老化等によって放出された細胞外ATPの分解が促進される。それゆえ、細胞外ATPによって生じる皮膚の炎症及びSASP等による過剰免疫応答が抑制され、皮膚を安定した状態に保つことができる。
また、本発明のCD39発現促進剤は、皮膚炎症の抑制作用、過剰免疫応答の抑制作用及び皮膚を健やかに保つ作用を有する化粧料として用いることができる。皮膚に付与することにより、ランゲルハンス細胞におけるCD39発現量が増加するため、外部刺激や老化等によって放出された細胞外ATPの分解が促進される。それゆえ、皮膚の炎症や肌あれ、痒み、カブレ等が抑制され、皮膚を健やかな状態に保つことができる。なお、本発明の化粧料は、美容目的で皮膚の老化を予防又は改善するためにも好ましく適用され得る。
本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料の投与量又は添加量は、目標とする炎症抑制効果、投与方法、年齢などによって変化するので一概には規定できないが、ダルマギク抽出物の乾燥固形分換算で、表皮単位面積(1cm)当たり、0.0002〜1340μg/cm・dayがとすることが好ましく、0.0002〜270μg/cm・dayとすることがより好ましい。
本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料の剤形は、特に限定されず、例えば、低粘度液体、ローション等の液剤、乳液、ゲル、ペースト、クリーム、フォーム、パック、軟膏、粉剤、エアゾール又は貼付剤等が挙げられる。なお、本発明に係るCD39発現促進剤は、化粧品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも適用することができる。具体的な製品としては、特に限定されないが、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、美容液、化粧パック、化粧洗浄料、石鹸、ヘアケア剤、浴用剤又はメーキャップ化粧料等が挙げられる。
本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料中において、ダルマギク抽出物の配合量は、乾燥固形分として好ましくは0.00001〜10質量%であり、より好ましくは0.00001〜2質量%である。ダルマギク抽出物の配合量をこの範囲内とすることにより、ダルマギク抽出物を安定に配合することができ、皮膚への安全性も高く、高い薬効ないし美容効果を発揮することができる。
また、本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料には、本発明の作用効果を損なわない範囲において、通常用いられる各種の薬効成分、例えば、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防御剤、血行促進剤及び抗酸化剤等から選ばれる薬効剤の一種または二種以上と併用することができる。それにより、本発明の効果をより高めることが可能である。
保湿剤としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、アラニン、アルギニン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、キシリトール、グリシン、グルコース、シスチン、システイン、セリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、POEメチルグルコシド、マルチトール、マルトース、マンニトール、リシン、ハチミツ、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ムコイチン硫酸、カロニン酸、トラネキサム酸、ベタイン、トレハロース、キトサン、尿素、セラミド、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、アシタバ抽出物、アスパラガス抽出物、イザヨイバラ抽出物、クインスシード抽出物、グアバ葉抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物及びメリロート抽出物等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
また、美白剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸塩、L−アスコルビン酸エチル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、DL−α−トコフェロール−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム等のビタミンC類、胎盤抽出物、コウジ酸、エラグ酸、カミツレ抽出物、火棘エキス、レンシュエキス、トコトリエノール、グルタチオン、アルブチン、トラネキサム酸、ウワウルシ抽出物、ユキノシタ抽出物、アセロラ抽出物、エイジツ抽出物、フェルラ酸、アデノシンリン酸二ナトリウム、リノール酸、4−n−ブチルレゾルシン、4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール、5,5’−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオール、4−メトキシサリチル酸カリウム塩、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノベンジルエーテル、パンテテイン−s−スルホン酸カルシウム及び油溶性カンゾウ抽出物等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
抗炎症剤としては、例えば、アミノカプロン酸、アラントイン、インドメタシン、ビサボロール、サポニン、塩化リゾチウム、アズレン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体、ヒノキチオール、感光素、トラネキサム酸又はその誘導体、酸化亜鉛、ウコン抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタン抽出物、レイシ抽出物及びワレモコウ抽出物等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
細胞賦活剤としては、例えば、アミノ酪酸、イチョウ抽出物、ウイキョウ抽出物、オランダカラシ抽出物、ニンジン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、サフラン抽出物、ダイズ抽出物、タイソウ抽出物、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸又はその誘導体、ビオチン、レチノール、ロイシン、感光素、リボフラビン又はその誘導体、ピリドキシン又はその誘導体等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
紫外線防御剤としては、例えば、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、メトキシケイ皮酸メチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸(PABA)、パラアミノ安息香酸エチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、エチルヘキシルトリアゾン、ドロメトリゾール、ドロメトリゾールトリシロキサン、4−メトキシ−4’−tert−ブチルジベンゾイルメタン、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン及び酸化亜鉛等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
血行促進剤としては、例えば、サンショウ抽出物、ショウキョウ抽出物、センキュウ抽出物、チンピ抽出物、トウガラシ抽出物、トウキ抽出物、ボタン抽出物、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、アセチルコリン、セファランチン、γ−オリザノール等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
抗酸化剤としては、例えば、アスタキサンチン、β−カロテン、γ−オリザノール、カイネチン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、フラボノイド、SOD、カタラーゼ、フラーレン、フィチン酸、フェルラ酸、クロロゲン酸、没食子酸プロピル、緑茶抽出物、ローズマリー抽出物、ローズヒップ抽出物、ショウブ抽出物、スギナ抽出物、ハマメリス抽出物、パセリ抽出物、ビワ葉抽出物、グレープフルーツ抽出物、シモツケソウ抽出物、ライチ抽出物、ヨモギ抽出物、モモ葉抽出物、マンゴウ抽出物、ボタンピ抽出物、マツ樹皮抽出物、白金、ユビキノン及びα−リポ酸等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
また、本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料には、上述した成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、皮膚外用剤及び化粧料に通常用いられる成分である水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、ビタミン類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素又はキレート剤等の成分を適宜配合することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
1.ダルマギク抽出物の調製(1)
採取後、乾燥処理されたダルマギク植物体から葉部及び茎部を回収し、粉砕機で粉砕した。この粉砕物100gを2リットル容量のガラス容器に入れ、更に50w/w%含水エタノール溶液1000gを加えて混合し、ダルマギクの葉部及び茎部粉砕物を含水エタノール溶液に浸漬させた状態で密閉した。約20〜25℃の室温にて7日間静置した後、ろ過して残渣を取り除き、ダルマギクの葉部及び茎部抽出液を得た。得られた抽出液1g当たりの乾燥固形分量は27.7mgであり、抽出液1mL当たりの乾燥固形分量は24.8mgであった。
[実施例2]
2.ダルマギク抽出物の調製(2)
採取後、乾燥処理されたダルマギク植物体から花部のみを回収し、粉砕機で粉砕した。この粉砕物100gを2リットル容量のガラス容器に入れ、更に50w/w%含水エタノール溶液1000gを加えて混合し、ダルマギクの葉部及び茎部粉砕物を含水エタノール溶液に浸漬させた。約20〜25℃の室温にて7日間静置した後、ろ過して残渣を取り除き、ダルマギクの花部抽出液を得た。得られた抽出液1g当たりの乾燥固形分量は31.1mgであり、抽出液1mL当たりの乾燥固形分量は27.8mgであった。
[実施例3]
3.ランゲルハンス細胞様細胞におけるCD39発現促進作用の検討
ランゲルハンス細胞は、試験利用できる状態で、ヒト皮膚組織から分離すること及び長時間培養することが困難な細胞である。そのため、ランゲルハンス細胞の代替として、ランゲルハンス様細胞であるTHP−1細胞が、皮膚感作アッセイ等のランゲルハンス細胞に関する試験において多く用いられている(Corinna Tietz et al., “Sensitization Assays: Monocyte-Derived Dendritic Cells Versus a Monocytic Cell Line (THP-1)”, Journal of Toxicology and Environmental Health, Part A, Vol. 71, 2008年, p.965-968、Yuko Nukada et al., “The relationship between CD86 and CD54 protein expression and cytotoxicity following stimulation with contact allergen in THP-1 cells”, Journal of Toxicological Sciences, Vol.36, No.3, 2011年, p. 313-324、Jenny Hennen et al., “Cross talk between keratinocytes and dendritic cells: impact on the prediction of sensitization”, Toxicological Sciences, Vol.123, No.2, 2011年, p. 501-510、Elodie Clouet et al., “The THP-1 cell toolbox: a new concept integrating the key events of skin sensitization”, Archives of Toxicology, Vol.93, No.4, 2019年, p. 941-951、及びNathalie Lambrechts et al., “THP-1 monocytes but not macrophages as a potential alternative for CD34+ dendritic cells to identify chemical skin sensitizers”, Toxicology and Applied Pharmacology, Vol.236, No.2, 2009年, p. 221-230等)。そして、上述した特許文献1においても、ランゲルハンス細胞の代替としてTHP−1細胞が用いられている。そこで、本実施例においても、ランゲルハンス細胞様細胞であり、CD39を発現するTHP−1細胞を用いてCD39発現促進効果を調べた。
24ウェル細胞培養プレートの各ウェル(3.34mL容量/ウェル)に約10万個のTHP−1細胞(ATCC(登録商標)番号:TIB−202)をそれぞれ播種し、10%FBS含有RPMI−1640培地を998μL添加して、24時間培養した。その後、以下表1に示す配合量にて実施例1で調製したダルマギクの葉部及び茎部抽出液と50w/w%含水エタノールとを混合して2μLずつウェルに添加し、培地におけるダルマギク抽出液の濃度を0%(対照)、0.05%、0.1%又は0.2%とした。添加後、24時間培養を行った。試験は各濃度についてN=4で行った。
Figure 0006887649
培養終了後、各ウェルからTHP−1細胞を回収し、トータルRNA精製キット(FastGene RNA精製キット、日本ジェネティクス株式会社製品)を用いてトータルRNAを得た。次に、cDNA合成キット(ReverTra Ace、東洋紡株式会社製品)を用いて、各トータルRNAからcDNAを合成した。このcDNAを用い、リアルタイムPCR(QPCR)によりCD39の発現量を測定した。
QPCRは、市販のQPCR試薬キット(PrimeTime(登録商標)Gene Expression Master Mix、Integrated DNA Technologies株式会社製品)とQPCR測定装置(LightCycler(登録商標)96、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製品)を用いて行った。QPCR用CD39プライマー及びプローブは下記表2に示す配列番号1〜3のプライマー及びプローブを用いた。他方、ハウスキーピング遺伝子であるヒト グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を内部標準として選択し、上述したCD39プライマー及びプローブに替えて下記表2に示す配列番号4〜6のプライマー及びプローブを用いてQPCRを行った。いずれのプローブも3´末端に末端クエンチャーとしてIBFQが付加され、5´末端から9塩基−10塩基の間に中間クエンチャーとしてZENが付加されたダブルクエンチャーシステムによるプローブを使用した(Integrated DNA Technologies株式会社製品)。なお、CD39用プローブ(配列番号3)の5´末端に付加された蛍光色素はFAMであり、GAPDH用プローブ(配列番号6)の5´末端に付加された蛍光色素はHEXであった。内部標準であるGAPDHの発現量から相対発現量を算出し、CD39の発現量とした。結果を図1に示す。なお、図1では、抽出液を添加していない対照(濃度0%)のTHP−1細胞におけるCD39発現量を1.00としたときの値を示している。
Figure 0006887649
ダルマギク抽出液として、実施例2で調製したダルマギクの花部抽出液を用いたほかは、上述と同様の材料及び方法にて、CD39の発現量を測定した。この結果を図2に示す。なお、図2においても、抽出液を添加していない対照(濃度0%)のTHP−1細胞におけるCD39発現量を1.00としたときの値を示している。
図1に示すように、ダルマギクの葉部及び茎部抽出液をランゲルハンス様細胞であるTHP−1細胞に添加したところ、抽出液の添加濃度に比例してCD39の発現量が増加することが明らかとなった。ダルマギクの葉部及び茎部抽出液を添加した場合、未添加の対照(0%)と比較して、抽出液濃度0.05%では1.24倍、0.1%では1.65倍、0.2%では1.90倍ものCD39発現量の増加が見られた(p<0.01)。
また、図2に示すように、ダルマギクの花部抽出液をTHP−1細胞に添加した際においても、抽出液の添加濃度に比例してCD39の発現量が増加した。ダルマギクの花部抽出液を添加した場合、未添加の対照(0%)と比較して、抽出液濃度0.05%では1.16倍、0.1%では1.44倍、0.2%では1.70倍ものCD39発現量の増加が見られた(p<0.01)。
[比較例1]
4.クジャクソウ抽出物のCD39発現促進作用の検討
ダルマギク(Aster spathulifolius)と同じシオン属(Aster)であるクジャクソウ(Aster hybrids)を用いて、クジャクソウ抽出物を調製し、そのCD39発現促進効果を調べた。
採取後、乾燥処理されたクジャクソウ植物体から葉部、茎部及び花部を回収し、粉砕機で粉砕した。この粉砕物20gを0.5リットル容量のガラス容器に入れ、更に50w/w%含水エタノール溶液200gを加えて混合し、含水エタノール溶液に浸漬させた状態で密閉した。約20〜25℃の室温にて4日間静置した後、ろ過して残渣を取り除きクジャクソウ抽出液を得た。
24ウェル細胞培養プレートの各ウェル(3.34mL容量/ウェル)に約10万個のTHP−1細胞(TIB−202)をそれぞれ播種し、10%FBS含有RPMI−1640培地を998μL添加して、24時間培養した。この時点におけるTHP−1細胞の継代数は4(P4)であった。その後、50w/w%含水エタノール1μLと、調製したクジャクソウ抽出液1μL又は実施例1で調製したダルマギクの葉部及び茎部抽出液1μLとの混合液2μLをウェルに添加し、24時間培養を行った。培地における抽出液濃度はいずれも0.1%である。他方、対照として、50w/w%含水エタノールのみを2μLウェルに添加し、24時間培養を行った。試験はN=2で行った。培養終了後、各ウェルから細胞を回収し、実施例3と同様の材料及び方法にて、リアルタイムPCRを行ってCD39の発現量を測定した。
さらに、試験に用いたTHP−1細胞の継代数を19(P19)とした以外は、上述と同様の材料及び方法にて、CD39の発現量を測定した。これらの結果を図3に示す。なお、継代数P4又はP19のいずれにおいても、対照(抽出液未添加)のTHP−1細胞におけるCD39発現量を1.00としたときの値を示している。
図3に示すように、THP−1細胞の継代数が4の場合、未添加の対照(0%)と比較して、ダルマギクの葉部及び茎部抽出液(0.1%)については1.60倍のCD39発現量の増加がみられたが、クジャクソウ抽出液(0.1%)については0.87倍とCD39発現量の増加はみられなかった。また、THP−1細胞の継代数が19と長期継代された細胞を用いた場合においても、未添加の対照(0%)と比較して、ダルマギクの葉部及び茎部抽出液(0.1%)については1.49倍のCD39発現量の増加がみられたが、クジャクソウ抽出液(0.1%)については0.97倍とCD39発現量の増加はみられなかった。
このように、同じキク科シオン属の植物であってもCD39発現促進作用は共通しておらず、ダルマギク抽出物のみにCD39発現促進作用がみられることがわかった。さらに、本比較例では、継代数が異なる2種類のTHP−1細胞を用い、継代数19と長期間に亘り培養継続されたTHP−1細胞を用いた試験を行ったが、このように長期間培養された細胞を用いた場合においても、ダルマギク抽出物のCD39発現促進効果は高く維持されることがわかった。
[比較例2]
5.他のキク科植物抽出物のCD39発現促進作用の検討
ダルマギクはキク科シオン属に分類されるところ、下記表3に示す他のキク科植物の抽出物についてもCD39発現促進効果を調べた。試験は実施例3と同様の方法で行い、各植物抽出液の添加濃度は0.1%とした(50w/w%含水エタノール1μLと各植物抽出液1μLの混合液2μLをウェルに添加)。結果を図4のグラフに示す。なお、いずれの抽出液においても、対照(抽出液未添加)のTHP−1細胞におけるCD39発現量を1.00としたときの値を示しており、グラフには、比較のために実施例1で調製したダルマギクの葉部及び茎部抽出液のデータを示している。
Figure 0006887649
図4に示すように、本比較例で試験を行ったキク科植物抽出液については、CD39発現量の増加はみられず、CD39発現促進効果は確認されなかった。このように、同じキク科物であってもCD39発現促進作用は共通しておらず、ダルマギク抽出物のみにCD39発現促進作用がみられることがわかった。
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
本発明のCD39発現促進剤は、外部刺激や加齢などによって生じる炎症を抑制し、過剰免疫応答を抑制する作用を有するため、医療や美容の分野において幅広く利用されるものである。

Claims (6)

  1. ダルマギク(Aster spathulifolius)抽出物を含有することを特徴とする皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤(ただし、NF−κBシグナル伝達経路により生じる炎症の抗炎症用途を除く)
  2. 前記ダルマギク抽出物が、ダルマギクの葉部、茎部又は花部由来の抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤(ただし、NF−κBシグナル伝達経路により生じる炎症の抗炎症用途を除く)
  3. 前記ダルマギク抽出物が、ダルマギクの葉部又は茎部の含水アルコール抽出物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤(ただし、NF−κBシグナル伝達経路により生じる炎症の抗炎症用途を除く)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のCD39発現促進剤を含むことを特徴とする皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現を促進するための皮膚外用剤(ただし、NF−κBシグナル伝達経路により生じる炎症の抗炎症用途を除く)
  5. ダルマギク(Aster spathulifolius)抽出物を含有し、
    前記ダルマギク抽出物が、ダルマギクの葉部、茎部又は花部の抽出物であることを特徴とする皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進用化粧料(ただし、NF−κBシグナル伝達経路により生じる炎症の抗炎症用途を除く)。
  6. 前記ダルマギク抽出物が、ダルマギクの葉部又は茎部の含水アルコール抽出物であることを特徴とする請求項5に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進用化粧料(ただし、NF−κBシグナル伝達経路により生じる炎症の抗炎症用途を除く)。
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