以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下で説明する図2は、わかり易くするため可動ユニット等の一部を省略し簡略化して図示している。
[実施形態]
図1、図2に示す本実施形態に係る車両用表示装置1は、車両に適用され、車載メータを構成するものである。車両用表示装置1は、例えば、車両のダッシュボードに設けられたインストルメントパネル内に搭載される。車両用表示装置1は、車両の運転に供される情報として当該車両に関する種々の可視情報を表示する。以下、各図を参照して車両用表示装置1の構成について詳細に説明する。
なお、図1等に示す車両用表示装置1の第1方向としての奥行き方向Xとは、典型的には、この車両用表示装置1が適用される車両の前後方向、さらに言えば、車両の全長方向に相当する。また、車両用表示装置1の奥行き方向Xの前面側とは、奥行き方向Xにおいて車両の運転席と対面する側であり、典型的には、当該運転席に座った運転者によって視認される側である。一方、車両用表示装置1の奥行き方向Xの背面側とは、奥行き方向Xにおいて前面側とは反対側であり、典型的には、インストルメントパネルの内部に収容される側である。また、車両用表示装置1の第2方向としての幅方向Yとは、典型的には、この車両用表示装置1が適用される車両の車幅方向、さらに言えば、車両の全幅方向に相当する。以下の説明では、車両用表示装置1の幅方向Yにおいて、当該車両用表示装置1の前面に向かって左側を幅方向Y左側、向かって右側を幅方向Y右側という場合がある。また、車両用表示装置1の第3方向としての高さ方向Zとは、典型的には、この車両用表示装置1が適用される車両の高さ方向、さらに言えば、車両の車高方向に相当する。高さ方向Zは、典型的には、車両が水平面に位置した状態で鉛直方向に沿った方向である。以下の説明では、車両用表示装置1の高さ方向Zにおいて、鉛直方向上側を高さ方向Z上側、鉛直方向下側を高さ方向Z下側という場合がある。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、車両用表示装置1の各構成が相互に組み付けられ当該車両用表示装置1がインストルメントパネルに組み付けられた状態での方向を表す。
車両用表示装置1は、筐体2と、照明対象物3と、光源4と、表示部5と、虚像表示部材6と、背面板7とを備える。車両用表示装置1は、筐体2内に各部が収容される。そして、車両用表示装置1は、表示部5から虚像表示部材6に向けて表示光を出射し、当該虚像表示部材6で反射した表示光による虚像6Aによって運転者等に種々の視覚情報を提示するものである。このとき、車両用表示装置1は、例えば、虚像表示部材6において、光源4によって照らされた照明対象物3に対して表示光による虚像6Aを重畳させて表示させる。また、本実施形態の車両用表示装置1は、照明対象物3と背面板7とが照明対象物3を可動させる可動ユニット8の一部を構成する。
具体的には、筐体2は、車両用表示装置1の各部を収容すると共に、予め定められた目視位置(アイポイント)EP側に開口した目視側開口部25を有するものである。筐体2は、例えば、絶縁性の合成樹脂によって形成される。筐体2は、例えば、筐体本体、背面カバー、見返し、上面フード等の複数の部材が組み合わせられることで中空箱状に形成される。筐体2は、内部の収容空間部21に、光源4、表示部5、虚像表示部材6、背面板7、可動ユニット8(照明対象物3、背面板7)等を収容する。筐体2は、この他、収容空間部21に制御回路や駆動回路等、車両用表示装置1の各部を制御、駆動するための種々の部品も収容する。ここでは、収容空間部21は、見返し壁部22によって相互に区画された第1空間部23、及び、第2空間部24を含む。見返し壁部22は、奥行き方向Xに沿って延在し、高さ方向Zに対して収容空間部21を第1空間部23と第2空間部24とに区画する。第1空間部23は、見返し壁部22を境界として高さ方向Zの下側に位置し、第2空間部24は、見返し壁部22を境界として高さ方向Zの上側に位置する。第1空間部23、第2空間部24は、共に奥行き方向Xの背面側が閉塞している。そして、第2空間部24は、奥行き方向Xの前面側も閉塞している。一方、第1空間部23は、筐体2に形成された目視側開口部25を介して奥行き方向Xの前面側に向けて開口している。言い換えれば、目視側開口部25は、奥行き方向Xの前面側にて筐体2の内外を連通し、第1空間部23は、当該目視側開口部25の奥行き方向Xの背面側に位置する。第1空間部23は、奥行き方向Xの前面側、ここでは、目視位置EPから目視側開口部25を介して直接的に目視可能な位置に照明対象物3、虚像表示部材6等を収容する。一方、第2空間部24は、当該目視位置EPから直接的に目視不能な位置に表示部5を収容する。そして、筐体2は、第1空間部23と第2空間部24との間に介在する見返し壁部22に連通開口部26が形成されている。連通開口部26は、見返し壁部22を貫通し第1空間部23と第2空間部24とを連通している。
ここで、上述の目視位置EPは、典型的には、車両におけるいわゆるアイレンジ内に位置するものとして予め想定される。ここで、アイレンジとは、「自動車の運転者アイレンジ」であり、車両に応じて予め定まる運転者の視点が位置する領域に相当する。アイレンジは、典型的には、車両において運転者の目の位置の分布を統計的に表したものであり、例えば、運転者が運転席に座った状態で所定割合(例えば、95%)の運転者の目の位置が含まれる領域に相当する。
照明対象物3は、光源4が出射した照明光によって照らされる対象物である。照明対象物3は、虚像表示部材6と共に筐体2の第1空間部23内に収容されるものである。照明対象物3は、第1空間部23内において、目視位置EPから目視側開口部25を介して直接的に目視可能な位置に、種々の支持構造を介して支持される。ここでは、照明対象物3は、第1空間部23内において、後述する虚像表示部材6の目視位置EP側とは反対側、すなわち、虚像表示部材6の奥行き方向Xの背面側に設けられる。照明対象物3は、実体を伴う構造物である。照明対象物3は、例えば、種々の加飾を施すための加飾部材、指針によって種々の計測値を指し示すアナログ式計器等である。ここでは、照明対象物3は、一例として、略円環状に形成された加飾リングであるものとして説明するがこれに限らない。照明対象物3は、例えば、略円弧状に形成された加飾体であってもよい。照明対象物3は、例えば、金属材料、あるいは、金属調の表面塗装が施された樹脂成形品によって構成される。本実施形態の照明対象物3は、筐体2の第1空間部23内において、複数の固定位置の間で変位可能である。ここでは、照明対象物3は、上述したように照明対象物3を可動させる可動ユニット8の一部を構成する。当該可動ユニット8の構成については、後で詳細に説明する。
光源4は、照明対象物3に向けて照明光を照射し当該照明対象物3を照らすための加飾用光源である。光源4は、第1空間部23内において、照明対象物3に向けて照明光を照射可能な位置に、種々の支持構造を介して支持される。光源4は、例えば、第1空間部23内において、照明対象物3の高さ方向Zの上側に設けられる。光源4は、高さ方向Zに沿って下側の照明対象物3に向けて照明光を照射する。ここでは、光源4による照明光の照射方向(典型的には光軸方向)L1は、高さ方向Zに沿いつつ、当該、高さ方向Zに対してやや傾きを有する方向となっている。光源4は、例えば、幅方向Yに沿って間隔をあけて複数設けられる。光源4は、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子等によって構成されるがこれに限らない。車両用表示装置1は、照明対象物3を加飾体として視認させる際に光源4から照明対象物3に向けて照明光を照射することで、当該光源4によって照明対象物3を照らすことができる。
表示部5は、車両に関する情報を表す表示光を出射可能なものである。表示部5は、表示光を出射するデバイスとして、例えば、薄型の液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等を用いることができる。表示部5は、略矩形状に形成された出射面5aから後述する虚像表示部材6に向けて表示光を出射する。表示部5が出射する表示光は、虚像表示部材6に表示させる虚像6Aを表す表示光であり、少なくとも可視光域成分の光を含む。ここで、可視光域成分の光とは、人が視認できる可視光領域の波長成分の光であり、例えば、波長が360〜830nmの範囲の成分の光である。表示部5は、第2空間部24内に収容される。表示部5は、第2空間部24内において、目視位置EPから直接的に目視不能な位置に、種々の支持構造を介して支持される。表示部5は、出射面5aが見返し壁部22の連通開口部26と対向して第1空間部23側を向く位置関係で、第2空間部24内に支持される。表示部5は、第2空間部24側に位置する出射面5aから、当該連通開口部26を介して、第1空間部23側に位置する虚像表示部材6に向けて表示光を出射する。言い換えれば、連通開口部26は、第2空間部24側に位置する表示部5の出射面5aが出射した表示光を、虚像表示部材6が位置する第1空間部23側に導出するための光路開口を構成する。なおここでは、車両用表示装置1は、連通開口部26内にマスク部材9やスモークガラス10等が嵌めこまれている。表示部5の出射面5aから出射された表示光は、筐体2に形成された連通開口部26、マスク部材9に形成された露出開口部9a、スモークガラス10等を介して虚像表示部材6に至る。
虚像表示部材6は、表示部5から出射された表示光を予め定められた目視位置EP側に反射することで表示光による虚像6Aを表示させるものである。虚像表示部材6は、表示部5から出射された表示光によって種々の可視情報が表示される。虚像表示部材6は、筐体2内において照明対象物3の目視位置EP側の位置に収容される。虚像表示部材6は、上述した照明対象物3と共に筐体2の第1空間部23内に収容される。つまり、虚像表示部材6は、第1空間部23内において、照明対象物3の目視位置EP側、すなわち、照明対象物3の奥行き方向Xの前面側に設けられる。虚像表示部材6は、第1空間部23内において、目視位置EPから目視側開口部25を介して直接的に目視可能な位置に、種々の支持構造を介して支持される。虚像表示部材6は、照明対象物3の奥行き方向Xの前面側の全体を覆うように設けられる。ここでは、虚像表示部材6は、略板状に形成され、表示部5側を向くように傾斜して設けられる。すなわち、虚像表示部材6は、高さ方向Zの上側から下側に向かうにしたがって奥行き方向Xの前面側に向かうように傾斜して設けられる。そして、虚像表示部材6は、第1空間部23を、奥行き方向Xの前面側の空間部(目視位置EP側の空間部)と背面側の空間部(照明対象物3側の空間部)とに仕切っている。
本実施形態の虚像表示部材6は、入射する可視光域成分の光の一部を反射すると共に、入射する可視光域成分の光の他の一部を透過させる半透過性の部材、いわゆるハーフミラーである。虚像表示部材6は、透明な合成樹脂やガラス等により形成された本体部と、ハーフミラー層とを有する。ハーフミラー層は、本体部の表面に蒸着等により形成された、金属又は無機多層薄膜などである。虚像表示部材6は、光源4からの照明光や照明対象物3等による反射光を含む当該光源4側からの可視光域成分の光を透過させ、目視位置EPにおいて照明対象物3を視認可能とする。その上で、虚像表示部材6は、表示部5から出射された表示光を目視位置EP側に反射することで虚像6Aを表示する。虚像6Aは、虚像表示部材6で目視位置EP側に反射した表示光による反射像であり、目視位置EPから視認可能な像である。ここでは、虚像表示部材6は、目視位置EPから視て照明対象物3と重畳可能な位置に表示光による虚像6Aを表示させる。つまり、虚像表示部材6は、表示光による虚像6Aが照明対象物3とほぼ重なる位置に結像するように配置されている。虚像6Aは、車両に関する種々の可視情報を表す。図1に例示する虚像6Aは、例えば、軸線を回動中心として回動する指針の画像、及び、当該指針によって指し示される目盛等の指標部の画像を含み、当該照明対象物3が構成する加飾リングと共に種々の計測値を指し示す計器を構成する画像である。表示光による虚像6Aは、この他、例えば、車両の速度、積算走行距離、冷却水温、走行用動力源の出力回転数、燃料残量、バッテリ蓄電量、ナビゲーション情報、地図情報、交差点情報、各種の警告灯(ウォーニングランプ、いわゆるテルテール)、シフトポジションインジケータ、方向指示記号等の車両情報に応じた種々の図柄、記号、文字列等の画像を含んでいてもよい。また、表示光による虚像6Aは、後述するように照明対象物3が複数の固定位置の間で変位した際には、当該照明対象物3の位置に応じて表示位置が適宜変更される。
背面板7は、筐体2内において光源4から照射された照明光によって照らされる位置に収容されるものである。背面板7は、光源4から照射された照明光によって照らされる照明対象物3の背景を構成するものであり、当該照明光の一部によって照らされる。本実施形態の背面板7は、1つの固定背面板71、及び、複数、ここでは2つの可動背面板72、73を含んで構成される。固定背面板71は、筐体2内において、当該筐体2、及び、光源4との相対位置が固定されたものである。一方、可動背面板72、73は、筐体2内において、照明対象物3と共に変位可能なものである。なお、以下、固定背面板71と可動背面板72と可動背面板73とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に背面板7という場合がある。当該背面板7は、上述したように照明対象物3と共に可動ユニット8を構成する。以下、図3、図4、図5、図6、図7を参照して可動ユニット8について説明する。
図3、図4、図5、図6、図7に示す可動ユニット8は、照明対象物3を可動させるユニットである。可動ユニット8は、筐体2の第1空間部23内において、照明対象物3を複数の固定位置の間で変位可能に支持する。ここでは、可動ユニット8は、照明対象物3を4つの固定位置、すなわち、図3に示す第1固定位置、図5に示す第2固定位置、図6に示す第3固定位置、及び、図7に示す第4固定位置に変位させることができる。このとき、可動ユニット8は、筐体2の第1空間部23内において、可動背面板72、73の一方、又は、両方も照明対象物3と共に複数の固定位置の間で変位させる。
具体的には、可動ユニット8は、照明対象物3と、固定背面板71と、可動背面板72と、可動背面板73と、スライド機構81と、チルト機構82とを備える。
照明対象物3は、上述したように、略円環状に形成された加飾リングであり、ここでは、可動背面板72と共にリング体83を構成する。可動背面板72は、略円板状に形成され、照明対象物3の内側に位置する。照明対象物3と可動背面板72とは、ネジ等を介して一体化されることでリング体83を構成する。リング体83は、照明対象物3と可動背面板72とが一体となった状態で複数の固定位置の間で変位可能である。つまり、可動背面板72は、照明対象物3と一体となって第1固定位置、第2固定位置、第3固定位置、及び、第4固定位置の間で変位可能である。
固定背面板71は、奥行き方向Xに対して照明対象物3の目視位置EP側とは反対側、すなわち、背面側に位置する。ここでは、固定背面板71は、種々の形状の凹凸や切り欠き等が設けられた板状に形成される。固定背面板71は、筐体2の第1空間部23内にネジ等を介して固定される。固定背面板71は、第1空間部23内において、高さ方向Zに対してやや傾きを有して立設される。この固定背面板71は、可動ユニット8の各部が組み付けられるベース部を構成するものであり、上述したように第1空間部23内において、筐体2、及び、光源4との相対位置が固定される。ここでは、可動ユニット8は、当該固定背面板71にチルト機構82が支持され、当該チルト機構82にスライド機構81、及び、可動背面板73が支持され、当該スライド機構81にリング体83が支持される。
可動背面板73は、奥行き方向Xに対して照明対象物3の目視位置EP側とは反対側、すなわち、背面側に位置する。より詳細には、可動背面板73は、奥行き方向Xに対してリング体83の可動背面板72と固定背面板71との間に介在して位置する。ここでは、可動背面板73は、種々の形状の切り欠き等が設けられた板状に形成される。可動背面板73は、幅方向Yに対して可動背面板72よりやや大きい形状に形成される。可動背面板73は、奥行き方向Xの背面側に後述するスライド機構81が組み付けられる。可動背面板73は、当該スライド機構81の主たる部分を目視位置EP側から覆うスライド機構カバーを構成すると共に、切り欠き等を介して当該スライド機構81においてリング体83を支持する部分を奥行き方向Xの前面側に露出させる。
スライド機構81は、リング体83を中央位置とスライド位置との間で変位可能に支持するものである。スライド機構81は、可動背面板73と一体となってチルト機構82に支持される。スライド機構81は、モータ等の動力源や当該動力源で発生させた動力を各部に伝達するギヤ、シャフト等の伝達部材を含んで構成される。スライド機構81は、各部が動作することで幅方向Yに沿ってリング体83を中央位置とスライド位置との間でスライドさせることができる。ここで、リング体83の中央位置は、図3、図6に示すように、可動ユニット8における幅方向Yの略中央の位置である。可動背面板73は、リング体83が中央位置にある状態で、幅方向Yの右側端部が目視位置EP側に露出する。一方、リング体83のスライド位置は、図5、図7に示すように、中央位置を基準として幅方向Yの右側にずれた位置である。可動背面板73は、リング体83がスライド位置にある状態で、幅方向Yの左側端部が目視位置EP側に露出する。
チルト機構82は、スライド機構81、及び、可動背面板73をリング体83と共に正対位置と傾斜位置との間で変位可能に支持するものである。言い換えれば、チルト機構82は、スライド機構81を介してリング体83を正対位置と傾斜位置との間で変位可能に支持する。チルト機構82は、上述した固定背面板71の奥行き方向Xの背面側に組み付けられ支持される。つまり、固定背面板71は、奥行き方向Xに対してスライド機構81、可動背面板73とチルト機構82との間に介在して位置する。固定背面板71は、当該チルト機構82の主たる部分を目視位置EP側から覆うチルト機構カバーを構成すると共に、切り欠き等を介して当該チルト機構82においてスライド機構81を支持する部分を奥行き方向Xの前面側に露出させる。チルト機構82は、モータ等の動力源や当該動力源で発生させた動力を各部に伝達するギヤ、シャフト等の伝達部材、リング体83、スライド機構81、可動背面板73の変位をガイドする一対のガイドレール等を含んで構成される。チルト機構82は、各部が動作することで、奥行き方向X及び高さ方向Zに沿ってリング体83を正対位置と傾斜位置との間でチルト(傾斜)させることができる。ここで、リング体83の正対位置は、図3、図5に示すように、当該リング体83がスライド機構81、可動背面板73と共に高さ方向Zに沿って立った起立位置であり、目視位置EPと略正対する位置である。リング体83は、正対位置にある状態では、奥行き方向Xに対する照明対象物3の軸方向X1(図2参照)の傾斜角度θ(図2参照)が最小となり、さらに言えば、高さ方向Zの上側端部と下側端部との奥行き方向Xに沿った離間距離D(図2参照)が最小となる。ここでは、リング体83は、正対位置にある状態では、高さ方向Zの上側端部が下側端部よりもわずかに奥行き方向Xの背面側に位置するように傾斜している。一方、リング体83の傾斜位置は、図6、図7に示すように、正対位置を基準として当該リング体83がスライド機構81、可動背面板73と共に傾斜した傾倒位置であり、目視位置EPに対して寝かされた位置である。リング体83は、傾斜位置にある状態では、奥行き方向Xに対する照明対象物3の軸方向X1の傾斜角度θが最大となり、さらに言えば、高さ方向Zの上側端部と下側端部との奥行き方向Xに沿った離間距離Dが最大となる。ここでは、リング体83は、傾斜位置にある状態では、正対位置を基準として、高さ方向Zの下側端部が奥行き方向Xの前面側に位置し、高さ方向Zの上側端部が高さ方向Zの下側に位置した状態となる。なおここでは、可動ユニット8は、チルト機構82の一部、ここでは、一対のガイドレールのそれぞれを目視位置EP側から覆う一対の袖壁部84も備えている。
上記のように構成される可動ユニット8は、チルト機構82、及び、スライド機構81の動作を組み合わせることで、リング体83を第1固定位置、第2固定位置、第3固定位置、及び、第4固定位置の間で変位させることができる。図3に示す第1固定位置は、リング体83が正対位置でかつ中央位置にある状態の位置である。図5に示す第2固定位置は、リング体83が正対位置でかつスライド位置にある状態の位置である。図6に示す第3固定位置は、リング体83が傾斜位置でかつ中央位置にある状態の位置である。図7に示す第4固定位置は、リング体83が傾斜位置でかつスライド位置にある状態の位置である。この場合、可動背面板72は、リング体83の変位に伴って常に照明対象物3と共に変位する。一方、可動背面板73は、リング体83が第1固定位置と第3固定位置との間で変位する際、又は、第2固定位置と第4固定位置との間で変位する際に照明対象物3と共に変位する。なお、可動ユニット8は、さらに、第1固定位置、第2固定位置、第3固定位置、及び、第4固定位置の間の位置でリング体83を固定してもよい。
ここでは、照明対象物3を含むリング体83は、少なくとも目視位置EPから視て虚像表示部材6において表示光による虚像6Aが表示される虚像表示領域T(図1参照)と重畳する位置に変位可能である。リング体83は、例えば、図3に示す第1固定位置、図5に示す第2固定位置において、虚像表示領域Tと重畳して位置し、図6に示す第3固定位置、図7に示す第4固定位置において、虚像表示領域T外に位置するように設けられてもよい。つまりこの場合、照明対象物3を含むリング体83は、目視位置EPから視て、虚像表示領域T内から虚像表示領域T外に、あるいは、虚像表示領域T外から虚像表示領域T内に変位可能に構成される。
上記のように構成される車両用表示装置1は、表示部5の出射面5aから出射された表示光が筐体2の連通開口部26、マスク部材9の露出開口部9a、スモークガラス10を介して虚像表示部材6に至る。そして、車両用表示装置1は、当該表示光が虚像表示部材6によって目視位置EP側に反射される。この構成により、車両用表示装置1は、表示光による虚像6Aが当該虚像表示部材6に表示される。この場合、車両用表示装置1は、当該虚像表示部材6で反射した表示光による虚像6Aが照明対象物3に重畳されて表示され、運転者等に種々の視覚情報を提示する。このとき、車両用表示装置1は、照明対象物3を含むリング体83の変位に伴い、当該照明対象物3の位置に応じて虚像6Aの表示位置が適宜変更される。また、車両用表示装置1は、照明対象物3を含むリング体83の幅方向Yに沿った変位に伴って、幅方向Yに沿って設けられた複数の光源4の点灯状態が適宜切り替えられてもよい。
そして、本実施形態の背面板7は、図3、図4、図5、図6、図7、図8に示すように、上記のような構成の車両用表示装置1にあって、複数の縦溝7bが設けられることで、適正な視認性の確保を図ったものである。
具体的には、複数の縦溝7bは、背面板7の目視位置EP側の表面7aに形成される。ここでは、複数の縦溝7bは、背面板7のうち少なくとも固定背面板71に形成される。固定背面板71は、目視位置EP側の表面7aに複数の縦溝7bが設けられる。複数の縦溝7bは、それぞれ光源4による照明光の照射方向L1(特に図8参照)に沿って延在して形成される。複数の縦溝7bは、典型的には、目視位置EP側から奥行き方向Xに沿って背面板7側を視て照射方向L1に沿って延在して形成されればよいが、ここでは、延在方向が照射方向L1とほぼ平行になるように形成される。複数の縦溝7bは、照射方向L1と直交する方向に沿って隣接して並んで形成される。複数の縦溝7bは、固定背面板71における表面7aの全面に設けられている。各縦溝7bは、照射方向L1と直交(交差)する方向の断面形状が略V字形状である(特に図8参照)。
ここでは、固定背面板71は、照明光を反射し難いように、複数の縦溝7bが形成された表面7aが艶消しの黒色とされている。固定背面板71は、例えば、黒色の合成樹脂を成形金型によって成形することで全体が黒色の合成樹脂によって形成され、この結果、黒色の表面7aに複数の縦溝7bが設けられた構成とされる。なお、固定背面板71は、これに限らず、例えば、黒色以外の色の合成樹脂を成形金型によって成形した上で、目視位置EP側となる面に対して黒色の合成樹脂によって三次元印刷を施すことで、黒色の表面7aに複数の縦溝7bが設けられた構成とされてもよい。またここでは、背面板7は、固定背面板71以外の可動背面板72、73も同様に全体が艶消しの黒色の合成樹脂によって形成されている。
以上で説明した車両用表示装置1は、光源4が筐体2内に収容された照明対象物3に向けて照明光を照射することで虚像表示部材6を介して目視位置EPから視認可能なように当該照明対象物3を照らすことができる。また、車両用表示装置1は、表示部5から出射された表示光を虚像表示部材6によって目視位置EP側に反射させる。この構成により、車両用表示装置1は、当該虚像表示部材6に対して目視位置EPから視認可能なように表示光による虚像6Aの表示を行うことができる。この構成により、車両用表示装置1は、照明対象物3と虚像6Aとを組み合わせたより多様な表示を行うことができる。そして、車両用表示装置1は、筐体2内において光源4から照射された照明光によって照らされる位置に収容された背面板7の目視位置EP側の表面7aに、光源4による照明光の照射方向L1に沿った複数の縦溝7bが設けられている。この結果、車両用表示装置1は、背面板7の表面7aに照射された照明光の少なくとも一部を複数の縦溝7bによって目視位置EPとは異なる方向、例えば、照射方向L1と交差する幅方向Yに対して目視位置EPから外れる方向に反射させることができる。この構成により、車両用表示装置1は、目視位置EP側に至る照明光の反射光の光量を抑制することができる。したがって、車両用表示装置1は、背面板7で反射し目視位置EP側に至る照明光の反射光によって照明対象物3の背景となる背面板7が目立ってしまうことを抑制し、照明対象物3や虚像6A等が視認し難くなることを抑制することができる。この結果、車両用表示装置1は、適正な視認性を確保することができる。
ここでは、以上で説明した車両用表示装置1は、少なくとも背面板7のうち固定背面板71に複数の縦溝7bが設けられている。この場合、車両用表示装置1は、予め光源4との相対位置が固定されている固定背面板71に複数の縦溝7bが設けられるので、光源4による照射光の照射方向L1と当該複数の縦溝7bの延在方向との関係を固定し不変とすることができる。この結果、車両用表示装置1は、光源4が点灯している際には常に背面板7の表面7aに照射された照明光の少なくとも一部を目視位置EPから外れる方向に反射させることができる。したがって、車両用表示装置1は、より適正に目視位置EP側に至る照明光の反射光の光量を抑制することができ、適正な視認性を確保することができる。
また、以上で説明した車両用表示装置1は、複数の縦溝7bの断面形状がV字形状である。この構成により、車両用表示装置1は、当該複数の縦溝7bによって、背面板7の表面7aに照射された照明光の少なくとも一部をより好適に幅方向Yに対して目視位置EPから外れる方向に反射させることができる。この結果、車両用表示装置1は、より確実に適正な視認性を確保することができる。
また、以上で説明した車両用表示装置1は、背面板7(固定背面板71)が照明対象物3の背面側に位置し、複数の縦溝7bが形成された表面7aが黒色である。この構成により、車両用表示装置1は、目視位置EP側に至る照明光の反射光の光量をより一層抑制することができると共に、照明対象物3の背景となる背面板7が目立ってしまうことをより一層抑制することができる。この結果、車両用表示装置1は、より一層適正な視認性を確保することができる。
また、以上で説明した車両用表示装置1は、照明対象物3を含むリング体83が筐体2内において変位し、少なくとも目視位置EPから視て虚像表示領域Tと重畳する位置に変位可能である。この構成により、車両用表示装置1は、虚像表示領域Tにおいて照明対象物3を含むリング体83と当該リング体83に重畳される虚像6Aとを組み合わせたより多様な表示を行うことができる。その上で、車両用表示装置1は、上記のように適正な視認性を確保することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用表示装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、照明対象物3と背面板7とは、当該照明対象物3を可動させる可動ユニット8の一部を構成するものとして説明したがこれに限らない。例えば、照明対象物3や背面板7は、筐体2内で当該筐体2との相対位置が固定されたものであってもよい。すなわち、背面板7は、可動背面板72、73を含まない構成であってもよい。
以上の説明では、可動ユニット8は、チルト機構82、スライド機構81の動作を組み合わせることで、照明対象物3を含むリング体83を、第1固定位置、第2固定位置、第3固定位置、及び、第4固定位置の間で変位させるものとして説明したがこれに限らない。可動ユニット8は、スライド機構81を備える一方、チルト機構82を備えないことで、リング体83を、正対位置と傾斜位置との間でチルトさせず、幅方向Yに沿って中央位置とスライド位置との間でスライドさせるだけの構成であってもよい。同様に、可動ユニット8は、チルト機構82を備える一方、スライド機構81を備えないことで、リング体83を、幅方向Yに沿って中央位置とスライド位置との間でスライドさせず、正対位置と傾斜位置との間でチルトさせるだけの構成であってもよい。その上で、車両用表示装置1は、虚像表示領域Tにおいて照明対象物3を含むリング体83と当該リング体83に重畳される虚像6Aとを組み合わせた表示を行う構成であってもよい。この場合であっても、車両用表示装置1は、上記のように適正な視認性を確保することができる。
以上の説明では、背面板7は、固定背面板71に縦溝7bが設けられるものとして説明したがこれに限らず、可動背面板72、73に縦溝7bが設けられていてもよい。この場合、背面板7は、固定背面板71に縦溝7bが設けられていなくてもよいし、設けられていてもよい。つまり、背面板7は、固定背面板71及び可動背面板72、73の双方に縦溝7bが設けられていてもよいし、いずれか一方に縦溝7bが設けられ他方には設けられていなくてもよい。また、背面板7は、固定背面板71自体を含まない構成であってもよい。
背面板7は、可動背面板72、73に縦溝7bが設けられる場合、例えば、照明対象物3と共に変位可能な可動背面板72、73が使用頻度の最も高い位置にある状態で、照射方向L1に沿うように縦溝7bが形成されてもよい。この場合、複数の縦溝7bは、典型的には、上述したように目視位置EP側から奥行き方向Xに沿って背面板7側を視て照射方向L1に沿って延在して形成されればよい。また、車両用表示装置1は、例えば、光源4を照明対象物3や可動背面板72、73と共に変位可能に設け、照射方向L1と複数の縦溝7bの延在方向との関係が固定され不変となるように構成されてもよい。なお、背面板7は、例えば、可動背面板72、73の目視位置EP側の表面に、縦溝7bにかえて、多角形錐状に形成され並んで設けられる複数の突起を有する構成とされてもよい。この場合、背面板7は、光源4に対して相対変位する可動背面板72、73において、目視位置EP側に至る照明光の反射光の光量をよりバランスよく抑制することができる場合がある。
以上の説明では、固定背面板71は、奥行き方向Xに対して照明対象物3の目視位置EP側とは反対側に位置するものとして説明したがこれに限らない。例えば、車両用表示装置1は、袖壁部84の近傍に照明対象物3を照らすための他の光源を設け、袖壁部84の目視位置EP側の表面に当該他の光源による照明光の照射方向に沿って複数の縦溝が形成されていてもよい。この場合、当該袖壁部84は、背面板7の一部を構成することとなる。
以上で説明した光源4による照明光の照射方向L1は、上記に限らず、例えば、幅方向Yに沿っていてもよい。この場合、背面板7に形成される縦溝7bは、幅方向Yに沿って形成されることとなる。
以上で説明した各縦溝7bは、照射方向L1と直交(交差)する方向の断面形状が略V字形状であるものとして説明したがこれに限らない。例えば、各縦溝7bは、当該断面形状が略矩形状や略円弧形状等であってもよい。
以上で説明した背面板7の表面7aは、黒色でなくてもよい。