(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る印刷装置について、図面を参照しながら説明する。図中、互いに同一又は同等の構成には、互いに同一の符号を付す。
図1に示す印刷装置1は、ユーザが把持して印刷媒体2上を移動させることが可能であり、当該移動に従って印刷媒体2に印刷対象の画像を印刷する手動走査型の印刷装置である。手動走査型の印刷装置は、ハンディプリンタ、ハンドヘルドプリンタ等とも呼ばれる。なお、印刷装置1は、印刷時に、印刷媒体2に対して相対的に移動すればよく、例えば、印刷装置1を固定して、印刷媒体2を印刷装置1に対して相対的に移動させる形態であってもよい。
印刷対象の画像は、印刷装置1によって印刷媒体2に印刷される画像である。印刷対象の画像は、印刷画像、印刷パターン等とも呼ばれる。印刷対象の画像の具体例としては、文字、図形、記号、模様、絵、これらの組み合わせ等が挙げられる。
印刷媒体2は、印刷時に印刷対象の画像が印刷される対象物である。印刷媒体2は、被印刷媒体、記録媒体、印刷対象物等とも呼ばれる。印刷媒体2の具体例としては、紙、布、合成樹脂、段ボール、箱、瓶等が挙げられる。手動走査型の印刷装置である印刷装置1は、印刷媒体2を搬送しつつ印刷する据置型の印刷装置に比べて、より多様な印刷媒体2に印刷できる。すなわち、印刷装置1は、搬送が容易な紙等の印刷媒体2に据置型の印刷装置と同様に印刷できるのみならず、搬送が困難な材質又は形状を有し、据置型の印刷装置では印刷が困難な布、合成樹脂、段ボール、箱、瓶等の印刷媒体2にも印刷できる。
印刷時にユーザが印刷装置1を移動させる方向を、移動方向と呼ぶ。移動方向は、副走査方向、印刷方向等とも呼ばれる。理解を容易にするため、図1に示すxyz座標軸を設定する。以下、x軸正方向を右と呼ぶ。以下、ユーザが右方向を移動方向として印刷装置1を移動させる場合を例に用いて説明する。
印刷装置1は、装置本体100と、表示部101と、第1のLED(Light Emitting Diode)102と、第2のLED103と、第3のLED104と、検出装置105と、印刷機構106と、を備えている。なお、検出装置105と印刷機構106とは装置本体100に内蔵されており、実際には外部から視認することはできないが、図1では、理解を容易にするため、検出装置105及び印刷機構106を破線で図示している。
装置本体100は、筐体等とも呼ばれ、ユーザによって把持される。装置本体100は、上面100aと底面100bとを備えている。底面100bは、印刷時、印刷媒体2に対向する面である。上面100aは、底面100bに対向する面である。
表示部101は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等の表示装置を備え、後述する入出力制御回路117による制御に従って各種画像を表示する。表示部101によって表示される画像の具体例としては、後述する警告画面AW及び完了画面CWが挙げられる。
第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104は、後述する入出力制御回路117による制御に従って点灯することにより、印刷装置1の移動速度をユーザへ報知する。第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104による印刷装置1の移動速度の報知の詳細については、後述する。
表示部101、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104は、何れも装置本体100の上面100aに配置されている。
検出装置105は、印刷装置1の印刷媒体2に対する相対的な移動量を検出する。検出装置105は、検出された印刷装置1の移動量を表すデータを、後述する制御回路107へ供給する。具体的に、検出装置105は、図示しない光学センサを備え、予め設定されたサンプリング周期毎に検出信号を制御回路107へ出力する。検出信号は、印刷装置1の印刷媒体2上における移動方向及びサンプリング周期あたりの移動量を示す移動量検出信号を含んでいる。サンプリング周期は、光学センサの性能等に応じ、実験等の任意の方法により予め設定されている。より具体的に、検出装置105は、レーザ式光学センサを備え、印刷媒体2の表面へレーザ光を照射し、印刷媒体2の表面で反射されたレーザ光をイメージセンサによって撮像する。検出装置105は、撮像されたレーザ光の干渉縞を解析することによって移動量検出信号を含む検出信号を生成し、生成された検出信号を制御回路107へ出力する。
印刷装置1は、検出装置105によって出力された検出信号に含まれる移動量検出信号に基づいて、自装置の移動量及び移動速度を取得する。また、印刷装置1は、検出装置105によって出力された検出信号が予め設定されたリフトオフ条件を満たすか否かを判定することによって、自装置がリフトオフしたか否かを判定する。リフトオフとは、印刷中に印刷装置1が持ち上げられ、印刷媒体2から予め設定されたリフトオフ距離以上に離れることを指す。リフトオフ条件及びリフトオフ距離は、実験等の任意の方法によって予め設定されている。印刷装置1が、リフトオフされた状態において印刷を続行し、インクを吐出し続けることは好ましくないため、後述するように、印刷装置1は、リフトオフされると印刷を停止する。また、印刷装置1は、検出装置105によって出力された検出信号が予め設定された載置条件を満たすか否かを判定することによって、自装置が印刷媒体2上に載置されたか否かを判定する。載置条件は、実験等の任意の方法によって予め設定されている。後述するように、印刷装置1は、印刷開始の指示を受け付けた後、自装置が印刷媒体2上に載置されたと判定したことに応答して印刷を開始する。また、詳細は後述するものの、印刷装置1は、自装置の移動速度が後述する第3速度V3以上であることに応答して印刷を停止した後、自装置が印刷媒体2上に載置されたと判定したことに応答して印刷を再開する。
図2に示すように、検出装置105は、装置本体100の底面100bに設けられた開口部から外部へ露出している。
図1に戻り、印刷機構106は、微滴化したインクを印刷媒体2へ吐出するインクジェット方式により、印刷対象の画像を印刷媒体2に印刷する。
具体的に、印刷機構106は、図2に示すように、インクジェットヘッド106aを備えている。インクジェットヘッド106aは、装置本体100の底面100bに設けられた開口部から外部へ露出している。インクジェットヘッド106aは、印刷ヘッド、記録ヘッド、プリントヘッド等とも呼ばれる。インクジェットヘッド106aは、後述するインクジェットヘッド制御回路106bによる制御に従って、図示しないインクタンクに充填されたインクを印刷媒体2へ吐出することによって印刷を実行する。インクジェットヘッド106aと上述したインクタンクとを合わせてインクカートリッジ等と呼ぶこともある。インクジェットヘッド106aは、印刷ヘッドとして機能する。また、上述した検出装置105は、インクジェットヘッド106aの印刷媒体2に対するサンプリング周期毎の相対的な移動量を検出する。
より具体的に、インクジェットヘッド106aは、ノズル列NLを備えている。ノズル列NLは、y軸方向に沿って設けられている。ノズル列NLは、図3に示すように、インクを吐出する複数のインクノズルn1〜n12を備えている。インクノズルn1〜n12には、それぞれ、互いに識別するための番号が予め付されている。インクノズルn1〜n12内のインクがヒータによって加熱されることで気泡が生じ、この気泡が破裂することによってインクノズルn1〜n12から印刷媒体2へインクが吐出され、印刷対象の画像が印刷される。
印刷装置1は、上述した構成に加えて、図4に示すように、制御回路107と、ROM(Read Only Memory)108と、RAM(Random Access Memory)109と、センサ制御回路110と、電源制御回路111と、電源112と、インクジェットヘッド制御回路106bと、無線通信モジュール113と、計時回路114と、入力部115と、出力装置116と、入出力制御回路117と、を備えている。
制御回路107は、CPU(Central Processing Unit)を備え、ROM108に記憶されたプログラム及びデータに従って、後述する印刷処理を含む各種処理を実行する。制御回路107は、コマンド及びデータの伝送経路である図示しないシステムバスを介して印刷装置1の各部に接続されており、印刷装置1全体を統括制御する。
ROM108は、制御回路107が各種処理を実行するために用いるプログラム及びデータを記憶する。具体的に、ROM108は、制御回路107が実行する制御プログラム108aを記憶する。また、ROM108は、印刷対象の画像を表す印刷データ108bを記憶する。上述した印刷機構106は、印刷データ108bに従ってインクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12からインクを吐出することにより印刷対象の画像を印刷する。
具体的に、印刷データ108bには、図5に示すように、列と行とが予め設定されている。図5に示す印刷データ108bは、第1列から第99列までの99列分のデータを含んでおり、第1行から第12行までの12行分のデータを含んでいる。印刷データ108bの各列のデータは、印刷対象の画像のうち印刷装置1が移動することなく印刷可能な部分の画像である1単位分の印刷対象の画像を表している。印刷データ108bの各列のデータは、印刷装置1の移動距離に予め対応付けられている。後述するように、インクジェットヘッド制御回路106bは、印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ供給し、インクジェットヘッド106aは、供給されたデータに従って印刷を実行する。印刷データ108bの各行のデータは、インクノズルn1〜n12のうち行番号と同一の番号が付されたインクノズルに対応付けられている。例えば、第3番目のインクノズルn3は、印刷データ108bの3行目のデータに従って印刷を実行する。印刷データ108bには、インクを吐出させる制御を行うデータと、インクを吐出させない制御を行うデータと、が含まれている。図5に示す印刷データ108b中の黒塗りの四角形は、インクを吐出させる制御を行うデータを示している。また、図5に示す印刷データ108b中の白塗りの四角形は、インクを吐出させない制御を行うデータを示している。例えば、図5の印刷データ108bの第1列目の第5行目にはインクを吐出させる制御を行うデータが格納されており、第1列目の第6行目にはインクを吐出させない制御を行うデータが格納されている。インクノズルn1〜n12は、インクを吐出させる制御を行うデータがインクジェットヘッド制御回路106bによって供給されたことに応答してインクを吐出し、印刷を実行する。一方、インクノズルn1〜n12は、インクを吐出させない制御を行うデータがインクジェットヘッド制御回路106bによって供給された場合、インクを吐出せず、印刷を実行しない。インクを吐出させる制御を行うデータは、言い換えると、インクを吐出させる制御を行う契機になるデータである。インクを吐出させない制御を行うデータは、言い換えると、インクを吐出させない制御を行う契機になるデータである。
印刷装置1は、PC(Personal Computer)、スマートフォン等の外部装置によって生成された印刷データ108bを、無線通信モジュール113を介して当該外部装置から取得し、ROM108に記憶する。
図4に戻り、RAM109は、制御回路107が各種処理を実行することによって生成又は取得したデータを記憶する。具体的に、RAM109は、検出装置105によって出力された移動量検出信号が示す印刷装置1の移動方向及びサンプリング周期あたりの移動量を表す移動量データ109aを記憶する。また、RAM109は、制御回路107のワークエリアとして機能する。すなわち、制御回路107は、ROM108に記憶されたプログラム及びデータをRAM109へ読み出し、読み出されたプログラム及びデータを適宜参照することによって、各種処理を実行する。
センサ制御回路110は、制御回路107による制御に従って、検出装置105を制御する。
電源制御回路111は、制御回路107による制御に従って、電源112を制御する。
電源112は、電源制御回路111による制御に従って、印刷装置1の各部に電力を供給する。
インクジェットヘッド制御回路106bは、印刷機構106に設けられ、制御回路107による制御に従って、インクジェットヘッド106aによるインクの吐出を制御する。具体的に、インクジェットヘッド制御回路106bは、制御回路107による制御に従い、印刷データ108bを1列分ずつインクジェットヘッド106aへ順次送信する。より具体的に、インクジェットヘッド制御回路106bは、制御回路107による制御に従い、印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ送信する。インクジェットヘッド制御回路106bは、印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ送信したことに応答して、インクの吐出を指示する吐出コマンドをインクジェットヘッド106aへ送信することにより、インクジェットヘッド106aにインクノズルn1〜n12からインクを吐出させ、印刷を実行させる。
無線通信モジュール113は、無線LAN(Local Area Network)等の通信網を介して無線通信を行うことにより、PC、スマートフォン等の外部装置との間でデータを送受信する。具体的に、印刷装置1は、外部装置によって生成された印刷データ108bを、無線通信モジュール113を介して当該外部装置から取得する。
計時回路114は、電源112による電力の供給が停止している間も計時を継続するRTC(Real Time Clock)を備え、計時を行う。計時回路114は、計時の結果を表すデータを、制御回路107へ供給する。
入力部115は、各種操作ボタン、入力キー、スイッチ、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備え、ユーザによって入力された各種操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を制御回路107へ供給する。具体的に、入力部115は、ユーザによる操作に従って、印刷開始の指示を受け付ける。
出力装置116は、入出力制御回路117による制御に従って、ユーザが認識可能な形態で各種情報を出力する。具体的に、出力装置116は、上述した表示部101を備え、後述する警告画面AW及び完了画面CWを含む各種画像を表示する。また、出力装置116は、上述した第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を備え、これらのLEDを点灯させることにより、印刷装置1の移動速度をユーザへ報知する。出力装置116による印刷装置1の移動速度の報知の詳細については、後述する。また、出力装置116は、図示しないスピーカを備え、入出力制御回路117による制御に従って、後述する警告音声を含む各種音声を出力する。
入出力制御回路117は、制御回路107による制御に従って、入力部115及び出力装置116を制御する。具体的に、入出力制御回路117は、出力装置116が備える表示部101に、後述する警告画面AW及び完了画面CWを含む各種画像を表示させる。また、入出力制御回路117は、後述するように、出力装置116が備える第1のLED102、第2のLED103又は第3のLED104の点灯を制御することにより、印刷装置1の移動速度をユーザへ報知させる。また、入出力制御回路117は、後述するように、出力装置116が備えるスピーカに、警告音声を出力させる。
上述の物理的構成を備える印刷装置1は、機能的に、図6に示すように、検出信号取得部10と、移動速度算出部11と、速度報知部12と、印刷データ取得部13と、記憶部14と、印刷制御部15と、報知部16と、を備えている。検出信号取得部10、移動速度算出部11、速度報知部12、印刷データ取得部13、印刷制御部15及び報知部16は、制御回路107によって実現される。具体的に、制御回路107は、上述した制御プログラム108aを実行して印刷装置1を制御することにより、これらの各部として機能する。記憶部14は、RAM109によって実現される。具体的に、記憶部14は、RAM109の記憶領域に構築される。
検出信号取得部10は、検出装置105から、上述した移動量検出信号を含む検出信号を、検出装置105が備える光学センサのサンプリング周期毎に取得する。検出信号取得部10は、取得した検出信号を、移動速度算出部11及び印刷制御部15へ供給する。
移動速度算出部11は、検出信号取得部10から供給された検出信号が含む移動量検出信号に従って、印刷装置1の移動速度を算出する。具体的に、移動速度算出部11は、移動量検出信号が示すサンプリング周期あたりの印刷装置1の移動量を、当該サンプリング周期で除算することにより、印刷装置1の移動速度を算出する。移動速度算出部11は、算出された印刷装置1の移動速度を示すデータを、速度報知部12及び印刷制御部15へ供給する。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度をユーザへ報知する。
具体的に、速度報知部12は、出力装置116が備える第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を点灯させることにより、印刷装置1の移動速度をユーザへ報知する。速度報知部12は、出力装置116を、入出力制御回路117を介して制御することにより、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104の点灯及び消灯を制御する。
より具体的に、速度報知部12は、図7に示すように、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が0mm/secである場合、つまり印刷装置1が印刷媒体2に対して移動していない場合、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が0mm/secであることがユーザに報知される。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が0mm/secより大きく、かつ、予め設定された第1速度V1未満である場合、第1のLED102を点灯した状態に制御すると共に、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が0mm/secより大きく第1速度V1未満であることがユーザに報知される。すなわち、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が0mm/secより大きく第1速度V1未満である場合、第1のLED102を用いて印刷装置1の移動速度を報知する。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第1速度V1以上であり、かつ、予め設定された第2速度V2未満である場合、第1のLED102及び第2のLED103を点灯した状態に制御すると共に、第3のLED104を消灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が第1速度V1以上であり第2速度V2未満であることがユーザに報知される。すなわち、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が第1速度V1以上であり第2速度V2未満である場合、第1のLED102及び第2のLED103を用いて印刷装置1の移動速度を報知する。
第1のLED102及び第2のLED103は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第1の例である。0mm/sec以上であり第1速度V1未満である速度は、本発明に係る第1移動速度の第1の例である。第1速度V1以上であり第2速度V2未満である速度は、本発明に係る第2移動速度の第1の例である。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第2速度V2以上であり、かつ、予め設定された第3速度V3未満である場合、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を点灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が第2速度V2以上であり第3速度V3未満であることがユーザへ報知される。すなわち、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が第2速度V2以上であり第3速度V3未満である場合、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を用いて印刷装置1の移動速度を報知する。
第2のLED103及び第3のLED104は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第2の例である。第1速度V1以上であり第2速度V2未満である速度は、本発明に係る第1移動速度の第2の例である。第2速度V2以上であり第3速度V3未満である速度は、本発明に係る第2移動速度の第2の例である。また、第1のLED102及び第3のLED104は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第3の例である。0mm/sec以上であり第1速度V1未満である速度は、本発明に係る第1移動速度の第3の例である。第2速度V2以上であり第3速度V3未満である速度は、本発明に係る第2移動速度の第3の例である。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上である場合、入出力制御回路117を介して出力装置116が備えるスピーカを制御し、当該スピーカに、予め設定された警告音声を出力させる。これにより、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であることがユーザへ報知される。
上述した第3速度V3は、印刷機構106がインクノズルn1〜n12からインクを吐出することにより印刷対象の画像を印刷する際に、印刷対象の画像を印刷装置1の移動方向へ引き延ばされて歪むことなく印刷可能な印刷装置1の移動速度の最大値である。第3速度V3は、実験等の任意の方法によって予め設定されている。本実施形態において、第3速度V3は、200mm/secに設定されている。印刷装置1の移動速度が第3速度V3を上回っている場合に印刷を行うと、印刷対象の画像が印刷装置1の移動方向へ引き延ばされて歪んで印刷されてしまい、印刷品質が低下あるいは印刷が失敗する虞がある。このため、後述するように、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上である場合、印刷制御部15は、印刷機構106に印刷を停止させることにより、印刷品質の低下あるいは印刷が失敗することを抑制する。
第1速度V1及び第2速度V2は、何れも、第3速度V3速度より小さい速度である。第1速度V1は、第2速度V2よりも小さい速度である。第1速度V1及び第2速度V2は、実験等の任意の方法によって予め設定されている。本実施形態において、第1速度V1は45mm/secに、第2速度V2は90mm/secにそれぞれ設定されている。
速度報知部12は、印刷装置1がリフトオフされたことに応答して、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御する。
上述したとおり、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が大きいほど点灯するLEDの数を増加させることにより、印刷装置1の移動速度をユーザへ報知する。このため、ユーザは、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度を認識することができる。特に、速度報知部12は、上述したとおり、印刷装置1の移動速度と、印刷が停止される閾値である第3速度V3と、の差が小さいほど、点灯するLEDの数を増加させる。このため、ユーザは、印刷装置1を移動させつつ印刷を行う際、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度と第3速度V3との差を認識し、印刷装置1の移動速度が第3速度V3に達することがないように印刷装置1を移動させることで、印刷が停止する可能性を抑制できる。
さらに、速度報知部12は、上述したとおり、印刷装置1の移動速度が、印刷が停止される閾値である第3速度V3以上であることに応答して、警告音声を出力装置116に出力させる。このため、ユーザは、警告音声に基づいて、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり、印刷が停止されたことを認識できる。
図6に戻り、印刷データ取得部13は、印刷データ108bをROM108から取得し、記憶部14へ供給する。
記憶部14は、印刷データ取得部13によって供給された印刷データ108bを記憶する。記憶部14は、記憶している印刷データ108bを、印刷制御部15へ供給する。
印刷制御部15は、移動距離算出部15aと、削除部15bと、判定部15cと、を備え、印刷機構106に、検出装置105によって検出された印刷装置1の移動量と、記憶部14に記憶された印刷データ108bと、に従って印刷対象の画像を印刷媒体2に印刷させる。
具体的に、印刷制御部15は、入力部115を介して印刷開始の指示を受け付けた後、検出信号取得部10によって供給された検出信号が上述した載置条件を満たすと判定したことに応答して、印刷機構106に印刷を開始させる。すなわち、印刷制御部15は、印刷開始の指示を受け付けた後、印刷装置1が印刷媒体2上に載置されたと判定したことに応答して印刷機構106に印刷を開始させる。
移動距離算出部15aは、検出信号取得部10によって供給された検出信号に従って、印刷が開始された時点から現在までの印刷装置1の移動距離を算出する。具体的に、移動距離算出部15aは、検出信号取得部10によって検出信号が供給される度に、供給された検出信号が含む移動量検出信号が表すサンプリング周期あたりの印刷装置1の移動量を累積加算することによって印刷装置1の移動距離を算出する。
印刷制御部15は、印刷機構106が備えるインクジェットヘッド制御回路106bを制御して、記憶部14に記憶された印刷データ108bのうち移動距離算出部15aによって算出された印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bを、インクジェットヘッド106aへ送信させる。印刷制御部15は、印刷データ108bがインクジェットヘッド106aへ送信されたことに応答して、インクジェットヘッド制御回路106bに、上述した吐出コマンドをインクジェットヘッド106aへ送信させる。インクジェットヘッド106aは、吐出コマンドを受信したことに応答して、受信した印刷データ108bに従ってインクノズルn1〜n12からインクを吐出し、印刷を実行する。
削除部15bは、記憶部14に記憶された印刷データ108bがインクジェットヘッド制御回路106bによってインクジェットヘッド106aへ送信される度に、送信された印刷データ108bを記憶部14から削除する。すなわち、削除部15bは、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって印刷媒体2に印刷された部分の画像を表す印刷データ108bを記憶部14から順次削除する。このため、記憶部14は、印刷対象の画像のうちの印刷機構106によって未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bのみを記憶する。
印刷制御部15は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であることに応答して、印刷機構106に印刷を停止させる。また、印刷制御部15は、検出信号取得部10によって供給された検出信号が上述したリフトオフ条件を満たすと判定したことに応答して、印刷機構106に印刷を停止させる。すなわち、印刷制御部15は、印刷装置1がリフトオフされたと判定したことに応答して印刷機構106に印刷を停止させる。
印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であること又は印刷装置1がリフトオフされたと判定したことに応答して印刷機構106に印刷を停止させた後に、検出信号取得部10によって供給された検出信号が載置条件を満たすと判定したことに応答して、印刷機構106に印刷を再開させる。以下、印刷が停止されると、ユーザが、印刷装置1をリフトオフし、印刷媒体2上の、前回の印刷が開始された時点において印刷装置1を載置した位置と同じ位置に載置する場合を例に用いて説明する。
移動距離算出部15aは、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であること又は印刷装置1がリフトオフされたと判定されたことに応答して印刷が停止された後に、印刷装置1が印刷媒体2上に載置されたと判定されたことに応答して印刷が再開された場合、印刷装置1の移動距離を0に設定する。
上述したとおり、印刷制御部15は、印刷機構106に、検出装置105によって検出された印刷装置1の移動量と、記憶部14に記憶された印刷データ108bと、に従って印刷対象の画像を印刷媒体2に印刷させる。また、上述したとおり、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって印刷媒体2に印刷された部分の画像を表す印刷データ108bは削除部15bによって記憶部14から順次削除される一方、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bは記憶部14によって記憶されている。このため、印刷機構106は、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従って印刷対象の画像の一部のみが印刷された場合、印刷対象の画像の残りの部分を、印刷装置1の印刷方向への再度の移動に従って印刷することにより印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。なお、印刷装置1の移動方向への1回の移動とは、印刷装置1が印刷媒体2へ載置されて移動方向へ移動した後、リフトオフされるまでの一連の動作を指す。
具体的に、印刷機構106は、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷において、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であること又は印刷装置1がリフトオフされたと判定されたことに応答して印刷を停止した場合、印刷装置1の移動方向への再度の移動に従った印刷において、印刷対象の画像のうち前回の印刷が停止された時点において未だ印刷していなかった部分の画像を印刷する。このため、印刷機構106は、印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。
以下、印刷装置1による印刷について、図8〜図10を参照して説明する。具体的に、以下、印刷装置1が印刷対象の画像であるテキスト「ABCDE」を印刷する場合を例に用いて説明する。より具体的に、以下、印刷装置1が、印刷媒体2上の、図8に示すx座標がX1の位置に載置されたことに応答して自装置の移動方向への1回の移動に従った印刷を開始した後、x座標がX1の位置からx座標がX2の位置まで第3速度V3を下回る移動速度で移動し、x座標がX2の位置に達した時点において印刷装置1の移動速度が第3速度V3を上回った場合を例に用いて説明する。
図8に示すように、印刷装置1が、x座標がX1の位置に載置され、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷を開始した時点において、記憶部14には、印刷データ108bが記憶されている。印刷装置1が、x座標がX1の位置からx座標がX2の位置まで第3速度V3を下回る移動速度で移動すると、印刷機構106は、記憶部14に記憶された印刷データ108bに従って、図9に示すように、印刷対象の画像の一部を印刷する。印刷対象の画像のうち印刷機構106によって印刷された部分の画像を表す印刷データ108bは、削除部15bによって記憶部14から順次削除される。x座標がX2の位置に印刷装置1が達した時点において、印刷装置1の移動速度が第3速度V3を上回ったことに応答して印刷が停止される。印刷が停止された時点において、記憶部14には、印刷対象の画像のうち印刷が停止された時点において印刷機構106によって未だ印刷されていなかった部分の画像を表す印刷データ108bのみが記憶されている。
以下、印刷装置1の移動速度が第3速度V3を上回ったことに応答して上述した印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷が停止されると、ユーザが、印刷装置1をリフトオフし、印刷媒体2上の、前回の印刷が開始された時点において印刷装置1を載置した位置であるx座標がX1である位置に載置する場合を例に用いて説明する。印刷装置1は、自装置が印刷媒体2上に載置されたことに応答して印刷を再開する。すなわち、印刷装置1は、x座標がX1である位置に載置されたことに応答して、自装置の移動方向への再度の移動に従った印刷を開始する。移動距離算出部15aは、印刷が再開されたことに応答して、印刷装置1の移動距離を0に設定する。
以下、印刷装置1が、印刷が再開された後、第3速度V3を下回る移動速度で移動する場合を例に用いて説明する。印刷が再開された時点において、記憶部14には、印刷対象の画像のうち前回の印刷が停止された時点において印刷機構106によって未だ印刷されていなかった部分の画像を表す印刷データ108bのみが記憶されている。
印刷装置1が、x座標がX1の位置からx座標がX2の位置まで移動する間は、印刷装置1の移動距離に対応する印刷データ108bが前回の印刷において削除部15bによって記憶部14から既に削除されているため、印刷は行われない。印刷装置1が、x座標がX2の位置からx座標がX3の位置まで第3速度V3を下回る移動速度で移動すると、印刷機構106は、記憶部14に記憶された印刷データ108bに従って、図10に示すように、印刷対象の画像のうち前回の印刷が停止された時点において未だ印刷していなかった部分の画像を、印刷対象の画像のうち前回の印刷が停止された時点において既に印刷されていた部分の画像に隣接して印刷する。この結果、印刷対象の画像であるテキスト「ABCDE」の全体が印刷される。
図6に戻り、判定部15cは、印刷対象の画像の印刷が完了したか否かを判定する。判定部15cは、判定の結果を表すデータを、報知部16へ供給する。
具体的に、判定部15cは、記憶部14に記憶された印刷データ108bが削除部15bによって削除される度に、印刷が完了したか否かを判定する。また、判定部15cは、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であること又は印刷装置1がリフトオフされたと判定されたことに応答して印刷が停止されたときに、印刷が完了したか否かを判定する。
より具体的に、判定部15cは、記憶部14に印刷データ108bが記憶されているか否かを判定し、記憶部14に印刷データ108bが記憶されていないと判定した場合には、印刷が完了したと判定する。上述したとおり、削除部15bは、印刷対象の画像のうちの印刷機構106により印刷媒体2に印刷された部分の画像を表す印刷データ108bを記憶部14から順次削除する。このため、判定部15cは、記憶部14に印刷データ108bが記憶されていないと判定した場合には、印刷対象の画像の印刷が完了したと判定するのである。
一方、記憶部14に印刷データ108bが記憶されていると判定した場合には、判定部15cは、記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれているか否かを判定する。記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていない場合には、印刷対象の画像の印刷は既に完了している。例えば、図11に示すように、印刷対象の画像であるテキスト「A」の印刷が既に完了している場合、記憶部14には印刷データ108bが記憶されているものの、当該印刷データ108bには、インクを吐出させない制御を行うデータのみが含まれており、インクを吐出させる制御を行うデータは含まれていない。このため、判定部15cは、記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていないと判定した場合、印刷が完了したと判定する。一方、判定部15cは、記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていると判定した場合、印刷が完了していないと判定する。
図6に戻り、報知部16は、判定部15cによる判定の結果をユーザへ報知する。
具体的に、報知部16は、印刷対象の画像の印刷が完了したと判定部15cが判定した場合、出力装置116に、印刷が完了した旨をユーザへ報知する完了情報を出力させる。より具体的に、報知部16は、出力装置116が備える表示部101を、入出力制御回路117を介して制御することにより、表示部101に、完了情報を表す図12に示す完了画面CWを表示させる。完了画面CWは、図12に示すように、印刷が完了した旨をユーザへ報知する情報である「印刷が完了しました。」というテキストメッセージを含んでいる。
判定部15cが、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であること又は印刷装置1がリフトオフされたと判定されたことに応答して印刷が停止されたときに印刷が完了したか否かを判定し、印刷が完了していないと判定した場合、報知部16は、出力装置116に、印刷が完了していない旨をユーザへ報知する警告情報を出力させる。警告情報は、印刷対象の画像の印刷が完了していない旨をユーザへ報知する情報と、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報と、を含んでいる。具体的に、報知部16は、出力装置116が備える表示部101を、入出力制御回路117を介して制御することにより、表示部101に、警告情報を表す図13に示す警告画面AWを表示させる。警告画面AWは、図13に示すように、印刷が完了していない旨をユーザへ報知する情報として、「印刷が完了していません。」というテキストメッセージを含んでいる。また、警告画面AWは、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報として、「印刷を再度実行して下さい。」というテキストメッセージを含んでいる。
報知部16は、印刷が完了していないと判定した場合、警告情報を出力することによって、印刷が完了していない旨をユーザへ報知したり、印刷を再度実行するようにユーザへ促したりすることができる。また、報知部16は、印刷が完了したと判定した場合には、完了情報を出力することによって、印刷が完了したことをユーザへ報知する。ユーザは、完了情報に基づいて印刷が完了したことを認識することができる。このため、印刷装置1は、ユーザが不必要な再印刷を実行してしまう可能性を低減することができる。さらに、上述したとおり、判定部15cは、記憶部14に印刷データ108bが記憶されており、かつ、当該印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていない場合、印刷が完了したと判定する。この場合、報知部16は、完了情報を出力する。このため、印刷装置1は、実際には印刷対象の画像の印刷が完了しているにも関わらず印刷が完了していないと判定してしまい、印刷が完了していない旨をユーザへ誤って報知してしまったり、不必要な再印刷を実行するようにユーザへ促してしまったりする可能性を低減できる。
以下、上述の物理的・機能的構成を備える印刷装置1が実行する印刷処理について、図14〜図16のフローチャートを参照して説明する。
印刷装置1は、PC、スマートフォン等の外部装置によって生成された印刷データ108bを、当該外部装置から無線通信モジュール113を介して取得し、ROM108に予め記憶している。この状態において、ユーザが入力部115を操作することによって印刷開始の指示を入力すると、制御回路107は、図14のフローチャートに示す印刷処理を開始する。
図14のフローチャートに示す印刷処理が開始されると、まず、印刷データ取得部13が、印刷データ108bをROM108から取得する(ステップS101)。記憶部14は、ステップS101で取得された印刷データ108bを記憶する(ステップS102)。
次に、検出信号取得部10が、検出装置105から検出信号を取得する(ステップS103)。印刷制御部15は、ステップS103で取得された検出信号が載置条件を満たすか否かを判定することにより、印刷装置1が印刷媒体2上に載置されたか否かを判定する(ステップS104)。印刷装置1が印刷媒体2上に載置されていないと印刷制御部15が判定すると(ステップS104;No)、処理はステップS103へ戻り、印刷装置1の載置を待機する。
印刷装置1が印刷媒体2上に載置されていると印刷制御部15が判定すると(ステップS104;Yes)、移動距離算出部15aが、印刷装置1の移動距離を0に設定する(ステップS105)。
印刷制御部15は、サンプリング処理の割り込みを設定し、サンプリング処理を開始する(ステップS106)。以後、印刷制御部15は、後述するステップS112又はS117の処理でサンプリング処理の割り込みが停止されるまで、検出装置105が備える光学センサのサンプリング周期が経過したことを計時回路114が検出する度にサンプリング処理を割り込ませ、サンプリング処理を繰り返し実行する。以下、サンプリング処理の詳細について、図15のフローチャートを参照して説明する。
図15のフローチャートに示すサンプリング処理が開始されると、まず、検出信号取得部10が、検出装置105から検出信号を取得する(ステップS201)。印刷制御部15は、ステップS201で取得された検出信号がリフトオフ条件を満たすか否かを判定することにより、印刷装置1がリフトオフされたか否かを判定する(ステップS202)。印刷装置1がリフトオフされたと判定すると(ステップS202;Yes)、印刷制御部15は、停止フラグをオン状態に設定し(ステップS212)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1がリフトオフされていないと印刷制御部15が判定すると(ステップS202;No)、移動距離算出部15aが、ステップS201で取得された検出信号が含む移動量検出信号が示す印刷装置1のサンプリング周期あたりの移動量を加算することにより印刷装置1の移動距離を更新する(ステップS203)。移動速度算出部11は、ステップS201で取得された検出信号が含む移動量検出信号が示す印刷装置1のサンプリング周期あたりの移動量を当該サンプリング周期で除算することにより印刷装置1の移動速度を算出する(ステップS204)。
印刷制御部15は、ステップS204で算出された印刷装置1の移動速度に応じて印刷周期を設定する(ステップS205)。具体的に、印刷制御部15は、印刷装置1が実行する印刷の印刷解像度に対応するドットピッチをステップS204で算出された印刷装置1の移動速度で除算することにより、当該移動速度に応じた印刷周期を算出する。
速度報知部12は、ステップS204で算出された印刷装置1の移動速度が0mm/secであるか否かを判定する(ステップS206)。印刷装置1の移動速度が0mm/secであると判定すると(ステップS206;Yes)、速度報知部12は、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を全て消灯した状態に制御し(ステップS215)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が0mm/secではないと判定すると(ステップS206;No)、速度報知部12は、ステップS204で算出された印刷装置1の移動速度が第1速度V1未満であるか否かを判定する(ステップS207)。印刷装置1の移動速度が第1速度V1未満であると判定すると(ステップS207;Yes)、速度報知部12は、第1のLED102を点灯した状態に制御すると共に、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御し(ステップS214)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が第1速度V1以上であると判定すると(ステップS207;No)、速度報知部12は、ステップS204で算出された印刷装置1の移動速度が第2速度V2未満であるか否かを判定する(ステップS208)。印刷装置1の移動速度が第2速度V2未満であると判定すると(ステップS208;Yes)、速度報知部12は、第1のLED102及び第2のLED103を点灯した状態に制御すると共に、第3のLED104を消灯した状態に制御し(ステップS213)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が第2速度V2以上であると判定すると(ステップS208;No)、速度報知部12は、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を点灯した状態に制御する(ステップS209)。
次に、速度報知部12は、ステップS204で算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満であるか否かを判定する(ステップS210)。印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満であると判定すると(ステップS210;Yes)、速度報知部12は、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であると判定すると(ステップS210;No)、速度報知部12は、出力装置116が備えるスピーカに警告音声を出力させる(ステップS211)。印刷制御部15は、停止フラグをオン状態に設定し(ステップS212)、サンプリング処理を終了する。
図14に戻り、ステップS106の処理を実行した後、印刷制御部15は、吐出処理の割り込みを設定し、吐出処理を開始する(ステップS107)。以後、印刷制御部15は、後述するステップS113又はS118の処理で吐出処理の割り込みが停止されるまで、図15のフローチャートのステップS205で設定された印刷周期が経過したことを計時回路114が検出する度に吐出処理を割り込ませ、吐出処理を繰り返し実行する。以下、吐出処理の詳細について、図16のフローチャートを参照して説明する。
図16のフローチャートに示す吐出処理が開始されると、まず、印刷制御部15が、図15のフローチャートのステップS203の処理で更新された印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bが記憶部14に記憶されているか否かを判定する(ステップS301)。印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bが記憶部14に記憶されていないと判定すると(ステップS301;No)、処理はステップS305へ移る。
印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bが記憶部14に記憶されていると判定すると(ステップS301;Yes)、印刷制御部15は、インクジェットヘッド制御回路106bに、当該印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ送信させる(ステップS302)。印刷制御部15は、インクジェットヘッド制御回路106bを制御してインクジェットヘッド106aへ吐出コマンドを送信させ(ステップS303)、インクジェットヘッド106aにインクを吐出させ、印刷を実行させる。削除部15bは、ステップS302でインクジェットヘッド106aへ送信された印刷データ108bを、記憶部14から削除する(ステップS304)。
次に、判定部15cが、記憶部14に印刷データ108bが記憶されているか否かを判定する(ステップS305)。記憶部14に印刷データ108bが記憶されていないと判定すると(ステップS305;No)、判定部15cは、完了フラグをオン状態に設定し(ステップS307)、吐出処理を終了する。
一方、記憶部14に印刷データ108bが記憶されていると判定すると(ステップS305;Yes)、判定部15cは、記憶されている印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれているか否かを判定する(ステップS306)。印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていると判定すると(ステップS306;Yes)、判定部15cは、吐出処理を終了する。一方、印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていないと判定すると(ステップS306;No)、判定部15cは、完了フラグをオン状態に設定し(ステップS307)、吐出処理を終了する。
図14に戻り、ステップS107の処理を実行した後、印刷制御部15は、停止フラグがオン状態に設定されているか否かを判定する(ステップS108)。
停止フラグがオン状態になっていると印刷制御部15が判定すると(ステップS108;Yes)、判定部15cが、記憶部14に印刷データ108bが記憶されているか否かを判定する(ステップS109)。記憶部14に印刷データ108bが記憶されていないと判定部15cが判定すると(ステップS109;No)、処理はステップS116へ移る。
一方、記憶部14に印刷データ108bが記憶されていると判定すると(ステップS109;Yes)、判定部15cは、記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれているか否かを判定する(ステップS110)。記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていないと判定すると(ステップS110;No)、処理はステップS116へ移る。
一方、記憶部14に記憶された印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていると判定部15cが判定すると(ステップS110;Yes)、報知部16が、表示部101に、警告画面AWを表示させる(ステップS111)。
印刷制御部15は、サンプリング処理の割り込みを停止し(ステップS112)、吐出処理の割り込みを停止する(ステップS113)。制御回路107は、停止フラグをクリアし(ステップS114)、処理はステップS103へ戻る。なお、停止フラグをクリアするとは、停止フラグを初期状態であるオフ状態に設定することを指す。
ステップS108の処理で、停止フラグがオン状態に設定されていないと判定すると(ステップS108;No)、印刷制御部15は、完了フラグがオン状態に設定されているか否かを判定する(ステップS115)。完了フラグがオン状態に設定されていないと印刷制御部15が判定すると(ステップS115;No)、処理はステップS108へ戻る。
一方、完了フラグがオン状態に設定されていると印刷制御部15が判定すると(ステップS115;Yes)、報知部16が、表示部101に、完了画面CWを表示させる(ステップS116)。
印刷制御部15は、サンプリング処理の割り込みを停止し(ステップS117)、吐出処理の割り込みを停止する(ステップS118)。制御回路107は、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を全て消灯した状態に制御する(ステップS119)。制御回路107は、停止フラグ及び完了フラグをクリアし(ステップS120)、印刷処理を終了する。なお、完了フラグをクリアするとは、完了フラグを初期状態であるオフ状態に設定することを指す。
以上説明したとおり、印刷装置1は、検出装置105によって検出された自装置の移動量と、記憶部14に記憶された印刷データ108bと、に従って印刷対象の画像を印刷媒体2に印刷する。印刷対象の画像のうち印刷機構106によって印刷媒体2に印刷された部分の画像を表す印刷データ108bは削除部15bによって記憶部14から順次削除される一方、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bは記憶部14によって記憶されている。このため、印刷装置1は、自装置の移動方向への1回の移動に従って印刷対象の画像の一部のみが印刷された場合、印刷対象の画像の残りの部分を、自装置の移動方向への再度の移動に従って印刷することにより印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。具体的に、印刷装置1は、自装置の移動方向への1回の移動に従った印刷において、自装置の移動速度が第3速度V3以上であること又は自装置がリフトオフされたと判定されたことに応答して印刷を停止した場合、自装置の移動方向への再度の移動に従った印刷において、印刷対象の画像のうち前回の印刷が停止された時点において未だ印刷していなかった部分の画像を印刷する。このため、印刷装置1は、印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。
さらに、印刷装置1は、自装置の移動速度が大きいほど、点灯するLEDの数を増加させることにより、自装置の移動速度をユーザへ報知する。このため、ユーザは、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度を認識することができる。特に、印刷装置1は、自装置の移動速度と、印刷が停止される閾値である第3速度V3と、の差が小さいほど、点灯するLEDの数を増加させる。このため、ユーザは、印刷装置1を移動させつつ印刷を行う際、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度と第3速度V3との差を認識し、印刷装置1の移動速度が第3速度V3に達することがないように印刷装置1を移動させることで、印刷が停止する可能性を抑制できる。
さらに、印刷装置1は、自装置の移動速度が、印刷が停止される閾値である第3速度V3以上であることに応答して、警告音声を出力する。このため、ユーザは、警告音声に基づいて、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり、印刷が停止されたことを認識できる。
さらに、印刷装置1は、印刷対象の画像の印刷が完了したか否かを判定し、印刷対象の画像の印刷が完了していないと判定した場合には、印刷が完了していない旨をユーザへ報知する情報と、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報と、を含む警告情報を出力する。このため、印刷装置1は、印刷が完了していない場合、警告情報を出力することによって、印刷が完了していない旨をユーザへ報知したり、印刷を再度実行するようにユーザへ促したりすることができる。
さらに、印刷装置1は、印刷が完了したと判定した場合には、印刷が完了した旨をユーザへ報知する完了情報を出力する。このため、ユーザは、完了情報に基づいて印刷が完了したことを認識することができる。従って、印刷装置1は、ユーザが不必要な再印刷を実行してしまう可能性を低減することができる。
さらに、印刷装置1は、記憶部14に印刷データ108bが記憶されており、かつ、当該印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていない場合、印刷が完了したと判定し、完了情報を出力する。このため、印刷装置1は、実際には印刷対象の画像の印刷が完了しているにも関わらず印刷が完了していないと判定してしまい、印刷が完了していない旨をユーザへ誤って報知してしまったり、不必要な再印刷を実行するようにユーザへ促してしまったりする可能性を低減できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、印刷装置1が、自装置の移動速度が第3速度V3以上であることに応答して印刷を停止するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上である場合にも印刷を部分的に実行するようにしてもよい。以下、自装置の移動速度が第3速度V3以上である場合に印刷を部分的に実行する印刷装置1について説明する。
本実施形態に係る印刷装置1の物理的構成と、上記第1実施形態に係る印刷装置1の物理的構成と、は概ね共通であるものの、一部が相違している。以下、本実施形態に係る印刷装置1の物理的構成について、上記第1実施形態に係る印刷装置1の物理的構成との相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る印刷装置1のインクジェットヘッド106aは、図17に示すように、第1ノズル群NG1と、第2ノズル群NG2と、を備えている。第1ノズル群NG1と第2ノズル群NG2とには、それぞれ、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12が属している。具体的に、本実施形態では、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち、第1番目のインクノズルn1〜第6番目のインクノズルn6が、第1ノズル群NG1に属するインクノズルとして予め設定されている。また、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち、第7番目のインクノズルn7〜第12番目のインクノズルn12が、第2ノズル群NG2に属するインクノズルとして予め設定されている。詳細は後述するものの、印刷機構106は、自装置の移動速度に応じて、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6と第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12との両方又は一方によりインクを吐出することで印刷対象の画像を印刷する。
本実施形態に係る印刷装置1の機能的構成と、上記第1実施形態に係る印刷装置1の機能的構成と、は概ね共通であるものの、一部が相違している。以下、本実施形態に係る印刷装置1の機能的構成について、上記第1実施形態に係る印刷装置1の機能的構成との相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る印刷制御部15は、印刷機構106に、印刷装置1の移動速度に応じて異なる数のインクノズルからインクを吐出することにより印刷対象の画像を印刷させる。
具体的に、印刷制御部15は、図18に示すように、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満である場合、印刷機構106に、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6と、第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12と、によりインクを吐出することで印刷対象の画像を印刷させる。言い換えると、印刷装置1の印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満である場合、印刷機構106に、印刷対象の画像のうちの、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6と、第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12と、に対応する部分の画像を印刷させる。
印刷制御部15は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり、かつ、予め設定された第4速度V4未満である場合、印刷機構106に、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6のみによりインクを吐出することで印刷対象の画像を印刷させる。すなわち、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合、第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12はインクを吐出せず、印刷を実行しないように制御する。言い換えると、印刷装置1の印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合、印刷機構106に、印刷対象の画像のうちの、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する部分の画像を印刷させる。
印刷制御部15は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上である場合、印刷機構106に、印刷を停止させる。印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷を停止させた後、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第4速度V4を下回った場合、印刷機構106に、印刷を再開させる。
第1ノズル群及び第2ノズル群は、本発明に係る第1印刷群及び第2印刷群の第1の例である。第3速度V3未満の速度は、本発明に係る第3移動速度の第1の例である。第3速度V3以上であり第4速度V4未満である速度は、本発明に係る第4移動速度の第1の例である。
より具体的に、印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満である場合には、記憶部14に記憶された印刷データ108bのうち、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6と第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12とに対応する印刷データ108bを転送データとして指定する。すなわち、印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満である場合には、印刷データ108bの第1行から第12行のデータを転送データとして指定する。一方、印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合には、記憶部14に記憶された印刷データ108bのうち、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bを転送データとして指定する。すなわち、印刷制御部15は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合には、印刷データ108bの第1行から第6行のデータを転送データとして指定する。
印刷制御部15は、印刷機構106が備えるインクジェットヘッド制御回路106bに、転送データとして指定された印刷データ108bのうち移動距離算出部15aによって算出された印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bを、インクジェットヘッド106aへ送信させる。例えば、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12に対応する印刷データ108bが転送データとして指定されており、かつ、印刷装置1の移動距離に対応する列が第3列目である場合、インクジェットヘッド制御回路106bは、第1行から第12行の印刷データ108bのうち第3列目の印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ送信する。一方、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bが転送データとして指定されており、かつ、印刷装置1の移動距離に対応する列が第3列目である場合、インクジェットヘッド制御回路106bは、第1行から第6行の印刷データ108bのうち第3列目の印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ送信する。削除部15bは、記憶部14に記憶された印刷データ108bがインクジェットヘッド制御回路106bによってインクジェットヘッド106aへ送信される度に、送信された印刷データ108bを記憶部14から順次削除する。
印刷制御部15は、印刷データ108bがインクジェットヘッド106aへ送信されたことに応答して、インクジェットヘッド制御回路106bに、上述した吐出コマンドをインクジェットヘッド106aへ送信させる。インクジェットヘッド106aは、吐出コマンドを受信したことに応答して、受信した印刷データ108bに従ってインクを吐出し、印刷を実行する。具体的に、インクジェットヘッド106aは、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12に対応する印刷データ108bを受信した後、吐出コマンドを受信すると、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12によりインクを吐出し、印刷を実行する。一方、インクジェットヘッド106aは、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bを受信した後、吐出コマンドを受信すると、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6によりインクを吐出し、印刷を実行する。
上述したとおり、第3速度V3は、印刷機構106がインクノズルn1〜n12からインクを吐出することにより印刷対象の画像を印刷する際に、印刷対象の画像を印刷装置1の移動方向へ引き延ばされて歪むことなく印刷可能な印刷装置1の移動速度の最大値である。一方、第4速度V4は、印刷機構106がインクノズルn1〜n6からインクを吐出することにより印刷対象の画像を印刷する際に、印刷対象の画像を印刷装置1の移動方向へ引き延ばされて歪むことなく印刷可能な印刷装置1の移動速度の最大値である。第4速度V4は、実験等の任意の方法により予め設定されている。本実施形態において、第4速度V4は、300mm/secに設定されている。
ここで、印刷機構106が印刷に用いるインクノズルの数が少ないほど、印刷機構106が印刷対象の画像を印刷装置1の移動方向へ引き延ばされて歪むことなく印刷可能な印刷装置1の移動速度の最大値は大きい。以下、この点について説明する。第1に、印刷に用いるインクノズルの数、すなわち、インクを吐出するインクノズルの数が少ないほど、インクの吐出に要する時間は短い。第2に、印刷に用いるインクノズルの数が少ないほど、インクノズルへ送信される印刷データ108bのデータ量は少ない。印刷データ108bのデータ量が少ないほど、印刷データ108bをインクノズルへ送信するために要する時間は短い。このため、印刷機構106が印刷に用いるインクノズルの数が少ないほど、印刷機構106が印刷を正常に実行可能な速度は大きくなる。従って、印刷機構106が印刷に用いるインクノズルの数が少ないほど、印刷機構106が印刷対象の画像を印刷装置1の移動方向へ引き延ばされて歪むことなく印刷可能な印刷装置1の移動速度の最大値は大きい。例えば、上述した第4速度V4は、第3速度V3より大きい。
上述したとおり、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3未満である場合には、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12によりインクを吐出することで印刷を実行し、自装置の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合には、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6によりインクを吐出することで印刷を実行する。このため、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上であるときに第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12によりインクを吐出することで印刷を実行する形態に比べて、印刷対象の画像が自装置の移動方向へ引き延ばされて歪んだ状態で印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。また、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上であることに応答して印刷を停止する上記第1実施形態に係る印刷装置1に比べて、印刷対象の画像のうちのより広い範囲を自装置の移動方向への1回の移動に従って印刷し、印刷品質の低下を抑制できる。すなわち、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が大きいほど印刷に用いるインクノズルの数を減らすことにより、印刷品質の低下を抑制できる。
また、印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷を停止する。このため、印刷装置1は、印刷対象の画像が自装置の移動方向へ引き延ばされて歪んだ状態で印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。また、印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷を停止した後、自装置の移動速度が第4速度V4を下回った場合、印刷を再開する。このため、印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4を以上であることに応答して印刷を停止した後、自装置の移動速度が第4速度V4を下回っても印刷を再開しない形態に比べて、印刷対象の画像のうちのより広い範囲を自装置の移動方向への1回の移動に従って印刷し、印刷品質の低下を抑制できる。
また、上述したとおり、削除部15bは、転送データとして指定された印刷データ108bのうち印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bがインクジェットヘッド106aへ送信されると、送信された印刷データ108bを記憶部14から順次削除する。このため、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって既に印刷された部分の画像を表す印刷データ108bは削除部15bによって記憶部14から順次削除される一方、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bは記憶部14によって記憶されている。従って、本実施形態に係る印刷機構106は、上記第1実施形態に係る印刷機構106と同様に、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従って印刷対象の画像の一部のみが印刷された場合、印刷対象の画像の残りの部分を、印刷装置1の移動方向への再度の移動に従って印刷することにより印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。
具体的に、印刷機構106は、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷において、印刷対象の画像のうちの第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する部分の画像のみが印刷された場合や、印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷が停止された場合、印刷装置1の印刷方向への再度の移動に従った印刷において、印刷対象の画像のうち前回の印刷において未だ印刷していなかった部分の画像を印刷する。これにより、印刷機構106は、印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。
以下、本実施形態に係る印刷装置1による印刷について、図19〜図22を参照して説明する。具体的に、以下、印刷装置1が印刷対象の画像であるテキスト「ABCDE」を印刷する場合を例に用いて説明する。より具体的に、以下、印刷装置1が移動方向への1回の移動に従った印刷を実行する際、印刷装置1の移動速度が図19に示すように推移する場合を例に用いて説明する。印刷装置1は、時刻0から時刻T1までは第3速度V3未満の移動速度で移動し、時刻T1から時刻T2までは第3速度V3以上であり第4速度V4未満である移動速度で移動する。印刷装置1は、時刻T2から時刻T3までは第4速度V4を上回る移動速度で移動し、時刻T3から時刻T4までは第3速度V3以上であり第4速度V4未満である移動速度で移動する。印刷装置1は、時刻T4から時刻T5までは第3速度V3未満の移動速度で移動する。
印刷装置1によって印刷に用いられるインクノズルの数は、図20に示すように、印刷装置1の移動速度の変化に応じて増減する。具体的に、印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3未満である時刻0から時刻T1までの期間と時刻T4から時刻T5までの期間とにおいて、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属する12個のインクノズルn1〜n12を用いて印刷を行う。印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である時刻T1から時刻T2までの期間と時刻T3から時刻T4までの期間とにおいて、第1ノズル群NG1に属する6個のインクノズルn1〜n6を用いて印刷を行う。印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4以上である時刻T2から時刻T3までの期間において、印刷を停止する。
以下、印刷装置1が、時刻0において、図21に示す、印刷媒体2上のx座標がX4の位置に載置されたことに応答して、自装置の移動方向への1回の移動に従った印刷を開始する場合を例に用いて説明する。具体的に、以下、印刷装置1が、時刻0から上述した時刻T1までの間にx座標がX4の位置からx座標がX5の位置まで移動し、時刻T1から上述した時刻T2までの間にx座標がX5の位置からx座標がX6の位置まで移動し、時刻T2から上述した時刻T3までの間にx座標がX6の位置からx座標がX7の位置まで移動し、時刻T3から上述した時刻T4までの間にx座標がX7の位置からx座標がX8の位置まで移動し、時刻T4から上述した時刻T5までの間にx座標がX8の位置からx座標がX9の位置まで移動する場合を例に用いて説明する。
印刷装置1が、x座標がX4の位置に載置され、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷が開始された時点において、記憶部14には、印刷データ108bが記憶されている。印刷機構106は、図21に示すように、x座標がX4の位置からx座標がX5の位置まで印刷装置1が移動する間に、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12に対応する印刷対象の画像を印刷する。これに応答して、削除部15bは、印刷機構106によって印刷された画像を表す、インクノズルn1〜n12に対応する印刷データ108bを記憶部14から削除する。印刷機構106は、x座標がX5の位置からx座標がX6の位置まで印刷装置1が移動する間に、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷対象の画像を印刷する。これに応答して、削除部15bは、印刷機構106によって印刷された画像を表す、インクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bを記憶部14から削除する。印刷機構106は、x座標がX6の位置からx座標がX7の位置まで印刷装置1が移動する間は、印刷を停止する。印刷機構106は、x座標がX7の位置からx座標がX8の位置まで印刷装置1が移動する間に、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷対象の画像を印刷する。これに応答して、削除部15bは、印刷機構106によって印刷された画像を表す、インクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bを記憶部14から削除する。印刷機構106は、x座標がX8の位置からx座標がX9の位置まで印刷装置1が移動する間に、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12に対応する印刷対象の画像を印刷する。これに応答して、削除部15bは、印刷機構106によって印刷された画像を表す、インクノズルn1〜n12に対応する印刷データ108bを記憶部14から削除する。上述した印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷が終了した時点において、記憶部14には、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bのみが記憶されている。
以下、上述した印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷が終了した後、ユーザが、印刷装置1をリフトオフし、印刷媒体2上の、前回の印刷が開始された時点において印刷装置1を載置した位置であるx座標がX4の位置に載置する場合を例に用いて説明する。印刷装置1は、自装置が印刷媒体2上に載置されたことに応答して、印刷を再開する。すなわち、印刷装置1は、x座標がX4の位置に載置されたことに応答して、自装置の移動方向への再度の移動に従った印刷を開始する。移動距離算出部15aは、印刷が再開されたことに応答して、印刷装置1の移動距離を0に設定する。
以下、印刷装置1が、印刷が再開された後、第3速度V3を下回る移動速度で移動する場合を例に用いて説明する。印刷装置1は、自装置の移動方向への再度の移動に従った印刷において、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12によりインクを吐出することで印刷を実行する。印刷が再開された時点において、記憶部14には、印刷対象の画像のうち前回の印刷において未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bのみが記憶されている。
印刷装置1が、x座標がX4の位置からx座標がX5の位置まで移動する間は、印刷装置1の移動距離に対応する印刷データ108bが前回の印刷において削除部15bによって記憶部14から既に削除されているため、印刷は行われない。印刷装置1が、x座標がX5の位置からx座標がX6の位置まで第3速度V3を下回る移動速度で移動すると、印刷機構106は、記憶部14に記憶された印刷データ108bに従って、図22に示すように、第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12に対応する印刷対象の画像を印刷する。なお、印刷装置1が、x座標がX5の位置からx座標がX6の位置まで移動する間は、印刷装置1の移動距離に対応し、かつ、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bが前回の印刷において削除部15bによって記憶部14から既に削除されているため、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6による印刷は行われない。印刷装置1が、x座標がX6の位置からx座標がX7の位置まで第3速度V3を下回る移動速度で移動すると、印刷機構106は、記憶部14に記憶された印刷データ108bに従って、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12に対応する印刷対象の画像を印刷する。印刷装置1が、x座標がX7の位置からx座標がX8の位置まで第3速度V3を下回る移動速度で移動すると、印刷機構106は、記憶部14に記憶された印刷データ108bに従って、第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12に対応する印刷対象の画像を印刷する。なお、印刷装置1が、x座標がX7の位置からx座標がX8の位置まで移動する間は、印刷装置1の移動距離に対応し、かつ、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bが前回の印刷において削除部15bによって記憶部14から既に削除されているため、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6による印刷は行われない。印刷装置1が、x座標がX8の位置からx座標がX9の位置まで移動する間は、印刷装置1の移動距離に対応する印刷データ108bが前回の印刷において削除部15bによって記憶部14から既に削除されているため、印刷は行われない。この結果、印刷対象の画像であるテキスト「ABCDE」の全体が印刷される。
本実施形態に係る判定部15cは、記憶部14に記憶された印刷データ108bが削除部15bによって削除される度に、印刷が完了したか否かを判定すると共に、印刷装置1がリフトオフされたと判定されたことに応答して印刷が停止されたときに、印刷が完了したか否かを判定する。判定部15cが、印刷装置1がリフトオフされたことに応答して印刷が停止されたときに印刷が完了したか否かを判定し、印刷が完了していないと判定した場合、本実施形態に係る報知部16は、出力装置116が備える表示部101に、警告画面AWを表示させる。
本実施形態に係る速度報知部12は、図23に示すように、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が0mm/secである場合、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が0mm/secであることがユーザに報知される。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が0mm/secより大きく第3速度V3未満である場合、第1のLED102を点灯した状態に制御すると共に、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が0mm/secより大きく第3速度V3未満であることがユーザに報知される。すなわち、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が0mm/secより大きく第3速度V3未満である場合、第1のLED102を用いて印刷装置1の移動速度を報知する。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合、第1のLED102及び第2のLED103を点灯した状態に制御すると共に、第3のLED104を消灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満であることがユーザに報知される。すなわち、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合、第1のLED102及び第2のLED103を用いて印刷装置1の移動速度を報知する。
第1のLED102及び第2のLED103は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第4の例である。0mm/sec以上であり第3速度V3未満である速度は、本発明に係る第1移動速度の第4の例である。第3速度V3以上であり第4速度V4未満である速度は、本発明に係る第2移動速度の第4の例である。
速度報知部12は、移動速度算出部11によって算出された印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上である場合、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を点灯した状態に制御する。これにより、印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上であることがユーザへ報知される。すなわち、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上である場合、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を用いて印刷装置1の移動速度を報知する。
第2のLED103及び第3のLED104は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第5の例である。第3速度V3以上であり第4速度V4未満である速度は、本発明に係る第1移動速度の第5の例である。第4速度V4以上である速度は、本発明に係る第2移動速度の第5の例である。また、第1のLED102及び第3のLED104は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第6の例である。0mm/sec以上であり第3速度V3未満である速度は、本発明に係る第1移動速度の第6の例である。第4速度V4以上である速度は、本発明に係る第2移動速度の第6の例である。
上述したとおり、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度と、印刷に用いられるインクノズルの数が減らされる閾値である第3速度V3と、の大小関係に応じて、点灯されるLEDの数を増減させる。このため、ユーザは、印刷装置1を移動させつつ印刷を行う際、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度と第3速度V3との大小関係を認識し、印刷装置1の移動速度が第3速度V3に達することがないように印刷装置1を移動させることで、印刷に用いられるインクノズルの数が減らされる可能性を抑制できる。
さらに、速度報知部12は、印刷装置1の移動速度と、印刷が停止される閾値である第4速度V4と、の大小関係に応じて、点灯するLEDの数を増加させる。このため、ユーザは、印刷装置1を移動させつつ印刷を行う際、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度と第4速度V4との差を認識し、印刷装置1の移動速度が第4速度V4に達することがないように印刷装置1を移動させることで、印刷が停止する可能性を抑制できる。
以下、上述の物理的・機能的構成を備える本実施形態に係る印刷装置1が実行する印刷処理について説明する。本実施形態に係る印刷装置1は、上記第1実施形態において説明した、図14のフローチャートに示す印刷処理と概ね同様の印刷処理を実行する。ただし、本実施形態に係る印刷装置1は、印刷処理において、上述した図15のフローチャートに示すサンプリング処理の代わりに図24のフローチャートに示すサンプリング処理を実行し、上述した図16のフローチャートに示す吐出処理の代わりに図25のフローチャートに示す吐出処理を実行する。以下、本実施形態に係る印刷装置1が実行する印刷処理について、上記第1実施形態に係る印刷装置1が実行する印刷処理との相違点を中心に説明する。
まず、図24のフローチャートを参照して、本実施形態に係る印刷装置1が実行するサンプリング処理について説明する。
図24のフローチャートに示すサンプリング処理が開始されると、まず、検出信号取得部10が、検出装置105から検出信号を取得する(ステップS401)。印刷制御部15は、ステップS401で取得された検出信号がリフトオフ条件を満たすか否かを判定することにより、印刷装置1がリフトオフされたか否かを判定する(ステップS402)。印刷装置1がリフトオフされたと判定すると(ステップS402;Yes)、印刷制御部15は、停止フラグをオン状態に設定し(ステップS413)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1がリフトオフされていないと印刷制御部15が判定すると(ステップS402;No)、移動距離算出部15aが、ステップS401で取得された検出信号が含む移動量検出信号が示す印刷装置1のサンプリング周期あたりの移動量を加算することにより印刷装置1の移動距離を更新する(ステップS403)。移動速度算出部11は、ステップS401で取得された検出信号が含む移動量検出信号が示す印刷装置1のサンプリング周期あたりの移動量を当該サンプリング周期で除算することにより印刷装置1の移動速度を算出する(ステップS404)。印刷制御部15は、ステップS404で算出された印刷装置1の移動速度に応じて印刷周期を設定する(ステップS405)。
速度報知部12は、ステップS404で算出された印刷装置1の移動速度が0mm/secであるか否かを判定する(ステップS406)。印刷装置1の移動速度が0mm/secであると判定すると(ステップS406;Yes)、速度報知部12は、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を全て消灯した状態に制御する(ステップS414)。印刷制御部15は、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6と第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12とに対応する印刷データ108bを転送データとして指定し(ステップS416)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が0mm/secではないと判定すると(ステップS406;No)、速度報知部12は、ステップS404で算出された印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満であるか否かを判定する(ステップS407)。印刷装置1の移動速度が第3速度V3未満であると判定すると(ステップS407;Yes)、速度報知部12は、第1のLED102を点灯した状態に制御すると共に、第2のLED103及び第3のLED104を消灯した状態に制御する(ステップS415)。印刷制御部15は、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6と第2ノズル群NG2に属するインクノズルn7〜n12とに対応する印刷データ108bを転送データとして指定し(ステップS416)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が第3速度V3以上であると速度報知部12が判定すると(ステップS407;No)、印刷制御部15は、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する印刷データ108bを転送データとして指定する(ステップS408)。
速度報知部12は、ステップS404で算出された印刷装置1の移動速度が第4速度V4未満であるか否かを判定する(ステップS409)。印刷装置1の移動速度が第4速度V4未満であると判定すると(ステップS409;Yes)、速度報知部12は、第1のLED102及び第2のLED103を点灯した状態に制御すると共に、第3のLED104を消灯した状態に制御し(ステップS412)、サンプリング処理を終了する。
一方、印刷装置1の移動速度が第4速度V4以上であると判定すると(ステップS409;No)、速度報知部12は、第1のLED102、第2のLED103及び第3のLED104を点灯した状態に制御する(ステップS410)。印刷制御部15は、スキップフラグをオン状態に設定し(ステップS411)、サンプリング処理を終了する。
次に、図25のフローチャートを参照して、本実施形態に係る印刷装置1が実行する吐出処理について説明する。
図25のフローチャートに示す吐出処理が開始されると、まず、印刷制御部15が、スキップフラグがオン状態に設定されているか否かを判定する(ステップS501)。スキップフラグがオン状態に設定されていると判定すると(ステップS501;Yes)、印刷制御部15は、吐出処理を終了する。
スキップフラグがオン状態に設定されていないと判定すると(ステップS501;No)、印刷制御部15は、図24のフローチャートのステップS408又はS416の処理で転送データとして指定された印刷データ108bのうちの、図24のフローチャートのステップS403の処理で更新された印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bが記憶部14に記憶されているか否かを判定する(ステップS502)。転送データとして指定された印刷データ108bのうちの、印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bが記憶部14に記憶されていないと判定すると(ステップS502;No)、処理はステップS506へ移る。
転送データとして指定された印刷データ108bのうちの、印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bが記憶部14に記憶されていると判定すると(ステップS502;Yes)、印刷制御部15は、インクジェットヘッド制御回路106bに、当該印刷データ108bをインクジェットヘッド106aへ送信させる(ステップS503)。印刷制御部15は、インクジェットヘッド制御回路106bを制御してインクジェットヘッド106aへ吐出コマンドを送信させ(ステップS504)、インクジェットヘッド106aにインクを吐出させ、印刷を実行させる。削除部15bは、ステップS504でインクジェットヘッド106aへ送信された印刷データ108bを、記憶部14から削除する(ステップS505)。
次に、判定部15cが、記憶部14に印刷データ108bが記憶されているか否かを判定する(ステップS506)。記憶部14に印刷データ108bが記憶されていないと判定すると(ステップS506;No)、判定部15cは、完了フラグをオン状態に設定し(ステップS508)、吐出処理を終了する。
一方、記憶部14に印刷データ108bが記憶されていると判定すると(ステップS506;Yes)、判定部15cは、記憶されている印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれているか否かを判定する(ステップS507)。印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていると判定すると(ステップS507;Yes)、判定部15cは、吐出処理を終了する。一方、印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていないと判定すると(ステップS507;No)、判定部15cは、完了フラグをオン状態に設定し(ステップS508)、吐出処理を終了する。
なお、本実施形態に係る制御回路107は、図14のフローチャートのステップS114の処理において、停止フラグと共にスキップフラグをクリアし、S120の処理において、停止フラグ及び完了フラグと共にスキップフラグをクリアする。なお、スキップフラグをクリアするとは、スキップフラグを初期状態であるオフ状態に設定することを指す。
以上説明したとおり、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3未満である場合には、第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12によりインクを吐出することで印刷を実行し、自装置の移動速度が第3速度V3以上であり第4速度V4未満である場合には、第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6によりインクを吐出することで印刷を実行する。このため、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上であるときに第1ノズル群NG1及び第2ノズル群NG2に属するインクノズルn1〜n12によりインクを吐出することで印刷を実行する形態に比べて、印刷対象の画像が自装置の移動方向へ引き延ばされて歪んだ状態で印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。また、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上であることに応答して印刷を停止する上記第1実施形態に係る印刷装置1に比べて、印刷対象の画像のうちのより広い範囲を移動方向への自装置の1回の移動に従って印刷し、印刷品質の低下を抑制できる。すなわち、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が大きいほど印刷に用いるインクノズルの数を減らすことにより、印刷品質の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷を停止する。このため、本実施形態に係る印刷装置1は、印刷対象の画像が自装置の移動方向へ引き延ばされて歪んだ状態で印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷を停止した後、自装置の移動速度が第4速度V4を下回った場合、印刷を再開する。このため、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度が第4速度V4を以上であることに応答して印刷を停止した後、自装置の移動速度が第4速度V4を下回っても印刷を再開しない形態に比べて、印刷対象の画像のうちのより広い範囲を移動方向への自装置の1回の移動に従って印刷し、印刷品質の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る削除部15bは、転送データとして指定された印刷データ108bのうち印刷装置1の移動距離に対応する列の印刷データ108bがインクジェットヘッド106aへ送信されると、送信された印刷データ108bを記憶部14から順次削除する。このため、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって既に印刷された部分の画像を表す印刷データ108bは削除部15bによって記憶部14から順次削除される一方、印刷対象の画像のうち印刷機構106によって未だ印刷されていない部分の画像を表す印刷データ108bは記憶部14によって記憶されている。従って、本実施形態に係る印刷装置1は、上記第1実施形態に係る印刷装置1と同様に、自装置の移動方向への1回の移動に従って印刷対象の画像の一部のみが印刷された場合、印刷対象の画像の残りの部分を、自装置の移動方向への再度の移動に従って印刷することにより印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。具体的に、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動方向への1回の移動に従った印刷において、印刷対象の画像のうちの第1ノズル群NG1に属するインクノズルn1〜n6に対応する部分の画像のみが印刷された場合や、自装置の移動速度が第4速度V4以上であることに応答して印刷が停止された場合、自装置の印刷方向への再度の移動に従った印刷において、印刷対象の画像のうち前回の印刷において未だ印刷していなかった部分の画像を印刷する。このため、本実施形態に係る印刷装置1は、印刷対象の画像の全体を印刷し、印刷対象の画像の一部のみが印刷されることによる印刷品質の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度と、印刷に用いられるインクノズルの数が減らされる閾値である第3速度V3と、の大小関係に応じて、点灯されるLEDの数を増減させる。このため、ユーザは、本実施形態に係る印刷装置1を移動させつつ印刷を行う際、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度と第3速度V3との大小関係を認識し、印刷装置1の移動速度が第3速度V3に達することがないように印刷装置1を移動させることで、印刷に用いられるインクノズルの数が減らされる可能性を抑制できる。
また、本実施形態に係る印刷装置1は、自装置の移動速度と、印刷が停止される閾値である第4速度V4と、の大小関係に応じて、点灯するLEDの数を増加させる。このため、ユーザは、本実施形態に係る印刷装置1を移動させつつ印刷を行う際、点灯されたLEDの数に基づいて印刷装置1の移動速度と第4速度V4との差を認識し、印刷装置1の移動速度が第4速度V4に達することがないように印刷装置1を移動させることで、印刷が停止する可能性を抑制できる。
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記第2実施形態では、印刷装置1が、第1ノズル群NG1と第2ノズル群NG2との2つのノズル群を備えているものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、任意の数のノズル群を備えることができる。以下、任意の整数をkとして、k個のノズル群を備える印刷装置1について説明する。
各ノズル群にインクジェットヘッド106aが備える複数のインクノズルのうち何れのインクノズルが属するかは、図26に示すように、予め設定されている。例えば、インクジェットヘッド106aが備える複数のインクノズルのうちの、3番目のインクノズルn3、(k+3)番目のインクノズル及び(2k+3)番目のインクノズルを含む複数のインクノズルが、第3ノズル群に属するインクノズルとして予め設定されている。
印刷装置1は、自装置の移動速度に応じて、k個のノズル群のうち何れを用いて印刷を実行するかを決定する。具体的に、印刷装置1は、図27に示す印刷ノズル群データDTを予め記憶している。印刷ノズル群データDTは、速度範囲を示すデータと、印刷装置1の移動速度が当該速度範囲に属する場合に印刷装置1が印刷に用いるノズル群を示すデータと、を互いに対応付けて含んでいる。図27中の第5速度V5、第6速度V6及び第7速度V7は、実験等の任意の手法によって予め設定されている。第7速度V7は第6速度V6より大きく、第6速度V6は第5速度V5より大きい。印刷装置1は、自装置の移動速度と、印刷ノズル群データDTと、に従って印刷に用いるノズル群を特定し、特定されたノズル群に属するインクノズルによりインクを吐出することで印刷を実行する。例えば、印刷装置1は、自装置の移動速度が第5速度V5未満である場合には、第1ノズル群NG1、第2ノズル群NG2、第3ノズル群、・・・、第kノズル群に属するインクノズルからインクを吐出することにより印刷を実行する。また、印刷装置1は、自装置の移動速度が第5速度V5以上であり第6速度V6未満である場合には、第2ノズル群NG2、第3ノズル群、・・・、第kノズル群に属するインクノズルからインクを吐出することにより印刷を実行する。第1ノズル群〜第kノズル群は、本発明に係る第1印刷群及び第2印刷群の第2の例である。また、第5速度V5未満の速度は、本発明に係る第3移動速度の第2の例であり、第5速度V5以上であり第6速度V6未満の速度は、本発明に係る第4移動速度の第2の例である。
この形態によれば、印刷装置1は、自装置の移動速度に応じて印刷に用いるインクノズルの数を増減させることにより、印刷品質の低下を抑制できる。
上記第1、第2実施形態では、印刷装置1は、第1のLED102、第2のLED103及び第4のLED104の3つのLEDを備えているものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、任意の数のLEDを備え、これらのLEDのうちの点灯するLEDの数を自装置の移動速度に応じて増減させることにより自装置の移動速度をユーザへ報知してもよい。例えば、印刷装置1は、自装置の移動速度と第3速度V3との差が小さいほど点灯するLEDの数を増やせばよい。
上記第1、第2実施形態では、印刷装置1は、複数のLEDを備え、自装置の移動速度に応じて点灯するLEDの数を増減させることによって、自装置の移動速度をユーザへ報知するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、任意の方法によって自装置の移動速度をユーザへ報知することができる。例えば、印刷装置1は、第1の表示装置と、第2の表示装置と、第3の表示装置と、を備え、これらの表示装置における画像の表示・非表示を切り替えることにより、自装置の移動速度をユーザへ報知してもよい。第1の表示装置、第2の表示装置及び第3の表示装置は、何れも、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置である。具体的に、印刷装置1は、上記第1、第2実施形態におけるLEDを点灯した状態に制御する処理に代えて表示装置を画像が表示された状態に制御する処理を実行し、LEDを消灯した状態に制御する処理に代えて表示装置を画像が表示されていない状態に制御する処理を実行すればよい。第1の表示装置、第2の表示装置及び第3の表示装置は、本発明に係る第1報知手段及び第2報知手段の第7の例である。
あるいは、印刷装置1は、自装置の移動速度に応じて異なる態様でLEDを点滅させることにより自装置の移動速度をユーザへ報知してもよい。例えば、印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3未満であり第2速度V2以上である場合には第1時間間隔おきにLEDを点滅させ、自装置の移動速度が第2速度V2未満であり第1速度V1以上である場合には第2時間間隔おきにLEDを点滅させ、自装置の移動速度が第1速度V1未満である場合には第3時間間隔おきにLEDを点滅させればよい。第1時間間隔、第2時間間隔及び第3時間間隔は、互いに長さが異なる時間間隔である。
あるいは、印刷装置1は、自装置の移動速度に応じて異なる音声を出力装置116のスピーカから出力することにより自装置の移動速度をユーザへ報知してもよい。例えば、印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3未満であり第2速度V2以上である場合には第1音声を出力し、自装置の移動速度が第2速度V2未満であり第1速度V1以上である場合には第2音声を出力し、自装置の移動速度が第1速度V1未満である場合には第3音声を出力すればよい。第1音声、第2音声及び第3音声は、互いに異なる音声である。
上記第1、第2実施形態では、印刷装置1は、印刷対象の画像の印刷が完了していないと判定した場合、印刷対象の画像の印刷が完了していない旨をユーザへ報知する情報と、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報と、を含む警告情報を出力するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、警告情報は、任意の情報を含むことができる。例えば、印刷装置1は、自装置の移動速度が第3速度V3以上であることに応答して印刷が停止されたときに印刷が完了したか否かを判定し、印刷が完了していないと判定した場合、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報と、印刷を再度実行する際に自装置の移動速度を減速するようにユーザへ促す情報と、を含む警告情報を出力してもよい。また、警告情報は、上述した印刷対象の画像の印刷が完了していない旨をユーザへ報知する情報と、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報と、印刷を再度実行する際に自装置の移動速度を減速するようにユーザへ促す情報と、の何れか一つを含むこととしてもよい。
上記第1、第2実施形態では、印刷装置1が、警告画面AWを表示部101に表示することによって警告情報を出力し、完了画面CWを表示部101に表示することによって完了情報を出力するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、警告情報及び完了情報を、任意の方法で出力することができる。例えば、印刷装置1は、出力装置116が備えるスピーカを用い、警告情報を表す第1報知音声を出力することにより、警告情報を出力してもよい。また、印刷装置1は、出力装置116が備えるスピーカを用い、完了情報を表す第2報知音声を出力することにより、完了情報を出力してもよい。
上記第2実施形態では、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち第1ノズル群NG1に属するインクノズルと第2ノズル群NG2に属するインクノズルとが予め設定されているものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち第1ノズル群NG1に属するインクノズルと第2ノズル群NG2に属するインクノズルとを、印刷装置1が自ら設定してもよい。例えば、印刷装置1は、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち第1ノズル群NG1に属するインクノズルと第2ノズル群NG2に属するインクノズルとを、印刷データ108bに従って設定することができる。具体的に、印刷装置1は、印刷データ108bのうちのインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていない行の印刷データ108bに対応するインクノズルを第2ノズル群NG2に属するインクノズルとして設定し、その他のインクノズルを第1ノズル群NG1に属するインクノズルとして設定すればよい。例えば、印刷装置1は、印刷データ108bの5行目の印刷データ108bにインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていないことに応答して、5行目の印刷データ108bに対応するインクノズルである第5番目のインクノズルn5を第2ノズル群NG2に属するインクノズルとして設定する。この形態によれば、インクノズルn1〜n12のうち第1ノズル群NG1に属するインクノズルと第2ノズル群NG2に属するインクノズルとをユーザが予め設定する必要がないため、ユーザによる操作の負担が軽減される。さらに、印刷対象の画像を印刷しないインクノズルである、印刷データ108bのうちのインクを吐出させる制御を行うデータが含まれていない行の印刷データ108bに対応するインクノズルを第2ノズル群NG2に属するインクノズルとして設定することにより、印刷に用いるインクノズルを減らした場合における印刷品質の低下を抑制できる。言い換えると、印刷装置1は、インクノズルn1〜n12のうち第1ノズル群NG1に属するインクノズルと第2ノズル群NG2に属するインクノズルとを印刷データ108bに応じて設定することにより、印刷品質の低下を抑制できる。
上記第2実施形態では、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち、第1番目のインクノズルn1〜第6番目のインクノズルn6が第1ノズル群NG1に属するインクノズルとして設定されており、第7番目のインクノズルn7〜第12番目のインクノズルn12が第2ノズル群NG2に属するインクノズルとして設定されているものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、インクジェットヘッド106aが備えるインクノズルn1〜n12のうち第1ノズル群NG1に属するインクノズルと第2ノズル群NG2に属するインクノズルとは、任意の方法で設定できる。例えば、インクノズルn1〜n12のうちの奇数番目のインクノズルを第1ノズル群NG1に属するインクノズルとして設定し、偶数番目のインクノズルを第2ノズル群NG2として設定してもよい。なお、第1ノズル群NG1に属するインクノズルの数と第2ノズル群NG2に属するインクノズルの数とは互いに異なってもよいし、互いに同一であってもよい。
上記第1、第2実施形態では、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷が終了した後、ユーザが印刷装置1をリフトオフし、印刷装置1の移動方向への再度の移動に従った印刷の開始位置に載置するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、ユーザは、印刷装置1の移動方向への1回の移動に従った印刷が終了した後、印刷装置1を、リフトオフすることなく移動方向とは反対の方向へ移動させ、印刷装置1の移動方向への再度の移動に従った印刷の開始位置へ移動させてもよい。
上記第1、第2実施形態では、印刷装置1が、単一のノズル列NLを備えているものとして説明したが、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、任意の数のノズル列NLを備えることができる。
上記第1実施形態では、印刷装置1が、インクジェット方式により印刷対象の画像を印刷するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、任意の方法で印刷対象の画像を印刷できる。例えば、印刷装置1は、感熱方式や熱転写方式により印刷対象の画像を印刷してもよい。
また、上記第1、第2実施形態では、外部装置によって生成された印刷データ108bを、無線通信モジュール113を介して当該外部装置から取得するものとして説明したが、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、任意の方法によって印刷データ108bを取得できる。例えば、印刷装置1は、USB(Universal Serial Bus)ポート等の有線通信インタフェースを備え、当該有線通信インタフェースを用いて外部の記憶媒体との間でデータの送受信を行うことにより、当該記憶媒体に記憶された印刷データ108bを取得してもよい。あるいは、印刷装置1は、ユーザによる入力部115を用いた印刷内容の入力を受け付け、入力された印刷内容に応じて印刷データ108bを生成してもよい。
また、上記第1、第2実施形態では、印刷装置1が、手動走査型の印刷装置であるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、印刷装置1は、印刷媒体2上で自装置を移動させる移動手段を備え、移動に合わせて印刷を行う自走式の印刷装置であってもよい。
また、上記第1、第2実施形態では、検出装置105は、光学センサを備え、当該光学センサにより印刷装置1の移動方向及び移動量を検出するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、検出装置105は、任意の方法によって印刷装置1の移動方向及び移動量を検出することができる。例えば、検出装置105は、機械式エンコーダにより印刷装置1の移動方向及び移動量を検出してもよい。具体的に、機械式エンコーダは、印刷装置1が印刷媒体2に載置された状態において印刷媒体2に接触し、印刷装置1の印刷媒体2上における移動に従って回転する回転部材を備え、当該回転部材の回転に従って印刷装置1の移動方向及び移動量を検出すればよい。
また、上記第1、第2実施形態では、検出装置105が、レーザ式光学センサを有するものとして説明したが、これは一例に過ぎず、検出装置105は、任意の種類の光学センサを有するものであってよい。例えば、検出装置105は、LED光源から印刷媒体2の表面へ光を照射し、印刷媒体2の表面の凹凸により生じた影を撮像し解析することによって印刷装置1の移動方向及び移動量を示す移動量検出信号を出力するLED式光学センサを有していてもよい。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた印刷装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る印刷装置として機能させることもできる。すなわち、本発明に係る印刷装置の各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、当該既存の情報処理装置等を本発明に係る印刷装置として機能させることができる。
なお、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
印刷データを記憶する記憶部と、
インクを吐出可能な複数のインクノズルを有し、印刷媒体に対して相対的に移動しながら、前記印刷データに基づいて前記複数のインクノズルの何れかからインクを吐出して前記印刷媒体に印刷対象の画像の印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記印刷媒体に対する相対的な移動量を検出する検出装置と、
を備え、
前記印刷ヘッドは、前記移動量に基づく前記印刷ヘッドの前記印刷媒体に対する移動速度が第1移動速度を越えたとき、前記複数のインクノズルの少なくとも一部を使用しないように制御され、
前記記憶部は、前記印刷対象の画像のうちの前記印刷ヘッドにより印刷されていない部分に対応する前記印刷データを記憶していることを特徴とする印刷装置。
(付記2)
前記印刷対象の画像の印刷が完了したか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記印刷対象の画像の印刷が完了していないと判定した場合に、印刷が完了していない旨をユーザへ報知する情報と、印刷を再度実行するようにユーザへ促す情報と、印刷を再度実行する際に前記印刷装置の移動速度を減速するようにユーザへ促す情報と、の少なくとも一つを含む警告情報を出力する報知部と、をさらに備えることを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
(付記3)
前記印刷装置の移動速度を報知する速度報知部をさらに備えることを特徴とする付記1又は2に記載の印刷装置。
(付記4)
前記記憶部は、
前記印刷ヘッドが前記印刷対象の画像の印刷を開始する前に、前記印刷対象の画像に対応する前記印刷データを記憶しており、
前記印刷ヘッドが印刷を行っている間に、前記印刷対象の画像のうちの前記印刷ヘッドにより印刷された部分に対応する前記印刷データが削除されるように制御されることを特徴とする付記1乃至3の何れか1つに記載の印刷装置。
(付記5)
前記印刷ヘッドは、前記移動速度が前記第1移動速度を越えたとき、前記複数のインクノズルの全部を使用しないように制御されることを特徴とする付記1乃至4の何れか1つに記載の印刷装置。
(付記6)
前記印刷ヘッドは、前記移動速度が、前記第1移動速度を越えたとき、前記複数のインクノズルの一部を使用しないように制御され、前記移動速度が、前記第1移動速度より大きい第2移動速度を越えたとき、前記複数のインクノズルの全部を使用しないように制御されることを特徴とする付記1乃至4の何れか1つに記載の印刷装置。
(付記7)
前記印刷ヘッドにおける前記複数のインクノズルは複数のノズル群に分割され、
前記印刷ヘッドは、前記移動速度が、前記第1移動速度を越えていて前記第2移動速度以下であるとき、前記複数のノズル群のうちの少なくとも1つの前記ノズル群を使用しないように制御されることを特徴とする付記6に記載の印刷装置。
(付記8)
前記印刷ヘッドは、前記移動速度が前記第1移動速度を越えていて前記第2移動速度以下であるとき、前記移動速度が高いほど、前記複数のノズル群のうちの使用しない前記ノズル群の数を増加させるように制御されることを特徴とする付記7に記載の印刷装置。
(付記9)
前記複数のノズル群は前記複数のインクノズルに対して前記印刷データに従って設定されることを特徴とする付記7又は8に記載の印刷装置。
(付記10)
印刷装置により実行される印刷方法であって、
前記印刷装置は、
印刷データを記憶する記憶部と、
インクを吐出可能な複数のインクノズルを有し、印刷媒体に対して相対的に移動しながら、前記印刷データに基づいて前記複数のインクノズルの何れかからインクを吐出して前記印刷媒体に印刷対象の画像の印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記印刷媒体に対する相対的な移動量を検出する検出装置と、
を備え、
前記印刷方法は、
前記移動量に基づく前記印刷ヘッドの前記印刷媒体に対する移動速度が第1移動速度を越えたとき、前記複数のインクノズルの少なくとも一部を使用しないように前記印刷ヘッドを制御し、
前記記憶部に、前記印刷対象の画像のうちの前記印刷ヘッドにより印刷されていない部分に対応する前記印刷データを記憶させることを特徴とする印刷方法。
(付記11)
印刷装置を制御するコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記印刷装置は、
印刷データを記憶する記憶部と、
インクを吐出可能な複数のインクノズルを有し、印刷媒体に対して相対的に移動しながら、前記印刷データに基づいて前記複数のインクノズルの何れかからインクを吐出して前記印刷媒体に印刷対象の画像の印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記印刷媒体に対する相対的な移動量を検出する検出装置と、
を備え、
前記コンピュータは、前記プログラムを実行することにより、
前記移動量に基づく前記印刷ヘッドの前記印刷媒体に対する移動速度が第1移動速度を越えたとき、前記複数のインクノズルの少なくとも一部を使用しないように前記印刷ヘッドを制御させ、
前記記憶部に、前記印刷対象の画像のうちの前記印刷ヘッドにより印刷されていない部分に対応する前記印刷データを記憶させることを特徴とするプログラム。