以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明に係るシート搬送装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の画像形成装置の装置本体に画像形成装置の構成要素の一部として設けられて使用されることがある。この場合、シート搬送装置はシートを原稿として搬送し、画像読取装置で読み取る構成の一部や、画像形成装置でシートをメディアとして搬送し、画像をシートに複写する構成の一部として使用されることがある。なお、画像読取装置で読み取った読取情報は、画像形成装置の画像形成部(画像形成手段)によってシートに画像として形成される。すなわち、画像読取装置で読み取った画像は、画像形成部によってシートに複写される。以下の実施形態はインクジェット方式の複合プリント装置を例に挙げるが、インクジェット方式以外の複写機やFAX、読取専用のドキュメントスキャナ等の機器にも利用可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る複合プリント装置100を示す斜視図である。本実施形態の複合プリント装置100は、概略、原稿読取り搬送部1とプリント部315とを有して構成される。プリント部315は、インクジェット方式のプリントヘッドを備え、シートに対してプリントヘッドを走査させることにより、シートに画像などをプリントする。このプリント部315は、原稿読取り搬送部1で読み取った原稿をシートにプリントすることができる。すなわち、本実施形態の複合プリント装置100は、複写装置の機能を有する。また、プリント部315は、ホスト装置から送られる画像データに基づいて記録を行う。
原稿読取り搬送部1は、シート搬送機構を有する原稿積載圧板部40とシートの原稿を読み取る読取り部41とから構成される。そして、原稿積載圧板部40において回動可能な搬送部を備えてUターンパスとストレートパスを切替えて原稿シートを搬送し、また、読取り部41によってそれぞれのパスにおける搬送の間に原稿を読み取る。また、原稿読取り搬送部1の読み取り部41は、その原稿ガラスに載置された原稿を読み取ることもできる。この読み取りの際には、原稿を原稿ガラスに置くために、原稿積載圧板部40の全体が回動して開くよう構成されている。原稿読取り搬送部1は、さらに操作部320を備え、これにより、ユーザー(操作者)は操作部320を介して種々の入力をし、また、複合プリント装置100からの情報を取得することができる。以下、原稿読取り搬送部1の詳細な構成について説明する。
図2(a)および(b)は、図1に示した原稿読取り搬送部1における原稿積載圧板部40の詳細を示す図であり、搬送部がそれぞれUターンパスおよびストレートパスを形成した状態を示している。また、図3(a)および(b)は、図2(a)および(b)に示した状態の原稿読取り搬送部1の断面図である。図2および図3において、原稿読取搬送部1の原稿積載圧板部40には、第1原稿搬送路(第1搬送部によって提供される)51、第2原稿搬送路(第2搬送部によって提供される)52、および第3原稿搬送路(第3搬送部によって提供される)53が構成される。第1原稿搬送路51は、所定の回動軸の回りに回動可能に設けられる。これにより、第1原稿搬送路51が、図2(a)および図3(a)に示す第1姿勢をとることによってUターンパスを形成し、図2(b)および図3(b)に示す第2姿勢をとることによってストレートパスを形成する。
第1原稿搬送路51には、複数枚積載された原稿Sの最上位のものに当接してこれをピックアップするピックアップローラ3が設けられている。また、ピックアップローラ3のシート搬送方向における下流側には、ピックアップローラ3によってピックアップされた原稿Sを1枚ずつ分離して給送するための、互いに圧接した分離ローラ5および分離パッド4が設けられている。第2原稿搬送路52は、シート搬送の上流端側で第1原稿搬送路51と接続し、下流端側で第3原稿搬送路と接続している。これらの3つの搬送路によってシート搬送経路が形成される。第3原稿搬送路53の下流端側には、原稿排紙トレイ18が設けられている。第3原稿搬送路53には、第1搬送ローラ7と、その下流端側の、原稿Sを原稿排紙トレイ18に排出するための第2搬送ローラ9が設けられている。また、第3原稿搬送路53には、原稿Sの先端部及び後端部を検出する不図示の原稿エッジセンサ等が取り付けられている。
図3(a)および図4(a)に示すように、第1原稿搬送路51が第1回動位置(第1の姿勢)にあるときは、第1原稿搬送路51、第2原稿搬送路52および第3原稿搬送路53によって、図4(a)において矢印で表される原稿Sを搬送する搬送パスを形成する。この第1の姿勢は水平に近い姿勢である。この搬送パスの形態を、以下では第1搬送形態とする。また、図3(b)および図4(b)に示すように、第1原稿搬送路51を所定の回動軸回りに90度よりも大きく回動させた、第1搬送路51の第2回動位置(第2の姿勢に移行した位置)のときは、第2原稿搬送路52はシート搬送パスから退避する。そして、第1原稿搬送路51と第3原稿搬送路53によって、図4(b)において矢印で表される原稿Sを搬送する搬送パスを形成する。この形態を、以下では第2搬送形態とする。第1搬送形態と第2搬送形態のいずれの搬送形態でも原稿Sを搬送することができる。第1原稿搬送路51が第1姿勢から第2姿勢へ移動する動作およびその機構の詳細は後述する。ここで、図4(a)および(b)は、第1〜第3原稿搬送路51、52、53によって形成される搬送路を示す図であり、それぞれUターンパスとストレートパスを示している。
図2(a)、(b)および図3(a)、(b)を再び参照すると、読み取り部41は、密着型イメージセンサ(以下、CISという)30を有して、CIS30によって原稿の読み取りを行う。CIS30はLEDを搭載しそのLEDから原稿Sに光を照射する。そして、原稿からの反射光を自己集束型ロッドレンズアレイでセンサ素子に結像して画像情報を読取る。CIS30は、図3(a)、(b)において、左右方向に移動可能に構成されている。これにより、原稿ガラス22上に載置された原稿を読取る、ブック原稿読取(フラットベッドスキャン)時は、図3(a)、(b)の左側から右側に走査しつつ原稿ガラス22上に載置された原稿を読取る。CIS30は、また、第3原稿搬送路53の下側の位置である、シート原稿読取位置(読取白地板8の対向位置;図4に示す位置)に停止、固定される。この位置で、Uターンパスまたはすストレートパスを搬送される原稿シートの原稿をADFガラス23を介して読み取ることができる。
駆動モータ(不図示)の駆動力は、図7(a)、(b)にて後述されるギア列によって分離ローラ5、ピックアップローラ3、第1搬送ローラ7と第2搬送ローラ9に伝達される。原稿読取搬送部1が、図4(a)に示す第1搬送形態にある状態でユーザーが操作部320を介して読取開始を指示すると、駆動モータが回転する。それに連動して分離ローラ5、ピックアップローラ3が回転するとともにピックアップアーム6が回動しピックアップローラ3を原稿Sに押圧する。そして、ピックアップローラ3の回転によって、原稿シートSは搬送方向下流に向かって搬送される。原稿シートSは分離部に到達すると、分離ローラ5および分離パッド4によって原稿Sが1枚に分離され、最上位の原稿Sが分離搬送される。また、分離された原稿シートSはピックアップローラ3と分離ローラ5の搬送力によって第1原稿搬送路51、第2原稿搬送路52に沿って搬送され、第3原稿搬送路53へと送り込まれる。第3原稿搬送路では、駆動モータを駆動源とする第1搬送ローラ7によって原稿シートSがCIS30による読取部へ搬送される。分離ローラ5は第1搬送ローラ7と第2搬送ローラ9より遅い周速で回転するようになっており、駆動モータを連続回転させると1枚目の原稿Sと2枚目の原稿Sの間に所定量の間隔が開くようになっている。
原稿読取搬送部1では、不図示の原稿エッジセンサにより原稿Sの先端部が検知されると、その位置から所定量搬送されたところで、原稿Sを搬送しながら、CIS30による原稿表面の画像情報の読み取りが開始される。そして、不図示の原稿エッジセンサにより原稿Sの後端部が検知されると、その位置から所定量搬送されたところで、CIS30による画像情報の読取りを終了する。不図示の原稿エッジセンサにより後続の原稿Sがあると判断された場合は、駆動モータを継続回転させ、続けて次の原稿Sを読み取り、不図示の原稿有無センサが次の原稿無しを検知するまで原稿搬送を続けて次の原稿Sの画像情報を同様に読み取る。また、CIS30によって読み取られた後、原稿シートSは、原稿積載圧板部40に設けられた、排紙ガイド19に案内されながら第2搬送ローラ9により原稿排紙トレイ18に排出される。
一方、原稿読取搬送部1が図4(b)に示す第2搬送形態にある状態にあるときは、同様に駆動モータの回転によって、分離ローラ5、ピックアップローラ3が回転するとともにピックアップアーム6が回動しピックアップローラ3を原稿Sに押圧する。そして、ピックアップローラ3の回転によって、原稿シートSは搬送方向下流側に搬送される。原稿シートSは分離部に到達すると、分離ローラ5及び分離パッド4によって原稿Sが1枚ずつに分離され、最上位の原稿Sが分離搬送される。そして、分離された原稿Sは、第1搬送形態のときとは異なり、ピックアップローラ3と分離ローラ5の搬送力により第1原稿搬送路51から、第3原稿搬送路53へと送り込まれる。以下、第3原稿搬送路では、第1搬送形態のときと同様に原稿Sの読み取りが行われる。
図5は、上述した構成を備える本実施形態の複合プリント装置100の制御構成を示すブロック図である。図5において、主制御基板301は、装置全体を制御する主制御IC302を有する。この主制御IC302は、マイクロプロセッサユニット(MPU)306、読取画像処理部307、プリント画像処理部308、画像符号化部309などを有して構成され、システムバス303を介して装置全体を制御する。ROM304は、MPU306の動作のためのプログラムコード、初期値データ、テーブルデータなどを格納している。RAM305は、計算バッファおよび画像メモリ等に使用される。読取部310は、上述したCIS30、読取画像補正部312、読取系駆動部313、CIS30とは異なるCIS314等により構成される。読取部310は、読取系駆動部313を駆動してCIS30を移動させ、画像を光学的に順次読取って電気的な画像信号に変換する。この信号にたいして読取画像補正部312でシェーディング補正等が行われる。さらに読取画像処理部307で画像処理を行って高精細な画像データを出力する。原稿Sの両面を読み取る際は、CIS314をCIS30と同時に動作させる。プリント部315は、上述したように、プリント系駆動部318による駆動によってプリントヘッド316を所定の位置に移動させる。これとともに、プリント画像処理部308で作成した画像データをプリント信号出力部317を介してプリントヘッド316に出力することによって画像をプリントする。操作パネル320は、操作パネルインターフェイス部323を介して画像などを表示部321で表示し、操作部322からの操作入力を受け付ける。音声出力部325は、音声データを信号に変換してスピーカ326からメッセージ音声を出力する。通信接続部327は、通信網328、電話機329と接続され、音声や符号化データの入出力を行う。符号化データは、画像符号化部309で画像に相互変換される。外部インターフェイス部331は例えばUSB規格のインターフェースであり、パーソナルコンピュータなどの外部機器332と接続される。不揮発メモリ333はフラッシュメモリなどからなり、停電時等にワークデータや画像データが消去されないように記憶する。無線LANモジュール334は、装置外のアクセスポイントを介して画像入出力を行う。電源供給部340は、主制御基板と読取部310、プリント部315、操作パネル320などの動作に必要な電力を供給する。
以下、上述した構成を有する複合プリント装置100による動作である、PCスキャン動作、コピー動作、ファクシミリ受信動作、プリント動作のそれぞれについて説明する。
<PCスキャン動作>
読取部310のCIS30(およびCIS314)によって読取られた原稿の画情報は、先ず読取画像補正部312によってシェーディング補正等の処理をされる。次に、読取画像処理部307によって画像データとしてRAM305に展開され、次に、画像符号化部309によって例えばJPEG形式に圧縮符号化される。符号化されたデータは外部インターフェイス部331を通り外部機器332に出力される。
<コピー動作>
読取部310のCIS30(およびCIS314)によって読取られた原稿の画情報は、読取画像補正部312によってシェーディング補正等の処理が施される。次に、読取画像処理部307によって画像データとしてRAM305に展開され、次に、画像符号化部309によって、例えばJPEG形式に圧縮符号化され、いったん蓄積される。蓄積された画像データは、プリント画像処理部308に順次送出され、プリント用画像に変換される。プリント用画像はプリント信号出力部317を介してプリントヘッド316に出力され、これにより、シートにプリントが行われる。
<ファクシミリ送信動作>
読取部310のCIS30(およびCIS314)によって読取られた原稿の画情報は、読取画像補正部312によってシェーディング補正等の処理が施される。次に、読取画像処理部307によって画像データとしてRAM305に展開され、次に、画像符号化部309によって、例えばMR(モデファイド・リード)形式に圧縮符号化され、いったん蓄積される。蓄積された画像データは、通信接続部327でファクシミリ通信の手順信号の送受信を行い、その後、画像データの送信を開始する。送信開始後も読取を継続して画像データを蓄積しながら送信を続ける。
<ファクシミリ受信動作>
通信網328から着信があると、通信接続部327でファクシミリ通信の手順信号の送受信を行い、その後、画像データの受信を開始する。画像データは画像符号化部309で復調され、RAM305に展開される。展開された画像データは、プリント画像処理部308に順次送出され、プリント用画像に変換される。プリント用画像はプリント信号出力部317を介してプリントヘッド316に出力される。これにより、シートにプリントが行われる。
<プリント動作>
外部機器332から発信され、外部インターフェイス部331で受けたコマンドおよび受信パラメータは、MPU306で解釈され、画像符号化部309で画像データとしてRAM305に展開される。展開された画像データは、プリント画像処理部308に順次送出され、プリント用画像に変換される。プリント用画像はプリント信号出力部317を介してプリントヘッド316に出力される。これにより、シートにプリントが行われる。
以下、シート搬送パスの切替え動作およびその機構について詳細に説明する。
図6(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係るシート搬送路の切替え動作およびその機構を説明する図である。
上述したように、第1原稿搬送路51は、第1原稿搬送路回動軸401の回りに回動可能に軸支されている。また、第2原稿搬送路52は、第2原稿搬送路回動軸402の回りに回動可能に軸支されている。そして、その回動軸に設けられた不図示のねじりコイルばねによって、第2原稿搬送路52は第1原稿搬送路51に向かって付勢されている。なお、本明細書では、第1原稿搬送路51および第2原稿搬送路52は、搬送路自体を指すときもあるが、図6(a)〜(c)で説明するように、搬送路自体が1つのユニットとして回動する場合のそのユニットを指す場合もある。なお、第1搬送形態は、排紙トレイに対する回動の角度が所定の角度の位置として表すことができ、また、第2搬送形態は、その回動の角度が上記所定の角度より大きい位置として表すことができる。
第1原稿搬送路51と第2原稿搬送路52が、図6(a)に示す第1搬送形態にあるとき、これら搬送路の境界は、搬送路が互いに櫛歯状に形成されており、これにより、搬送路が切り替わる際の原稿のひっかかりなどを抑制することができる。また、第1原稿搬送路51には第1原稿搬送路回動カム403が設けられ、一方、第2原稿搬送路52には第2原稿搬送路回動カム404が設けられている。そして、第1原稿搬送路51と第2原稿搬送路52はこれらのカムを介して接し、相互のカム動作によって、図6(a)〜(c)に示すそれぞれの位置に移るための回動が行われる。
具体的には、上述したように、第2原稿搬送路52は、第1原稿搬送路51に対してコイルばねによって付勢されている。この状態において、例えば、図6(a)に示す第1搬送形態から、ユーザーが手動で第1原稿搬送路51を反時計回りに回動させる。その結果、その回動によって第1原稿搬送路回動カム403と第2原稿搬送路回動カム404とが相互作用し、図6(b)に示すように、第1原稿搬送路51とともに第2原稿搬送路52も反時計回りに回動する。本実施形態では、第1原稿搬送路51が100度回動すると、回転止めに突き当たり、その位置が不図示の固定機構によって固定される。この状態は、図6(c)に示す第2搬送形態である。逆方向の時計回りの回動も同様であり、図6(c)に示す状態に対して、ユーザーが手動で第1原稿搬送路51を時計回りに回動させることにより、順次、図6(b)に示す状態を経て、図6(a)に示す状態に移動することができる。
図6(a)に示す第1搬送形態では、給紙から排紙までの搬送路が、搬送方向が略180度曲げられて搬送されるUターン搬送路(Uターンパス)であり、給送する原稿や排出された原稿を含んだ装置の実使用面積を小さくすることができる。一方、第2搬送形態では、シート搬送方向がUターン搬送に比べて直線的であり(ストレートパス)、装置の実使用面積は広くなるが、搬送原稿にカールがつきにくく、搬送抵抗が小さいため厚紙のような幅広い紙種へ対応することができる。本実施形態によれば、第1搬送形態と第2搬送形態とを上述した動作によって切替可能であり、実使用面積を優先するか、対応紙種を優先するかをユーザーが選択することができる。
また、第1搬送形態から第2搬送形態に変化する動きの中で、第1原稿搬送路51と第2原稿搬送路52とは互いに干渉することがないことから、搬送方向に直角な幅方向の搬送路を全域に形成することができる。その結果、原稿のひっかかりなどによる搬送不良を低減することができる。すなわち、可動搬送路である第1原稿搬送路51は、第1搬送形態(図6(a))と第2搬送形態(図6(c))の2つの回動位置(搬送部の2つの姿勢)で搬送路を形成する。その場合、第1搬送形態では、第1原稿搬送路51は第2原稿搬送路52と搬送路を接し、第2原稿搬送路52は第3原稿搬送路53と搬送路を接する。一方、第2搬送形態では、第1原稿搬送路51は第3原稿搬送路53と搬送路を接して、第2原稿搬送路52は搬送路を構成しない。これにより、第1原稿搬送路51は、第3原稿搬送路53と第2搬送形態を構成する回動位置から第1搬送形態の位置に回動するとき、第3原稿搬送路53から単純に離れる動作とすることができる。また、逆に、第2搬送形態を構成する位置に回動するとき、第3原稿搬送路53に単純に接する動作とすることができる。その結果、第1原稿搬送路51が回動する際に、第3原稿搬送路53と干渉する部分が無い搬送路構成とすることができる。また、第1原稿搬送路51は、その回動の際にカムを介して第2原稿搬送路52を同様に回動させるので、この回動において搬送路同士の干渉を避けることができる。
さらに、第2搬送形態においては、分離ローラ5と第1搬送ローラ7の間における搬送路長を第1搬送形態に比べて短くすることができる。これにより、第2搬送形態では第1搬送形態に比べて搬送方向に短い原稿の読み取りに対応することができる。さらに搬送時間の短縮にも寄与できる。また、第1原稿搬送路51と第2原稿搬送路52はそれぞれカム部のみで当接していることから、回動動作は搬送パスの通紙面に対して何ら影響を及ぼさず、常に良好な通紙面の状態を維持することが可能となる。
図7(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る原稿読取搬送部1における搬送ローラ等を駆動するための駆動機構を説明する図である。
図7(b)において、より良く示されるように、本実施形態の駆動機構を構成するギア列は、ギア列M4とギア列M5との2つのギア列から構成される。このうち、ギア列M5は、第1原稿搬送路51のユニット内に設けられたものである。ギア列M5のギアの一部にピックアップローラ3と分離ローラ5の回動軸がそれぞれ接続している。一方、ギア列M4は、原稿積載圧板部40内に設けられている。ギア列M4のギアの一部に第1搬送ローラ7と第2搬送ローラ9の回動軸がそれぞれ接続している。これら第1および第2搬送ローラ7、9は第3原稿搬送路53を構成している。図7(a)は図6(a)に示す第1搬送形態に対応し、図7(b)は図6(b)に示す第2搬送形態に対応している。
ギア列M4の端部のギア502に駆動モータMの回動軸に取り付けられたピニオンギアが係合することにより、駆動モータMの駆動力は、ギア列M4におけるギア、中間ギア500、ギア列M5におけるギアをそれぞれ介して上述したそれぞれのローラに伝達される。駆動モータMはブラシ式DCモータであり、モータ軸上に配設された不図示のコードホイールフィルムに印刷された検出スリットパターンを不図示のエンコーダセンサで読取ることにより回転量を検出するロータリーエンコーダがモータ近傍に配設されている。エンコーダからのパルス信号に基づいてパルス幅変調(PWM)制御で駆動モータMの回転制御が行なわれる。
ギア列M4とギア列M5の中間には、これらギア列の回転を伝達する中間ギア500が配置されている。この中間ギア500は、上述した第1原稿搬送路51の回動軸401(回動中心)と同じ軸線を回転軸とするよう軸支されている。これにより、図6(a)〜(c)にて上述した第1原稿搬送路51が回動する際は、中間ギア500は停止した状態で、第1原稿搬送路51とともにギア列M5の全体が回動する。すなわち、第1原稿搬送路51に配置されたギア列M5の端部のギア501が遊星ギアとして、サンギアとしての中間ギア500の周囲を周回する。そして、ギア列M5のギア501以外の他のギアは、ギア501の周回に応じた回転に従って回転する。駆動機構を以上のように構成することにより、第1原稿搬送路51を回動させることによる搬送路の切替え構成において、そのための駆動機構を簡易な構成とすることが可能となる。
なお、駆動モータMを駆動してそれぞれのローラを回転させるときは、中間ギア500は回転することにより、ギア列M4におけるギアの回転をギア列M5におけるギアに伝えることはもちろんである。
また、本実施形態では、駆動モータMが原稿シートを搬送する方向に回転駆動するとき、中間ギア500は、第1原稿搬送路51が第1搬送形態から第2搬送形態に回動する方向に回転する。これにより、第2搬送形態において原稿シートを搬送するとき、第1原稿搬送路51が開く方向に駆動力が与えられるので、第1原稿搬送路51が閉じることを抑制することができる。
また、ユーザーの操作により第1原稿搬送路51を第1搬送形態から第2搬送形態に移す際に、中間ギア500より下流側のギア列M5が回転する。このとき、この回転に応じて分離ローラ5、ピックアップローラ3が原稿シートの搬送方向と逆方向に回転するようギア列M5を構成している。これにより、ユーザーが第1搬送形態で原稿シートを搬送中に紙詰まりが発生した場合、ユーザーが第1原稿搬送路51を第2搬送位置に移動しても原稿シートには搬送方向に力が加わらないので、容易に紙詰まりした原稿シートを取り除くことができる。
図8(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る原稿読取搬送部1における積載トレイ14のサイドガイドユニットの構成を示す斜視図であり、図8(b)は、ユニットを分解して示す図である。以下、この図と、図2(a)および(b)を参照して、積載トレイ14において原稿シートの幅方向の端部を搬送方向にガイドするサイドガイドユニットの構成について説明する。
サイドガイドユニット200は、第1原稿搬送路51に設けられる。サイドガイドユニット200は、原稿シートの幅方向端部にそれぞれ当接して原稿を搬送方向にガイドする一対のガイド部材210、211を有している。ガイド部材210、211はそれぞれラック部210c、211cを一体に備え、これらラック部は第1原稿搬送路51の幅方向中央に配置されたピニオンギア201とそれぞれ噛合うよう配置されている。すなわち、ラック部はサイドガイドベースに結合されている。また、ガイド部材210、211は、それぞれ原稿シート幅方向(搬送方向と直交する方向)にスライド可能に構成されている。これにより、サイドガイドユニット200のガイド部材210、211は、原稿搬送方向の中心線に対して対称的に移動する。ガイド部210、211は、それぞれシートの原稿面と対向するサイドガイドベース210a、211aと、原稿シート側端部と当接して原稿シートを搬送方向にガイドする規制部210b、211bを備える。これら規制部は、搬送方向と平行かつ原稿面に直交する平面部210d、211dを備えている。サイドガイドベース210a、211aは、規制部をそれらが下方に延在するよう保持している。図2(b)に示す原稿給紙ガイド203は、第1搬送形態において、原稿載置トレイ14と対向する側に設けられている。すなわち、第1原稿搬送路51の上面カバー101と原稿給紙ガイド203は、サイドガイドユニット200を挟み込むように配置されている。第1原稿搬送路51の上面カバー101は開口部204を有し、この開口部を介してサイドガイドユニット200のサイドガイドベース210aが露出している。サイドガイドベース210aには穴部210eが設けられ、開口部204と対応する位置に穴部210eが位置するよう構成されている。
サイドガイドベース210aに設けられた穴部210eは、ユーザーがサイドガイドユニット200をスライド操作する際の指を掛ける操作部として機能する。すなわち、ユーザーは、この穴部210eに指を掛けてサイドガイドベース210aを移動させるようにしてスライドを生じさせる。これにより、サイドガイドベースやラック部などスライドのための移動する部材の重心のz方向の位置と操作部の位置を略同じ位置とすることができ、スライドのための操作によるガイド部材の回転を抑制することができる。その結果、スライド時のかじり等が無くなり、サイドガイドの移動をスムースに操作することが可能となる。
なお、ユーザーが指を掛ける操作部として、サイドガイドベースの板面を貫通する穴部210eに代えて、板面を貫通しない凹部にしてもよい。また、サイドガイドベースの通紙面側と反対側、すなわちサイドガイドベースの上面から突出する突起部を設けてユーザーの指掛けとしてもよい。
図2(a)に示す第1搬送形態では、ユーザーは、第1原稿搬送路51の上面カバー101の開口204から露出している穴部210eの縁に指を掛けサイドガイドユニット200のスライド操作を行うことができる。その際、ガイド部材210、211は、原稿載置トレイ14に積載された原稿シートの上方に位置していて、規制部210b、211bは、原稿シートの上方から下方にむけて延在している。原稿積載トレイには、凹部214a、214bが形成され、規制部210b、211bは、原稿積載部の間口高さよりも高く構成されて、規制部210b、211bの先端部が凹部214a、214bに入り込む構成となっている。この凹部214a、214bは、サイドガイドユニット200の可動域に対応して設けてある。すなわち、対応する原稿シート幅の最大幅から最小幅までの領域に対応して凹部が形成されている。規制部210b、211bの先端部が凹部214a・214bに入り込んで、トレイのセット面よりも下に位置する。これにより、原稿セット時に規制部の下に原稿が潜り込まないようにすることができる。サイドガイドをスライドする機構(ラック・ピニオン部;移動機構)を、原稿シートの上方の第1原稿搬送路51の上面カバー101側に設けることにより、原稿積載トレイ14側にはサイドガイドを案内するためのガイド穴形状が不要となる。ユーザーは、原稿積載トレイ14にセットした原稿シートを給紙方向にずらしながらセット位置まで原稿を押し込みセットすることが一般的である。その際、サイドガイドのガイド穴に原稿先端が引っかかり、そのままセットを続けると原稿シートン破損等の不具合が生じ得る。これに対し、本実施形態では、上述したとおり、原稿積載トレイ14の原稿セット面に原稿のセットを妨げる穴形状が無い。その結果、原稿シートのセットをスムースに行うことができる。さらに、穴形状が無いことにより、原稿搬送装置内部への異物の混入を防げる利点もある。また、上述したピックアップローラ3、分離ローラ5も、第1搬送路51を形成する第1搬送路カバー101に設けられている。サイドガイドユニット200と給紙部を形成するピックアップローラ3、分離ローラ5が同一の搬送路部材に取り付けられていることにより、互いの取り付け位置を精度よく配置することができる。これにより、ピックアップローラが原稿の中央部に正確に配置されない場合に、原稿引き込み時に左右バランスを崩し斜行の原因になって直進性能の低下を生じることを抑制することができる。
第2搬送形態では、図2(b)に示すように、原稿給紙ガイド203は原稿の下側を支持する支持面として機能する。ユーザーは、サイドガイドユニット200の規制部210bの先端を把持して、サイドガイドをその移動方向にスライド操作することができる。この第2搬送形態においても、サイドガイドユニット200と給紙部を形成するピックアップローラ3、分離ローラ5が同一の部材に取り付けられていることにより、斜行を抑制することが可能となる。
以上のとおり、本実施形態のサイドガイドユニットの構成によれば、サイドガイドが対をなす構成であっても良好な操作性を確保できる。さらに、サイドガイドと分離部の幅方向での位置精度を高く維持できるため、斜行抑制等、分離性能の向上を図ることができる。また、本実施形態のサイドガイドユニットは、搬送経路を切り換え可能なシート搬送装置においても、複数の搬送形態で、共通にシートの搬送方向と直交する方向の位置を規制することができる。これにより、いずれの搬送経路の形態においても好適に原稿をガイド可能かつ操作性が良好なサイドガイドを構成することができる。また、第1搬送形態ではガイドベースはトレイに積載されるシートの上を非接触で覆い、第2搬送形形態では前記ガイドベースはシート積載部の一部となる。
図9(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る積載トレイ14における、ユーザーが設置操作において参照する指標を説明する図である。図9(a)および(b)は、それぞれ第1搬送形態および第2搬送形態における原稿載置部を示している。
図9(a)に示すように、第1原稿搬送路51の上側の被覆部材をなす上面カバー101に、シート状の原稿の表面(表向き)を表す指標と、この原稿の搬送方向下流側の方向を表す矢印の指標(方向指標)からなる搬送路上面カバー指標102が設けられている。これらの指標は第1搬送形態に対応している。また、これらの指標は凹状に刻印した部分によって形成されたものである。また、図9(b)に示すように、第1原稿搬送路51の下側の被覆部材をなす下面カバー103に、原稿シートの裏面(裏向き)を表す指標と、原稿シートの搬送方向下流側の方向を表す矢印の指標からなる搬送路下面カバー指標104が設けられている。これらの指標は第2搬送形態に対応している。これらの指標も凹状に刻印した部分によって形成されたものである。
図9(a)に示す第1搬送形態では、上面カバー101に設けられた搬送路上面カバー指標102に従い、複数の原稿シートを、それぞれ表面を上にして、かつそれらの最上部のシート(第1ページ)の表面が見える状態で載置する。また、その際、原稿シートを、第1原稿搬送路51へ図の矢印Aの方向に挿入し載置トレイ14に載置する。このシートを挿入して載置トレイ14に載置する際、ユーザーは上面カバー指標102のシート表面を表す指標102Aを見ながら載置する操作を行うことができる。これにより、ユーザーは、載置操作の間、シートの面と、表面を表す指標102Aと比較し、仮に、載置するシートにおいて、例えば原稿が記載された表面が見えない場合は、シートの表裏が逆であることに気付くことができる。
なお、第1搬送形態における本載置操作の際は、ユーザーは、搬送路下面カバー103は格納状態であり搬送路下面カバー指標104を見ることはできない。この状態で原稿を読取ると、原稿シートは搬送路下面カバー103これに対向するカバーの間を通過する。そして、原稿排紙トレイ18上には、原稿の第1ページの表面が原稿排紙トレイ18の表面に接するように排出され、順次排出された後、最終ページが裏面を上側にして排出される。
図9(b)に示す第2搬送形態では、搬送路下面カバー103を見ることができ、そのカバーに設けられた搬送路下面カバー指標104に従い、複数の原稿シートを、その最下部のシート(最終ページ)の裏面が見える状態で載置する。第1原稿搬送路51へ図の矢印Bの方向に挿入して載置する。このシートを挿入して載置部に載置する際も同様、ユーザーは下面カバー指標104のシート裏面を表す指標104Aを見ながら載置する操作を行うことができる。これにより、ユーザーは、載置操作の間、シートの面と、裏面を表す指標104Aと比較し、シートの表裏が逆である場合は、それに気付くことができる。
なお、第2搬送形態における本載置操作の際は、搬送路上面カバー101は、シート載置する箇所の背面側にあって搬送路上面カバー指標102を見ることができない。この状態で原稿を読取ると、原稿排紙トレイ18上には、原稿の最終ページの裏面が原稿排紙トレイ18表面に接するように排出され、順次排出され、第1ページが表面を上位側にして排出される。
以上のように、本実施形態によれば、ユーザーは、シートを載置部に載置する際に、その表裏に誤りがないかを確認しながら載置することが可能となる。その結果、原稿の読取り結果を得るまで表裏が逆であったことに気が付かない、といったことを防止でき、装置の操作性を向上させることができる。
また、第1原稿搬送路上面カバー指標102と搬送路下面カバー指標104は、それぞれ第1搬送形態、第2搬送形態における操作時においてそれぞれが単独で、ユーザーが見ることができる。すなわち、いずれの搬送形態においても、その原稿シート載置操作では、同時に両方の指標を見ることはなく、ユーザーは、原稿の表裏、挿入方向を明確に認識することが可能となる。さらに、本実施形態では、搬送路上面カバー指標102と搬送路下面カバー指標104における指標は、一方が表で他方が裏の互に逆の関係であり、より認識が容易となる。
(第2実施形態)
図10(a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係る原稿読取り搬送部の構成を示す模式的断面図であり、それぞれ第1搬送形態および第2搬送形態を示している。図10(a)に示すように、第2原稿搬送路52の第3通紙面503を構成する円弧は、第1搬送ローラ7と略同心であり、また、第3通紙面503は、第1原稿搬送路51の第1通紙面501と接するように配置されている。また、第3通紙面503は、第1原稿搬送路51の第2通紙面502とも接するように配置されている。この搬送路構成によって、第1原稿搬送路51の回動軸401(図6参照)と第1搬送ローラ7の回動軸を同一にすることができる。
図11は、第2実施形態に係る原稿読取り搬送部の駆動機構を示す図であり、図7と同様の図である。本実施形態が図7に示す第1実施形態と異なる点は、上述したように、第1搬送ローラ7と中間ギア505が同軸であることである。これにより、中間ギアと第1搬送ローラギア505の回動軸を共用でき、駆動ギア列のコストダウンを図ることが可能となる。
(他の実施形態)
上述した実施形態は、第1搬送路の回動における2つの位置で搬送路を切替えて搬送を行う形態に関するものであるが、本発明の適用はこの形態に限られない。第1搬送路の回動における3つ以上の複数の位置で搬送路を切替えて搬送を行う形態であっても本発明を適用できることは上述の説明からも明らかである。