JP6879018B2 - 溶接継手の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、突き合わせ溶接により溶接継手を作製する方法に関する。
コンテナ船には、複数の厚鋼板を突き合わせ溶接した溶接継手が用いられる。溶接継手には、耐脆性破壊発生特性、すなわち、脆性破壊が発生しにくいことが要求される。耐脆性破壊発生特性を向上させるために、以下の方法が提案されている。
特許文献1では、溶接継手において、板厚中央部での溶接金属の硬さが、熱影響を受けていない母材の板厚方向平均硬さの110%以下にされる。特許文献2では、鋼板の表面から板厚の1/6の位置までの範囲の降伏応力YPSと、板厚の1/4の位置から板厚中心までの範囲の降伏応力YPCとの比(YPS/YPC)が、1.3以下にされる。これらの技術は、いずれも、硬さを高くしすぎないことにより、耐脆性破壊発生特性を向上させるものである。
特許第4528089号公報 特許第5435837号公報
しかし、従来の技術で大入熱溶接により作製された継手をディープノッチ試験で評価すると、十分に高い破壊靱性値が得られないことが多かった。したがって、そのような継手の耐脆性破壊発生特性は十分には高くなかった。これは、溶接により熱影響を受けた部分の組織が粗大化して靱性の劣化が生ずること、溶接部の板厚中心部における残留応力が引張となりやすいこと等が原因であった。このため、板厚が80mmを超える極厚材を用いる場合は、従来の技術では、十分に高い破壊靱性値を有する溶接継手の製造が困難となることが予想される。
そこで、本発明の目的は、耐脆性破壊発生特性が向上された溶接継手の作製方法を提供することである。
本発明の実施形態による溶接継手の作製方法は、突き合わせ溶接によって2枚の鋼板が接合された溶接継手の作製方法であって、
2枚の鋼板の端面を対向させ、対向する前記端面の間隙において、前記鋼板の厚みの50%以上80%未満の領域に1パスの大入熱溶接を施すことにより前記2枚の鋼板を接合して第1溶接部を形成する大入熱溶接工程と、
前記間隙内で前記第1溶接部の表面に、複数パスの小入熱溶接により溶接金属を積層して第2溶接部を形成する小入熱溶接工程と、を含み、
前記第2溶接部の幅が、前記鋼板の厚みの50%以上であり、
前記第1および第2溶接部を含む溶接継手のシャルピー吸収エネルギーが、−20℃で40J以上である、溶接継手の作製方法である。
この作製方法により、耐脆性破壊発生特性が向上された溶接継手を作製することができる。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る、溶接継手の作製方法を説明するための鋼板の断面図であり、2枚の鋼板の端部を対向させた状態を示す。 図1Bは、本発明の一実施形態に係る、溶接継手の作製方法を説明するための鋼板の断面図であり、大入熱溶接工程を実施した後の状態を示す。 図1Cは、本発明の一実施形態に係る、溶接継手の作製方法を説明するための鋼板の断面図であり、小入熱溶接工程を実施した後の状態を示す。 図2Aは、本発明の一実施形態に係る製造方法により大入熱溶接工程を実施する際の鋼板の断面図である。 図2Bは、本発明の他の実施形態に係る製造方法により大入熱溶接工程を実施する際の鋼板の断面図である。 図3は、ディープノッチ試験に用いた試験片の平面図である。
本明細書において、「大入熱溶接」とは、入熱量が20〜100kJ/mmである溶接を意味する。また、本明細書において、「小入熱溶接」とは、入熱量が0.5〜5kJ/mmである溶接を意味する。
本実施形態の溶接継手の作製方法は、2枚の鋼板が溶接接合された溶接継手の作製方法であって、大入熱溶接工程と、小入熱溶接工程とを含む。以下、本実施形態の溶接継手の作製方法について、詳細に説明する。
[鋼板]
鋼板の厚みは、特に限定されず、たとえば、50mm以上の厚みを有する鋼板を用いてもよく、さらに、80mm以上の厚みを有する鋼板を用いてもよい。本実施形態の方法によれば、このような厚い鋼板を用いる場合でも、耐脆性破壊発生特性が向上された溶接継手を作製することができる。2枚の鋼板は、実質的に互いに同じ厚みを有することが好ましい。
鋼板の組成は限定されない。一例として、鋼板は、質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.001〜0.20%、N:0.02%以下、P:0.02%以下、およびS:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなるものであってもよい。
また、母材強度の向上、溶接継手の靭性の向上等、要求される特性に応じて、上記組成を変更した鋼板を用いてもよい。たとえば、上記組成において、Feの一部に代えて、Ni:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、W:1.0%以下、Co:1.0%以下、V:0.1%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、Zr:0.05%以下、Ta:0.05%以下、Hf:0.005%以下、REM(希土類元素):0.005%以下、Y:0.005%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、Te:0.01%以下、Se:0.005%以下、およびB:0.005%以下の1種または2種以上を含有させてもよい。
図1A〜図1Cは、本発明の一実施形態に係る、溶接継手の作製方法を説明するための鋼板の断面図である。図1A〜図1Cには、溶接線に垂直な面に対応する断面を示している。
[大入熱溶接工程]
大入熱溶接工程では、2枚の鋼板10を大入熱溶接により突き合わせ溶接する。大入熱溶接は、エレクトロガスアーク溶接(EGW)、サブマージアーク溶接(SAW)などの公知の溶接方法を採用して実施することができる。
まず、2枚の鋼板の端面10aを対向させる。この状態が、図1Aに示されている。鋼板10の端面10aは、予め、開先面に形成されている。以下、鋼板10の厚み方向に関して2枚の鋼板10の間で、開先が広い側を「表側」といい、開先が狭い側を「裏側」という。
そして、対向する端面10aの間隙Gにおいて、前記鋼板の厚み方向に関して、裏側(開先の狭い側)から鋼板10の厚みtの50%以上80%未満の領域に1パスの大入熱溶接を施すことにより2枚の鋼板10を接合して第1溶接部12を形成する(図1B参照)。この際、間隙Gにおいて、表側(開先の広い側)の領域に空間が確保されるように、裏側に溶接金属を形成する。
図2Aは、本発明の一実施形態に係る製造方法により大入熱溶接工程を実施する際の鋼板の断面図である。図2Aを参照して、間隙Gにおいて、表側の領域に空間が確保されるように溶接金属を裏側に形成する方法の一例を説明する。この例では、大入熱溶接を、エレクトロガスアーク溶接(EGW)により行う。
まず、端面10aが開先面に形成された2枚の鋼板10を用意する。この例では、端面10aは鋼板10の表側の面および裏側の面に斜交する平面状である。そして、2枚の鋼板10の端面10aを対向させ、この状態を維持して、端面10aの長手方向が鉛直方向(重力の方向)に沿うように2枚の鋼板10を立てる。2枚の鋼板10を、端面10aの長手方向が鉛直方向に沿うように立てた後、2枚の鋼板10の端面10aを対向させてもよい。図2Aは水平面(重力の方向に垂直な面)に沿う断面であり、鉛直方向は図2Aの紙面に垂直な方向である。大入熱溶接は、間隙Gの下端から上端へ向かって行う。
間隙Gの裏側に、裏当材18を配置する。裏当材18としては、たとえば、セラミックス製の板や、水冷銅板(内部に冷却水を通す流路が形成された銅板)を用いることができる。裏当材18の長手方向(鉛直方向)に沿う長さは、溶接予定領域の長さ以上である。裏当材18は、2枚の鋼板10にまたがるように、溶接予定領域に沿わせて鋼板10の裏側の面に当接させる。
間隙Gの表側には、内部に冷却水を流す流路(図示せず)が形成された水冷銅板19を配置する。水冷銅板19には、内部の流路に冷却水を導入するための導入配管25Aと、内部の流路から冷却水を排出する排出配管25Bとが接続されている。水冷銅板19は、厚板状の基体部19aと、基体部19aの一方の主面の中央部から突出する突出部19bとを有する。水冷銅板19の間隙Gに沿う長さ(鉛直方向の長さ)は、溶接予定領域の長さより短い。
突出部19bを間隙Gに挿入し、基体部19aを鋼板10の表側の面に当接させる。突出部19bは、図2Aの断面において台形状である。この状態で、突出部19bの側面は、実質的に全面に渡って鋼板10の端面10aに密接する。これにより、間隙G内に、端面10a、裏当材18、および水冷銅板19で側方を囲まれた領域(以下、「閉じ込め領域」という。)21が形成される。ここで、「側方」とは、端面の長手方向に直行する方向をいう。
大入熱溶接を行う際、閉じ込め領域21内で溶接材料を溶融させる。溶融した溶接材料は、裏当材18により、間隙Gの裏側から間隙G外への移動が阻まれるとともに、水冷銅板19により、間隙G内で表側への移動が阻まれる。このように、裏当材18、および水冷銅板19は、溶融した溶接材料の移動を規制する規制部材として機能する。水冷銅板19は、溶接位置の移動(上昇)にあわせて、鋼板10上をスライドさせて移動させる。これにより、常に溶接位置に閉じ込め領域21を形成する。このようにして、端面10aの全長に渡って大入熱溶接を行う。
これにより、間隙G内で、水冷銅板19の突出部19bに対応する領域には、第1溶接部12は形成されず、空間が確保される。大入熱溶接を完了した後、裏当材18、および水冷銅板19は除去する。突出部19bの高さ(鋼板10の厚み方向の長さ)を適宜調整することで、第1溶接部12を鋼板の厚みの50%以上80%未満の領域に形成することができる。換言すれば、第1溶接部12が形成されない空間(後述の溝13)の深さ(鋼板10の厚み方向の長さ)を鋼板の厚みの20%以上50%未満にすることができる。
図2Bは、本発明の他の実施形態に係る製造方法により大入熱溶接工程を実施する際の鋼板の断面図である。図2Bに示すように、この実施形態では、鋼板10の端面10bは、鋼板10の厚み方向中央部に鋼板10の表側の面および裏側の面にほぼ平行な段Sを有する。この場合は、間隙Gの裏側に裏当材18を配置し、図2Aに示す水冷銅板19の代わりに、突出部を有さない厚板状の水冷銅板20を段Sに当接させる。水冷銅板20の内部には、冷却水を流す流路(図示せず)が形成されている。水冷銅板20には、内部の流路に冷却水を導入するための導入配管25Aと、内部の流路から冷却水を排出する排出配管25Bとが接続されている。
水冷銅板20を段Sに当接させることにより、閉じ込め領域21Aを形成することができる。したがって、図2Aに係る実施形態と同様に、閉じ込め領域21A内で溶接材料を溶融させて、第1溶接部12を形成することができる。鋼板10の厚み方向に関して段Sを形成する位置を適宜調整することで、第1溶接部12を鋼板10の厚みの50%以上80%未満の領域に形成することができる。
大入熱溶接は、サブマージアーク溶接により行ってもよい。この場合、端面10aが対向された2枚の鋼板10を、表側を上に向けて水平に配置する。間隙Gの裏側には、裏当材18を配置する。水冷銅板は用いずに、間隙Gの表側は開放しておく。この状態で、適量の溶接材料を溶融すると、溶融した溶接材料は、重力の作用により、間隙Gの裏側の領域に溜まり、間隙Gの表側には、溶融した溶接材料が存在しない空間が確保される。この状態で溶接材料を固化させて第1溶接部12を得ると、間隙G内の表側の所定の領域には空間が確保される。
大入熱溶接を行う際の入熱量は、接合するべき鋼板10の厚みtと、鋼板10の厚み方向に関して大入熱溶接部を形成する領域の大きさとに応じて適宜設定することができる。一例として、鋼板10の厚みtが100mmであり、鋼板10の厚み方向に関して、鋼板10の厚みの50%の領域にサブマージアーク溶接による大入熱溶接部を形成するときは、入熱量は32kJ/mmとすることができる。大入熱溶接部を形成する領域がより大きい場合は、入熱量をより多くすることができる。
この作製方法により得られる溶接継手が後述のシャルピー吸収エネルギーの要件を満足する限り、大入熱溶接工程で用いる溶接材料には、化学成分等の制約はない。換言すれば、溶接継手として、後述のシャルピー吸収エネルギーの要件を満足しなくなるような靭性が低いものは、本発明の製造方法には適さない。溶接材料には、市販品等、公知の材料を使用してもよい。
[小入熱溶接工程]
図1Bを参照して、大入熱溶接工程を実施した後には、間隙G内に第1溶接部12の残余の空間として、溝13が形成されている。上述のように、第1溶接部12を形成する際には、間隙Gにおいて、鋼板10の厚み方向に関して、鋼板10の厚みtの50%以上80%未満の領域に溶接金属を形成する。このため、溝13の深さは、鋼板10の厚みtの20%以上50%未満である。図1Cを参照して、小入熱溶接工程では、溝13内、すなわち間隙G内で第1溶接部12の表側に、複数パスの小入熱溶接により溶接金属を積層して第2溶接部14を形成する。第2溶接部14は、溝13内を埋めるように形成する。図1Cに示す例では、第2溶接部14は、22パスの小入熱溶接により形成されたものである。
複数パスの溶接とは、いわゆる「多層盛り溶接」を意味する。複数パスの各々により溝13内に配置される溶接金属は、鋼板10の厚み方向に互いに積層する。溶接金属は、図1Cに示すように、鋼板10の厚み方向に加えて、溶接部の幅方向にも、複数のパスで形成される。小入熱溶接は、被覆アーク溶接(SMAW)、炭酸ガス(CO)アーク溶接、サブマージアーク溶接などの公知の溶接方法を採用して実施することができる。
第2溶接部14は、第1溶接部12の溶接線に沿う大部分の領域に形成されていることが好ましく、第1溶接部12の溶接線の全長にわたって形成されていることが、より好ましい。この場合、第1溶接部12の溶接線のいずれの部分においても、鋼板10の厚み方向に関して、第1溶接部12の上に第2溶接部14が存在する。
小入熱溶接工程は、第2溶接部14の表面における溶接線に垂直な方向の残留応力が引張となるように実施する。これは、適切な溶接材料を使用することにより達成できる。第2溶接部14の表面における残留応力は、X線残留応力測定装置により測定することができる。上記残留応力の要件を満足させることができ、かつ、この作製方法により得られる溶接継手が後述のシャルピー吸収エネルギーの要件を満足する限り、小入熱溶接工程で用いる溶接材料には、化学成分等の制約はない。溶接材料として、市販品等、公知の材料を使用することができる。
[溶接継手]
得られた溶接継手(第1および第2溶接部12、14を含む部分)のシャルピー吸収エネルギーは、−20℃で40J以上である。これは、大入熱溶接工程および小入熱溶接工程で用いる溶接材料と使用する鋼板とを適宜選択することにより容易に達成できる。このように、溶接継手のシャルピー吸収エネルギーが高いことにより、この溶接継手の破壊靱性は高い。溶接継手のシャルピー吸収エネルギーは、−20℃で、60J以上であることが好ましい。
また、上述のように、第2溶接部14の表面では、この表面に沿う方向で溶接線に垂直な方向に関して、残留応力が引張である。このため、この応力とバランスするように、この溶接線に垂直な方向に関して、鋼板10の厚み方向中央部での溶接継手の残留応力は圧縮となる。鋼板10の厚み方向中央部では、き裂先端部の応力状態が平面ひずみ状態となるため、脆性破壊の発生起点となりやすい。そのため、耐脆性破壊発生特性を向上させるためには、鋼板10の厚み方向中央部において、残留応力を圧縮とすることが好ましい。逆に、鋼板10の表層部近傍では、き裂先端部の応力状態が平面応力状態に近いため、脆性破壊の発生起点にはなり難く、残留応力が引張であっても問題にはならない。
小入熱溶接工程で用いる溶接材料の種類によっては、第2溶接部14において最終パスにより形成された部分(第2溶接部14の表面に隣接する部分)近傍の残留応力が圧縮となる。この場合、第2溶接部14の表面に平行で溶接線に垂直な方向に関して、鋼板10の厚み方向中央部での溶接継手の残留応力は引張となり、耐脆性破壊発生特性を向上させる効果が得られない。そのような溶接材料の例として、低温変態溶接材料のように、Ni等を多量に含有させることで溶接材料の変態温度を低温域に制御したものを挙げることができる。そのような溶接材料は、この作製方法で用いる溶接材料としては適さない。また、前述したとおり、溶接継手が所定のシャルピー吸収エネルギーの要件を満足しなくなるような靭性が低い溶接材料も、この作製方法で用いる溶接材料としては適さない。
図1Cを参照して、大入熱溶接工程を実施することにより形成される第1溶接部12の厚みtw1は、鋼板10の厚みtの50%以上80%未満となる。第1溶接部12の厚みtw1と第2溶接部14の厚みtw2との合計は、鋼板10の厚みtに等しい。したがって、第2溶接部14の厚みtw2は、鋼板10の厚みtの20%以上50%未満となる。
ここで、第1溶接部12について「厚み」とは、図1Cに示すように、鋼板10の厚み方向に沿う長さをいう。第2溶接部14について「厚み」とは、図1Cに示すように、鋼板10の表面から突出した部分を除いた部分の、鋼板10の厚み方向に沿う長さをいう。鋼板10の厚みtは、2枚の鋼板10が同じ厚みを有すると見なせる場合は、その厚みであり、2枚の鋼板10が同じ厚みを有すると見なせない場合は、薄い方の鋼板10の厚みとする(以下、同様)。
耐脆性破壊発生特性を向上させる効果を十分に得るため、第2溶接部14の厚みtw2は鋼板10の厚みtの20%以上50%未満とする。そのためには、上述のように、大入熱溶接工程で、間隙Gにおいて鋼板10の厚みtの50%以上80%未満の領域に溶接金属を形成して第1溶接部12を形成する。
また、第2溶接部14の幅wwが、鋼板10の厚みtの50%未満であると、小入熱溶接工程により第2溶接部14の表面に導入される引張残留応力が小さくなる。この場合、溶接線に垂直な方向に関して、第2溶接部14の表面に引張の残留応力が導入されたとしても、鋼板10の厚み方向中央部での溶接継手の圧縮の残留応力は小さくなる。その結果、耐脆性破壊発生特性を向上させる効果が十分に得られない。このため、第2溶接部14の幅wwは、鋼板10の厚みtの50%以上とする。
ここで、第2溶接部14について「幅」とは、第2溶接部14の溝13内の部分について、鋼板10の厚み方向および溶接線に直交する方向の最大長さをいう。なお、第2溶接部14の幅wwの好ましい上限は、鋼板10の厚みtの200%以下であり、より好ましくは100%以下である。第2溶接部14の幅wwは、2枚の鋼板10の対向する端面10aの間隔により制御することができる。
本発明の効果を確認するため、種々の条件で溶接継手を作製して評価した。表1に、用いた鋼板について、鋼種および厚み(板厚)、ならびに機械的特性を示す。各鋼板の厚みは、実質的に均一であった。機械的特性として、引張試験による特性(降伏強度(YP)、引張強度(TS)、および伸び率(EL))を示す。表2に、用いた鋼板の化学組成を示す。表2に示した成分の残部は、Feおよび不純物からなる。
Figure 0006879018
Figure 0006879018
これらの鋼板を用いて、溶接試験を行った。具体的には、同種(同じ鋼板番号)の2枚の鋼板に対して、大入熱溶接工程、および小入熱溶接工程を実施することにより、これら2枚の鋼板が突き合わせ溶接により接合された溶接継手を作製した。表3に、各試験で用いた鋼板の種類、ならびに、大入熱溶接工程、および小入熱溶接工程の条件を示す。溶接材料およびフラックスは、いずれも、日鉄住金溶接工業社製のものを用いた。表3の溶接材料の欄およびフラックスの欄には、同社の製品番号を示す。
Figure 0006879018
表4に、第2溶接部の寸法、および得られた溶接継手の評価結果を示す。評価として、第2溶接部の表面残留応力および溶接継手のシャルピー吸収エネルギーを測定し、耐脆性破壊発生特性の指標としてディープノッチ試験による破壊靭性値(Kc値)を測定した。
Figure 0006879018
表面残留応力は、フュージョンライン(FL)近傍の部分で、溶接線に対して垂直な方向について測定した。表面残留応力の測定には、Stresstech社製のX線残留応力測定装置、XSTRESS 3000を用いた。測定した表面残留応力は、いずれも、溶接線に対して垂直な方向に引張であった。
シャルピー吸収エネルギーは、JIS Z2242(2005)に準拠して測定した。試験片の板厚方向の採取位置は、表側表面付近、板厚中心部、および裏側表面付近とした。それぞれの試験片について、ノッチ位置は、溶接金属(WM)の部分、フュージョンライン上、およびフュージョンラインから母材側へ2mm入った部分とした。
図3は、破壊靭性値を測定するためのディープノッチ試験片の平面図である。この試験片は、突き合わせ溶接により接合された2枚の鋼板10を含む。この試験片の平面形状は矩形であり、長辺の長さは500mmであり、短辺の長さは400mmであった。溶接部は、短辺に平行に、両短辺間の中央に形成した。この試験片の一方のフュージョンライン上に、長さ240mmの貫通ノッチ16(図3に太線で示す。)を、機械加工(ソーカット)により形成した。貫通ノッチ16の形成位置は、フュージョンラインの長さ方向中央部とした。貫通ノッチ16の幅は、0.2mmとした。
この試験片を、−20℃で、貫通ノッチ16に垂直な方向に引っ張り、破壊靭性値Kcを測定した。図3に、引っ張り方向を白抜きの矢印で示す。
試験番号1〜6の方法は本発明例であり、本発明の作製方法の要件をすべて満足した。これらの方法により得られた試験片では、いずれも、ディープノッチ試験による破壊靭性値が4000N/mm1.5以上と高く、十分に高い耐脆性破壊発生特性を有することが確認された。これらの試験片では、いずれも、溶接線に垂直な方向の表面在留応力が引張でありかつ高かった。したがって、溶接継手の厚み方向中央部で、溶接線に垂直な方向の在留応力は圧縮であり高かったと考えられる。このような応力分布により、高い破壊靭性が得られたと考えられる。
試験番号7〜10の方法は比較例であり、後述のように、本発明の作製方法の要件の少なくとも一部を満足しなかった。これらの方法により得られた試験片では、ディープノッチ試験による破壊靭性値は4000N/mm1.5未満と低く、耐脆性破壊発生特性が低いことが確認された。
試験番号7の方法では、用いた鋼板(鋼板B)の厚みが100mmであった(表1参照)のに対して、第2溶接部の厚みは15mmであった(表4参照)。すなわち、第2溶接部の厚みは、鋼板の厚みの15%であり、本発明で規定する要件を満足する厚み(鋼板の厚みの20%以上50%未満)より小さかった。試験番号8の方法では、用いた鋼板(鋼板B)の厚みが100mmであったのに対して、第2溶接部の厚みは60mmであった(表4参照)。すなわち、第2溶接部の厚みは、鋼板の厚みの60%であり、本発明で規定する要件を満足する厚みより大きかった。これらの方法により作製された試験片では、いずれも、溶接継手において鋼板の厚み方向中央部での溶接線に垂直な方向の残留応力が十分圧縮にならなかったために、耐脆性破壊発生特性が低かったと考えられる。
試験番号9の方法では、用いた鋼板(鋼板B)の厚みが100mmであったのに対して、第2溶接部の幅は45mmであった(表4参照)。すなわち、第2溶接部の幅は鋼板の厚みの45%であり、本発明で規定する幅(鋼板の厚みの50%以上)より小さかった。この方法により作製された試験片では、溶接継手において鋼板の厚み方向中央部での溶接線に垂直な方向の残留応力が十分圧縮にならなかったために、耐脆性破壊発生特性が低かったと考えられる。
試験番号10の方法では、小入熱溶接工程で用いた溶接材料の靭性が低かった。これにより、溶接継手において鋼板の表側表面付近と厚み方向中央部とでの溶接金属部およびフュージョンライン上でのシャルピー吸収エネルギーが−20℃で40J未満と、本発明で規定する範囲(40J以上)より低かった。このため、耐脆性破壊発生特性が低かったと考えられる。
10:鋼板、 10a、10b:鋼板の端面、 12:第1溶接部、
13:溝、 14:第2溶接部、 18:裏当材、 19、20:水冷銅板、
19a:基体部、 19b:突出部、 21、21A:閉じ込め領域、
G:間隙

Claims (2)

  1. 突き合わせ溶接によって2枚の鋼板が接合された溶接継手の作製方法であって、
    2枚の鋼板の端面を対向させ、対向する前記端面の間隙において、前記鋼板の厚みの50%以上80%未満の領域に1パスの大入熱溶接を施すことにより前記2枚の鋼板を接合して第1溶接部を形成する大入熱溶接工程と、
    前記間隙内で前記第1溶接部の表面に、複数パスの小入熱溶接により溶接金属を積層して第2溶接部を形成する小入熱溶接工程と、を含み、
    前記第2溶接部の幅が、前記鋼板の厚みの50%以上であり、
    前記第1および第2溶接部を含む溶接継手のシャルピー吸収エネルギーが、−20℃で40J以上であり、
    前記大入熱溶接は、入熱量が20〜100kJ/mmの溶接であり、
    前記小入熱溶接は、入熱量が0.5〜5kJ/mmの溶接である、溶接継手の作製方法。
  2. 請求項1に記載の溶接継手の作製方法であって、
    前記大入熱溶接工程が、
    前記間隙内の一部に規制部材を配置して、前記間隙内に、前記端面および前記規制部材で囲まれた閉じ込め領域を形成する工程と、
    前記対向する端面の長手方向が鉛直方向に沿う状態で、前記閉じ込め領域内で溶接材料を溶融させる工程とを含む、溶接継手の作製方法。
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