JP5171006B2 - 耐脆性破壊発生特性に優れた溶接継手 - Google Patents
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そこで、高強度厚肉鋼材の大入熱溶接において、溶接金属の硬さをある程度低下しても、HAZ部と溶接金属とも十分な破壊靱性が確保できる溶接技術の開発が望まれていた。
そして、その過程で、溶接金属部中に、特定の大きさの介在物が一定頻度以上存在する場合に、破壊靱性値δcのばらつきが生じることを見出し、本発明を完成した。
(1)質量%で、C:0.04〜0.2%、Mn:0.8〜2.5%、S:0.0005〜0.0025%、Al:0.02%未満、Ti:0.01〜0.05%を含有する板厚50mm超の鋼板を突合せ溶接した溶接構造体の突合せ溶接継手であって、
該溶接継手の溶接金属中に含まれるOの量が20〜195ppmであり、粒径2.0μm以上の酸化物の量が10個/mm2以下であるとともに、粒径0.1μm以上2.0μm未満のTi酸化物の量が30〜600個/mm2であることを特徴とする耐脆性破壊発生特性に優れた溶接継手。
(2)溶接金属部の硬さが母材部の硬さの110%超220%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の耐脆性破壊発生特性に優れた溶接継手。
質量%で、C:0.06%、Mn:1.6%、S:0.002%、Al:0.002%、Ti:0.02%を含有する板厚70mmの鋼板をエレクトロガス溶接(EG)の一種である2電極揺動式エレクトロガス溶接により、突合せ溶接を実施した。
また、溶接金属部と、FL部のHAZ側(FL,HAZ部)にそれぞれ疲労予き裂が一致するように採取したCTOD試験片を用いて、破壊靭性値(δc値)を評価した。
さらに、上記(a)と(b)の場合の溶接金属部の酸化物の分散状況を調査した。
シールド効果が低い条件で溶接した継手(a)では、溶接金属部の酸素量が400ppmと高く、溶接金属部及びFL、HAZ部ともδc値が低かったが、シールド効果が高い条件で溶接した継手(b)では、溶接金属部の酸素量が150ppmと低く、溶接金属部及びFL、HAZ部とも十分高いδc値が得られた。
一方、継手(b)の場合には、粒径0.1μm以上2.0μm未満のTi酸化物の量が480個/mm2であって、微細なTi酸化物が溶接金属中に均一に分散しており、粒径が2μm以上の酸化物の個数は、3個/mm2であって、その数は少なかった。
その結果、大きさが2μm以上の酸化物の個数が10個/mm2以下であると、また、さらに好ましくは、粒径0.1μm以上2.0μm未満のTi酸化物の量が30〜600個/mm2であると破壊靱性値δcの良好な溶接金属部が得られることが分かった。
そして、本発明は、そのような酸化物の分散状況の得られる母材の化学組成についてさらに検討した結果なされたものである。
本発明では、溶接構造体を構成する母材として、少なくとも、質量%で、C:0.04〜0.2%、Mn:0.8〜2.5%、S:0.0005〜0.0025%、Al:0.02%未満、Ti:0.01〜0.05%を含有する鋼材を用いる。
Mnは、強度および靭性を確保するために少なくとも0.8%は必要であるが、2.5%を超えると焼入性が増大し靭性が低下する。
Sは、靭性を低下させる元素であり、0.0025%以下にする必要がある。しかし、MnSを形成させ、酸化物とMnSの複合体を粒内変態核として利用するためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。
Tiは、本発明では、脱酸剤として使用するとともに、Ti酸化物を生成させ、Ti酸化物によるミクロ組織微細化により溶接金属およびHAZ部の破壊靭性を向上させる上で必須の元素である。必要なTi酸化物を形成させるためには少なくとも0.01以上必要であるが、0.05%を超えると酸化物の量やサイズが過大になり破壊の起点となる恐れがある。
なお、一部の微細なTi酸化物は、そのまわりMnSが析出することにより、MnSと複合体を形成する。この複合体は、粒内変態核としてより有効であり、本発明のTi酸化物には、このような複合体を含めるものとする。
なお、より好ましい個数は100〜400個/mm2である。
ここで、目標とするδc値は、ノルウェー海事協会(DNV)等の規格では、設計温度にて0.1〜0.2mm程度の値が要求されていることから、0.15mm以上とした。
そのためには、母材となる鋼材の脱酸工程において、Alでの脱酸のみならず、たとえばTi脱酸後に、さらにTiよりも脱酸作用の強いAlやMg、Caなどの1種または2種以上を逐次添加して脱酸することにより、酸化物の寸法を小さくする。
そのような逐次脱酸工程を採用することにより、2μm以上の粗大酸化物の生成が抑制され、その結果0.1〜2μmの微小酸化物を多数生成させることができる。
大入熱溶接した場合、溶接金属部の強度や硬さが上昇し、母材の強度や硬さよりも著しく高くなっていることにより、溶接金属部に接しているHAZ部との境界近傍で局所的な応力が増大し、そのため、FL部の破壊靭性値δcが低下する。
溶接金属部は、焼入れ性を確保して粗大なフェライトが生成しないようにするためにはある程度の硬さが必要であり、溶接金属部の硬さを母材の硬さの110%超とする。しかし、硬すぎると上記のように局所的な応力の増大による破壊靭性値δcの低下を招くので、220%以下に抑制する。
このように母材と溶接金属部の硬さを調整することにより、オーバーマッチングによる継手靭性の低下を防止できる。
溶接材料を用いない溶接方法の場合には、溶接速度や溶接入熱を調整して、冷却速度が大きくなりすぎないようにする必要がある。目標とする冷却速度を、鋼材の連続冷却曲線特性図を参考にして、マルテンサイト変態が生じる冷却速度より小さくなるように選定して溶接することで、溶接金属部の硬さを母材の220%以下に規制することが可能である。
また、予熱や後熱を行う場合に冷却速度が遅すぎると、溶接金属部の硬さが母材の110%以下となることもあるので、予熱や後熱の条件も考慮する必要がある。
いずれの溶接方法を採用するにしても、溶接パス数は1パスでも多パスでもかまわないが、多パス溶接の場合は溶接欠陥が発生しやすいので、1パス溶接が好ましい。
VEGA−IIでは、溶接ワイヤを2本用い、板厚70mmの鋼板を溶接する場合は、電圧42V、電流390A、溶接速度4.2m/分、溶接入熱450kJ/cm以上で溶接を行なう。なお、開先角度は20°、ルートギャップは8mmとするのが好ましい。
SAWで、板厚70mmの鋼板を溶接する場合には、直径4.8mmの溶接ワイヤを用い、電流650A、電圧33V、溶接速度60cm/分で多層溶接したり、また、裏面を銅やアスベストでバッキングし、さらに電流を上げて大入熱溶接する。
本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件ないし条件の組合せを採用し得るものである。
なお、Hv(BM)は、10kgの圧痕により測定した母材の板厚方向における硬さの平均値であり、Hv(WM)は、溶接金属部の板厚中央部において、10kgの圧痕により測定した硬さの値である。また、溶接継手の性能に関し、δc(mm)は、CTOD試験において−10℃の試験温度で求めた値である。
本発明例のNo.2、5〜7、9、12、13、15〜17は、鋼材の化学成分、溶接金属中の酸素量と酸化物量がいずれも本発明で規定する範囲内にあるものであり、δc値が溶接金属部及びFL,HAZ部とも0.15mm以上であって、十分な値を示している。
比較例19は、溶接金属中の酸素量及びHv(WM)/Hv(BM)の値が本発明の規定範囲を外れており、かつ粒径2μm以上及び粒径0.1〜2μm未満の酸化物個数が本発明の規定値以上のため、溶接金属部及びFL,HAZ部ともδc値は不十分であった。
比較例22は、鋼材のMn量が本発明の規定値以上で鋼材の炭素当量が高く、Hv(WM)/Hv(BM)の値が本発明の規定値以下であり、溶接金属中の酸素量も低かったため、粒径0.1〜2μm未満の酸化物個数が本発明の規定値以下となり、溶接金属部及びFL部ともδc値は不十分であった。
比較例24は、鋼材のAl量が本発明の規定値以上であるため、溶接金属中の酸素量が十分であるにもかかわらず、粒径0.1〜2μmの酸化物個数が本発明の規定値以下で、粒径2μm以上の酸化物個数が本発明の規定値以上であるため、溶接金属部及びFL部ともδc値は不十分であった。
よって、本発明は、溶接構造体の安全性を顕著に高めるという顕著な効果を奏し、産業上の利用価値の高い発明である。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.04〜0.2%、Mn:0.8〜2.5%、S:0.0005〜0.0025%、Al:0.02%未満、Ti:0.01〜0.05%を含有する板厚50mm超の鋼板を突合せ溶接した溶接構造体の突合せ溶接継手であって、
該溶接継手の溶接金属中に含まれるOの量が20〜195ppmであり、粒径2.0μm以上の酸化物の量が10個/mm2以下であるとともに、粒径0.1μm以上2.0μm未満のTi酸化物の量が30〜600個/mm2であることを特徴とする耐脆性破壊発生特性に優れた溶接継手。 - 溶接金属部の硬さが母材部の硬さの110%超220%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐脆性破壊発生特性に優れた溶接継手。
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