以下、図面を参照して実施形態を説明する。以下の実施形態の説明では、乗客コンベアとして、エスカレータを例に説明する。なお、以下の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
エスカレータ10の構造について、図1を参照して説明する。図1に示すように、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
図1に示すように、トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結チェーンにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
図1に示すように、トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、図1に示すように、複数の踏段30の前輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の前案内レールに沿って走行すると共に、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。後輪302は、図1に示すようにトラス12に固定された後案内レール25を走行する。
図1に示すように、トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
図1に示すように、手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット27に走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68が設けられている。
図1に示すように、上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出、又は、侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
踏段30は、乗客Aを搬送するための踏面303(踏板)とライザーとを有している。上昇運転の場合、乗客Aは下階側の乗降板34から踏段30の踏面303に乗車する。踏段30が上階の乗降口に達すると、乗客Aは踏段30の踏面303から上階側の乗降板32へ降車する。下降運転の場合、乗客Aは上階側の乗降板32から踏段30の踏面303に乗車する。踏段30が下階の乗降口に達すると、乗客Aは踏段30の踏面303から下階側の乗降板34へ降車する。
(第1の実施形態)
図2は本実施形態に係るエスカレータ10の概略図である。以下、エスカレータ10について、上昇運転をしている場合について説明する。
本実施形態では、乗客がスマートフォンなどの携帯端末を見ながらエスカレータに乗車した場合に注意喚起を促す乗客コンベアシステムである。
本実施形態のエスカレータ10の下階の乗車口付近には、乗車側通信装置として、下階通信装置(70)が設けられている。また、エスカレータ10の上階乗降口と下階乗降口との間の乗客Aを搬送する区間(搬送部)にはアクセスポイント72が設けられている。下階通信装置は例えば、下階側の機械室16に設けられている。アクセスポイント72は例えば、トラス12内に設けられている。下階通信装置および搬送部通信装置は例えばビーコンやアクセスポイントなどの無線通信装置などである。
本実施形態ではエスカレータ10が下降運転をする際は、乗車側通信装置は上階通信装置(ビーコン71)を用いる。ビーコン71は例えば、上階側の機械室14に設けられている。
以下の説明では、一例として、下階通信装置としてビーコン70、搬送部通信装置としてアクセスポイント72を用いて説明する。
乗客Aは携帯端末90を所持している。携帯端末90はビーコン70およびアクセスポイント72と通信が可能である。携帯端末90はビーコン70から発せられる信号を受信することができる。携帯端末90とビーコン70とは、双方向の通信を可能としてもよい。携帯端末90とアクセスポイント72とは双方向の通信が可能である。
本実施形態の乗客コンベアシステムは情報処理装置80を設けている。情報処理装置80はビーコン70とアクセスポイント72と有線もしくは無線にて通信が可能である。情報処理装置80の設置場所は特に限定せず、例えば、エスカレータ10の機械室14又は機械室16に設置されていてもよく、制御装置50(図1参照)の筐体内に設けられていてもよく、エスカレータ10が設置されている建屋1(図1参照)に設けられていてもよい。
図3は本実施形態の乗客コンベアシステムのブロック図である。ビーコン70およびビーコン71とは携帯端末90と通信が可能である。携帯端末90はアクセスポイント72を介して情報処理装置80と通信が可能である。
ビーコン70およびビーコン71は携帯端末90と通信をするための送信部および受信部を有している。ビーコン70と携帯端末90とが双方向に通信することができる場合、ビーコン70及びビーコン71は受信部を設ける。ビーコン70とビーコン71とが携帯端末90に送信するだけの機能しか有していない場合は、受信部は不要となる。
アクセスポイント72は内部に転送部721を有している。転送部721は携帯端末90より受信された情報について、情報処理装置80に転送する中継器の役割を有している。
情報処理装置80は受信部81と送信部82と制御部83とを有している。受信部81はアクセスポイント72の転送部721から転送された情報を受信する。受信部81は制御部83と接続されており、当該転送された情報を制御部83に伝送する。送信部82は制御部83と接続されており、当該転送された情報に基づいて制御部83が処理を指令した情報をアクセスポイント72に送信する。制御部83は判定部831と処理指令部832とを有している。判定部831は当該転送された情報に基づいて、乗客Aの状態を判定する(状態判定手段)。処理指令部832は判定部831と接続されており、判定部831による判定結果に基づいて乗客Aごとに適した処理を行う(処理手段)。処理指令部832は送信部82と接続されており、処理指令部832にて決定された処理を送信部82に伝送する。送信部82は処理指令部832より伝送された処理に係る信号について、アクセスポイント72を介して携帯端末90へ送信する。
携帯端末90は、受信部91、制御部92、スピーカ93、画面表示部94、振動装置95、加速度検知部としての加速度センサ96、撮影部97(カメラモジュール971)、記憶部98、送信部99を有している。
受信部91は、ビーコン70,71、アクセスポイント72と通信が可能であり、ビーコン70,71が送信した固有信号を受信した場合は、制御部92に当該信号の情報を伝送する。
制御部92は、受信部91、スピーカ93、画面表示部94、振動装置95、加速度センサ96、撮影部97、記憶部98、送信部99と電気的に接続されている。制御部92はCPUなどであり、本実施形態の乗客コンベアシステムに係るアプリケーションを実行する。
スピーカ93、画面表示部94、振動装置95は、携帯端末90を所持する乗客Aに対する出力装置である。スピーカ93は音声にて乗客Aに情報を報知する出力装置である。画面表示部94は携帯端末90の液晶モニタなどであり、視覚的に乗客Aに情報を報知する出力装置である(後述の図4参照)。振動装置95は携帯端末90を振動させることで、触覚的に乗客Aに情報を報知する出力装置である。本実施形態では乗客Aに報知する情報として、注意喚起に係る情報などがある。
加速度センサ96は、携帯端末90の位置情報の時間ごとの遷移から加速度を計測する装置である。加速度センサ96はxyz軸方向のいずれの加速度についても計測が可能である。例えば、加速度センサ96は、乗客Aが歩行している場合の携帯端末90の位置の遷移から、xyz方向の加速度を計測することができる。加速度センサ96は、乗客Aがエスカレータ10の踏段30に立ち止まっていても、踏段30自身の振動によりz軸方向(高さ方向)の加速度を計測することができる。
撮影部97は、携帯端末90の筐体内にカメラモジュール971を有し、携帯端末90の表面にカメラレンズ972が乗客Aに対向するように設けられている(後述の図4参照)。カメラレンズ972にて乗客Aを撮影し、撮影した情報をカメラモジュール971にて静止画もしくは動画として処理する。これにより、撮影部97は乗客Aを撮影することができる。
記憶部98は、上記加速度センサ96にて計測された加速度および、上記撮影部97にて撮影された画像を記憶する装置である。記憶部98には携帯端末90を所持する乗客Aの固有情報が記憶されていてもよい。固有情報とは、例えば、乗客Aの年齢、身長、体重、身体障害の有無、疾病の有無などである。
送信部99は、記憶部98に記憶された情報や制御部92にて生成された信号を外部の通信装置に送信する装置である。本実施形態では、送信部99はエスカレータ10に設けられたアクセスポイント72またはビーコン70,71に情報を送信することができる。
図4は本実施形態に係る携帯端末90および、撮影部97にて撮影された画像の図である。図4(a)は携帯端末90の図である。携帯端末90は画面表示部94および撮影部97のカメラレンズ972を有している。乗客Aは画面表示部94に表示された各種情報を視認することができる。乗客Aが画面表示部94に表示された情報を見ているとき、カメラレンズ972は乗客Aが正対したときを撮影することができる。図4(b),(c)はカメラレンズ972にて撮影された乗客Aの画像の図である。図上のAは被写体として撮影された乗客Aである。図4(b)は乗客Aが正対した場合の画像であり、図4(c)は乗客Aが横を向いた時の画像である。
図5(a)は本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作のフローチャートである。本実施形態に係る乗客コンベアシステムは、携帯端末90内の処理と情報処理装置80内の処理との組み合わせからなる。本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作のフローチャートはステップS100〜S105からなり、この内のステップS100,101,105は携帯端末90の処理であり、ステップS102〜104,106は情報処理装置80の処理である。
エスカレータ10が上昇運転している場合に、乗客Aが下階の乗車口からエスカレータ10に乗り込む際、携帯端末90とビーコン70とが通信可能となる。このとき、携帯端末90はビーコン70から信号を受信したか判定する(ステップS100)。携帯端末90はビーコン70から信号を受信すると(ステップS100のYES)、携帯端末90の制御部92は専用のアプリケーション(ソフトウェア)を起動させる。当該アプリケーションは、加速度センサ96による加速度の測定を開始し、加速度情報を記憶部98に記憶させる。加速度情報は図6のような波形となる。
図6は加速度センサ96により計測された加速度情報の図である。図6では、計測を開始してから、乗客Aがエスカレータ10から降車するまでの加速度の計測結果である。加速度は、踏段30による高さ方向(Z軸方向)の加速度である。
また、アプリケーションは、撮影部97により乗客Aの撮影を開始し、撮影画像を記憶部98に記憶させる。記憶部98への記憶は一時的な記憶でもよい。
乗客Aがエスカレータ10に乗車した後、上階と下階の中間の搬送部にいるとき、携帯端末90はアクセスポイント72と通信可能となる。制御部92はアプリケーションにより、加速度センサ96にて計測された加速度情報、撮影部97の撮影画像を記憶部98より呼び出して、アクセスポイント72を介して情報処理装置80に送信する(ステップS101)。
情報処理装置80はアクセスポイント72の転送部721から、加速度情報と撮影画像を受信部81にて受信する。撮影情報は乗客情報である。情報処理装置80の制御部83は、判定部831にて、当該加速度情報から乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する(ステップS102)。
加速度による乗客Aの乗車判定について、図6に示すように加速度を検出開始してから乗客Aがエスカレータ10に乗り込むまでの乗込時間は、乗客Aが乗降板34を歩行するため加速度は大きめに検出される。乗客Aがエスカレータ10に乗り込み、踏段30に立ち止まっているときは、踏段30の搬送に伴う高さ方向の加速度が計測される。この場合、乗車しているときの加速度は、乗込時間にて計測された加速度よりも小さな値となる。乗客Aがエスカレータ10より降車した場合は、再び乗客Aが歩行するため、加速度が大きめの値を示すこととなる。
情報処理装置80は加速度情報として、図6に示す加速度の波形を随時受信し、制御部83の判定部831は、当該波形から、乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する(ステップS102)。この場合、加速度情報が乗込時間の加速度の変化量よりも小さい変化量の値を示した場合に、乗客Aがエスカレータ10に乗車していると判定する。小さい値の変化量が所定の時間継続しているときに、乗車と判定してもよい。また、事前に加速度のサンプルを取得し、当該サンプルの加速度と類似する加速度情報を取得した場合は、乗客Aがエスカレータ10に乗車していると判定してもよい。
制御部83の判定部831は、乗客Aがエスカレータ10に乗車していると判定すると(ステップS102のYES)、撮影画像に乗客Aの顔が映っているか判定をする(ステップS103)。図4(b)のように乗客Aが正対したときの顔が映っている場合、乗客Aが携帯端末90の撮影部97(カメラレンズ972)に正対している。この場合、乗客Aは携帯端末90を使用しながらエスカレータ10に乗車している状態である。判定部831は図4(b)に示す画像から乗客Aが画面表示部94を見ている、即ち乗客Aが携帯端末90を使用していると判定する。
図4(c)のように乗客Aが横を向いたときの顔が映っている場合、乗客Aは携帯端末90を手で所持しているものの、携帯端末90の画面表示部94を見ていない状態である。判定部831はこのような状態であっても、図4(c)に示す撮影画像に乗客Aの顔が映っていることから、乗客Aが携帯端末90を使用していると判定してもよく、また、顔が横を向いおり、正対していないことから、乗客Aが携帯端末90を使用していないと判定してもよい。即ち、図4(c)のような撮影画像を情報処理装置80が受信した場合は、乗客Aによる携帯端末90の使用、不使用の判定を設定することができる。
以上より、判定部831は、乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する乗車判定手段の機能と、乗客Aが携帯端末90を使用しているか否かを判定する状態判定手段の機能とを有することとなる。
判定部831にて、エスカレータ10に乗車している乗客Aが携帯端末90を使用していると判定すると(ステップS103のYES)、情報処理装置80の処理指令部832は、判定結果を受けて、乗客ごとに対応した処理を実行する。本実施形態に係る乗客コンベアシステムにおいて、乗客ごとに対応した処理として、乗客Aの所持する携帯端末90に対して、注意を喚起する信号を送信する(ステップS104)。このとき、情報処理装置80の送信部82は処理指令部832により生成された注意喚起に係る信号についてアクセスポイント72を介して、携帯端末90の受信部91へ送信する。処理指令部832は処理手段としての機能を有する。
携帯端末90の制御部92は受信部91にて、注意喚起に係る信号を受信すると、乗客Aに対して注意喚起の情報(「注意喚起情報」と称する)を報知する(ステップS105)。
制御部92はスピーカ93から乗客Aに音声にて注意喚起を促すことができる。例えば、音声により「画面を見ながらのエスカレータの使用はお控えください。」と報知してもよく、アラームによる報知でもよい。
制御部92は画面表示部94から乗客Aに視覚的に注意喚起を促すことができる。図7は画面表示部94による注意喚起情報の表示の図である。図7では、画面表示部94に「画面を見ながらのエスカレータの使用はお控えください。」という文言にて、乗客Aに注意喚起を促している。画面表示部94による表記は図7に限定されず、他の文言、画像による注意喚起でもよい。
制御部92は振動装置95から乗客Aに振動により触覚的に注意喚起を促すことができる。例えば、振動パターンについて強弱をつけて、報知してもよい。
制御部92はスピーカ93、画面表示部94、振動装置95の少なくともいずれか1つを用いて、乗客Aに報知することができ、これらを組み合わせて報知してもよい。これらの報知方法および設定は、携帯端末90にインストールされたアプリケーションにより行うことができる。
また、判定部831にて、エスカレータ10に乗車している乗客Aが携帯端末90を使用していないと判定すると(ステップS103のNO)、所定の時間が経過したかを判定する(ステップS106)。所定の時間が経過していない(ステップS106のNO)と、再度、乗客Aが携帯端末90を使用しているか判定をする(ステップS103)。即ち、所定の時間内、乗客Aによる携帯端末90の使用を判定し続ける。所定の時間が経過した場合(ステップS106のYES)、乗客が降車口まで近づいたため、処理を終了する。所定の時間とは、例えば30秒であるが、これに限定されず、エスカレータ10の長さ、高低差に応じて設定することが可能である。
乗客Aが目的階である上階に到達した場合、携帯端末90と上階側のビーコン71と通信可能となった場合に、乗客Aがエスカレータ10より降車したと判断し、本実施形態のアプリケーションの処理を終了させてもよい。この場合、上階の乗車口に乗車側通信装置として、ビーコン71が設けられている。ビーコン71は例えば、エスカレータ10の上階の機械室14に設けられている。
図5(b)は図5(a)のステップS106について、別の例を示す。判定部831による乗客Aが携帯端末90の使用の有無の終了判定につき、降車側のビーコン71と携帯端末90とが通信状態になった場合(ステップS106´のYES)、処理を終了させる。通信状態にない場合(ステップS106´のNO)、処理を継続させる。即ち、携帯端末90がビーコン71の通信領域に入るまで、乗客Aによる携帯端末90の使用を判定し続ける。
なお、上記の実施形態の説明では、エスカレータ10が上昇運転をしている場合について、説明したが、下降運転の場合も同様である。
また、上階と下階に設けられた通信装置としてビーコン70,71を用いて説明したが、ビーコン70,71の代わりにアクセスポイントを上階と下階に設けてもよい。即ち、アクセスポイントの配置につき、上階と搬送部、搬送部と下階、上階と搬送部と下階、という組み合わせで配置してもよい。
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例は、情報処理装置80の制御部83により行われた、加速度情報に基づく乗車判定手段と、乗客の状態を判定する状態判定手段とを携帯端末90の制御部92にて行う。
図8(a)は第1の実施形態の変形例に係る乗客コンベアシステムのフローチャートである。第1の実施形態のフローチャート(図5(a))において、情報処理装置80にて判定していた、加速度情報に基づく乗客の乗車判定(図5(a)のステップS102)と、乗客Aによる携帯端末の使用の判定(図5(a)のステップS103)を、本変形例では携帯端末90側で処理している。図8(a)のステップS111は図5(a)のステップS102に対応し、図8(a)のステップS112は図5(a)のステップS103に対応している。図8(a)のステップS114は図5(a)のステップS106と対応している。本変形例においても、携帯端末90とビーコン71との通信状態を判定処理の終了時期としてもよく、図8(b)のステップS114´は図5(b)のステップS106´に対応している。
本変形例では、携帯端末90において、加速度センサ96にて計測された加速度情報に基づいて制御部92が乗客Aのエスカレータ10の乗車の可否を判定する。判定方法は第1の実施形態と同様に図6に示す波形により判定することができる(図8(a)のステップS111)。計測された加速度とエスカレータ10に乗車時の加速度のサンプルとの類似判定による乗車判定を行う場合、加速度のサンプルについて、情報処理装置80よりサンプルの情報を取得し、記憶部98に格納しておいてもよい。
本変形例では、携帯端末90において、撮影部97のカメラモジュール971およびカメラレンズ972にて撮影された撮影画像を記憶部98に記憶する。制御部92は当該撮影画像に乗客の顔が映っているか判定し、乗客の顔が映っている場合に、乗客Aによる携帯端末90の使用を判定する。判定方法は第1の実施形態と同様の手法(図4(b)(c)参照)により判定することができる。
以上により、本実施形態および変形例の乗客コンベアシステムは、乗客が携帯端末を使用することで転倒等の危険がある場合、乗客の所持する携帯端末の情報から乗客に応じた制御を行うことができる。
(第2の実施形態)
本実施形態に係る乗客コンベアシステムにおいて、概略図は第1の実施形態と同様であり、図2に示す通りである。エスカレータ10について、上昇運転をしている場合について説明する。
本実施形態では、乗客が携帯端末を見ながら歩行し、転倒した場合のエスカレータの制御に係る乗客コンベアシステムである。
本実施形態のエスカレータ10の下階の乗車口付近には、乗車側通信装置として、下階通信装置(70)が設けられている。エスカレータ10の上階の降車口付近には、乗車側通信装置として、上階通信装置(71)が設けられている。また、エスカレータ10の上階乗降口と下階乗降口との間の乗客Aを搬送する区間(搬送部)にはアクセスポイント72が設けられている。下階通信装置、上階通信装置および搬送部通信装置は例えばビーコンやアクセスポイントなどの無線通信装置などである。
以下の説明では、一例として、下階通信装置としてビーコン70、上階通信装置としてビーコン71、搬送部通信装置としてアクセスポイント72を用いて説明する。
乗客Aは携帯端末90を所持している。携帯端末90はビーコン70、ビーコン71およびアクセスポイント72と通信が可能である。携帯端末90はビーコン70から発せられる信号を受信することができる。携帯端末90とビーコン70とは、双方向の通信を可能としてもよい。携帯端末90とビーコン71とは、双方向の通信を可能としてもよい。携帯端末90とアクセスポイント72とは双方向の通信が可能である。
本実施形態の乗客コンベアシステムのブロック図は図3と同様である。このため、第1の実施形態と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、情報処理装置80の処理指令部832はエスカレータ10の駆動装置18へ処理信号を送ることができる。
判定部831は携帯端末90よりアクセスポイント72を介して送信された情報に基づいて、乗客Aの状態を判定する(状態判定手段)。処理指令部832は判定部831と接続されており、判定部831による判定結果に基づいて乗客Aごとに適した処理を行う(処理手段)。本実施形態において、乗客Aごとに適した処理とは、駆動装置18に制御信号を送信し、エスカレータ10の運転を制御することができる。
図9は本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作のフローチャートである。本実施形態に係る乗客コンベアシステムは、携帯端末90内の処理と情報処理装置80内の処理との組み合わせからなる。本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作のフローチャートはステップS200〜S206からなり、この内のステップS200,201は携帯端末90の処理であり、ステップS202〜206は情報処理装置80の処理である。
エスカレータ10が上昇運転している場合に、乗客Aが下階の乗車口からエスカレータ10に乗り込む際、携帯端末90とビーコン70とが通信可能となる。このとき、携帯端末90はビーコン70から信号を受信したか判定する(ステップS200)。携帯端末90はビーコン70から信号を受信すると(ステップS200のYES)、携帯端末90の制御部92は専用のアプリケーション(ソフトウェア)を起動させる。当該アプリケーションは、加速度センサ96による加速度の測定を開始し、加速度情報を記憶部98に記憶させる。加速度情報は図10のような波形となる。
図10は加速度センサ96により計測された加速度情報の図である。図10(a)は、乗客Aがエスカレータ10に乗車した後も歩行をし続け、乗降口まで歩行した場合の加速度の波形である。図10(b)は乗客Aがエスカレータ10に乗車したものの、途中で転倒した場合の加速度の波形である。加速度は、高さ方向(Z軸方向)の加速度である。
乗客Aがエスカレータ10に乗車した後、上階と下階の中間の搬送部にいるとき、携帯端末90はアクセスポイント72と通信可能となる。制御部92はアプリケーションにより、加速度センサ96にて計測された加速度情報を記憶部98より呼び出して、アクセスポイント72を介して情報処理装置80に送信する(ステップS201)。
情報処理装置80はアクセスポイント72の転送部721から、加速度情報を受信部81にて受信する。情報処理装置80の制御部83は、判定部831にて、ビーコン70が携帯端末90と通信状態になったことを確認した後、当該加速度情報から乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する(ステップS202)。例えば、携帯端末90がビーコン70と通信状態になった後に、すぐに通信状態が解除され場合は、乗客Aはエスカレータ10に乗車したのではなく、エスカレータ10の乗車口周辺を歩いていると判断してもよい。
加速度による乗客Aの乗車判定について、図10(a)に示すように乗客Aがエスカレータ10に乗車した後も歩行を継続した場合、乗客Aがエスカレータ10に乗り込むまでの乗込時間における加速度と、搬送部における加速度とは同等の値を計測する。搬送部にて乗客Aが踏段30を移動している場合、乗客Aが立ち止まっているときの図6の波形よりも加速度は大きくなる。乗客Aがエスカレータ10に乗車してから降車までの加速度は、ほぼ一定の変化量の振幅で推移する。この変化量は図6のように立ち止まっているときの変化量の振幅よりも大きめの値を示すこととなる。
図10(b)は、乗客Aが踏段30を歩行している最中に転倒した場合を示す図である。このときの加速度は、転倒により歩行時の加速度よりも高い加速度(図10(b)中の破線の円で囲った時間の波形)を計測した後、歩行時よりも低い加速度(図10(b)中の破線の長円で囲った時間の波形)を計測する。これは、転倒により乗客Aが止まった状態(例えば、踏段30に手をついている状態)であることを示している。または、転倒により乗客Aが携帯端末を手放して、踏段30に携帯端末90がおかれている状況を示している。転倒後の波形は、図6の乗客Aが立ち止まっているときの搬送部の加速度の波形と同様の値となる。
本実施形態の乗客コンベアシステムは乗客Aの転倒の判定として基準値を設けている(図10(b)中の破線)。乗客Aが立ち止まっているときまたは、歩行しているときは、加速度は基準値以下の変化量であるが、転倒したときは一時的に基準値を超えた変化量を計測する。当該基準値は予め設定しておくことができる。
情報処理装置80は加速度情報として、事前に歩行時の加速度、転倒時加速度のサンプルを取得し、当該サンプルの加速度と類似する加速度情報を取得した場合は、乗客Aがエスカレータ10に乗車、転倒していると判定してもよい。
歩行時の加速度に比べて一時的に大きな加速度を計測し、その後に歩行時の加速度と比べて小さな加速度を一定時間計測した場合、制御部83の判定部831は、情報処理装置80の制御部83は乗客Aが転倒したと判定する(図9のステップS203)。
判定部831にて、エスカレータ10に乗車している乗客Aが転倒したと判定すると(ステップS203のYES)、乗客Aが転倒状態を継続しているか判定する(ステップS204)。
乗客Aが転倒状態を継続している場合、即ち、乗客Aが立ち上がっていない場合または携帯端末90を手放し踏段30に置いたままになっている状態の場合(ステップS204のYES)、情報処理装置80は降車側のビーコン71と携帯端末90とが通信状態にあるか検知する(ステップS205)。乗客Aが転倒状態のまま、降車口まで、到達してしまうと、踏段30の踏面303と1つ前の踏段30のライザーとの挟まれや、降車側のコムに被覆が巻き込まれるなどの危険が発生する。このため、乗客Aが降車側まで転倒状態を継続し(ステップS204のYES)、降車口まで近づいた場合(ステップS205のYES)、エスカレータ10の駆動を停止して、乗客Aを助ける必要がある。この場合、情報処理装置80の制御部83はエスカレータ10の駆動装置18に停止信号を送信し、エスカレータ10を停止させる(ステップS206)。
以上より、本実施形態における状態判定手段は以下の3条件により判定される。
1)携帯端末90にて計測される加速度の波形が転倒を示している(ステップS203)。転倒による大きな加速度が発生した後に、低レベルで安定した加速度が一定以上継続している。
2)転倒後、携帯端末90にて計測される加速度が低レベルで安定した状態が継続している(ステップS204)。即ち、起き上がることができない状態の継続である。
3)携帯端末が降車側のビーコン71の電波を受信している(ステップS205)。即ち、乗客Aが降車口に接近している状態である。
これに対して、乗客Aが転倒した後に、すぐに立ち上がった場合(ステップS204のNO)、携帯端末を拾い上げる動作により、これらの動作について、加速度が検出されるため、転倒状態の継続がないと判断し、エスカレータ10の駆動を止めない。この場合、再度の転倒を示す加速度が発生したか、判定してもよい(ステップS203)。また、転倒状態を維持していても(ステップS204のYES)、降車口までまだ距離があり起き上がることが期待される場合、即ち、降車側ビーコン71の電波を受信していない状態(ステップS205)ではエスカレータ10の駆動を止めずに維持する。これにより、エスカレータ10の駆動につき、不必要に停止させることが少なくなる。
以上より、判定部831は、乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する乗車判定手段の機能と、乗客Aが転倒した場合に転倒を継続しているか否かを判定する状態判定手段の機能とを有することとなる。
情報処理装置80より駆動装置18に停止信号を送信する際(ステップS206)、情報処理装置80は制御装置50を介して、駆動装置18に信号を送信してもよい。情報処理装置80が制御装置50と同一筐体内にある場合は、直接駆動装置18に停止信号を送信してもよい。
携帯端末90は情報処理装置80から、受信部91にてエスカレータ10の停止信号を受信することで、乗客Aに注意喚起の情報(注意喚起情報)を報知してもよい。
乗客Aが転倒しなかった場合、乗客Aが目的階である上階に到達した場合、携帯端末90と上階側のビーコン71と通信可能となった場合に、乗客Aがエスカレータ10より降車したと判断し、本実施形態のアプリケーションの処理を終了させてもよい。
上記の実施形態の説明では、エスカレータ10が上昇運転をしている場合について、説明したが、下降運転の場合も同様である。
上階と下階に設けられた通信装置としてビーコン70,71を用いて説明したが、ビーコン70,71の代わりにアクセスポイントを上階と下階に設けてもよい。
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の変形例は、情報処理装置80の制御部83により行われた、加速度情報に基づく乗車判定手段と、乗客の状態を判定する状態判定手段とを携帯端末90の制御部92にて行う。
図11は第2の実施形態の変形例に係る乗客コンベアシステムのフローチャートである。第2の実施形態のフローチャート(図9)において、情報処理装置80にて判定していた、加速度情報に基づく乗客の乗車判定(図9のステップS202)と、乗客の転倒、転倒の維持、降車口への接近の判定(図9のステップS203〜S205)を、本変形例では携帯端末90側で処理している。図11のステップS211は図9のステップS202に対応し、図11のステップS212〜S214はそれぞれ、図9のステップS203〜S205に対応している。
本変形例では、携帯端末90において、加速度センサ96にて計測された加速度情報に基づいて制御部92が乗客Aのエスカレータ10の乗車の可否を判定する。判定方法は第2の実施形態と同様に、携帯端末90がビーコン70から電波を受信し、図10(a)に示す波形を計測することにより、乗客Aがエスカレータ10に乗車していることを判定することができる(図11のステップS211)。
携帯端末90は計測された加速度の波形が図10(b)に示すような、歩行時の加速度に比べて一時的に大きな加速度を計測し、その後に歩行時の加速度と比べて小さな加速度を一定時間計測した場合は、乗客Aが転倒したと判定する(図11のステップS212)。
第2の実施形態と同様に転倒の判定は、基準値を設けて判定してもよい(図10(b)参照)。また、携帯端末90は加速度情報として、事前に歩行時の加速度、転倒時加速度のサンプルを取得し、当該サンプルの加速度と類似する加速度情報を取得した場合は、乗客Aがエスカレータ10に乗車、転倒していると判定してもよい。当該サンプルの加速度のデータは記憶部98に格納しておいてもよい。
携帯端末90の制御部92にて、エスカレータ10に乗車している乗客Aが転倒したと判定すると(ステップS212のYES)、乗客Aが転倒状態を継続しているか判定する(ステップS213)。この処理は図9のステップS204と同様である。
乗客Aが転倒状態を継続している場合、即ち、乗客Aが立ち上がっていない場合または携帯端末90を手放し踏段30に置いたままになっている状態の場合(ステップS213のYES)、携帯端末90は降車側のビーコン71と携帯端末90とが通信状態にあるか検知する(ステップS214)。乗客Aが降車側まで転倒状態を継続し(ステップS213のYES)、降車口まで近づいた場合(ステップS214のYES)、エスカレータ10の駆動を停止して、乗客Aを助ける必要がある。この場合、携帯端末90の制御部92は停止信号を生成し、送信部99からアクセスポイント72を介して情報処理装置80へ送信する(ステップS215)。なお、乗客Aが転倒した後に、すぐに立ち上がった場合(ステップS213のYES)、再度転倒を示す加速度が発生したか判定をしてもよい(ステップS212)。携帯端末90と降車側のビーコン71とが通信状態にない場合(ステップS214のNO)は、乗客Aが転倒を継続しているか判定をする(ステップS213)。
情報処理装置80は受信部81にて、当該停止信号を受信する。情報処理装置80の制御部83は当該停止信号より、判定部831にて乗客の状態を判定し、処理指令部832より駆動装置18に停止信号を送信することでエスカレータ10を停止させる(ステップS216)。
以上により、本実施形態および変形例の乗客コンベアシステムは、乗客が携帯端末の使用や歩行により転倒し、転倒状態を維持しながら降車口まで近づいた場合、乗客の所持する携帯端末の情報から乗客に応じた制御を行うことができる。
(第3の実施形態)
本実施形態に係る乗客コンベアシステムにおいて、概略図は第1の実施形態と同様であり、図2に示す通りである。エスカレータ10について、上昇運転をしている場合について説明する。
本実施形態では、エスカレータに乗車した乗客について、乗客が健常者か否かを判別し、健常者の場合は健康を推進するために階段を利用するよう促す、乗客コンベアシステムである。
本実施形態は、エスカレータ10の下階の乗車口付近には、乗車側通信装置として、下階通信装置(70)が設けられている。エスカレータ10の上階の降車口付近には、乗車側通信装置として、上階通信装置(71)が設けられている。また、エスカレータ10の上階乗降口と下階乗降口との間の乗客Aを搬送する区間(搬送部)にはアクセスポイント72が設けられている。下階通信装置、上階通信装置および搬送部通信装置は例えばビーコンやアクセスポイントなどの無線通信装置などである。
以下の説明では、一例として、下階通信装置としてビーコン70、上階通信装置としてビーコン71、搬送部通信装置としてアクセスポイント72を用いて説明する。
乗客Aは携帯端末90を所持している。携帯端末90はビーコン70、ビーコン71およびアクセスポイント72と通信が可能である。携帯端末90はビーコン70から発せられる信号を受信することができる。携帯端末90とビーコン70とは、双方向の通信を可能としてもよい。携帯端末90とビーコン71とは、双方向の通信を可能としてもよい。携帯端末90とアクセスポイント72とは双方向の通信が可能である。
本実施形態の乗客コンベアシステムのブロック図は図3と同様である。このため、第1の実施形態と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
本実施形態において、図3の記憶部98には、予め乗客Aの乗客情報が記憶されている。本実施形態の乗客情報とは、乗客固有の識別情報である。乗客情報は例えば、乗客Aの体重、身長、年齢、性別、弱者(高齢者、子供、身体障害者、一時的な足の骨折等)か否か等の情報であるが、これらに限定はされない。これらの乗客情報は例えば、本実施形態に係るアプリケーションによりデータベース化し、本実施形態の乗客コンベアシステムに対して、情報を開示するか否かを乗客Aが設定可能としてもよい。
判定部831は携帯端末90よりアクセスポイント72を介して送信された情報に基づいて、乗客Aの状態を判定する(状態判定手段)。処理指令部832は判定部831と接続されており、判定部831による判定結果に基づいて乗客Aごとに適した処理を行う(処理手段)。本実施形態において、乗客Aごとに適した処理とは、乗客Aごとに健康に関する情報を送信し、乗客Aの健康を推進する情報を提供することである。
図12は本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作のフローチャートである。本実施形態に係る乗客コンベアシステムは、携帯端末90内の処理と情報処理装置80内の処理との組み合わせからなる。本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作のフローチャートはステップS300〜S306からなり、この内のステップS300,301およびステップS305,306は携帯端末90の処理であり、ステップS302〜304は情報処理装置80の処理である。
エスカレータ10が上昇運転している場合に、乗客Aが下階の乗車口からエスカレータ10に乗り込む際、携帯端末90とビーコン70とが通信可能となる。このとき、携帯端末90はビーコン70から信号を受信したか判定する(ステップS300)。携帯端末90はビーコン70から信号を受信すると(ステップS300のYES)、携帯端末90の制御部92は専用のアプリケーション(ソフトウェア)を起動させる。当該アプリケーションは、加速度センサ96による加速度の測定を開始し、加速度情報を記憶部98に記憶させる。加速度センサ96により計測された加速度情報の図は図6又は図10(a)のいずれかと同様である。
乗客Aがエスカレータ10に乗車した後、制御部92はアプリケーションにより、加速度センサ96にて計測された加速度情報を記憶部98より呼び出して、アクセスポイント72を介して情報処理装置80に送信する。また、記憶部98に記憶されている乗客Aについての乗客情報についてアクセスポイント72を介して情報処理装置80に送信する(ステップS301)。乗客情報については、加速度情報よりも情報量が少ないことが多いため、乗車側のビーコン70に送信してもよい。
情報処理装置80はアクセスポイント72の転送部721から、加速度情報および乗客情報を受信部81にて受信する。情報処理装置80の制御部83は、判定部831にて、ビーコン70が携帯端末90と通信状態になったことを確認した後、当該加速度情報から乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する(ステップS302)。乗客Aの乗車判定の方法は第1の実施形態(図5(a)のステップS102)、第2の実施形態(図9のステップS202)と同様である。
判定部831は、乗客Aがエスカレータ10に乗車していると判定した場合(図12のステップS302(YES))、乗客情報に基づいて乗客Aが弱者か否かを判定する(ステップS303)。
判定部831にて、乗客Aが弱者ではない(健常者である)と判定すると(ステップS303のYES)、カロリー値を計算し、乗客Aの携帯端末90に当該カロリー値を送信する(ステップS304)。カロリー値とは、健康に関する情報であり、弱者ではない(健常者である)乗客Aがエスカレータ10を使用せずに、階段を使用した場合に消費するカロリーの値である。カロリー値は例えば、乗客Aの体重(m)、エスカレータ10の踏段数(n)、エスカレータ10の高低差(h)を基に計算してもよい。また、カロリー値は位置エネルギーに基づいて、乗客Aの体重(m)、重力加速度(g)、エスカレータ10の高低差(h)を基に計算してもよい。カロリー値は、アクセスポイント72、降車側のビーコン71のいずれかを介して送信する。
カロリー値を受信した携帯端末90は、降車側のビーコン71と携帯端末90とが通信状態にあるか検知することで、乗客Aがエスカレータ10から降車したか判定する(ステップS305)。降車の判定は、降車側のビーコン71から電波を受信して所定の時間が経過した後に降車と判定してもよい。また、図6に示す加速度情報にて歩行をあらわす加速度を検知することで、降車と判定してもよい。
乗客Aがエスカレータ10から降車した場合(ステップS305のYES)、携帯端末90の制御部92は、情報処理装置80より受信したカロリー値をスピーカ93または画面表示部94により報知する(ステップS306)。図13は画面表示部94によるカロリー値の表示例である。画面上には、本実施形態に係る乗客コンベアシステムに使用するアプリケーションの名称「健康推進アプリ」の表記と、階段を使用した場合のカロリー値「5kcal」が表示されている。スピーカ93による報知の場合、例えば「階段を使用しなかった場合は、5kcalを消費していました。」等のように健康に関する情報を報知する。カロリー情報のほかに、健康に関する情報として「積極的に階段を利用しましょう」など、階段利用を促す表記、音声表示をしてもよい。
なお、ステップS301における乗客情報の送信については、送信許可、不許可を乗客Aがアプリケーションにより自由に設定可能してもよい。
乗客Aが弱者であった場合(ステップS303のNO)、このような者には、エスカレータを使用することが望ましいため、図13のような報知をする必要は無い。多様な利用者が利用するエスカレータの場合、弱者に合わせて運転スピードを遅くする必要がある。当該乗客コンベアシステムを使用することにより、健常者には健康に関する情報を報知して階段を利用することを促すことにより、健常者が遅いエスカレータに乗車することによるストレスを回避することができる。
以上より、判定部831は、乗客Aがエスカレータ10に乗車しているか否かを判定する乗車判定手段の機能と、乗客Aが弱者ではないか判定して乗客毎に健康に関する情報を生成する状態判定手段の機能とを有することとなる。
上記の実施形態の説明では、エスカレータ10が上昇運転をしている場合について、説明したが、下降運転の場合も同様である。
上階と下階に設けられた通信装置としてビーコン70,71を用いて説明したが、ビーコン70,71の代わりにアクセスポイントを上階と下階に設けてもよい。
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態の変形例は、情報処理装置80の制御部83により行われた、加速度情報に基づく乗車判定手段と、乗客の状態を判定する状態判定手段とを携帯端末90の制御部92にて行う。
図14は第3の実施形態の変形例に係る乗客コンベアシステムのフローチャートである。第3の実施形態のフローチャート(図12)において、情報処理装置80にて判定していた、加速度情報に基づく乗客の乗車判定(図12のステップS302)と、乗客Aが弱者か否かの判定と、カロリー値の計算(図12のステップS303,S304)を、本変形例では携帯端末90側で処理している。図14のステップS311は図12のステップS302に対応し、図14のステップS312は図12のステップS303に対応し、図14のステップS316は図12のステップS304に対応している。
本変形例では、携帯端末90において、加速度センサ96にて計測された加速度情報に基づいて制御部92が乗客Aのエスカレータ10の乗車の可否を判定する(ステップS311)。携帯端末90は乗客Aがエスカレータに乗車したと判定したときは(ステップS311のYES)、記憶部98から乗客情報を呼び出し、乗客Aが弱者か否かを判定する(ステップS312)。乗客Aが弱者であると判定したときは(ステップS312のYES)、情報処理装置80にエスカレータについての情報(エスカレータ情報)を取得するためにリクエスト信号を送信する(ステップS313)。エスカレータ情報は例えば、エスカレータ10の高低差(h)や踏段数(n)などである。
情報処理装置80は受信部81よりリクエスト信号を受信すると、図示せぬ情報処理装置80の記憶部よりエスカレータ情報を読み出す。情報処理装置80は送信部82から携帯端末90へエスカレータ情報を送信する(ステップS314)。
リクエスト信号およびエスカレータ情報はアクセスポイント72またはビーコン70,71を介して送受信される。
携帯端末90はエスカレータ情報を受信した後、乗客Aがエスカレータ10から降車したか判定する(ステップS315)。降車の判定については、情報処理装置80による降車の判定(図12のステップS305)と同様である。乗客Aがエスカレータ10から降車した場合(ステップS305のYES)、携帯端末90の制御部92は、カロリー値を計算し(ステップS316)、当該カロリー値をスピーカ93または画面表示部94により報知する(ステップS317)。報知方法は第3の実施形態、図13と同様である。
以上により、本実施形態および変形例の乗客コンベアシステムは、弱者用に乗客コンベアの運転速度を調整する必要がある場合に、乗客の所持する携帯端末の情報から乗客に応じた制御を行い、健常者に対して、健康を推進することができる。
上記の各実施形態では乗客コンベアとしてエスカレータを用いて説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。