JP6873438B2 - 前眼部組織の製造方法 - Google Patents

前眼部組織の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6873438B2
JP6873438B2 JP2019114963A JP2019114963A JP6873438B2 JP 6873438 B2 JP6873438 B2 JP 6873438B2 JP 2019114963 A JP2019114963 A JP 2019114963A JP 2019114963 A JP2019114963 A JP 2019114963A JP 6873438 B2 JP6873438 B2 JP 6873438B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tissue
corneal
cell
pluripotent stem
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019114963A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019193647A (ja
Inventor
芳樹 笹井
芳樹 笹井
親文 大曽根
親文 大曽根
悠子 丸山
悠子 丸山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd, RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Publication of JP2019193647A publication Critical patent/JP2019193647A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6873438B2 publication Critical patent/JP6873438B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0618Cells of the nervous system
    • C12N5/0621Eye cells, e.g. cornea, iris pigmented cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2500/00Specific components of cell culture medium
    • C12N2500/90Serum-free medium, which may still contain naturally-sourced components
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2501/00Active agents used in cell culture processes, e.g. differentation
    • C12N2501/10Growth factors
    • C12N2501/115Basic fibroblast growth factor (bFGF, FGF-2)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2501/00Active agents used in cell culture processes, e.g. differentation
    • C12N2501/10Growth factors
    • C12N2501/155Bone morphogenic proteins [BMP]; Osteogenins; Osteogenic factor; Bone inducing factor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2501/00Active agents used in cell culture processes, e.g. differentation
    • C12N2501/70Enzymes
    • C12N2501/72Transferases (EC 2.)
    • C12N2501/727Kinases (EC 2.7.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2506/00Differentiation of animal cells from one lineage to another; Differentiation of pluripotent cells
    • C12N2506/02Differentiation of animal cells from one lineage to another; Differentiation of pluripotent cells from embryonic cells

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Ophthalmology & Optometry (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、インビトロにおいて、多能性幹細胞から前眼部組織への分化を誘導する技術に関する。
これまでに本発明者らは、SFEBq法(特許文献1)により、多能性幹細胞の凝集体を、無血清培地中で浮遊培養することにより、多能性幹細胞から、神経網膜組織と色素上皮組織とを含む、網膜前駆組織を発生させて、眼の原基である眼杯を、自己組織化により、試験管内で形成することに成功している(特許文献2、非特許文献1及び2)。しかしながら、網膜と共に眼球を構成する、角膜や水晶体等の前眼部組織を、浮遊培養によって、インビトロで多能性幹細胞から誘導したことは報告されていない。
非特許文献3には、ヒトiPS細胞をPA6フィーダー層上で接着培養することにより、角膜上皮細胞を誘導したことが報告されている。しかしながら、未決定因子の混入を回避する観点から、フィーダー細胞の存在下での培養は好ましくない。また、角膜等の立体構造の構築には至っていない。この文献に記載の方法では、角膜上皮細胞の誘導に12週間という長期間を要する。またこの文献においては、BMP4処理により、iPS細胞からの角膜上皮細胞への分化が抑制されたことが記載されている。
非特許文献4には、ヒトES細胞を、BMP4、BMP7、及びFGF2の存在下で接着培養することにより、水晶体前駆細胞を誘導したことが記載されている。非特許文献5には、マウスiPS細胞をPA6フィーダー層上で接着培養することにより、角膜上皮を誘導したことが記載されている。非特許文献6には、ヒトES細胞をフィーダー細胞存在下、接着培養することにより、角膜実質細胞を誘導したことが記載されている。非特許文献7には、ヒトES細胞を接着培養により、角膜様細胞へ誘導したことが記載されている。しかしながら、いずれの文献においても、多能性幹細胞を浮遊培養し、角膜や水晶体等の前眼部組織へ立体的に形成させたことについては開示されていない。
WO2009/148170 WO2011/055855
Nakano et al., Cell Stem Cell, 10(6): 771-785, 2012 Eiraku et al., Nature, 472(7341): 51-56, 2011 Hayashi et al., PLOS ONE, 7(9): e45435, 2012 Yang et al., FASEB J., 24: 3274-3283, 2010 Yoshida et al., PLOS ONE, 6(12): e28856, 2011 Chan et al., PLOS ONE, 8(2): e56831, 2013 Ahmad et al., Stem Cells, 25: 1145-1155, 2007
本発明の目的は、多能性幹細胞から前眼部組織やその前駆組織への選択的な分化を誘導する、実用性の高い方法を開発することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、ヒト多能性幹細胞の凝集体を、浮遊培養下で、BMP4により処理することで、前眼部組織(水晶体及び角膜)の自己組織化を誘発し、角膜及び水晶体の立体形成を効率良く行うことができることを見出した。本発明者らが開発した立体網膜の自己組織化誘導法(SFEBq法)の初期過程においてBMP4処理を行うことで、凝集塊内に形成される網膜上皮組織塊の表面に、表皮外胚葉を自己組織化的に形成させ、生体の胚の中で見られる「網膜による表皮外胚葉からの前眼部の前駆組織(水晶体プラコード及び角膜プラコード)の分化誘導」を自発的に起こさせることに成功した。その結果、内部に網膜を、表面に肥厚した水晶体および角膜上皮前駆組織を、自己形成させた浮遊凝集塊を立体形成させることが出来た。
さらにこの浮遊凝集塊の培養を続けることで、水晶体プラコードを自発的に凝集塊内部へ陥入させ、水晶体胞を形成させることに成功した。
成体の角膜は、表面から内部へ上皮・実質・内皮の3つの層からなる。上記の凝集塊を長期培養することにより、成体の角膜上皮に見られるマーカータンパク質を複数発現させることに成功した。さらに、実質・内皮は、表皮外胚葉からではなく、神経堤細胞由来の間葉細胞から発生することが知られているが、上記の凝集塊を長期培養すると、網膜組織、角膜上皮組織に加えて、間葉細胞も凝集塊内に発生させることができ、その結果、角膜上皮の層に間葉細胞層(実質・内皮に相当)を併せ持つ立体角膜を形成させることができることを見出した。
本発明者らは、上記知見に基づき更に検討を加え、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の通りである:
[1]多能性幹細胞の凝集体を、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の存在下で浮遊培養することを含む、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を含む細胞凝集塊の製造方法。
[2]骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の存在下での浮遊培養の前に、多能性幹細胞の凝集体を、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の非存在下で浮遊培養する、[1]の方法。
[3]骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質がBMP4である、[1]又は[2]の方法。
[4]BMP4の濃度が1〜5 nMである、[3]の方法。
[5]浮遊培養の全部又は一部を、線維芽細胞増殖因子の存在下で行う、[1]〜[4]のいずれかの製造方法。
[6]多能性幹細胞が胚性幹細胞又は誘導多能性幹細胞である、[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7]多能性幹細胞がヒト由来である、[1]〜[6]のいずれかの方法。
[8]浮遊培養をフィーダー細胞の非存在下で行う、[1]〜[7]のいずれかの方法。
[9]細胞凝集塊がさらに神経網膜組織を含む、[1]〜[8]のいずれかの方法。
[10]前眼部組織が、角膜及び/又は水晶体である、[1]〜[9]のいずれかの方法。
[11]細胞凝集塊が、前眼部組織の部分構造として角膜上皮を含み、さらに間葉組織、又はそれに由来する角膜実質及び/若しくは角膜内皮を含む、[1]〜[10]のいずれかの方法。
[12]角膜上皮が重層化している、[11]に記載の方法。
[13]前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を細胞凝集塊から取り出すことをさらに含む、[1]〜[12]のいずれかの方法。
[14]前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を神経網膜組織とともに取り出す、[13]の方法。
[15][1]〜[12]のいずれかの方法により得られる細胞凝集塊。
[16][13]又は[14]の方法により得られる前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織。
本発明によれば、ハイスループット対応可能な浮遊培養下で、水晶体及び角膜等の前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織の立体形成が可能である。
本発明によれば、多能性幹細胞から従来の方法では出来ない高効率で、水晶体、角膜等の前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を誘導することができる。一態様において、96穴プレートのような比較的小さな体積の培養コンパートメント中で凝集塊を形成した場合、角膜前駆組織を80%以上の効率で含む凝集塊を形成でき、水晶体前駆組織を20%以上の効率で含む細胞凝集塊を得ることができる。
本発明によれば、多能性幹細胞から従来の方法では出来ない「短期間」で水晶体、角膜等の前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を誘導することができる。一態様において、本発明によれば、分化培養開始後、3週間程度で、多能性幹細胞から水晶体及び角膜上皮を誘導可能であるが、従来は、この倍以上の時間を要していた。
本発明によれば、多能性幹細胞から生体の眼で共存する網膜、水晶体及び角膜を隣接して立体形成させることが可能である。そのため、生体に近い自然な組織発生のための培養環境を再現可能である。
本発明によれば、凝集塊内に、角膜上皮とそれに隣接する、角膜内皮や角膜実質を形成する神経堤由来間葉組織を同時に形成させ、上皮・実質・内皮の前駆組織を層状に有する角膜前駆組織を産生することができる。
本発明によれば、表層が扁平上皮、深層は立方上皮という成熟角膜に特徴的な上皮の重層構造を有する角膜上皮を形成させることが可能である。
本発明によれば、角膜前駆組織を凝集塊の表層に選択的に形成することができ、FACSなどを用いなくとも高純度に角膜前駆細胞を分離することができる。
図1Aは、BMP4添加条件下でSFEBq法により得られるヒトES細胞の凝集塊(day 14)の表層に、神経網膜とは異なる、Rx::venus陰性、E-cadherin陽性の上皮細胞層が形成されたことを示す図である。 図1Bは、BMP4添加条件下でSFEBq法により得られるヒトES細胞の凝集塊(day 24)の表層に形成された上皮細胞層がpan-cytokeratin陽性であることを示す図である。 図1Cは、BMP4添加条件下でSFEBq法により得られるヒトES細胞の凝集塊(day 24)の表層に、上皮細胞層が肥厚し、L-Maf陽性の水晶体プラコード様組織が形成されたことを示す図である。 図2は、BMP4添加条件下でSFEBq法により得られるヒトES細胞の凝集塊(day 55)の表層に形成された上皮組織が、角膜上皮に特有のサイトケラチン3(CK3)、サイトケラチン12(CK12)及びサイトケラチン14(CK14)を発現することを示す図である。 図3Aは、BMP4添加条件下でSFEBq法により得られるヒトES細胞の凝集塊(day 33)の表層の肥厚化した角膜上皮と神経網膜組織との間の間葉細胞の凝集層におけるPDGFR-alphaの発現を示す図である。 図3Bは、BMP4添加条件下でSFEBq法により得られるヒトES細胞の凝集塊(day 53)の表層の肥厚化した角膜上皮と神経網膜組織との間の間葉細胞の凝集層におけるPitx2及びABCG2の発現を示す図である。 図3Cは、間葉細胞の凝集層の最も内部に形成された、上皮化した内皮細胞層の形態を示す図である。 図4Aは、bFGF添加群において観察された、水晶体胞様の小胞を示す図である。前部で薄く、後部で厚いという、生体内での水晶体発生で前後軸に沿って見られる形態的な極性を有する水晶体組織の形成が認められる。 図4Bは、bFGF非添加群において観察された、水晶体胞様の小胞を示す図である。bFGF添加群において観察された組織極性は明確ではない。 図5Aは、重層化した角膜上皮におけるCK3の発現を示す図である。 図5Bは、重層化した角膜上皮におけるCK12の発現を示す図である。 図5Cは、重層化した角膜上皮におけるCK15の発現を示す図である。 図5Dは、重層化した角膜上皮におけるNa-K ATPaseの発現を示す図である。
本発明は、多能性幹細胞の凝集体を、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の存在下で浮遊培養することを含む、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織、及び神経網膜組織を含む細胞凝集塊の製造方法を提供する。
以下、本発明の詳細を説明する。
(1)多能性幹細胞
「多能性幹細胞」とは、生体を構成するすべての細胞に分化しうる能力(分化多能性)と、細胞分裂を経て自己と同一の分化能を有する娘細胞を生み出す能力(自己複製能)とを併せ持つ細胞をいう。
分化多能性は、評価対象の細胞を、ヌードマウスに移植し、三胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)のそれぞれの細胞を含むテラトーマ形成の有無を試験することにより、評価することができる。
多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等を挙げることができるが、分化多能性及び自己複製能を併せ持つ細胞である限り、これらに限定されない。本発明においては、胚性幹細胞又は誘導多能性幹細胞が好適に用いられる。
胚性幹細胞(ES細胞)は、例えば、着床以前の初期胚、当該初期胚を構成する内部細胞塊、単一割球等を培養することによって樹立することができる(Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1994);Thomson, J. A. et al., Science, 282, 1145-1147 (1998))。初期胚として、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を用いてもよい(Wilmut et al. (Nature, 385, 810 (1997))、Cibelli et al. (Science, 280, 1256 (1998))、入谷明ら (蛋白質核酸酵素, 44, 892 (1999))、Baguisi et al. (Nature Biotechnology, 17, 456 (1999))、Wakayama et al. (Nature, 394, 369 (1998); Nature Genetics, 22, 127 (1999); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 14984 (1999))、Rideout III et al. (Nature Genetics, 24, 109 (2000) 、Tachibana et al. (Human Embryonic Stem Cells Derived by Somatic Cell Nuclear Transfer, Cell (2013) in press))。初期胚として、単為発生胚を用いてもよい(Kim et al. (Science, 315, 482-486 (2007))、Nakajima et al. (Stem Cells, 25, 983-985 (2007))、Kim et al. (Cell Stem Cell, 1, 346-352 (2007))、Revazova et al. (Cloning Stem Cells, 9, 432-449 (2007))、Revazova et al.(Cloning Stem Cells, 10, 11-24 (2008))。
ES細胞と体細胞の細胞融合によって得られる融合ES細胞も、本発明の方法に用いられる胚性幹細胞に含まれる。
胚性幹細胞は、所定の機関より入手でき、また、市販品を購入することもできる。例えば、ヒト胚性幹細胞であるKhES-1、KhES-2及びKhES-3は、京都大学再生医科学研究所より入手可能である。
胚性生殖細胞(EG細胞)は、始原生殖細胞を、LIF, bFGF, SCFの存在下で培養すること等により樹立することができる(Matsui et al., Cell, 70, 841-847 (1992)、Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(23), 13726-13731 (1998)、Turnpenny et al., Stem Cells, 21(5), 598-609, (2003))。
誘導多能性幹細胞(iPS細胞)とは、体細胞(例えば線維芽細胞、皮膚細胞、リンパ球等)へ核初期化因子を接触させることにより、人為的に分化多能性及び自己複製能を獲得した細胞をいう。iPS細胞は、体細胞(例えば線維芽細胞、皮膚細胞等)にOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycからなる核初期化因子を導入する方法で初めて見出された(Cell, 126: p. 663-676, 2006)。その後、多くの研究者により、リプログラム因子の組み合わせや因子の導入法について様々な改良が進められており、多様な誘導多能性幹細胞の製造法が報告されている。
核初期化因子は、線維芽細胞等の体細胞から分化多能性および自己複製能を有する細胞を誘導することができる物質(群)であれば、タンパク性因子またはそれをコードする核酸(ベクターに組み込まれた形態を含む)、あるいは低分子化合物等のいかなる物質から構成されてもよい。核初期化因子がタンパク性因子またはそれをコードする核酸の場合、好ましくは以下の組み合わせが例示される(以下においては、タンパク性因子の名称のみを記載する)。
(1) Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc(ここで、Sox2はSox1, Sox3, Sox15, Sox17またはSox18で置換可能である。また、Klf4はKlf1, Klf2またはKlf5で置換可能である。さらに、c-MycはT58A(活性型変異体), N-Myc, L-Mycで置換可能である。)
(2) Oct3/4, Klf4, Sox2
(3) Oct3/4, Klf4, c-Myc
(4) Oct3/4, Sox2, Nanog, Lin28
(5) Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, Nanog, Lin28
(6) Oct3/4, Klf4, Sox2, bFGF
(7) Oct3/4, Klf4, Sox2, SCF
(8) Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, bFGF
(9) Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, SCF
これらの組み合わせの中で、得られるiPS細胞を治療用途に用いることを念頭においた場合、Oct3/4, Sox2及びKlf4の3因子の組み合わせが好ましい。一方、iPS細胞を治療用途に用いることを念頭に置かない場合(例えば、創薬スクリーニング等の研究ツールとして用いる場合など)は、Oct3/4, Klf4, Sox2及びc-Mycの4因子か、それにLin28またはNanogを加えた5因子が好ましい。
自家移植用途にはiPS細胞が好適に用いられる。
染色体上の遺伝子を公知の遺伝子工学の手法を用いて改変した多能性幹細胞も、本発明において使用できる。多能性幹細胞は、公知の方法を用いて、分化マーカーをコードする遺伝子に標識遺伝子(例えばGFP等の蛍光タンパク質)をインフレームにノックインすることにより、標識遺伝子の発現を指標として対応する分化段階に達したことを識別可能とした細胞であってもよい。
多能性幹細胞としては、例えば温血動物、好ましくは哺乳動物の多能性幹細胞を使用できる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類を挙げることができる。多能性幹細胞は、好ましくは、げっ歯類(マウス、ラット等)又は霊長類(ヒト等)の多能性幹細胞であり、最も好ましくはヒト多能性幹細胞である。
多能性幹細胞は、自体公知の方法により維持培養できる。例えば、臨床応用の観点では、多能性幹細胞は、KnockoutTMSerum Replacement(KSR)などの血清代替物を用いた無血清培養や、無フィーダー細胞培養により維持することが好ましい。
本発明において使用される多能性幹細胞は、好ましくは単離されている。「単離」とは、目的とする細胞や成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。「単離されたヒト多能性幹細胞」の純度(総細胞数に占めるヒト多能性幹細胞数の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。
(2)本発明の方法で分化誘導可能な組織
本発明の製造方法によれば、多能性幹細胞の凝集体内において、多能性細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化を誘導することにより、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を含む細胞凝集塊を得ることができる。
前眼部とは、眼球の鋸状縁より前方の部分を指す。前眼部組織とは、前眼部を構成する組織をいい、角膜、水晶体、虹彩、毛様体、前後房、チン小帯、前部硝子体および前部強膜、並びに外眼部の結膜および眼瞼等の組織やその部分構造が含まれる。本発明の方法により製造される細胞凝集塊に含まれる前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織は、好ましくは、i) 角膜、その部分構造、又はその前駆組織、及び/又はii) 水晶体、その部分構造、又はその前駆組織を含む。
角膜は、眼球壁の外層の前方約1/6を占める透明な時計皿状の組織である。角膜の部分構造としては、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮等が挙げられるが、これらに限定されない。角膜は、通常、体表側から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、及び角膜内皮からなる5つの層から構成される。角膜、その部分構造、又はその前駆組織が誘導されたことは、マーカーの発現により確認することができる。角膜、その部分構造、又はその前駆組織のマーカーとしては、パン‐サイトケラチン(角膜上皮前駆組織)、E−カドヘリン(角膜上皮前駆組織)、サイトケラチン3(角膜上皮)、サイトケラチン12(角膜上皮)、サイトケラチン14(角膜上皮)、p63(角膜上皮)、ZO−1(角膜上皮)、PDGFR−α(角膜実質、角膜内皮、又はその前駆組織)、Pitx2(角膜実質及び角膜内皮の前駆組織)、ABCG2(角膜実質及び角膜内皮の前駆組織)等が挙げられる。一態様において、本発明の方法により製造される細胞凝集塊に含まれる角膜上皮の前駆組織は、パンサイトケラチン陽性及びE−カドヘリン陽性の上皮細胞層である。一態様において、本発明の方法により製造される細胞凝集塊に含まれる角膜上皮は、サイトケラチン3陽性、サイトケラチン12陽性、サイトケラチン14陽性、p63陽性及びZO−1陽性の上皮構造である。一態様において、本発明の方法により製造される細胞凝集塊に含まれる角膜実質及び角膜内皮の前駆組織は、間葉細胞の凝集層である。一態様において、該間葉細胞の凝集層は、PDGFR−α陽性、又はPitx2陽性且つABCG2陽性である。角膜実質と角膜内皮は、共に間葉細胞に由来するが、角膜内皮は上皮化した内皮細胞層様の形態を呈するので、上記のマーカー発現の解析に加えて、形態学的な観察を行うことにより、角膜実質(又はその前駆組織)と角膜内皮(又はその前駆組織)とを区別したり、角膜内皮又はその前駆組織が誘導されたことを確認したりすることが可能となる。
水晶体は、外から眼球に入ってきた光を屈折させて、網膜にピントをあわせるレンズの役割を果たす組織である。水晶体の部分構造としては、水晶体上皮、水晶体核、水晶体嚢、等が挙げられるが、これらに限定されない。水晶体の前駆組織としては、水晶体プラコード、水晶体胞等が挙げられる。水晶体プラコードとは、肥厚した表皮外胚葉細胞層からなる水晶体前駆組織である。胚発生においては、眼胞の表皮外胚葉への接触により、当該接触領域が肥厚することにより形成される。水晶体胞とは、水晶体プラコードの陥入により形成される小胞である。水晶体、その部分構造、又はその前駆組織が誘導されたことは、マーカーの発現により確認することができる。水晶体、その部分構造、又はその前駆組織のマーカーとしては、L−Maf(水晶体前駆組織)、α、β及びγクリスタリン(水晶体)等が挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、水晶体プラコードは、L−Maf陽性の肥厚した表皮外胚葉細胞層である。一態様において、水晶体胞は、L−Maf陽性の小胞である。
神経網膜とは、網膜において、光を感知する部位をいい、少なくとも1種の網膜細胞を含む。網膜細胞としては、網膜を構成する細胞全てが挙げられ、特に限定されないが、例えば視細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜節細胞等が挙げられる。網膜細胞が誘導されたことは、細胞マーカーの発現により確認することができる。網膜細胞マーカーとしては、Rx(網膜の前駆細胞)、PAX6(前駆細胞)、Crx(視細胞の前駆細胞)、Chx10(双極細胞)、L7(双極細胞)、 Tuj1(節細胞)、Brn3 (節細胞)、Calretinin(アマクリン細胞)、Calbindin(水平細胞)、Rhodopsin(視細胞)、リカバリン(視細胞)、RPE65(色素上皮細胞)、Mitf(色素上皮細胞)等が挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、本発明の方法により製造される細胞凝集塊に含まれる神経網膜組織は、Rx陽性、Chx10陽性の表皮組織である。
(3)多能性幹細胞の凝集体の形成
多能性幹細胞の凝集体は、分散させた多能性幹細胞を、培養器に対して、非接着性の条件下で培養し(即ち、浮遊培養し)、複数の多能性幹細胞を集合させて凝集体を形成させることにより、得ることができる。
この凝集体形成に用いる培養器としては、特に限定されないが、例えば、例えば、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マイクロポア、マルチプレート、マルチウェルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトルが挙げられる。非接着性の条件下での培養を可能とするため、培養器は、細胞非接着性であることが好ましい。細胞非接着性の培養器としては、培養器の表面が、細胞非接着性となるように人工的に処理されているものや、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリクス等によるコーティング処理)されていないもの等を使用することができる。
凝集体の形成時に用いられる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハム培地、Ham’s F−12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地など、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導に、悪影響を与えない観点から、凝集体の形成時に用いられる培地は、好ましくは、無血清培地である。無血清培地とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味する。精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、サイトカイン)を含有する培地は無血清培地に該当するものとする。
凝集体の形成時に用いられる培地は、血清代替物を含有していてもよい。血清代替物は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノール又は3’チオールグリセロール、あるいはこれらの均等物などを適宜含有するものであり得る。かかる血清代替物は、例えば、WO98/30679記載の方法により調製できる。また、本発明の方法をより簡便に実施するために、血清代替物は市販のものを利用できる。かかる市販の血清代替物としては、例えば、KSR(knockout serum replacement)(Invitrogen社製)、Chemically-defined Lipid concentrated(Gibco社製)、Glutamax(Gibco社製)が挙げられる。
凝集体の形成に用いられる培地は、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導に、悪影響を与えない範囲で、他の添加物を含むことができる。添加物としては、例えば、インスリン、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、血清蛋白質(例えばアルブミン等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、凝集体の形成に用いられる培地は、後述する、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導において用いられる培地であってもよい。
多能性幹細胞の凝集体の形成に際しては、まず、多能性幹細胞を継代培養から回収し、これを、単一細胞、又はこれに近い状態にまで分散する。多能性幹細胞の分散は、適宜な細胞解離液を用いて行われる。細胞解離液としては、例えば、EDTA;トリプシン、コラゲナーゼIV、メタロプロテアーゼ等のタンパク分解酵素等を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。なかでも細胞障害性が少ないものが好ましく、このような細胞解離液として、例えば、ディスパーゼ(エーディア)、TrypLE (Invitrogen)又はアキュターゼ(MILLIPORE)等の市販品が入手可能である。なかでもアキュターゼは、単一細胞に近い状態に解離させても多能性幹細胞(特にヒト多能性幹細胞)の細胞死を起こしにくい点で好ましく用いられる。分散された多能性幹細胞は上記培地中に懸濁される。
分散により誘導される多能性幹細胞(特に、ヒト多能性幹細胞)の細胞死を抑制するために、Rho-associated coiled-coilキナーゼ(ROCK)の阻害剤を培養開始時から添加することが好ましい(特開2008-99662)。ROCK阻害剤としては、Y−27632((+)−(R)−trans−4−(1−aminoethyl)−N−(4−pyridyl)cyclohexanecarboxamide dihydrochloride)等を挙げることができる。浮遊培養に用いられるROCK阻害剤の濃度は、分散により誘導される多能性幹細胞の細胞死を抑制し得る濃度である。例えば、Y−27632について、このような濃度は、通常約0.1〜200μM、好ましくは約2〜50μMである。
分散された多能性幹細胞の懸濁液を、上記培養器中に播き、分散させた多能性幹細胞を、培養器に対して、非接着性の条件下で培養することにより、複数の多能性幹細胞を集合させて凝集体を形成する。この際、分散された多能性幹細胞を、10cmディッシュのような、比較的大きな培養器に播種することにより、1つの培養コンパートメント中に複数の多能性幹細胞の凝集体を同時に形成させてもよいが、こうすると凝集体ごとの大きさや、中に含まれる多能性幹細胞の数に大きなばらつきが生じ、このばらつきが原因で、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化の程度に、凝集体間で差が生じ、結果として分化誘導の効率が低下してしまう。そこで、分散した多能性幹細胞を迅速に凝集させて、1つの培養コンパートメント中に1つの凝集体を形成することが好ましい。このような分散した多能性幹細胞を迅速に凝集させる方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる:
(1)比較的小さな体積(例えば、1ml以下、500μl以下、200μl以下、100μl以下)の培養コンパートメント中に、分散した多能性幹細胞を閉じ込め、該コンパートメント中に1個の凝集体を形成する方法。好ましくは分散した多能性幹細胞を閉じ込めた後、培養コンパートメントを静置する。培養コンパートメントとしては、マルチウェルプレート(384ウェル、192ウェル、96ウェル、48ウェル、24ウェル等)、マイクロポア、チャンバースライド等におけるウェルや、チューブ、ハンギングドロップ法における培地の液滴等を挙げることができるが、これらに限定されない。該コンパートメントに閉じ込められた分散した多能性幹細胞が、重力にうながされて1箇所に沈殿し、或いは細胞同士が接着することにより、1つの培養コンパートメントにつき、1つの凝集体が形成される。マルチウェルプレート、マイクロポア、チャンバースライド、チューブ等の底の形状は、分散した多能性幹細胞が1箇所へ沈殿するのが容易となるように、U底又はV底とすることが好ましい。
(2)遠心チューブに分散した多能性幹細胞を入れ、これを遠心し、1箇所に多能性幹細胞を沈殿させることにより、該チューブ中に1個の凝集体を形成する方法。
1つの培養コンパートメント中に播く多能性幹細胞の数は、1つの培養コンパートメントにつき1つの凝集体が形成され、且つ本発明の方法によって、該凝集体において、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導が可能であれば、特に限定されないが、1つの培養コンパートメントにつき、通常約1×10〜約5×10個、好ましくは約1×10〜約2×10個、より好ましくは約2×10〜約1.2×10個の多能性幹細胞を播く。そして、多能性幹細胞を迅速に凝集させることにより、1つの培養コンパートメントにつき、通常約1×10〜約5×10個、好ましくは約1×10〜約2×10個、より好ましくは約2×10〜約1.2×10個の多能性幹細胞からなる細胞凝集塊が1個形成される。
凝集体形成までの時間は、1つのコンパートメントにつき1つの凝集体が形成され、且つ本発明の方法によって、該凝集体において、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導が可能な範囲で適宜決定可能であるが、この時間を短くすることにより、目的とする前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への効率よい分化誘導が期待できるため、この時間は短いほうが好ましい。好ましくは、24時間以内、より好ましくは12時間以内、さらに好ましくは6時間以内、最も好ましくは、2〜3時間で、多能性幹細胞の凝集体を形成する。この凝集体形成までの時間は、細胞を凝集させる用具や、遠心条件などを調整することで当業者であれば適宜調節することが可能である。
また凝集体形成時の培養温度、CO濃度等の他の培養条件は適宜設定できる。培養温度は、特に限定されるものではないが、例えば約30〜40℃、好ましくは約37℃である。また、CO濃度は、例えば約1〜10%、好ましくは約5%である。
更に、同一培養条件の培養コンパートメントを複数用意し、各培養コンパートメントにおいて、1個の多能性幹細胞の凝集体を形成させることにより、質的に均一な、多能性幹細胞の凝集体の集団を得ることができる。多能性幹細胞の凝集体が質的に均一であることは、凝集塊のサイズおよび細胞数、巨視的形態、組織染色解析による微視的形態およびその均一性、分化および未分化マーカーの発現およびその均一性、分化マーカーの発現制御およびその同期性、分化効率の凝集体間の再現性などに基づき、評価することが可能である。一態様において、本発明の方法に用いる、多能性幹細胞の凝集体の集団は、凝集体中に含まれる多能性幹細胞の数が均一である。特定のパラメーターについて、多能性幹細胞の凝集体の集団が「均一」とは、凝集体の集団全体のうちの90%以上の凝集体が、当該凝集体の集団における当該パラメーターの平均値±10%の範囲内、好ましくは、平均値±5%の範囲内であることを意味する。
(4)前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織の誘導
本発明の製造方法は、多能性幹細胞の凝集体を、BMP4のような骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の存在下で浮遊培養することを含む。多能性幹細胞の凝集体を、骨形成因子シグナル伝達経路活性化因子を含む培地中で浮遊培養することにより、多能性幹細胞から前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化が誘導され、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を含む細胞凝集塊が製造される。
本発明によれば、多能性幹細胞の凝集体を、浮遊培養条件の下、BMP4のような骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質により処理することにより、前眼部組織の自己組織化を誘発し、角膜、水晶体等の前眼部組織やその部分構造、その前駆組織の立体形成が可能である。本発明の一態様によれば、多能性幹細胞の凝集体を浮遊培養することにより、神経網膜の自己組織化が誘発されるが、この過程で骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質での処理を行うことで、凝集塊内に形成される網膜上皮組織塊の表面に、表皮外胚葉を自己組織化的に形成させ、インビボの胚発生の過程で見られる「網膜による表皮外胚葉からの前眼部組織の前駆組織(水晶体プラコード、角膜プラコード等)の分化の誘導」を、インビトロにおいて自発的に起こさせることができる。その結果、細胞凝集塊の内部において神経網膜が、表面において前眼部組織やその部分構造、その前駆組織(例、水晶体プラコード、角膜上皮前駆組織)が、それぞれ自己形成される。即ち、一態様において、本発明により得られる細胞凝集塊は、神経網膜組織を更に含む。こうして、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が、細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織が神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊が得られるのである。
多能性幹細胞の凝集体を「浮遊培養する」とは、多能性幹細胞の凝集体を、培地中において、培養器に対して非接着性の条件下で培養することをいう。これにより、従来の接着培養では困難であった立体形成が可能になる。
浮遊培養に用いられる培地は、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質を含む。骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質は、骨形成因子と受容体との結合によってシグナルが伝達される経路を活性化する任意の物質である。骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の例としてはBMP2、BMP4、BMP7、GDF5などが挙げられる。好ましくは、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質はBMP4である。以下、主にBMP4について記載するが、本発明において使用される骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質はBMP4に限定されない。BMP4は、公知のサイトカインであり、そのアミノ酸配列も公知である。本発明に用いるBMP4は、哺乳動物のBMP4である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類を挙げることができる。BMP4は、好ましくは、げっ歯類(マウス、ラット等)又は霊長類(ヒト等)のBMP4であり、最も好ましくはヒトBMP4である。ヒトBMP4とは、BMP4が、ヒトが生体内で天然に発現するBMP4のアミノ酸配列を有することを意味する。ヒトBMP4の代表的なアミノ酸配列としては、NCBIのアクセッション番号で、NP_001193.2(2013年6月15日更新)、NP_570911.2(2013年6月15日更新)、NP_570912.2(2013年6月15日更新)、これらのアミノ酸配列のそれぞれからN末端シグナル配列(1-24)を除いたアミノ酸配列(成熟型ヒトBMP4アミノ酸配列)等を例示することができる。
培地中の骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質の濃度は、凝集塊において、多能性幹細胞から前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化を誘導可能な範囲で、適宜設定することができるが、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質としてBMP4を用いる場合、その濃度は、通常、0.1〜50 nM、好ましくは1〜5 nMである。BMP4濃度は、培養期間中、一定に保ってもよいし、変動させてもよい。例えば、BMP4の濃度を、先ず3〜7nM、好ましくは4〜6nM、より好ましくは約5nMとし、次に0〜3 nM、好ましくは0.5〜2 nM、より好ましくは約1nMとすることができる。
骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中での培養は、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆体が誘導されるまでの全ての期間に亘って行う必要はなく、その一部の期間において行えばよい。例えば、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)の存在下での浮遊培養の前に、多能性幹細胞の凝集塊を骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)の非存在下で浮遊培養する。一態様において、多能性幹細胞の凝集塊を形成してから1〜5日間、好ましくは1〜3日間の期間、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含まない培地中で多能性幹細胞の凝集体を浮遊培養し、その後、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地に切り替えた上で浮遊培養を継続してもよい。
凝集体の浮遊培養に用いられる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハム培地、Ham’s F−12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地など、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導に、悪影響を与えない観点から、凝集体の浮遊培養に用いられる培地は、好ましくは、無血清培地である。
凝集体の浮遊培養に用いられる培地は、血清代替物を含有していてもよい。血清代替物は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノール又は3’チオールグリセロール、あるいはこれらの均等物などを適宜含有するものであり得る。かかる血清代替物は、例えば、WO98/30679記載の方法により調製できる。また、本発明の方法をより簡便に実施するために、血清代替物は市販のものを利用できる。かかる市販の血清代替物としては、例えば、KSR(knockout serum replacement)(Invitrogen社製)、Chemically-defined Lipid concentrated(Gibco社製)、Glutamax(Gibco社製)が挙げられる。
凝集体の浮遊培養に用いられる培地は、多能性幹細胞から、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導に、悪影響を与えない範囲で、他の添加物を含むことができる。添加物としては、例えば、インスリン、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、血清蛋白質(例えばアルブミン等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
一態様において、凝集体の浮遊培養に用いられる培地は、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導に、悪影響を与えない観点から、成長因子を含まない化学合成培地(growth-factor-free Chemically Defined Medium; gfCDM)に、血清代替物(KSR等)を添加したものである。ここにいう「成長因子」には、Fgf、Wnt、Nodal、Notch、Shh等のパターン形成因子(骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質を除く);インスリン及びLipid-rich albuminが包含される。成長因子を含まない化学合成培地としては、例えば、Wataya et al, Proc Natl Acad Sci USA, 105(33): 11796-11801, 2008に、開示されたgfCDMを挙げることができる。gfCDMは、1 × chemically defined lipid concentrate, monothioglycerol (450 μM)、purified BSA及びhuman apo-transferrin (150μg/ml final)を含有するIMDMとHam’s F-12との1:1混合培地である。
凝集体の浮遊培養に用いる培養器としては、特に限定されないが、例えば、例えば、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マイクロポア、マルチプレート、マルチウェルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトルが挙げられる。非接着性の条件下での培養を可能とするため、培養器は、細胞非接着性であることが好ましい。細胞非接着性の培養器としては、培養器の表面が、細胞非接着性となるように人工的に処理されているものや、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリクス等によるコーティング処理)されていないもの等を使用することができる。
多能性幹細胞から前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化誘導が可能な限り、フィーダー細胞の存在下/非存在下いずれの条件で凝集体の浮遊培養を行ってもよいが、未決定因子の混入を回避する観点から、フィーダー細胞の非存在下で凝集体の浮遊培養を行うのが好ましい。
凝集体の浮遊培養における培養温度、CO濃度、O濃度等の他の培養条件は適宜設定できる。培養温度は、例えば約30〜40℃、好ましくは約37℃である。CO濃度は、例えば約1〜10%、好ましくは約5%である。O濃度は、例えば約20〜40%である。
好ましい態様において、質的に均一な、多能性幹細胞の凝集体の集団を、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養する。質的に均一な、多能性幹細胞の凝集体の集団を用いることにより、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織への分化の程度についての凝集体間での差を最小限に抑制し、目的とする分化誘導の効率を向上することができる。質的に均一な、多能性幹細胞の凝集体の集団の浮遊培養には、以下の態様が包含される。
(1)複数の培養コンパートメントを用意し、1つの培養コンパートメントに1つの多能性幹細胞の凝集体が含まれるように、質的に均一な、多能性幹細胞の凝集体の集団を播く。(例えば、96ウェルプレートの各ウェルに1つずつ、多能性幹細胞の凝集体を入れる。)そして、各培養コンパートメントにおいて、1つの多能性幹細胞の凝集体を骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養する。
(2)1つの培養コンパートメントに複数の多能性幹細胞の凝集体が含まれるように、質的に均一な、多能性幹細胞の凝集体の集団を1つの培養コンパートメントに播く。(例えば、10cmディッシュに、複数の多能性幹細胞の凝集体を入れる。)そして、該コンパートメントにおいて、複数の多能性幹細胞の凝集体を骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養する。
本発明の方法を通じて、(1)及び(2)のいずれの態様を採用してもよく、また、培養の途中で態様を変更してもよい((1)の態様から(2)の態様へ、或いは(2)の態様から(1)の態様へ)。凝集体間の相互作用を回避し、安定な分化誘導を達成する観点からは、(1)の態様が好ましい。
上述の通り、本発明の方法においては、細胞凝集塊内において、前眼部組織の自己組織化が誘発されるので、時間の経過とともに、細胞凝集塊内に含まれる前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織の分化段階が進んでいく。従って、目的とする前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織に応じて、培養期間や培養条件を適宜調節することが好ましい。以下(5)〜(11)において、本発明の一態様を時系列に沿って説明するが、これらは本発明の例示であって、本発明を限定するものではない。
(5)神経網膜組織の誘導
多能性幹細胞の凝集塊を、骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養すると、まず、凝集体の内部に、神経網膜組織が誘導される。神経網膜組織が誘導されたことは、神経網膜組織のマーカー(例、Rx、Chx10)の発現や、神経上皮様構造(多列円柱上皮)の形態を指標に、確認することが出来る。神経網膜組織の誘導に要する期間は、培養条件や、多能性幹細胞の由来する哺乳動物の種類によって変動するので、一概に特定することは出来ないが、ヒト多能性幹細胞を用いた場合、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養開始から、例えば8、9、10、11、12、13、14又は15日後までには、凝集体の内部に、神経網膜組織が誘導される。
(6)角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードの誘導
上記(5)で得られた神経網膜組織を内部に含む凝集体を、引き続き骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養すると、神経網膜組織の外側に外胚葉性上皮細胞層が形成され、神経網膜組織が、当該外胚葉性上皮細胞層からの角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードへの分化を誘導することにより、細胞凝集塊の表層に角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが形成される。当該凝集体においては、角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが神経網膜組織と隣接する。角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが誘導されたことは、角膜上皮前駆組織のマーカー(例、パンサイトケラチン、E−カドヘリン)及び水晶体プラコードのマーカー(例、L-Maf)の発現や、肥厚した上皮細胞層の形態を指標に、確認することが出来る。角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードの誘導に要する期間は、培養条件や、多能性幹細胞の由来する哺乳動物の種類によって変動するので、一概に特定することは出来ないが、ヒト多能性幹細胞を用いた場合、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養開始から、例えば10、12、14、16、18、20、22、24、26又は28日後までには、細胞凝集塊の表層に角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが形成される。培養した複数の細胞凝集塊の中から、角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードの形成が確認できた細胞凝集塊を選択することにより、角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコード、並びに神経網膜組織を含み、角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮前駆組織及び/又は水晶体プラコードが神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊を得ることができる。上記のようにして、角膜前駆組織を例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の効率で含む細胞凝集塊の集団を形成でき、水晶体前駆組織を例えば10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上の効率で含む細胞凝集塊の集団を得ることができる。
(7)角膜上皮の誘導
上記(6)で得られた、角膜上皮前駆組織及び神経網膜組織を含み、角膜上皮前駆組織が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮前駆組織が神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊を、更に骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養することにより、角膜上皮前駆組織の角膜上皮への更なる分化が誘導される。その結果、角膜上皮及び神経網膜組織を含み、角膜上皮が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮が神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊が形成される。角膜上皮が誘導されたことは、角膜上皮のマーカー(例、サイトケラチン3、サイトケラチン12、サイトケラチン14、p63、ZO−1)や角膜上皮幹細胞のマーカー(例、サイトケラチン15)を指標に、確認することが出来る。角膜上皮の誘導に要する期間は、培養条件や、多能性幹細胞の由来する哺乳動物の種類によって変動するので、一概に特定することは出来ないが、ヒト多能性幹細胞を用いた場合、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養開始から、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70日後までには、細胞凝集塊の表層に角膜上皮が形成される。培養した複数の細胞凝集塊の中から、角膜上皮の形成が確認できた細胞凝集塊を選択することにより、角膜上皮及び神経網膜組織を含み、角膜上皮が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮が神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊を得ることができる。
角膜上皮前駆組織の角膜上皮への更なる分化を誘導するための更なる浮遊培養に用いられる培地としては、上記(4)において記載した、多能性幹細胞の凝集塊の浮遊培養のための培地を、引き続き用いることができるが、基礎培地として、角膜上皮や表皮上皮の細胞の培養に適するように改変された培地を採用してもよい。このような培地としては、CnT-30培地(CELLnTEC社製)、Defined K-SFM培地(Gibco/Invitrogen社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
(8)角膜上皮の重層化
上記(7)で得られた、角膜上皮及び神経網膜組織を含み、角膜上皮が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮が神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊を、更に骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養することにより、角膜上皮の重層化が誘導される。その結果、重層化した角膜上皮及び神経網膜組織を含み、角膜上皮が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれる、細胞凝集塊が形成される。角膜上皮の重層化は、表層が扁平上皮、深層は立方上皮という成熟角膜に特徴的な上皮の重層構造を顕微鏡観察することにより、確認することができる。角膜上皮の重層化に要する期間は、培養条件や、多能性幹細胞の由来する哺乳動物の種類によって変動するので、一概に特定することは出来ないが、ヒト多能性幹細胞を用いた場合、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養開始から、例えば、75、80、84、90、95日後までには、細胞凝集塊の表層に重層化した角膜上皮が形成される。培養した複数の細胞凝集塊の中から、重層化した角膜上皮の形成が確認できた細胞凝集塊を選択することにより、重層化した角膜上皮及び神経網膜組織を含み、角膜上皮が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれる、細胞凝集塊を得ることができる。
角膜上皮の重層化を誘導するための更なる浮遊培養に用いられる培地としては、上記(4)において記載した、多能性幹細胞の凝集塊の浮遊培養のための培地を、引き続き用いることができるが、基礎培地として、角膜上皮や表皮上皮の細胞の培養に適するように改変された培地を採用してもよい。このような培地としては、CnT-30培地(CELLnTEC社製)、Defined K-SFM培地(Gibco/Invitrogen社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
更なる浮遊培養に用いられる培地には、線維芽細胞増殖因子を添加してもよい。即ち、一態様において、本発明の方法においては、細胞凝集塊の浮遊培養の全部又は一部が、線維芽細胞増殖因子の存在下で行われる。線維芽細胞増殖因子としては線維芽細胞を増殖させる活性を有する任意の物質を使用することができる。線維芽細胞増殖因子の例としてはbFGFが挙げられる。以下、主にbFGFについて記載するが、本発明において使用される線維芽細胞増殖因子はbFGFに限定されない。線維芽細胞増殖因子(bFGF等)の添加により、角膜上皮の重層化が促進される。
bFGFは、公知のサイトカインであり、そのアミノ酸配列も公知である。本発明に用いるbFGFは、哺乳動物のbFGFである。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類を挙げることができる。bFGFは、好ましくは、げっ歯類(マウス、ラット等)又は霊長類(ヒト等)のbFGFであり、最も好ましくはヒトbFGFである。ヒトbFGFの代表的なアミノ酸配列としては、NCBIのアクセッション番号で、NP_001997.5(2013年7月7日更新)等を例示することができる。
線維芽細胞増殖因子としてbFGFを用いる場合、角膜上皮の重層化に用いられる培地中のbFGF濃度は、角膜上皮の重層化を促進する限り、特に限定されないが、通常、約0.1〜1000ng/ml、好ましくは約0.5〜500ng/ml、より好ましくは約2〜200ng/mlである。
(9)間葉組織の誘導
上記(6)又は(7)で得られた、角膜上皮又はその前駆組織、及び神経網膜組織を含み、角膜上皮又はその前駆組織が、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が、細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜上皮又はその前駆組織が神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊を、更に骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養することにより、角膜上皮又はその前駆組織と、神経網膜組織との間に間葉組織が形成される。当該間葉組織は、間葉細胞が密に凝集した層の形態を呈する。成体の角膜は、表面から内部へ上皮、実質及び内皮の3つの層を含み、実質及び内皮は、表皮外胚葉からではなく、間葉細胞から発生することが知られている。即ち、本発明によると、このインビボの胚における角膜実質及び角膜内皮の発生を、細胞凝集塊の中に再現することが可能である。更なる培養の結果、得られた細胞凝集塊においては、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、間葉組織、及び神経網膜組織を含み、且つ細胞凝集塊において、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、間葉組織、及び神経網膜組織が、細胞凝集塊の表層から内部へ向かって、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、間葉組織、及び神経網膜組織の順に層状に配置されている。
一態様において、角膜上皮又はその前駆組織と、神経網膜組織との間に形成された間葉組織は、角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織であり得る。該態様においては、更なる培養の結果得られた細胞凝集塊は、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、角膜実質又はその前駆組織、角膜内皮又はその前駆組織、及び神経網膜組織を含み、且つ細胞凝集塊において、これらが、細胞凝集塊の表層から内部へ向かって、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、角膜実質又はその前駆組織、角膜内皮又はその前駆組織、及び神経網膜組織の順に層状に配置されている。即ち、細胞凝集塊の中に、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織を含む、角膜又はその前駆組織(角膜様組織)が、神経網膜組織に隣接して、その外側に形成される。
間葉組織、或いは角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織が誘導されたことは、角膜実質、角膜内皮、又はその前駆組織のマーカーであるPDGFR−α、Pitx2、ABCG2等の発現や、間葉細胞が密に凝集した層という形態的な特徴を指標に、確認することができる。更に、角膜内皮は上皮化した内皮細胞層様の形態を呈するので、この形態学的な特徴を指標に、角膜実質(又はその前駆組織)と角膜内皮(又はその前駆組織)とを区別したり、角膜内皮又はその前駆組織が誘導されたことを確認したりすることも可能である。
間葉組織(角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織)の誘導に要する期間は、培養条件や、多能性幹細胞の由来する哺乳動物の種類によって変動するので、一概に特定することは出来ないが、ヒト多能性幹細胞を用いた場合、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養開始から、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70日後までには、角膜上皮又はその前駆組織と、神経網膜組織との間に間葉組織(角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織)が形成される。培養した複数の細胞凝集塊の中から、間葉組織(角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織)の形成が確認できた細胞凝集塊を選択することにより、上記の態様で、角膜上皮(好ましくは、重層化した角膜上皮)又はその前駆組織、間葉組織(角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織)、及び神経網膜組織を含む、細胞凝集塊を得ることができる。
間葉組織を誘導するための更なる浮遊培養に用いられる培地としては、上記(4)において記載した、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養のための培地を、引き続き用いることができるが、基礎培地として、角膜上皮や表皮上皮の細胞の培養に適するように改変された培地を採用してもよい。このような培地としては、CnT-30培地(CELLnTEC社製)、Defined K-SFM培地(Gibco/Invitrogen社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
上記の態様で、重層化した角膜上皮、間葉組織(角膜実質又はその前駆組織、及び角膜内皮又はその前駆組織)、及び神経網膜組織を含む、細胞凝集塊の形成を目指す場合、更なる浮遊培養に用いられる培地には、線維芽細胞増殖因子(bFGF等)を添加してもよい。
線維芽細胞増殖因子としてbFGFを用いる場合、更なる浮遊培養に用いられる培地中のbFGF濃度は、角膜上皮の重層化を促進する限り、特に限定されないが、通常、約0.1〜1000ng/ml、好ましくは約0.5〜500ng/ml、より好ましくは約2〜200ng/mlである。
(10)水晶体胞の誘導
上記(6)で得られた、水晶体プラコード及び神経網膜組織を含み、水晶体プラコードが、細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ水晶体プラコードが神経網膜組織と隣接する、細胞凝集塊を、更に骨形成因子シグナル伝達経路活性化物質(BMP4等)を含む培地中で浮遊培養することにより、水晶体プラコードの陥入が誘導され、水晶体胞が形成される。その結果、水晶体胞及び神経網膜組織を含む、細胞凝集塊が形成される。水晶体胞が形成されたことは、水晶体前駆組織マーカー(例、L−Maf)陽性の小胞という形態学的特徴を指標に、確認することができる。水晶体胞の形成に要する期間は、培養条件や、多能性幹細胞の由来する哺乳動物の種類によって変動するので、一概に特定することは出来ないが、ヒト多能性幹細胞を用いた場合、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養開始から、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70日後までには、水晶体胞が形成される。培養した複数の細胞凝集塊の中から、水晶体胞の形成が確認できた細胞凝集塊を選択することにより、水晶体胞及び神経網膜組織を含む細胞凝集塊を得ることができる。
ここで、更なる浮遊培養に用いられる培地としては、上記(4)において記載した、多能性幹細胞の凝集体の浮遊培養のための培地に、更に線維芽細胞増殖因子を添加したものを用いることができる。即ち、一態様において、本発明の方法においては、細胞凝集塊の浮遊培養の全部又は一部が、線維芽細胞増殖因子の存在下で行われる。線維芽細胞増殖因子としては線維芽細胞を増殖させる活性を有する任意の物質を使用することができる。線維芽細胞増殖因子の例としてはbFGFが挙げられる。以下、主にbFGFについて記載するが、本発明において使用される線維芽細胞増殖因子はbFGFに限定されない。線維芽細胞増殖因子(bFGF等)の添加により、形成される水晶体胞が、前後軸の前部で薄く、後部で厚いという、生体内における水晶体発生において観察されるものと共通する形態的な極性を呈するようになる。線維芽細胞増殖因子(bFGF等)を添加せずに、上記(4)において記載した、多能性幹細胞の凝集塊の浮遊培養のための培地を、引き続き用いることによっても、水晶体プラコードの陥入及び、水晶体胞の形成は誘導されるものの、上記のような組織極性は明確にはあらわれない。
線維芽細胞増殖因子としてbFGFを用いる場合、水晶体胞の形成誘導に用いられる培地中のbFGF濃度は、上述の様な形態的な極性を水晶体胞に与えることが可能な限り、特に限定されないが、通常、約0.1〜1000ng/ml、好ましくは約0.5〜500ng/ml、より好ましくは約2〜200ng/mlである。
(11)前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織の製造
更なる局面において、上記により得られた細胞凝集塊から前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を取り出すことができる。一態様において、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を神経網膜組織とともに取り出すことができる。さらに、本発明は上記方法により得られる細胞凝集塊、前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を提供する。例えば、角膜又はその前駆組織及び神経網膜組織を含み、且つ角膜又はその前駆組織が細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が、細胞凝集塊の内部に含まれ、且つ角膜又はその前駆組織と神経網膜組織とが隣接する、細胞凝集塊から、角膜又はその前駆組織を含む表層を単離することができる。上記(8)により得られた細胞凝集塊においては、角膜又はその前駆組織が凝集体の表層に、徒手的に分離可能な層を形成するため、酵素処理等を要することなく、容易に角膜又はその前駆組織を単離することができる。更に、得られた角膜又はその前駆組織を、酵素等を用いて分散することにより、FACS等を用いなくても高純度に角膜細胞や角膜前駆細胞を分離することが可能となる。このようにして得られた角膜又はその前駆組織をそのまま、又は培養してシート状にして、移植に使用することができる。
このように、本発明により得られた前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を移植のために使用することができる。例えば、本発明により得られた前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織は、前眼部組織の障害に基づく疾患の治療薬として、或いは前眼部組織の損傷状態において、当該組織を補充するために用いることができる。前眼部組織の障害に基づく疾患、又は前眼部組織の損傷状態の患者に、本発明により得られた当該前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を移植することにより、前眼部組織の障害に基づく疾患、又は前眼部組織の損傷状態を治療することができる。前眼部組織の障害に基づく疾患としては、角膜の障害に基づく疾患(例、円錐角膜、水泡性角膜症、角膜白斑、ヘルペス角膜、角膜変性症、レーシックやPRKなどの近視の為のレーザー手術の失敗による角膜の損傷)、水晶体の障害に基づく疾患(例、先天性白内障、後天性白内障)などが挙げられる。
移植医療においては、組織適合性抗原の違いによる拒絶がしばしば問題となるが、移植のレシピエントの体細胞から樹立した多能性幹細胞(例、誘導多能性幹細胞)を用いることで当該問題を克服できる。即ち、好ましい態様において、本発明の方法において、多能性幹細胞として、レシピエントの体細胞から樹立した多能性幹細胞(例、誘導多能性幹細胞)を用いることにより、当該レシピエントについて免疫学的自己の前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を製造し、これが当該レシピエントに移植される。
さらに、本発明により得られた前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織を薬物のスクリーニングや評価のために使用することができる。特に、本発明により得られる前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織は、網膜、水晶体及び角膜が隣接して立体形成されていたり、角膜上皮(好ましくは重層化した角膜上皮)、角膜実質及び角膜内皮の各前駆組織を層状に有する角膜前駆組織を有する等、生体における前眼部組織やその前駆組織と極めて類似した高次構造を有するので、前眼部組織の障害に基づく疾患や、前眼部組織の損傷状態の治療薬のスクリーニング、医薬品や化粧品の副作用・毒性試験(例、角膜刺激試験の代替試験)、前眼部組織の疾患の新たな治療方法の開発などに適用することができる。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:ヒトES細胞の浮遊凝集塊培養による水晶体および角膜前駆組織の自己組織化
(方法)
ヒトES細胞(KhES-1;網膜特異的遺伝子Rxに蛍光タンパク遺伝子Venusをノックインしたもの)をトリプシン処理により単一細胞に分散し、SFEBq法(Nakano et al, Cell StemCell, 10(6): 771-785, 2012)に準じて凝集塊を形成し、分化誘導のための浮遊凝集塊培養を37℃、5% CO2存在下で行った。分散した5000個のヒトES細胞を、低細胞吸着性の表面コートをしたV底型96ウェルプレートの各ウェルに播種し、分化誘導用の培養液は成長因子を含まない化学合成培地(growth-factor-free Chemically Defined Medium; gfCDM; Wataya et al, Proc Natl Acad Sci USA, 105(33): 11796-11801, 2008)に5% KSR (Knockout Serum Replacement)を添加したものを用いた。分化誘導の最初の3日間は分散惹起性細胞死を抑制するためにROCK阻害剤Y-27632を20 μM添加し、次の3日間はその濃度を半減させて作用させた。分化誘導開始後3日目から18日目までBMP4を5 nM添加して作用させ、18日目から21日目までその濃度を半減して作用させた。これらの凝集塊は、免疫組織染色で解析した。
(結果)
分化誘導開始9日後より、凝集塊の内部にRx::venusの蛍光が強く観察された。分化誘導開始12日後には、BMP4の添加の有無に関わらず、この蛍光は認められたが、BMP4処理により蛍光は約2倍以上強くなった。Rx::venus陽性組織は神経上皮様構造(多列円柱上皮)を示し、神経網膜マーカーであるChx10を発現しており、神経網膜が形成されたことが判った。分化誘導開始14日後には、凝集塊の表層に、神経網膜とは異なるRx::venus陰性の上皮細胞層の形成を認めた(図1A)。分化誘導開始24日後には、この表面の上皮細胞層は、非神経の外胚葉性上皮マーカーであるPan-cytokeratin陽性およびE-cadherin陽性であった(図1B)。このように神経網膜の外側に非神経の外胚葉性上皮組織を自己形成することは、9割以上の凝集塊で再現性良く認められた。この表面の上皮細胞層は、大きくあるいは中程度に肥厚(プラコード形成)し、それぞれ水晶体プラコードおよび角膜上皮前駆組織を形成していることが示唆された。水晶体プラコード様組織は、水晶体前駆組織マーカーのL-Maf陽性であった(図1C)。角膜上皮前駆組織は9割以上の凝集塊で、水晶体プラコードは5割の凝集塊で形成を認めた。
実施例2:ヒトES細胞から自己組織化した角膜前駆組織の長期培養による角膜マーカーの発現
(方法)
分化誘導18日後まで実施例1の培養条件でV底96穴プレートにて培養したのち、浮遊凝集塊を細胞非吸着性のペトリ皿(直径6 cm)に移し、浮遊培養を37℃、5% CO2、40% O2存在下に行った。培養液は、18日目から30日目までは、gfCDM + 5% KSRに1 nM BMP4添加した培地、30日目から以降は下記の2つの培地(角膜上皮や表皮上皮の培養をサポートすることが知られている市販培地をベース)のいずれかを用いて培養し、55日目に免疫組織染色で解析した。
1) CnT-30 培地(CELLnTEC社)に1 nM BMP4添加した培養液
2) Defined K-SFM培地(Gibco/Invitrogen社)に10%FBSと1 nM BMP4添加した培養液
(結果)
上記の1)および2)のいずれの培養液を用いた培養でも、ヒトES細胞凝集塊の表層に自己組織化した上皮前駆組織は拡大培養でき、分化培養開始55日後には、Pan-cytockeratin陽性に加えて、角膜上皮に特有のサイトケラチン3(CK3)、サイトケラチン12(CK12)、サイトケラチン14(CK14)、p63、ZO-1を発現する上皮構造の形成を8割以上の凝集塊が示した(図2)。この結果から、本発明の方法による自己組織化で立体形成された表層の上皮組織は、角膜の前駆組織であることが明確に立証された。
実施例3:上皮組織と間葉組織を併せ持つ角膜前駆組織のヒトES細胞からの自己組織化
(方法)
実施例2と同様に30日まで培養を行った。即ち、ヒトES細胞凝集塊を分化誘導18日後まで実施例1の培養条件でV底96穴プレートにて培養したのち、浮遊凝集塊を細胞非吸着性のペトリ皿(直径6 cm)に移し、浮遊培養を37℃、5% CO2、40% O2存在下に行った。培養液は、18日目から30日目までは、gfCDM + 5% KSRに1 nM BMP4添加した培地に培養し、免疫組織染色で解析した。また、その培養した凝集塊の一部は、30日以降も引き続き55日まで浮遊培養を行った。後者の培養には、Defined K-SFM培地(Gibco/Invitrogen社)に10%FBSと1 nM BMP4添加した培養液を用いた。
(結果)
実施例1および2に記載のように、ヒトES細胞凝集塊は、表層に表皮外胚葉由来の角膜上皮や水晶体組織を、内部に神経網膜組織を有する。30日目のサンプルでは、中程度に肥厚化した角膜上皮の直下(即ち、角膜上皮と神経網膜組織の間)に、間葉細胞が存在し、密に凝集した層を作っていることが7割の凝集塊で確認された。この間葉細胞は、間葉系マーカーであるPDGFR-alpha陽性(30日目;図3A)で、初期角膜の間葉細胞(神経堤細胞由来)で発現するPitx2やABCG2(53日目;図3B)も陽性であった。生体の角膜では、表面の角膜上皮層の下に角膜実質、その下に角膜内皮が存在し、角膜実質と角膜内皮は角膜上皮の下に凝集する神経堤細胞由来の間葉細胞に由来する。この生体内と似た状況を、ヒトES細胞凝集塊の表層およびその直下の層に誘導することが出来たと言える。さらに、間葉細胞の凝集層の最も内部の部分は、一部、上皮化し、内皮様細胞層の形態的な形成を示唆した(図3C、矢印)。このように、本発明の方法による前眼部の自己組織化においては、角膜上皮組織が形成されるのみならず、角膜実質と角膜内皮を含んだ角膜全層の前駆組織をヒト多能性幹細胞から立体形成することが可能であることが示された。
実施例4:ヒトES細胞由来の水晶体プラコードから水晶体胞の自己組織化
(方法)
実施例3の条件で、分化誘導開始30日目までヒトES細胞凝集塊の浮遊培養を継続した。その際に、15日目から20 ng/ml bFGFを培地に添加した。更に、別の培養条件として、実施例3の条件で30日間培養後、30日目から55日目までgfCDM + 10% KSRあるいはGMEM + 10% KSRで培養を行った。
(結果)
30日目のサンプルにおいて、bFGFの添加の有無に関わらず、4割の凝集塊内で水晶体胞様の小胞が表層の水晶体プラコードからの陥入により形成されていた。この小胞は、水晶体初期マーカーのL-Maf陽性であったが、bFGFの添加により、その発現レベルは2倍以上に上昇した。また、bFGFの添加例においては、生体内の水晶体発生で前後軸に沿って見られるような形態的な極性(前部で薄く、後部で篤い水晶体組織の形成)が水晶体胞様の小胞に見られ、より生体内に近い水晶体形成が確認された(図4A)。bFGFの非存在下にgfCDM + 10% KSRあるいはGMEM + 10% KSRで55日まで培養したものでも、水晶体胞様の小胞の陥入・形成を再現性よく認めたが、上記の組織極性は明確ではなかった(図4B)。したがって、この極性の形成は単にbFGFが発生を早めたためでなく、水晶体の成熟に向けた発生プログラムを質的に促進していることが示唆された。
実施例5:重層化した角膜上皮の自己形成
(方法)
分化誘導30日後まで上記の実施例と同一の条件で、V底96穴プレートにて、ヒトES細胞凝集塊を培養した。そののち、浮遊凝集塊を細胞非吸着性のペトリ皿(直径6cm)に移し、浮遊培養を37℃、5% CO2、40% O2条件下で行った。培養液としては、30日目までは、gfCDM + 5% KSR、30日目からgfCDM+20%KSRを用いた。BMP4を、3日から18日目までは5nM添加した。24日目にはBMP4濃度を2.5 nMに半減させ、30日目以降は1 nMで継続して添加した。またbasic FGFを15日目から20 ng/mlの濃度で培地に添加して培養を行った。84日目に免疫組織染色で浮遊凝集塊を解析した。
(結果)
ヒトES細胞凝集塊の表層に自己組織化した角膜上皮を認め、分化培養開始84日後には、角膜上皮に特有のサイトケラチン3(CK3)、サイトケラチン12(CK12)、角膜上皮幹細胞のマーカーであるサイトケラチン15(CK15)が陽性である角膜上皮を認めた(図5A、5B及び5C)。また角膜上皮に発現しているNa-K ATPaseも染色されていた(図5D)。この上皮は、表層が扁平上皮、深層は立方上皮という成熟角膜に特徴的な上皮の重層構造を呈していた(図5B)。この結果から、本発明の方法により自己組織化で形成された立体角膜上皮前駆組織は、さらに成熟すると重層化を自発的に行い、生体に近い角膜上皮本来の組織構築とタンパク発現を有することが示唆された。また、角膜上皮の下方には間葉の凝集層を認めており、角膜の上皮、実質、内皮という角膜全層の前駆組織であることを明確に立証するものである。
本発明によれば、ハイスループット対応可能な浮遊培養下で、多能性幹細胞からの、水晶体及び角膜等の前眼部組織若しくはその部分構造、又はその前駆組織の立体形成が可能であるので、本発明は、眼科領域における再生医療の実施に有用である。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
本出願は日本で出願された特願2013−163586(出願日:2013年8月6日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (6)

  1. 多能性幹細胞由来の細胞凝集塊であって、内部にRx陽性及びChx10陽性である神経上皮様構造と、間葉細胞の凝集層とを含み、表層に重層構造を有する角膜上皮組織を含み、前記間葉細胞の凝集層は、Rx陽性及びChx10陽性である神経上皮様構造と角膜上皮組織との間に形成されている、細胞凝集塊。
  2. 前記Rx陽性及びChx10陽性である神経上皮様構造が神経網膜組織を含む、請求項1に記載の細胞凝集塊。
  3. 角膜上皮組織の重層構造において、表層が扁平上皮であり、深層が立方上皮である、請求項1又は2に記載の細胞凝集塊。
  4. 角膜上皮組織がNa-K ATPase陽性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞凝集塊。
  5. 角膜上皮及び神経網膜組織を含み、角膜上皮が細胞凝集塊の表層を構成し、神経網膜組織が細胞凝集塊の内部に含まれ、かつ角膜上皮が神経網膜組織と隣接する細胞凝集塊を、BMP2、BMP4、BMP7及びGDF5からなる群から選択される1以上の物質を含む培地中で培養することを含む、重層構造を有する角膜上皮組織を含む、細胞凝集塊の製造方法。
  6. 上記1以上の物質が、BMP4である、請求項5に記載の細胞凝集塊の製造方法。
JP2019114963A 2013-08-06 2019-06-20 前眼部組織の製造方法 Active JP6873438B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013163586 2013-08-06
JP2013163586 2013-08-06

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015530922A Division JP6546089B2 (ja) 2013-08-06 2014-08-06 前眼部組織の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019193647A JP2019193647A (ja) 2019-11-07
JP6873438B2 true JP6873438B2 (ja) 2021-05-19

Family

ID=52461422

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015530922A Active JP6546089B2 (ja) 2013-08-06 2014-08-06 前眼部組織の製造方法
JP2019114963A Active JP6873438B2 (ja) 2013-08-06 2019-06-20 前眼部組織の製造方法

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015530922A Active JP6546089B2 (ja) 2013-08-06 2014-08-06 前眼部組織の製造方法

Country Status (9)

Country Link
US (1) US11274277B2 (ja)
EP (1) EP3031906B1 (ja)
JP (2) JP6546089B2 (ja)
KR (1) KR102297580B1 (ja)
CN (1) CN105518123B (ja)
AU (1) AU2014303443B2 (ja)
CA (1) CA2920600C (ja)
SG (1) SG11201600813VA (ja)
WO (1) WO2015020091A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105683366B (zh) 2013-08-23 2020-11-06 住友化学株式会社 用于制备视网膜组织和视网膜相关细胞的方法
US11214772B2 (en) 2014-10-24 2022-01-04 Sumitomo Dainippon Pharma Co., Ltd. Production method for retinal tissue
WO2016063985A1 (ja) 2014-10-24 2016-04-28 大日本住友製薬株式会社 神経組織の製造方法
ES2928213T3 (es) 2016-04-22 2022-11-16 Sumitomo Pharma Co Ltd Método para producir tejido retiniano
WO2018037161A1 (en) 2016-08-24 2018-03-01 Tampereen Yliopisto Differentiation of pluripotent stem cells into corneal cells
CN110945115A (zh) * 2017-07-20 2020-03-31 国立研究开发法人理化学研究所 神经组织的保存方法
US20210071137A1 (en) * 2017-11-24 2021-03-11 Sumitomo Chemical Company, Limited Production method for cell mass including neural cells/tissue and non-neural epithelial tissue, and cell mass from same
WO2022239868A1 (ja) * 2021-05-14 2022-11-17 国立研究開発法人理化学研究所 網膜組織の製造方法
CN116121173B (zh) * 2023-03-14 2023-09-01 广州湾区生物基因科技有限公司 一种眼组织类器官及其衍生细胞系、其制备方法和应用

Family Cites Families (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0659045A4 (en) 1993-05-18 1997-02-26 Inst Nat Sante Rech Med MOUSE GENETICALLY GENERATED AND COMPRISING MODIFICATIONS IN GENES ENCODING RETINOIC ACID RECEPTOR PROTEINS.
EP0986635A4 (en) 1997-01-10 2001-11-07 Life Technologies Inc SERUM SUBSTITUTE FOR EMBRYONIC STEM CELLS
AUPS284702A0 (en) 2002-06-07 2002-06-27 University Of Technology, Sydney Novel screens to identify agents that modulate pericyte function and diagnostic and therapeutic applications therefor
EP2267115B8 (en) * 2003-02-06 2014-07-23 Cellseed Inc. Anterior ocular segment related cell sheets, three-dimensional structures, and processes for producing the same
JP2004298108A (ja) * 2003-03-31 2004-10-28 Japan Science & Technology Agency 水晶体細胞の作製方法、およびこの方法によって得られる水晶体細胞
EP2484308A1 (en) 2006-07-24 2012-08-08 International Stem Cell Corporation Synthetic cornea from retinal stem cells
JP2008099662A (ja) 2006-09-22 2008-05-01 Institute Of Physical & Chemical Research 幹細胞の培養方法
WO2008106771A1 (en) * 2007-03-02 2008-09-12 Mark Ungrin Devices and methods for production of cell aggregates
WO2008129554A1 (en) 2007-04-18 2008-10-30 Hadasit Medical Research Services & Development Limited Stem cell-derived retinal pigment epithelial cells
EP2314671B1 (en) * 2008-06-06 2022-08-03 Riken Method for culture of stem cell
KR101372966B1 (ko) * 2009-01-23 2014-03-13 고꾸리쯔 다이가꾸 호우징 오사까 다이가꾸 표적 세포 유도용 피더 세포
JP5709015B2 (ja) 2009-08-19 2015-04-30 国立大学法人大阪大学 角膜移植用シート
WO2011055855A1 (en) 2009-11-05 2011-05-12 Riken A method for differentiation induction in cultured stem cells
WO2011100286A2 (en) * 2010-02-09 2011-08-18 The Johns Hopkins University Compositions and methods of generating a differentiated mesodermal cell
US9574171B2 (en) 2010-12-02 2017-02-21 Technion Research & Development Foundation Ltd. Methods of generating corneal cells and cell populations comprising same
CN103492555A (zh) * 2011-04-20 2014-01-01 国立大学法人大阪大学 角膜上皮分化取向性iPS细胞
EP3530730B1 (en) * 2011-10-31 2022-07-20 Riken Method for culturing stem cell
PT2788472T (pt) 2011-12-06 2019-04-01 Astellas Inst For Regenerative Medicine Método de diferenciação dirigida para a produção de células endoteliais corneanas

Also Published As

Publication number Publication date
CA2920600A1 (en) 2015-02-12
EP3031906B1 (en) 2024-05-15
JP2019193647A (ja) 2019-11-07
SG11201600813VA (en) 2016-03-30
CN105518123A (zh) 2016-04-20
CA2920600C (en) 2023-11-28
JP6546089B2 (ja) 2019-07-17
EP3031906A4 (en) 2017-01-25
AU2014303443B2 (en) 2020-11-12
JPWO2015020091A1 (ja) 2017-03-02
US20160186136A1 (en) 2016-06-30
KR102297580B1 (ko) 2021-09-03
AU2014303443A1 (en) 2016-03-17
WO2015020091A1 (ja) 2015-02-12
CN105518123B (zh) 2021-01-15
US11274277B2 (en) 2022-03-15
EP3031906A1 (en) 2016-06-15
KR20160040288A (ko) 2016-04-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6873438B2 (ja) 前眼部組織の製造方法
KR102604618B1 (ko) 망막 조직을 포함하는 세포 응집체 및 그의 제조 방법
US11542471B2 (en) Method for producing ciliary marginal zone-like structure
WO2017183732A1 (ja) 網膜組織の製造法
JP7029144B2 (ja) 腺性下垂体又はその前駆組織の製造方法
WO2013077425A1 (ja) 網膜組織及び網膜関連細胞の製造方法
JP6680681B2 (ja) 小脳前駆組織の製造方法
CN107109367A (zh) 神经组织的制备方法
CN107002040A (zh) 视网膜组织的制备方法
ES2741309T3 (es) Método para fabricar una estructura semejante a zona marginal ciliar
JPWO2019054514A1 (ja) 網膜組織の製造方法
JPWO2019054515A1 (ja) 背側化シグナル伝達物質又は腹側化シグナル伝達物質による錐体視細胞又は桿体視細胞の増加方法
JP5985209B2 (ja) 眼杯様構造体の製造方法
WO2022138803A1 (ja) 視細胞を含む層状の網膜組織の促成製造方法
Binti Kamarudin Differentiation of human pluripotent stem cells into corneal epithelial like cells

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190719

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190816

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200804

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201005

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20201007

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210316

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210413

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6873438

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250