以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る障害物検知装置10の構成例を示すブロック図である。障害物検知装置10は、車両に搭載され、車両周辺の障害物を検知するものである。この障害物検知装置10は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、第4ソナーセンサ14、送受信部15、距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18、第1位置評定部19、第2強度判定部20、及び第2位置評定部21を備える。
図2は、実施の形態1におけるソナーセンサの検知範囲と基準距離の例を示す図である。図2は車両1を上から見た状態であり、車両1の前後方向をX軸、車幅方向をY軸とする。図2の例では、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14は、車両1の後部に、等間隔に一列に並べて設置されている。つまり、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14が並ぶ方向とY軸方向が同じである。なお、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の設置位置は、車両1の後部に限定されない。
一般に、ソナーセンサは、このソナーセンサからの距離が遠くなるほど、検知範囲が狭くなる。そのため、遠距離領域では、隣接するソナーセンサの検知範囲が重なる領域も狭くなる。開口合成処理では、隣接するソナーセンサの検知範囲が重なっていることが望ましいが、遠距離領域では検知範囲が重なる領域が狭い、又は検知範囲が重ならないため、距離が遠くなるほど位置評定精度が低下する。そこで、実施の形態1では、隣接するソナーセンサの検知範囲が重なる重複領域の存在する距離が、基準距離Dxに設定される。この基準距離Dxよりソナーセンサに近い中近距離領域A2では、検知範囲が重なっているため、開口合成処理による高精度な障害物位置評定が可能である。
図2の例では、基準距離Dx未満の中近距離領域A2に対して、隣接するソナーセンサの検知範囲が重なるような第2閾値Th2が設定される。第2閾値Th2については後述する。この中近距離領域A2において、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−2と、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−2とは、一部が重なっている。同様に、隣接する第2ソナーセンサ12の検知範囲12−2と第3ソナーセンサ13の検知範囲13−2、第3ソナーセンサ13の検知範囲13−2と第4ソナーセンサ14の検知範囲14−2も、それぞれ、一部が重なっている。
基準距離Dx以上の遠距離領域A1に対しては、隣接するソナーセンサの検知範囲が重ならないような第1閾値Th1が設定される。第1閾値Th1については後述する。この遠距離領域A1において、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1は、Y軸方向に幅Dyをもつ範囲であり、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1とは重ならない。同様に、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の各検知範囲12−1,13−1,14−1も重ならない。
図3は、実施の形態1に係る障害物検知装置10の動作例を示すフローチャートである。障害物検知装置10は、例えば車両1の走行中、予め定められた時間ごとに、図3のフローチャートに示される動作を繰り返す。
ステップST11において、送受信部15は、例えば第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の順番で探査波を送信させる。また、送受信部15は、探査波が障害物で反射した反射波を、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14に受信させる。このとき、送受信部15は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14に、直接波を受信させてもよいし、間接波を受信させてもよい。例えば、送受信部15は、第1ソナーセンサ11から探査波を送信させ、この探査波が障害物で反射した反射波を、第1ソナーセンサ11において直接波として受信させると共に、隣接する第2ソナーセンサ12において間接波として受信させる。送受信部15は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の中から、探査波送信かつ直接波受信用のソナーセンサと、間接波受信用のソナーセンサとを任意に選択すればよい。送受信部15は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14を用いた送受信結果を、距離算出部16へ出力する。送受信結果には、探査波を送信したソナーセンサ、この探査波に対応する直接波を受信したソナーセンサ、探査波送信から直接波受信までの時間、直接波の強度、この探査波に対応する間接波を受信したソナーセンサ、探査波送信から間接波受信までの時間、及び間接波の強度等が含まれる。
ステップST12において、距離算出部16は、送受信部15からの送受信結果を用いて、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14のそれぞれが反射波を受信するまでに要した時間を元に、TOF(Time Of Flight)方式によりソナーセンサごとに障害物までの距離を算出する。この反射波は、直接波でもよいし間接波でもよい。距離算出部16は、算出した障害物までの距離を、この算出に用いた送受信結果とあわせて、距離判定部17へ出力する。
ステップST13において、距離判定部17は、各ソナーセンサについて距離算出部16により算出された障害物までの距離が、図2に示される基準距離Dx以上であるか否かを判定する。基準距離Dxは、距離判定部17に予め与えられているものとする。距離判定部17は、障害物までの距離が基準距離Dx以上であると判定した場合(ステップST13“YES”)、その障害物までの距離と送受信結果とを、第1強度判定部18へ出力する。一方、距離判定部17は、障害物までの距離が基準距離Dx未満であると判定した場合(ステップST13“NO”)、その障害物までの距離と送受信結果とを、第2強度判定部20へ出力する。
ステップST14において、第1強度判定部18は、基準距離Dx以上と判定された障害物までの距離の算出に用いられた反射波の強度が、予め定められた第1閾値Th1以上であるか否かを判定する。実施の形態1においては、この反射波は、直接波に限定される。第1強度判定部18は、反射波の強度が第1閾値Th1以上であると判定した場合(ステップST14“YES”)、上記障害物までの距離と送受信結果とを、第1位置評定部19へ出力する。一方、第1強度判定部18は、全ソナーセンサについて、反射波の強度が第1閾値Th1未満であると判定した場合(ステップST14“NO”)、図3のフローチャートに示される動作を終了する。
ステップST15において、第1位置評定部19は、強度が第1閾値Th1以上であると判定された反射波から算出された障害物までの距離と、この反射波を受信したソナーセンサの位置とを用いて、障害物の2次元座標範囲を評定する。例えば、図2において、反射波を受信したソナーセンサが第1ソナーセンサ11である場合、障害物3のY軸座標位置は、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1であるY軸方向の幅Dyの範囲になる。障害物3のX軸座標位置は、距離算出部16により算出された距離に相当する位置になる。
ここで、第1閾値Th1と、この第1閾値Th1により設定される検知範囲11−1,12−1,13−1,14−1を説明する。
図4は、実施の形態1における第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1の設定例を示す図である。図5は、実施の形態1における第1閾値Th1の設定例を示すグラフである。グラフの横軸はX軸方向における第1ソナーセンサ11からの距離、縦軸は第1閾値Th1の値である。
図4において、検知感度の等高線レベルV1は、第1ソナーセンサ11の正面に基準ポール2−1が存在する場合に第1ソナーセンサ11により受信された反射波の強度(つまり検知感度)と同じ強度になる範囲を線で結んだものである。同様に、等高線レベルV2〜V6は、それぞれ、第1ソナーセンサ11の正面に基準ポール2−2〜2−6が存在する場合に第1ソナーセンサ11により受信された反射波の強度と同じ強度になる範囲を線で結んだものである。
第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1と第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1とが重ならないように、検知範囲11−1のY軸方向の幅が上記幅Dyに設定される。この場合、第1ソナーセンサ11の正面からY軸方向に幅1/2Dy分ずれた破線枠と等高線レベルV1とが交差するX軸方向の距離に対して、等高線レベルV1の値が、第1閾値Th1(V1)として設定される。同様に、第1ソナーセンサ11の正面からY軸方向に幅1/2Dy分ずれた破線枠と等高線レベルV2〜V6とが交差するX軸方向の各距離に対して、等高線レベルV2〜V5の値が第1閾値Th1(V2)〜Th1(V5)として設定される。図5に示されるように、第1閾値Th1(V1)〜Th1(V5)を結ぶ線が、基準距離Dx以上の遠距離領域A1において使用される第1閾値Th1となる。
実施の形態1では、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の検知範囲11−1,12−1,13−1,14−1が同じ大きさであるため、第1閾値Th1も全ソナーセンサで同じである。
具体例として、第1強度判定部18は、基準距離Dx以上と判定された障害物までの距離の算出に用いられた、第1ソナーセンサ11の反射波の強度が、上記のように設定された第1閾値Th1以上であるか否かを判定する。反射波の強度が第1閾値Th1以上である場合(ステップST14“YES”)、この障害物は検知範囲11−1に存在することになる。そのため、第1位置評定部19は、障害物までの距離からこの障害物のX軸座標位置を評定すると共に、検知範囲11−1のY軸方向の範囲をこの障害物のY軸座標位置と評定する(ステップST15)。一方、反射波の強度が第1閾値Th1未満である場合(ステップST14“NO”)、この障害物は検知範囲11−1外に存在することになる。そのため、第1位置評定部19は、この障害物の2次元座標範囲を評定しない。このように、第1閾値Th1により、第1ソナーセンサ11の基準距離Dx以上における検知範囲11−1が設定される。
なお、この障害物が第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1ではなく第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1に存在する場合、第2ソナーセンサ12の反射波の強度が、第2ソナーセンサ12に対して設定された第1閾値Th1以上になる。したがって、第1位置評定部19は、障害物までの距離からこの障害物のX軸座標位置を評定すると共に、検知範囲12−1のY軸方向の範囲をこの障害物のY軸座標位置と評定する(ステップST15)。
図6は、実施の形態1における第1閾値Th1と第2閾値Th2の設定例を示すグラフである。グラフの横軸はX軸方向における第1ソナーセンサ11からの距離、縦軸は第1閾値Th1及び第2閾値Th2の値である。例えば、第1ソナーセンサ11の第2閾値Th2は、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−2が隣接する第2ソナーセンサ12の検知範囲12−2に一部重なるような値に設定される。設定方法は、第1閾値Th1の設定方法と同じであってもよいし、周知の技術を用いてもよい。
実施の形態1では、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の検知範囲11−2,12−2,13−2,14−2が同じ大きさであるため、第2閾値Th2も全ソナーセンサで同じである。
図3のステップST16において、第2強度判定部20は、基準距離Dx未満と判定された障害物までの距離の算出に用いられた反射波の強度が、予め定められた第2閾値Th2以上であるか否かを判定する。この反射波は、直接波でもよいし間接波でもよい。第2強度判定部20は、反射波の強度が第2閾値Th2以上であると判定した場合(ステップST16“YES”)、上記障害物までの距離と送受信結果とを、第2位置評定部21へ出力する。一方、第2強度判定部20は、全ソナーセンサについて反射波の強度が第2閾値Th2未満であると判定した場合(ステップST16“NO”)、図3のフローチャートに示される動作を終了する。
ステップST17において、第2位置評定部21は、強度が第2閾値以上であると判定された反射波から算出された障害物の距離を用いて開口合成処理を行い、この障害物の2次元座標位置を評定する。例えば、第1ソナーセンサ11が探査波を送信し、第1ソナーセンサ11がこの探査波を直接波として受信すると共に、第2ソナーセンサ12がこの探査波を間接波として受信した場合を仮定する。この場合、第2位置評定部21は、第1ソナーセンサ11の位置を中心とし、直接波から算出された障害物までの距離を半径とした円を描く。また、第2位置評定部21は、第1ソナーセンサ11の位置と第2ソナーセンサ12の位置とを焦点とし、間接波から算出された障害物までの距離を用いた楕円を描く。そして、第2位置評定部21は、円と楕円との交点の2次元座標位置を、障害物の2次元座標位置として評定する。また、例えば、第1ソナーセンサ11が探査波の送信と直接波の受信を行うと共に、第2ソナーセンサ12も探査波の送信と直接波の受信を行った場合を仮定する。この場合、第2位置評定部21は、第1ソナーセンサ11の位置を中心とし、直接波から算出された障害物までの距離を半径とした円を描く。同様に、第2位置評定部21は、第2ソナーセンサ12の位置を中心とし、直接波から算出された障害物までの距離を半径とした円を描く。そして、第2位置評定部21は、2つの円の交点の2次元座標位置を、障害物の2次元座標位置として評定する。なお、第2位置評定部21は、楕円と楕円の交点を求めてもよいし、3つ以上の円又は楕円の交点を求めてもよい。
以上のように、実施の形態1に係る障害物検知装置10は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、第4ソナーセンサ14、送受信部15、距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18、第1位置評定部19、第2強度判定部20、及び第2位置評定部21を備える。送受信部15は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14を用いて探査波を送信し、探査波が障害物で反射した反射波を受信する。距離算出部16は、探査波と反射波の送受信結果を用いて障害物までの距離を算出する。距離判定部17は、障害物までの距離が、隣接するソナーセンサの検知範囲が重なる重複領域の大きさに基づいて設定された基準距離Dx以上であるか否かを判定する。第1強度判定部18は、障害物までの距離が基準距離Dx以上である場合、障害物までの距離の算出に用いられた反射波の強度が第1閾値Th1以上であるか否かを判定する。第1位置評定部19は、第1強度判定部18により強度が第1閾値Th1以上と判定された反射波から算出された障害物までの距離、及びこの反射波を受信したソナーセンサの位置を用いて、障害物の2次元座標範囲を評定する。第2強度判定部20は、障害物までの距離が基準距離Dx未満である場合、障害物までの距離の算出に用いられた反射波の強度が第2閾値Th2以上であるか否かを判定する。第2位置評定部21は、第2強度判定部20により強度が第2閾値Th2以上と判定された反射波から算出された障害物の距離を用いて開口合成処理を行い、障害物の2次元座標位置を評定する。この構成により、障害物検知装置10は、開口合成処理による位置評定精度が高い中近距離領域A2においては開口合成処理により障害物の2次元座標位置を評定し、開口合成処理による位置評定精度が低い遠距離領域A1においては開口合成処理を行わずに障害物の2次元座標範囲を評定することができる。
また、実施の形態1によれば、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の基準距離Dx以上における検知範囲11−1,12−1,13−1,14−1は、方形状であり、かつ、隣接するソナーセンサの検知範囲は重ならない。この構成により、障害物検知装置10は、開口合成処理による位置評定精度が低い遠距離領域A1において、Y軸方向の位置評定の分解能として、各検知範囲11−1,12−1,13−1,14−1のY軸方向の幅相当の分解能を得ることができる。
なお、障害物検知装置10が備えるソナーセンサの数は、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上である。
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る障害物検知装置10の構成例を示すブロック図である。実施の形態2に係る障害物検知装置10は、図1に示された実施の形態1の障害物検知装置10に対して、境界位置判定部22が追加された構成である。図7において図1〜図6と同一又は相当する部分は、同一の符号を付し説明を省略する。
図8は、実施の形態2における第1閾値Th1と第2閾値Th2と第3閾値Th3の設定例を示すグラフである。グラフの横軸はX軸方向におけるソナーセンサからの距離、縦軸は第1閾値Th1、第2閾値Th2、及び第3閾値Th3の値である。第3閾値Th3は、第1閾値Th1より大きい値である。
図9は、実施の形態2における第3閾値Th3の設定例を示す図である。図9に示されるように、基準距離Dx以上の遠距離領域A1において、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1と第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1との境界位置に障害物4が存在する。また、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1に障害物5が存在する。
図9の状況において、第2ソナーセンサ12が探査波を送信すると、第2ソナーセンサ12は、障害物4で反射した直接波と、障害物5で反射した直接波とを受信する。第3ソナーセンサ13は、障害物4で反射した間接波と、障害物5で反射した間接波とを受信する。第1ソナーセンサ11は、障害物5で反射した間接波を受信する。
図9の状況において、境界位置に存在する障害物4で反射する間接波の経路4aは、二等辺三角形を構成し、このときに送受信効率が最大になる。これに対し、検知範囲12−1に存在する障害物5で反射する間接波の経路5aは、二等辺三角形にならないので、経路5aの送受信効率は、経路4aの送受信効率より低い。したがって、経路4aの長さと経路5aの長さとが同じであったとしても、第3ソナーセンサ13が受信した経路4aの間接波の強度は、経路5aの間接波の強度より大きい。そこで、実施の形態2では、経路4aの間接波と経路5aの間接波とを判別するために、図8のような、第1閾値Th1より大きな第3閾値Th3が設定される。
次に、障害物検知装置10の動作を説明する。
実施の形態2において、距離判定部17は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14のうちのいずれかについて障害物までの距離が基準距離Dx以上であると判定した場合、その障害物までの距離と送受信結果とを、境界位置判定部22へ出力する。
境界位置判定部22は、距離判定部17において障害物の距離が基準距離Dx以上であると判定された場合、距離判定部17からの送受信結果に基づいて、隣接するソナーセンサの一方が直接波を受信し、もう一方が間接波を受信したか否かを判定する。境界位置判定部22は、隣接するソナーセンサの一方が直接波を受信し、もう一方が間接波を受信したと判定した場合、この障害物は、隣接するソナーセンサの検知範囲の境界位置に存在する可能性があると判定する。境界位置判定部22は、障害物が境界位置に存在するか否かの判定結果を、障害物までの距離と送受信結果とあわせて、第1強度判定部18aへ出力する。
第1強度判定部18aは、直接波比較用の第1閾値Th1に加え、間接波比較用の第3閾値Th3を保持している。第1強度判定部18aは、基準距離Dx以上の遠距離領域A1において、反射波が直接波である場合は実施の形態1と同様に第1閾値Th1との比較を行い、反射波が間接波である場合は第3閾値Th3との比較を行う。第1強度判定部18aは、間接波の強度が第3閾値Th3以上であると判定した場合、障害物の距離、送受信結果、及び障害物が境界位置に存在する旨を第1位置評定部19aへ出力する。一方、第1強度判定部18aは、間接波の強度が第3閾値Th3未満であると判定した場合、障害物が境界位置に存在しないので、第1位置評定部19aへの出力を行わない。
第1位置評定部19aは、障害物の位置評定において、第1強度判定部18aから障害物が境界位置に存在する旨を通知された場合、境界位置をこの障害物のY軸座標位置として評定する。
例えば、図9において障害物4が存在し、第2ソナーセンサ12が探査波を送信した場合、境界位置判定部22は、第2ソナーセンサ12が直接波を受信し、第2ソナーセンサ12に隣接する第3ソナーセンサ13が間接波を受信したと判定する。よって、境界位置判定部22は、距離算出部16により距離が算出された障害物が、検知範囲12−1,13−1の境界位置に存在する可能性があると判定する。第1強度判定部18aは、この障害物までの距離の算出に用いられた間接波の強度が、第3閾値Th3以上であると判定し、この障害物が検知範囲12−1,13−1の境界位置に存在する旨を第1位置評定部19aへ出力する。
図9において障害物5が存在し、第2ソナーセンサ12が探査波を送信した場合、境界位置判定部22は、第2ソナーセンサ12が直接波を受信し、第2ソナーセンサ12に隣接する第1ソナーセンサ11と第3ソナーセンサ13とが間接波を受信したと判定する。よって、境界位置判定部22は、距離算出部16により距離が算出された障害物が、検知範囲12−1,11−1の境界位置、及び検知範囲12−1,13−1の境界位置に存在する可能性があると判定する。しかしながら、第1強度判定部18aにおいて、この障害物までの距離の算出に用いられた間接波の強度が、第3閾値Th3未満であると判定されるため、境界位置判定部22の判定結果は棄却される。
以上のように、実施の形態2に係る障害物検知装置10は、境界位置判定部22を備える。境界位置判定部22は、障害物の距離が基準距離Dx以上である場合、かつ、隣接するソナーセンサの一方が直接波を受信し、もう一方が間接波を受信した場合、障害物は隣接するソナーセンサの検知範囲の境界位置に存在すると判定する。このように、障害物検知装置10は、実施の形態1では基準距離Dx以上において直接波のみを用いていたが、実施の形態2では直接波に加えて間接波も用いる。これにより、実施の形態2では、遠距離領域A1の検知範囲に障害物が存在するか、又は、遠距離領域A1の検知範囲の境界位置に障害物が存在するかを判別することが可能となるため、第1位置評定部19aの位置評定におけるY軸方向の分解能がさらに向上する。
また、実施の形態1によれば、第1強度判定部18aは、境界位置判定部22により障害物が境界位置に存在すると判定された場合、第1閾値Th1よりも大きい第3閾値Th3を用いて間接波の強度を判定する。これにより、第1強度判定部18aは、遠距離領域A1において、隣接する検知範囲の境界位置に障害物が存在するときだけ、この障害物で反射した間接波を採用することができる。よって、第1位置評定部19aの位置評定精度がさらに向上する。
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る障害物検知装置10の構成例を示すブロック図である。実施の形態3に係る障害物検知装置10は、図1に示された実施の形態1の障害物検知装置10に対して、障害物追跡部23と衝突判定部24が追加された構成である。図10において図1〜図6と同一又は相当する部分は、同一の符号を付し説明を省略する。
なお、ここでは、実施の形態3に係る障害物追跡部23及び衝突判定部24が実施の形態1の障害物検知装置10に対して追加された例が示されるが、障害物追跡部23及び衝突判定部24は、実施の形態2の障害物検知装置10に対しても追加可能である。
また、実施の形態3の障害物検知装置10は、車両制御部25と接続されている。車両制御部25は、例えば、障害物との衝突可能性が高い場合に、車両1のブレーキを作動させて衝突時の衝撃を軽減するために車両1のブレーキを作動させる機能(いわゆる衝突被害軽減ブレーキ)、又は衝突を未然に防ぐために運転者に対して警報を発する機能(いわゆる衝突防止警報システム)等を実行する。この車両制御部25は、車両1の速度及びステアリング角度等の情報を、必要に応じて障害物追跡部23及び衝突判定部24へ出力する。
図11は、実施の形態3に係る障害物検知装置10の動作例を示すフローチャートである。障害物検知装置10は、例えば車両1の走行中、予め定められた時間ごとに、図11のフローチャートに示される動作を繰り返す。
ステップST21において、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、第4ソナーセンサ14、送受信部15、距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18、第1位置評定部19、及び第2強度判定部20は、図3のフローチャートに示される動作を行う。そして、第1位置評定部19が障害物の2次元座標範囲を評定した場合、又は第2位置評定部21が障害物の2次元座標位置を評定した場合、2次元座標範囲又は2次元座標位置が障害物追跡部23へ出力される。
ステップST22において、障害物追跡部23は、第1位置評定部19又は第2位置評定部21の少なくとも一方から、障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置の少なくとも一方を受け付ける。障害物追跡部23は、今回、第1位置評定部19又は第2位置評定部21の少なくとも一方から受け付けた障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置が、前回、第1位置評定部19又は第2位置評定部21の少なくとも一方から受け付けた障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置に対して設定した追跡範囲に入るか否かを判定する。障害物追跡部23は、今回の障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置が追跡範囲に入ると判定した場合、今回のステップST21で位置評定された障害物と前回のステップST21で位置評定された障害物とが同一の障害物であると判定する。一方、障害物追跡部23は、今回の障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置が追跡範囲外であると判定した場合、今回のステップST21で位置評定された障害物と前回のステップST21で位置評定された障害物とが異なる障害物であると判定する。その場合、障害物追跡部23は、今回のステップST21で位置評定された障害物に対して新たな追跡範囲を設定し、次回の追跡対象に加える。このように障害物追跡部23は、時間と共に変化していく同一障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置を追跡する。障害物追跡部23は、追跡対象である同一障害物の2次元座標範囲又は2次元座標位置を衝突判定部24へ出力する。
障害物追跡部23は、上記の追跡範囲の大きさを、同一障害物が遠距離領域A1に存在する場合と中近距離領域A2に存在する場合とで変更する。障害物追跡部23は、同一障害物が遠距離領域A1に存在する場合、追跡範囲を相対的に大きくし、同一障害物が中近距離領域A2に移動した場合、追跡範囲を相対的に小さくする。
また、障害物追跡部23は、追跡範囲の大きさを、車両1と同一障害物との相対速度に基づいて変更する。障害物追跡部23は、例えば、相対速度と追跡範囲の大きさとの対応関係を定義した関数又はテーブルを用いて、追跡範囲を相対速度に応じた大きさに変更する。障害物追跡部23は、相対速度が遅い場合、追跡範囲を相対的に大きくし、相対速度が速い場合、追跡範囲を相対的に小さくする。
図12は、実施の形態3において相対速度が遅い場合の追跡範囲の例を示す図である。図12において、第1位置評定部19により障害物30,31,32がこの順に位置評定され、続けて第2位置評定部21により障害物33,34,35がこの順に位置評定されたものとする。また、図12の例では、障害物30は、第1ソナーセンサ11により検知され、障害物31は第1ソナーセンサ11及び第2ソナーセンサ12の両方により検知され、障害物32は第2ソナーセンサ12により検知されたものと仮定する。障害物31のように、2つのソナーセンサにより同時に検知された障害物のY軸座標位置は、両ソナーセンサの中央位置、又は両ソナーセンサが受信した直接波の強度に応じて配分した位置が用いられる。このように、Y軸座標範囲が1点のY軸座標位置となるため、以下では、2次元座標範囲が2次元座標位置として扱われる。
図12において、障害物追跡部23は、障害物30の2次元座標位置と障害物31の2次元座標位置との距離差に基づいて障害物30,31の移動速度を算出する。また、障害物追跡部23は、車両制御部25から車両1の速度を取得する。そして、障害物追跡部23は、車両1と障害物30,31との相対速度を算出し、算出した相対速度に基づいて、障害物30に設定する追跡範囲40のX軸方向の大きさを変更する。また、障害物追跡部23は、障害物30が位置評定精度の低い遠距離領域A1に存在するため、追跡範囲40のY軸方向の大きさを、第1位置評定部19による位置評定分解能の1.5倍〜2倍に設定する。図2の例では第1位置評定部19の位置評定分解能はY軸方向の幅Dyであるため、障害物追跡部23は、追跡範囲40のY軸方向の大きさを1.5Dy〜2Dyにする。この追跡範囲40に障害物31が入っているため、障害物追跡部23は、障害物30と障害物31とを同一障害物と判定する。障害物追跡部23は、同様の方法で、障害物31,32に対して追跡範囲41,42を設定する。
その後、障害物追跡部23は、障害物33の2次元座標位置と障害物34の2次元座標位置との距離差に基づいて障害物33,34の移動速度を算出する。また、障害物追跡部23は、車両制御部25から車両1の速度を取得する。そして、障害物追跡部23は、車両1と障害物33,34との相対速度を算出し、算出した相対速度に基づいて、障害物33に設定する追跡範囲43のX軸方向の大きさを変更する。また、障害物追跡部23は、障害物33が位置評定精度の高い中近距離領域A2に存在するため、追跡範囲43のY軸方向の大きさを、第2位置評定部21による位置評定分解能の1.5倍〜2倍に設定する。第2位置評定部21の位置評定分解能は第1位置評定部19の位置評定分解能より高いため、追跡範囲43のY軸方向の大きさは、追跡範囲40,41,42のY軸方向の大きさに比べて小さくなる。追跡範囲43に障害物34が入っているため、障害物追跡部23は、障害物33と障害物34とを同一障害物と判定する。障害物追跡部23は、同様の方法で、障害物34,35に対して追跡範囲44,45を設定する。
図13は、実施の形態3において相対速度が速い場合の追跡範囲の例を示す図である。障害物追跡部23は、図12に示される相対速度が遅い例と同様に、障害物30a,31a,32a,33a,34aに対して追跡範囲40a,41a,42a,43a,44aを設定する。ただし、図13に示される例は、図12に示される例に比べて相対速度が速いため、追跡範囲40a,41a,42a,43a,44aのX軸方向の大きさは、追跡範囲40,41,42,43,44,45のX軸方向の大きさに比べて大きくなる。例えば、障害物30aに対して設定された追跡範囲40aに障害物31aが入っているため、障害物追跡部23は、障害物30aと障害物31aとを同一障害物と判定する。
ステップST23において、衝突判定部24は、障害物追跡部23から出力される同一障害物の2次元座標位置を用いて、図12に示される軌跡50又は図13に示される軌跡50aを求め、軌跡に基づいて追跡対象の障害物の進路を予測する。なお、衝突判定部24は、障害物の進路を予測する際、進路に幅を持たせてもよい。衝突判定部24は、車両制御部25から車両1のステアリング角度を取得して車両1の進路を予測し、予測した車両1の進路と障害物の進路とを比較することによって衝突の可否を判定する。衝突判定部24は、周知の技術を用いて衝突の可否を判定すればよいため、ここでの詳細な説明を省略する。さらに、衝突判定部24は、車両1と障害物とが衝突する可能性があると判定した場合、衝突余裕時間(TTC)を算出する。衝突余裕時間は、車両1と障害物との相対速度が維持された場合にあと何秒で衝突するかを表す指標である。衝突判定部24は、衝突可否の判定結果と衝突余裕時間とを、車両制御部25へ出力する。
車両制御部25は、衝突判定部24から出力される衝突可否の判定結果と衝突余裕時間とに基づいて、車両1のブレーキを作動させる、又は、運転者に対して警報を発する。
以上のように、実施の形態3に係る障害物検知装置10は、障害物追跡部23を備える。障害物追跡部23は、予め定められた時間ごとに第1位置評定部19により2次元座標範囲を評定された、又は第2位置評定部21により2次元座標位置を評定された複数の障害物が追跡範囲に入っている場合、この複数の障害物を同一障害物と判定する。また、障害物追跡部23は、追跡範囲を、車両1と同一障害物との相対速度に比例して大きくし、かつ、同一障害物までの距離が基準距離Dx以上である場合、基準距離Dx未満である場合に比べて大きくする。この構成により、障害物追跡部23は、基準距離Dx以上の遠距離領域A1に障害物が存在する場合、この障害物の位置評定精度が低いので、追跡範囲を広く設定し、追跡を容易にすることができる。したがって、障害物追跡部23は、位置評定精度が低い遠距離領域A1から、障害物の追跡が可能になる。また、障害物追跡部23は、障害物までの距離と、障害物と車両1の相対速度に応じて、追跡範囲のX軸方向及びY軸方向の大きさを個別に変更することができる。したがって、障害物追跡部23は、障害物が同一か否かを精度よく判定することができる。
また、実施の形態3に係る障害物検知装置10は、衝突判定部24を備える。衝突判定部24は、同一障害物と車両1との衝突の可否を判定すると共に衝突までの時間を算出する。障害物追跡部23により遠距離領域A1からの障害物の追跡が可能になるため、衝突判定部24は、従来の開口合成処理のみによる障害物位置評定に比べて、より遠方でより精度よく衝突可否を判定することができる。
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、遠距離領域A1において隣接するソナーセンサの検知範囲が重ならない構成であった。これに対し、実施の形態4では、遠距離領域A1において隣接するソナーセンサの検知範囲が一部重なる構成である。
図14は、実施の形態4におけるソナーセンサの遠距離領域A1の検知範囲の例を示す図である。なお、図14では、中近距離領域A2の検知範囲は図示が省略されている。
遠距離領域A1において、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1a、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1a、第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1a、及び第4ソナーセンサ14の検知範囲14−1aは、それぞれ、Y軸方向に幅Dya(例えば、Dya=2Dy)をもつ範囲である。第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1aは、この第1ソナーセンサ11に隣接する第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1aとY軸方向において幅Dyb(<1/2Dya)だけ重なる。つまり、Y軸方向において、検知範囲11−1aと検知範囲12−1aとが幅Dybだけ重なる。第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1aは、両隣の検知範囲11−1a,13−1aと幅Dybずつ重なる。同様に、第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1aは、両隣の検知範囲12−1a,14−1aと幅Dybずつ重なる。第4ソナーセンサ14の検知範囲14−1aは、隣接する検知範囲13−1aと幅Dybだけ重なる。このように、遠距離領域A1は、実施の形態1では図2に示されるように4分割されたが、実施の形態4では図14に示されるように7分割される。
なお、実施の形態1で説明したように、検知範囲11−1a,12−1a,13−1a,14−1aの大きさは、第1閾値Th1により設定される。
実施の形態4に係る障害物検知装置10の構成は、実施の形態1の図1に示された構成と図面上は同一であるため、以下では図1を援用する。
なお、ここでは、図14に示される検知範囲11−1a,12−1a,13−1a,14−1aが実施の形態1の障害物検知装置10に対して適用された例が示されるが、検知範囲11−1a,12−1a,13−1a,14−1aは、実施の形態3の障害物検知装置10に対しても適用可能である。
第1位置評定部19は、強度が第1閾値Th1以上であると判定された直接波を受信したソナーセンサの検知範囲の重なりに基づいて、障害物のY軸座標範囲を評定する。例えば、図14に示されるように、検知範囲11−1aと検知範囲12−1aとが重なる領域に、障害物6が存在すると仮定する。この場合、第1ソナーセンサ11と第2ソナーセンサ12とが、第1閾値Th1以上の強度の直接波を受信する。そのため、第1位置評定部19は、Y軸方向において、黒色太線で示される第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1aと、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1aとが重なる領域を、障害物6のY軸座標範囲6aとして評定する。
また、例えば、図14に示されるように、検知範囲13−1aのみの領域に、障害物7が存在すると仮定する。この場合、第3ソナーセンサ13のみが、第1閾値Th1以上の強度の直接波を受信する。そのため、第1位置評定部19は、Y軸方向において、黒色太線で示される第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1aのうち、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1a及び第4ソナーセンサ14の検知範囲14−1aと重ならない領域を、障害物7のY軸座標範囲7aとして評定する。
以上のように、実施の形態4によれば、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14の基準距離Dx以上における検知範囲11−1a,12−1a,13−1a,14−1aは、方形状であり、かつ、隣接するソナーセンサの検知範囲は、これら第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14が並ぶY軸方向において1/2未満重なる。この構成により、第1位置評定部19の位置評定におけるY軸方向の分解能がさらに向上する。
実施の形態5.
実施の形態1〜4では、Y軸方向において隣接するソナーセンサ間の距離が幅Dyと一様であり、かつ、X軸方向における隣接するソナーセンサの位置も一様な配置であった。これに対し、実施の形態5では、隣接するソナーセンサ間のY軸方向の距離及びX軸方向の位置が異なり、かつ、車両1に対しては左右対称の配置となる構成である。
図15は、実施の形態5におけるソナーセンサの遠距離領域A1の検知範囲の例を示す図である。なお、図15では、中近距離領域A2の検知範囲は図示が省略されている。Y軸方向において、第1ソナーセンサ11と第2ソナーセンサ12との距離は、第3ソナーセンサ13と第4ソナーセンサ14との距離と等しい。Y軸方向において、第2ソナーセンサ12と第3ソナーセンサ13との距離は、第1ソナーセンサ11と第2ソナーセンサ12との距離に比べて大きい。また、X軸方向において、第2ソナーセンサ12と第3ソナーセンサ13は、第1ソナーセンサ11と第4ソナーセンサ14に比べて前方に配置されている。
図16は、実施の形態5における第2閾値Th2と第4閾値Th4と第5閾値Th5の設定例を示すグラフである。グラフの横軸はX軸方向におけるソナーセンサからの距離、縦軸は第2閾値Th2、第4閾値Th4、及び第5閾値Th5の値である。第4閾値Th4は、第5閾値Th5より大きい値である。
遠距離領域A1において、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1bと第4ソナーセンサ14の検知範囲14−1bは、それぞれ、Y軸方向に幅Dycをもつ範囲である。第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1bと第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1bは、それぞれ、Y軸方向に幅Dyd(>Dyc)をもつ範囲である。第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1bは、この第1ソナーセンサ11に隣接する第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1bとY軸方向において幅Dye(<1/2Dyc)だけ重なる。つまり、Y軸方向において、検知範囲11−1bと検知範囲12−1bとが幅Dyeだけ重なる。第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1bは、隣の検知範囲11−1bと幅Dyeだけ重なる。同様に、第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1bは、隣の検知範囲14−1bと幅Dyeだけ重なる。第4ソナーセンサ14の検知範囲14−1bは、隣接する検知範囲13−1bと幅Dyeだけ重なる。このように、遠距離領域A1は、実施の形態1では図2に示されるように4分割されたが、実施の形態5では図15に示されるように6分割される。
実施の形態5では、第1ソナーセンサ11の検知範囲11−1bと第4ソナーセンサ14の検知範囲14−1bとが同じ大きさであり、これらの検知範囲11−1b,14−1bの大きさは、第4閾値Th4により設定される。また、第2ソナーセンサ12の検知範囲12−1bと第3ソナーセンサ13の検知範囲13−1bとが同じ大きさであり、これらの検知範囲12−1b,13−1bの大きさは、第5閾値Th5により設定される。第4閾値Th4と第5閾値Th5の設定方法は、第1閾値Th1の設定方法と同じであるため、説明を省略する。
実施の形態5に係る障害物検知装置10の構成は、実施の形態1の図1に示された構成と図面上は同一であるため、以下では図1を援用する。
なお、ここでは、図15に示される検知範囲11−1b,12−1b,13−1b,14−1bが実施の形態1の障害物検知装置10に対して適用された例が示されるが、検知範囲11−1b,12−1b,13−1b,14−1bは、実施の形態3の障害物検知装置10に対しても適用可能である。
第1強度判定部18が、第1閾値Th1に代えて、第4閾値Th4と第5閾値Th5保持している。第1強度判定部18は、基準距離Dx以上の遠距離領域A1において、第1ソナーセンサ11及び第4ソナーセンサ14により受信された直接波の強度を第4閾値Th4と比較する。また、第1強度判定部18は、基準距離Dx以上の遠距離領域A1において、第2ソナーセンサ12及び第3ソナーセンサ13により受信された直接波の強度を第5閾値Th5と比較する。
第1位置評定部19は、強度が第4閾値Th4以上又は第5閾値Th5以上であると判定された直接波を受信したソナーセンサの検知範囲の重なりに基づいて、障害物のY軸座標範囲を評定する。Y座標範囲の評定方法は、実施の形態4の第1位置評定部19による評定方法と同じであるため、説明を省略する。
以上のように、実施の形態5によれば、障害物検知装置10は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14のX軸方向における位置が異なっている場合にも、遠距離領域A1において開口合成処理を行わずに障害物の2次元座標範囲を評定することができる。
最後に、各実施の形態に係る障害物検知装置10のハードウェア構成を説明する。
図17及び図18は、各実施の形態に係る障害物検知装置10のハードウェア構成例を示す図である。障害物検知装置10における送受信部15は、送信回路103と受信回路104である。送信回路103は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14に電圧を印加して探査波を送信させる回路である。受信回路104は、第1ソナーセンサ11、第2ソナーセンサ12、第3ソナーセンサ13、及び第4ソナーセンサ14が出力する、反射波に対応する電圧を、デジタル信号に変換する回路である。障害物検知装置10における距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18,18a、第1位置評定部19,19a、第2強度判定部20、第2位置評定部21、境界位置判定部22、障害物追跡部23、及び衝突判定部24の機能は、処理回路により実現される。即ち、障害物検知装置10は、上記機能を実現するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアとしての処理回路100であってもよいし、メモリ102に格納されるプログラムを実行するプロセッサ101であってもよい。
図17に示されるように、処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18,18a、第1位置評定部19,19a、第2強度判定部20、第2位置評定部21、境界位置判定部22、障害物追跡部23、及び衝突判定部24の機能を複数の処理回路100で実現してもよいし、各部の機能をまとめて1つの処理回路100で実現してもよい。
図18に示されるように、処理回路がプロセッサ101である場合、距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18,18a、第1位置評定部19,19a、第2強度判定部20、第2位置評定部21、境界位置判定部22、障害物追跡部23、及び衝突判定部24の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ102に格納される。プロセッサ101は、メモリ102に格納されたプログラムを読みだして実行することにより、各部の機能を実現する。即ち、障害物検知装置10は、プロセッサ101により実行されるときに、図3及び図11のフローチャートで示されるステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ102を備える。また、このプログラムは、距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18,18a、第1位置評定部19,19a、第2強度判定部20、第2位置評定部21、境界位置判定部22、障害物追跡部23、及び衝突判定部24の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。
ここで、プロセッサ101とは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、又はマイクロプロセッサ等のことである。
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、又はフラッシュメモリ等の不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであってもよいし、ハードディスク又はフレキシブルディスク等の磁気ディスクであってもよいし、CD(Compact Disc)又はDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクであってもよい。
なお、距離算出部16、距離判定部17、第1強度判定部18,18a、第1位置評定部19,19a、第2強度判定部20、第2位置評定部21、境界位置判定部22、障害物追跡部23、及び衝突判定部24の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、障害物検知装置10における処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述の機能を実現することができる。
本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。