JP6871337B2 - 積層体の製造方法および基板の処理方法 - Google Patents

積層体の製造方法および基板の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、積層体の製造方法および基板の処理方法に関する。
近年、携帯電話、デジタルAV機器およびICカード等の高機能化に伴い、半導体シリコンチップの小型化、薄型化および高集積化への要求が高まっている。例えば、一つの半導体パッケージの中に複数の半導体チップを搭載するシステム・イン・パッケージ(SiP)は、搭載されるチップを小型化、薄型化および高集積化し、電子機器を高性能化、小型化かつ軽量化を実現する上で非常に重要な技術になっている。このような薄型化および高集積化への要求に応えるためには、従来のワイヤ・ボンディング技術のみではなく、貫通電極を形成したチップを積層し、チップの裏面にバンプを形成する貫通電極技術も必要になる。
ところで、半導体チップの製造では、半導体ウエハ自体が肉薄で脆く、また回路パターンには凹凸があるため、研削工程またはダイシング工程への搬送時に外力が加わると破損しやすい。そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラスや硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハハンドリングシステムが開発されている。ウエハハンドリングシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化した半導体ウエハの搬送を自動化することができる。ウエハとサポートプレートとは、粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤等を用いて貼り合わせられている。
ウエハを自動搬送して半導体チップを製造する工程において、ウエハの結晶方位の制御、およびウエハ上への集積回路形成を精密に行うためには、ウエハの位置を的確に検出して制御する必要がある。この位置検出は、光学アライメント装置を用いて行うことができる。すなわち、上記位置検出は、切り欠き部(ノッチ部)を形成したウエハの外周部に光を照射し、切り欠き部を透過した光を検知すること等によって行われている。
例えば、特許文献1には、第1の切り欠き部を有する半導体基板と第2の切り欠き部を有する支持基板とを、切り欠き部が互いに重なるように貼り合せた後、支持基板が貼り合わされた上記半導体基板における、支持基板に対向する面と反対側の面を加工する半導体装置の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、切削装置を用いて被加工物の外周縁を切削するエッジトリミング方法が記載されている。
特開2009−87970号公報(2009年4月23日公開) 特開2013−149822号公報(2013年8月1日公開)
ウエハ等の基板の第1切り欠き部と、サポートプレート等の支持体の第2切り欠き部との少なくとも一部が互いに重なるようにして、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り合わせた積層体を製造するときにおいては、基板と支持体との間の接着剤は、貼り合わせ時の押圧力によって基板および支持体の外周部分の端部にまで伸展し、基板および支持体の外部にはみ出す場合がある。
従来、このような接着剤のはみ出しは、基板および/または支持体に接着剤を塗布後、いわゆるEdge Bead Removal(EBR)処理を行うことによって除去している。しかしながら、基板および支持体の切り欠き部は外周縁とは形状が異質であるために、接着剤のはみ出しをEBR処理によって除去することは困難である。すなわち、基板または支持体の外周縁に付着している接着剤が除去されていても、切り欠き部の周縁には接着剤が除去されないで残存する場合がある。そのため、EBR処理を行って積層体を製造したとしても、積層体の第1切り欠き部および第2切り欠き部の互いに重なる部分において接着剤がはみ出している場合がある。これにより、例えば、その後の工程における処理ステージの汚染や、光学アライメント装置によって積層体の向きを特定するときに、積層体の切り欠き部の検知不良が発生するおそれがあるという問題がある。
特許文献1は、第1切り欠き部および第2切り欠き部が互いに重なる部分にはみ出した接着剤による積層体の切り欠き部の検知不良を防止する方法に関して、何ら開示していない。
また、特許文献2には、第1切り欠き部および第2切り欠き部が互いに重なる部分に接着剤がはみ出すことを防止する方法に関して、何ら開示していない。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、切り欠き部の検知不良を防止することができる積層体の製造方法、および基板の処理方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る積層体の製造方法は、第1切り欠き部を備えた基板と、第2切り欠き部を備えた支持体とを、上記第1切り欠き部の少なくとも一部と上記第2切り欠き部の少なくとも一部とが互いに重なるように、接着剤からなる接着剤層を介して積層する積層工程を包含する積層体の製造方法であって、上記基板および/または上記支持体に上記接着剤を塗布する塗布工程から、上記積層工程を行った後に接着剤を硬化させる硬化工程までの間に、上記基板における第1切り欠き部の周縁および/または上記支持体における第2切り欠き部の周縁に付着している上記接着剤を除去する接着剤除去工程を包含していることを特徴としている。
また、上記課題を解決するために、本発明に係る基板の処理方法は、上記製造方法によって積層体を製造する積層体製造工程と、上記積層体製造工程の後、上記基板を研削することによって薄化する薄化工程と、を包含していることを特徴としている。
本発明によれば、第1切り欠き部の周縁および第2切り欠き部の周縁における不要な接着剤を除去することができるので、接着剤が第1切り欠き部および第2切り欠き部にまで伸展することを防止することができる。従って、後の工程において、切り欠き部の検知不良を防止することができ、積層体の向きを正確に検知することができる。
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法および基板の処理方法の一例を説明する概略の平面図である。 接着剤除去工程後の基板の第1切り欠き部周辺を示す要部の上面図である。 本発明の一実施形態に係る接着剤除去工程における、除去部材による接着剤の掻き取り動作を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。以下の説明においては、本発明の実施の形態に係る積層体の製造方法に関する概略の説明を行い、その中で、接着剤を除去する接着剤除去工程に関して詳細に説明することとする。
先ず、積層体の製造方法に関して説明する前に、本発明の実施の形態に係る積層体とその構成について説明する。
<積層体>
本発明の一実施形態に係る積層体は、図1に示すように、第1切り欠き部(ノッチ部)11を備えた基板10と、第2切り欠き部(ノッチ部)21を備えた支持体20とを、接着剤層30を介して積層してなる積層体50であって、基板10と支持体20とは、第1切り欠き部11の少なくとも一部と、第2切り欠き部21の少なくとも一部とが互いに重なるように接着剤層30を介して積層されている。
〔基板10〕
基板10は、支持体20に支持された状態で、薄化や搬送、実装等の製造プロセスに供される。基板10として、例えば、ウエハ基板、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を使用することができる。
上記基板10における接着剤層30が設けられる側の面には、電気回路等の電子素子の微細構造が形成されていてもよい。
また、基板10には第1切り欠き部11が形成されている。第1切り欠き部11は、基板10の外周部分に形成された切り欠き部であり、基板10の向きを特定するために用いられる。これにより、例えばフォトリソグラフィ工程(露光工程)において光学アライメント装置を用いて基板10の向きを特定することができる。
〔支持体20〕
支持体20は、基板10を支持する支持部材であり、基板10の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板10の破損または変形を防止するために必要な強度を有していればよい。以上の観点から、支持体20として、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるサポートプレートが挙げられる。
そして、支持体20には、第2切り欠き部21が形成されている。第2切り欠き部21は、支持体20の外周部分に形成された切り欠き部であり、支持体20の向きを特定するために用いられる。これにより、例えば、光学アライメント装置を用いて支持体20の向きを特定することができる。
また、第2切り欠き部21が基板10の第1切り欠き部11と少なくとも一部が互いに重なるように、支持体20を基板10に積層することによって、積層体50における基板10の向きを、光学アライメント装置によって特定することができる。
〔接着剤層30〕
接着剤層30は、基板10を支持体20に接着して固定すると同時に、基板10における支持体20と対向する側の表面を覆って保護する機能を備えている。従って、接着剤層30は、基板10の加工または搬送のときに、支持体20に対する基板10の固定、および基板10の保護すべき面の被覆を維持する接着性および強度を有している必要がある。一方で、接着剤層30は、支持体20に対する基板10の固定が不要になったときに、基板10から容易に剥離または除去される必要がある。
従って、接着剤層30は、通常は強固な接着性を有しているものの、何らかの処理によって接着性が低下するか、または特定の溶剤に対する可溶性を有する接着剤によって構成されている。接着剤層30の厚さ(膜厚)は、特に制限されないものの、例えば、1〜200μmであることがより好ましく、10〜150μmであることがさらに好ましい。接着剤層30は、以下に例示する接着剤(接着材料)を、スピン塗布等の従来公知の方法により基板10上および/または支持体20上に塗布することによって、形成することができる。
上記接着剤層30を構成する接着剤として、例えば、アクリル系、ノボラック系、ナフトキサン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着材料を含む接着剤を使用することができる。次に、接着材料である樹脂の組成を説明する。
接着剤層30に含有される樹脂は、接着性を備えたものであればよく、具体的には、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体成分(組成物)を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに特に限定されるものではない。
樹脂(A)は、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、樹脂(A)として、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させてなる樹脂等が挙げられる。
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる上記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーがより好ましい。
そして、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィン系モノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィン系モノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィン系モノマーの割合は、特に限定されるものではないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点から、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィン等が挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
すなわち、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点から、10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
また、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上でより好ましい。
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等は、特に限定されるものではなく、常法に従い適宜設定すればよい。
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」等が挙げられる。
樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移点が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着剤層の軟化をさらに抑制することができる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は特に限定されるものではないが、80〜160℃の範囲内であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着剤層が軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好となる。
樹脂(B)の分子量は特に限定されるものではないが、300〜3,000の範囲内であることが好ましい。樹脂(B)の分子量が300以上であると、耐熱性が充分となり、高温環境下における脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の分子量が3,000以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好となる。尚、樹脂(B)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量で示している。
さらに、炭化水素樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合して用いてもよい。樹脂(A)と樹脂(B)とを混合することにより、耐熱性および剥離速度が良好となる。樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合は、例えば、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、および柔軟性に優れるので好ましい。
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンまたはスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体成分として用いて共重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。尚、当該アルキル基は、分岐鎖状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有していてもよい。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、フェノキシエチルアクリレートがより好ましい。
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等の、アルキル基を有するマレイミド;N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の、脂肪族炭化水素基を有するマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等の、アリール基を有する芳香族マレイミド;等を単量体成分として(共)重合して得られる樹脂が挙げられる。
また、接着材料である樹脂として、下記化学式(1)で表される繰り返し単位および下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを用いることもできる。
Figure 0006871337
(化学式(2)中、nは0または1〜3の整数である。)
上記シクロオレフィンコポリマーとして用いることのできる市販品としては、例えば、三井化学株式会社製の「APL 8008T」、「APL 8009T」および「APL 6013T」等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、接着剤層は、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて形成することが好ましい。光硬化性樹脂を用いた場合には、接着剤層の剥離または除去の後に、半導体ウエハの微小な凹凸の周辺に、接着剤層が残渣として残ってしまうおそれがある。接着剤層を構成する接着材料として、特定の溶剤に溶解する樹脂が特に好ましい。特定の溶剤に溶解する樹脂を用いることにより、半導体ウエハに物理的な力を加えることなく、溶剤に溶解させることによって接着剤層を除去することができる。このため、接着剤層の除去にあたり、例えば強度が低下した半導体ウエハからでも、半導体ウエハを破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着剤層を除去することができる。
接着剤層を構成する接着材料(樹脂)を希釈若しくは溶解する溶剤としては、具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素数4から15の分岐鎖状の炭化水素;o−メンタン、m−メンタン、p−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等の、エステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物の、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル、またはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の、多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)がより好ましい);ジオキサン等の環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤;等が挙げられる。
(エラストマー樹脂)
エラストマー樹脂は、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましい。接着剤として用いるエラストマー樹脂は、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることが好ましい。さらに、エラストマー樹脂は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
エラストマー樹脂としては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、およびこれらコポリマーの水添物等が挙げられる。
(その他の成分)
接着剤層を構成する接着材料には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質がさらに含まれていてもよい。例えば、接着材料は、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤および界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
<積層体の製造方法>
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、第1切り欠き部を備えた基板と、第2切り欠き部を備えた支持体とを、上記第1切り欠き部の少なくとも一部と上記第2切り欠き部の少なくとも一部とが互いに重なるように、接着剤からなる接着剤層を介して積層する方法である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法によって製造される積層体50は、第1切り欠き部11を備えた基板(半導体ウエハ)10と、第2切り欠き部21を備えた支持体20とを、接着剤層30を介して積層してなり、上記基板10と上記支持体20とは、上記第1切り欠き部11と上記第2切り欠き部21の少なくとも一部とが互いに重なるように接着剤層30を介して積層されている。そして、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、積層体製造工程として、(1)接着剤層形成工程(塗布工程)、(2)接着剤除去工程、(3)積層工程、(4)硬化工程を少なくとも包含している。以下、各工程に関して説明する。
(1)接着剤層形成工程(塗布工程)
接着剤層形成工程では、図1において「(1)接着剤塗布」として示すように、基板10上に接着剤を塗布して、当該基板10上に接着剤層30を形成する。具体的には、接着剤層形成工程では、例えばスピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により、接着剤層30を形成することができる。
ここで、接着剤層30の厚さは、貼り合わせ(重ね合わせ)の対象となる基板10および支持体20のサイズ、貼り合わせ後の基板10に施される処理等に応じて適宜設定すればよい。
或いは、図示しないが、基板10上に接着剤を塗布する代わりに、支持体20上に接着剤を塗布して、当該支持体20上に接着剤層30を形成してもよい。さらには、基板10上および支持体20上に接着剤を塗布して、当該基板10上および支持体20上の両方に接着剤層30を形成してもよい。基板10上および支持体20上の両方に接着剤層30を形成する場合には、接着剤層30の合計の厚さを、基板10上または支持体20上に(片方に)形成する接着剤層30の厚さと同じになるように調節すればよい。
(2)接着剤除去工程
接着剤除去工程では、図1において「(2)接着剤除去」として示すように、基板10上に形成された接着剤層30における、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を除去する。これにより、図1および図2に示すように、基板10の第1切り欠き部11の周縁に接着剤除去部12が形成される。或いは、図示しないが、支持体20上に接着剤層30を形成した場合には、支持体20上に形成された接着剤層30における、第2切り欠き部21の周縁に付着している接着剤を除去する。これにより、支持体20の第2切り欠き部21の周縁に接着剤除去部12が形成される。
ここで、本発明において「周縁」とは、基板10に形成された第1切り欠き部11または支持体20に形成された第2切り欠き部21における、基板端部または支持体端部から、基板または支持体の内側へ向かってある程度の範囲(幅)を持った領域を意味する。ある程度の範囲とは、基板10または支持体20のサイズや、接着剤層30の厚さおよび粘度、貼り合わせ時の押圧力等に依存し、一定の範囲に定めることはできないものの、次の条件を満たす範囲である。すなわち、その範囲の接着剤を除去することによって、後述する積層工程後の積層体50における第1切り欠き部11と第2切り欠き部21とが互いに重なる部分において、光学アライメント装置による基板10および支持体20の位置の検知ができる程度に接着剤層30のはみ出しが少なくなる程度、好ましくは、はみ出しが無くなる程度の範囲である。具体的には、例えば、直径300mmの基板10上に形成した厚さ50μmの接着剤層30において、接着剤を除去する周縁とは、第1切り欠き部11における基板端部(0μm)から1000μm〜1500μm程度の範囲であり、好ましくは1000μm〜1200μm程度の範囲である。
第1切り欠き部11または第2切り欠き部21の周縁に付着している接着剤を必要以上に除去した場合には、積層体50を形成したときに接着剤層30が第1切り欠き部11および/または第2切り欠き部21の端部まで到達せず、基板10と支持体20との接着が不十分となる。その結果、後述する薄化工程において、基板10の研削中に割れや欠けが発生する。そのため、接着剤の除去は適度に行う必要がある。
接着剤除去工程は、上記塗布工程から後述する硬化工程までの間に行えばよいが、積層工程の前に行うことがより好ましい。
以下の説明においては、基板10上に接着剤層30を形成し、当該基板10の第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を除去する場合を例に挙げることとする。
基板10の第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤の除去には、いわゆるEdge Bead Removal(EBR)処理にて用いられるような洗浄剤を用いる方法、レーザー光を用いる方法、物理的に除去する方法等が挙げられる。
EBR処理にて用いられるような洗浄剤を用いる場合には、洗浄剤を第1切り欠き部11の周縁にスプレーして接着剤を溶解することによって、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を除去する。
レーザー光を用いる場合には、レーザー光を第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤に照射し、接着剤を変質、蒸発、炭化等させることによって、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を除去する。
物理的に除去する場合には、例えば、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を布等で拭き取ってもよく、基板10よりも軟質の材質からなる除去部材(スキージ)によって上記接着剤を掻き取ってもよい。
本実施の形態に係る接着剤除去工程においては、図3に示すように、基板10よりも軟質の材質、例えばゴムまたは合成樹脂からなる除去部材40によって接着剤を掻き取り、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を除去することがより好ましい。これにより、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を、基板10を破損することなく除去することができる。また、洗浄剤やレーザーを用いる場合と比較して、非常に簡便な方法で接着剤を除去することができる。
以下の説明においては、基板10の第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を、除去部材40によって掻き取ることにより除去する場合を例に挙げることとする。
除去部材40は、接着剤を掻き取る幅および/または深さを調節可能であることが好ましい。幅および/または深さの調節方法としては、例えばゴムまたは合成樹脂からなる除去部材を削る方法、或いは種々の幅および/または深さを有する除去部材を複数用意して所望の除去部材を選択して用いる方法等が挙げられる。これにより、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を適切な幅および量だけ除去して接着剤除去部12を形成することができ、後述する積層工程における基板10と支持体20との貼り合わせを適切に行うことができる。また、第1切り欠き部11の大きさおよび形状が様々であっても、それに対応することができる。適切な幅および量の接着剤を除去して接着剤除去部12を形成することによって、後述する積層工程後の積層体50における第1切り欠き部11と第2切り欠き部21とが互いに重なる部分における、接着剤層30のはみ出しが抑制される。これにより、その後の工程において、光学アライメント装置による切り欠き部の検知不良を防止することができ、積層体50の向きを正確に検知することができる。
また、除去部材40による接着剤の掻き取りは、複数回行われてもよい。これにより、接着剤除去部12に残存する接着剤の量が減少し、積層体50における第1切り欠き部11と第2切り欠き部21とが互いに重なる部分における接着剤層30のはみ出し幅(量)がより一層少なくなる。ここで、掻き取り回数が多いほど接着剤除去部12に残存する接着剤の量は少なくなるものの、一方で接着剤除去工程の所要時間が増加する。そのため、大量生産を行う上では、所要時間を考慮して、掻き取り回数、つまり接着剤除去部12に残存していてもよい接着剤の量を調節する必要がある。
ここで、除去部材40による接着剤の掻き取りは、当該接着剤を効率的に除去することができる方法であればよいが、除去部材40を、基板10の表面に対して垂直に接着剤に進入させた後、若しくは、基板10の表面に対して斜めに接着剤に進入させた後、基板10の表面に対して平行に移動させることによって行われることが好ましい。除去部材40を、基板10の表面に対して垂直または斜めに接着剤に進入させることにより、除去部材40が接着剤層30のうちの除去する接着剤を捉える。その後、除去部材40を、基板10の表面に対して平行に移動させることにより、除去部材40が捉えた接着剤が除去される。これにより、接着剤の除去が好適に行われる。
一方、除去部材40を、基板10の表面に対して平行に接着剤に進入させた場合には、接着剤が基板10の内側へと押し込まれるため、除去部材40周辺の接着剤層30が局部的に厚くなる。さらに、その場合には第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤が除去されているように見えるものの、基板10上の接着剤の総量はほとんど減少せず、後述する積層工程後の接着剤層30のはみ出し幅(量)の抑制に対する効果が乏しい。但し、非常に薄い除去部材40を用いれば、当該除去部材40を、基板10の表面に対して平行に接着剤に進入させて接着剤を除去することも可能である。従って、本実施の形態の接着剤除去工程においては、基板10の表面に対して平行に除去部材40を進入させることを除外するものではない。
除去部材40による接着剤の掻き取りは、上述した進入動作および平行移動等を除去部材40に行わせることができる駆動装置(図示しない)に当該除去部材40を取り付けることによって行えばよい。また、上記駆動装置は、接着剤の掻き取り動作をプログラミングされた制御装置(図示しない)によって制御されるように構成されていればよい。つまり、除去部材40による接着剤の掻き取りは、一般的な、コンピュータ制御された駆動装置によって行うことができる。但し、除去部材40による接着剤の掻き取り動作は、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を適切な幅および量だけ除去することができる動作であればよく、その具体的な方法(駆動方法、制御方法等)は特に制限されない。
上記除去部材40は、ゴム製または合成樹脂製のヘラであることがより好ましい。ヘラは先端部が薄く形成されているため、ヘラを接着剤層30へ進入させたときに、ヘラの先端部によって両側へ押しのけられる接着剤の量が少ない。そのため、ヘラを接着剤層30に進入させても、ヘラの先端部の近傍に生じる接着剤の盛り上がりが少ない。ここで、接着剤の盛り上がりが大きい場合には、接着剤を除去したとしてもその盛り上がり部分の接着剤が接着剤層30のはみ出しに寄与してしまうために、はみ出し幅(量)の抑制が難しくなる。これに対して、先端部が薄く形成されているヘラを用いた場合には、接着剤の盛り上がりが少ないので、第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤が好適に除去される。これにより、その後の工程において、光学アライメント装置による切り欠き部の検知不良を防止することができ、積層体50の向きを正確に検知することができる。
ここで、上記接着剤除去工程においては、支持体20上に接着剤層30が形成されている場合には、基板10の第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤を除去する代わりに、支持体20の第2切り欠き部21の周縁に付着している接着剤を除去する。接着剤の具体的な除去方法は、基板10上に接着剤層30が形成されている場合の除去方法と同じである。接着剤の除去に除去部材を用いる場合には、当該除去部材は、支持体20よりも軟質の材質からなっていればよい。或いは、上記接着剤除去工程においては、基板10上および支持体20上の両方に接着剤層30が形成されている場合には、基板10の第1切り欠き部11の周縁に付着している接着剤および/または支持体20の第2切り欠き部21の周縁に付着している接着剤を除去する。これにより、その後の工程において、光学アライメント装置による切り欠き部の検知不良を防止することができ、積層体50の向きを正確に検知することができる。
(3)積層工程
積層工程では、図1において「(3)貼り合わせ」として示すように、基板10と支持体20とを、第1切り欠き部11の少なくとも一部と第2切り欠き部21の少なくとも一部とが互いに重なるように、接着剤層30を介して貼り合わせて積層し、積層体50を作製する。
具体的な方法としては、基板10における接着剤層30が形成された面と、支持体20とを位置合わせを行いながら貼り合わせることで基板10と支持体20とを積層する方法、または、支持体20における接着剤層30が形成された面と、基板10とを位置合わせを行いながら貼り合わせることで基板10と支持体20とを積層する方法が挙げられる。
積層工程後の積層体50における第1切り欠き部11と第2切り欠き部21とが互いに重なる部分において、接着剤層30のはみ出し幅は、例えば、0μm〜300μmであることが好ましく、0μmに近い方がより好ましい。但し、接着剤層30のはみ出し幅の許容範囲は、基板10および支持体20のサイズや、第1切り欠き部11および第2切り欠き部21の形状、光学アライメント装置の性能等によって変わり得る。
これにより、その後の工程において、光学アライメント装置による切り欠き部の検知不良を防止することができ、積層体50の向きを正確に検知することができる。
(4)硬化工程
硬化工程では、積層体50を真空下でベークすることにより、接着剤層30を形成する接着剤を硬化させて硬化後の積層体50を得る。硬化工程における硬化条件、つまり、硬化温度や硬化時間、真空度等は、接着剤の組成や接着剤層30の厚さ等に応じて設定すればよく、具体的には従来の硬化条件と同様の条件で行えばよいが、特に制限されるものではない。
(5)洗浄工程
積層体50を製造する積層体製造工程は、必要に応じて、上記硬化工程の後に、上記基板10および支持体20の側面部を洗浄する洗浄工程を包含していてもよい。洗浄工程では、積層工程において基板10と支持体20とを貼り合わせて積層体50を作製したときに当該積層体50からはみ出した接着剤層30を洗浄して除去する。これにより、その後の工程における処理ステージの汚染を防止することができる。
基板10および支持体20の側面部を洗浄する方法としては、公知の方法を用いればよく、特に制限されないが、基板10および支持体20の側面部に対して、溶解液を例えばディスペンスノズルを用いてスプレーする方法、例えばEBR処理を行う方法が挙げられる。溶解液のスプレー(供給)は、積層体50を回転させながら行ってもよい。上記EBR処理は、硬化工程後の積層体50を回転させ、回転している積層体50の外周縁へ洗浄液を射出し、外周縁の接着剤を除去する処理である。
上記溶解液は、接着剤の組成に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、接着剤層30を形成するときに当該接着剤層30を構成する接着材料(樹脂)を希釈若しくは溶解する溶剤として通常用いられる物質が好適であり、特に、直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、モノテルペン類、ジテルペン類等の環状の炭化水素(テルペン類)を好適に使用することができる。
尚、洗浄工程は、必要に応じて、接着剤層形成工程から硬化工程までの間に行ってもよい。
<基板の処理方法>
次に、本発明の一実施形態に係る基板の処理方法について説明する。本実施形態に係る基板10の処理方法は、本発明に係る積層体の製造方法である積層体製造工程(図1の(1)〜(3)、硬化工程および洗浄工程)と、上記積層体製造工程の後、上記基板10を研削することによって薄化する薄化工程と、を少なくとも包含している。
(6)薄化工程
薄化工程では、積層体50の基板10を、グラインダ等の研削装置によって所望の厚さまで研削する。本発明に係る積層体50においては、基板10と支持体20とが強固な接着性を有している接着剤層30によって均一に接着されており、研削の間に支持体20から基板10が剥がれることはない。
〔他の工程〕
薄化工程の後、基板10にフォトリソグラフィ工程(露光工程)等の様々な工程が行われることにより、基板10上に回路が形成される。このため、積層体50は、薄化工程の後、様々な工程を行うために種々の装置に搬送される。ここで、積層体50は、基板10の第1切り欠き部11の少なくとも一部と支持体20の第2切り欠き部21の少なくとも一部とが互いに重なる部分において、接着剤層30のはみ出し幅が少ないため、光学アライメント装置によって積層体50の向きを的確に特定することができる。従って、様々な工程において、積層体50における基板10の表面に、的確な向きで回路を形成することができる。
そして、様々な工程が行われた後、何らかの処理によって積層体50の接着剤層30の接着性を低下させるか、または特定の溶剤を用いて接着剤層30を溶解させることにより、支持体20から基板10を剥がす(剥離工程)。これにより、薄板化した基板を得ることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1〕
第1切り欠き部を備えた直径300.0mmのシリコン製の基板に接着剤「TZNR−A4012(商標)」をスピンコーティングして、接着剤層を作製した。接着剤層の厚さは50μmであった(接着剤層形成工程)。
作製した接着剤層のうち、基板の第1切り欠き部の周縁に付着している接着剤を、ゴムヘラを用いて除去した。具体的には、ゴムヘラを、基板の第1切り欠き部の周縁に付着している接着剤に、基板の表面に対して上方から進入させた後、基板の表面に対して平行に移動させることにより、接着剤を掻き取った。接着剤の掻き取り幅は第1切り欠き部における基板端部から180μm、掻き取り回数は1回とした(接着剤除去工程)。
次に、第2切り欠き部を備えた直径300.0mmのガラス板を支持体として用いて、基板の第1切り欠き部の少なくとも一部と支持体の第2切り欠き部の少なくとも一部とが互いに重なるように、接着剤層を介して貼り合わせて積層(押圧力:4t)し、積層体を作製した(積層工程)。また、EBR処理を行って積層体の側面部(切り欠き部以外の部分)における接着剤層を1.0mm除去した(洗浄工程)。
上記積層体を、215℃で120秒間、加熱して、硬化処理を行った(硬化工程)。硬化後の積層体における、基板の第1切り欠き部と支持体の第2切り欠き部とが互いに重なる部分において、接着剤層のはみ出し幅を光学的手法で測定した。その結果、硬化後の積層体における上記接着剤層のはみ出し幅は、255μmであった。従って、光学アライメント装置により積層体の向きを正確に検知することができた。
〔実施例2〕
接着剤の掻き取り幅を第1切り欠き部における基板端部から960μm、掻き取り回数を1回とした以外は、実施例1と同様の工程を行うことにより、硬化後の積層体を作製した。そして、実施例1と同様にして、硬化後の積層体における接着剤層のはみ出し幅を測定した。その結果、はみ出し幅は152μmであった。従って、光学アライメント装置により積層体の向きを正確に検知することができた。
〔実施例3〕
接着剤の掻き取り幅を第1切り欠き部における基板端部から1670μm、掻き取り回数を1回とした以外は、実施例1と同様の工程を行うことにより、硬化後の積層体を作製した。そして、実施例1と同様にして、硬化後の積層体における接着剤層のはみ出し幅を測定しようとしたが、接着剤層は、はみ出していなかった。接着剤層は、積層工程において基板の第1切り欠き部と支持体の第2切り欠き部とが互いに重なる部分の端部にまで伸展せず、積層体の内部に留まっていた。基板の第1切り欠き部と支持体の第2切り欠き部とが互いに重なる部分における、基板または支持体の端部から、積層体の内側にある接着剤層の端部までの距離は750μmであった(接着剤層のはみ出し幅としては、−750μm)。従って、光学アライメント装置により積層体の向きを正確に検知することができた。
〔比較例1〕
接着剤の掻き取り(接着剤除去工程)を行わない以外は、実施例1と同様の工程を行うことにより、硬化後の積層体を作製した。そして、実施例1と同様にして、硬化後の積層体における接着剤層のはみ出し幅を測定した。その結果、はみ出し幅は339μmであった。従って、光学アライメント装置により積層体の向きを正確に検知することはできなかった。
以上の結果から、接着剤の掻き取りを行っていない比較例1の積層体に比べて、基板の第1切り欠き部の周縁に付着している接着剤を掻き取って除去した実施例1〜3の積層体においては、基板の第1切り欠き部と支持体の第2切り欠き部とが互いに重なる部分における接着剤のはみ出し幅が抑制され、光学アライメント装置により積層体の向きを正確に検知することができることが確認された。
また、基板の第1切り欠き部の周縁に付着している接着剤の掻き取り幅を大きくするほど、基板の第1切り欠き部と支持体の第2切り欠き部とが互いに重なる部分における接着剤のはみ出し幅が小さくなることが確認された。
本発明に係る積層体の製造方法および基板の処理方法は、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において広範に利用することができる。
10 基板
11 第1切り欠き部
12 接着剤除去部
20 支持体
21 第2切り欠き部
30 接着剤層
40 除去部材
50 積層体

Claims (4)

  1. 第1切り欠き部を備えた基板と、第2切り欠き部を備えた支持体とを、上記第1切り欠き部の少なくとも一部と上記第2切り欠き部の少なくとも一部とが互いに重なるように、接着剤からなる接着剤層を介して積層する積層工程を包含する積層体の製造方法であって、
    上記基板および/または上記支持体に上記接着剤を塗布する塗布工程から、上記積層工程を行った後に接着剤を硬化させる硬化工程までの間に、上記基板における第1切り欠き部の周縁および/または上記支持体における第2切り欠き部の周縁に付着している上記接着剤を除去する接着剤除去工程を包含し、
    上記接着剤除去工程では、上記基板または支持体よりも軟質の材質からなる除去部材としてゴム製または合成樹脂製のヘラを用い、当該ヘラを、上記基板または支持体の表面に対して垂直に接着剤に進入させた後、若しくは、上記基板または支持体の表面に対して斜めに接着剤に進入させた後、基板または支持体の表面に対して平行に、且つ基板または支持体の中心に向かって近づくか、または離れるように移動させることにより、基板における第1切り欠き部および/または支持体における第2切り欠き部の端部(0μm)から1000μm〜1500μmの範囲に付着している接着剤を、掻き取り回数1回で掻き取り、
    上記接着剤層の厚さは、1〜200μmであり、上記除去部材は、接着剤を掻き取る幅および/または深さを調整することで、接着剤のはみ出し幅を調整可能であることを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 上記積層工程の前に、上記接着剤除去工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 上記硬化工程の後に、上記基板および支持体の側面部を洗浄する洗浄工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
  4. 請求項1〜の何れか一項に記載の積層体の製造方法によって積層体を製造する積層体製造工程と、
    上記積層体製造工程の後、上記基板を研削することによって薄化する薄化工程と、を包含していることを特徴とする基板の処理方法。
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