JP6870453B2 - 溶融亜鉛めっき鋼管 - Google Patents

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本発明は、比較的厚みのある溶融亜鉛めっきを施した鋼管に関し、特に、曲げ加工やフレア成形(管端拡大加工)等の後加工が施される溶融亜鉛めっき鋼管等に有用な鋼管に関するものである。
土中等に埋設されるガス管等には、長期間埋設されたままであっても、腐食等による破損が生じないように、例えば、片面当り550g/m2以上の溶融亜鉛めっきが施された鋼管が使用される。
しかし、溶融亜鉛めっき層の厚さを増すと、曲げ加工や、管端部に接続等のためのフレア加工(鍔出し加工)等を施した場合に、該めっき層が剥離現象を生起し易くなり、めっき層厚さを増大させても、期待する耐腐食性を発揮できない欠点があった。
さらに、近年においては、EU連合で規定されたRoHS指令に準拠して、合金中のPb、Cd規制がなされ、Pbを1.3質量%以下程度含む蒸留亜鉛インゴットに代えて、低Pb・低Cd含有量の電解亜鉛を溶融めっき亜鉛に供することが増えているが、低Pbの溶融亜鉛浴では、いわゆるめっき飛びと称する、部分的にめっき皮膜が形成されない欠陥が生じやすい欠点も生じている。
本発明は、該埋設管のような腐食環境下において使用される、比較的厚みのある溶融亜鉛めっきを施された鋼管に後加工を施した場合であっても、めっき層の剥離現象を生じることのない、加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を提供することを目的とする。
特許文献1〜3には、RoHS指令に従って、Pb含有量を0.1質量%以下、Cd含有量を0.01質量%以下に低減した溶融亜鉛浴を用いた場合であっても、不めっき発生の少ない溶融亜鉛めっき材の製造方法が記載されている。これらの技術においては、溶融亜鉛浴中にSn、Sb、Bi、又はIn等の金属を微量に添加している。
引用文献4には、溶融亜鉛めっき鋼管の曲げ加工性等を向上させるために、質量%で、C:0.001〜0.02%、Si:0.05%以下、Mn:0.05〜0.3%、Nb;0.03%以下、Ti:0.03%以下とした鋼管に溶融亜鉛めっきを施す技術が、引用文献5には、鋼材の表面に溶融亜鉛めっきを施した後、溶融Zn−Al−Mg合金めっきを行う技術が、各々記載されている。
特開2009−221601号公報 特開2009−197328号公報 特開2011−26630号公報 特開平11−246942号公報 特開2010−70810号公報
引用文献1〜3に開示の技術では、微量添加成分の含有量調整が面倒であり、また、加工時のめっき層の剥離についての考察はなされていない。
特許文献4に開示の技術では、C含有量を0.02%以下、Si含有量を0.05%以下に抑制して、素材鋼管の強度が過大となって、曲げ加工性等が劣化することを防止しつつ、Nb添加による細粒強化及び析出強化を狙ったものであるが、ある程度の曲げ加工性は維持できても、鋼管強度面で十分とはいえず、また、400g/m2までのめっき付着量について記載されるのみで、それ以上、例えば、片面当り550g/m2を超える厚さの溶融めっき鋼管について記載するところがなく、耐腐食性の面でも十分なものということはできない。
また、特許文献5に開示の技術では、溶融亜鉛めっきの後、溶融Zn−Al−Mg合金めっきを行うことから、通常の溶融亜鉛めっき設備とは別に、溶融Zn−Al−Mg合金めっき設備を用意する必要があり、また、その溶融合金浴についても、Al:4〜20%、Mg:0.1〜5%に維持する必要があり、鋼板とは異なり、溶融亜鉛合金めっき浴表面の大気からの隔離が難しい鋼管の溶融めっき設備においては、表面に酸化物等が生じ易く、操業を困難にする欠点があった。
本発明は、このような実情に鑑み、比較的厚みのある電解亜鉛を素材とする溶融亜鉛めっきを施した鋼管で、フレア加工や曲げ加工を行ってもめっき層の剥離を生ぜず、耐腐食性に富んだ溶融亜鉛めっき鋼管を提供することを課題とする。
本発明者らは、まず、溶融亜鉛めっき付着量を片面当り550g/m2以上とした亜鉛を素材とする溶融亜鉛めっき鋼管の断面について、観察を行った。
その結果、めっき層は、最表層側から、η層、ζ層、及びδ1層の順に積層構造となっていることが判明した。
以下、各層について述べる。
<η層>
めっき層の最表面に形成される、ほぼ純Znからなるη相単相からなる層であり、耐腐食性の主体となる層である。
めっき鋼管の表面全体を、このη層で被覆することにより、高い耐腐食性が得られる。
<ζ層>
ζ層は、後述するδ1層の表面から、柱状に伸長するめっき層の主体となる組織であり、δ1層に隣接する部分(下部ζ層)は、ζ相の密な柱状組織からなるが、めっき表面側の前述したη層に隣接する上部ζ層においては、凝固時に、粗大な柱状晶間にη相が混入した混層を形成している。ζ相は、δ1相に次ぐ硬さを有しているので、ζ相単独部分においては、δ1相と同様に、層内剥離(き裂)を生じる虞がある。
<δ1層>
δ1層は、最も素材鋼管側に形成される柵状の組織であって、他層に比較して、鋼材から溶出したFe分を多く含むため、高硬度の層として、比較的薄く均一に層状に形成される傾向がある。
本発明が対象とするめっき鋼管と比較して、極めて薄いめっき層が形成されるめっき鋼板においては、δ1層も極めて薄い層状の形態となることで、めっき層と鋼板表層との剥離を抑制する効果を奏するものであるが、片面当り550g/m2以上もの厚さを有する厚めっき鋼管においては、このδ1層も、めっき鋼板のδ1相に比較して厚く柵状に形成され、その硬度が高いことにより、曲げ加工やフレア加工時に、δ1層内において層内剥離を生ずることが判明した。
前述した通り、ζ相は柱状組織、δ1相は柵状組織となるが、めっき組織を断面で観察したとき、最表層から(1)η層;η相が主体の層、(2)ζ層;ζ相が主体ではあるが、上部にη相が混入した層、(3)δ1層;δ1相が主体の層と区別できる。これらの各層の境界を以下に示す手順により定義する(図1の下部に示す参考写真を参照)。
<η層とζ層(η相とζ相の混相からなるζ層(上部)の境界>
めっき層の断面観察において、光学顕微鏡であればエッチング(例えば25℃の0.03%ナイタール(エタノール+0.03%硝酸)に20秒浸漬)、走査型電子顕微鏡であれば反射電子像あるいはエッチング後の二次電子像により、η相とζ相は判別可能である。めっき層の断面写真を撮影し、η層とζ層が含まれるように写真画像をトリミングし、2階調(二値化)処理によりη相とζ相を明確にする。η相とζ相の境界は入り組んでいるが、ここでは断面写真のη相とζ相の境界に任意の線分を引いた時、前記線分を境に互いの領域にはみ出たη相とζ相各々の面積が等しくなる、即ちη相の面積:ζ相の面積=1:1となる線分Aを探しだし、この線分Aが含まれる直線をη層とζ層(η相とζ相の混相)の境界と決定した。
<ζ層(下部)とδ1層の境界>
同様に、めっき層の断面観察において、光学顕微鏡であればナイタールエッチング、走査型電子顕微鏡であれば反射電子像あるいはエッチング後の二次電子像により、ζ相とδ1相は判別可能である。めっき層の断面写真を撮影し、ζ層とδ1層が含まれるように写真画像をトリミングし、2階調(二値化)処理によりζ相とδ1相を明確にする。ζ相とδ1相の境界は入り組んでいる場合もあるが、ここでは断面写真のζ相とδ1相の境界に任意の線分を引いた時、前記線分を境に互いの領域にはみ出たζ相とδ1相各々の面積が等しくなる、即ちζ:δ1=1:1となる線分Bを探しだし、この線分Bが含まれる直線をζ層とδ1層との境界と決定した。
上記の手順で決定した境界により、「最表層」から「η層とζ層(η相とζ相の混層からなる上部ζ層)の境界;即ち線分A」までの厚みを「η層平均厚み」、「η層とζ層(η相とζ相の混層からなる上部ζ層)の境界;即ち線分A」から「ζ層(下部ζ層)とδ1層の境界;即ち線分B」までの厚みを「ζ層平均厚み」、「ζ層とδ1層の境界;即ち線分B」と「δ1層と素材鋼管の界面;即ち母材表面」までの厚みを「δ1層平均厚み」とした。
図1下部の参考写真における線分Cは線分Aと線分Bとの中央に引いた線分であり、線分ACは、線分Aと線分Cとの中央に引いた線分、線分BCは、線分Cと線分Bとの中央に引いた線分であるので、線分ACと線分BCで挟まれる面積は、全ζ層の50%となる。
本発明者らは、曲げ加工やフレア加工時に発生し易いδ1層や、ζ層の層内剥離を抑制できるめっき層の形態を種々検討した結果、以下の4点がめっきの層内剥離の抑制に効果的であることが判明し、本発明を成すに至ったものである。
(1)ζ層とη層とが境界部分で適度に混合しており、軟質なη相がζ相に入り込むことで、ζ層内の剥離や亀裂の伝播を防止する。この効果を発揮するためには、前記境界を越えて、お互いの領域に入り込む相の個数が合計で10個以上あることが望ましい。これ未満の混合状態ではき裂の伝播防止効果が十分に発揮できない場合がある。
(2)δ1層の厚みを適度に変動させて、δ1層内における剥離や亀裂の伝播を防止する。この効果を発揮するためには、境界を越えて、お互いの領域に入り込む相の個数が合計で2個以上あり、δ1層の最大厚さがδ1層の平均厚さの1.5倍以上であるようにδ1相の厚みを変動させることが望ましい。これら未満では亀裂の伝播防止効果が十分に発揮できない場合がある。
(3)ζ層厚さ/δ1層厚さを所定値以上として、最も硬いδ1層内の剥離・亀裂の伝播を防止する。この効果を発揮するためには、厚さ比で(ζ層)/(δ1層)が2.0以上、更には5.0以上であることが望ましい。これら未満では亀裂の伝播防止効果を十分に発揮できない場合がある。
(4)めっき層の断面においてζ層の厚さの中心線を中央として、該中心線の両側各ζ層の厚さの25%の範囲におけるη相の混入割合が1〜10面積%であれば、フレア加工等を施してもめっき層の剥離現象を生じ難い溶融亜鉛めっき鋼管とすることができる。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)鋼管の表面に溶融亜鉛めっき層が形成された溶融亜鉛めっき鋼管であって、
溶融亜鉛めっき層が表面側からη相が主体のη層、ζ相にη相が混入したζ層、及びδ1相が主体のδ1層からなり、
前記η層とζ層の境界は、互いの領域にはみ出したη相とζ相の面積が等しくなる線分であり、
前記めっき層断面におけるζ層の中心線の上下各ζ相層の全厚に対して25%の範囲、即ちζ相層の全厚さの中央50%の範囲におけるη相の面積比が1〜10面積%であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管。
(2)前記η層とζ層の境界で互いにはみ出す部分が境界長さ100μmあたり合計で10個以上であることを特徴とする前記(1)記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
(3)前記溶融亜鉛めっき層における、
前記ζ層とδ1層の境界は、互いの領域にはみ出したζ相とδ1相の面積が等しくなる線分であり、
前記境界で互いにはみ出す部分が境界100μmあたり2個以上であり、
δ1層の最大厚さがδ1層の平均厚さの1.5倍以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
(4)前記溶融亜鉛めっき層のうち、前記鋼管表面との界面に形成されるδ1層と、前記ζ層の厚さの比率:(ζ層)/(δ1層)が2.0以上であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
(5)前記厚さの比率:(ζ層)/(δ1層)が5.0以上であることを特徴とする前記(4)に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
(6)前記溶融亜鉛めっき層におけるめっき付着量が片面当り550g/m2以上であることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
(7)前記溶融亜鉛めっき鋼管の組成が、質量%で、C:0.005以上0.15%以下、Si:0.15%以上0.25%以下、Mn:0.20%以上1.60%以下、P:0.04%以下、S:0.04%以下であって、残部がFe及び不可避不純物であることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
本発明のめっき鋼管によれば、曲げ加工やフレア加工を行っても、厚く形成されためっき層の剥離を生じることなく、耐腐食性に優れためっき鋼管を、生産性良く得ることができる。
めっき組織断面の模式図及び各層の境界線の画定手法を示す図である。 溶融亜鉛めっきを施した試料断面の光学顕微鏡写真である。
図1の模式図に図示した様に、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、所定時間経過後に引き上げると、鋼材表面にFe含有量が高く、融点の高いδ1相が柵状に形成され、その表面からζ相が柱状に発達していく。δ1相に近いζ相は相対的に緻密に形成されるが、上部においては、やや粗な柱状晶を形成し、隣接する柱状晶の間には、純Znに近いη相が、粗な柱状晶間に入り込んで形成された本発明で定義する混相状のζ層が形成される。
δ1相とζ相は、共にZnとFeとの金属間化合物であり、鋼管素材との界面に形成されるδ1相の方が、Fe含有割合が高く、硬さも大きい。
η相は、ほぼ純粋のZnから構成された単相であり、めっき層成分の中では柔らかい相であって、溶融亜鉛めっき浴から引き上げられた時点では、未だ溶融状態を維持していると考えられる。
このような層構造のめっき層を有する鋼管に対して、フレア加工などを行った場合、めっき層の剥離は、最も硬いδ1相が主体であるδ1層や、これに次ぐ硬さのζ相主体のζ層の層内で生じていることが判明した。
本発明は、以上のような検討過程を経て上記(1)〜(7)に記載の発明に至ったものであり、以下、順次説明する。
本発明の鋼板の成分組成及びその限定理由について説明する。
(C:0.005〜0.15%)
Cは、強度を確保するために有効な元素であり、含有量が少ないと、その効果が発揮されないので、0.005%以上が望ましい。さらに望ましくは、0.01%以上である。しかし、Cを過剰に添加すると、強度が高くなりすぎて、伸びが低下し、曲げ加工性が劣化するため、0.15%以下が望ましい。
(Si:0.15〜0.25%)
Siは、本発明では重要な元素である。溶融亜鉛めっき性の観点からは、Fe−Zn合金層が発達する「ヤケ」防止成分として、0.15%以上、0.25%以下の含有量範囲が良好である。また、Si含有量が低いと、素材鋼管表面に形成されるめっき層の厚みが、全体として薄くなる傾向があるため、厚みのあるめっき層を形成するためには、0.15%以上の含有量が必要である。
一方、過大な含有量は、素材鋼管の硬度を上昇させるため、加工性確保の観点から上限は0.25%に設定した。
(Mn:0.20〜1.6%)
Mnは、強度を得るのに有効な元素である。Siを0.15〜0.25%の範囲に限定したため、添加量が少ないとMn/Si質量比が低くなり、溶接時の溶接欠陥が発生し易くなるので、0.20%以上、更には、0.40%以上の含有量が望ましい。反対に過剰に添加すると、強度が高くなりすぎて、伸びが低下し、曲げ加工性が劣化するため、1.6%以下とすることが望ましい。
(P:0.04%以下)
P:Pは不純物として鋼中に存在するが、その量が0.04%を超えると、中心偏析が増加し、成形加工時に介在物を起点として、割れが進展し易くなるため、0.04%以下とすることが望ましい。さらに望ましくは、0.02%以下である。
(S:0.04%以下)
Sも不純物として鋼中に存在するが、その量が0.04%を超えると、割れの原因となるため、0.04%以下とすることが望ましい。さらに、望ましくは、0.01%以下である。
次に、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法について、説明する。
本発明に係るめっき鋼管においては、溶融亜鉛めっき層と素材鋼管表面との界面反応の不均一化を増大させることが、製法上のポイントである。
即ち、前記界面に形成されるδ1層や、該δ1層上に形成されるζ層が過度に均一で、平坦であると、それらの層内に、フレア加工等を行った際にき裂が発生し易く、かつ、この亀裂が長大化する傾向があるので、適度に不均一化した方が、き裂が発生し難くなり、また、発生した場合においても、途中で境界層に当接して、き裂の伝播を食い止めることが可能となると思われる。
具体的には、溶融亜鉛めっき鋼管表面は、耐腐食性を確保する観点から、η相単相で形成される必要があるが、η層とζ層の境界においては、両者が適度に嵌入して、混相を形成する必要がある。これを実現するためには、例えば、ZnCl2−NH4Cl系フラックスを使用してフラックス浴温40〜90℃で浸漬し、その後、該フラックス浴温±10℃、即ち、30〜100℃程度で乾燥する方法が考えられる。乾燥時間は鋼管の肉厚と乾燥温度に依存するために一概には決められないが、5〜30分の範囲から適宜選ぶことができる。
フラックス乾燥温度を100℃以下とすることにより、局所的にフラックスの濃淡が発生した状態で、鋼管が溶融亜鉛浴中に浸漬されることで、めっき反応点が分散し、前述したような、
(1)ζ層とη層とが境界部分で適度に混合しており、軟質なη相がζ相に入り込み、
(2)ζ層の厚さの中心線を中央として、該中心線の両側各25%の範囲におけるη相の混入割合が1〜10面積%であり、
更には、
(3)η層とζ層の境界で互いにはみ出す部分が境界長さ100μmあたり合計で10個以上であり、
(4)δ1層の厚みが適度に変動し、δ1層とζ層の境界で互いにはみ出す部分が境界長さ100μmあたり合計で2個以上で、δ1層の最大厚さがδ1層の平均厚さの1.5倍以上であり、
(5)ζ層厚さ/δ1層厚さの比が2.0以上、或いは5.0以上となる、
という特徴を有するめっき層を実現することができる。
また、めっき工程に先立つ酸洗工程において、過酸洗とする手法も有効である。
例えば、3〜20%H2SO4で、40〜80℃、浸漬時間30分以上(上限は特に設けないが、生産性の観点から60分以下が望ましい)あるいは3〜15%HClで、40〜80℃、浸漬時間10分以上(上限は特に設けないが、生産性の観点から30分以下が望ましい)の条件で過酸洗とすることができる。酸洗後、水洗といった比較的長時間の酸洗を行って、素材鋼管表面を適度に粗面化することによっても、めっき反応点の分散化が進行し、δ1層に厚み変動が生じると共に、該δ1層がうねり、き裂の伝播が抑制される効果や、ζ層/δ1層の厚さ比を増大することができる。
上述したフラックス乾燥温度の低温化と、過酸洗は、一方のみを実施してもよいし、両者を組み合わせて実施することも可能である。
以下、実施例について説明する。
<供試材>
めっき用素管は、低炭素熱延板を電縫製管した100A(外径114.3mmΦ×肉厚4.5mmt)鋼管を用いた。鋼材成分は質量%でC:0.06%、Si:0.21%、Mn:0.24%、P:0.007%、S:0.002%であった。
<脱脂・酸洗工程>
脱脂及び酸洗は、5%KOHで60℃×15min.で脱脂した後、水洗し、表1に記載の各種酸洗条件にて酸洗後、水洗した。
Figure 0006870453
<フラックス処理工程>
ZnCl2−3NH4Cl(3号フラックス)35%濃度のフラックスにより、表1に記載のフラックス浸漬条件、乾燥条件によりフラックス処理を行った。
<めっき工程>
めっき浴は、電解亜鉛溶融めっき浴を使用し、470℃、浴面フラックスなしで、浸漬時間は120sec.を基準として変化させ、めっき付着量を変化させた。めっき浴から引き上げ後、10sec.放置、のち水冷を行った。
<めっき層断面観察>
フレア未加工部からサンプルを切り出し、埋め込み研磨した。めっき層のη、ζ、δ1の各相が明確に判別できるように、エタノール+0.03%硝酸溶液に20sec浸漬し、エッチングした。
めっき層の断面写真を撮影し、2階調(二値化)処理により各相を更に明確にした。面積比でη相:ζ相=1:1となる線分を探しだし、この線分が含まれる直線をη層とζ層(η相とζ相の混相からなるζ層上部)の境界と決定した。なお、η層とζ層に互いにはみ出す部分は境界長さ100μmあたりの合計を算出した。はみ出す個数が10個以上の場合は○、10個未満の場合は×と評価した。
同様に面積比でζ相:δ1相=1:1となる線分を探しだし、この線分が含まれる直線をζ層(ζ層下部)とδ1層との境界と決定した。なお、ζ層とδ1層に互いにはみ出す部分は境界長さ100μmあたり合計で2個以上であった。
これらの手順で決定した境界により、「η層厚み」、「ζ層厚み」、「δ1層厚み」を測定した。
またζ層内のη相面積比率も断面写真から画像解析により測定した。
測定の結果、ζ層の層内剥離が生じにくいめっき層においては、ζ層を画定する上下の境界線(η層及びδ1層との境界線)の中央線の両側各25%の範囲、即ち、ζ層の全厚さの中央50%の領域において、η相が1〜10面積%含まれていることが判明した。
また、はみ出し個数は10個以上であれば、き裂伝播を安定して抑制することができる。
<めっき付着量測定>
フレア未加工部からサンプルを30mm×30mm切り出し、重量を測定した。重量測定後、剥離液(10%HCl+イビット700BK)にてめっき層を剥離した。めっき層剥離後、重量を再度測定し、減量からめっき付着量を算出した。
図2は、表1に示す酸洗を施した後、フラックス処理を行って、電解亜鉛溶融めっき浴により、めっき層を形成した試験片の断面図を示す。
<めっき密着性評価>
フレア加工機(日商テクノ製)により溶融亜鉛めっき鋼管の管端部を15mmフレア加工(鍔出し加工)した。フレア加工部の管外面側のめっき層剥離状態を目視、あるいはテーピング(JISZ1522に規定された粘着テープを使用し、テープを貼りつけない部分を30mm以上残して、フレア加工部に貼りつけ、めっき面に垂直になるように強く引っ張り、テープを瞬間的に引き剥がす)により確認し、以下に示す評点をつけた。○と△を合格とした。
○:めっき密着性良好(テーピングによってもめっきが剥離しない)
△:めっき密着性やや良(テーピングによって僅かに粉状めっき付着が認められる)
×:めっき密着不良(テーピングによりテープ側にめっきが付着する)
××:めっき剥離(目視でフレア加工部にめっき剥離が認められる)
本発明例ではめっき密着性がいずれも良好であった。一方、比較例においては、目視あるいはテーピングによってめっき剥離が認められ、埋設用途などの長期間にわたる耐腐食性は期待できない。
本発明によれば、埋設管等の耐腐食性を要求される厚肉溶融亜鉛めっき鋼管であって、曲げ加工やフレア加工を施しても、めっき層の剥離を生じない使い勝手の良い溶融亜鉛めっき鋼管が得られ、その製造に於いても、微量添加元素の管理等の必要がなく、産業上の利点は大きい。

Claims (7)

  1. 鋼管の表面に溶融亜鉛めっき層が形成された溶融亜鉛めっき鋼管であって、
    溶融亜鉛めっき層が表面側からη相が主体のη層、ζ相にη相が混入したζ層、及びδ1相が主体のδ1層からなり、
    前記η層とζ層の境界は、互いの領域にはみ出したη相とζ相の面積が等しくなる線分であり、
    前記めっき層断面におけるζ層の中心線の上下各ζ相層の全厚に対して25%の範囲、即ちζ相層の全厚さの中央50%の範囲におけるη相の面積比が1〜10面積%であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管。
  2. 前記η層とζ層の境界で互いにはみ出す部分が境界長さ100μmあたり合計で10個以上であることを特徴とする請求項1記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  3. 前記溶融亜鉛めっき層における、
    前記ζ層とδ1層の境界は、互いの領域にはみ出したζ相とδ1相の面積が等しくなる線分であり、
    前記境界で互いにはみ出す部分が境界長さ100μmあたり合計で2個以上であり、
    δ1層の最大厚さがδ1層の平均厚さの1.5倍以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  4. 前記溶融亜鉛めっき層のうち、前記鋼管表面との界面に形成されるδ1層と、前記ζ層の厚さの比率:(ζ層)/(δ1層)が2.0以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  5. 前記厚さの比率:(ζ層)/(δ1層)が5.0以上であることを特徴とする請求項4に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  6. 前記溶融亜鉛めっき層におけるめっき付着量が片面当り550g/m2以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  7. 前記溶融亜鉛めっき鋼管の組成が、質量%で、
    C:0.005以上0.15%以下、
    Si:0.15%以上0.25%以下、
    Mn:0.20%以上1.60%以下、
    P :0.04%以下、
    S :0.04%以下であって、
    残部がFe及び不可避不純物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
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