以下に添付図面を参照して、画像形成装置、距離算出方法、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態では、画像形成装置の一例として、被搬送物の一例である記録媒体に記録ヘッドからインクを吐出して画像を形成するインクジェットプリンタを例示する。この画像形成装置は、記録媒体に形成したテストパターンを撮像し、その撮像画像を用いてインクの着弾位置ずれが生じている場合に位置ずれ量に相当する距離を算出する機能を有し、この位置ずれ量に基づいて記録ヘッドの傾きが調整される。ただし、本発明の適用例は以下で説明する実施形態に限らない。本発明は、テストパターンを撮像し、その撮像画像を用いて位置ずれ量に相当する距離を算出する様々なタイプの画像形成装置に対して広く適用できる。また、以下の実施形態では、被搬送物として記録媒体を例に挙げて説明するが、画像が形成される対象となる被搬送物であればいずれでもよい。
(第1の実施形態)
<画像形成装置の機械的構成>
まず、図を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の機械的な構成例について説明する。図1は、第1の実施形態の画像形成装置の内部を透視して示す斜視図である。図2は、第1の実施形態の画像形成装置の内部の機械的構成を示す上面図である。図3は、キャリッジの説明図である。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動するキャリッジ5を備える。キャリッジ5は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより、主走査方向に往復移動する。キャリッジ5の移動量や移動速度は、例えば図2に示すように、キャリッジ5に設けられた主走査エンコーダセンサ131がエンコーダシート14のマークを検知して出力するエンコーダ値に基づいて制御される。
キャリッジ5には、図3に示すように、記録ヘッド6A、6B、6Cが搭載されている。記録ヘッド6Aは、イエロー(Y)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Ay、シアン(C)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Ac、マゼンタ(M)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Am、およびブラック(K)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Akが、一列ずつ並んでいる。同様に、記録ヘッド6Bは、ノズル列6By、6Bc、6Bm、6Bk、記録ヘッド6Cは、ノズル列6Cy、6Cc、6Cm、6Ckが並んでいる。以下、これらの記録ヘッド6A、6B、6Cを総称して記録ヘッド6と表記する。記録ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(記録媒体P側)に向くように、キャリッジ5に支持されている。
記録ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と記録ヘッド6はパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から記録ヘッド6に対してインクが供給される。
記録ヘッド6の吐出面と対向する位置には、図2に示すように、プラテン16が設けられている。プラテン16は、記録ヘッド6から記録媒体P上にインクを吐出する際に、記録媒体Pを支持するためのものである。プラテン16には、厚み方向に貫通する貫通孔が多数設けられ、個々の貫通孔を取り囲むようにリブ状の突起が形成されている。そして、プラテン16の記録媒体Pを支持する面とは逆側に設けられた吸引ファンを作動させることで、プラテン16上から記録媒体Pが脱落することを抑制する構成となっている。記録媒体Pは、後述の副走査モータ12(図13参照)によって駆動される搬送ローラにより挟持され、プラテン16上を、副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送される。
記録ヘッド6には、上述したように、副走査方向に並ぶように形成された多数のノズルが設けられている。本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Pを副走査方向に間欠的に搬送し、記録媒体Pの搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に往復移動させながら、画像データに応じて記録ヘッド6のノズルを選択的に駆動し、記録ヘッド6からプラテン16上の記録媒体P上にインクを吐出して、記録媒体Pに画像を記録する。
また、本実施形態の画像形成装置100は、記録ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構15を備える。維持機構15は、記録ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、記録ヘッド6からの不要なインクの排出などを行う。
また、キャリッジ5には、図3に示すように、記録媒体P上に形成された後述のテストパターンTP(図16参照)を撮像するための撮像部20が搭載されている。撮像部20の詳細は後述する。
本実施形態の画像形成装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体1の内部に配置されている。外装体1にはカバー部材2が開閉可能に設けられている。画像形成装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができる。
図3で示した撮像部20には、テストパターンTPと同時に撮像される基準チャートを有するものと、有していないものがある。基準チャートとは、例えば、各基準パッチ(図9参照)のRGB値を用いてテストパターンTPの測色値を算出するものである。
<撮像部の具体例1>
まず、基準チャートを有する撮像部20の具体例について説明する。図4は、撮像部の外観を示す斜視図である。図5は、撮像部の分解斜視図である。図6は、図4中のX1方向から見た撮像部の縦断面図である。図7は、図4中のX2方向から見た撮像部の縦断面図である。図8は、撮像部の平面視図である。
撮像部20は、例えば矩形の箱状に形成された筐体51を備える。筐体51は、例えば、所定の間隔を空けて対向する底板部51aおよび天板部51bと、これら底板部51aと天板部51bとを繋ぐ側壁部51c、51d、51e、51fを有する。筐体51の底板部51aと側壁部51d、51e、51fは、例えばモールド成形により一体に形成され、これに対して天板部51bと側壁部51cとが着脱可能な構成とされる。図5では天板部51bと側壁部51cとを取り外した状態を示している。
撮像部20は、例えば筐体51の一部が所定の支持部材に支持された状態で、テストパターンTPが形成された記録媒体Pの搬送経路に設置される。このとき、撮像部20は、図6および図7に示すように、搬送される記録媒体Pに対して筐体51の底板部51aが間隙dを介して略平行な状態で対向するように、所定の支持部材に支持される。
テストパターンTPが形成された記録媒体Pと対向する筐体51の底板部51aには、筐体51の外部のテストパターンTPを筐体51の内部から撮像可能にするための開口部53が設けられている。
また、筐体51の底板部51aの内面側には、支え部材63を介して開口部53と隣り合うようにして、基準チャート300が配置されている。基準チャート300は、テストパターンTPの測色やRGB値の取得を行う際に、後述のセンサ部26によりテストパターンTPとともに撮像されるものである。なお、基準チャート300の詳細については後述する。
一方、筐体51内部の天板部51b側には、回路基板54が配置されている。図8に示すように、回路基板54には、回路基板54側の面が開放されている四角の箱形状の筐体51が、締結部材54bによって固定されている。なお、筐体51は、四角の箱形状に限るものではなく、例えば、開口部53が形成されている底板部51aを有する円筒の箱形状や楕円筒の箱形状等であってもよい。
また、筐体51の天板部51bと回路基板54との間には、画像を撮像するセンサ部26が配置されている。センサ部26は、図6に示すように、CCD(Charge Coupled Device )センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの二次元センサ27と、センサ部26の撮像範囲の光学像を二次元センサ27の受光面(撮像領域)に結像する結像レンズ28とを備える。二次元センサ27は、被写体からの反射光を受光する受光素子が二次元に並ぶ受光素子アレイである。
センサ部26は、例えば、筐体51の側壁部51eと一体に形成されたセンサホルダ56により保持される。センサホルダ56には、回路基板54に形成された貫通孔54aと対向する位置にリング部56aが設けられている。リング部56aは、センサ部26の結像レンズ28側の突出した部分の外形形状に倣った大きさの貫通孔を有する。センサ部26は、結像レンズ28側の突出した部分をセンサホルダ56のリング部56aに挿通することで、結像レンズ28が回路基板54の貫通孔54aを介して筐体51の底板部51a側を臨むようにして、センサホルダ56により保持される。
このとき、センサ部26は、図6中の一点鎖線で示す光軸が筐体51の底板部51aに対して略垂直となり、且つ、開口部53と後述の基準チャート300とが撮像範囲に含まれるように、センサホルダ56により位置決めされた状態で保持される。これにより、センサ部26は、二次元センサ27の撮像領域の一部で、筐体51外部のテストパターンTPを、開口部53を介して撮像する。加えて、センサ部26は、二次元センサ27の撮像領域の他の一部で、筐体51の内部に配置された基準チャート300を撮像することができる。
なお、センサ部26は、各種の電子部品が実装される回路基板54に対して、例えばフレキシブルケーブルを介して電気的に接続される。また、回路基板54には、画像形成装置100のメイン制御基板に対して撮像部20を接続するための接続ケーブルが装着される外部接続コネクタ57が設けられている。
撮像部20には、センサ部26の中心を通る副走査方向の中心線OA上であって、センサ部26の中心からそれぞれ副走査方向に所定量だけ等間隔で離れた位置の回路基板54に、一対の光源58が配設されている。光源58は、センサ部26による撮像時にその撮像範囲を略均一に照明する。光源58としては、例えば省スペース/省電力に有利なLED(Light Emitting Diode)が用いられる。
本実施形態においては、図7や図8に示すように、結像レンズ28の中心を基準として、開口部53と基準チャート300が並ぶ方向と直交する方向に均等に配置された一対のLEDを光源58として用いている。
光源58として用いる2つのLEDは、例えば回路基板54の底板部51a側の面に実装される。ただし、光源58は、センサ部26の撮像範囲を拡散光により略均一に照明できる位置に配置されればよく、必ずしも回路基板54に直接実装されていなくてもよい。また、2つのLEDの位置は、二次元センサ27を中心として対称位置に配置することにより、基準チャート300側と同一照明条件での撮像面の撮像を可能にしている。また、本実施形態では、光源58としてLEDを用いたが、光源58の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、有機ELなどを光源58として用いるようにしてもよい。有機ELを光源58として用いた場合は、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
また、図8に示すように、センサ部26は、光源58と二次元センサ27の直下に、光吸収体55cを備えている。光吸収体55cは、光源58からの光を二次元センサ27以外の方向に反射または吸収する。光吸収体55cは、鋭角な形状で、光源58からの入射光が、光吸収体55c内面へ反射するように形成されており、入射方向へは反射しない構造になっている。
また、筐体51の内部には、センサ部26と該センサ部26により開口部53を介して撮像される筐体51外部のテストパターンTPとの間の光路中に、光路長変更部材59が配置されている。光路長変更部材59は、光源58の光に対して十分な透過率を有する屈折率nの光学素子である。光路長変更部材59は、筐体51外部のテストパターンTPの光学像の結像面を筐体51内部の基準チャート300の光学像の結像面に近づける機能を持つ。つまり、この撮像部20では、センサ部26と筐体51外部の被写体との間の光路中に光路長変更部材59を配置することによって光路長を変更する。これにより、撮像部20は、筐体51外部のテストパターンTPの光学像の結像面と、筐体51内部の基準チャート300の結像面とを、ともにセンサ部26の二次元センサ27の受光面に合わせるようにしている。したがって、センサ部26は、筐体51外部のテストパターンTPと筐体51内部の基準チャート300との双方にピントの合った画像を撮像することができる。
光路長変更部材59は、例えば図6に示すように、一対のリブ60、61によって、底板部51a側の面の両端部が支持されている。また、光路長変更部材59の天板部51b側の面と回路基板54との間に押さえ部材62が配置されることで、光路長変更部材59が筐体51内部で動かないようになっている。光路長変更部材59は、筐体51の底板部51aに設けられた開口部53を塞ぐように配置される。そのため、光路長変更部材59は、筐体51外部から開口部53を介して筐体51内部に進入するインクミストや塵埃などの不純物が、センサ部26や光源58、基準チャート300などに付着するのを防止する機能も有することになる。
なお、以上説明した撮像部20の機械的な構成はあくまで一例であり、これに限らない。撮像部20は、少なくとも、筐体51内部に設けられた光源58が点灯している間に、筐体51内部に設けられたセンサ部26により、筐体51外部のテストパターンTPを開口部53を介して撮像する構成であればよい。撮像部20は、上記の構成に対して様々な変形や変更が可能である。
例えば、上述した撮像部20では、筐体51の底板部51aの内面側に基準チャート300を配置している。しかしながら、筐体51の底板部51aの基準チャート300が配置される位置に開口部53とは別の開口部を設けるとともに、この開口部が設けられた位置に筐体51の外側から基準チャート300を取り付ける構成であってもよい。この場合、センサ部26は、開口部53を介して記録媒体Pに形成されたテストパターンTPを撮像するとともに、開口部53とは別の開口部を介して、筐体51の底板部51aに外側から取り付けられた基準チャート300を撮像することになる。この例では、基準チャート300に汚れなどの不良が生じた場合に、交換を容易に行える利点がある。
次に、図9を参照しながら、撮像部20の筐体51に配置される基準チャート300の具体例について説明する。図9は、基準チャートの具体例を示す図である。
図9に示す基準チャート300は、測色用の測色パッチを配列した複数の測色パッチ列310〜340、距離計測用ライン350、およびチャート位置特定用マーカ360を有する。
測色パッチ列310〜340は、YMCKの1次色の測色パッチを階調順に配列した測色パッチ列310と、RGBの2次色の測色パッチを階調順に配列した測色パッチ列320と、グレースケールの測色パッチを階調順に配列した測色パッチ列(無彩色の階調パターン)330と、3次色の測色パッチを配列した測色パッチ列340と、を含む。
距離計測用ライン350は、複数の測色パッチ列310〜340を囲む矩形の枠として形成されている。チャート位置特定用マーカ360は、距離計測用ライン350の四隅の位置に設けられていて、各測色パッチの位置を特定するためのマーカとして機能する。センサ部26により撮像される基準チャート300の画像から、距離計測用ライン350とその四隅のチャート位置特定用マーカ360を特定することで、基準チャート300の位置および各測色パッチの位置を特定することができる。
測色用の測色パッチ列310〜340を構成する各測色パッチは、センサ部26の撮像条件を反映した色味の基準として用いられる。なお、基準チャート300に配置されている測色用の測色パッチ列310〜340の構成は、図9に示す例に限定されるものではなく、任意の測色パッチ列を適用することが可能である。例えば、可能な限り色範囲が広く特定できる測色パッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の測色パッチ列310や、グレースケールの測色パッチ列330は、画像形成装置100に使用される色材の測色値のパッチで構成されていてもよい。また、RGBの2次色の測色パッチ列320は、画像形成装置100で使用される色材で発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Colorなどの測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の測色パッチ列310〜340を有する基準チャート300を用いているが、基準チャート300は、必ずしもこのような測色パッチ列310〜340を有する形態でなくてもよい。基準チャート300は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
基準チャート300は、上述したように、筐体51の底板部51aの内面側に開口部53と隣り合うように配置されているため、センサ部26によって、筐体51外部のテストパターンTPと同時に撮像することができる。なお、ここでの同時に撮像とは、筐体51外部のテストパターンTPと基準チャート300とを含む1フレームの画像データを取得することを意味する。つまり、画素ごとのデータ取得に時間差があっても、筐体51外部のテストパターンTPと基準チャート300とが1フレーム内に含まれる画像データを取得すれば、筐体51外部のテストパターンTPと基準チャート300とを同時に撮像したことになる。
<撮像部の具体例2>
次に、基準チャート300を有していない撮像部20の具体例について説明する。以下では、図10、11を参照しながら、撮像部20の具体例について詳細に説明する。図10は、撮像部の縦断面図である。図11は、図10の撮像部をX2方向から見た平面図である。
図10に示すように、撮像部20は、キャリッジ5に固定されている基板41上に、光源42とセンサ部26が搭載されている。
光源42としては、例えば、LEDが用いられており、被写体である記録媒体Pに形成されたテストパターンTPに照明光を照射して、その反射光(乱反射光または正反射光)がセンサ部26に入射される。光源42は、図11に示すように、記録媒体Pに形成されるテストパターンTPを取り囲むように4つ配置されており、テストパターンTPに均一な照明光を照射する。
センサ部26は、CCDセンサやCMOSセンサなどの二次元センサ27と、結像レンズ28とを備えている。センサ部26は、光源42からテストパターンTPに出射された照明光の反射光を、結像レンズ28を通して二次元センサ27に入射させる。二次元センサ27は、入射された光を光電変換によりアナログ信号に変換し、テストパターンTPの撮像画像として出力する。
<記録ヘッドの駆動ノズル数>
次に、記録ヘッド6のノズル数について説明する。図3に示したように、本実施形態の記録ヘッド6A、6B、6Cは、それぞれ、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびブラック(K)のインク滴を吐出するノズルが一列ずつ並んでいる。
ここで、液滴吐出特性として、駆動ノズル数とインクの液滴吐出速度との関係について説明する。図12は、記録ヘッドの液滴吐出特性の説明図である。駆動ノズル数とは、同一記録ヘッド6内の同時にインク滴を吐出するノズルの数のことをいう。駆動ノズル数に応じて、液滴吐出速度(Vj)は大きく変動する。変動する理由には、構造的な要因と電気的な要因がある。
構造的な要因として、ピエゾ(圧電素子)アクチュエータ方式の記録ヘッド6の場合の1例を挙げる。ピエゾアクチュエータ方式では、ピエゾに駆動波形を印加して圧電素子を変異させることで、加圧室内のインクを加圧し、ノズルからインク滴を吐出する。この時、駆動するノズルの数によって加圧室内のインクへ加わる圧力が変化し、液滴吐出速度(Vj)が変化する。サーマル方式のインクジェット記録装置であっても、加圧室内でバブルを発生させてインクを加圧するので、同様の現象が起こる。
電気的な要因としては、記録ヘッド6は、駆動ノズル数および配線長によって、キャパシタンス、インダクタンスが変化するような振る舞いをする。この変化によって駆動波形生成回路から出力される波形に変動が生じ、液滴吐出速度(Vj)に影響することになる。
駆動ノズル数によって、どちらの要因の影響が支配的なのかが異なる。駆動ノズル数がn1付近は、構造的な要因による影響が大きい。一方、駆動ノズル数がn2を超えると、電気的な要因による影響が大きい。電気的な要因による液滴吐出速度(Vj)変動のばらつきは、回路定数の調整などで比較的容易に小さくすることが可能だが、構造的な要因によるばらつきを小さくすることは難しい。
図12で示したように、駆動ノズル数が大きい方が液滴吐出速度(Vj)が安定する。従って、本実施形態の記録ヘッド6の各色のノズル数は、n2以上とすることが望ましい。
<画像形成装置のハードウェア構成>
次に、図13を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100のハードウェア構成について説明する。図13は、第1の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成図である。
本実施形態の画像形成装置100は、図13に示すように、CPU110、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、制御用FPGA(Field-Programmable Gate Array)120、記録ヘッド6、主走査エンコーダセンサ131、撮像部20、主走査モータ8、および搬送部150を備えている。
CPU110、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、および制御用FPGA120は、メイン制御基板130に搭載されている。また、記録ヘッド6、主走査エンコーダセンサ131、および撮像部20は、上述したようにキャリッジ5に搭載されている。また、副走査エンコーダセンサ132、搬送ローラ152、および副走査モータ12は、上述した搬送部150に搭載されている。
CPU110は、画像形成装置100の全体の制御を司る。例えば、CPU110は、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置100における各種動作を制御するための制御指令を出力する。特に、本実施形態の画像形成装置100では、テストパターンTPを形成する機能や距離を算出する機能、距離に基づいて位置ずれ量を算出する機能、記録ヘッド6の傾き量(傾き角度)を算出する機能などを、このCPU110により実現する。なお、これらの機能の詳細については後述する。
記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106は、それぞれ、記録ヘッド6、主走査モータ8、副走査モータ12を駆動するためのドライバである。
制御用FPGA120は、CPU110と連携して画像形成装置100における各種動作を制御する。制御用FPGA120は、機能的な構成要素として、例えば、CPU制御部121、メモリ制御部122、インク吐出制御部123、センサ制御部124、およびモータ制御部125を備える。
CPU制御部121は、CPU110と通信を行って、制御用FPGA120が取得した各種情報をCPU110に伝えるとともに、CPU110から出力された制御指令を入力する。
メモリ制御部122は、CPU110がROM102やRAM103にアクセスするためのメモリ制御を行う。
インク吐出制御部123は、CPU110からの制御指令に応じて記録ヘッドドライバ104の動作を制御することにより、記録ヘッドドライバ104により駆動される記録ヘッド6からのインクの吐出タイミングを制御する。
センサ制御部124は、主走査エンコーダセンサ131および副走査エンコーダセンサ132から出力されるエンコーダ値などのセンサ信号に対する処理を行う。例えばセンサ制御部124は、主走査エンコーダセンサ131から出力されるエンコーダ値に基づいて、キャリッジ5の位置、移動速度、移動方向などを計算する処理を実行する。また、例えばセンサ制御部124は、副走査エンコーダセンサ132から出力されるエンコーダ値に基づいて、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ152の回転速度や回転方向などを計算する処理を実行する。
モータ制御部125は、CPU110からの制御指令に応じて主走査ドライバ105の動作を制御することにより、主走査ドライバ105により駆動される主走査モータ8を制御して、キャリッジ5の主走査方向への移動を制御する。また、モータ制御部125は、CPU110からの制御指令に応じて副走査ドライバ106の動作を制御することにより、副走査ドライバ106により駆動される副走査モータ12を制御して、搬送ローラ152による記録媒体Pの副走査方向への移動(搬送)を制御する。
なお、以上の各部は、制御用FPGA120により実現する制御機能の一例であり、これら以外にも様々な制御機能を制御用FPGA120により実現する構成としてもよい。また、上記の制御機能の全部または一部を、CPU110または他の汎用のCPUにより実行されるプログラムによって実現する構成であってもよい。また、上記の制御機能の一部を、制御用FPGA120とは異なる他のFPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現する構成であってもよい。
記録ヘッド6は、インクを吐出して画像を形成する複数のノズルを有し(図3参照)、CPU110および制御用FPGA120により動作制御される記録ヘッドドライバ104により駆動され、プラテン16上の記録媒体Pにインクを吐出して画像を形成する。
主走査エンコーダセンサ131は、エンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値を制御用FPGA120に出力する。このエンコーダ値は、制御用FPGA120のセンサ制御部124において、キャリッジ5の位置、移動速度および移動方向を計算するために用いられる。センサ制御部124がエンコーダ値から計算したキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向は、CPU110に送られる。CPU110は、このキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向に基づき、主走査モータ8を制御するための制御指令を生成してモータ制御部125に出力する。
撮像部20は、CPU110による制御のもとで記録媒体P上に形成されたテストパターンTPを撮像し、撮像画像に対して各種処理を行うものであって、二次元センサ用CPU140、および二次元センサ27を備えている。
二次元センサ27は、上述したように、CCDセンサまたはCMOSセンサなどであって、二次元センサ用CPU140から送られた各種設定信号に基づく所定の動作条件によって、テストパターンTPを撮像する。そして、二次元センサ27は、撮像した撮像画像を二次元センサ用CPU140に送る。
二次元センサ用CPU140は、二次元センサ27の制御や二次元センサ27により撮像された撮像画像に対する処理を行う。具体的には、二次元センサ用CPU140は、撮像部20に各種設定信号を送ることにより、二次元センサ27の各種動作条件の設定を行う。また、二次元センサ用CPU140は、テストパターンTPを撮像した撮像画像からテストパターンTPのマーカを検出する機能や、撮像画像における距離と実距離との比率を算出する機能を実現する。なお、これらの機能の詳細については後述する。
また、撮像部20には、RAMやROMが備えられ、二次元センサ用CPU140は、例えば、RAMを作業領域として利用して、ROMに格納された各種の制御プログラムを実行し、撮像部20における各種動作を制御するための制御指令を出力する。また、二次元センサ用CPU140は、二次元センサ27の光電変換により得られたアナログ信号をデジタルの画像データにAD変換し、その画像データに対してシェーディング補正やホワイトバランス補正、γ補正、画像データのフォーマット変換などの各種の画像処理を行う機能を内蔵している。なお、撮像画像に対する各種の画像処理は、その一部あるいは全部を撮像部20の外部で行うように構成してもよい。
副走査エンコーダセンサ132は、エンコーダを読み取って得られるエンコーダ値を制御用FPGA120に出力する。このエンコーダ値は、制御用FPGA120のセンサ制御部124において、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ152の回転速度および回転方向を計算するために用いられる。センサ制御部124がエンコーダ値から計算した搬送ローラ152の回転速度および回転方向は、CPU110に送られる。CPU110は、この搬送ローラ152の回転速度および回転方向に基づき、副走査モータ12を制御するための制御指令を生成してモータ制御部125に出力する。
搬送ローラ152は、モータ制御部125から受け取った制御指令に基づく回転速度および回転方向で回転することにより記録媒体Pを所定の搬送量で搬送する。
本実施形態の画像形成装置100では、上述のCPU110および制御用FPGA120によって制御される記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105および副走査ドライバ106と、これらにより駆動される記録ヘッド6、主走査モータ8および副走査モータ12により、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部が構成される。
図13では、二次元センサ用CPU140および撮像部20がキャリッジ5に搭載された構成となっていたが、二次元センサ用CPU140および撮像部20は、記録媒体P上に形成されたテストパターンTPを適切に撮像できるように配置されていればよく、必ずしもキャリッジ5に搭載されていなくてもよい。
<画像形成装置の機能構成>
次に、図14を参照しながら、画像形成装置100のCPU110および二次元センサ用CPU140により実現される特徴的な機能について説明する。図14は、第1の実施形態の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
CPU110は、例えば、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された制御プログラムを実行することにより、パターン形成部111、実距離算出部114、傾き量算出部115、調整部116、および搬送制御部117などの機能を実現する。また、撮像部20の二次元センサ用CPU140は、例えばRAMを作業領域として利用して、ROMに格納された制御プログラムを実現することにより、位置検出部142、および比率算出部143などの機能を実現する。
CPU110の搬送制御部117は、記録媒体Pを搬送する搬送部150の搬送ローラ152を制御する。例えば、搬送制御部117は、副走査エンコーダセンサ132から出力されるエンコーダ値に基づいて搬送ローラ152の回転速度や回転方向などを決定し、当該回転速度や回転方向を示す制御指令を、制御用FPGA120を介して副走査モータ12に送出することで、当該制御指令により副走査モータ12が搬送ローラ152による記録媒体Pの搬送を制御する。
CPU110のパターン形成部111は、例えばROM102などに予め格納されたパターンデータを読み込み、このパターンデータに応じた画像形成動作を上述した画像形成部に行わせることにより、記録媒体P上にテストパターンTPを形成する。パターン形成部111により記録媒体P上に形成されたテストパターンTPは、撮像部20により撮像される。
本実施形態のテストパターンTPは、少なくとも第1マーカM1と一対の第2マーカM2a、M2bとを含むマーカのセットである。テストパターンTPの詳細は後述する(図15参照)。パターン形成部111は、画像形成部を用いて、記録媒体Pに第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bのいずれか一方を形成し、記録媒体Pが所定の搬送量L1で搬送された後、搬送前に形成していない第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bのいずれか一方を形成する。本実施形態では、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6AによりテストパターンTPを形成する例を示すが、他の記録ヘッドによりテストパターンTPを形成する構成としてもよい。
本実施形態では、パターン形成部111は、記録媒体Pに第1マーカM1を形成し、記録媒体Pが所定の搬送量L1で搬送された後に一対の第2マーカM2a、M2bを形成する例を挙げて説明する。なお、上述したように順序はどちらでもよく、パターン形成部111は、記録媒体Pに一対の第2マーカM2a、M2bを形成し、記録媒体Pが所定の搬送量L1で搬送された後に第1マーカM1を形成してもよい。
ここで、テストパターンTPについて説明する。図15は、記録媒体に形成されたテストパターンの一例を示す図である。図15(a)(b)に示すように、テストパターンTPは、少なくとも第1マーカM1と一対の第2マーカM2a、M2bとを含むマーカのセットである。本実施形態のテストパターンTPは、主走査方向に並べて形成されるもの(図15(a))と、副走査方向に並べて形成されるもの(図15(b))とを用いる。
図15(a)に示すテストパターンTPは、一対の第2マーカM2a、M2bの間に第1マーカM1が配置されている。また、第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bは、ドットで形成され、キャリッジ5の移動方向である主走査方向(図中矢印A方向)に並べて形成される。これにより、主走査方向の位置ずれ量を検出することができる。図15(a)のテストパターンTPが第1テストパターンの一例である。
図15(b)に示すテストパターンTPは、一対の第2マーカM2a、M2bの間に第1マーカM1が配置されている。また、第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bは、ドットで形成され、記録媒体Pの搬送方向である副走査方向(図中矢印B方向)に並べて形成される。これにより、副走査方向の位置ずれ量を検出することができる。図15(b)のテストパターンTPが第2テストパターンの一例である。
次に、図15(a)に示すテストパターンTPの形成方法について説明する。図16は、図15(a)に示すテストパターンの形成方法の説明図である。まず、パターン形成部111は、図16(a)に示すように、記録ヘッド6Aの上流側のノズルで記録媒体Pに第1マーカM1を形成する。次に、図16(b)に示すように、搬送制御部117は、搬送ローラ152により記録媒体Pを副走査方向(図中矢印B方向)に所定の搬送量L1(実搬送量L1)を搬送する。そして、パターン形成部111は、図16(c)に示すように、実搬送量L1の搬送後に記録ヘッド6Aの下流側のノズルで第2マーカM2a、M2bを形成する。
この一対の第2マーカM2a、M2bを形成した下流側のノズルは、第1マーカM1を形成した上流側のノズルと同じ列にあって、当該上流側のノズルから所定の距離L離れた位置のノズル(指定ノズル)である。そして、一対の第2マーカM2a、M2bは、下流側の指定ノズルにより、第1マーカM1の形成位置に対して主走査方向両側に距離eずつ離れた位置(等距離の位置)に形成される。
従って、記録ヘッド6Aが傾いておらず、記録媒体Pのスキューや搬送量の誤差等がない場合、一対の第2マーカM2a、M2b間における中間に第1マーカM1が形成されたテストパターンTPが形成されることになる。一方、記録ヘッド6Aが傾いていたり、記録媒体Pのスキューや搬送量の誤差等がある場合、例えば、一対の第2マーカM2a、M2b間であっても、いずれかの第2マーカに近い位置に第1マーカM1が形成されたテストパターンTPが形成される。そして、このテストパターンTPを撮影し、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の相対的な位置関係を算出することで、主走査方向の位置ずれ量を求めていく。
次に、図15(b)に示すテストパターンTPの形成方法について説明する。図17は、図15(b)に示すテストパターンの形成方法の説明図である。図17では、図15(b)に示すテストパターンTPを、主走査方向(図中矢印A方向)に並べて2つ形成する例を示す。まず、パターン形成部111は、図17(a)に示すように、記録ヘッド6Aの上流側のノズルで記録媒体Pに第1マーカM1、および第1マーカM1から主走査方向に距離W離れた位置に第1マーカM1’を形成する。そして、搬送制御部117は、搬送ローラ152により記録媒体Pを副走査方向(図中矢印B方向)に所定の搬送量L1(実搬送量L1)を搬送する。
そして、図17(b)に示すように、パターン形成部111は、実搬送量L1の搬送後に記録ヘッド6Aの下流側のノズルで記録媒体Pに第2マーカM2a、M2b、M2a’M2b’を形成する。この一対の第2マーカM2a、M2bは、第1マーカM1を形成したノズルから所定の距離L離れた位置のノズルを基準として、副走査方向の前後両側に距離fずつ離れた位置(等距離の位置)にある2つのノズルにより形成される。同様に、一対の第2マーカM2a’、M2b’も当該2つのノズルにより形成される。
また、一対の第2マーカM2a、M2bと一対の第2マーカM2a’、M2b’とは、それぞれ主走査方向に距離W離れた位置に形成される。なお、以下では、この基準とするノズルを基準ノズルと称し、基準ノズルから副走査方向の前後に距離fずつ離れた2つのノズルを指定ノズルと称する場合がある。また、上流側のノズルから下流側の基準ノズルまでの所定の距離Lは、理想の搬送量L0である。
従って、実際に搬送した実搬送量L1と理想の搬送量L0が同じであったり、記録ヘッド6Aが傾いておらず、記録媒体Pのスキューや搬送量の誤差等がない場合、一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’M2b’の副走査方向における中間に、それぞれ第1マーカM1、M1’が形成される。一方、実搬送量L1と理想の搬送量L0が異なっていたり、記録媒体Pのスキューや搬送量の誤差等がある場合、例えば、一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’M2b’の間であっても、いずれかのマーカに近い位置にそれぞれ第1マーカM1、M1’が形成される。そして、このテストパターンTPを撮影し、第1マーカM1、M1’と一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’M2b’それぞれの相対的な位置関係を算出することで、副走査方向の位置ずれ量を求めていく。
ここで、図16に示すテストパターンTPは、第1マーカM1を所定の搬送量L1(実搬送量L1)の搬送前に形成し、所定の搬送量L1の搬送後に一対の第2マーカM2a、M2bを形成する構成であればよく、第1マーカM1と一対の第2マーカM2a、M2bの位置関係は任意に設定できる。また、テストパターンTPに含まれる第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれを形成する位置やタイミング(このタイミングによりキャリッジ5の往路移動時に形成するか復路移動時に形成するかが決まる)は、上記のパターンデータによって示されている。図17に示すテストパターンTPも同様である。
図14に戻り、二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、撮像部20により撮像された撮像画像に対して2値化処理などの所定の処理を施すことによって、撮像画像からテストパターンTPを検出する。すなわち、位置検出部142は、図16に示すテストパターンTPを撮像した撮像画像から、第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bを各々検出する。また、位置検出部142は、図17に示すテストパターンTPを撮像した撮像画像から、第1マーカM1、M1’および一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’を各々検出する。
二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、図16、17に示すテストパターンTPの撮像画像における第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bの位置に基づいて、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量との比率(第1比率に相当)を算出する。さらに、図17に示すテストパターンTPでは、さらに、第1マーカM1'、一対の第2マーカM2a’、M2b'についても同様に比率を算出する。
具体的に、図18を参照して、当該比率の算出方法を説明する。図18は、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と第1マーカM1の位置ずれ量との比率の算出方法の説明図である。図18に示すように、比率算出部143は、検出された一対の第2マーカM2a、M2bの位置から撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2bの距離2Dを求める。そして、検出された第1マーカM1の位置と、第1マーカM1の理想位置との差分により、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量sを求める。ここで、第1マーカM1の理想位置とは、本実施形態では一対の第2マーカM2a、M2b間の中間に相当する位置、すなわち第2マーカM2aおよび第2マーカM2bのそれぞれの位置から、一対の第2マーカM2a、M2b間の距離の1/2の距離にある位置である。図18では、第2マーカM2aおよび第2マーカM2bそれぞれの位置から等距離Dにある位置(図18における点線の位置)である。そして、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量sを、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離2Dで除算することで比率を算出する。図18では、図16で形成されたテストパターンTPでの比率算出方法を示したが、図17で形成されたテストパターンTPに対する比率の算出方法も同様である。比率算出部143により算出された上記の比率は、実距離算出部114に渡される。
なお、本実施形態では、第1マーカM1の理想位置が一対の第2マーカM2a、M2bの中間位置である例を説明するが、一対の第2マーカM2a、M2bの中間位置でなくてもよい。すなわち、第1マーカM1が一対の第2マーカM2a、M2bと共に撮像可能であって、予め定められた位置に形成されるのであれば、第1マーカM1の理想位置は、一対の第2マーカM2a、M2bのいずれか一方に近い位置でもよいし、一対の第2マーカM2a、M2bの間でなくてもよい。
ここで、図16に例示したテストパターンTPを記録媒体Pに形成した際に、第1マーカM1と一対の第2マーカM2a、M2bとの間に相対的な位置ずれが生じた場合について考える。図19は、テストパターンに含まれる第1マーカM1と一対の第2マーカM2a、M2bとの間に相対的な位置ずれが生じた例を説明する図である。
図16に例示したテストパターンTPは、上述したように、一対の第2マーカM2a、M2b間の中間に相当する位置(理想位置)に第1マーカM1が形成されるはずであるが、記録媒体Pの搬送量の変動に起因するインクの着弾位置ずれによって、図19に示すように、第1マーカM1が第2マーカM2aに近い位置に形成されたとする。このときの撮像画像上における第1マーカM1と第2マーカM2bとの間の距離をaとし、撮像画像上における第1マーカM1と第2マーカM2aとの間の距離をbとする。
一対の第2マーカM2a、M2bと第1マーカM1との間に相対的な位置ずれが生じた場合であっても、一対の第2マーカM2a、M2bは同じ条件(搬送量が同じ)で形成されるため、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に変動はない。つまり、図19における距離a+b(一対の第2マーカM2a、M2b間の距離)に対応する実距離は、一対の第2マーカM2a、M2bと第1マーカM1との間に相対的な位置ずれが生じても変動しない。
図20は、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量を説明する図である。図20では、一対の第2マーカM2a、M2b間の中点を原点とし、実距離を横軸、撮像画像上の距離を縦軸とする座標上で、一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置をプロットしたものである。この図20の例では、一対の第2マーカM2a、M2bと第1マーカM1との間に、図19のような相対的な位置ずれが生じているものとしている。
図20において、プロットされた一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置を結ぶ直線の傾きが、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離との比率に相当する。つまり、この直線の傾きが、撮像画像における距離と実距離との比率(画像倍率)を表している。また、一対の第2マーカM2a、M2bと第1マーカM1との間に相対的な位置ずれが生じていない場合の第1マーカM1の位置は原点となるので、プロットされた一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置を結ぶ直線と横軸との交点と、原点との間の距離sが、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量である。
上記の撮像画像における距離と実距離との比率(画像倍率)は、撮像部20とテストパターンTPとの間の距離の変動により変化する。本実施形態の画像形成装置100は、上述したように、リブ状の突起が形成された凹凸形状を有するプラテン16上に、テストパターンTPが形成された記録媒体Pを支持する構成であるため、プラテン16の凹凸形状の影響により撮像部20とテストパターンTPとの間の距離が変動し、この比率が変化することがある。
図21は、撮像部とテストパターンとの間の距離が変動した場合の一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量を説明する図である。撮像部20とテストパターンTPとの距離が小さくなると、撮像画像上における第2マーカM2bと第1マーカM1との間の距離は、図19に示したaよりも大きい値のa’となり、撮像画像上における第2マーカM2aと第1マーカM1との間の距離は、図19に示したbよりも大きい値のb’となる。このため、プロットされた一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置を結ぶ直線の傾きは、図20の例よりも大きくなる。
一方、撮像部20とテストパターンTPとの距離が大きくなると、撮像画像上における第2マーカM2bと第1マーカM1との間の距離は、図19に示したaよりも小さい値のa’’となり、撮像画像上における第2マーカM2aと第1マーカM1との間の距離は、図19に示したbよりも値の小さいb’’となる。このため、プロットされた一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置を結ぶ直線の傾きは、図19の例よりも小さくなる。しかしながら、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量sは、一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置を結ぶ直線の傾きが変化しても変わることはない。
また、プロットされた一対の第2マーカM2a、M2bそれぞれの位置を結ぶ直線と縦軸の交点と、原点との距離が、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量である。撮像部20とテストパターンTPとの距離が小さくなると一対の第2マーカM2a、M2bの距離は大きくなるが、撮像画像における位置ずれ量も同じ比率で大きくなる。一方、撮像部20とテストパターンTPとの距離が大きくなると一対の第2マーカM2a、M2bの距離は小さくなるが、撮像画像における位置ずれ量も同じ比率で小さくなる。つまり、撮像部20とテストパターンTPとの間の距離が変動した場合でも、一対の第2マーカM2a、M2bの距離と撮像画像における位置ずれ量との比率が変わることはない。
図14に戻り、CPU110の実距離算出部114は、図16、17に示すテストパターンTPでは、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に、比率算出部143により算出した比率を乗算して、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量sの実距離を算出する。実距離算出部114により算出された実距離は、傾き量算出部115に渡される。図17に示すテストパターンTPでは、さらに、第1マーカM1'、一対の第2マーカM2a’、M2b'についても同様に位置ずれ量sの実距離を算出する。これにより、図16のテストパターンTPからは、記録ヘッド6Aの傾きおよび記録媒体Pの傾きのうち少なくとも一方に基づく主走査方向の位置ずれ量sの実距離が算出される。また、図17のテストパターンTPからは、2つの副走査方向の位置ずれ量sの実距離が算出される。
CPU110の傾き量算出部115は、実距離算出部114により算出された位置ずれ量に基づいて各種傾き量(角度)を算出するものである。
具体的に、例えば図16に示すテストパターンTPが形成された場合の傾き角度について説明する。図22は、図16のテストパターンの形成時における傾き量の算出方法の説明図である。図16、22を参照すると、傾き量算出部115は、実距離算出部114により算出された主走査方向の位置ずれ量sと、第1マーカM1を形成したノズルおよび一対の第2マーカM2a、M2bを形成したノズル間の所定の距離Lとに基づいて、総傾き角度θ(総傾き量に相当)を算出する。この総傾き角度θには、記録ヘッド6Aの傾き角度(ヘッド傾き角度)だけでなく、記録媒体Pのスキュー角度(記録媒体Pの傾き)や搬送量の誤差による影響が含まれた角度である。従って、図15のテストパターンTPを用いて記録媒体Pのスキュー角度を算出していく。
次に、例えば図17に示すテストパターンTPが形成された場合の記録媒体Pの傾き角度について説明する。図23は、図17のテストパターンの形成時における傾き量の算出方法の説明図である。図17、23を参照すると、傾き量算出部115は、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量および一対の第2マーカM2a’、M2b’に対する第1マーカM1’の位置ずれ量の差分s1と、第1マーカM1、M1’間の距離Wとに基づいて、記録媒体Pの傾き角度であるスキュー角度α(媒体傾き量の一例)を算出する。このスキュー角度αは、記録媒体Pが搬送不良等により傾いて搬送された場合の角度である。
そして、傾き量算出部115は、例えば、図16、17のテストパターンTPから算出された総傾き角度θと記録媒体Pのスキュー角度αにより、記録ヘッド6Aの傾き角度(ヘッド傾き量に相当)を算出する。図24は、ヘッド傾き角度の算出方法の説明図である。傾き量算出部115は、図24に示すように、総傾き角度θとスキュー角度αとの差分により、記録ヘッド6Aの傾き角度であるヘッド傾き角度βを算出する。つまり、傾き量算出部115は、総傾き角度θからスキュー角度αを差し引いてヘッド傾き角度βを算出する。
そして、実距離算出部114は、ヘッド傾き角度βと、実搬送量L1とに基づいて、記録ヘッド6Aの傾きのみに基づく位置ずれ量を算出する。
CPU110の調整部116は、実距離算出部114により算出された記録ヘッド6Aの傾きに基づく位置ずれ量に応じて、記録ヘッド6Aの傾きを調整する。なお、ここでは、画像形成装置100により記録ヘッド6Aの傾きを調整しているが、手動で当該調整を行う構成としてもよい。
<画像形成装置の動作>
次に、図25、図26を参照しながら、画像形成装置100の記録ヘッド6Aの傾きによる位置ずれ量の算出処理の流れについて説明する。画像形成装置100の記録ヘッド6Aの傾きによる位置ずれ量の算出するためには、図16に示すテストパターンTPから総傾き角度θを算出し、図17に示すテストパターンTPから記録媒体Pのスキュー角度αを算出する。そして、総傾き角度θからスキュー角度αを差し引くことで、記録ヘッド6Aの傾きによるヘッド傾き角度βを算出し、このヘッド傾き角度βから記録ヘッド6Aの傾きによる位置ずれ量を算出する。図25は、第1の実施形態の画像形成装置における総傾き角度の算出処理の流れを示すフローチャートである。図26は、第1の実施形態の画像形成装置における記録ヘッドの傾きに基づく位置ずれ量の算出処理の流れを示すフローチャートである。
まず、図25の処理について説明する。プラテン16上に記録媒体Pがセットされると、CPU110のパターン形成部111は、記録媒体P上に記録ヘッド6Aの上流側のノズルで第1マーカM1を形成する(ステップS10)。そして、CPU110の搬送制御部117は、記録媒体Pを所定の実搬送量L1で搬送する(ステップS11)。
次に、パターン形成部111は、第1マーカM1を形成したノズルから副走査方向に所定の距離L離れた指定ノズルを用いて、主走査方向両側に距離eずつ離れた位置に一対の第2マーカM2a、M2bを形成する(ステップS12)。これにより、第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bを含むテストパターンTP(図16参照)が形成されたことになる。
次に、撮像部20の二次元センサ27が、ステップS10、12で形成されたテストパターンTPを撮像し、テストパターンTPの撮像画像を出力する(ステップS13)。二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2bおよび第1マーカM1の位置を各々検出する(ステップS14)。
次に、二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、検出された第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bの撮像画像における位置を用いて、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量との比率を算出する(ステップS15)。
次に、CPU110の実距離算出部114が、ステップS10、12でテストパターンTPの形成に用いたパターンデータと、ステップS15で算出された比率とを用いて、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に上記の比率を乗算して、第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出する(ステップS16)。
次に、CPU110の傾き量算出部115が、ステップS16で算出された第1マーカM1の位置ずれ量の実距離により、インクの着弾位置ずれが生じているか否かを判定する(ステップS17)。ここでインクの着弾位置ずれが生じていないと判定された場合は(ステップS17:No)、そのまま一連の動作が終了する。
一方、インクの着弾位置ずれが生じていると判定された場合は(ステップS17:Yes)、傾き量算出部115は、算出された主走査方向の位置ずれ量sと、第1マーカM1を形成したノズルおよび一対の第2マーカM2a、M2bを形成したノズル間の所定の距離Lとから総傾き角度θを算出して(ステップS18)、一連の動作が終了する。
次に、図26の処理について説明する。プラテン16上に記録媒体Pがセットされると、まず、CPU110のパターン形成部111は、記録ヘッド6Aの上流側のノズルで記録媒体P上に第1マーカM1、M1’を形成する(ステップS30)。このとき、パターン形成部111は、第1マーカM1から主走査方向に距離W離れた位置に第1マーカM1’を形成する。そして、CPU110の搬送制御部117は、記録媒体Pを所定の実搬送量L1で搬送する(ステップS31)。
次に、パターン形成部111は、第1マーカM1を形成したノズルから所定の距離L離れた基準ノズルから副走査方向の前後に距離fずつ離れた指定ノズルにより、記録媒体P上に一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’を形成する(ステップS32)。このとき、パターン形成部111は、一対の第2マーカM2a、M2bから主走査方向に距離W離れた位置に一対の第2マーカM2a’、M2b’を形成する。これにより、第1マーカM1、M1’および一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’を含む2つのテストパターンTP(図17参照)が形成されたことになる。
次に、撮像部20の二次元センサ27が、ステップS30、32で形成された2つのテストパターンTPを撮像し、2つのテストパターンTPの撮像画像を出力する(ステップS33)。二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’および第1マーカM1、M1’の位置を各々検出する(ステップS34)。
次に、二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、検出された第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bの撮像画像における位置を用いて、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量との比率を算出する。同様に、比率算出部143は、検出された第1マーカM1’および一対の第2マーカM2a’、M2b’の撮像画像における位置を用いて、撮像画像における一対の第2マーカM2a’、M2b’間の距離と、撮像画像における第1マーカM1’の位置ずれ量との比率を算出する(ステップS35)。
次に、CPU110の実距離算出部114が、ステップS30、32でテストパターンTPの形成に用いたパターンデータと、ステップS35で算出された比率とを用いて、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に上記の比率を乗算して、第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出する。同様に、実距離算出部114が、パターンデータと、ステップS35で算出された比率とを用いて、一対の第2マーカM2a’、M2b’間の実距離に上記の比率を乗算して、第1マーカM1’の位置ずれ量の実距離を算出する(ステップS36)。
次に、CPU110の実距離算出部114が、ステップS36で算出された第1マーカM1、M1’の位置ずれ量の実距離により、少なくともいずれか一方のテストパターンTPにおいて、インクの着弾位置ずれが生じているか否かを判定する(ステップS37)。いずれのテストパターンTPにおいてもインクの着弾位置ずれが生じていないと判定された場合は(ステップS37:No)、そのまま一連の動作が終了する。
一方、少なくともいずれかのテストパターンTPにおいてインクの着弾位置ずれが生じていると判定された場合は(ステップS37:Yes)、傾き量算出部115は、ステップS36で算出された2つテストパターンTPに対する副走査方向の位置ずれ量の差分を算出する。すなわち、傾き量算出部115は、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量および一対の第2マーカM2a’、M2b’に対する第1マーカM1’の位置ずれ量の差分s1を算出する(ステップS38)。
そして、傾き量算出部115は、2つのテストパターンTPに対する副走査方向の位置ずれ量の差分と、2つのテストパターンTPの第1マーカM1、M1’間の距離Wとから、スキュー角度αを算出する。すなわち、傾き量算出部115は、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量および一対の第2マーカM2a’、M2b’に対する第1マーカM1’の位置ずれ量の差分s1と、第1マーカM1、M1’間の距離Wとに基づいて、記録媒体Pの傾きによるスキュー角度αを算出する(ステップS39)。
傾き量算出部115は、総傾き角度θとスキュー角度αとの差分とにより、ヘッド傾き角度βを算出する。すなわち、傾き量算出部115は、総傾き角度θからスキュー角度αを差し引いてヘッド傾き角度βを算出する(ステップS40)。実距離算出部114は、ヘッド傾き角度βと、所定の搬送量L1とにより、記録ヘッド6Aの傾きに基づく位置ずれ量を算出して(ステップS41)、一連の動作が終了する。
以上の流れにより算出された記録ヘッド6Aの傾きに基づく位置ずれ量に基づいて、調整部116または手動により、記録ヘッド6Aの傾きを調整する。図25、26では、総傾き角度θを算出した後、スキュー角度αを算出する流れとなっているが、並行して算出処理を行ってもよい。
このように、本実施形態の画像形成装置100は、第1マーカM1を形成した後、記録媒体Pを所定の搬送量(実搬送量L1)で搬送して一対の第2マーカM2a、M2bを形成することで、第1マーカM1および一対の第2マーカM2a、M2bを含むテストパターンTPを形成する。そして、このテストパターンTPを撮像部20により撮像する。次に、撮像画像におけるテストパターンTPの一対の第2マーカM2a、M2bおよび第1マーカM1の位置を各々検出する。そして、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量との比率を算出し、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に上記の比率を乗算して、第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出する。
また、画像形成装置100は、記録ヘッド6Aにより形成されたテストパターンTPに基づいて、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の主走査方向の位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づいて記録ヘッド6Aの傾きや記録媒体Pの傾きに基づく総傾き角度θを算出する。また、記録ヘッド6Aにより形成された2つのテストパターンTPに基づいて、一対の第2マーカM2a、M2bに対する第1マーカM1の副走査方向の位置ずれ量をそれぞれ算出し、2つの位置ずれ量の差分と2つのテストパターンTPの距離Wとにより、記録媒体Pの傾き量であるスキュー角度αを算出する。そして、総傾き角度θからスキュー角度αを差し引くことにより、記録ヘッド6Aの傾きであるヘッド傾き角度βが算出できる。さらに、ヘッド傾き角度βに基づいて、記録ヘッド6Aの傾きのみに基づく位置ずれ量を算出できる。これにより、ヘッド傾き角度βや記録ヘッド6Aの傾きのみに基づく位置ずれ量に応じて、記録ヘッド6Aの傾きを調整することができる。
したがって、本実施形態の画像形成装置100によれば、撮像部20とテストパターンTPとの間の距離が変動する環境であっても、テストパターンTPを撮像した撮像画像をもとにインクの着弾位置ずれの位置ずれ量に応じた実距離を適切に算出することができ、位置ずれ量に応じて記録ヘッドの傾きを調整することで、画像品質を向上させることができる。
<第1マーカの位置ずれ量の実距離の他の算出方法>
上述した実施形態では、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量との比率を算出し、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に当該比率を算出して、第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出する構成となっていたが、以下のような方法で第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出してもよい。
比率算出部143が、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2b間の距離と、撮像画像における一対の第2マーカM2a、M2bのうちの一方と第1マーカM1との距離との比率を算出する。例えば、図19を参照すると、a/a+bまたはb/a+bがここで算出する比率である。
そして、実距離算出部114が、一対の第2マーカM2a、M2b間の実距離に、比率算出部143により算出された比率を乗算して、一対の第2マーカM2a、M2bのうちの一方と第1マーカM1との距離の実距離を算出する。そして、テストパターンTPの形成に用いたパターンデータにおける一対の第2マーカM2a、M2bのうちの一方と第1マーカM1との距離から、算出した一対の第2マーカM2a、M2bのうちの一方と第1マーカM1との距離の実距離を差し引くことで、第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出する。そして、算出された第1マーカM1の位置ずれ量の実距離に基づいて、記録媒体Pの搬送量に関わるパラメータが調整できる。
<テストパターンの変形例>
本実施形態で用いるテストパターンTPは、図16、17に示した例に限らず、様々な変形が可能である。以下、このようなテストパターンTPの変形例を説明する。
図16、17に例示したテストパターンTPは、マーカ(第1マーカM1、M1’、一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’)をドットとして形成する構成としたが、線状に形成して基準枠を設ける構成としてもよい。図27は、線状のマーカにより形成されたテストパターンの一例を示す図である。例えば、図27に示すように、図16に示した一対の第2マーカM2a、M2bおよび第1マーカM1を副走査方向(図中矢印B方向)に延びる線状であって、一対の第2マーカM2a、M2bの間に第1マーカM1を形成する構成としてもよい。そして、図17に示した一対の第2マーカM2a’、M2b’および第1マーカM1’を主走査方向(図中矢印A方向)に延びる線状であって、一対の第2マーカM2a’、M2b’の間に第1マーカM1’を形成する構成としてもよい。このように、マーカを線状に形成することで、撮像画像におけるマーカの位置の検出が容易になる。
さらに、図27では、第1マーカM1、M1’および一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’と異なる条件、例えば異なる線の太さにより形成した基準枠Fが形成されている。この基準枠Fは、第1マーカM1、M1’および一対の第2マーカM2a、M2b、M2a’、M2b’を特定する基準となる基準線によって取り囲むように形成される。従って、各マーカの位置検出時において、最初のステップとして基準枠Fを検出させるようにすると、撮像画像内のテストパターンTPの位置がずれてしまった場合でも、撮像画像内での各マーカの位置を容易に検出できる。
また、図27のテストパターンTPを用いると、主走査方向(矢印A方向)の3本の線で(第1マーカM1、一対の第2マーカM2a、M2b)主走査方向の位置ずれ量が算出でき、副走査方向(矢印B方向)の3本の線(第1マーカM1’、一対の第2マーカM2a’、M2b’)で副走査方向の位置すれ量が算出できる。
さらに、図27に示した基準枠Fで囲んだ線状のマーカによるテストパターンTPを複数形成する構成としてもよい。図28は、図27に示すテストパターンを複数形成した一例を示す図である。図28では、図27に示したテストパターンTPを主走査方向に3つ、副走査方向に3つ形成している。
このように、主走査方向および副走査方向における検出箇所を増やすことで位置ずれ量等の平均値が算出でき、記録媒体Pの搬送量の誤差やスキュー角度の算出精度が向上する。特に、スキュー角度が安定せず、徐々に増大していく場合には、検出箇所をさらに増やすことが望ましい。また、記録ヘッド6のノズル列が直線上に並んでいる場合、主走査方向の位置ずれ量については、最下流側の記録ヘッド6で形成したマーカと、最上流側の記録ヘッド6で形成したマーカの位置関係の検出を行えばよい。
(第2の実施形態)
第1の実施形態の画像形成装置では、1つの記録ヘッドの傾きに基づいて位置ずれ量を算出して、記録ヘッドの傾きを調整可能とするものであった。これに対して、第2の実施形態の画像形成装置では、さらに、複数の記録ヘッドの相対的な傾きに基づく位置ずれ量や傾き角度を算出して、複数の記録ヘッドの相対的な傾きを調整可能とするものである。
まず、画像形成装置100のハードウェア構成および機能構成は、第1の実施形態と同様であり(図13、14参照)、さらに、追加する機能のみ図14を参照して説明する。以下では、記録ヘッド6A、6Bの相対的な傾きを検出する例を示す。
CPU110のパターン形成部111は、第1の実施形態の機能に加え、画像形成部を用いて記録ヘッド6A、6Bが有する上流側と下流側のノズルを用いて記録媒体Pに第3マーカM3、M3’、一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’からなるテストパターンTPを形成する。本実施形態のテストパターンTPが第3テストパターンに相当する。
本実施形態では、例えば、パターン形成部111は、記録ヘッド6Aが有する上流側と下流側のノズルにより第3マーカM3、M3'を形成し、記録ヘッド6Bが有する上流側と下流側のノズルにより、一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’を形成する。しかし、記録ヘッド6Bが第3マーカM3、M3'を形成し、記録ヘッド6Aが一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’を形成するように構成してもよい。
図29は、テストパターンの形成方法の説明図である。まず、図29を参照して、テストパターンTPについて説明する。記録ヘッド6A、6Bにおける上流側のノズルと下流側のノズルは、同じ列にあって、それぞれ所定の距離L離れて設けられている。また、第1記録ヘッドが記録ヘッド6Aに相当し、第2記録ヘッドが記録ヘッド6Bに相当する。
第3マーカM3、M3'は、記録ヘッド6Aの上流側と下流側の同じ列のノズルにより形成されるため、副走査方向(図中矢印B方向)に並んで形成される。また、第4マーカM4aと第4マーカM4a’、および第4マーカM4bと第4マーカM4b’は、記録ヘッド6Bの上流側と下流側の同じ列のノズルにより形成されるため、それぞれ副走査方向に並んで形成される。
そして、一対の第4マーカM4a、M4bは、第3マーカM3の形成位置に対して主走査方向(図中矢印A方向)両側に距離gずつ離れた位置(等距離の位置)に形成される。同様に、一対の第4マーカM4a’、M4b’は、第3マーカM3’の形成位置に対して主走査方向両側に距離gずつ離れた位置に形成される。
次に、図29を参照して本実施形態のテストパターンTPの形成方法について説明する。まず、パターン形成部111は、図29(a)に示すように、記録ヘッド6Aの上流側と下流側のノズルで記録媒体Pに第3マーカM3、M3’を形成する。次に、図29(b)に示すように、搬送制御部117は、搬送ローラ152により記録媒体Pを副走査方向(図中矢印B方向)に所定の搬送量で搬送する。そして、パターン形成部111は、図29(c)に示すように、所定の搬送量で搬送後、記録ヘッド6Bの上流側と下流側のノズルで一対の第4マーカM4a、M4bおよび一対の第4マーカM4a’、M4b’を形成する。
二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、第1の実施形態の機能に加え、撮像部20により撮像された撮像画像から本実施形態のテストパターンTPを検出する。すなわち、位置検出部142は、図29に示すテストパターンTPを撮像した撮像画像から、第3マーカM3、M3’、一対の第4マーカM4a、M4bおよび一対の第4マーカM4a’、M4b’を各々検出する。
二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、第1の実施形態の機能に加え、撮像画像における上流側で形成された一対の第4マーカM4a、M4b間の距離と、撮像画像における上流側で形成された第3マーカM3の位置ずれ量との比率(第2比率とする)を算出する。また、比率算出部143は、撮像画像における下流側で形成された一対の第4マーカM4a’、M4b’間の距離と、撮像画像における下流側で形成された第3マーカM3’の位置ずれ量との比率(第3比率とする)を算出する。
CPU110の実距離算出部114は、第1の実施形態の機能に加え、撮像画像における上流側で形成された一対の第4マーカM4a、M4bの実距離に第2比率を乗算して、上流側で形成された一対の第4マーカM4a、M4bに対する上流側で形成された第3マーカの位置ずれ量の実距離である上流側の位置ずれ量を算出する。また、実距離算出部114は、下流側で形成された一対の第4マーカM4a’、M4b’の実距離に第3比率を乗算して、下流側で形成された一対の第4マーカM4a’、M4b’に対する下流側で形成された第3マーカM3’の位置ずれ量の実距離である下流側の位置ずれ量を算出する。そして、実距離算出部114は、算出した上流側の位置ずれ量と下流側の位置ずれ量との差分を、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく位置ずれ量s2(図29参照)として算出する。
CPU110の傾き量算出部115は、第1の実施形態の機能に加え、実距離算出部114により算出された記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく位置ずれ量s2と、記録ヘッド6Aまたは記録ヘッド6Bにおける上流側と下流側のノズル間の距離である所定の距離Lとにより、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きである相対傾き角度γ(相対傾き量に相当)を算出する。
CPU110の調整部116は、実距離算出部114により算出された記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく位置ずれ量や相対傾き角度に応じて、記録ヘッド6Bの傾きを調整する。なお、ここでは、画像形成装置100により記録ヘッド6Bの傾きを調整しているが、手動で当該調整を行う構成としてもよい。
次に、図30を参照しながら、画像形成装置100の記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きによる位置ずれ量および相対傾き角度の算出処理の流れについて説明する。図30は、第2の実施形態の画像形成装置における位置ずれ量および相対傾き角度の算出処理の流れを示すフローチャートである。
プラテン16上に記録媒体Pがセットされると、まず、CPU110のパターン形成部111は、記録ヘッド6Aの上流側および下流側のノズルで、記録媒体P上に第3マーカM3、M3’を形成する(ステップS50)。そして、CPU110の搬送制御部117は、記録媒体Pを所定の搬送量で搬送する(ステップS51)。
次に、パターン形成部111は、記録ヘッド6Bの上流側および下流側のノズルで、第3マーカM3、M3’を形成した位置から主走査方向両側に距離gずつ離れた位置の記録媒体P上に一対の第4マーカM4a、M4bおよび一対の第4マーカM4a’、M4b’を形成する(ステップS52)。これにより、第3マーカM3、M3’、一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’を含むテストパターンTP(図29参照)が形成されたことになる。
次に、撮像部20の二次元センサ27が、ステップS50、52で形成されたテストパターンTPを撮像し、テストパターンTPの撮像画像を出力する(ステップS53)。二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、撮像画像における第3マーカM3、M3'、一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’の位置を各々検出する(ステップS54)。
次に、二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、上流側および下流側それぞれにおいて、検出された第3マーカM3、M3’、一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’の撮像画像における位置を用いて、撮像画像における一対の第4マーカ間の距離と、撮像画像における第3マーカの位置ずれ量との比率を算出する。
すなわち、比率算出部143は、撮像画像における一対の第4マーカM4a、M4b間の距離と、撮像画像における第3マーカM3の位置ずれ量との比率、および撮像画像における一対の第4マーカM4a’、M4b’間の距離と、撮像画像における第3マーカM3’の位置ずれ量との比率を算出する(ステップS55)。
次に、CPU110の実距離算出部114が、ステップS50、52でテストパターンTPの形成に用いたパターンデータと、ステップS55で算出された比率とを用いて、上流側および下流側それぞれにおいて、一対の第4マーカ間の実距離に上記の比率を乗算して、第3マーカの位置ずれ量の実距離を算出する。
すなわち、実距離算出部114は、一対の第4マーカM4a、M4bの実距離に上記の比率(第2比率に相当)を乗算して、第3マーカM3の位置ずれ量の実距離である上流側の位置ずれ量を算出する。同様に、実距離算出部114は、一対の第4マーカM4a’、M4b’の実距離に上記の比率(第3比率に相当)を乗算して、第3マーカM3’の位置ずれ量の実距離である下流側の位置ずれ量を算出する(ステップS56)。
次に、CPU110の実距離算出部114が、ステップS56で算出された第3マーカM3、M3’の実距離により上流側および下流側のいずれかでインクの着弾位置ずれが生じているか否かを判定する(ステップS57)。ここでいずれにおいてもインクの着弾位置ずれが生じていないと判定された場合は(ステップS57:No)、そのまま一連の動作が終了する。
一方、少なくともいずれかのインクの着弾位置ずれが生じていると判定された場合は(ステップS57:Yes)、実距離算出部114が、ステップS56で算出された上流側の位置ずれ量と下流側の位置ずれ量との差分を算出する(ステップS58)。
次に、傾き量算出部115は、上流側の位置ずれ量と下流側の位置ずれ量との差分(記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく位置ずれ量s2)と、記録ヘッド6Aの上流側と下流側のノズル間の所定の距離Lとにより、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きである相対傾き角度γを算出して(ステップS59)、一連の動作が終了する。
本実施形態では、2つの記録ヘッドの傾きによる位置ずれ量、相対傾き角度を算出する構成となっていたが、3つ以上の記録ヘッドの場合にも同様に適用可能である。
このように、第2の実施形態の画像形成装置100では、記録ヘッド6A、6Bの上流側および下流側のノズルにより形成されたテストパターンTPに基づいて、上流側の位置ずれ量と下流側の位置ずれ量を算出し、算出した上流側の位置ずれ量と下流側の位置ずれ量との差分を記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく位置ずれ量として算出できる。そして、当該位置ずれ量とテストパターンTPを形成した上流側および下流側のノズル間の距離とにより、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きである相対傾き角度を算出できる。これにより、第1の実施形態の効果に加え、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく位置ずれ量や相対傾き角度に応じて、記録ヘッド6Bの傾きを調整できる。
<テストパターンの変形例>
本実施形態で用いるテストパターンTPは、図29に示した例に限らず、様々な変形が可能である。以下、このようなテストパターンTPの変形例を説明する。
図29に例示したテストパターンTPは、マーカ(第3マーカM3、M3’、一対の第4マーカM4a、M4b、および一対の第4マーカM4a’、M4b’)をドットとして形成する構成としたが、線状に形成して基準枠を設ける構成としてもよい。
図31は、線状のマーカにより形成されたテストパターンの一例を示す図である。例えば、図31に示すように、図29に示した第3マーカM3、第4マーカM4a、および第4マーカM4bを副走査方向(図中矢印B方向)に延びる線状で形成する構成としてもよい。このように、マーカを線状に形成することで、撮像画像におけるマーカの位置の検出が容易になる。また、例えば、3つの記録ヘッドの相対的な位置ずれ量や傾きを算出する場合、図31に示すように、テストパターンTPを3セット(MS1〜3)形成する。そして、例えば、セットMS1により記録ヘッド6A、6B、セットMS2により記録ヘッド6B、6C、セットMS3により記録ヘッド6c、6Aそれぞれで相対的な位置ずれ量や傾きを算出することができる。
さらに、図31では、第3マーカM3、第4マーカM4a、および第4マーカM4bと異なる条件、例えば異なる線の太さにより形成した基準枠Fが形成されている。この基準枠Fは、第3マーカM3、第4マーカM4a、および第4マーカM4bを特定する基準となる基準線によって取り囲むように形成される。従って、各マーカの位置検出時において、最初のステップとして基準枠Fを検出させるようにすると、撮像画像内のテストパターンTPの位置がずれてしまった場合でも、撮像画像内での各マーカの位置を容易に検出できる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態の画像形成装置では、1つの記録ヘッドの傾きに基づいて位置ずれ量を算出して、記録ヘッドの傾きを調整可能とするものであった。これに対して、第3の実施形態の画像形成装置では、さらに、複数の記録ヘッドの相対的な副走査方向の位置ずれ量を算出して、複数の記録ヘッドの相対的なずれを調整可能とするものである。
まず、画像形成装置100のハードウェア構成および機能構成は、第1の実施形態と同様であり(図13、14参照)、さらに、追加する機能のみ図14を参照して説明する。以下では、記録ヘッド6A、6Bの相対的な副走査方向の位置ずれ量を算出する例を示す。
なお、本実施形態の画像形成装置100では、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6Bが、記録ヘッド6Aが有するノズル列と主走査方向で重なる位置に設けられたノズル列を有しているものとする。すなわち、図3に示すように、記録ヘッド6Bの有するノズル列の上流側の一部が、記録ヘッド6Aが有するノズル列の下流側の一部と主走査方向において重なっている。そして、その重なっている部分のノズルを用いて第5マーカ、一対の第6マーカを異なる記録ヘッド6A、6Bで形成することで、副走査方向の位置ずれ量を算出するものである。以下では、重なっている部分のノズルを重複ノズルと称する場合がある。
CPU110のパターン形成部111は、第1の実施形態の機能に加え、画像形成部を用いて記録ヘッド6A、6Bが有する上流側と下流側のノズルを用いて記録媒体Pに第5マーカM5、および一対の第6マーカM6a、M6bからなるテストパターンTPを形成する。本実施形態のテストパターンTPが第4テストパターンに相当する。
本実施形態では、例えば、パターン形成部111は、記録ヘッド6Aが有する下流側の重複ノズルにより第5マーカM5を形成し、記録ヘッド6Bが有する上流側の重複ノズルにより一対の第6マーカM6a、M6bを形成する。しかし、記録ヘッド6Bが有する上流側の重複ノズルにより第5マーカM5を形成し、記録ヘッド6Aが有する下流側の重複ノズルにより一対の第6マーカM6a、M6bを形成する構成としてもよい。
図32は、テストパターンの説明図である。図32に示すように、記録ヘッド6Aの下流側のノズルと、記録ヘッド6Bの上流側のノズルとは、主走査方向に重なる位置に設けられている。また、第1記録ヘッドが記録ヘッド6Aに相当し、第2記録ヘッドが記録ヘッド6Bに相当する。
図32に示すように、第5マーカM5は、記録ヘッド6Aの下流側の重複ノズルにより形成される。そして、一対の第6マーカM6a、M6bは、第5マーカM5を形成した重複ノズルの形成位置に対して副走査方向(図中矢印B方向)両側に距離hずつ離れた位置(等距離の位置)にある記録ヘッド6Bの上流側の重複ノズル(指定重複ノズル)により形成される。従って、第5マーカM5および一対の第6マーカM6a、M6bは、副走査方向に並んで形成される。
二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、第1の実施形態の機能に加え、撮像部20により撮像された撮像画像から本実施形態のテストパターンTPを検出する。すなわち、位置検出部142は、図32に示すテストパターンTPを撮影した画像から、第5マーカM5および一対の第6マーカM6a、M6bを各々検出する。
二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、第1の実施形態の機能に加え、撮像画像における一対の第6マーカM6a、M6b間の距離と、撮像画像における第5マーカM5の位置ずれ量との比率(第4比率に相当)を算出する。
CPU110の実距離算出部114は、第1の実施形態の機能に加え、一対の第6マーカM6a、M6bの実距離に上記の比率を乗算して、一対の第6マーカM6a、M6bに対する第5マーカM5の位置ずれ量の実距離を算出する。一対の第6マーカM6a、M6bに対する第5マーカM5の位置ずれ量は、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく副走査方向の位置ずれ量である。
CPU110の調整部116は、実距離算出部114により算出された記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく副走査方向の位置ずれ量に応じて、記録ヘッド6Bの傾きを調整する。なお、ここでは、画像形成装置100により記録ヘッド6Bの傾きを調整しているが、手動で当該調整を行う構成としてもよい。
次に、図33を参照しながら、画像形成装置100の記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド65Bの傾きによる副走査方向の位置ずれ量の算出処理の流れについて説明する。図33は、第3の実施形態の画像形成装置における位置ずれ量の算出処理の流れを示すフローチャートである。
プラテン16上に記録媒体Pがセットされると、まず、CPU110のパターン形成部111は、記録ヘッド6Aの下流側の重複ノズルで、記録媒体P上に第5マーカM5を形成する(ステップS70)。
次に、パターン形成部111は、記録ヘッド6Bの上流側の指定重複ノズルで、第5マーカM5を形成したノズルの位置から副走査方向の前後両側に距離hずつ離れた位置の記録媒体P上に一対の第6マーカM6a、M6bを形成する(ステップS71)。これにより、第5マーカM5、および一対の第6マーカM6a、M6bを含むテストパターンTP(図32参照)が形成されたことになる。
次に、撮像部20の二次元センサ27が、ステップS70、71で形成されたテストパターンTPを撮像し、テストパターンTPの撮像画像を出力する(ステップS72)。二次元センサ用CPU140の位置検出部142は、撮像画像における第5マーカM5、一対の第6マーカM6a、M6bの位置を各々検出する(ステップS73)。
次に、二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、検出された第5マーカM5および一対の第6マーカM6a、M6bの撮像画像における位置を用いて、撮像画像における一対の第6マーカM6a、M6b間の距離と、撮像画像における第5マーカM5の位置ずれ量との比率を算出する(ステップS74)。
次に、CPU110の実距離算出部114が、ステップS70、71でテストパターンTPの形成に用いたパターンデータと、ステップS74で算出された比率とを用いて、一対の第6マーカM6a、M6b間の実距離に上記の比率を乗算して、第5マーカM5の位置ずれ量の実距離を算出して(ステップS75)、一連の処理を終了する。
このように、第3の実施形態の画像形成装置100では、ノズル列の一部が主走査方向で重なる記録ヘッド6A、6Bにより形成されたテストパターンTPに基づいて、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく副走査方向の位置ずれ量を算出できる。これにより、第1の実施形態の効果に加え、記録ヘッド6Aに対する記録ヘッド6Bの傾きに基づく副走査方向の位置ずれ量に応じて、記録ヘッド6Bの傾きを調整できる。
<テストパターンの変形例>
本実施形態で用いるテストパターンTPは、図32に示した例に限らず、様々な変形が可能である。以下、このようなテストパターンTPの変形例を説明する。
図32に例示したテストパターンTPは、マーカ(第5マーカM5および一対の第6マーカM6a、M6b)をドットとして形成する構成としたが、線状に形成して基準枠を設ける構成としてもよい。
図34は、線状のマーカにより形成されたテストパターンの一例を示す図である。例えば、図34に示すように、図32に示した第5マーカM5および一対の第6マーカM6a、M6bを主走査方向(図中矢印A方向)に延びる線状で形成する構成としてもよい。このように、マーカを線状に形成することで、撮像画像におけるマーカの位置の検出が容易になる。
さらに、図34では、第5マーカM5および一対の第6マーカM6a、M6bと異なる条件、例えば異なる線の太さにより形成した基準枠Fが形成されている。この基準枠Fは、第5マーカM5、および一対の第6マーカM6a、M6bを特定する基準となる基準線によって取り囲むように形成される。従って、各マーカの位置検出時において、最初のステップとして基準枠Fを検出させるようにすると、撮像画像内のテストパターンTPの位置がずれてしまった場合でも、撮像画像内での各マーカの位置を容易に検出できる。
(第4の実施形態)
第1〜3の実施形態の画像形成装置では、キャリッジに搭載された二次元センサ用CPUにおいて、撮像画像からのテストパターンの位置検出処理、および比率算出処理を行う構成となっていたが、位置検出処理および比率算出処理をメイン制御基板において行ってもよい。
まず、図35を参照しながら、本実施形態の画像形成装置200のハードウェア構成について説明する。図35は、第4の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成図である。
本実施形態の画像形成装置200は、図35に示すように、CPU210、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、制御用FPGA120、記録ヘッド6、主走査エンコーダセンサ131、撮像部40、主走査モータ8、および搬送部150を備えている。
CPU210、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、および制御用FPGA120は、メイン制御基板230に搭載されている。また、記録ヘッド6、主走査エンコーダセンサ131、および撮像部40は、キャリッジ50に搭載されている。また、副走査エンコーダセンサ132、搬送ローラ152、および副走査モータ12は、上述した搬送部150に搭載されている。
ここで、CPU210、および撮像部40の構成以外は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
CPU210は、第1の実施形態と同様に、画像形成装置200の全体の制御を司る。特に、本実施形態の画像形成装置200では、テストパターンTPを形成する機能や距離計測装置としての機能、距離に基づいて位置ずれ量や記録ヘッドの傾き角度を算出する機能などを、このCPU210により実現する。
撮像部40は、CPU210による制御のもとで記録媒体P上に形成されたテストパターンTP(図16、17等参照)を撮像するものであって、二次元センサ27を備えている。
二次元センサ27は、上述したように、CCDセンサまたはCMOSセンサなどであって、CPU210から制御用FPGA120を介して送られた各種設定信号に基づく所定の動作条件によって、テストパターンTPを撮像する。そして、二次元センサ27は、撮像した撮像画像を、制御用FPGA120を介してCPU210に出力する。
次に、図36を参照しながら、画像形成装置200のCPU210により実現される特徴的な機能について説明する。図36は、第4の実施形態の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
CPU210は、例えば、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された制御プログラムを実行することにより、パターン形成部111、位置検出部212、比率算出部213、実距離算出部114、傾き量算出部115、調整部116、および搬送制御部117などの機能を実現する。
ここで、パターン形成部111、実距離算出部114、傾き量算出部115、調整部116、および搬送制御部117の機能は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
また、位置検出部212、および比率算出部213の機能は、第1の実施形態の位置検出部142、比率算出部143と同様であるが、第1の実施形態と異なり、CPU210において実行される。
第2の実施形態の画像形成装置200における画像形成位置における記録ヘッドの傾きに基づく位置ずれ量の算出処理の流れについては、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する(図25、26参照)。
このように、本実施形態の画像形成装置200では、位置検出部212および比率算出部213を含むすべての機能を、メイン制御基板230のCPU210により行う。このように構成した場合も、第1の実施形態の画像形成装置100と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
さらに、本実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
本実施形態の画像形成装置で実行されるプログラムは、上述した各部(パターン形成部、位置検出部、比率算出部、実距離算出部、傾き量算出部、調整部、搬送制御部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、上記各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。また、例えば、上述した各部の機能のうちの一部または全部が専用のハードウェア回路で実現されてもよい。
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えながら具体化することができる。
例えば、上述した実施形態では、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタとして構成された画像形成装置への適用例を説明したが、本発明は、様々なタイプの画像形成装置に適用できる。例えば、ラインヘッド方式のインクジェットプリンタでは、記録ヘッド間の位置ずれに起因するインクの着弾位置ずれが生じ得る。本発明を適用することにより、このようなインクの着弾位置ずれが生じた場合にその位置ずれ量を正しく求めることができ、位置ずれ量に応じて記録ヘッドの傾きを調整可能とすることで、画像品質を向上させることができる。
また、例えば、タンデム型の電子写真方式の画像形成装置においては、各色の像を形成する感光体ドラムの位置ずれなどにより、インクジェットプリンタでのインクの着弾位置ずれに相当する画像の位置ずれが生じ得る。本発明を適用することにより、このような画像の位置ずれが生じた場合にその位置ずれ量を正しく求めることができ、位置ずれ量に応じて記録ヘッドの傾きを調整可能とすることで、画像品質を向上させることができる。
また、例えば、熱によって記録媒体に印字を行なうサーマルプリンタにおいては、サーマルヘッドの位置ずれなどにより、インクジェットプリンタでのインクの着弾位置ずれに相当する画像の位置ずれが生じ得る。本発明を適用することにより、このような画像の位置ずれが生じた場合にその位置ずれ量を正しく求めることができ、位置ずれ量に応じて記録ヘッドの傾きを調整可能とすることで、画像品質を向上させることができる。
また、本実施形態の画像形成には、用紙などの記録媒体への出力だけでなく、基板の形成も含まれる。上記実施形態では、本発明の画像形成装置を、プリンタに適用した例を挙げて説明したが、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機、複写機等の画像形成装置にも適用することができる。