以下、本発明に係る燃料電池スタックについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層された積層体14を備える。燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に搭載される。
積層体14の積層方向(矢印A方向)一端には、ターミナルプレート(電力取出プレート)16a、インシュレータ18a及びエンドプレート20aが外方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向他端には、ターミナルプレート16b、インシュレータ18b及びエンドプレート20bが外方に向かって、順次、配設される。一方のインシュレータ18aは、積層体14と一方のエンドプレート20aとの間に配置されている。他方のインシュレータ18bは、積層体14と他方のエンドプレート20bとの間に配置されている。インシュレータ18a、18bは、絶縁性材料、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等で形成される。
エンドプレート20a、20bは、横長(縦長でもよい)の長方形状を有するとともに、各辺間には、連結バー24が配置される。各連結バー24は、両端がエンドプレート20a、20bの内面に固定されており、複数の積層された発電セル12に積層方向(矢印A方向)の締め付け荷重を付与する。なお、燃料電池スタック10は、エンドプレート20a、20bを端板とする筐体を備え、当該筐体内に積層体14を収容するように構成してもよい。
発電セル12は、図2に示すように、樹脂枠付きMEA28が、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32により挟持される。第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。第1金属セパレータ30と第2金属セパレータ32とは、外周を溶接、ろう付け、かしめ等により一体に接合され、接合セパレータ33を構成する。
樹脂枠付きMEA28は、電解質膜・電極構造体28a(以下、「MEA28a」という)と、MEA28aの外周部に接合されるとともに該外周部を周回する樹脂枠部材46とを備える。MEA28aは、電解質膜40と、電解質膜40の一方の面に設けられたアノード電極(第1電極)42と、電解質膜40の他方の面に設けられたカソード電極(第2電極)44とを有する。
電解質膜40は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜40は、アノード電極42及びカソード電極44に挟持される。電解質膜40は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。
詳細は図示しないが、アノード電極42は、電解質膜40の一方の面に接合される第1電極触媒層と、当該第1電極触媒層に積層される第1ガス拡散層とを有する。カソード電極44は、電解質膜40の他方の面に接合される第2電極触媒層と、当該第2電極触媒層に積層される第2ガス拡散層とを有する。
発電セル12の長辺方向である矢印B方向(図2中、水平方向)の一端縁部には、積層方向に延在して、酸化剤ガス供給連通孔34a、複数の冷却媒体排出連通孔36b及び複数(例えば、本実施形態のように2個)の燃料ガス排出連通孔38b(反応ガス排出連通孔)が設けられる。酸化剤ガス供給連通孔34a、複数の冷却媒体排出連通孔36b及び複数の燃料ガス排出連通孔38bは、それぞれ、積層体14、インシュレータ18a及びエンドプレート20aを積層方向に貫通している(ターミナルプレート16aを貫通してもよい)。これらの連通孔は上下方向に配列して設けられる。燃料ガス排出連通孔38bは、一方の反応ガスである燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス供給連通孔34aは、他方の反応ガスである酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する。冷却媒体排出連通孔36bは、冷却媒体を排出する。
酸化剤ガス供給連通孔34aは、上下方向に離間して配置された2つの冷却媒体排出連通孔36bの間に配置されている。複数の燃料ガス排出連通孔38bは、上側燃料ガス排出連通孔38b1と、下側燃料ガス排出連通孔38b2とを有する。上側燃料ガス排出連通孔38b1は、上側の冷却媒体排出連通孔36bの上方に配置されている。下側燃料ガス排出連通孔38b2は、下側の冷却媒体排出連通孔36bの下方に配置されている。
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、積層方向に互いに連通して、燃料ガス供給連通孔38a、複数の冷却媒体供給連通孔36a及び複数(例えば、本実施形態のように2個)の酸化剤ガス排出連通孔34b(反応ガス排出連通孔)が設けられる。燃料ガス供給連通孔38a、複数の冷却媒体供給連通孔36a及び複数の酸化剤ガス排出連通孔34bは、それぞれ、積層体14、インシュレータ18a及びエンドプレート20aを積層方向に貫通している(ターミナルプレート16aを貫通してもよい)。これらの連通孔は上下方向に配列して設けられる。燃料ガス供給連通孔38aは、燃料ガスを供給する。冷却媒体供給連通孔36aは、冷却媒体を供給する。酸化剤ガス排出連通孔34bは、酸化剤ガスを排出する。酸化剤ガス供給連通孔34a、複数の酸化剤ガス排出連通孔34b、燃料ガス供給連通孔38a及び複数の燃料ガス排出連通孔38bの配置は、本実施形態に限定されるものではない。要求される仕様に応じて、適宜設定すればよい。
燃料ガス供給連通孔38aは、上下方向に離間して配置された2つの冷却媒体供給連通孔36aの間に配置されている。複数の酸化剤ガス排出連通孔34bは、上側酸化剤ガス排出連通孔34b1と、下側酸化剤ガス排出連通孔34b2とを有する。上側酸化剤ガス排出連通孔34b1は、上側の冷却媒体供給連通孔36aの上方に配置されている。下側酸化剤ガス排出連通孔34b2は、下側の冷却媒体供給連通孔36aの下方に配置されている。
図1に示すように、酸化剤ガス供給連通孔34a、冷却媒体供給連通孔36a及び燃料ガス供給連通孔38aは、それぞれ、エンドプレート20aに設けられた入口35a、37a、39aに連通する。また、酸化剤ガス排出連通孔34b、冷却媒体排出連通孔36b及び燃料ガス排出連通孔38bは、それぞれ、エンドプレート20aに設けられた出口35b、37b、39bに連通する。
図2に示すように、樹脂枠部材46の矢印B方向の一端縁部には、酸化剤ガス供給連通孔34a、複数の冷却媒体排出連通孔36b及び複数の燃料ガス排出連通孔38bが設けられる。樹脂枠部材46の矢印B方向の他端縁部には、燃料ガス供給連通孔38a、複数の冷却媒体供給連通孔36a及び複数の酸化剤ガス排出連通孔34bが設けられる。
樹脂枠部材46を用いることなく、電解質膜40を外方に突出させてもよい。また、外方に突出した電解質膜40の両側に枠形状のフィルムを設けてもよい。
図3に示すように、第1金属セパレータ30の樹脂枠付きMEA28に向かう面30aには、例えば、矢印B方向に延在する酸化剤ガス流路48が設けられる。酸化剤ガス流路48は、酸化剤ガス供給連通孔34a及び酸化剤ガス排出連通孔34bに流体的に連通する。酸化剤ガス流路48は、矢印B方向に延在する複数本の凸部48a間に直線状流路溝(又は波状流路溝)48bを有する。
酸化剤ガス供給連通孔34aと酸化剤ガス流路48との間には、プレス成形により、複数個のエンボス部を有する入口バッファ部50aが設けられる。酸化剤ガス排出連通孔34bと酸化剤ガス流路48との間には、プレス成形により、複数個のエンボス部を有する出口バッファ部50bが設けられる。
第1金属セパレータ30の面30aには、プレス成形により、複数のメタルビードシールが樹脂枠付きMEA28に向かって一体に膨出成形される。当該メタルビードシールに代えて、弾性材料からなる凸状弾性シールが設けられてもよい。複数のメタルビードシールは、外側ビード部52aと、内側ビード部52bと、複数の連通孔ビード部52cとを有する。外側ビード部52aは、面30aの外周縁部を周回する。内側ビード部52bは、酸化剤ガス流路48、酸化剤ガス供給連通孔34a及び酸化剤ガス排出連通孔34bの外周を周回し且つこれらを連通させる。
複数の連通孔ビード部52cは、燃料ガス供給連通孔38a、燃料ガス排出連通孔38b、冷却媒体供給連通孔36a及び冷却媒体排出連通孔36bをそれぞれ周回する。なお、外側ビード部52aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
図2に示すように、第2金属セパレータ32の樹脂枠付きMEA28に向かう面32aには、例えば、矢印B方向に延在する燃料ガス流路58が形成される。燃料ガス流路58は、燃料ガス供給連通孔38a及び燃料ガス排出連通孔38bに流体的に連通する。燃料ガス流路58は、矢印B方向に延在する複数本の凸部58a間に直線状流路溝(又は波状流路溝)58bを有する。
燃料ガス供給連通孔38aと燃料ガス流路58との間には、プレス成形により、複数個のエンボス部を有する入口バッファ部60aが設けられる。燃料ガス排出連通孔38bと燃料ガス流路58との間には、プレス成形により、複数個のエンボス部を有する出口バッファ部60bが設けられる。
第2金属セパレータ32の面32aには、プレス成形により、複数のメタルビードシールが、樹脂枠付きMEA28に向かって膨出成形される。当該メタルビードシールに代えて、弾性材料からなる凸状弾性シールが設けられてもよい。複数のメタルビードシールは、外側ビード部62aと、内側ビード部62bと、複数の連通孔ビード部62cとを有する。外側ビード部62aは、面32aの外周縁部を周回する。内側ビード部62bは、外側ビード部62aよりも内側で、燃料ガス流路58、燃料ガス供給連通孔38a及び燃料ガス排出連通孔38bの外周を周回し且つこれらを連通させる。
複数の連通孔ビード部62cは、酸化剤ガス供給連通孔34a、酸化剤ガス排出連通孔34b、冷却媒体供給連通孔36a及び冷却媒体排出連通孔36bをそれぞれ周回する。なお、外側ビード部62aは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。
溶接又はロウ付けにより互いに接合される第1金属セパレータ30の面30bと第2金属セパレータ32の面32bとの間には、冷却媒体供給連通孔36aと冷却媒体排出連通孔36bとに流体的に連通する冷却媒体流路66が形成される。冷却媒体流路66は、酸化剤ガス流路48が形成された第1金属セパレータ30の裏面形状と、燃料ガス流路58が形成された第2金属セパレータ32の裏面形状とが重なり合って形成される。
図4に示すように、上側酸化剤ガス排出連通孔34b1と下側酸化剤ガス排出連通孔34b2とは、出口35bの反対側の端部(奥側端部)で、第1連結流路70により互いに連結されている。なお、図4では、理解の容易のため、燃料ガス供給連通孔38a及び冷却媒体供給連通孔36a(図2)の図示を省略している。本実施形態では、第1連結流路70は、インシュレータ18bに設けられている。
具体的に、第1連結流路70は、インシュレータ18b内で上下方向に延在している。第1連結流路70は、上側酸化剤ガス排出連通孔34b1に隣接する第1上側連通孔接続部70aと、下側酸化剤ガス排出連通孔34b2に隣接する第1下側連通孔接続部70bと、第1上側連通孔接続部70aと第1下側連通孔接続部70bとを繋ぐ第1中間部70cとを有する。図8に示すように、第1中間部70cの流路幅(矢印B方向の流路幅)は、第1上側連通孔接続部70a及び第1下側連通孔接続部70bの各流路幅よりも小さい。なお、第1中間部70cの流路幅は、第1上側連通孔接続部70a及び第1下側連通孔接続部70bの各流路幅と同じか、それより大きくてもよい。
本実施形態と異なり、第1連結流路70は、ターミナルプレート16b又はエンドプレート20bに設けられてもよい。あるいは、第1連結流路70は、インシュレータ18b及びエンドプレート20bの外部に設けられた連結流路部材に設けられてもよい。
図4に示すように、燃料電池スタック10には、燃料電池スタック10の運転時(発電時)に燃料電池スタック10内のカソード側で生じた生成水W(図9参照)を排出するための第1ドレン72が設けられている。第1ドレン72は、積層方向(矢印A方向)に貫通形成され且つ第1連結流路70に連通している。
図6に示すように、第1ドレン72は、下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の底部75よりも下方に配置されている。下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の底部75は、積層方向と直交する水平方向(矢印B方向)の幅が下方に向かって小さくなる凹形状部75aを有する。本実施形態において、凹形状部75aは、V字状に形成されている。なお、凹形状部75aは円弧状に形成されてもよい。下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の底部75は、酸化剤ガス流路48の重力方向最下部48cよりも下方に位置する。
第1ドレン72は、下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の底部75の最下部75bよりも下方に配置されている。具体的に、底部75の最下部75bと第1ドレン72の最上部72bとは、鉛直方向(矢印C方向)に距離H1だけ高低差を有する。距離H1は、例えば、2〜15mmに設定され、好ましくは5〜10mmに設定される。第1ドレン72は、酸化剤ガス流路48の重力方向最下部48cよりも下方に位置する。
第1ドレン72は、酸化剤ガス排出連通孔34b及び冷却媒体供給連通孔36aに対し、積層方向に直交する水平方向内側(長方形状の発電セル12の長手方向中心側)に配置されている。具体的に、酸化剤ガス排出連通孔34bの酸化剤ガス流路48側の辺34bsと、第1ドレン72の水平方向外端部72cとは、水平方向に距離L1だけ離れている。距離L1は、例えば、2〜20mmに設定され、好ましくは5〜15mmに設定される。
図8に示すように、第1下側連通孔接続部70bの底部90は、積層方向と直交する水平方向の幅が下方に向かって小さくなる凹形状部90aを有する。当該凹形状部90aは、上述した下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の凹形状部75a(図6参照)と同様にV字状(円弧状でもよい)に形成されている。底部90は、酸化剤ガス流路48の重力方向最下部48c(図6参照)よりも下方に位置する。
燃料電池スタック10には、第1連結流路70と第1ドレン72とを流体的に連通させる第1中継流路74が設けられている。第1中継流路74は、第1ドレン72に隣接する第1ドレン接続部74aを有する。本実施形態では、第1中継流路74は、インシュレータ18bに設けられている。なお、第1連結流路70がエンドプレート20bに設けられる場合、第1中継流路74もエンドプレート20bに設けられるのが好ましい。第1連結流路70と第1中継流路74とは、インシュレータ18bとエンドプレート20bとに別々に設けられてもよい。
第1中継流路74は、第1連結流路70の最下部(第1下側連通孔接続部70bの凹形状部90aの最下部)に繋がるとともに、第1連結流路70から第1ドレン72に向かって下方に傾斜する。
図2に示すように、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32において、第1ドレン72の外周には、生成水Wの漏れを防止するためのビードシール72aが設けられている。ビードシール72aは、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32の厚さ方向にそれぞれ隣接するMEA28側に向かって突出し且つ第1ドレン72を囲むリング状に形成されている。
図5に示すように、上側燃料ガス排出連通孔38b1と下側燃料ガス排出連通孔38b2とは、出口39bの反対側の端部(奥側端部)で、第2連結流路80により互いに連結されている。なお、図5では、理解の容易のため、酸化剤ガス供給連通孔34a及び冷却媒体排出連通孔36bの図示を省略している。本実施形態では、第2連結流路80は、インシュレータ18bに設けられている。
具体的に、第2連結流路80は、インシュレータ18b内で上下方向に延在している。第2連結流路80は、上側燃料ガス排出連通孔38b1に隣接する第2上側連通孔接続部80aと、下側燃料ガス排出連通孔38b2に隣接する第2下側連通孔接続部80bと、第2上側連通孔接続部80aと第2下側連通孔接続部80bとを繋ぐ第2中間部80cとを有する。図8に示すように、第2中間部80cの流路幅(矢印B方向の流路幅)は、第2上側連通孔接続部80a及び第2下側連通孔接続部80bの各流路幅よりも小さい。なお、第2中間部80cの流路幅は、第2上側連通孔接続部80a及び第2下側連通孔接続部80bの各流路幅と同じか、それより大きくてもよい。
本実施形態と異なり、第2連結流路80は、ターミナルプレート16b又はエンドプレート20bに設けられてもよい。あるいは、第2連結流路80は、インシュレータ18b及びエンドプレート20bの外部に設けられた連結流路部材に設けられてもよい。
図5に示すように、燃料電池スタック10には、燃料電池スタック10の運転時(発電時)に燃料電池スタック10内のアノード側で生じた生成水W(図9参照)を排出するための第2ドレン82が設けられている。第2ドレン82は、積層方向(矢印A方向)に貫通形成され且つ第2連結流路80に連通している。
図7に示すように、第2ドレン82は、下側燃料ガス排出連通孔38b2の底部77よりも下方に配置されている。下側燃料ガス排出連通孔38b2の底部77は、積層方向と直交する水平方向の幅が下方に向かって小さくなる凹形状部77aを有する。本実施形態において、凹形状部77aは、V字状に形成されている。凹形状部77aは円弧状に形成されてもよい。下側燃料ガス排出連通孔38b2の底部77は、燃料ガス流路58の重力方向最下部58cよりも下方に位置する。なお、下側燃料ガス排出連通孔38b2及び下側酸化剤ガス排出連通孔34b2以外の連通孔(特に、反応ガス連通孔)についても同様に、それらの底部は、積層方向と直交する水平方向の幅が下方に向かって小さくなる凹形状部77aを有する(図3参照)。
第2ドレン82は、下側燃料ガス排出連通孔38b2の底部77の最下部77bよりも下方に配置されている。具体的に、底部77の最下部77bと第2ドレン82の最上部82bとは、鉛直方向に距離H2だけ高低差を有する。距離H2は、例えば、2〜15mmに設定され、好ましくは5〜10mmに設定される。第2ドレン82は、燃料ガス流路58の重力方向最下部58cよりも下方に位置する。
第2ドレン82は、燃料ガス排出連通孔38b及び冷却媒体排出連通孔36bに対し、積層方向に直交する水平方向内側(長方形状の発電セル12の長手方向中心側)に配置されている。具体的に、燃料ガス排出連通孔38bの燃料ガス流路58側の辺38bsと、第2ドレン82の水平方向外端部82cとは、水平方向に距離L2だけ離れている。距離L2は、例えば、2〜20mmに設定され、好ましくは5〜15mmに設定される。
図8に示すように、第2下側連通孔接続部80bの底部92は、積層方向と直交する水平方向の幅が下方に向かって小さくなる凹形状部92aを有する。当該凹形状部92aは、上述した下側燃料ガス排出連通孔38b2の凹形状部77a(図7参照)と同様にV字状(円弧状でもよい)に形成されている。底部92は、燃料ガス流路58の重力方向最下部58c(図7参照)よりも下方に位置する。
燃料電池スタック10には、第2連結流路80と第2ドレン82とを流体的に連通させる第2中継流路84が設けられている。第2中継流路84は、第2ドレン82に隣接する第2ドレン接続部84aを有する。本実施形態では、第2中継流路84は、インシュレータ18bに設けられている。なお、第2連結流路80がエンドプレート20bに設けられる場合、第2中継流路84もエンドプレート20bに設けられるのが好ましい。第2連結流路80と第2中継流路84とは、インシュレータ18bとエンドプレート20bとに別々に設けられてもよい。
第2中継流路84は、第2連結流路80の最下部(第2下側連通孔接続部80bの凹形状部92aの最下部)に繋がるとともに、第2連結流路80から第2ドレン82に向かって下方に傾斜する。
なお、第1連結流路70及び第2連結流路80は、いずれか一方のみ設けられてもよい。第1ドレン72及び第2ドレン82は、いずれか一方のみ設けられてもよい。
図2に示すように、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32において、第2ドレン82の外周にはビードシール82aが設けられている。ビードシール82aは、第1金属セパレータ30及び第2金属セパレータ32の厚さ方向にそれぞれ隣接するMEA28側に向かって突出し且つ第2ドレン82を囲むリング状に形成されている。
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
まず、図1に示すように、酸素含有ガス等の酸化剤ガス、例えば、空気は、エンドプレート20aの酸化剤ガス供給連通孔34a(入口35a)に供給される。水素含有ガス等の燃料ガスは、エンドプレート20aの燃料ガス供給連通孔38a(入口39a)に供給される。純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体は、エンドプレート20aの冷却媒体供給連通孔36a(入口37a)に供給される。
酸化剤ガスは、図3に示すように、酸化剤ガス供給連通孔34aから第1金属セパレータ30の酸化剤ガス流路48に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路48に沿って矢印B方向に移動し、MEA28aのカソード電極44に供給される。
一方、燃料ガスは、図2に示すように、燃料ガス供給連通孔38aから第2金属セパレータ32の燃料ガス流路58に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路58に沿って矢印B方向に移動し、MEA28aのアノード電極42に供給される。
従って、各MEA28aでは、カソード電極44に供給される酸化剤ガスと、アノード電極42に供給される燃料ガスとが、第2電極触媒層及び第1電極触媒層内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
次いで、カソード電極44に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極42に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔38bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体供給連通孔36aに供給された冷却媒体は、第1金属セパレータ30と第2金属セパレータ32との間に形成された冷却媒体流路66に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、MEA28aを冷却した後、冷却媒体排出連通孔36bから排出される。
この場合、本実施形態に係る燃料電池スタック10は、以下の効果を奏する。
燃料電池スタック10では、互いに高さの異なる複数の酸化剤ガス排出連通孔34bが形成されるとともに、複数の酸化剤ガス排出連通孔34bが第1連結流路70により互いに連結されている(図4)。また、燃料電池スタック10では、互いに高さの異なる複数の燃料ガス排出連通孔38bが形成されるとともに、複数の燃料ガス排出連通孔38bが第2連結流路80により互いに連結されている(図5)。
このため、図9に示すように、燃料電池スタック10が水平面Sに対して傾いた際(例えば、燃料電池スタック10が搭載された車両が傾いた際)、生成水Wは、上側酸化剤ガス排出連通孔34b1から、第1連結流路70を介して、第1ドレン72へと流動する。また、生成水Wは、下側酸化剤ガス排出連通孔34b2から第1ドレン72へと流動する。そして、第1ドレン72の容積を超える生成水Wが第1ドレン72に流入すると、生成水Wは、第1ドレン72の出口73から排出される。
詳細は図示しないが、アノード側の流路(図5)についても同様に、燃料電池スタック10の傾き時に、生成水Wは、上側燃料ガス排出連通孔38b1から、第2連結流路80を介して、第2ドレン82へと流動する。また、生成水Wは、下側燃料ガス排出連通孔38b2から第2ドレン82へと流動する。そして、第2ドレン82の容量を超える生成水Wが第2ドレン82に流入した場合、生成水Wは、第2ドレン82の出口83(図1参照)から排出される。
従って、燃料電池スタック10によれば、燃料電池スタック10の傾き時に、積層体14(反応ガス排出連通孔)の端部に滞留する生成水W(滞留水)の量を減らす又は無くすことができる。これにより、燃料電池スタック10の発電安定性を向上させることができる。また、燃料電池スタック10内で滞留水が減少する又は発生しないことにより、電解質膜40、電極触媒及びセパレータの少なくともいずれかの寿命の延長化が図られる。
燃料電池スタック10には、生成水Wを排出するための第1ドレン72及び第2ドレン82が設けられている。そして、第1ドレン72及び第2ドレン82は、積層方向に貫通形成され、且つそれぞれ、第1連結流路70及び第2連結流路80に連通している。この構成により、第1ドレン72及び第2ドレン82を介して生成水Wの排出が促進されるため、滞留水をより効果的に減少させ、又は滞留水の発生を防止することが可能となる。
第1連結流路70及び第2連結流路80は、積層体14の端部に配置されたインシュレータ18b又はエンドプレート20bに設けられている。これにより、簡易且つ経済的な構成で、第1連結流路70及び第2連結流路80を設けることができる。
複数の酸化剤ガス排出連通孔34bは、互いに異なる高さに配置された上側酸化剤ガス排出連通孔34b1及び下側酸化剤ガス排出連通孔34b2を有する。また、複数の燃料ガス排出連通孔38bは、互いに異なる高さに配置された上側燃料ガス排出連通孔38b1及び下側燃料ガス排出連通孔38b2を有する。そして、第1ドレン72及び第2ドレン82は、それぞれ、下側酸化剤ガス排出連通孔34b2及び下側燃料ガス排出連通孔38b2よりも下方に配置されている。この構成により、重力の作用により、生成水Wの排出を一層促進することができる。
第1ドレン72は、酸化剤ガス排出連通孔34b及び冷却媒体供給連通孔36aよりも積層方向と直交する水平方向内側に配置されている。また、第2ドレン82は、燃料ガス排出連通孔38b及び冷却媒体排出連通孔36bよりも積層方向と直交する水平方向内側に配置されている。このため、燃料電池スタック10に対する荷重作用時に、衝撃が緩和され、第1ドレン72及び第2ドレン82の損傷を抑制することが可能となる。
下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の底部75及び下側燃料ガス排出連通孔38b2の底部77は、それぞれ、酸化剤ガス流路48の重力方向最下部48c及び燃料ガス流路58の重力方向最下部58cよりも下方に位置する。この構成により、酸化剤ガス流路48及び燃料ガス流路58からそれぞれ下側酸化剤ガス排出連通孔34b2及び下側燃料ガス排出連通孔38b2へと生成水Wを良好に流動させることができる。
下側酸化剤ガス排出連通孔34b2の底部75及び下側燃料ガス排出連通孔38b2の底部77は、積層方向と直交する水平方向の幅が下方に向かって小さくなる凹形状部75a、77aを有する。この構成により、底部75、77に集められた生成水Wを、同様の形状を有する第1下側連通孔接続部70b及び第2下側連通孔接続部80b(図8)を介して、第1ドレン72及び第2ドレン82へと良好に流動させることができる。
本実施形態では、2枚の金属セパレータ間に電解質膜・電極構造体を挟持したセルユニットを構成し、各セルユニット間に冷却媒体流路を形成する、所謂、各セル冷却構造を採用している。これに対して、例えば、3枚以上の金属セパレータと2枚以上の電解質膜・電極構造体を備え、金属セパレータと電解質膜・電極構造体とを交互に積層したセルユニットを構成してもよい。その際、各セルユニット間には、冷却媒体流路が形成される、所謂、間引き冷却構造が構成される。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。