以下の実施形態等において参照する図1A、1B、1C、2A、2B及び3は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
(実施形態)
以下、実施形態に係る焦電素子10について、図1A、1B、1C、2A及び2Bを参照して説明する。
焦電素子10は、クワッドタイプの焦電素子である。焦電素子10は、焦電体基板1と、4つの表面電極2と、4つの裏面電極3と、第1表面配線4と、第2表面配線5と、を備える。
4つの表面電極2は、焦電体基板1の表面11に設けられている。4つの表面電極2は、第1方向D1を行方向、第1方向D1に直交する第2方向D2を列方向とする2×2のマトリクス状に並んでいる。
4つの裏面電極3は、焦電体基板1の裏面12に設けられている。4つの裏面電極3は、4つの表面電極2に一対一で対向する。
第1表面配線4は、焦電体基板1の表面11に設けられている。第1表面配線4は、4つの表面電極2のうち第1対角線に沿った方向に並んでいる2つの第1表面電極21同士を接続している。
第2表面配線5は、焦電体基板1の表面11に設けられている。第2表面配線5は、4つの表面電極2のうち第2対角線に沿った方向に並んでいる2つの第2表面電極22同士を接続している。
焦電素子10は、第1裏面配線6と、第2裏面配線7と、を更に備える。
第1裏面配線6は、焦電体基板1の裏面12に設けられている。第1裏面配線6は、4つの裏面電極3のうち2つの第1表面電極21に対向する2つの第1裏面電極31同士を接続している。
第2裏面配線7は、焦電体基板1の裏面12に設けられている。第2裏面配線7は、4つの裏面電極3のうち2つの第2表面電極22に対向する2つの第2裏面電極32同士を接続している。
焦電素子10の各構成要素については、以下に、より詳細に説明する。
焦電体基板1は、矩形板状である。焦電体基板1の平面視形状(焦電体基板1の厚さ方向から見た形状)は、例えば、長方形状である。焦電体基板1は、焦電性を有する基板である。焦電体基板1は、例えば、単結晶のLiTaO3基板により構成されている。焦電体基板1の自発分極の方向は、この焦電体基板1の厚み方向に沿った一方向であり、図1Cの上方向である。焦電体基板1の厚さは、例えば、47μmである。
4つの表面電極2は、上述のように、第1方向D1を行方向、第1方向D1に直交する第2方向D2を列方向とする2×2のマトリクス状に並んでいる。ここにおいて、第1方向D1は、焦電体基板1の厚さ方向から見て焦電体基板1の長手方向に平行な方向である。また、第2方向D2は、焦電体基板1の厚さ方向から見て焦電体基板1の短手方向に平行な方向である。
4つの表面電極2は、焦電体基板1の表面11の中央部に設けられており、焦電体基板1の表面11の外周110から離れている。4つの表面電極2の各々の平面視形状は、長方形状である。4つの表面電極2は、互いに離れている。4つの表面電極2は、形状、大きさ、厚さ及び材料のそれぞれが互いに同じである。4つの表面電極2の各々は、その短手方向が第1方向D1と平行となるように配置されている。4つの表面電極2の各々は、その長手方向が第2方向D2と平行となるように配置されている。表面電極2は、導電性を有しかつ赤外線を吸収する材料により形成された導電層である。表面電極2の材料は、Niであるが、これに限らず、例えば、NiCr、金黒等であってもよい。表面電極2の厚さは、例えば、200nmである。
4つの裏面電極3は、焦電体基板1の裏面12の中央部に設けられており、焦電体基板1の裏面12の外周120から離れている。4つの裏面電極3の各々の平面視形状は、長方形状である。4つの裏面電極3は、互いに離れている。4つの裏面電極3は、形状、大きさ、厚さ及び材料のそれぞれが互いに同じである。4つの裏面電極3の各々は、その短手方向が第1方向D1と平行となるように配置されている。4つの裏面電極3の各々は、その長手方向が第2方向D2と平行となるように配置されている。上述のように、4つの裏面電極3は、4つの表面電極2と一対一で対向している。裏面電極3は、対向する表面電極2と同じ形状で同じ大きさに形成されている。裏面電極3は、導電性を有する材料により形成されている。裏面電極3は、表面電極2と同じ材料により形成されているが、これに限らず、表面電極2と異なる材料により形成されていてもよい。裏面電極3の厚さは、例えば、200nmである。
焦電素子10は、4つの検出部101を備えている。4つの検出部101それぞれの平面視形状は、長方形状である。複数の検出部101の各々は、表面電極2と、この表面電極2に対向する裏面電極3と、焦電体基板1において表面電極2と裏面電極3とで挟まれた部分であるエレメント部13と、を含むコンデンサである。検出部101の平面視形状は、表面電極2の平面視形状と同じである。
焦電素子10は、例えば、図3に示すように、実装基板8に実装して用いられる。焦電素子10は、実装基板8に実装されることにより、第1表面配線4と第2裏面配線7とが接続部95により接続され、第2表面配線5と第1裏面配線6とが接続部96により接続されている。各接続部95、96は、例えば、導電性接着剤により形成されている。導電性接着剤は、例えば、Ag又はAu粉末を含んだエポキシ系樹脂の接着剤、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト等である。
接続部95は、焦電体基板1の長手方向の一端(図1Aの左端)で第1表面配線4と第2裏面配線7とを電気的に接続している。接続部96は、焦電体基板1の長手方向の他端(図1Aの右端)で第2表面配線5と第1裏面配線6とを電気的に接続している。焦電素子10は、接続部95、96により実装基板8に接合されることによって、実装基板8に電気的且つ機械的に接続されている。これにより、焦電素子10は、第1対角線方向及び第2対角線方向の各々において並んでいる2つの検出部101同士が並列接続されている。また、焦電素子10は、行方向(第1方向D1)に並んでいる2つの検出部101同士が逆並列に接続され、列方向(第2方向D2)に並んでいる2つの検出部101同士が逆並列に接続されている。したがって、焦電素子10は、第1対角線方向及び第2対角線方向の各々において並んでいる2つの検出部101それぞれの表面電極2の極性が互いに同じ極性となる。また、焦電素子10は、行方向に並んでいる2つの検出部101それぞれの表面電極2の極性が互いに異なる極性となる。また、焦電素子10は、列方向に並んでいる2つの検出部101それぞれの表面電極2の極性が互いに異なる極性となる。
第1表面配線4と第2表面配線5とは、互いに重ならないように配置されている。第1表面配線4及び第2表面配線5は、焦電体基板1の表面11において、各表面電極2と同じ材料で同じ厚さに形成されている。各表面電極2、第1表面配線4及び第2表面配線5は、例えば、蒸着法、スパッタ法等を利用して同時に形成されている。第1裏面配線6及び第2裏面配線7は、焦電体基板1の裏面12において、各裏面電極3と同じ材料で同じ厚さに形成されている。各裏面電極3、第1裏面配線6及び第2裏面配線7は、例えば、蒸着法、スパッタ法等を利用して同時に形成されている。
第1表面配線4は、焦電体基板1の厚さ方向の一方側(表面11側)からの平面視で、第1〜5の直線状部分41〜45を含んでいる。第1の直線状部分41は、平面視で、焦電体基板1の長手方向の一端(図1Aの左端)で、焦電体基板1の表面11の外周110における短辺に沿って配置されている。第2の直線状部分42は、平面視で、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺に沿って配置され、第3の直線状部分43は、焦電体基板1の表面11の外周110における他方の長辺に沿って配置されている。本実施形態に係る焦電素子10では、第2の直線状部分42の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺の長さの半分よりも短い。また、本実施形態に係る焦電素子10では、第3の直線状部分43の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における他方の長辺の長さの半分よりも長い。第2の直線状部分42及び第3の直線状部分43それぞれは、第1の直線状部分41と繋がっている。第4の直線状部分44は、第2の直線状部分42の第1の直線状部分41側とは反対の端部と2つの第1表面電極21のうち当該端部に近い第1表面電極21とを繋いでいる。第5の直線状部分45は、第3の直線状部分43の第1の直線状部分41側とは反対の端部と2つの第1表面電極21のうち当該端部に近い第1表面電極21とを繋いでいる。第4の直線状部分44及び第5の直線状部分45は、第2方向D2に沿って配置されている。
第2表面配線5は、焦電体基板1の厚さ方向の一方側(表面11側)からの平面視で、第1〜7の直線状部分51〜57を含んでいる。第1の直線状部分51は、平面視で、焦電体基板1の長手方向の他端(図1Aの右端)で、焦電体基板1の表面11の外周110における短辺に沿って配置されている。第2の直線状部分52は、平面視で、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺から離れて当該一方の長辺と平行に配置され、第3の直線状部分53は、焦電体基板1の短手方向の中央で第1方向D1に沿って配置されている。第2の直線状部分52及び第3の直線状部分53は、第1の直線状部分51と繋がっている。第2の直線状部分52の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺の長さの半分よりも短い。第3の直線状部分53の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺の長さの半分よりも長い。第4の直線状部分54は、第2の直線状部分52の第1の直線状部分51側とは反対の端部と2つの第2表面電極22のうち当該端部に近い第2表面電極22とを繋いでいる。第5の直線状部分55は、第3の直線状部分53と繋がっている。第5の直線状部分55は、第3の直線状部分53の第1の直線状部分51側とは反対側の端部と第6の直線状部分56とを繋いでいる。第7の直線状部分57は、第6の直線状部分56の第5の直線状部分55側とは反対側の端部と第2表面電極22とを繋いでいる。第5の直線状部分55及び第7の直線状部分57は、第2方向D2に沿って配置されている。第6の直線状部分56は、第1方向D1に沿って配置されている。
第1裏面配線6と第2裏面配線7とは、互いに重ならないように配置されている。第1裏面配線6は、焦電体基板1の厚さ方向の他方側(裏面12側)からの平面視で、第1〜7の直線状部分61〜67を含んでいる。第1の直線状部分61は、平面視で、焦電体基板1の長手方向の他端(図1Bの右端)で、焦電体基板1の裏面12の外周120における短辺に沿って配置されている。第2の直線状部分62は、平面視で、焦電体基板1の裏面12の外周120における一方の長辺から離れて当該一方の長辺と平行に配置され、第3の直線状部分63は、焦電体基板1の短手方向の中央で第1方向D1に沿って配置されている。第2の直線状部分62及び第3の直線状部分63は、第1の直線状部分61と繋がっている。第2の直線状部分62の長さは、焦電体基板1の裏面12の外周120における一方の長辺の長さの半分よりも短い。第3の直線状部分63の長さは、焦電体基板1の裏面12の外周120における一方の長辺の長さの半分よりも長い。第4の直線状部分64は、第2の直線状部分62の第1の直線状部分61側とは反対の端部と2つの第1裏面電極31のうち当該端部に近い第1裏面電極31とを繋いでいる。第5の直線状部分65は、第3の直線状部分63と繋がっている。第5の直線状部分65は、第3の直線状部分63の第1の直線状部分61側とは反対側の端部と第6の直線状部分66とを繋いでいる。第7の直線状部分67は、第6の直線状部分66の第5の直線状部分65側とは反対側の端部と第1裏面電極31とを繋いでいる。第5の直線状部分65及び第7の直線状部分67は、第2方向D2に沿って配置されている。第6の直線状部分66は、第1方向D1に沿って配置されている。
第2裏面配線7は、焦電体基板1の厚さ方向の他方側(裏面12側)からの平面視で、第1〜5の直線状部分71〜75を含んでいる。第1の直線状部分71は、平面視で、焦電体基板1の長手方向の一端(図1Bの左端)で、焦電体基板1の裏面12の外周120における短辺に沿って配置されている。第2の直線状部分72は、平面視で、焦電体基板1の裏面12の外周120における一方の長辺に沿って配置され、第3の直線状部分73は、焦電体基板1の裏面12の外周120における他方の長辺に沿って配置されている。第2の直線状部分72の長さは、焦電体基板1の裏面12の外周120における一方の長辺の長さの半分よりも短い。第3の直線状部分73の長さは、焦電体基板1の裏面12の外周120における他方の長辺の長さの半分よりも長い。第2の直線状部分72及び第3の直線状部分73それぞれは、第1の直線状部分71と繋がっている。第4の直線状部分74は、第2の直線状部分72の第1の直線状部分71側とは反対の端部と2つの第2裏面電極32のうち当該端部に近い第2裏面電極32とを繋いでいる。第5の直線状部分75は、第3の直線状部分73の第1の直線状部分71側とは反対の端部と2つの第2裏面電極32のうち当該端部に近い第2裏面電極32とを繋いでいる。第4の直線状部分74及び第5の直線状部分75は、第2方向D2に沿って配置されている。
焦電素子10では、図1C及び2Aに示すように、第1表面配線4の一部と第2裏面配線7の一部とが、焦電体基板1の厚さ方向において重なっている(対向している)。ここで、第1表面配線4と第2裏面配線7とは、焦電体基板1の厚さ方向において重なる部分の配線幅が互いに同じである。
また、焦電素子10では、図1C及び2Aに示すように、第2表面配線5の一部と第1裏面配線6の一部とが、焦電体基板1の厚さ方向において重なっている(対向している)。ここで、第2表面配線5と第1裏面配線6とは、焦電体基板1の厚さ方向において重なる部分の配線幅が互いに同じである。
焦電素子10では、第1表面配線4と第2表面配線5とのうち第2表面配線5のみが、4つの表面電極2のうち第1方向D1に沿って並んでいる2つ1組の表面電極2の組同士の間を通っている。より詳細には、図1Aにおいて、4つの表面電極2のうち上側の2つの表面電極2(左上の第1表面電極21、右上の第2表面電極22)の組と、下側の2つの表面電極2(左下の第2表面電極22、右下の第1表面電極21)の組と、の間を、第2表面配線5のみが通っている。
また、焦電素子10では、第1裏面配線6と第2裏面配線7とのうち第1裏面配線6のみが、4つの裏面電極3のうち第1方向D1に沿って並んでいる2つ1組の裏面電極3の組同士の間を通っている。より詳細には、図1Bにおいて、4つの裏面電極3のうち上側の2つの裏面電極3(左上の第2裏面電極32、右上の第1裏面電極31)の組と、下側の2つの裏面電極3(左下の第1裏面電極31、右下の第2裏面電極32)の組と、の間を、第1裏面配線6のみが通っている。
焦電体基板1は、4つの表面電極2と4つの裏面電極3との間にそれぞれ介在している4つのエレメント部13と、4つのエレメント部13を支持する支持部14と、を有する。4つのエレメント部13の各々は、第2方向D2における第2表面配線5とは反対側の端部で支持部14と繋がっている。ここで、焦電素子10では、4つのエレメント部13の各々において支持部14と繋がっている部位以外の全周が、焦電体基板1の厚さ方向に貫通するスリット16により囲まれている。これにより、4つのエレメント部13は、支持部14に片持ち支持されている。スリット16は、焦電体基板1においてエレメント部13と支持部14とを繋いでいる部位(梁部17)以外でエレメント部13と支持部14とを熱絶縁するために焦電体基板1に形成されている。これにより、焦電素子10では、4つの検出部101が互いに熱絶縁されている。
焦電素子10では、焦電体基板1の厚さ方向の一方(表面11)側から見た平面視において、4つの表面電極2の各々について、4辺のうち第2表面配線5とは反対側の1辺以外の3辺がスリット16により囲まれている。焦電素子10は、焦電体基板1に2つのスリット16が形成されている。2つのスリット16の各々は、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の3辺に沿って形成されている。2つのスリット16の各々は、E字状に形成されている。2つのスリット16の各々は、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の互いに反対側の1辺それぞれに沿って形成された2つの外側スリット161と、隣り合う2つの表面電極2の間に形成された1つの内側スリット162と、2つの外側スリット161及び1つの内側スリット162それぞれの一端が繋がっている直線状スリット163と、を含む。直線状スリット163は、第1方向D1に平行である。2つの外側スリット161及び1つの内側スリット162の各々は、第2方向D2を長手方向とする直線状に形成されている。直線状スリット163は、第2表面配線5の第3の直線状部分53に近接しており、第3の直線状部分53と平行である。焦電素子10では、2つのスリット16により、4つの検出部101が互いに熱絶縁されている。2つのスリット16は、フォトリソグラフィ技術及びサンドブラスト技術を利用して形成されている。
焦電素子10では、4つの表面電極2のうち第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2間の距離L1が、第2方向D2において隣り合う2つの表面電極2間の距離L2よりも短い。焦電素子10では、例えば、焦電体基板1の長辺の長さが5mm、焦電体基板1の短辺の長さが3.2mmであり、距離L1が200μm、距離L2が400μmである。
焦電素子10では、焦電体基板1の厚さ方向から見て、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の間には、第1表面配線4及び第2表面配線5のいずれも配置されていない。これにより、焦電素子10では、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の間に第1表面配線4及び第2表面配線5の少なくとも一方が配置されている場合と比べて、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2間の距離L1を、より短くできる。
焦電素子10では、焦電体基板1の厚さ方向から見て、4つの表面電極2のうち第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の間にはスリット16の一部のみがある。第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2間の距離L1は、当該2つの表面電極2の間におけるスリット16(の内側スリット162)の第1方向D1の幅W1と同じである。
スリット16は、4つの表面電極2のうち第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2間の部分(内側スリット162)の第1方向D1の幅W1が、(直線状スリット163の)第2方向D2の幅W2よりも大きい。焦電素子10では、例えば、幅W1が200μm、幅W2が60μmである。
次に、上述の焦電素子10を備える赤外線検出装置100について図3に基づいて説明する。
赤外線検出装置100は、焦電素子10と、焦電素子10が実装されている実装基板8と、少なくとも焦電素子10と実装基板8とを収納しているパッケージ9と、を備える。
赤外線検出装置100は、信号処理部200を更に備える。信号処理部200は、焦電素子10の出力電流からなる出力信号を信号処理する。信号処理部200は、焦電素子10の出力信号に基づいて人体検出信号を外部装置(外部回路)へ出力するように構成されている。「人体検知信号」は、一例として一定時間だけハイレベルとなるパルス信号としてある。
信号処理部200は、例えば、1チップのIC素子(IC:Integrated Circuit)により構成されている。
信号処理部200は、例えば、電流電圧変換回路と、電圧増幅回路と、判定回路と、出力回路と、を含んでいる。電流電圧変換回路は、焦電素子10から出力される出力信号である電流信号を電圧信号に変換して出力する回路である。電圧増幅回路は、電流電圧変換回路から出力された電圧信号のうち所定の周波数帯域(例えば、0.1Hz〜10Hz)の電圧信号を増幅して出力する回路である。電圧増幅回路は、バンドパスフィルタとしての機能を有する。バンドパスフィルタとしての機能は、電流電圧変換回路から出力された電圧信号のうち上記所定の周波数帯域の成分を通過させ、かつ雑音となる不要な周波数成分を除去する機能である。判定回路は、電圧増幅回路から出力される電圧信号の電圧レベルと予め設定された閾値とを比較し電圧信号の電圧レベルが閾値を超えたか否かを判定する回路である。より詳細には、判定回路は、例えば、電圧信号の電圧レベルが第1閾値を超えたとき(上回ったとき)又は第1閾値よりも小さな第2閾値を超えたとき(下回ったとき)に出力信号がLレベルとなり、第1閾値及び第2閾値のいずれも超えていないときに出力信号がHレベルとなるように構成されたウィンドコンパレータである。出力回路は、判定回路において電圧信号の電圧レベルが閾値を超えたと判定されたときに人体検知信号を出力信号として出す回路である。
実装基板8は、MID(Molded Interconnect Devices)である。赤外線検出装置100では、焦電素子10と信号処理部200とが実装基板8に実装されている。
パッケージ9は、所謂キャンパッケージ(Can Package)である。キャンパッケージは、メタルパッケージ(Metal Package)とも呼ばれている。パッケージ9は、台座91と、キャップ92と、窓材93と、を含む。
台座91は、導電性を有する。ここにおいて、台座91は、金属製である。台座91は、円盤状であり、厚さ方向の一面側において実装基板8を支持している。
キャップ92は、導電性を有する。ここにおいて、キャップ92は、金属製である。キャップ92は、有底円筒状であり、実装基板8と信号処理部200と焦電素子10とを覆うように台座91に固着されている。
窓材93は、赤外線を透過する赤外線透過部材である。窓材93は、導電性を有する。ここにおいて、窓材93は、例えば、シリコン基板を含む。窓材93は、シリコン基板に加えて、このシリコン基板に積層された赤外線光学フィルタを含んでいる。赤外線光学フィルタは、赤外線検出装置100の検出対象の波長領域の赤外線を透過させる光学多層膜である。
窓材93は、キャップ92の前壁921に形成された窓孔922を塞ぐように配置される。窓材93は、キャップ92に対して導電性材料により接合されており、キャップ92と電気的に接続されている。窓材93は、焦電素子10の前方に配置されている。
上述のパッケージ9は、複数(3つ)のリード端子94を更に含む。3つのリード端子94は、台座91に保持されている。3つのリード端子94の各々は、ピン状である。3つのリード端子94の各々は、台座91の厚さ方向において台座91を貫通している。3つのリード端子94は、給電用リード端子941、信号出力用リード端子942及びグラウンド用リード端子943である。
(3)効果
本実施形態に係る焦電素子10は、焦電体基板1と、4つの表面電極2と、4つの裏面電極3と、第1表面配線4と、第2表面配線5と、を備える。4つの表面電極2は、焦電体基板1の表面11に設けられている。4つの表面電極2は、第1方向D1を行方向、第1方向D1に直交する第2方向D2を列方向とする2×2のマトリクス状に並んでいる。4つの裏面電極3は、焦電体基板1の裏面12に設けられている。4つの裏面電極3は、4つの表面電極2に一対一で対向する。第1表面配線4は、焦電体基板1の表面11に設けられている。第1表面配線4は、4つの表面電極2のうち第1対角線に沿った方向に並んでいる2つの第1表面電極21同士を接続している。第2表面配線5は、焦電体基板1の表面11に設けられている。第2表面配線5は、4つの表面電極2のうち第2対角線に沿った方向に並んでいる2つの第2表面電極22同士を接続している。第1表面配線4と第2表面配線5とのうち第2表面配線5のみが、4つの表面電極2のうち第1方向D1に沿って並んでいる2つ1組の表面電極2の組同士の間を通っている。焦電体基板1は、4つの表面電極2と4つの裏面電極3との間にそれぞれ介在している4つのエレメント部13と、4つのエレメント部13を支持する支持部14と、を有する。4つのエレメント部13の各々は、第2方向D2における第2表面配線5とは反対側の端部で支持部14と繋がっている。4つのエレメント部13の各々において支持部14と繋がっている部位以外の全周が、焦電体基板1の厚さ方向に貫通するスリット16により囲まれている。これにより、本実施形態に係る焦電素子10は、高感度化を図ることが可能となる。ここにおいて、本実施形態に係る焦電素子10では、第2表面配線5において、4つの表面電極2のうち第1方向D1に沿って並んでいる2つ1組の表面電極2の組同士の間を通っている部分(第3の直線状部分53)で発生した熱が、4つのエレメント部13の各々に伝わりにくく、高感度化を図ることが可能となる。
また、本実施形態に係る焦電素子10は、第1裏面配線6と、第2裏面配線7と、を更に備える。第1裏面配線6は、焦電体基板1の裏面12に設けられている。第1裏面配線6は、4つの裏面電極3のうち2つの第1表面電極21に対向する2つの第1裏面電極31同士を接続している。第2裏面配線7は、焦電体基板1の裏面12に設けられている。第2裏面配線7は、4つの裏面電極3のうち2つの第2表面電極22に対向する2つの第2裏面電極32同士を接続している。第1裏面配線6と第2裏面配線7とのうち第1裏面配線6のみが、4つの裏面電極3のうち第1方向D1に沿って並んでいる2つ1組の裏面電極3の組同士の間を通っている。これにより、本実施形態に係る焦電素子10は、第2表面配線5の一部と第1裏面配線6の一部とを焦電体基板1の厚さ方向において重ねることができるので、第2方向D2において並んでいる表面電極2間の距離L2をより短くすることが可能となる。
また、本実施形態に係る焦電素子10では、4つの表面電極2のうち第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2間の距離L1が、第2方向D2において隣り合う2つの表面電極2間の距離L2よりも短い。これにより、本実施形態に係る焦電素子10は、第1方向D1に動く熱源(人体)に対する感度を第2方向D2に動く熱源(人体)に対する感度よりも高感度化することが可能となる。よって、本実施形態に係る焦電素子10では、例えば、オフィス、トイレ等での人体の微動検知に関して第1方向D1の感度を第2方向D2の感度よりも高感度化することが可能となる。
また、本実施形態に係る焦電素子10では、焦電体基板1の厚さ方向から見て、4つの表面電極2のうち第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の間にはスリット16の一部(内側スリット162)のみがある。これにより、焦電素子10は、第1方向D1において隣り合う表面電極2間の距離L1をより短くすることが可能となり、より高感度化を図ることが可能となる。
また、本実施形態に係る焦電素子10では、スリット16は、4つの表面電極2のうち第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2間の部分の第1方向D1の幅W1が、第2方向D2の幅W2よりも大きい。これにより、本実施形態に係る焦電素子10は、第2方向D2において隣り合う表面電極2間の距離をより短くすることが可能となる。
また、本実施形態に係る赤外線検出装置100は、焦電素子10と、焦電素子10が実装されている実装基板8と、焦電素子10と信号処理部200と実装基板8とを収納しているパッケージ9と、を備える。これにより、本実施形態に係る赤外線検出装置100は、高感度化を図ることが可能となる。
上記の実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
例えば、焦電素子10では、表面電極2の外周縁が、当該表面電極2を囲むスリット16の表面電極2側の開孔縁から離れていてもよい。ここで、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2それぞれとスリット16との間に焦電体基板1の一部が存在してもよい。
また、焦電体基板1の平面視形状は、長方形状に限らず、例えば、正方形状等であってもよい。
また、表面電極2、エレメント部13及び裏面電極3を含む検出部101の平面視形状は、長方形状に限らず、正方形状、円形状等であってもよい。また、焦電素子10では、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2に対してE字状のスリット16を形成してあるが、これに限らず、第1方向D1において隣り合う2つの表面電極2の各々に対して、U字状のスリットを1つずつ形成してあってもよい。いずれにしても、焦電素子10では、4つのエレメント部13の各々が、第2方向D2における第2表面配線5とは反対側の端部のみで支持部14と繋がっていればよい。
また、第1表面配線4の第2の直線状部分42の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺の長さの半分よりも短い場合に限らない。
例えば、4つの表面電極2が焦電体基板1の表面11の中央部から焦電体基板1の長手方向の一端側にずらして配置され、4つの裏面電極3が焦電体基板1の裏面12の中央部から焦電体基板1の長手方向の上記一端側にずらして配置されている場合、第2の直線状部分42の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺の長さの半分以上でもよい。また、この場合、第2表面配線5の第3の直線状部分53の長さは、焦電体基板1の表面11の外周110における一方の長辺の長さの半分以下でもよい。また、この場合、第1裏面配線6の第3の直線状部分63の長さは、焦電体基板1の裏面12の外周120における一方の長辺の長さの半分以下でもよい。また、この場合、第2裏面配線7の第3の直線状部分73の長さは、焦電体基板1の裏面12の外周120における他方の長辺の長さの半分以下でもよい。
また、第2表面配線5の第3の直線状部分53は、焦電体基板1の短手方向の中央に配置される例に限らず、短手方向の中央以外であってもよい。
また、焦電体基板1の材料は、LiTaO3に限らず、例えば、LiNbO3等であってもよい。
また、赤外線検出装置100のパッケージ9における窓材93は、シリコンレンズ等の半導体レンズであってもよい。
また、赤外線検出装置100の実装基板8は、MIDに限らず、例えば、プリント配線板、セラミック基板等であってもよい。
また、赤外線検出装置100は、信号処理部200を備えているが、信号処理部200は必須の構成要素ではない。また、赤外線検出装置100では、信号処理部200をパッケージ9内ではなく、パッケージ9の外に備えていてもよい。
また、赤外線検出装置100は、パッケージ9の代わりに、表面実装型のパッケージを備えていてもよい。
(まとめ)
以上説明した実施形態等から以下の態様が開示されていることは明らかである。
第1の態様に係る焦電素子(10)は、焦電体基板(1)と、4つの表面電極(2)と、4つの裏面電極(3)と、第1表面配線(4)と、第2表面配線(5)と、を備える。4つの表面電極(2)は、焦電体基板(1)の表面(11)に設けられている。4つの表面電極(2)は、第1方向(D1)を行方向、第1方向(D1)に直交する第2方向(D2)を列方向とする2×2のマトリクス状に並んでいる。4つの裏面電極(3)は、焦電体基板(1)の裏面(12)に設けられている。4つの裏面電極(3)は、4つの表面電極(2)に一対一で対向する。第1表面配線(4)は、焦電体基板(1)の表面(11)に設けられている。第1表面配線(4)は、4つの表面電極(2)のうち第1対角線に沿った方向に並んでいる2つの第1表面電極(21)同士を接続している。第2表面配線(5)は、焦電体基板(1)の表面(11)に設けられている。第2表面配線(5)は、4つの表面電極(2)のうち第2対角線に沿った方向に並んでいる2つの第2表面電極(22)同士を接続している。第1表面配線(4)と第2表面配線(5)とのうち第2表面配線(5)のみが、4つの表面電極(2)のうち第1方向(D1)に沿って並んでいる2つ1組の表面電極(2)の組同士の間を通っている。焦電体基板(1)は、4つの表面電極(2)と4つの裏面電極(3)との間にそれぞれ介在している4つのエレメント部(13)と、4つのエレメント部(13)を支持する支持部(14)と、を有する。4つのエレメント部(13)の各々は、第2方向(D2)における第2表面配線(5)とは反対側の端部で支持部(14)と繋がっている。4つのエレメント部(13)の各々において支持部(14)と繋がっている部位以外の全周が、焦電体基板(1)の厚さ方向に貫通するスリット(16)により囲まれている。
第1の態様に係る焦電素子(10)では、高感度化を図ることが可能となる。第1の態様に係る焦電素子(10)では、第2表面配線(5)において、4つの表面電極(2)のうち第1方向(D1)に沿って並んでいる2つ1組の表面電極(2)の組同士の間を通っている部分(第3の直線状部分53)で発生した熱が、4つのエレメント部(13)の各々に伝わりにくく、高感度化を図ることが可能となる。
第2の態様に係る焦電素子(10)は、第1の態様において、第1裏面配線(6)と、第2裏面配線(7)と、を更に備える。第1裏面配線(6)は、焦電体基板(1)の裏面(12)に設けられている。第1裏面配線(6)は、4つの裏面電極(3)のうち2つの第1表面電極(21)に対向する2つの第1裏面電極(31)同士を接続している。第2裏面配線(7)は、焦電体基板(1)の裏面(12)に設けられている。第2裏面配線(7)は、4つの裏面電極(3)のうち2つの第2表面電極(22)に対向する2つの第2裏面電極(32)同士を接続している。第1裏面配線(6)と第2裏面配線(7)とのうち第1裏面配線(6)のみが、4つの裏面電極(3)のうち第1方向(D1)に沿って並んでいる2つ1組の裏面電極(3)の組同士の間を通っている。
第2の態様に係る焦電素子(10)は、第2表面配線(5)の一部(第3の直線状部分53)と第1裏面配線(6)の一部(第3の直線状部分63)とを焦電体基板(1)の厚さ方向において重ねることができるので、第2方向(D2)において並んでいる表面電極(2)間の距離(L2)をより短くすることが可能となる。
第3の態様に係る焦電素子(10)では、第1又は2の態様において、4つの表面電極(2)のうち第1方向(D1)において隣り合う2つの表面電極(2)間の距離(L1)が、第2方向(D2)において隣り合う2つの表面電極(2)間の距離(L2)よりも短い。
第3の態様に係る焦電素子(10)は、第1方向(D1)に動く熱源(人体)に対する感度を第2方向(D2)に動く熱源(人体)に対する感度よりも高感度化することが可能となる。よって、本実施形態に係る焦電素子(10)では、例えば、オフィス、トイレ等での人体の微動検知に関して第1方向(D1)の感度を第2方向(D2)の感度よりも高感度化することが可能となる。
第4の態様に係る焦電素子(10)では、第1乃至3の態様のいずれか1つにおいて、焦電体基板(1)の厚さ方向から見て、4つの表面電極(2)のうち第1方向(D1)において隣り合う2つの表面電極(2)の間にはスリット(16)の一部(内側スリット162)のみがある。
第4の態様に係る焦電素子(10)は、第1方向(D1)において隣り合う表面電極(2)間の距離(L1)をより短くすることが可能となり、より高感度化を図ることが可能となる。
第5の態様に係る焦電素子(10)では、第1乃至4の態様のいずれか1つにおいて、スリット(16)は、4つの表面電極(2)のうち第1方向(D1)において隣り合う2つの表面電極(2)間の部分(内側スリット162)の第1方向(D1)の幅(W1)が、第2方向(D2)の幅(W2)よりも大きい。
第5の態様に係る焦電素子(10)は、第2方向(D2)において隣り合う表面電極(2)間の距離をより短くすることが可能となる。
第6の態様に係る赤外線検出装置(100)は、第1乃至5の態様のいずれか1つの焦電素子(10)と、焦電素子(10)が実装されている実装基板(8)と、少なくとも焦電素子(10)と実装基板(8)とを収納しているパッケージ(9)と、を備える。
第6の態様に係る赤外線検出装置(100)は、高感度化を図ることが可能となる。