JP6866799B2 - 熱伝導性絶縁シートおよび複合部材 - Google Patents

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Description

本発明は、熱伝導性絶縁シートおよびこれを用いた複合部材に関する。
各種電子部品(例えばパワー半導体パッケージ等)の熱を発生し得る部材(熱発生部材とも言う。)からヒートシンク等の放熱部材への熱伝導を促し、放熱を促すために、熱発生部材と放熱部材の放熱ベース基板との間に熱伝導性絶縁膜を配置することが好ましい。熱伝導性絶縁膜は、熱伝導性フィラーと熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂の未硬化物および/または半硬化物とを含む熱伝導性絶縁シートを熱発生部材と放熱部材との間に配置し、加熱および加圧により硬化させることで、簡易に形成することができる。
熱伝導性絶縁シートは、高い熱伝導性と高い絶縁性を有し、熱発生部材と放熱部材とを良好に接合し、放熱部材の表面凹凸に良好に追随できる柔軟性を有することが好ましい。
本発明者らは、特許文献1において、高い熱伝導性と高い絶縁性を両立した熱伝導性絶縁シートとして、窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラーを比較的多く含有する複数の層(A)と窒化ホウ素フィラーを比較的多く含有する1層以上の層(B)とが、層(A)が最外層となるように交互に積層された熱伝導性絶縁シートを開示している(請求項1)。
上記熱伝導性絶縁シートは、窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラーを比較的多く含有する複数のシート(A’)と窒化ホウ素フィラーを比較的多く含有する1層以上のシート(B’)とをシート(B’)が最外層とはならないように交互に積層し、加圧することで、製造することができる(請求項5)。
特許第6135817号公報 特開2004−203015号公報 特開2008−308576号公報 特開2009−55021号公報 特開2012−33768号公報 特開2012−212727号公報
近年、エレクトロニクス分野において、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、および高出力化が著しく進み、それに伴って用いられる部材に要求される信頼性および性能のレベルも高くなっている。そのため、熱伝導性絶縁シートには、より高い電圧がかかっても絶縁破壊しない高い絶縁性を有し、長期間使用してもこの高い絶縁性を維持できる長期耐久性が求められるようになってきている。
一般的にボイドを含む絶縁体に対し印加電圧を上げていくと、以下のような過程を経て、最終的に絶縁破壊に至ると考えられている。まず、ボイドの存在により部分放電が開始し、表面侵食が起こる。さらに、表面侵食が進み、表面に断面視V字状のピット(くぼみ)が形成されると、このピットに放電が集中して先端の電界が高まって樹枝状(トリー状)の破壊が生じる。さらに、この樹枝状(トリー状)の破壊が長く伸びていき、最終的に絶縁破壊に至る。このように、絶縁破壊に至らない段階でも、絶縁体の損傷は起こっている。部分放電開始電圧が高い程、電圧がかかった場合の絶縁体の損傷が少なく、高絶縁性を長期に渡って維持する長期耐久性に優れる。
本発明の関連技術として、特許文献2〜6が挙げられる。
特許文献2には、有機結合剤に熱伝導フィラーを配合した熱伝導性組成物をシート状に成形して得られた熱伝導基材と、該熱伝導基材の一面又は両面へ熱可塑性樹脂エマルジョンをシート状に成形して得られた接着性表層を積層して得られる熱伝導シートにおいて、接着性表層が、空孔を有する平滑な表面を形成し、該表面の空孔は内部の空孔へと細径管にて連続した構造を有する熱伝導シートが開示されている(請求項1)。接着性表層の空孔は好ましくは、平均径10〜200μm、空隙率5〜70%である(請求項2)。
特許文献2に記載の熱伝導シートでは、接着性表層の表面及び内部に空孔を形成している。この空孔に、カルボン酸塩やスルホン酸塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤を含む水溶液又はイソプロピルアルコールやエタノール等の溶剤を含浸させることにより表示パネル及び放熱板への接着力を低下させて、リペアを容易に行うことができる(段落0031)。このように、特許文献2に記載の熱伝導シートでは、リペア目的のために、表面近傍の空隙率を高くしている。
特許文献3には、樹脂と平均粒径の比較的大きい第1の無機充填材と、平均粒径の比較的小さい第2の無機充填材とを混練してコンパウンドを作製する工程と、このコンパウンドを基材に塗布した塗布物を乾燥させた後、加重をかけて圧縮させる工程とを有する熱伝導性樹脂シートの製造方法が開示されている(請求項1)。この方法において、好ましくは、空隙率2%以下となるまで、加重をかけて圧縮させる(請求項2)。好ましくは、第1の無機充填材は球状充填材、第2の無機充填材は扁平状充填材である(請求項5)。
特許文献3では、平均粒径の異なる2種類の無機充填材を用いることで、全体の充填率を高め、空隙率を低減させている。しかしながら、特許文献3には、部分放電開始電圧については、記載も示唆もない。
特許文献4には、異方性黒鉛粒子を含む黒鉛層を有する熱伝導シートであって、前記黒鉛層は、前記熱伝導シートの面に対して一方向に二層以上で積層されており、前記各々の黒鉛層間は樹脂層で結合され、前記樹脂層全体の空隙の割合が30体積%以下であり、前記異方性黒鉛粒子は前記黒鉛層の面方向に配向しており、且つ前記黒鉛層は前記熱伝導シートの厚み方向に配向していることを特徴とする熱伝導シートが開示されている(請求項1)。樹脂層は、フィラー等の充填材が含有されていてもよい(段落0039)。
特許文献4では黒鉛層間を結合する樹脂層全体の空隙率を低く規定しているが、黒鉛層は導電性を有するため、特許文献4に開示の熱伝導シートは絶縁性シートでない。
特許文献5には、金属材料で構成された第1の被着体と、第2の被着体と、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接合する接着剤を含む接着層とを有し、前記接着剤は、高分子材料を含み、前記接着層の空隙率が0.1%以下である接着体が開示されている(請求項1)。好ましくは、接着層は熱伝導率の高いフィラーを含む(請求項4)。
特許文献5では、接着層全体の空隙率を低く規定しているが、表面近傍の空隙率の低下については、記載も示唆もない。
特許文献6には、樹脂および熱伝導性無機粒子を含有する樹脂組成物を準備する準備工程と、前記樹脂組成物を熱プレスし、溶融状態から半固形状態にした後、さらに、粘度を増加させることによりシート化するシート化工程とを有する熱伝導性シートの製造方法が開示されている(請求項1)。また、この熱伝導性シートの製造方法により得られ、空隙率が30体積%以下である熱伝導性シートが開示されている(請求項5)。
特許文献6では、熱伝導性シート全体の空隙率を低く規定しているが、表面近傍の空隙率の低下については、記載も示唆もない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化後に、高い絶縁破壊電圧と高い部分放電開始電圧とを有し、高い絶縁性を維持することが可能な熱伝導性絶縁シートを提供することを目的とする。
本発明はまた、高い絶縁破壊電圧と高い部分放電開始電圧とを有し、高い絶縁性を維持することが可能な熱伝導性絶縁膜を備えた複合部材を提供することを目的とする。
本発明の熱伝導性絶縁シートは、
熱伝導性絶縁フィラー(F)と熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂(R)の未硬化物および/または半硬化物とを含有し、25μm以上の厚みを有する熱伝導性絶縁シートであって、
熱伝導性絶縁フィラー(F)およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、熱伝導性絶縁フィラー(F)の占有体積率が40%よりも多く、
前記熱伝導性絶縁シートの断面において、シート断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率が30%以下であり、前記熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、前記熱伝導性絶縁シートの両方の表面から20μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下であり、前記熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、前記熱伝導性絶縁シートの両方の表面から10μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下であるものである。
本発明の複合部材は、
熱を発生し得る部材と放熱ベース基板とが、上記の本発明の熱伝導性絶縁シートの加熱加圧物からなる熱伝導性絶縁膜を介して接合され、
前記熱伝導性絶縁膜は、バインダー樹脂(R)の硬化物と熱伝導性絶縁フィラー(F)とを含むものである。
本発明によれば、硬化後に、高い絶縁破壊電圧と高い部分放電開始電圧とを有し、高い絶縁性を維持することが可能な熱伝導性絶縁シートを提供することができる。
本発明によればまた、高い絶縁破壊電圧と高い部分放電開始電圧とを有し、高い絶縁性を維持することが可能な熱伝導性絶縁膜を備えた複合部材を提供することができる。
[熱伝導性絶縁シート]
本発明の熱伝導性絶縁シートは、熱伝導性絶縁フィラー(F)と熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂(R)の未硬化物または半硬化物とを含有し、25μm以上の厚みを有する。本発明の熱伝導性絶縁シートにおいて、熱伝導性絶縁フィラー(F)およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、熱伝導性絶縁フィラー(F)の占有体積率が40%よりも多い。
本発明の熱伝導性絶縁シートにおいて、熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から20μm以内の領域を「表面近傍領域」と定義し、熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から10μm以内の領域を「表面近傍領域」と定義する。
本発明の熱伝導性絶縁シートにおいて、熱伝導性絶縁シートの断面において、シート断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率が30%以下である。さらに、熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から20μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下であり、熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から10μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下である。
本発明の熱伝導性絶縁シートは、各種電子部品(例えばパワー半導体素子等)等の熱を発生し得る部材(熱発生部材)とヒートシンク等の放熱部材の放熱ベース基板との間に配置し、加熱および加熱により硬化させて使用することができる。本明細書において、熱伝導性絶縁シートの加熱加圧物(硬化物)を「熱伝導性絶縁膜」と言い、熱発生部材/熱伝導性絶縁膜/放熱部材の放熱ベース基板からなる構造体を「複合部材」と言う。
上記用途で使用される熱伝導性絶縁シートは、より高い電圧がかかっても絶縁破壊しない高い絶縁性を有し、長期間使用してもこの高い絶縁性を維持できる長期耐久性を有することが好ましい。
一般的にボイドを含む絶縁体に対し印加電圧を上げていくと、以下のような過程を経て、最終的に絶縁破壊に至ると考えられている。まず、ボイドの存在により部分放電が開始し、表面侵食が起こる。さらに、表面侵食が進み、表面に断面視V字状のピット(くぼみ)が形成されると、このピットに放電が集中して先端の電界が高まって樹枝状(トリー状)の破壊が生じる。さらに、この樹枝状(トリー状)の破壊が長く伸びていき、最終的に絶縁破壊に至る。このように、絶縁破壊に至らない段階でも、絶縁体の損傷は起こっている。部分放電開始電圧が高い程、電圧がかかった場合の絶縁体の損傷が少なく、高絶縁性を長期に渡って維持する長期耐久性に優れる。
熱伝導性絶縁シートにおいては、シート全体のボイドが少ない程、硬化後の絶縁破壊電圧が高くなり、好ましい。また、表面近傍領域のボイドが少ない程、硬化後の部分放電開始電圧が高くなり、高い絶縁性を長期に渡って維持することが可能となり、好ましい。
本発明の熱伝導性絶縁シートでは、熱伝導性絶縁シートの断面において、シート断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率が30%以下、好ましくは25%以下である。この場合、硬化後の絶縁破壊電圧が高くなり、好ましい。
また、熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から20μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下、好ましくは7.7%以下であり、熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から10μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下、好ましくは7.7%以下である。この場合、硬化後の部分放電開始電圧が高くなり、好ましい。
本明細書において、熱伝導性絶縁シートの断面において、シート全体および表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率は、[実施例]の項に記載の方法にて求めることができる。
用いる熱伝導性絶縁フィラー(F)の種類と分布、およびバインダー樹脂(R)の種類と分布を調整することで、高熱伝導性を維持しつつ、シート全体および表面近傍領域のボイドの量を低減することができる。好ましい態様については、後記する。
熱伝導性絶縁フィラー(F)は熱伝導性を有するものであれば特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、および酸化マグネシウム等の金属酸化物;窒化アルミニウム、および窒化ホウ素等の金属窒化物;水酸化アルミニウム、および水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩;ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩;水和金属化合物;結晶性シリカ、非結晶性シリカ、炭化ケイ素、およびこれらの複合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上用いることができる。中でも、アルミナ、窒化アルミニウム、および窒化ホウ素等が好ましい。
熱伝導性絶縁フィラー(F)の形態は特に制限されず、一次粒子、一次粒子を造粒した造粒体、これらの凝集体、およびこれらの組合せが挙げられる。
熱伝導性絶縁フィラー(F)は、熱伝導率の高い窒化ホウ素フィラーを含むことが好ましい。一般的に窒化ホウ素フィラーは濡れ性が悪くまた形状が不揃いであるので、熱伝導性絶縁フィラー(F)として、窒化ホウ素フィラーのみを用いる場合、内部にボイドができやすい傾向がある。
高熱伝導率と低空隙率の観点から、熱伝導性絶縁フィラー(F)は、窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを含むことが好ましい。
高熱伝導率と低空隙率の観点から好ましい態様として、熱伝導性球状フィラー(F1)とバインダー樹脂(R)の未硬化物または半硬化物とを含有し、窒化ホウ素フィラー(F2)を含有し得る複数の層(A)と、窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)の未硬化物または半硬化物とを含有し、熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る1層以上の層(B)とを有し、層(B)が最外層とはならないように、層(A)と層(B)とが交互に積層された構造を有する熱伝導性絶縁シート(S)が挙げられる。
本明細書において、複数の層(A)のうち最も外側に位置する層を最外層(Aout)と言う。
熱伝導性絶縁シート(S)は、下記条件(1)〜(3)を充足することが好ましい。
(1)複数の層(A)のうち最も外側に位置する最外層(Aout)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(F1)の質量が、層(B)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(F1)の質量よりも相対的に多い。
(2)最外層(Aout)中の熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを合わせた占有体積率が、最外層(Aout)中における熱伝導性球状フィラー(F1)、窒化ホウ素フィラー(F2)、およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、50%よりも多い。
最外層(Aout)中の熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを合わせた占有体積率はより好ましくは、50%よりも多く90%以下である。
(3)層(B)は、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計100質量%中、窒化ホウ素フィラー(F2)を30〜90質量%含む。
熱伝導性絶縁シート(S)は奇数の層からなり、具体的な積層構造としては最も基本的な「最外層(Aout)/層(B)/最外層(Aout)]の他、「最外層(Aout)/層(B)/層(A)/層(B)/最外層(Aout)]、および「最外層(Aout)/層(B)/層(A)/層(B)/層(A)/層(B)/最外層(Aout)]等が挙げられる。
熱伝導性絶縁シート(S)において、最外層(Aout)の外表面は必要に応じて、剥離性シートで覆うことができる。
層(A)は熱伝導性球状フィラー(F1)を比較的多く含有する層であり、層(B)は窒化ホウ素フィラー(F2)を比較的多く含有する層である。
複数の層(A)のうち少なくとも最外層(Aout)中のバインダー樹脂(R)の含有量は、層(B)中のバインダー樹脂(R)の含有量も多いことが好ましい。
熱伝導性絶縁シート(S)は、熱伝導性球状フィラー(F1)と未硬化のバインダー樹脂(R)とを含有し、窒化ホウ素フィラー(F2)を含有し得る複数のシート(A’)と、窒化ホウ素フィラー(F2)と未硬化のバインダー樹脂(R)とを含有し、熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る1層以上のシート(B’)とが、シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層され、加圧された未硬化または半硬化の積層加圧シートであることが好ましい。
シート(A’)は好ましくは、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラー(F1)を30〜90質量%、窒化ホウ素フィラー(F2)を0〜30質量%含み、熱伝導性球状フィラー(F1)、窒化ホウ素フィラー(F2)、およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを合わせた占有体積率が50%よりも多い。
シート(A’)中の熱伝導性球状フィラー(F1)の濃度は、熱伝導性の点から好ましくは30質量%以上、塗膜形成性の点から好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは50〜80質量%の範囲である。
シート(B’)は好ましくは、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計100質量%中、窒化ホウ素フィラー(F2)を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(F1)を0〜30質量%含む。
シート(A’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(F1)の量が、シート(B’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(F1)の量よりも相対的に多い。
シート(B’)中の窒化ホウ素フィラー(F2)の濃度は、熱伝導性の点から好ましくは30質量%以上、膜形成性の点から好ましくは90質量%以下、より好ましくは40〜80質量%の範囲内である。
シート(B’)は、30質量%以下の範囲で熱伝導性球状フィラー(F1)を併用してもよい。
鱗片状の窒化ホウ素粒子に対して熱伝導性球状フィラー(F1)を併用する場合、熱伝導性球状フィラー(F1)がジャマ板の機能を担い、鱗片状の窒化ホウ素粒子がシート(B’)および窒化ホウ素フィラー(F2)を含有する層(B)中で「立ち」やすくなる。
造粒窒化ホウ素に対して熱伝導性球状フィラー(F1)を併用する場合、造粒窒化ホウ素が圧力をかけても崩れにくくなる傾向がある。ただし、熱伝導性球状フィラー(F1)の量が30質量%を超えると、シート(B’)中の窒化ホウ素フィラー(F2)が相対的に少なくなることで熱伝導性が低下したり、バインダー樹脂(R)量が不足して膜形成性が低下したりする恐れがある。
任意に用いられる熱伝導性球状フィラー(F1)は、シート(A’)に用いられる熱伝導性球状フィラー(F1)と同一でも非同一でもよい。
シート(A’)、(B’)はそれぞれ、さらに必要に応じて、難燃剤、充填剤、およびその他各種添加剤を含むことができる。
難燃剤としては例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、およびリン酸化合物等が挙げられる。
添加剤として例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時・高温時の信頼性を高めるためのイオン捕捉剤・酸化防止剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
熱伝導性絶縁シート(S)では、熱伝導性の高い窒化ホウ素フィラー(F2)を比較的多く含有するシート(B’)によって高い熱伝導性を確保することができるが、シート(B’)だけではボイドが生じやすい傾向がある。シート(A’)がボイドを生じにくい熱伝導性球状フィラー(F1)を比較的多く含有し、好ましくはバインダー樹脂(R)をシート(B’)より比較的多く含有することで、加圧後、好ましくはバインダー樹脂(R)が完全硬化しない温度で加熱および加圧後に、シート(B’)内のボイドが効果的に埋められ、熱伝導性絶縁シート(S)の全体のボイドの量を低減させ、熱伝導性絶縁シート(S)の全体の空隙率を低下させることができる。具体的には、熱伝導性絶縁シートの断面において、シート断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率を30%以下、好ましくは25%以下とすることができる。また、熱伝導性絶縁シート(S)の全体の空隙率を0.3以下とすることができる。
熱伝導性球状フィラー(F1)を比較的多く含有するシート(A’)は含まれるフィラーが球状であるので、無溶剤状態でもシート(A’)が加圧、好ましくは加熱および加圧により容易に変形しやすいと推察される。その結果、シート(A’)中に含まれ、シート(B’)との積層界面近傍に位置していた熱伝導性球状フィラー(F1)、バインダー樹脂(R)、および任意で含まれ得る窒化ホウ素フィラー(F2)の一部が、加圧、好ましくは加熱および加圧により、空隙の多いシート(B’)内のボイドを埋め、熱伝導性絶縁シート(S)全体の空隙率を低減することができると推察される。
熱伝導性絶縁シート(S)では、熱伝導性球状フィラー(F1)を比較的多く含有し、好ましくはバインダー樹脂(R)を比較的多く含有し、比較的変形しやすい層(A)が最外層に位置することにより、表面近傍領域のボイドの量を低減することができる。また、熱発生部材および放熱部材の表面凹凸に対する追従性、および熱発生部材と放熱部材との間の接着性を向上することができる。
熱発生部材と放熱部材との間に配置され、バインダー樹脂(R)が完全硬化する温度で加熱および加圧され硬化されることにより生成される熱伝導性絶縁膜では、加圧により、全体のボイドの量を効果的に低減させ、全体の空隙率を効果的に低下させることができる。具体的には、熱伝導性絶縁膜の断面において、膜断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率を20%以下、好ましくは18.5%以下とすることができる。また、熱伝導性絶縁膜の全体の空隙率を好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下とすることができる。
なお、加圧、好ましくは加熱および加圧により、シート(A’)中に含まれていた熱伝導性球状フィラー(F1)、バインダー樹脂(R)、および含まれ得る窒化ホウ素フィラー(F2)がどの程度シート(B’)に移行し、シート(B’)の空隙率を埋めたかを特定する手段がない(若しくは特定には非現実的な多大な労力を要す)。また、バインダー樹脂(R)、熱伝導性球状フィラー(F1)、および窒化ホウ素フィラー(F2)は不揮発性成分である。これらの点を考慮して、シート(A’)およびシート(B’)を加圧、好ましくは加熱および加圧した前後で占有体積率は変化しないとみなす。すなわち、便宜上、シート(A’)中に含まれていた各成分の量を層(A)中の量とし、便宜上シート(B’)中に含まれていた各成分の量を層(B)中の量とみなす。
各成分の占有体積率および空隙率は、[実施例]の項に記載の方法にて求めることができる。
(熱伝導性球状フィラー(F1))
本明細書において「球状」は、例えば、「円形度」で表すことができる。「円形度」は、粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)等で撮影した写真から任意の数の粒子を選び、粒子の面積をS、周囲長をLとしたとき、式:(円形度)=4πS/L2から求めることができる。本明細書において「球状の粒子」は特に明記しない限り、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子の平均円形度を測定した際の平均円形度が0.9〜1のものをいう。好ましくは、平均円形度が0.96〜1である。
熱伝導性球状フィラー(F1)の種類は、窒化ホウ素以外の熱伝導性を有するものであればよく、例えば、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、結晶性シリカ、および非結晶性シリカ等の金属酸化物;窒化アルミニウム等の金属窒化物;水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭化ケイ素等の金属炭化物;炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩;ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩;水和金属化合物;これらの組合せ等が挙げられる。これらは、1種または2種以上用いることができる。
球形度、熱伝導性、および絶縁性の観点から、熱伝導性球状フィラー(F1)は、アルミナおよび窒化アルミニウムからなる群より選ばれることが好ましい。
熱伝導性球状フィラー(F1)の平均粒子径は特に制限されず、熱伝導性および塗液中の分散性等の観点から、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。
(窒化ホウ素フィラー(F2))
窒化ホウ素フィラー(F2)の形態は特に制限されず、粉末状または粒状が挙げられる。例えば、鱗片状の一次粒子、鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体、およびこれらの凝集体等を使用することができる。鱗片状の窒化ホウ素粒子は熱伝導異方性を有するため、鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体またはその凝集体が好適に用いられる。加圧によりボイドを低減できることから、加圧により変形しやすい易変形性凝集体を用いることが好ましい。
本明細書でいう「易変形性凝集体」とは特に明記しない限り、平均一次粒子径が0.1〜15μmの窒化ホウ素粒子の造粒体からなり、平均粒子径が2〜100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素凝集体である。
本明細書において、「一次粒子」とは単独で存在することができる最小粒子を表し、「平均一次粒子径」とはSEM(走査型電子顕微鏡)等で観察される一次粒子径の長径を意味する。「一次粒子径の長径」とは、球状粒子については一次粒子の最大直径を意味し、六角板状または円板状粒子については厚み方向から観察した粒子の投影像における最大直径または最大対角線長を意味する。なお、「平均一次粒子径」は、300個の粒子の長径を上記方法により測定し、その個数平均として算出する。
圧縮変形率10%に要する平均圧縮力は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−210)を用い、測定領域内で無作為に選んだ10個の粒子について、粒子を10%変形させるための荷重を測定し、求めることができる。
(バインダー樹脂)
本発明の熱伝導性絶縁シートにおいて、バインダー樹脂として、少なくとも1種以上の熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂(R)を用いる。
熱硬化性のバインダー樹脂(R)としては特に制限されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、および塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書では、相互に反応し得る官能基を有する複数種の熱硬化性樹脂を用いる場合、量的に多い方を主剤、少ない方を硬化剤と称すこともある。
熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂(R)としては、未硬化または半硬化時の柔軟性が比較的高く、ボイドを効果的に低減できることから、ポリウレタン樹脂および/またはポリアミド樹脂が好ましい。
熱伝導性絶縁シート全体にバインダー樹脂(R)として未硬化または半硬化時の柔軟性が比較的高いポリウレタン樹脂および/またはポリアミド樹脂を用いることで、熱伝導性絶縁シート全体のボイドの量を効果的に低減することができる。
熱伝導性絶縁シートの最外層(Aout)となるシート(A’)のバインダー樹脂(R)として未硬化または半硬化時の柔軟性が比較的高いポリウレタン樹脂および/またはポリアミド樹脂を用いることで、熱伝導性絶縁シートの表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
本発明では必要に応じて、熱硬化性樹脂と加熱時に反応し得る官能基を有しない1種以上の他のバインダー樹脂を併用してもよい。
[熱伝導性絶縁シート(S)の製造方法の例]
熱伝導性絶縁シート(S)は、例えば以下のような方法で製造することができる。
30〜90質量%の熱伝導性球状フィラー(F1)、0〜30質量%の窒化ホウ素フィラー(F2)、未硬化のバインダー樹脂(R)(但し、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)と未硬化のバインダー樹脂(R)との合計量を100質量%とする)、溶剤、および必要に応じて他の任意成分を含有する塗液(A’’)を調製する。この塗液(A’’)を剥離性シートに塗工した後、溶剤を揮発乾燥して、剥離性シート付きのシート(A’)を作製する。
別途、上記と同様にして、30〜90質量%の窒化ホウ素フィラー(F2)、0〜30質量%の熱伝導性球状フィラー(F1)、未硬化のバインダー樹脂(R)(但し、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計量を100質量%とする)、溶剤、および必要に応じて他の任意成分を含有する塗液(B’’)を調製する。この塗液(B’’)を剥離性シートに塗工した後、溶剤を揮発乾燥して、剥離性シート付きのシート(B’)を作製する。
しかる後、剥離性シート付きのシート(B’)の剥離性シートとは反対側と、剥離性シート付きのシート(A’)の剥離性シートとは反対側とを互いに重ね合せる。重ね合せる際、加圧してもよい。
次いで、シート(B’)の表面を覆っていた剥離性シートを剥がし、露出したシート(B’)の表面に、他の剥離性シート付きのシート(A’)の剥離性シートとは反対側を重ね合せ、[剥離性シート/シート(A’)/シート(B’)/シート(A’)/剥離性シート]の積層構造を有する積層体を得る。
そして、上記積層体を加圧することによりシート(A’)/シート(B’)/シート(A’)を一体化し、「最外層(Aout)/層(B)/最外層(Aout)]の積層構造を有する熱伝導性絶縁シート(S)の両面が剥離性シートで覆われた積層体を得ることができる。同様の操作を繰り返すことで、5層以上の積層構造を有する熱伝導性絶縁シート(S)を形成することができる。なお、両面の剥離性シートを剥がした後に加圧してもよい。
シート(A’)形成用の塗液(A’’)、シート(B’)形成用の塗液(B’’)は、熱伝導性球状フィラー(F1)および/または窒化ホウ素フィラー(F2)、未硬化のバインダー樹脂(R)、溶剤、および必要に応じて他の任意成分を撹拌混合することで製造することができる。
撹拌混合には一般的な撹拌方法を用いることができる。撹拌混合機としては特に制限されず、例えば、ディスパー、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、メディアレス分散機、三本ロール、およびビーズミル等が挙げられる。
撹拌混合後は、塗液(A’’)および塗液(B’’)から気泡を除去するために、脱泡工程を実施することが好ましい。脱泡方法としては特に制限されず、例えば、真空脱泡および超音波脱泡等が挙げられる。
剥離性シートとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリイミドフィルム等の樹脂フィルムに離型処理したものが挙げられる。
剥離性シートへの塗液(A’’)および塗液(B’’)の塗工方法としては特に制限されず、例えば、ナイフコート、ブレードコオート、コンマコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーンコート、ディスペンサー、インクジェット、およびスピンコート等が挙げられる。
シート(A’)およびシート(B’)の厚みおよび単位面積当たりの塗工量は特に制限されない。シート(A’)の厚みに対してシート(B’)の厚みが相対的に充分厚い場合、積層により効果的に空隙を減少できる。例えば、[層(A)/層(B)/層(A)]の積層構造を有する熱伝導性絶縁シートの場合、層(A)形成用のシート(A’)の厚みは層(B)形成用のシート(B’)の半分程度であることが好ましい。ただし、各シートの厚みは、最終的に得られる[層(A)/層(B)/層(A)]の空隙率と熱伝導率を見ながら、積層時の加熱および加圧条件を勘案し決定することができる。
加圧圧着時の圧力は適宜選択することができるが、高圧にしすぎると窒化ホウ素フィラー(F2)が「寝て」しまうことで熱伝導性が低下する恐れがあり、低すぎるとシート内に空隙が残り、熱発生部材と放熱部材との間に挟み使用する際の熱伝導性が低下する恐れがある。
加圧プレス処理方法は特に制限されず、公知のプレス処理機およびラミネーター等を使用することができる。雰囲気を減圧にして大気圧との間に差を設けることで加圧プレスする方法でもよい。
ボイドを効果的に低減できることから、加圧圧着時に熱硬化性樹脂が完全硬化しない比較的低温で加熱を行うことが好ましい。
(熱伝導性絶縁シートのシート全体のボイドの量を効果的に低減する方法)
シート全体のボイドを効果的に低減し、シート全体に存在するボイドの占有面積率を30%以下、好ましくは25%以下とする方法としては特に制限されず、以下の方法が挙げられる。
上記したように、熱伝導性球状フィラー(F1)と未硬化のバインダー樹脂(R)とを含有し、窒化ホウ素フィラー(F2)を含有し得る複数のシート(A’)と、窒化ホウ素フィラー(F2)と未硬化のバインダー樹脂(R)とを含有し、熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る1層以上のシート(B’)とが、シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層され加圧された未硬化または半硬化の積層加圧シートである熱伝導性絶縁シート(S)では、シート製造時の加圧、好ましくは加熱および加圧により、シート全体のボイドの量を効果的に低減することができる。
また、熱伝導性絶縁シート全体にバインダー樹脂(R)として未硬化または半硬化時の柔軟性が比較的高いポリウレタン樹脂および/またはポリアミド樹脂を用いることで、熱伝導性絶縁シート全体のボイドの量を効果的に低減することができる。
(表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減する方法)
熱伝導性絶縁シートおよび/または熱伝導性絶縁膜の表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減する方法としては特に制限されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
<方法1>
熱伝導性絶縁シート(S)において、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のバインダー樹脂(R)と最外層(Aout)よりも内側に位置する内層を形成する1層以上のシート中のバインダー樹脂(R)の種類を変え、前者のバインダー樹脂(R)の粘度を後者のバインダー樹脂(R)の粘度よりも小さくする。この方法では、熱伝導性絶縁シート(S)製造時の加圧時、好ましくは加熱加圧時に最外層(Aout)が流動しやすく、表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
<方法2>
熱伝導性絶縁シート(S)において、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中に含まれる硬化剤の量を、最外層(Aout)よりも内側に位置する内層を形成する1層以上のシート中に含まれる硬化剤の量よりも少なくする。この方法では、後述する複合部材を製造する際、熱伝導性絶縁膜における最外層(Aout)の架橋度を低減し、柔軟性を高めることができる結果、表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
<方法3>
熱伝導性絶縁シート(S)において、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の熱伝導性絶縁フィラー(F)の粒子径を、最外層(Aout)よりも内側に位置する内層を形成する1層以上のシート中の熱伝導性絶縁フィラー(F)の粒子径よりも小さくする。この方法では、最外層(Aout)のフィラー間の空隙を低減することができる結果、表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
<方法4>
熱伝導性絶縁シート(S)において、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のバインダー樹脂(R)の含有量を、最外層(Aout)よりも内側に位置する内層を形成する1層以上のシート中のバインダー樹脂(R)の含有量よりも多くする。この方法では、熱伝導性絶縁シート(S)製造時の加圧時、好ましくは加熱加圧時に最外層(Aout)が流動しやすく、表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
<方法5>
比重を利用して熱伝導性絶縁フィラー(F)を熱伝導性絶縁シートの中央部に偏在するようにする。
例えば、熱伝導性絶縁フィラー(F)とバインダー樹脂(R)とを含む塗液を剥離性シート上に塗工し、熱伝導性絶縁フィラー(F)を沈降させながら乾燥する。このシートを2枚用意し、これら2枚のシートを剥離性シートを剥がしながら、熱伝導性絶縁フィラー(F)の多い側同士が互いに対向するように積層一体化する。この方法では、表面近傍領域のバインダー樹脂(R)の量を相対的に多くしてボイドの量を低減することができる。
<方法6>
熱伝導性絶縁シート(S)において、最外層(Aout)を形成するシート(A’)を予備プレスしてから、最外層(Aout)を形成するシート(A’)と最外層(Aout)よりも内側に位置する内層を形成する1層以上のシートとを積層し、加圧好ましくは加熱加圧する。この方法では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)を予備プレスしてシート(A’)内のボイドの量を低減させてから積層するので、表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
<方法7>
熱伝導性絶縁シート(S)を製造する際、最外層(Aout)を形成するシート(A’)を相対的に高い温度にして積層を行う。この方法では、熱伝導性絶縁シート(S)製造時の加圧時に最外層(Aout)が流動しやすく、表面近傍領域のボイドの量を効果的に低減することができる。
[熱伝導性絶縁シートの用途]
本発明の熱伝導性絶縁シートは、熱を発生し得る部材(熱発生部材)と放熱部材との間をつなぎ、熱を効率良く逃がす用途に好ましく用いられる。熱発生部材としては特に制限されず、熱を帯びやすく、性能劣化を防ぐためにその熱を外部に逃がす必要がある部材等が挙げられる。例えば、集積回路、ICチップ、ハイブリッドパッケージ、マルチモジュール、パワートランジスタ、パワー半導体パッケージ、面抵抗器、およびLED(発光ダイオード)用基板、および熱電変換モジュール等の各種電子部品;建材;車両、航空機、および船舶等の部材等が挙げられる。放熱部材としてはヒートシンク等が挙げられる。
[複合部材]
本発明の複合部材は、熱を発生し得る部材(熱発生部材)と放熱ベース基板とが、上記の本発明の熱伝導性絶縁シートの加熱加圧物からなる熱伝導性絶縁膜を介して接合されたものである。熱伝導性絶縁膜は、熱発生部材と放熱部材とを接着する接着層として機能することができる。
放熱ベース基板は、ヒートシンク等の放熱部材のベース基板であり、例えばアルミニウム等の金属基板である。
本発明の熱伝導性絶縁シートを熱発生部材と放熱ベース基板との間に配置した後、バインダー樹脂(R)が完全硬化する温度で加熱および加圧することで、本発明の複合部材を製造することができる。
熱伝導性絶縁シート(S)を用いる場合、熱伝導性絶縁シート(S)の製造工程において、複数のシート(A’)と1層以上のシート(B’)とを交互に積層する際の加圧力よりも、複合部材製造時の加圧力は高く設定することができる。
本発明によれば、熱伝導性絶縁膜の断面において、膜断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率が20%以下、好ましくは18.5%以下であり、熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、熱伝導性絶縁膜の両方の表面から20μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が5%以下、好ましくは4.5%以下であり、熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、熱伝導性絶縁膜の両方の表面から10μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が5%以下、好ましくは4.5%以下である複合部材を製造することができる。
加熱および加圧によって空隙率を低減することができるので、熱伝導性絶縁膜の空隙率は例えば0.2以下、好ましくは0.15以下である。
以上説明したように、本発明によれば、硬化後に、高い絶縁破壊電圧と高い部分放電開始電圧とを有し、高い絶縁性を維持することが可能な熱伝導性絶縁シートを提供することができる。
本発明によればまた、高い絶縁破壊電圧と高い部分放電開始電圧とを有し、高い絶縁性を維持することが可能な熱伝導性絶縁膜を備えた複合部材を提供することができる。
以下、本発明に係る実施例および比較例について、説明する。なお、[実施例]の項において、「部」は特に明記しない限り、「質量部」を表す。
[フィラーの評価項目と評価方法]
(平均粒子径)
熱伝導性球状フィラー(F1)の平均粒子径は、Malvern Instruments社製粒度分布計マスターサイザー2000を用いて測定した。測定の際には乾式ユニットを用い、空気圧は2.5バールとした。フィード速度はサンプルにより最適化した。
(円形度)
熱伝導性球状フィラー(F1)の円形度は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定した。トルエン10mlに測定粒子約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射した。分散液濃度は5,000〜2万個/μlとした。この分散液を用い、上記装置により測定を行い、円相当径粒子群の円形度を測定し、平均円形度を求めた。
(圧縮変形率10%に要する平均圧縮力)
窒化ホウ素凝集体の圧縮変形率10%に要する平均圧縮力は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−210)を用いて測定した。測定領域内で無作為に選んだ10個の粒子について、粒子を10%変形させるための荷重を測定し、その平均値を圧縮変形率10%に要する平均圧縮力とした。
[樹脂溶液の評価項目と評価方法]
(固形分量)
薄型蓋付き金属容器内に樹脂溶液1gを量り採り、200℃のオーブンで20分間加熱した後の残質量を測定し、次式により固形分量を求めた。
固形分量(質量%)=(残質量(g)/1g)×100
(重量平均分子量(MW))
東ソー製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HLC8220GPC」を用いて、Mwを測定した。GPCは、溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質を分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。
カラムとして、2本の「TOSOH TSKgel Super HZM-N」(東ソー社製)を直列に接続したものを用い、試料濃度0.1質量%、流量0.34ml/min、圧力7.4MPa、カラム温度40℃の条件で、測定を実施して、ポリスチレン換算のMwを求めた。装置内蔵ソフトを使用して、検量線の作成、分子量およびピーク面積の算出を行い、保持時間5〜9.85分の範囲を分析対象としてMwを求めた。
(酸価)
共栓付き三角フラスコ内に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解した。これに、指示薬としてフェノールフタレイン試液を加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液を徐々に滴下した。酸価は次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
上記式中、各符号は以下のパラメータを示す。
S:試料の採取量(g)、
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)、
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価。
<末端カルボン酸を有しないフェノール性水酸基含有ポリアミドのフェノール性水酸基価>
フェノール性水酸基価は、フェノール性水酸基含有ポリアミド1g中に含まれるフェノール性水酸基の量を、フェノール性水酸基をアセチル化させたときにフェノール性水酸基と結合した酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量(mg)で表したものである。末端カルボン酸を有しないフェノール性水酸基含有ポリアミドのフェノール性水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定した。
<末端カルボン酸を有するフェノール性水酸基含有ポリアミドのフェノール性水酸基価>
末端カルボン酸を有するフェノール性水酸基含有ポリアミドのフェノール性水酸基価は、以下の方法により求めた。
共栓付き三角フラスコ内に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解した。これにアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量を100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間攪拌した。これに、指示薬としてフェノールフタレイン試液を加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで、0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液を徐々に滴下した。水酸基価は次式により求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.05}/S]+D
上記式中、各符号は以下のパラメータを示す。
S:試料の採取量(g)、
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)、
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)、
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価、
D:酸価(mgKOH/g)。
(アミン価)
共栓付き三角フラスコ内に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解した。これに、0.20gのメチルオレンジを蒸溜水50mLに溶解した液と、0.28gのキシレンシアノールFFをメタノール50mLに溶解した液とを混合して調製した指示薬を2、3滴加え、30秒間保持した。その後、溶液が青灰色を呈するまで、0.1Nアルコール性塩酸溶液を徐々に滴下した。アミン価は次式により求めた。
アミン価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
上記式中、各符号は以下のパラメータを示す。
S:試料の採取量(g)、
a:0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(mL)、
F:0.1Nアルコール性塩酸溶液の力価。
(ガラス転移温度(Tg))
メトラー・トレド社製「DSC−1」を用いて、樹脂のTgを測定した。溶剤を乾燥除去したサンプル約5mgをアルミニウム製標準容器内に量り採り、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒、昇温速度2℃/分、−80〜200℃の温度範囲の条件にて測定を行い、可逆成分の示差熱曲線からTgを求めた。
(粘度)
樹脂溶液10gをガラス製のスクリュー管に入れ、これを25℃の恒温槽内に一晩静置した後、B型粘度計(東機産業社製 TVB−15)を用い、ロータNo.4、回転数30rpmの条件で、粘度を測定した。
[熱伝導性絶縁フィラー(F)]
用いた熱伝導性絶縁フィラー(F)は、以下の通りである。
(熱伝導性球状フィラー(F1))
ao509:平均円形度0.99、平均粒子径10μmである球状アルミナ((株)アドマテックス製アドマファインAO−509)、
A30:平均円形度0.99、平均粒子径30μmである球状アルミナ(昭和電工株式会社製CB−A30S)、
daw45:平均円形度0.99、平均粒子径45μmである球状アルミナ(デンカ株式会社製DAW−45)。
(窒化ホウ素フィラー(F2))
PTX60:圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が3.6mNであり、平均粒子径が55〜65μmである造粒窒化ホウ素フィラー(モメンティブ製PTX−60)、
agg100:圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が1.32mNであり、平均粒子径が65〜85μmである造粒窒化ホウ素フィラー(スリーエムジャパン株式会社製、Agglomerates100)。
[合成例1]樹脂RAの溶液の合成
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、および温度計を備えた4口フラスコに、多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン社製)を86.8部、5−ヒドロキシイソフタル酸を27.3部、ポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン社製)を146.4部、イオン交換水を100部仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定した後、110℃まで昇温した。さらに水の流出を確認してから30分後に温度を120℃に昇温した。その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になった後、その温度を維持して3時間反応を続けた。さらに、約2kPaの真空下で、1時間保持した後、温度を低下させた。
最後に、酸化防止剤を添加し、温度が100℃以下になった時点で、トルエンと2−プロパノール(質量比1/1)の混合溶剤を用いて希釈した。以上のようにして、固形分量40質量%、Mw19,000、粘度20,000mPa・sのフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(樹脂RA)の溶液を得た。
[合成例2]樹脂RBの溶液の合成
撹拌機、水分定量受器を付けた還流冷却管、窒素導入管、および温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36の多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン株式会社製、酸価194KOHmg/g)を70.78部、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として5−ヒドロキシイソフタル酸(スガイ化学社製、以下「5−HIPA」ともいう)を5.24部、炭素数36のポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン株式会社製、酸価210KOHmg/g)を82.84部、トルエンを4.74部仕込んだ。これらの混合物を撹拌しながら、水の流出を確認しつつ、温度を220℃まで昇温し、脱水反応を続けた。1時間ごとにサンプリングを行い、Mwが40,000になったことを確認し、充分に冷却した後、シクロヘキサノン40部、トルエン91.34部、およびイソプロピルアルコール96.12部を希釈溶剤として加え、充分に溶解させた。以上のようにして、固形分量40.2質量%、Mw41,038、粘度9,580mPa・sのフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(樹脂RB)の溶液を得た。
[合成例3]樹脂RCの溶液の合成
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られたポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP−1011」、Mn=1006)401.9部、ジメチロールブタン酸12.7部、イソホロンジイソシアネート151.0部、およびトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させた。これにトルエン300部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次に、イソホロンジアミン27.8部、ジ−n−ブチルアミン3.2部、2−プロパノール342.0部、およびトルエン396.0部を混合した溶液に、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液815.1部を添加し、70℃3時間反応させた。反応終了後に、トルエン144.0部および2−プロパノール72.0部の混合溶剤を用いて希釈した。以上のようにして、固形分量30質量%、Mw120,000、粘度3,000mPa・sの熱硬化性のポリウレタンポリウレア樹脂(樹脂RC)の溶液を得た。
[合成例4]樹脂RDの溶液の合成
撹拌機、水分定量受器を付けた還流冷却管、窒素導入管、および温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36の多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン株式会社製、酸価194KOHmg/g)を69.15部、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として5−ヒドロキシイソフタル酸(スガイ化学社製、以下「5−HIPA」ともいう)を5.55部、炭素数36のポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン株式会社製、酸価210KOHmg/g)を88.08部、トルエンを4.77部仕込んだ。これらの混合物を撹拌しながら、水の流出を確認しつつ、温度を220℃まで昇温し、脱水反応を続けた。1時間ごとにサンプリングを行い、Mwが20,000になったことを確認し、冷却した後、トルエン117.63部およびイソプロピルアルコール117.63部を希釈溶剤として加え、75℃で充分に溶解させた。以上のようにして、固形分量40.9質量%、Mw20,219、粘度8,500mPa・sのフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(樹脂RD)の溶液を得た。樹脂RDは樹脂RA、RBよりも低分子量の熱硬化性のポリアミド樹脂である。
[製造例1]シート(A’)を含む中間積層体(MA1’)の製造
実施例1〜7、11〜16、比較例1、2の各例においては、表1に示す組成の層(A)形成用のシート(A’)を含む中間積層体(MA1’)を製造した。表1において、層(A)の項内の「vol%」は、各成分の占有体積率である。
表1において「層(A)」の項に示す樹脂の溶液とアルミナ(熱伝導性球状フィラー(F1))とBN(窒化ホウ素フィラー(F2))、および、硬化剤としてのTETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)(5%トルエン溶液)を、混合溶剤(トルエンと2−プロパノールとを質量比1対1で混合した混合溶剤)に溶解し、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡して塗液を得た。
塗液中の樹脂、アルミナ、BNの配合量は、層(A)中の樹脂、アルミナ、およびBNの占有体積率が表1に記載の値となるように調整した。硬化剤の使用量は、樹脂固形分100質量部に対して硬化剤固形分が2質量部となるようにした。混合溶剤の添加量は、塗液の固形分量が60質量%となるように調整した。
次いで、ブレードコーターを用いて、剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に上記塗液を塗工し、100℃で2分間乾燥して、シート(A’)の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MA1’)を得た。
なお、実施例16以外の実施例および比較例1、2では、5.5MILのブレードコーターを用い、実施例16では、3MILのブレードコーターを用いて、塗工を実施した。用いるブレードコーターのMIL値によって、塗工厚を調整することができる。
シート(A’)中の各成分の占有体積率は、各成分の質量と比重から理論的に求めた。なお、熱伝導性絶縁フィラー以外のその他の成分は、「1(g/cm)」と概算した。また、シート(A’)中の各成分の占有体積率は、シート(A’)を用いて形成される層(A)中の各成分の占有体積率と同一とみなした。シート(B’)および層(B)についても、同様である。
例えば、シート(A’)中の熱伝導性球状フィラー(F1)の占有体積率、窒化ホウ素フィラー(F2)の占有体積率、および熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)との合計の占有体積率は、以下のようにして理論的に求めた。
(1)熱伝導性球状フィラー(F1)の質量(g)÷フィラー比重(g/cm
(2)窒化ホウ素フィラー(F2)の質量(g)÷フィラー比重(g/cm
(3)熱伝導性絶縁フィラー以外のその他の成分(g)÷1(g/cm
熱伝導性球状フィラー(F1)の占有体積率(vol%)=100×{(1)/((1)+(2)+(3))}
窒化ホウ素フィラー(F2)の占有体積率(vol%)=100×{(2)/((1)+(2)+(3))}
熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)の合計の占有体積率(vol%)=100×{((1)+(2))/((1)+(2)+(3))}
[製造例2]シート(A’)を含む中間積層体(MA2’)の製造
実施例8〜10の各例においては、表1に示す組成の層(A)形成用のシート(A’)を含む中間積層体(MA2’)を製造した。
製造例1と同様の方法にて、塗液を得た。ブレードコーターを用いて、剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に上記塗液を塗工し、さらにその上に剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)を重ね、100℃で2分間乾燥した。このようにして、シート(A’)の両面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MA2’)を得た。
なお、実施例8〜10では、5.5MILのブレードコーターを用いて、塗工を実施した。用いるブレードコーターのMIL値によって、塗工厚を調整することができる。
[製造例3]シート(B’)を含む中間積層体(MB’)の製造
実施例1〜16、比較例1、2の各例においては、表1に示す組成の層(B)形成用のシート(B’)を含む中間積層体(MB’)を製造した。表1において、層(B)の項内の「vol%」はアルミナまたはBNの占有体積率である。
表1において「層(B)」の項に示す樹脂の溶液とアルミナ(熱伝導性球状フィラー(F1))とBN(窒化ホウ素フィラー(F2))、および、硬化剤としてのTETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)(5%トルエン溶液)を、混合溶剤(トルエンと2−プロパノールとを質量比1対1で混合した混合溶剤)に溶解し、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡して塗液を得た。
塗液中の樹脂、アルミナ、BNの配合量は、層(B)中の樹脂、アルミナ、およびBNの占有体積率が表1に記載の値となるように調整した。硬化剤の使用量は、樹脂固形分100質量部に対して硬化剤固形分が2質量部となるようにした。混合溶剤の添加量は、塗液の固形分量が50質量%となるように調整した。
ブレードコーターを用いて、剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に上記塗液を塗工し、100℃で2分間乾燥して、シート(B’)の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MB’)を得た。
なお、実施例16以外の実施例および比較例1、2では、11MILのブレードコーターを用い、実施例16では、5.5MILのブレードコーターを用いて、塗工を実施した。用いるブレードコーターのMIL値によって、塗工厚を調整することができる。
[実施例1〜16、比較例1、2]
実施例1〜16、比較例1、2の各例においては、以下の積層方法αまたは積層方法βにて、層(A)/層(B)/層(A)の3層構造の未硬化または半硬化の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体、または、層(A)/層(B)/層(A)/層(B)/層(A)の5層構造の未硬化または半硬化の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。各層の組成、積層数、および積層方法を表1に示す。 得られた積層体を用いて、熱伝導性絶縁シートの評価を実施した。
(積層方法α)
シート(A’)の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MA1’)から10cm×10cmの大きさで必要な枚数の積層体を切出した。また、シート(B’)の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MB’)から10cm×10cmの大きさで必要な枚数の積層体を切出した。
はじめに、第1の中間積層体(MA1’)の剥離性シートとは反対側と、第1の中間積層体(MB’)の剥離性シートとは反対側とを合わせ、ロールラミネーターにて貼り合せた。ラミネート条件は、一対のロール温度80℃、ラミネート圧1.5MPa、速度0.5m/分とした。
次に、第1の中間積層体(MB’)の剥離性シートを剥離し、露出したシート(B’)の表面に、第2の中間積層体(MA1’)の剥離性シートとは反対側を上記と同様に貼り合せた。このようにして、層(A)/層(B)/層(A)の3層構造の未硬化または半硬化の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。
実施例11ではさらに、3層構造の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた上記積層体に対して、上記と同様の操作を繰り返すことで、層(A)/層(B)/層(A)/層(B)/層(A)の5層構造の積層加圧シートである未硬化または半硬化の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。
(積層方法β)
シート(A’)の両面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MA2’)を、ロールラミネーターにて予備プレスした。予備プレス後の中間積層体(MA2’)を予備プレス積層体(MA2’−P)と言う。ラミネート条件は、一対のロール温度80℃、ラミネート圧1.5MPa、速度0.5m/分とした。予備プレスにより、シート(A’)内のボイドの量をあらかじめ低減させることができる。
予備プレス積層体(MA2’−P)から一方の剥離性シートを剥がした後、10cm×10cmの大きさで必要な枚数の積層体を切出した。また、シート(B’)の一方の面が剥離性シートで覆われた中間積層体(MB’)から10cm×10cmの大きさで必要な枚数の積層体を切出した。これらの積層体を用いた以外は積層方法αと同様にして、層(A)/層(B)/層(A)の3層構造の未硬化または半硬化の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を得た。
[熱伝導性絶縁シートの評価項目と評価方法]
(熱プレス前のフィラーの占有体積率)
シート全体のフィラーの占有体積率は、シート(A’)、シート(B’)中のフィラーの占有体積率から、理論的に求めた。
(熱プレス前後の膜厚)
3層構造または5層構造の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体から、5cm×5cmの大きさのサンプルを2枚切り出した。
一方のサンプルから両面の剥離性シートを剥離し、得られた熱伝導性絶縁シートの4隅および中央の膜厚を株式不会社ニコン製DIGIMICROSTANDMS−5Cを用いて測定し、平均値を求めた。これを熱プレス前の膜厚(熱伝導性絶縁シートの膜厚)とした。
他方のサンプルを3MPaの圧力、150℃で1時間熱プレスした後、両面の剥離性シートを剥離した。熱プレス前と同様に、熱プレス後の熱伝導性絶縁シート(複合部材中の熱伝導性絶縁膜に相当)の4隅および中央の膜厚を測定し、平均値を求めた。これを熱プレス後の膜厚(熱伝導性絶縁膜の膜厚)とした。
(熱プレス前後のボイドの占有面積率)
3層構造または5層構造の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体から10cm×10cmの大きさのサンプルを2枚切り出した。
一方のサンプルから両面の剥離性シートを剥離して、熱伝導性絶縁シートを得た。シリコン基板上に得られた熱伝導性絶縁シートを貼り付け、更にこれらを一対のスライドガラスでサンドした後、クロスセクションポリッシャーを用いて厚み方向に垂直に切削して、断面を切出した。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて切出した断面を撮影し、得られた画像を2値化し、白色部をフィラーと樹脂、黒色部をボイドとして画像解析を行い、シート全体および表面近傍領域のボイドの占有面積率を求めた。なお、表面近傍領域は具体的には、熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から20μm以内の領域であり、熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、熱伝導性絶縁シートの両方の表面から10μm以内の領域である。
他方のサンプルを両面の剥離性シートが付いた状態で3MPaの圧力、150℃で1時間熱プレスし、両面の剥離性シートを剥離した。熱プレス後の熱伝導性絶縁シート(複合部材中の熱伝導性絶縁膜に相当)について、上記と同様の方法にて、膜全体および表面近傍領域のボイドの占有面積率を求めた。表面近傍領域は具体的には、元の熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、熱伝導性絶縁膜の両方の表面から20μm以内の領域であり、元の熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、熱伝導性絶縁膜の両方の表面から10μm以内の領域である。
(熱プレス前後の空隙率)
熱プレス前の熱伝導性絶縁シートの空隙率は、下記式を用いて算出した。
空隙率=1−(熱伝導性絶縁シートの実測密度/熱伝導性絶縁シートの理論密度)
熱伝導性絶縁シートの実測密度=熱伝導性絶縁シートの質量(g)/熱伝導性絶縁シートの体積(cm
熱伝導性絶縁シートの理論密度=複数のシート(A’)および1層以上のシート(B’)の質量の和(g)/複数のシート(A’)および1層以上のシート(B’)の体積の和(cm
シート(A’)またはシート(B’)の体積=シート(A’)またはシート(B’)の質量(g)/シート(A’)またはシート(B’)の密度(g/cm
熱伝導性球状フィラー(F1)および窒化ホウ素フィラー(F2)等の密度は一般的なデータを用いることができる。
バインダー樹脂およびその他の有機成分の密度は、「1(g/cm)」と概算した。
熱プレス後に得られる熱伝導性絶縁膜についても同様に、式:空隙率=1−(実測密度/理論密度)から、空隙率を理論的に求めた。
(耐電圧(絶縁破壊電圧))
3層構造または5層構造の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体から一方の剥離性シートを剥離し、アルミウム板と重ね合わせ、3MPaの圧力、150℃で1時間熱プレスして、熱伝導性絶縁シートをその加熱加圧物である熱伝導性絶縁膜とした。その後、他方の剥離性シートを剥がし、25℃、50%RHで一晩放置した。その後、同環境下でTM650耐電圧試験器(鶴賀電気株式会社製)を用いて、耐電圧(絶縁破壊電圧)を測定した。
(部分放電開始電圧)
3層構造または5層構造の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体から両面の剥離性シートを剥離し、熱伝導性絶縁シートを得た。評価用半導体パッケージの底面(材質:銅)と1mm厚のアルミニウム板との間に得られた熱伝導性絶縁シートを挟み、3MPaの圧力、150℃で1時間熱プレスして、熱伝導性絶縁シートをその加熱加圧物である熱伝導性絶縁膜とした。総研電気(株)製DAC−PD−7を用い、アルミニウム板をアースし、3M製フロリナートFC−3283中で部分放電開始電圧を測定した。測定条件は0〜3kV、50V/sとし、部分放電の閾値は5pCとした。
部分放電の閾値が5pCであるとき、部分放電開始電圧が1.5kV以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が3kV超である場合に実用上充分であると判定され、部分放電開始電圧が1.5kV未満である、および/または、絶縁破壊電圧が3kV以下である場合に実用上不充分であると判定される。
(熱伝導率)
3層構造または5層構造の熱伝導性絶縁シートの両面が剥離性シートで覆われた積層体を3MPaの圧力、150℃で1時間熱プレスした後、両面の剥離性シートを剥離した。熱プレス後の熱伝導性絶縁シート(複合部材中の熱伝導性絶縁膜に相当)から15mm角のシートを切り出し、その表面に金を蒸着し、さらにカーボンスプレーによりカーボンを被覆した。得られたサンプルについて、キセノンフラッシュアナライザーLFA447NanoFlash(NETZSCH社製)を用いて、25℃での熱拡散率を測定した。比熱容量はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の高感度型示差走査熱量計DSC220Cを用いて測定した。密度は組成からの計算値を用いた。これらパラメータから、熱伝導率を求めた。
[評価結果]
評価結果を表2に示す。
実施例1〜16ではいずれも、熱プレス後に、全体的にボイドが少なく、耐電圧(絶縁破壊電圧)の高い熱伝導性絶縁シートを製造することができた。実施例1〜16ではいずれも、比較例1、2に比して、熱プレス後に、表面近傍領域のボイドが少なく、部分放電開始電圧が高い熱伝導性絶縁シートを製造することができた。実施例1〜16で得られた熱伝導性絶縁シートは、熱プレス後の熱伝導率も高く、良好であった。
実施例1、2では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のアルミナの粒子径をシート(B’)中のアルミナの粒子径よりも小さくすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例3では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のBNとして、平均粒子径が2〜100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の変形しやすい窒化ホウ素凝集体(易変形性凝集体)を用いたことで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例4では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の樹脂として、比較的柔軟なポリウレタンポリウレア樹脂を用いることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例5では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の樹脂として、比較的低分子量であり比較的低粘度のポリアミド樹脂を用いることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例6では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の樹脂の量をシート(B’)中の樹脂の量よりも多くすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例7では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の樹脂の量をシート(B’)中の樹脂の量よりも多くし、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のアルミナの粒子径をシート(B’)中のアルミナの粒子径よりも小さくすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例8〜10では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)を予備プレスすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例11、12では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のアルミナの粒子径をシート(B’)中のアルミナの粒子径よりも小さくすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例13では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のアルミナの粒子径を小さくすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例14では、シート(B’)中の樹脂として比較的硬質で高粘度のポリアミド樹脂を用いて、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の樹脂の粘度をシート(B’)中の樹脂の粘度よりも相対的に低くし、また、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のアルミナの粒子径をシート(B’)中のアルミナの粒子径よりも小さくすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例15では、シート(B’)中の樹脂として比較的硬質で高粘度のポリアミド樹脂を用いて、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中の樹脂の粘度をシート(B’)中の樹脂の粘度よりも相対的に低くすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
実施例16では、最外層(Aout)を形成するシート(A’)中のアルミナの粒子径を小さくすることで、表面近傍領域のボイドを効果的に低減することができた。
比較例1、2では、表面近傍領域のボイドを効果的に低減する手段を講じなかったため、得られた熱伝導性絶縁シートは、実施例1〜16に比して、熱プレス後において、表面近傍領域のボイドが多く、部分放電開始電圧が低くなった。
Figure 0006866799
Figure 0006866799
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。

Claims (11)

  1. 熱伝導性絶縁フィラー(F)と熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂(R)の未硬化物および/または半硬化物とを含有し、25μm以上の厚みを有する熱伝導性絶縁シートであって、
    熱伝導性絶縁フィラー(F)およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、熱伝導性絶縁フィラー(F)の占有体積率が40%よりも多く、
    前記熱伝導性絶縁シートの断面において、シート断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率が30%以下であり、前記熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、前記熱伝導性絶縁シートの両方の表面から20μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下であり、前記熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、前記熱伝導性絶縁シートの両方の表面から10μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が8%以下である、熱伝導性絶縁シート。
  2. 熱伝導性絶縁フィラー(F)は、窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを含む、請求項1に記載の熱伝導性絶縁シート。
  3. 熱伝導性球状フィラー(F1)は、アルミナおよび窒化アルミニウムからなる群より選ばれ、窒化ホウ素フィラー(F2)は、鱗片状の一次粒子、および鱗片状の一次粒子を造粒した造粒体からなる群より選ばれる、請求項2に記載の熱伝導性絶縁シート。
  4. 窒化ホウ素フィラー(F2)は、平均一次粒子径が0.1〜15μmの窒化ホウ素粒子を造粒してなる、平均粒子径が2〜100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素凝集体を含む、請求項2または3に記載の熱伝導性絶縁シート。
  5. 熱伝導性球状フィラー(F1)とバインダー樹脂(R)の未硬化物および/または半硬化物とを含有し、窒化ホウ素フィラー(F2)を含有し得る複数の層(A)と、窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)の未硬化物および/または半硬化物とを含有し、熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る1層以上の層(B)とを有し、複数の層(A)と1層以上の層(B)とは、層(B)が最外層には位置しないように交互に積層されたものであり、下記条件(1)〜(3)を充足する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シート。
    (1)複数の層(A)のうち最も外側に位置する最外層(Aout)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(F1)の質量が、層(B)に含まれ得る熱伝導性球状フィラー(F1)の質量よりも相対的に多い。
    (2)最外層(Aout)中の熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを合わせた占有体積率が、最外層(Aout)中における熱伝導性球状フィラー(F1)、窒化ホウ素フィラー(F2)、およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、50%よりも多い。
    (3)層(B)は、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計100質量%中、窒化ホウ素フィラー(F2)を30〜90質量%含む。
  6. 熱伝導性球状フィラー(F1)と未硬化のバインダー樹脂(R)とを含有し、窒化ホウ素フィラー(F2)を含有し得る複数のシート(A’)と、窒化ホウ素フィラー(F2)と未硬化のバインダー樹脂(R)とを含有し、熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る1層以上のシート(B’)とが、シート(B’)が最外層とはならないように交互に積層され加圧された未硬化または半硬化の積層加圧シートであり、下記条件(1)〜(3)を充足する、請求項5に記載の熱伝導性絶縁シート。
    (1)シート(A’)は、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計100質量%中、熱伝導性球状フィラー(F1)を30〜90質量%、窒化ホウ素フィラー(F2)を0〜30質量%含み、熱伝導性球状フィラー(F1)、窒化ホウ素フィラー(F2)、およびバインダー樹脂(R)の合計体積100%中、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とを合わせた占有体積率が50%よりも多い。
    (2)シート(B’)は、熱伝導性球状フィラー(F1)と窒化ホウ素フィラー(F2)とバインダー樹脂(R)との合計100質量%中、窒化ホウ素フィラー(F2)を30〜90質量%含み、熱伝導性球状フィラー(F1)を0〜30質量%含む。
    (3)シート(A’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(F1)の量が、シート(B’)に含まれる熱伝導性球状フィラー(F1)の量よりも相対的に多い。
  7. 前記熱硬化性樹脂は、熱硬化性ポリウレタン樹脂および熱硬化性ポリアミド樹脂からなる群より選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シート。
  8. シート全体の空隙率が0.3以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シート。
  9. 熱を発生し得る部材と放熱ベース基板とが、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シートの加熱加圧物からなる熱伝導性絶縁膜を介して接合され、
    前記熱伝導性絶縁膜は、バインダー樹脂(R)の硬化物と熱伝導性絶縁フィラー(F)とを含む、複合部材。
  10. 前記熱伝導性絶縁膜の断面において、膜断面積100%に対して、断面全体に存在するボイドの占有面積率が20%以下であり、前記熱伝導性絶縁シートの厚みが80μm以上であるとき、前記熱伝導性絶縁膜の両方の表面から20μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が5%以下であり、前記熱伝導性絶縁シートの厚みが25μm以上80μm未満であるとき、前記熱伝導性絶縁膜の両方の表面から10μm以内の表面近傍領域に存在するボイドの占有面積率が5%以下である、請求項9に記載の複合部材。
  11. 前記熱伝導性絶縁膜全体の空隙率が0.2以下である、請求項9または10に記載の複合部材。
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