JP7110977B2 - 熱伝導性絶縁シート及び複合部材 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた熱伝導性と絶縁性とを有する熱伝導性絶縁シートと該シートを用いた複合部材に関する。
近年、エレクトロニクス分野において、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、及び高出力化が著しく進み、それに伴い要求される信頼性及び性能のレベルも高くなっている。例えば、電子回路の高密度化及び高出力化に伴う絶縁信頼性の向上、並びに、発熱による電子部材の劣化を防ぐための放熱性(熱伝導性)の性能の向上が強く求められるようになっている。
また、部材の軽量化を狙い、上記課題を高分子材料を用いて克服しようとする試みも始まり、絶縁性を有する高分子材料と熱伝導性粒子とを含む熱伝導性絶縁層を有するシート(熱伝導性絶縁シート、熱伝導性絶縁シート、及び熱伝導性絶縁粘着シート等)の開発が進んでいる。
熱伝導性部材に使用される熱伝導粒子の開発も精力的に行われている。熱伝導粒子としては、価格、信頼性、及び熱伝導性を鑑み、アルミナ、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が好ましく用いられる。例えば、パワー半導体等の高出力デバイスを狙った熱伝導性接着シートなどでは、窒化ホウ素を用いた開発事例が数多く報告されている。
しかしながら、熱伝導性フィラーとして造粒窒化ホウ素を用いると、膜厚方向への熱伝導性は向上するが、シート内のボイド(微小空洞)が多くなり絶縁性が低下する。
この課題を解決するため、特許文献1では、造粒窒化ホウ素を多く含む熱伝導層の両面を、熱伝導性球状フィラーを多く含む空隙充填層で挟み込み熱伝導層のボイドを埋めることで、高絶縁性と高熱伝導率とを両立させている。
特開2017-168813号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、シートの膜厚が厚くなるため、熱抵抗値(すなわち膜厚/熱伝導率)が高くなる。
よって、本発明は、薄膜化することで熱抵抗値を低減しつつ、シート内の空隙を低減して絶縁性を両立する熱伝導性絶縁シートを提供することを目的とする。
本発明は以下の発明〔1〕~〔4〕に関する。
〔1〕 熱伝導性フィラー及びバインダー成分を含有する熱伝導性絶縁シートであって、下記条件(1)~(4)の全てを満たす熱伝導性絶縁シート。
(1)前記熱伝導性フィラーが、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)を含有する。
(2)前記熱伝導性絶縁シートの膜厚が、20~80μmである。
(3)前記熱伝導性絶縁シート中の熱伝導性フィラー含有量が、40~70体積%である。
(4)前記熱伝導性絶縁シート中の易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量が、20~60体積%である。
〔2〕 前記熱伝導性フィラーが、さらに窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る熱伝導性絶縁シートであって、
前記熱伝導性絶縁シート中の熱伝導性球状フィラー(F1)含有量が0~45体積%である、〔1〕に記載の熱伝導性絶縁シート。
〔3〕 前記バインダー成分が、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリアミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の熱伝導性絶縁シート。
〔4〕 熱伝導性球状フィラー(F1)の平均一次粒子径が、熱伝導性絶縁シートの膜厚の1/5以下である、〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シート。
〔5〕 熱を発生し得る熱発生部を含む熱発体の少なくとも1つの面に、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シートを介して放熱ベース基板が積層された複合部材。
本発明により、薄膜化することで熱抵抗値を低減しつつ、シート内の空隙を低減して絶縁性を両立する熱伝導性絶縁シートを提供することができる。
<熱伝導性絶縁シート>
本発明の熱伝導性絶縁シートは、熱伝導性フィラー及びバインダー成分を含有し、下記条件(1)~(4)の全てを満たすものである。
(1)前記熱伝導性フィラーが、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)を含有する。
(2)前記熱伝導性絶縁シートの膜厚が、20~80μmである。
(3)前記熱伝導性絶縁シート中の熱伝導性フィラー含有量が、40~70体積%である。
(4)前記熱伝導性絶縁シート中の易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量が、20~60体積%である。
熱伝導性絶縁シートの熱抵抗値を小さくするには、熱伝導率を維持しつつ熱伝導性絶縁シートの膜厚を薄くする必要がある。本発明の熱伝導性絶縁シートの膜厚は20~80μmであり、この所定範囲の膜厚とすることで、低い熱抵抗値を達成している。シートの膜厚が80μmを超えると、熱抵抗値低下効果が十分でなく、シートの膜厚が20μm未満であると、凝集力が低下するためシートが破れやすくなるだけでなく、塗工欠陥等の影響が大きくなり絶縁性が大幅に劣化する。
<熱伝導性フィラー>
本発明に用いる熱伝導性フィラーは、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)を含有し、窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る。
シート中の熱伝導性フィラーの含有量が多いほど熱伝導率は向上するが、同時にボイドが生成しやすくなるため、凝集力が低下しシート強度が低下すると共に絶縁性も低下する。そのため、熱伝導性とシート強度、及び絶縁性を満たすために、熱伝導性フィラーの含有量は熱伝導性絶縁シート中、40~70体積%とする必要がある。
[易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)]
本発明に用いる熱伝導性フィラーは、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)を含有する。易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)を含むことで、シート化する際に圧力に応じて適度に変形し、ボイドの低下と熱伝導性との両立を達成することができる。なお、一般的な窒化ホウ素フィラーとして、鱗片状の窒化ホウ素フィラーは膜厚方向への熱伝導性が限定的であり、易変形性ではない硬い造粒窒化ホウ素フィラーはボイドが残りやすい傾向にある。
熱伝導性絶縁シート中の易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量は、20~60体積%である。20体積%を下回ると熱伝導性が低下して熱抵抗値が高くなり、60体積%を超えるとシート凝集力が低下しシート強度が低下すると共に絶縁性が低下する。
本発明において「易変形性造粒窒化ホウ素フィラー」とは、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素の凝集体であることが好ましい。易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)の平均粒子径は特に限定されないが、大きすぎると塗工方法によっては塗工面にスジを生じる。また平均粒子径がシート膜厚より大きい場合、シート表面上に過度にフィラーが突出し、接着力の低下やスルーホール形成による絶縁性の低下を導く恐れがある。よって、本発明に用いる易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)は、平均一次粒子径が0.1~15μmの窒化ホウ素を造粒してなる、平均粒子径が2~100μm、圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が5mN以下の窒化ホウ素の凝集体であることが特に好ましい。
本発明において「一次粒子」とは、単独で存在することができる最小粒子を表し、「平均一次粒子径」とは、走査型電子顕微鏡で観察される一次粒子径の長径を意味する。「一次粒子径の長径」とは、球状粒子については一次粒子の最大直径を意味し、六角板状又は円板状粒子については、それぞれ厚み方向から観察した粒子の投影像における最大直径又は最大対角線長を意味する。具体的に「平均一次粒子径」は、300個の粒子の長径を上記方法により測定し、その個数平均として算出する。
圧縮変形率10%に要する平均圧縮力は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT-210)を用い、測定領域内で無作為に選んだ10個の粒子について、粒子を10%変形させるための荷重を測定し、求めることができる。
[窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)]
本発明に用いる熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る。
一般的に、窒化ホウ素フィラーは、後述のバインダー樹脂との濡れ性に劣りボイドを生成しやすい傾向にあるため、必要に応じて窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)を併用する。フィラー(F1)は、球状であることで、圧力をかけた際のフィラーの移動が容易になり、対象物への圧着時にシートが変形しやすく、シート内にボイドが生じにくくなるという効果を奏する。
本発明において「球状」とは、例えば、「平均円形度」であらわすことができ、この平均円形度とは、粒子をSEM等で撮影した写真から任意の数の粒子を選び、各粒子の面積をS、周囲長をLとしたときの円形度=4πS/Lの平均値として表すことができる。円形度を測定するには、各種画像処理ソフト、又は画像処理ソフトを搭載した装置を使用することができるが、本発明では、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA-1000を用いて測定した粒子の円形度から算出した平均円形度が0.9~1のものをいう。好ましくは平均円形度が0.96~1である。
熱伝導性球状フィラー(F1)は、窒化ホウ素以外のものであって、熱伝導性を有していればよく、例えば、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム等の金属窒化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩、ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩、水和金属化合物、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、炭化ケイ素又はこれらの複合物等が挙げられる。これらは、1種類でもよいし複数の種類を併用することもできる。
熱伝導性球状フィラー(F1)は、平均円形度、熱伝導性、絶縁性の観点から、アルミナ又は窒化アルミニウムの少なくとも一方であることが望ましい。ただし、アルミナは窒化ホウ素より熱伝導率が低く、窒化アルミニウムはそれ自体の熱伝導率は高いもののバインダー樹脂との濡れ性が高く樹脂がフィラー同士の接触を妨げ熱伝導パスが形成されにくいため、熱伝導性フィラーが、熱伝導性球状フィラー(F1)を含有する場合、熱伝導性の観点から、熱伝導性絶縁シート中の熱伝導性球状フィラー(F1)含有量は45体積%以下である。
また、これらの熱伝導性球状フィラー(F1)は、一般的に硬く変形し難く、シート表面に頭を出しやすいため、熱伝導性球状フィラー(F1)の平均一次粒子径は、熱伝導性絶縁シートの膜厚の1/5以下であることが好ましい。熱プレスを行ってシートを得る場合は、熱プレス後のシートの膜厚の1/5であることが好ましい。
[バインダー成分]
本発明の熱伝導性絶縁シートは、バインダー成分を含む。バインダー成分としては、公知のバインダー樹脂を制限なく使用でき、1種又は2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、及び塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂の未硬化時の質量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは15,000~90,000、さらに好ましくは17,000~85,000、特に好ましくは20,000~75,000、最も好ましくは30,000~70,000である。Mwが10,000以上であれば、加熱加圧時の過度な粘度低下が抑制され、加熱加圧時の流出(フロー)が効果的に抑制され、加熱加圧後に好適な接着性を発現することができる。
Mwが100,000以下であると、加熱加圧時の過度な粘度上昇が抑制されるので、ボイドを埋める前に樹脂が高粘度化することが抑制され、硬化後の柔軟性が好適となり加熱加圧後に好適な接着性を発現することができるため好ましい。
バインダー樹脂は、塗膜の機械的強度、熱伝導性能の維持の観点から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。また、加熱加圧時の粘度(流動性)が好適であり、硬化前及び硬化後の柔軟性が比較的高く、加熱加圧時にボイドを効果的に低減でき、加熱加圧後に好適な接着性を発現することから、バインダー樹脂は、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリアミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、本発明においては、必要に応じて、熱硬化性樹脂と、熱硬化性を有しない1種以上の他のバインダー樹脂とを併用してもよい。
なお、本明細書では、相互に反応し得る官能基を有する複数種の熱硬化性樹脂を用いる場合、量的に多い方を主剤、少ない方を硬化剤と称すこともある。
(硬化剤)
上述のバインダー樹脂が、カルボキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基等の官能基を有する場合、この官能基と反応し得る官能基を有する硬化剤を含んでもよい。このような硬化剤としては、2官能以上の、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシド又は金属アシレート等が好ましく、より好ましくは2官能以上である。
(添加剤)
本発明の熱伝導性絶縁シートは、さらに必要に応じて、難燃剤、充填剤、その他各種添加剤を含むことができる。難燃剤としては例えば、非球状の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又はリン酸化合物等が挙げられる。添加剤として例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時・高温時の信頼性を高めるためのイオン捕捉剤・酸化防止剤、又はレベリング剤等が挙げられる
<熱伝導性絶縁シートの製造方法>
本発明の熱伝導性絶縁シートの製造方法は特に限定されず、例えば、熱伝導性フィラー、バインダー成分、希釈溶剤、必要により各種添加剤を含む塗液を、セパレートフィルム上に塗布したのちに乾燥し希釈溶剤を除去することで得ることができる。
セパレートフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムに離型処理したものが挙げられる。
セパレートフィルムへの塗液の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、ナイフコート、ブレードコート、コンマコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーンコート、ディスペンサー、インクジェット及びスピンコート等が挙げられる。
塗液の調製方法は特に限定するものではなく、組成成分を撹拌混合することで製造することができる。撹拌混合には一般的な撹拌方法を用いることができる。撹拌混合機としては例えば、ディスパー、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、メディアレス分散機、三本ロール、及びビーズミル等が挙げられる。
撹拌混合後は、塗液から気泡を除去するために、脱泡工程を経ることが好ましい。脱泡方法としては例えば、真空脱泡、及び超音波脱泡等が挙げられる。
セパレートフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムに離型処理したものが挙げられる。
塗布方法の例としては、例えば、ナイフコート、ブレードコオート、コンマコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーンコート、ディスペンサー、インクジェット及びスピンコート等が挙げられる。
また、塗布乾燥して得た熱伝導性絶縁シートの塗工面にセパレートフィルムを貼り合せることにより、保護フィルムとすることができる。
また、塗布乾燥して得た熱伝導性絶縁シート2枚の塗工面同士を貼り合せて、1枚の熱伝導性絶縁シートとしてもよい。熱伝導性絶縁シート2枚の塗工面同士を貼り合せることにより、塗工時の欠陥を埋めることができ、絶縁性が向上するため好ましい。さらに本発明の熱伝導性絶縁シートは、上記を繰り返し行い、複数の熱伝導性絶縁シートを貼り合わせて1枚の熱伝導性絶縁シートとしてもよい。
複数の熱伝導性絶縁シートを貼り合わせて1枚の熱伝導性絶縁シートとする場合、各々の熱伝導性絶縁シートの膜厚や、シートを構成する組成は異なっていてもよいが、貼り合わせた後の熱伝導性絶縁シートの膜厚は20~80μmであり、貼り合わせた後の熱伝導性絶縁シート全体中の熱伝導性フィラー含有量は40~70体積%であり、貼り合わせた後の熱伝導性絶縁シート全体中の易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量は20~60体積%であり、貼り合わせた後の熱伝導性絶縁シート全体中の熱伝導性球状フィラー(F1)含有量は0~45体積%である必要がある。
セパレートフィルムや、熱伝導性絶縁シート2枚の塗工面同士を貼り合せる際は加圧してもよく、加圧は、両面のセパレートフィルムの上から行ってもよいし、セパレートフィルムを剥がしてから行ってもよい。加圧圧着方法は特に限定されず、公知のラミネーター又はプレス処理機を使用することができる。加圧する際には加熱することが好ましい。
<複合部材>
本発明の複合部材は、熱を発生し得る熱発生部を含む熱発体の少なくとも1つの面に、熱伝導性絶縁シートを介して放熱ベース基板が積層されたものである。
[放熱ベース基板]
放熱ベース基板とは、熱を発生し得る部材を含む発熱体から発生した熱を最終的に逃がすための部材であり、放熱ベース基板としては、公知のものを使用することができる。
放熱ベース基板は金属やセラミックスが好適に使用され、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、鉄、タングステン、モリブデン、マグネシウム、銅―タングステン合金、銅―モリブデン合金、銅―タングステンーモリブデン合金、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、グラフェン等の炭素材料等が挙げられ、単独又は2種類以上併用して用いることができる。
放熱ベース基板は、放熱効率を高めるためにフィンを取り付けてもよい。フィンとしては、公知のものを使用することができる。フィンの形状としては、特に限定されず、例えば、ストレートフィン型、ウェイビーフィン型、オフセットフィン型、ピンフィン型、コルゲートフィン型等が挙げられ、使用目的により適宜選択して用いることができる。
[発熱体]
発熱体は、熱を発生し得る部材を含み、熱を発生し得る部材単独、又は、金属板等の導電性部材上にはんだ等の接合剤を介して熱を発生し得る部材が積層された形態等が挙げられる。
熱を発生し得る部材とは、集積回路、ICチップ、ハイブリッドパッケージ、マルチモジュール、パワートランジスタ、パワー半導体素子、面抵抗器、及びLED(発光ダイオード)用基板等の種々の電子部品等が挙げられる。また、他に、建材、車両、航空機、及び船舶等に用いられ、熱を帯びやすく、性能劣化を防ぐためにその熱を外部に逃がす必要がある物品等が挙げられる。特に、本発明の熱伝導性絶縁シートは、パワー半導体モジュールに好適に用いることができる。
パワー半導体モジュールの形態には特に制限はないが、一般的に、パワー半導体素子が金属板等の導電性部材上にはんだ等の接合剤を介して積層された積層体であり、さらに該積層体が樹脂で封止されている構造をとる。パワー半導体モジュールの導電性部材と、前記放熱ベース基板とが、本発明の熱伝導性絶縁シートを介して接続されていることにより、パワー半導体モジュールが駆動した際に生じる熱が放熱ベース基板へと効率よく伝播し、放熱される。
パワー半導体モジュールに使用される導電性部材としては、例えば、銀、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、鉄、鉛等の金属や、それらの合金、カーボン等が挙げられ、回路パターンが形成されていてもよい。これらは、樹脂やセラミック上に積層されていてもよい。導電性部材は、パワー半導体素子と熱伝導性絶縁シートとの間に積層されており、パワー半導体で生じた熱を熱伝導性絶縁シートへ伝える役割も果たす。そのため、結果的に前記放熱ベース基板への伝熱が効果的に行われ、パワー半導体素子の放熱が促進される。
このように本発明の熱伝導性絶縁シートは、主に熱発生源としての電子部材(熱を発生し得る部材を含む発熱体)と冷却器(放熱ベース基板)との間をつなぎ、熱を効率良く逃がす用途に用いられる。放熱対象の物品としては特に制限はないが、例えば、集積回路、ICチップ、ハイブリッドパッケージ、マルチモジュール、パワートランジスタ、パワー半導体パッケージ、面抵抗器、及びLED(発光ダイオード)用基板等の種々の電子部品や、建材、車両、航空機、及び船舶等に用いられ、熱を帯びやすく、性能劣化を防ぐためにその熱を外部に逃がす必要がある物品等が挙げられる。
また、本発明の複合部材は、熱伝導性と絶縁性を両立し、密着性や耐久性も良好なことから、家電、産業ロボット、輸送機器等の電子機器やパワー半導体モジュールのほか、建材、車両、航空機、及び船舶にも広く使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例において、「部」及び「%」は特に明記しない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
<固形分濃度>
薄型蓋付き金属容器内に樹脂溶液1gを量り採り、200℃のオーブンで20分間加熱した後の残質量を測定し、次式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(%)=(残質量(g)/1(g))×100
<質量平均分子量(Mw)>
質量平均分子量(Mw)は、東ソー製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、HLC8220GPC)を用いて測定した。カラムとして、2本の「TOSOH TSKgel Super HZM-N」(東ソー社製)を直列に接続したものを用い、試料濃度0.1%、流量0.34ml/min、圧力7.4MPa、カラム温度40℃の条件で測定を実施して、ポリスチレン換算のMwを求めた。装置内蔵ソフトを使用して、検量線の作成、分子量及びピーク面積の算出を行い、保持時間5~9.85分の範囲を分析対象としてMwを求めた。
<酸価>
共栓付き三角フラスコ内に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解した。これに、指示薬としてフェノールフタレイン試液を加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液を徐々に滴下した。酸価は次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
上記式中、各符号は以下のパラメータを示す。
S:試料の採取量(g)、
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)、
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価。
<フェノール性水酸基価>
フェノール性水酸基価は、フェノール性水酸基含有ポリアミド1g中に含まれるフェノール性水酸基の量を、フェノール性水酸基をアセチル化させたときにフェノール性水酸基と結合した酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量(mg)で表したものである。フェノール性水酸基価は、JIS K0070に準じて測定した。本発明において、末端カルボン酸のフェノール性水酸基含有ポリアミドのフェノール性水酸基価を算出する場合には、下記式に示す通り、酸価を考慮して計算した。
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
水酸基価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
<アミン価>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解した。これに、別途0.20gのメチルオレンジを蒸溜水50mLに溶解した液と、0.28gのキシレンシアノールFF(富士フイルム和光純薬(株)製)をメタノール50mLに溶解した液とを混合して調製した指示薬を2、3滴加え、30秒間保持した。その後、溶液が青灰色を呈するまで0.1Nアルコール性塩酸溶液で滴定した。アミン価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
アミン価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性塩酸溶液の力価
<フィラーの平均粒子径>
熱伝導性球状フィラーの平均粒子径は、Malvern Instruments社製 粒度分布計マスターサイザー2000を用いて測定した。測定の際には乾式ユニットを用い、空気圧は2.5バールとした。フィード速度はサンプルにより最適化した。
<フィラーの平均円形度>
熱伝導性球状フィラー(F1)の平均円形度は、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA-1000を用いて円形度を測定し、平均円形度を算出した。詳細には、トルエン10mlに測定粒子約5mgを分散させて分散液を調製し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5,000~2万個/μlとした。この分散液を用い、上記装置により円相当径粒子群の円形度を測定し、平均円形度を算出した。
<フィラーの圧縮変形率10%に要する平均圧縮力>
微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT-210)を用い、測定領域内で無作為に選んだ10個のフィラー粒子について、粒子を10%変形させるのに必要な荷重を測定した。その平均値を圧縮変形率10%に要する平均圧縮力とした。
<シート中のフィラー含有量>
熱伝導性絶縁シート中の各フィラーの体積%は以下の方法で計算した。
・熱伝導性球状フィラーの体積%=(熱伝導性球状フィラーの乾燥体積/シート各成分の乾燥体積の和)×100
・窒化ホウ素フィラーの体積%=(窒化ホウ素フィラーの乾燥体積/シート各成分の乾燥質量の和)×100
・シート各成分の乾燥体積の和=熱伝導性球状フィラーの体積+窒化ホウ素フィラーの体積+樹脂の乾燥体積+硬化剤の乾燥体積
・熱伝導性球状フィラーの体積=熱伝導性球状フィラーの質量/熱伝導性球状フィラーの密度
・窒化ホウ素フィラーの体積=窒化ホウ素フィラーの質量/窒化ホウ素フィラーの密度
・樹脂の乾燥体積=樹脂溶液の質量×樹脂溶液の固形分濃度/100/樹脂の密度
・硬化剤の乾燥体積=硬化剤溶液の質量×硬化剤溶液の固形分濃度/100/硬化剤の密度
熱伝導性球状フィラー及び窒化ホウ素フィラー等の密度は、窒化ホウ素2.3(g/cm)、アルミナ3.9(g/cm)、窒化アルミ3.26(g/cm)を用いた。バインダー成分であるバインダー樹脂・硬化剤及びその他の有機成分の密度は、「1(g/cm)」とした。
<剥離性フィルム間に挟まれたシート膜厚>
熱伝導性絶縁シートが剥離性フィルムに挟まれている場合は剥離性フィルムを剥離し、シートの4隅及び中央の膜厚を(株)ニコン製DIGIMICROSTANDMS-5Cで測定し、平均値をシート膜厚とした。
<樹脂の製造例>
[合成例1]
(ポリアミド樹脂(R-1)の溶液)
撹拌機、水分定量受器を付けた還流冷却管、窒素導入管、及び温度計を備えた反応容器に、炭素数36の多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン株式会社製、酸価194mgKOH/g)を70.78部、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として5-ヒドロキシイソフタル酸(5-HIPA)を5.24部、炭素数36のポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン株式会社製、アミン価210mgKOH/g)を82.84部、トルエンを4.74部仕込んだ。これらの混合物を撹拌しながら、水の流出を確認しつつ、温度を220℃まで昇温し、脱水反応を続けた。1時間ごとにサンプリングを行い、Mwが40,000になったことを確認し、充分に冷却した後、シクロヘキサノン40部、トルエン91.34部、及びイソプロピルアルコール96.12部を希釈溶剤として加え、充分に溶解させた。以上のようにして、固形分濃度40.2%、Mw40,000のフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(R-1)の溶液を得た。
[合成例2]
(ポリアミド樹脂(R-2)の溶液)
撹拌機、水分定量受器を付けた還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36の多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン株式会社製、酸価196mgKOH/g)を329.07部、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として5-ヒドロキシイソフタル酸(スガイ化学社製、以下「5-HIPA」ともいう)を23.59部、炭素数36のポリアミン化合物としてプリアミン1075(クローダジャパン株式会社製、アミン価210mgKOH/g)を366.51部、トルエンを21.59部仕込み、撹拌しながら、水の流出を確認しつつ、温度を220℃まで昇温し、脱水反応を続けた。1時間ごとにサンプリングを行い質量平均分子量が伸びなくなったことを確認し、冷却後、トルエン503.65部、イソプロピルアルコール525.24部を希釈溶剤として加え、十分に溶解させた。以上のようにして、固形分濃度41.05%、Mw60,000、酸価6.11mgKOH/g、アミン価0.48mgKOH/g、フェノール性水酸基価10.39mgKOH/gのフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(R-2)の溶液を得た。
[合成例3]
(ポリウレタン樹脂(R-3)の溶液)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとから得られたポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP-1011」、Mn=1,006)401.9部、ジメチロールブタン酸12.7部、イソホロンジイソシアネート151.0部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン300部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン27.8部、ジ-n-ブチルアミン3.2部、2-プロパノール342.0部、トルエン396.0部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液815.1部を添加し、70℃3時間反応させ、トルエン144.0部及び2-プロパノール72.0部で希釈した。以上のようにして、固形分濃度30%、Mw54,000、酸価8mgKOH/gのポリウレタンポリウレア樹脂(R-3)の溶液を得た。
以下に、実施例、及び比較例で用いた成分を以下に示す。
<熱伝導性球状フィラー(F1)>
(F1-1):平均円形度0.98、平均一次粒子径5.1μmの球状アルミナ(デンカ(株)製DAW-05)
(F1-2):平均円形度0.99、平均一次粒子径2μmの球状アルミナ(昭和電工(株)製アルミナビーズCB-P02)
(F1-3):平均円形度0.99、平均一次粒子径10μmである球状アルミナ((株)アドマテックス製アドマファインAO-509)、
(F1-4):平均円形度0.97、平均一次粒子径5μmである球状窒化アルミ(株式会社トクヤマ製窒化アルミニウム粉末)
<易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)>
(F2-1):圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が1.32mNであり、凝集体の平均粒子径が30μmである造粒窒化ホウ素(スリーエムジャパン株式会社製、Agglomerates50)
(F2-2):圧縮変形率10%に要する平均圧縮力が3.6mNであり、凝集体の平均粒子径が25μmである造粒窒化ホウ素(PTX-25)
<混合溶剤>
MS-1:トルエンと2-プロパノールをあらかじめ質量比1:1で混合したもの。
<硬化剤溶液>
CA-1:ナガセケムテックス(株)製デナコールEX411(ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル)の10%MS-1溶液
CA-2:株式会社日本触媒ケミタイトPZ-33(アジリジン硬化剤)の5%MS-1溶液
CA-3:日産化学工業(株)製TEPIC-HP(トリアジン骨格含有エポキシ化合物)を超音波攪拌機で分散した5%MS-1分散液
<熱伝導性絶縁シートの製造>
[実施例1]
(シート1の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液25.7部、硬化剤溶液(CA-1)4.5部、硬化剤溶液(CA-2)1.3部、混合溶剤(MS-1)30.4部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-2)18.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を、8MILのブレードコーターを用いて、剥離性フィルム(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布し、100℃で2分間乾燥した後、塗工面に、ロールラミネーターを用いて上下ロール温度80℃、1MPa、0.5m/分の条件で、塗布時と同じ剥離性フィルムを貼りつけて、剥離性フィルム間に挟まれたシート1aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート1aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート1を得た。シート1の膜厚は42.3μmであった。
シート1中の熱伝導性球状フィラー(F1)含有量は20体積%、異変形成造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量は35体積%であった。
[実施例2]
(シート2の製造)
シート1の製造で用いた8MILのブレードコーターを、4MILのブレードコーターに変更した以外は、シート1と同様にして、塗布乾燥したシートを2枚作製した後、各々のシートの塗工面同士を、ロールラミネーターを用いて上下ロール温度80℃、1MPa、0.5m/分の条件で貼りつけて、剥離性フィルム間に挟まれたシート2aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート2aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート2を得た。シート2の膜厚は41.3μmであった。
シート2中の熱伝導性球状フィラー(F1)含有量は20体積%、異変形成造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量は35体積%であった。
[実施例3]
(シート3の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液23.8部、硬化剤(CA-1)4.2部、硬化剤(CA-2)1.2部、混合溶剤(MS-1)31.9部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-2)26.1部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)12.8部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液と、4MILのブレードコーターを用いた以外はシート1と同様にして、塗布乾燥したシート3-1を1枚得た。シート3-1中の熱伝導性球状フィラーは30体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは25体積%であった。
次に、合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液27.9部、硬化剤(CA-1)4.9部、硬化剤(CA-2)1.4部、混合溶剤(MS-1)28.6部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-2)10.2部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)27.0部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液と、4MILのブレードコーターを用いた以外はシート1と同様にして、塗布乾燥したシート3-2を1枚得た。シート3-2中の熱伝導性球状フィラーは10体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは45体積%であった。
次に、シート3-1、シート3-2をそれぞれ18cm×11cmで切り出し、塗工面同士を、ロールラミネーターを用いて上下ロール温度80℃、1MPa、0.5m/分の条件で貼りつけて、剥離性フィルム間に挟まれたシート3aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート3aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート3を得た。シート3の膜厚は41.3μmであった。
シート3中の熱伝導性球状フィラーは21体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは34体積%であった。
[実施例4]
(シート4の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液25.5部、硬化剤(CA-1)6.0部、混合溶剤(MS-1)30.4部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)18.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液と、4MILのブレードコーターを用いた以外はシート1と同様にして、塗布乾燥したシート4-1を1枚得た。シート4-1中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%である。
次に、合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液25.5部、硬化剤(CA-1)6.0部、混合溶剤(MS-1)30.4部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)18.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-2)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液と、4MILのブレードコーターを用いた以外はシート1と同様にして、塗布乾燥したシート4-2を1枚得た。シート4-2中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%である。
次に、シート4-1、シート4-2をそれぞれ18cm×11cmで切り出し、塗工面同士を、ロールラミネーターを用いて上下ロール温度80℃、1MPa、0.5m/分の条件で貼りつけて、剥離性フィルム間に挟まれたシート4aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート4aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート4を得た。シート4の膜厚は41.7μmであった。
シート4中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[実施例5]
(シート5の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液27.2部、硬化剤(CA-1)6.4部、混合溶剤(MS-1)29.0部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-4)16.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)20.7部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート5aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート5aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート5を得た。シート5の膜厚は42.7μmであった。
シート5中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[実施例6]
(シート6の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液25.5部、硬化剤(CA-1)6.0部、混合溶剤(MS-1)30.4部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-2)18.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート6aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート6aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート6を得た。シート6の膜厚は35.0μmであった。
シート6中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[実施例7]
(シート7の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-2)の溶液24.7部、硬化剤(CA-1)7.1部、混合溶剤(MS-1)30.1部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)18.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート7aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート7aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート7を得た。シート7の膜厚は40.7μmであった。
シート7中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[実施例8]
(シート8の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-3)の溶液35.7部、硬化剤(CA-3)2.8部、混合溶剤(MS-1)23.4部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)18.8部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート8aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート8aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート8を得た。シート8の膜厚は38.0μmであった。
シート8中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[実施例9]
(シート9の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液15.2部、硬化剤(CA-1)3.6部、混合溶剤(MS-1)32.7部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)33.6部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)14.9部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート9aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート9aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート9を得た。シート9の膜厚は41.7μmであった。
シート9中の熱伝導性球状フィラーは40体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは30体積%であった。
[実施例10]
(シート10の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液31.3部、硬化剤(CA-1)7.3部、混合溶剤(MS-1)30.6部、の混合液を調製した。この混合液に、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)30.7部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート10aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート10aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート10を得た。シート10の膜厚は39.0μmであった。
シート10中の熱伝導性球状フィラーは0体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは50体積%であった。
[実施例11]
(シート11の製造)
8MILブレードコーターを、4MILのブレードコーターに変更した以外は、シート6と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート11aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート11aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート11を得た。シート11の膜厚は21.3μmであった。
シート11中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[実施例12]
(シート12の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液25.5部、硬化剤(CA-1)6.0部、混合溶剤(MS-1)30.4部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-3)18.8部、窒化ホウ素フィラー(F2-2)19.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液と、12MILのブレードコーターを用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート12aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート12aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート12を得た。シート12の膜厚は74.6μmであった。
シート12中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[比較例1]
(シート13の製造)
シート1の製造で用いた8MILのブレードコーターを、2MILのブレードコーターに変更した以外は、シート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート13aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート13aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート13を得た。シート13の膜厚は13.0μmであった。
シート13中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[比較例2]
(シート14の製造)
シート1の製造で用いた8MILのブレードコーターを、10MILのブレードコーターに変更した以外は、シート1と同様にして、塗布乾燥したシートを2枚作製した後、各々のシートの塗工面同士を、ロールラミネーターを用いて上下ロール温度80℃、1MPa、0.5m/分の条件で貼りつけて、剥離性フィルム間に挟まれたシート14aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート14aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート14を得た。シート14の膜厚は113.0μmであった。
シート14中の熱伝導性球状フィラーは20体積%、窒化ホウ素フィラーは35体積%であった。
[比較例3]
(シート15の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液48.0部、硬化剤(CA-1)11.2部、混合溶剤(MS-1)15.9部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)11.4部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)13.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート15aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート15aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート15を得た。シート15の膜厚は37.3μmであった。
シート15中の熱伝導性球状フィラーは10体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは20体積%であった。
[比較例4]
(シート16の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液10.4部、硬化剤(CA-1)2.4部、混合溶剤(MS-1)49.6部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)17.2部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)20.3部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート16aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート16aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート16を得た。シート16の膜厚は41.0μmであった。
シート16中の熱伝導性球状フィラーは25体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは50体積%であった。
[比較例5]
(シート17の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液35.4部、硬化剤(CA-1)8.3部、混合溶剤(MS-1)14.9部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)32.0部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)9.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート17aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート17aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート17を得た。シート17の膜厚は42.7μmであった。
シート17中の熱伝導性球状フィラーは30体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは15体積%であった。
[比較例6]
(シート18の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液17.8部、硬化剤(CA-1)4.2部、混合溶剤(MS-1)45.6部、の混合液を調製した。この混合液に、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)32.4部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート18aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート18aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート18を得た。シート18の膜厚は44.0μmであった。
シート18中の熱伝導性球状フィラーは0体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは65体積%であった。
[比較例7]
(シート19の製造)
合成例1で得られた樹脂(R-1)の溶液15.4部、硬化剤(CA-1)3.6部、混合溶剤(MS-1)28.6部、の混合液を調製した。この混合液に、熱伝導性球状フィラー(F1-1)42.5部、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2-1)10.0部、を加え、ディスパー撹拌した後、超音波攪拌機に2分間かけて脱泡した。
得られた塗液を用いた以外はシート1と同様にして、剥離性フィルム間に挟まれたシート19aを得た。
剥離性フィルム間に挟まれたシート19aを、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスして、剥離性フィルム間に挟まれたシート19を得た。シート19の膜厚は40.0μmであった。
シート19中の熱伝導性球状フィラーは50体積%、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーは20体積%であった。
<熱伝導性絶縁シートの評価>
得られた熱伝導性絶縁シートについて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
[熱抵抗値]
熱抵抗値Rは、R(μm・mk/W)=プレス後膜厚/熱伝導率 の式から算出し、熱伝導率の算出には、以下に記載の方法で測定した熱拡散率、比熱容量及び密度の値を用いた。熱抵抗値が20μm・mk/W以下である場合を、使用可能と判断した。
(熱拡散率)
実施例及び比較例で得られた熱プレス前のシート(1a)~(19a)について、プレス後膜厚が100μm程度になるように、必要に応じで複数枚重ね合せて、ロールラミネーターを用いて上下ロール温度80℃、1MPa、0.5m/分の条件でラミネートした後、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスを行い、熱拡散率測定用サンプルを作製した。
熱拡散率測定用サンプルを20mm角に切り出し膜厚を測定した。サンプル表面に金を蒸着し、カーボンスプレーによりカーボンを被覆した後、キセノンフラッシュアナライザーLFA447NanoFlash(NETZSCH社製)にて、試料環境25℃での熱拡散率を測定した。
(比熱容量)
実施例及び比較例で得られた熱プレス後のシート(1)~(19)について、比熱容量は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の高感度型示差走査熱量計DSC220Cを用いて測定した。
(密度)
密度は下記で計算される理論密度を用いた。
理論密度=(シート各成分の乾燥質量の和)/(シート各成分の乾燥体積の和)
=[(樹脂溶液の質量×樹脂溶液の固形分濃度/100)+(硬化剤溶液の質量×硬化剤溶液の固形分濃度/100)+熱伝導性球状フィラーの質量+窒化ホウ素フィラーの質量]/(樹脂の乾燥体積+硬化剤の乾燥体積+熱伝導性球状フィラーの体積+窒化ホウ素フィラーの体積)
[絶縁破壊電圧]
実施例及び比較例で得られた、熱プレス前の熱伝導性絶縁シート(1a)~(19a)を、3.5cm×3.5cmの大きさで3枚切り出し、片側の剥離性フィルムを剥離し、アルミニウム板と重ね合わせ、1MPaの圧力で150℃1時間加熱プレスを行った後、残った剥離性フィルムを剥がし、25℃50%RHで一晩放置した。得られた熱プレス後シートについて、TM650耐電圧試験器(鶴賀電気株式会社製)を用いて、25℃50%RH、昇圧10kV/100秒、閾値2mAの条件で通電を生じた電圧(破壊電圧)を測定した。3回測定を行いその平均値が1kV以上である場合を使用可能と判断した。
Figure 0007110977000001
表1の結果から、条件(1)~(4)の全てを満たす本発明の熱伝導性絶縁シートは、低い熱抵抗値と高い絶縁性とを両立することが示された(実施例1~12)。
一方、シート膜厚が20μm未満であると絶縁性が不足し(比較例1)、80μmを超えると高い熱抵抗値を示した(比較例2)。また、熱伝導性フィラー量が40体積%未満であると熱抵抗値が高く(比較例3)、熱伝導性フィラー量が70体積%を超えると絶縁性が低い結果であった(比較例4)。また、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー量が20体積%未満であると熱抵抗値が高く(比較例5)、易変形性造粒窒化ホウ素フィラーが60体積%を超えると絶縁性が低い結果であった(比較例6)。さらに、熱伝導性球状フィラー量が45体積%を超えると熱抵抗値が高い結果を示した(比較例7)。
<複合部材の製造>
[実施例13]
両面に回路が形成されたセラミックス回路基板上の、一方の面に半田を介してパワー半導体素子を接合し、他方の面に銅製のヒートスプレッダを接触させ、パワー半導体素子を接合している側全体をエポキシ樹脂で封止し、パワー半導体モジュールを得た。
導電性部材である前記ヒートスプレッダ上に、実施例3で得たシート3が接するよう、シート3、放熱ベース基板であるアルミニウムブロック(厚さ2mm)の順に積層し、1MPaで150℃10分間プレスをし、複合部材(パワー半導体装置)を得た。プレス後の熱伝導性接着シートの厚みは41.3μmであった。
<複合部材の評価>
[パワー半導体装置の耐久性試験]
得られた複合部材(パワー半導体装置)について、-40℃~120℃の冷熱サイクルを3000サイクル実施した後、パワー半導体装置を断面方向に切断し、熱伝導性絶縁シートの剥離、ボイドの状態を、SEM(走査型電子顕微鏡)で確認し、冷熱サイクル未実施物と比較した。その結果、冷熱サイクル前後での状態変化は無く、セラミックス回路基板とアルミニウム板との間の熱伝導性絶縁シートには、剥離やボイドの発生は認められなかった。
よって、本発明の熱伝導性絶縁シートを用いた複合部材は、熱伝導性、絶縁性が良く、耐久性にも優れていることが確認できた。

Claims (4)

  1. 熱伝導性フィラー及びバインダー成分を含有する熱伝導性絶縁シートであって、下記条件(1)~(4)の全てを満たす熱伝導性絶縁シート。
    (1)前記熱伝導性フィラーが、易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)を含有する。
    (2)前記熱伝導性絶縁シートの膜厚が、20~80μmである。
    (3)前記熱伝導性絶縁シート中の熱伝導性フィラー含有量が、40~70体積%である。
    (4)前記熱伝導性絶縁シート中の易変形性造粒窒化ホウ素フィラー(F2)含有量が、20~60体積%であって、熱伝導性球状フィラー(F1)の平均一次粒子径が、熱伝導性絶縁シートの膜厚の1/5以下である
  2. 前記熱伝導性フィラーが、さらに窒化ホウ素を除く熱伝導性球状フィラー(F1)を含有し得る熱伝導性絶縁シートであって、
    前記熱伝導性絶縁シート中の熱伝導性球状フィラー(F1)含有量が0~45体積%である、請求項1に記載の熱伝導性絶縁シート。
  3. 前記バインダー成分が、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、及び熱硬化性ポリアミド樹脂からなる群れから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性絶縁シート。
  4. 熱を発生し得る熱発生部を含む熱発体の少なくとも1つの面に、請求項1~いずれか1項に記載の熱伝導性絶縁シートを介して放熱ベース基板が積層された複合部材。
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