以下、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化システム及び排ガス浄化システムの制御方法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る排ガス浄化システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る排ガス浄化システムの概略図である。また、図2は、図1に示した複数の板状電極及び排ガス浄化触媒の模式的な斜視図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の排ガス浄化システム1は、排ガス浄化触媒10と、プラズマ処理装置20と、制御装置30と、を具備したものである。
排ガス浄化触媒10は、内燃機関50の排ガス流路52に配置されており、内燃機関50からの排ガス中のNOxを吸着、脱離及び浄化する機能を有している。なお、特に限定されるものではないが、内燃機関からの排ガスとしては、例えば、内燃機関から排出されたままの排ガスだけでなく、詳しくは後述するプラズマ処理装置でプラズマ化された排ガスも含む。
また、プラズマ処理装置20は、複数の板状電極22(221,222,223,224)と、板状電極間にプラズマを発生させるための電圧を印加する電源装置24と、を備えている。そして、複数の板状電極22(221,222,223,224)は、排ガス流路52において排ガス浄化触媒10よりも上流側に配置されている。また、複数の板状電極22(221,222,223,224)は、排ガス流れ方向を示す図中矢印Zの方向に流れる排ガスが通過するための複数の貫通孔(221a,222a,223a,224a)をそれぞれ有している。なお、特に限定されるものではないが、図示例においては、プラズマ処理装置20は、電源装置24へ必要となる電力を供給する二次電池26を備えている。
さらに、制御装置30は、排ガス浄化触媒10におけるNOx吸着量を推定する機能、電源装置24を制御する機能及び内燃機関50の空燃比を制御する機能を有している。また、制御装置30は、排ガス浄化触媒10におけるNOx吸着量を推定するNOx吸着量推定装置32を備えている。
そして、制御装置30は、NOx吸着量推定装置32が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置24の制御によって板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、内燃機関50の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする。
ここで、「内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とすること」は、例えば、リッチスパイク(以下「R/S」ということがある。)と呼ばれる。
排ガス浄化システムは、制御装置が、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする。そのため、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を向上させることができる。なお、この排ガス浄化システムは、触媒貴金属が活性化されていない低い温度域においてもNOx浄化率を向上させることができるという副次的な利点がある。また、この排ガス浄化システムは、NOx浄化率を向上させるに当たり、リッチスパイクの深さなどを制御するような複雑な制御を必ずしも必要としないという副次的な利点がある。
なお、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内で適宜設定することが好適である。
現時点においては、以下のようなメカニズムにより、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率が向上したと考えている。
まず、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、排ガスの空燃比を空気過剰(リーン域)から燃料過剰(リッチ域)に切り替えるタイミングよりも早く、プラズマを発生させる。
なお、特に限定されるものではないが、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、排ガスの空燃比を燃料過剰(リッチ域)とするよりも先に、排ガスの空燃比がストイキにおいて板状電極間にプラズマを発生させることが好ましい。また、特に限定されるものではないが、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、排ガスの空燃比を燃料過剰(リッチ域)とするよりも先に、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)において板状電極間にプラズマを発生させることがより好ましい。
これにより、排ガス中の炭化水素(HC)、CO、NOx、水蒸気(H2O)、二酸化炭素(CO2)などから分解反応やシフト反応、改質反応などによって、H2やCOといった還元成分を生成することができる。さらには、窒素ラジカル(N*)、酸素ラジカル(O*)、ヒドロキシルラジカル(OH*)といった活性種を生成することができる。
なお、分解反応としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応式(1):2CO2→2CO+O2、反応式(2):2H2O→2H2+O2を挙げることができる。また、シフト反応としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応式(3):CO+H2O→CO2+H2を挙げることができる。さらに、改質反応としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応式(4):2HC+4H2O→2CO2+5H2を挙げることができる。
そして、生成したH2、COなどの還元成分により、排ガスの空燃比がリッチ側に移行する。そのため、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、特定の順序で制御する場合よりも、排ガスの急激な雰囲気変動を抑制することができる。
ここで、本明細書において「雰囲気」としては、例えば、温度、空燃比などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
なお、上記特定の順序で制御する場合としては、プラズマを発生させるタイミングと同時に、排ガスの空燃比を空気過剰(リーン域)から燃料過剰(リッチ域)とする場合を挙げることができる。また、上記特定の順序で制御する場合としては、プラズマを発生させるタイミングより早く、排ガスの空燃比を空気過剰(リーン域)から燃料過剰(リッチ域)とする場合も挙げることができる。
このように、排ガスの急激な雰囲気変動を抑制することができるため、未浄化NOxの脱離を抑制することができる。また、プラズマを発生させることによって生成したH2、COなどの還元成分により吸着されたNOxの脱離、及び脱離されたNOxの浄化を行うことができる。さらに、内燃機関の空燃比の制御によって空燃比が燃料過剰(リッチ域)である排ガスが排ガス浄化触媒に到達した後には、HC、CO、H2、COといった還元成分が増加するため、トータルのNOx浄化性能を向上させることができる。
このようなメカニズムにより、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率の向上効果が得られる。
ただし、上記のメカニズム以外のメカニズムによって、上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
ここで、各構成について更に詳細に説明する。
[排ガス浄化触媒]
上記排ガス浄化触媒10は、排ガス中のNOxを吸着、脱離及び浄化する機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。また、特に限定されるものではないが、例えば、NOxの浄化と併せて又はNOxの浄化とは別にNOx以外の排ガス中の浄化対象成分を浄化できることが好ましい。さらに、特に限定されるものではないが、例えば、触媒貴金属と、NOx吸着材とを一体構造型担体に担持したものを適用することが好ましい。なお、NOx吸着材は、NOx吸蔵材と呼ばれることもある。
ここで、特に限定されるものではないが、自動車排ガスの浄化に用いる触媒貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)などの貴金属が好適である。
また、特に限定されるものではないが、NOx吸着材としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素などが好適である。アルカリ金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)などが好適である。また、アルカリ土類金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)などが好適である。さらに、希土類元素としては、特に限定されるものではないが、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)などが好適である。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて適用することができる。
さらに、これらに加えて、アルミナ、シリカ等の耐火性無機材料、セリア、ジルコニア等の助触媒材料、ゼオライト等のHC吸蔵材などの触媒材料を適用することもできる。
また、特に限定されるものではないが、一体構造型担体としては、例えば、コーディエライトなどのセラミック製のハニカム担体や、ステンレス製のメタルハニカム担体などが好適である。さらに、特に限定されるものではないが、一体構造型担体を適用する場合には、例えば、触媒貴金属とNOx吸着材とを担持する多孔質の耐火性無機材料で形成された触媒コート層を、一体構造型担体の排ガス流路に設けることが好適である。
なお、ペレット型などの粒状触媒を金属製容器などに詰めたものも排ガス浄化触媒として適用することもできる。
[プラズマ処理装置]
上記プラズマ処理装置20は、複数の板状電極と、板状電極間にプラズマを発生させるための電圧を印加する電源装置とを備え、複数の板状電極が、排ガス流路において排ガス浄化触媒よりも上流側に配置されている。なお、板状電極は、排ガスが通過するための複数の貫通孔を有する。また、特に限定されるものではないが、例えば、複数の板状電極は、互いに間隔を設けて排ガス流れ方向を示す図中矢印Zの方向に対してその面方向を垂直に配置することが好適である。これにより、板状電極間を流れる排ガスを効率良くプラズマ化することができる。さらに、特に限定されるものではないが、例えば、板状電極間には、間隔を維持するための絶縁性スペーサ(図示せず。)を配置することが好適である。また、特に限定されるものではないが、板状電極の間隔は、例えば、500μm〜3mm程度とすることが好適である。
なお、本明細書において、「排ガスの流れ方向に対してその面方向を垂直」とは、厳密な意味で、複数の板状電極が排ガスの流れ方向に対して板状電極の面方向を垂直にして配置されている場合に限定されるものではない。例えば、複数の板状電極を排ガスの流れ方向に対して板状電極の面方向を垂直にして配置する際に、若干の取り付け誤差を持って配置されている場合も含まれる。なお、取り付け誤差は小さいことが好ましいが、垂直に対して±5°程度までが許容範囲である。
(板状電極)
上記板状電極22(221,222,223,224)は、排ガスが通過するための複数の貫通孔を有するものであれば、特に限定されるものではない。また、特に限定されるものではないが、例えば、板状電極は、貫通孔の開口形状が円形であることが好適である。さらに、特に限定されるものではないが、例えば、板状電極は、金属基板と、金属基板の表面に形成された誘電体からなる誘電体層とを有し、複数の貫通孔が、板状電極の外周端と間隔を開けて形成されていることが好適である。また、特に限定されるものではないが、金属基板としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)や銅などが好適である。さらに、特に限定されるものではないが、誘電体層に用いられる誘電体としては、例えば、排ガスの雰囲気下で使用することから耐久性を要するため、酸化物セラミックからなる誘電体が好適である。このような誘電体としては、例えば、アルミナ(Al2O3)やジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、イットリア(Y2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の単純酸化物や複合酸化物などの酸化物を使用することが好適である。
(電源装置)
上記電源装置24は、板状電極間にプラズマを発生させるための、換言すれば板状電極間を流れる排ガスをプラズマ化するための電圧を印加するものであれば、特に限定されるものではない。また、特に限定されるものではないが、電源装置としては、例えば、高周波電源だけでなく、パルス電源を用いることもできる。パルス電源は、高周波電源よりも簡素な構成で低コストであり、高い電力変換効率を有する。そのため、電源装置としてパルス電源を適用した排ガス浄化システムは、車載用として優れた排ガス浄化システムである。また、板状電極の表面に誘電体層を形成した場合、板状電極間に直流的な電流は流れない。そのため、電源装置としては、例えば、複数の板状電極間に相対的に交流となる電圧を印加するものを適用することもできる。
(二次電池)
上記二次電池26は、電源装置へ必要となる電力を供給するものであれば、特に限定されるものではない。なお、特に限定されるものではないが、二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池などを用いることが好適である。
[制御装置]
上記制御装置30は、排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量を推定する機能、電源装置を所定制御する機能及び内燃機関の空燃比を所定制御する機能を有し、排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量を推定するNOx吸着量推定装置を備えているものであれば、特に限定されるものではない。
ここで、「電源装置を所定制御する機能」とは、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によって板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始する機能をいう。また、「内燃機関の空燃比を所定制御する機能」とは、電源装置の制御によって板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする機能をいう。
また、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、詳しくは後述するNOx吸着量推定装置から送られる電気信号に基づいて、電源装置を制御するものであることが好適である。
さらに、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、電気信号を電源装置に送ることにより、電源装置を制御するものであることが好適である。
また、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、電気信号を詳しくは後述する内燃機関、より具体的には内燃機関の制御装置に送ることにより、内燃機関の空燃比を制御するものであることが好適である。
さらに、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始したと判断したときに、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とするものであることが好適である。
また、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始したと判断することが好適である。
さらに、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始したと判断することがより好適である。
また、特に限定されるものではないが、制御装置は、例えば、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量と比較される所定値を図示しない記憶部に格納していることが好適である。
なお、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、適用する排ガス浄化触媒やプラズマ処理装置、内燃機関の仕様などに応じて適宜設定することができる。
また、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、詳しくは後述する予備実験などによって計測、算出される排ガス浄化触媒が吸着可能なNOx吸着量(飽和NOx吸着量)に基づいて設定することができる。
さらに、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内で適宜設定することが好適である。
(NOx吸着量推定装置)
上記NOx吸着量推定装置32は、排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量を推定するものであれば、特に限定されるものではない。
また、特に限定されるものではないが、NOx吸着量推定装置は、例えば、推定したNOx量に基づき、電気信号を制御装置に送るものであることが好適である。
さらに、特に限定されるものではないが、制御装置におけるNOx吸着量推定装置が、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始したと判断したときに、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とするものであってもよい。
また、特に限定されるものではないが、NOx吸着量推定装置は、例えば、NOx吸着量推定装置自体が推定したNOx吸着量と比較される所定値を図示しない記憶部に格納していることが好適である。
なお、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、適用する排ガス浄化触媒やプラズマ処理装置、内燃機関の仕様などに応じて適宜設定することができる。
また、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、詳しくは後述する予備実験などによって計測、算出される排ガス浄化触媒が吸着可能なNOx吸着量(飽和NOx吸着量)に基づいて設定することができる。
さらに、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内で適宜設定することが好適である。
なお、図示しないが、制御装置は、1つである必要はなく、複数であってもよい。また、制御装置が複数である場合に、制御装置が協働して上記3つの機能を発揮することができれば、3つの機能を別々の制御装置が有していてもよい。このような場合も、本発明の範囲に含まれる。
[内燃機関]
上記内燃機関50としては、特に限定されるものではないが、希薄燃焼ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンを好適例として挙げることができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る排ガス浄化システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図3は、第2実施形態に係る排ガス浄化システムの概略図である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の排ガス浄化システム2は、NOx吸着量推定装置32が、内燃機関の運転状況に応じて排出されるNOx量と、排ガス浄化触媒の吸着可能なNOx量との関係が予め設定されたマップ321を有する構成が、上述した第1実施形態と相違している。
この予め設定されたマップは、予備実験により作成することができる。つまり、内燃機関の運転状況に応じて排出されるNOx量と、その場合における排ガス浄化触媒自体が吸着するNOx吸着量をマップに設定しておくことにより、予め設定されたマップにより排ガス浄化触媒に吸着されたNOx吸着量を推定することができる。
この排ガス浄化システムは、制御装置が、NOx吸着量推定装置が予め設定されたマップにより推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする。そのため、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を向上させることができる。なお、この排ガス浄化システムは、触媒貴金属が活性化されていない低い温度域においてもNOx浄化率を向上させることができるという副次的な利点がある。また、この排ガス浄化システムは、NOx浄化率を向上させるに当たり、リッチスパイクの深さなどを制御するような複雑な制御を必ずしも必要としないという副次的な利点がある。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る排ガス浄化システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図4は、第3実施形態に係る排ガス浄化システムの概略図である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の排ガス浄化システム3は、NOx吸着量推定装置32が、排ガス浄化触媒10の入口側及び出口側の排ガス流路52に配置された空燃比センサ322,323を有し、空燃比センサ322,323が検出した排ガスの空燃比に基づいてNOx吸着量を推定する構成が、上述した第1実施形態と相違している。
この空燃比センサ322,323は、排ガス浄化触媒10の入口側の空燃比と排ガス浄化触媒10の出口側の空燃比を検出する。そして、NOx吸着量推定装置32は、空燃比センサ322,323により検出された空燃比から算出されるNOx量に基づいて排ガス浄化触媒10に吸着されたNOx吸着量を推定することができる。
この排ガス浄化システムは、制御装置が、NOx吸着量推定装置が空燃比センサによって推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする。そのため、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を向上させることができる。なお、この排ガス浄化システムは、触媒貴金属が活性化されていない低い温度域においてもNOx浄化率を向上させることができるという副次的な利点がある。また、この排ガス浄化システムは、NOx浄化率を向上させるに当たり、リッチスパイクの深さなどを制御するような複雑な制御を必ずしも必要としないという副次的な利点がある。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法について詳細に説明する。なお、第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、上述した本発明の排ガス浄化システムを制御する方法の一実施形態である。また、特に限定されるものではないが、第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、例えば、上述した第1実施形態〜第3実施形態の排ガス浄化システムのいずれにも適用することができるが、これらに限定されるものではない。
第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によって電圧印加を開始し、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする。
排ガス浄化システムの制御方法は、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする制御を含む。そのため、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を向上させることができる。なお、この排ガス浄化システムの制御方法は、触媒貴金属が活性化されていない低い温度域においてもNOx浄化率を向上させることができるという副次的な利点がある。また、この排ガス浄化システムの制御方法は、NOx浄化率を向上させるに当たり、リッチスパイクの深さなどを制御するような複雑な制御を必ずしも必要としないという副次的な利点がある。
なお、特に限定されるものではないが、所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内で適宜設定することが好適である。
ここで、本実施形態の排ガス浄化システムの制御方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
図5は、第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、まず、ステップ1(以下「S1」と記載する。以下同様。)において、エンジンを始動し、S2に進む。
次いで、S2において、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御をし、S3に進む。
次いで、S3において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第一所定値とが、関係式(I):NOx吸着量≧第一所定値の関係を満足するか判断する。関係式(I)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S4に進む。一方、関係式(I)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S2に進む。なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内で適宜設定することが好適である。
次いで、S4において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、プラズマOnの状態として、S5に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて行うことが好適である。また、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて行うことがより好適である。
次いで、S5において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を開始し、S6に進む。
次いで、S6において、エンジンのリッチ制御を開始してから一定時間経過しているか判断する。一定時間経過している場合(Yesの場合)は、S7に進む。一方、一定時間経過していない場合(Noの場合)は、S6を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
次いで、S7において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、プラズマOffの状態として、S8に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOffの状態であることの判断は、プラズマOnの状態であることの判断と同様の電気信号に基づいて行うことが好適である。
さらに、S8において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を停止、すなわち、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御を開始し、S9に進む。
しかる後、S9において、エンジンが停止しているか判断する。エンジンが停止している場合(Yesの場合)は、終了する。一方、エンジンが停止していない場合(Noの場合)は、S2に進む。
図6は、第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の他の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、S11において、エンジンを始動し、S12に進む。
次いで、S12において、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御をし、S13に進む。
次いで、S13において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第一所定値とが、関係式(I):NOx吸着量≧第一所定値の関係を満足するか判断する。関係式(I)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S14に進む。一方、関係式(I)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S12に進む。なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内で適宜設定することが好適である。
次いで、S14において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、プラズマOnの状態として、S15に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて行うことが好適である。また、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて行うことがより好適である。
次いで、S15において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を開始し、S16に進む。
次いで、S16において、エンジンのリッチ制御を開始してから一定時間経過しているか判断する。一定時間経過している場合(Yesの場合)は、S17に進む。一方、一定時間経過していない場合(Noの場合)は、S16を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
さらに、S17において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、プラズマOffの状態とすると同時に、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を停止、すなわち、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御を開始し、S18に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOffの状態であることの判断は、プラズマOnの状態であることの判断と同様の電気信号に基づいて行うことが好適である。
しかる後、S18において、エンジンが停止しているか判断する。エンジンが停止している場合(Yesの場合)は、終了する。一方、エンジンが停止していない場合(Noの場合)は、S12に進む。
<第5実施形態>
次に、第5実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法について詳細に説明する。なお、第5実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、上述した第4実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の好適形態である。
第5実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が第一所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によって電圧印加を開始し、その後、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が第二所定値以上になったと判断したときに、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする。
この排ガス浄化システムの制御方法は、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が第一所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によって電圧印加を開始し、その後、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が第二所定値以上になったと判断したときに、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とする制御を含む。そのため、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を向上させることができる。なお、この排ガス浄化システムの制御方法は、触媒貴金属が活性化されていない低い温度域においてもNOx浄化率を向上させることができるという副次的な利点がある。また、この排ガス浄化システムの制御方法は、NOx浄化率を向上させるに当たり、リッチスパイクの深さなどを制御するような複雑な制御を必ずしも必要としないという副次的な利点がある。
なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%未満の範囲内で適宜設定することが好適である。また、特に限定されるものではないが、第二所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内であって、第一所定値よりも大きい値を適宜設定することが好適である。
ここで、排ガス浄化システムの制御方法の若干例を挙げて説明する。
図7は、第5実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、S21において、エンジンを始動し、S22に進む。
次いで、S22において、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御をし、S23に進む。
次いで、S23において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第一所定値とが、関係式(I):NOx吸着量≧第一所定値の関係を満足するか判断する。関係式(I)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S24に進む。一方、関係式(I)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S22に進む。なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%未満の範囲内で適宜設定することが好適である。
次いで、S24において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、プラズマOnの状態として、S25に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて行うことが好適である。また、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて行うことがより好適である。
次いで、S25において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第二所定値とが、関係式(II):NOx吸着量≧第二所定値の関係を満足するか判断する。関係式(II)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S26に進む。一方、関係式(II)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S25を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、第二所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内であって、第一所定値よりも大きい値を適宜設定することが好適である。
次いで、S26において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を開始し、S27に進む。
次いで、S27において、エンジンのリッチ制御を開始してから一定時間経過しているか判断する。一定時間経過している場合(Yesの場合)は、S28に進む。一方、一定時間経過していない場合(Noの場合)は、S27を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
次いで、S28において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、プラズマOffの状態として、S29に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOffの状態であることの判断は、プラズマOnの状態であることの判断と同様の電気信号に基づいて行うことが好適である。
さらに、S29において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を停止、すなわち、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御を開始し、S30に進む。
しかる後、S30において、エンジンが停止しているか判断する。エンジンが停止している場合(Yesの場合)は、終了する。一方、エンジンが停止していない場合(Noの場合)は、S22に進む。
図8は、第5実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の他の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、まず、S31において、エンジンを始動し、S32に進む。
次いで、S32において、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御をし、S33に進む。
次いで、S33において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第一所定値とが、関係式(I):NOx吸着量≧第一所定値の関係を満足するか判断する。関係式(I)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S34に進む。一方、関係式(I)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S32に進む。なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%未満の範囲内で適宜設定することが好適である。
次いで、S34において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、プラズマOnの状態として、S35に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて行うことが好適である。また、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて行うことがより好適である。
次いで、S35において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第二所定値とが、関係式(II):NOx吸着量≧第二所定値の関係を満足するか判断する。関係式(II)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S36に進む。一方、関係式(II)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S35を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、第二所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内であって、第一所定値よりも大きい値を適宜設定することが好適である。
次いで、S36において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を開始し、S37に進む。
次いで、S37において、エンジンのリッチ制御を開始してから一定時間経過しているか判断する。一定時間経過している場合(Yesの場合)は、S38に進む。一方、一定時間経過していない場合(Noの場合)は、S37を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
さらに、S38において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、プラズマOffの状態とすると同時に、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を停止、すなわち、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御を開始し、S39に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOffの状態であることの判断は、プラズマOnの状態であることの判断と同様の電気信号に基づいて行うことが好適である。
しかる後、S39において、エンジンが停止しているか判断する。エンジンが停止している場合(Yesの場合)は、終了する。一方、エンジンが停止していない場合(Noの場合)は、S32に進む。
<第6実施形態>
次に、第6実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法について詳細に説明する。なお、第6実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、上述した第4実施形態又は第5実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の好適形態である。
第6実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法は、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰としてから一定時間経過させ、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を空気過剰とし、その後、電源装置の制御によって電圧印加を停止する。
この排ガス浄化システムの制御方法は、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰としてから一定時間経過させ、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を空気過剰とし、その後、電源装置の制御によって電圧印加を停止する制御を含む。そのため、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を更に向上させることができる。なお、この排ガス浄化システムの制御方法は、触媒貴金属が活性化されていない低い温度域においてもNOx浄化率を向上させることができるという副次的な利点がある。また、この排ガス浄化システムの制御方法は、NOx浄化率を向上させるに当たり、リッチスパイクの深さなどを制御するような複雑な制御を必ずしも必要としないという副次的な利点がある。
なお、特に限定されるものではないが、上記一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
現時点においては、以下のようなメカニズムにより、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を更に向上させることができるという効果が得られていると考えている。
排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)から空気過剰(リーン域)に切り替わった直後、特に低温域においては、一酸化窒素(NO)が二酸化窒素(NO2)となるときの酸化反応の反応速度が遅い。この酸化反応としては、例えば、反応式(5):2NO+O2→2NO2を挙げることができる。このとき、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止するよりも先に、排ガスの空燃比を空気過剰(リーン域)に切り替えることにより、O2をオゾン(O3)に変換することができる。生成したO3により、NOがNO2となるときの酸化反応の反応速度が速くなり、排ガス浄化触媒におけるNOxの吸着効率が低下することを抑制して、効率良くNOxを吸着することができる。
このようなメカニズムにより、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率を更に向上させることができるという効果が得られる。
ただし、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
ここで、排ガス浄化システムの制御方法の若干例を挙げて説明する。
図9は、第6実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、まず、S41において、エンジンを始動し、S42に進む。
次いで、S42において、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御をし、S43に進む。
次いで、S43において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第一所定値とが、関係式(I):NOx吸着量≧第一所定値の関係を満足するか判断する。関係式(I)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S44に進む。一方、関係式(I)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S42に進む。なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%未満の範囲内で適宜設定することが好適である。
次いで、S44において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、プラズマOnの状態として、S45に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて行うことが好適である。また、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて行うことがより好適である。
次いで、S45において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を開始し、S46に進む。
次いで、S46において、エンジンのリッチ制御を開始してから一定時間経過しているか判断する。一定時間経過している場合(Yesの場合)は、S47に進む。一方、一定時間経過していない場合(Noの場合)は、S46を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
さらに、S47において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を停止、すなわち、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御を開始し、S48に進む。
次いで、S48において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、プラズマOffの状態として、S49に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOffの状態であることの判断は、プラズマOnの状態であることの判断と同様の電気信号に基づいて行うことが好適である。
しかる後、S49において、エンジンが停止しているか判断する。エンジンが停止している場合(Yesの場合)は、終了する。一方、エンジンが停止していない場合(Noの場合)は、S42に進む。
図10は、第6実施形態に係る排ガス浄化システムの制御方法の他の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず、S51において、エンジンを始動し、S52に進む。
次いで、S52において、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御をし、S53に進む。
次いで、S53において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第一所定値とが、関係式(I):NOx吸着量≧第一所定値の関係を満足するか判断する。関係式(I)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S54に進む。一方、関係式(I)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S52に進む。なお、特に限定されるものではないが、第一所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%未満の範囲内で適宜設定することが好適である。
次いで、S54において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、プラズマOnの状態として、S55に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始するために電源装置に送る電気信号に基づいて行うことが好適である。また、特に限定されるものではないが、プラズマOnの状態であることの判断は、例えば、複数の板状電極間にプラズマを発生させるための電圧印加を開始した電源装置から送られる電気信号に基づいて行うことがより好適である。
次いで、S55において、NOx吸着量推定装置が推定した排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量と第二所定値とが、関係式(II):NOx吸着量≧第二所定値の関係を満足するか判断する。関係式(II)の関係を満足する場合(Yesの場合)は、S56に進む。一方、関係式(II)の関係を満足しない場合(Noの場合)は、S55を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、第二所定値は、例えば、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、80%以上100%以下の範囲内であって、第一所定値よりも大きい値を適宜設定することが好適である。
次いで、S56において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を開始し、S57に進む。
次いで、S57において、エンジンのリッチ制御を開始してから一定時間経過しているか判断する。一定時間経過している場合(Yesの場合)は、S58に進む。一方、一定時間経過していない場合(Noの場合)は、S57を再度実行する。なお、特に限定されるものではないが、一定時間としては、排ガス浄化触媒の最大NOx吸着可能量(飽和NOx吸着量)を100%としたときに、排ガス浄化触媒のNOx吸着量が80%未満であって、所望の値以下まで低減し得る時間を適宜設定することが好適である。
さらに、S58において、排ガスの空燃比が燃料過剰(リッチ域)となるエンジンのリッチ制御を停止、すなわち、排ガスの空燃比が空気過剰(リーン域)となるエンジンのリーン制御を開始し、S59に進む。
次いで、S59において、電源装置の制御によってプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、プラズマOffの状態として、S60に進む。なお、特に限定されるものではないが、プラズマOffの状態であることの判断は、プラズマOnの状態であることの判断と同様の電気信号に基づいて行うことが好適である。
しかる後、S60において、エンジンが停止しているか判断する。エンジンが停止している場合(Yesの場合)は、終了する。一方、エンジンが停止していない場合(Noの場合)は、S52に進む。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[性能評価]
(実施例1〜実施例6及び比較例1)
各例において、図2に示すように、排ガス(モデルガス)流路上に、下記の排ガス浄化触媒と下記の複数の板状電極とを配置した。
・排ガス浄化触媒:リーンNOxトラップ触媒(サイズ:Φ36mm×40mm)
・板状電極:誘電体層付き金属基板(金属基板:ステンレス鋼(SUS)、誘電体層:イットリア、電極枚数:2枚、貫通孔形状:円形、貫通孔径:Φ6mm、電極厚さ(誘電体層含む):約4mm、有効電極径:Φ36mm(触媒径と同等))
各例において、下記のトータルガス流量及び下記のプラズマ発生条件とした。
・トータルガス流量:40L/min(空間速度(SV):60000h−1相当)
・プラズマ発生条件:放電電圧;10kVp−p、放電電流;任意、周波数;20kHz
まず、各例において、表1に示す前処理ガスを排ガス流路に流通させ、排ガス浄化触媒の温度を550℃まで昇温させた後、15分間維持させた。
その後、各例において、前処理ガスを窒素(N2)ガスに切り替えて排ガス流路に流通させ、排ガス浄化触媒の温度を200℃まで降温させた。
その後、各例において、N2ガスを表1に示す切り替えガスに切り替えて排ガス流路に流通させた。その際の排ガス浄化触媒の出口側のガス濃度を測定した。なお、切り替えガスにおいて、リーン域のガス成分としてO2を、リッチ域のガス成分としてHC、CO、H2を、それぞれ任意の時間で切り替える切り替え評価をNOx濃度が安定するまで実施した。30分程度であった。
(実施例1)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第一所定値(排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量を100%としたときの80%に相当する値である。以下、各例において同様である。)に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始した後にR/Sを開始し、R/Sを開始した2秒後に上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、その後、R/Sを停止した。なお、R/Sを開始するためのトリガーであるプラズマを発生させるための電圧印加を開始したことの判断は、プラズマを発生させるために電源装置に送る電気信号(プラズマ信号)に基づいて行った。
(実施例2)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第一所定値に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始した後にR/Sを開始し、その後、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加及びR/Sを同時に停止した。なお、R/Sを開始するためのトリガーであるプラズマを発生させるための電圧印加を開始したことの判断は、プラズマを発生させるために電源装置に送る電気信号(プラズマ信号)に基づいて行った。
(実施例3)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第一所定値に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第二所定値(排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量を100%としたときの90%に相当する値である。以下、各例において同様である。)に到達したと判断したときに、R/Sを開始し、R/Sを開始した2秒後に上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を停止し、その後、R/Sを停止した。なお、R/Sを開始するためのトリガーは、NOx吸着量(第二所定値)である。
(実施例4)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第一所定値に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第二所定値に到達したと判断したときに、R/Sを開始し、その後、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加及びR/Sを同時に停止した。なお、R/Sを開始するためのトリガーは、NOx吸着量(第二所定値)である。
(実施例5)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第一所定値に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始した後にR/Sを開始し、その後、R/Sを停止し、R/Sを停止した2秒後に上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を停止した。なお、R/Sをするためのトリガーであるプラズマを発生させるための電圧印加を開始したことの判断は、プラズマを発生させるために電源装置に送る電気信号(プラズマ信号)に基づいて行った。
(実施例6)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第一所定値に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を開始し、その後、予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第二所定値に到達したと判断したときに、R/Sを開始し、その後、R/Sを停止し、R/Sを停止した2秒後に上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加を停止した。なお、R/Sを開始するためのトリガーは、NOx吸着量(第二所定値)である。
(比較例1)
予め計測・算出した排ガス浄化触媒の飽和NOx吸着量に基づいて、予め設定した第二所定値に到達したと判断したときに、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加及びR/Sを同時に開始し、その後、上記プラズマ発生条件によるプラズマを発生させるための電圧印加及びR/Sを同時に停止した。なお、R/Sを開始するためのトリガーは、NOx吸着量(第二所定値)である。
上記各例のNOx浄化率を各例の条件の一部とともに表2に示す。なお、実施例1〜実施例6においては、プラズマ発生からR/Sをするまでの時間はほぼ同じになるように設定した。
表2より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例6は、本発明外の比較例1より、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率が向上していることが分かる。
つまり、内燃機関の排ガス流路に配置され、NOxを吸着、脱離及び浄化する機能を有する排ガス浄化触媒と、排ガスが通過するための複数の貫通孔を有する複数の板状電極、及び板状電極間にプラズマを発生させるための電圧を印加する電源装置を備え、複数の板状電極が、排ガス流路において排ガス浄化触媒よりも上流側に配置されているプラズマ処理装置と、排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量を推定する機能、電源装置を制御する機能及び内燃機関の空燃比を制御する機能を有し、排ガス浄化触媒におけるNOx吸着量を推定するNOx吸着量推定装置を備えた制御装置と、を具備した排ガス浄化システムの制御方法において、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によって電圧印加を開始し、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰とすると、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率が向上し得ることが分かる。
また、上記排ガス浄化システムの制御方法において、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が第一所定値以上になったと判断したときに、電源装置の制御によって電圧印加を開始し、その後、NOx吸着量推定装置が推定したNOx吸着量が第二所定値以上になったと判断したときに、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰としても、実施例3、実施例4、実施例6より、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率が向上し得ることが分かる。
また、上記排ガス浄化システムの制御方法において、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を燃料過剰としてから一定時間経過させ、その後、内燃機関の空燃比の制御によって排ガスの空燃比を空気過剰とし、その後、電源装置の制御によって電圧印加を停止すると、実施例5、実施例6より、LNTサイクルのトータルにおけるNOx浄化率が向上し得ることが分かる。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。