JP6866726B2 - 石膏の製造方法及びセメント組成物の製造方法 - Google Patents

石膏の製造方法及びセメント組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、石膏の製造方法及びセメント組成物の製造方法に関する。
モノマー精製工程から排出され、テトラフルオロエチレン(TFE)等を含有する廃硫酸は、硫酸濃度が高いことが特徴である。
廃硫酸を用いて二水石膏を製造するためには、廃硫酸を希釈し、硫酸濃度を下げたものをカルシウム源と混合する必要がある。しかしながら、廃硫酸を、水で希釈すると、有機物を多量に含む黒色粒子が発生し、その粒子が合成石膏に含まれてしまい、石膏中の全有機炭素(以下、「TOC」と称す。)含有量が高くなってしまう。この粒子は、水洗等の操作によって、溶解しないため、一度、石膏中に析出すると取り除くことは困難である。
有機性廃水を処理する方法として、活性汚泥を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、廃硫酸を処理する方法として、過酸化水素水を添加し、加温かつ減圧することで処理する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、純度が低下した廃硫酸を蒸留し、濃縮後、廃硫酸に含まれる有機物を紫外線照射で処理する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許3167021号公報 特開2013−95640号公報 特許3257074号公報
しかし、特許文献1で提案している活性汚泥を用いる方法では、活性汚泥の管理が必要であり、廃硫酸に適用するにはpHが問題となる。さらに、活性汚泥を用いる方法では、余剰汚泥が少なからず発生する問題がある。
特許文献2で提案している方法では、加温工程及び減圧工程を経ることから、各工程にエネルギーを要する問題がある。
特許文献3で提案している方法では、紫外線照射により有機物を分解するために、廃硫酸全体に紫外線を照射する必用がある。さらに、滞留時間をかせぐことが必要であり、多量の廃硫酸を処理する場合、大掛かりな装置が必要となる問題がある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、廃硫酸を希釈する際に、黒色粒子を析出させない廃硫酸の処理を施し、処理した廃硫酸を用いてTOC含有量の少ない石膏の製造方法及びセメント組成物を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、モノマー精製工程から排出される有機物を含む廃硫酸に過酸化水素(H)を添加することによって、黒色粒子を析出させない廃硫酸とすることができることを見出し、さらに、処理した廃硫酸を用いることでTOC含有量の少ない石膏を製造できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]モノマー精製工程から排出される有機物を含む廃硫酸に過酸化水素を添加する工程(A)と、前記過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈する工程(B)と、前記希釈した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(C)とを含む石膏の製造方法。
[2]前記廃硫酸中の全有機炭素濃度(mg/kg)に対し、3倍以上の濃度となるように過酸化水素を添加する[1]の石膏の製造方法。
[3]工程(C)の後に、前記石膏を水洗する工程(D)を含む上記[1]又は[2]の石膏の製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの石膏の製造方法により石膏を製造する工程と、石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程とを含むセメント組成物の製造方法。
本発明によれば、廃硫酸を希釈する際に、黒色粒子を析出させない廃硫酸の処理を施し、処理した廃硫酸を用いてTOC含有量の少ない石膏の製造方法及びセメント組成物を提供することができる。
[石膏の製造方法]
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と称する)における石膏の製造方法は、モノマー精製工程から排出される有機物を含む廃硫酸に過酸化水素を添加する工程(A)と、過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈する工程(B)と、希釈した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(C)とを含む。
ここで、TOC濃度は、酸化されうる有機物の全量を炭素の量で示したものであり、燃焼酸化方式、UV湿式酸化方式及び二段階湿式酸化方式による測定により求められるものである。
工程(A)
工程(A)では、モノマー精製工程から排出される有機物を含む廃硫酸に過酸化水素を添加する。
(廃硫酸)
工程(A)で使用される廃硫酸は、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のモノマー精製工程から排出される有機物を含む廃硫酸である。廃硫酸のTOC含有量は、例えば、1,000〜4,000(mg/kg)である。
工程(A)で使用される廃硫酸は、硫酸濃度が高い。廃硫酸の硫酸濃度は、例えば、85〜99wt%である。
工程(A)で使用される廃硫酸としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)等のフッ素化合物を含有するものが挙げられるが、TOC含有量が上記範囲内のものであれば特に限定されない。
(過酸化水素の添加量)
過酸化水素は、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、3倍以上の濃度となるように添加することが好ましい。過酸化水素の添加量は、過剰なく、廃硫酸からの黒色粒子の析出を抑制する観点から、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、3〜10倍であることが好ましく、3〜8倍であることがより好ましく、3〜6倍であることがさらに好ましい。
工程(B)
工程(B)では、過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈する。
(希釈)
廃硫酸は、硫酸濃度が高いため、石膏を製造するために硫酸濃度を下げる必要がある。そのため、廃硫酸は、水と混合して希釈することを要する。
工程(C)
工程(C)では、希釈した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる。
(カルシウム源)
工程(C)で使用されるカルシウム源は、カルシウムを含む化合物及びそれらを主成分とする各種材料であり、石膏以外のものであれば、特に限定されない。カルシウム源には、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム及びリン酸カルシウム等が挙げられる。また、貝殻や生コンスラッジなどのカルシウムの含有量の大きな廃棄物をカルシウム源として使用してもよい。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、好ましいカルシウム源は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である。なお、粉末の状態のカルシウム源を廃硫酸に添加してもよいし、スラリーの状態のカルシウム源を廃硫酸に添加してもよい。
(石膏の取り出し)
次いで、廃硫酸から析出させた石膏を取り出す。例えば、石膏を沈降させることによって、廃硫酸から石膏を取り出してもよいし、石膏を含有する廃硫酸をろ過することによって廃硫酸から石膏を取り出してもよい。また、液体サイクロン、デカンター、遠心分離機、フィルタープレス等の固液分離装置を用いる分離方法を採用して廃硫酸から石膏を取り出してもよい。これらの取り出し方法は、単独で実施してもよいし、2種以上を組み合わせて実施してもよい。また、石膏をより速やかに取り出すために廃硫酸に高分子凝集剤を添加してもよい。
(石膏)
工程(C)で析出される石膏は、工程(A)及び工程(C)を経ているため、廃硫酸からの黒色粒子の析出が抑制されている。黒色粒子の析出が抑制されるのは、過酸化水素を廃硫酸に添加することによって、廃硫酸に存在する高分子成分の分子鎖が切断されることにより生じる現象であると考えられる。
工程(C)で析出される石膏において、廃硫酸からの黒色粒子の析出が抑制されていることにより、得られる石膏中のTOC濃度(mg/kg)を減少させることができる。
工程(C)で析出される石膏中のTOC濃度(mg/kg)は、2,000mg/kg以下であることが好ましく、1,800mg/kg以下であることがより好ましく、1,600mg/kg以下であることがさらに好ましい。
(石膏を析出させるときの廃硫酸のpH)
石膏を析出させるときの廃硫酸のpHは、7.0を超えてしまうと添加物が析出してしまい、得られる石膏の純度が低くなるため好ましくない。そこで、石膏を析出させるときの廃硫酸のpHは、得られる石膏の量及び品質の両方の観点から、0.3〜7.0であることが好ましく、0.5〜7.0であることがより好ましく、0.7〜7.0であることがさらに好ましい。
但し、得られる石膏の量に特化した観点からは、石膏を析出させるときの廃硫酸のpHは、4.0〜7.0であることが好ましく、4.5〜7.0であることがより好ましく、5.0〜7.0であることがさらに好ましい。また、得られる石膏の品質に特化した観点からは、石膏を析出させるときの廃硫酸のpHは、0.3〜4.0であることが好ましく、0.5〜3.5であることがより好ましく、0.7〜3.0であることがさらに好ましい。
なお、石膏を析出させるときの廃硫酸のpHとは、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏が析出した後のpHである。
(カルシウム源の添加量)
カルシウム源の廃硫酸への添加量は、石膏を析出させるときの廃硫酸のpHの範囲が上記所定範囲となる量であれば、特に限定されない。
カルシウム源の廃硫酸への添加量は、効率よく石膏を析出させるという観点から、カルシウム源の廃硫酸における濃度(g/mL)が0.2〜2.0g/mLであることが好ましく、0.3〜1.8g/mLであることがより好ましく、0.4〜1.6g/mLであることがさらに好ましい。
工程(D)
工程(D)では、析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗する。
水洗作業としては、析出した石膏を水洗し、水洗後のスラリーを固液分離して、固体として石膏が得られる。
(石膏)
工程(D)で水洗された後の石膏中のTOC濃度(mg/kg)は、500mg/kg以下であることが好ましく、450mg/kg以下であることがより好ましく、400mg/kg以下であることがさらに好ましい。
(TOCの分配率)
水洗された後の石膏のTOCの含有量及び水洗したろ液のTOCの含有量を測定し、石膏又はろ液へのTOCの分配率を求める。なお、石膏への分配率及びろ液への分配率は、合計が100%となるように標準化する。石膏への分配率は、TOC含有量の少ない石膏を製造するために、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
以上の本実施形態の石膏の製造方法は、本発明の石膏の製造方法の一実施形態にすぎず、本発明の石膏の製造方法を限定するものではない。
本発明の石膏の製造方法によれば、廃硫酸中の有機物を少量含んでいても、廃硫酸を希釈する際に黒色粒子が析出しないので、廃硫酸中の有機物を完全に除去する必要がないため、低コスト処理で石膏を製造することができる。
[セメント組成物の製造方法]
本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏を用いてセメント組成物を製造する。例えば、セメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。また、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏をクリンカ原料の1つとして用いて製造したセメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏又はその他の石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。これにより、本発明の石膏の製造方法によって製造された石膏をセメント組成物の原料として有効利用できる。なお、少量混合成分は、例えば、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ及び石灰石からなる群から選択される少なくとも1種である。なお、セメント組成物中の石膏の含有量は、SO換算で、例えば、1.0〜3.0質量%である。また、セメント組成物中の少量混合成分の含有量は、例えば、セメントクリンカ、石膏及び少量混合成分の合計100質量部に対して5質量部以下である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[各種条件、成分量等の測定]
各工程における成分量及び条件の測定は以下のように行った。
(1)TOC含有量
全有機体炭素計(株式会社島津製作所社製、製品名:TOC-LCSH)と、固体試料燃焼装置(株式会社島津製作所社製、製品名:SSM−5000A)を使用して、廃硫酸のTOC含有量、水洗前の石膏のTOC含有量、及び水洗後の石膏のTOC含有量を測定した。
(2)廃硫酸のpH
pH計(株式会社堀場製作所製、製品名:pHメータ D−51)、pH電極(株式会社堀場製作所製、製品名:スリーブTough電極 9681−10D)を使用して、廃硫酸のpHを測定した。
(3)TOCの分配率
測定した水洗後の石膏のTOC含有量及びろ液のTOC含有量より、石膏又はろ液へのTOCの分配率を算出した。なお、石膏への分配率及びろ液への分配率は、合計が100%となるように標準化した。
(実施例1)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、3.72倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、1.0%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、2,480mg/kgであった。
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
(実施例2)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、5.58倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、1.5%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、1,840mg/kgであった。
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表1に示す。
参考例1
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、1.86倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、0.5%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、2,990mg/kgであった。
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表1に示す。
(比較例1)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。廃硫酸に対して、過酸化水素を添加する酸化処理は行わなかった。
<工程(B)>
廃硫酸を、水と混合して希釈した。
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表1に示す。
Figure 0006866726
(実施例3〜8
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、3.72倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、1.0%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、2,480mg/kgであった。
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(2.0〜7.0)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表2に示す。
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表2に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表2に示す。
Figure 0006866726
(結果)
実施例1〜8及び参考例1では、廃硫酸に過酸化水素を添加する処理を行うことによって、TOC含有量の少ない石膏を製造することができた。また、実施例1〜8では、廃硫酸を水で希釈した際に有機物を多量に含む黒色粒子は発生しなかった。
一方、未処理の廃硫酸を用いた比較例1では、石膏のTOC含有量が多く、廃硫酸を水で希釈した際に黒色粒子が発生した。
[セメントの物理試験]
実施例の石膏の製造方法により製造された石膏を用いたセメントと市販の石膏を用いたセメントの物理試験として以下のように測定及び評価した。
(1)凝結試験
JIS R5201:2015に規定された「セメントの物理試験方法」に準拠して、凝結試験を実施した。結果を後述の表3に示す。
(2)モルタル圧縮試験
モルタル試験はJIS R 5201:2015に規定された「セメントの物理試験方法」に準拠して実施した。材齢3日(3d)、7日(7d)、28日(28d)におけるモルタル圧縮強さを後述の表3に示す。
(実施例
以下に示す条件で実施例のセメントを試作し、凝結試験及びモルタル圧縮試験を行った。凝結試験及びモルタル圧縮試験の結果を後述の表3に示す。
<セメント試作条件>
・クリンカ:NC
・石膏:実施例2で製造した石膏
・粉砕条件:混合粉砕
・セメントSO:2.0%
・ブレーン値:3400±100cm/g
(参考例
以下に示す条件で参考例のセメントを試作し、凝結試験及びモルタル圧縮試験を行った。凝結試験及びモルタル圧縮試験の結果を後述の表3に示す。
<セメント試作条件>
・クリンカ:NC
・石膏:市販石膏(排脱石膏)
・粉砕条件:混合粉砕
・セメントSO:2.0%
・ブレーン値:3400±100cm/g
Figure 0006866726
(結果)
実施例で用いた石膏(実施例2)は、表1で示すように、廃硫酸から完全に有機物を取り除けてはおらず、少量の有機物を含んでいる。しかしながら、表3に示すように、凝結試験及びモルタル圧縮試験の結果では、市販の石膏を用いた参考例と同等の物性を有することが分かる。つまり、本発明の石膏の製造方法により製造される石膏は、物性に影響を及ぼさない程度まで有機物を減少させていることが分かる。

Claims (3)

  1. モノマー精製工程から排出される有機物を含む廃硫酸に、前記廃硫酸中の全有機炭素濃度(mg/kg)に対し、3倍以上の濃度となるように過酸化水素を添加する工程(A)と、
    前記過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈する工程(B)と、
    前記希釈した廃硫酸にカルシウム源を添加して、pH0.3〜7.0の範囲で石膏を析出させる工程(C)とを含む石膏の製造方法。
  2. 工程(C)の後に、前記石膏を水洗する工程(D)を含む請求項1に記載の石膏の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の石膏の製造方法により石膏を製造する工程と、
    前記石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程とを含むセメント組成物の製造方法。
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