以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図9は本発明の実施による排水設備の形態の一例を示すものである。図1、図2は本実施例の排水設備が適用される建築物の排水設備の全体構造を示しており、ここではバルコニーを対象とした場合を例示している。
バルコニー1は、図1に示す如く建築物の掃き出し窓2に面して備えられており、掃き出し窓2の下方に位置する床面3の周囲は、掃き出し窓2を備えて床面3の一辺をなす外壁4と、それ以外の三辺をなす壁面パネル5とで取り囲まれている。床面3は、外壁4と対向する壁面パネル5の下端に沿ってドレン溝6を備えており、床面3及びドレン溝6の表面には水を通さない塗膜等により防水層が形成されている。ドレン溝6の両端には、第一の排水管としてのドレン管7の入口が開口している。
図2に示す如く、ドレン管7はそれぞれ上側を入口、下側を出口とし、上側はドレン溝6の底に開口し、下側はバルコニー1の床面3下に備えた雨樋8に向かって開口している。各ドレン管7の入口にはそれぞれドレンキャップ9が備えられている。ドレンキャップ9は、上に凸なドーム状の形状を有するキャップ本体9aの下側に固定部材としての板バネ9bを備えてなり、該板バネ9bを曲げた状態でドレン管7の入口に挿入することで、板バネ9bの弾発力によりドレン管7に固定されるようになっている。キャップ本体9aには、表面と裏面とを連通させる複数の穴が開口されており、該穴から雨水をドレン管7内に通過させつつ、大きい異物がドレン管7内に侵入することを防止するようになっている。
床面3は、ドレン溝6に向かってわずかに下り勾配をなしており、バルコニー1内に吹き込んだ雨水等がドレン溝6に流れ込みやすいようになっている。ドレン溝6に流れ込んだ雨水はドレンキャップ9を通ってドレン管7に流入し、該ドレン管7下部の出口から雨樋8に排出される。
外壁4と対向する壁面パネル5には、該壁面パネル5を貫通するように、該壁面パネル5と直交する水平方向に第二の排水管としてのオーバーフロー管10が備えられている。オーバーフロー管10は、掃き出し窓2と向かい合う側を入口、掃き出し窓2とは反対側を出口とし、入口は床面3より高く且つ掃き出し窓2の下端より低い位置に配置されている。
オーバーフロー管10の入口側には、入口側キャップ11が嵌め込まれている。入口側キャップ11は、キャップ本体11aの一側に固定部材としての板バネ11bを備えてなり、上述のドレンキャップ9同様、板バネ11bを曲げた状態でオーバーフロー管10の入口に挿入することで、板バネ11bの弾発力によりオーバーフロー管10に対し固定される。キャップ本体11aには両面を連通させる複数の穴が開口されており、該穴から雨水をオーバーフロー管10内に通過させつつ、大きい異物がオーバーフロー管10内に侵入することを防止するようになっている。
そして、オーバーフロー管10の出口である外側には、本実施例の要部である排水管用キャップとしての出口側キャップ12が装着されている。この出口側キャップ12は、図3〜図5に拡大して示す如く、オーバーフロー管10の出口に挿し込まれて嵌合する筒状の嵌合部14aを形成した支持体14と、該支持体14の出口に装備されて該出口を覆うキャップ本体13と、該キャップ本体13及び支持体14の外側を覆うカバー15とを備えてなる。尚、図3及び図5の視点からは、実際にはキャップ本体13や支持体14はカバー15に覆われて見えないが、ここでは説明の都合上、カバー15を仮想線にて表示し、キャップ本体13や支持体14を実線で表示している。また、図3、図4共に、オーバーフロー管10は破線にて表示している(以下の図8、図9においても、同様にオーバーフロー管10を破線にて表示している)。
図6、図7に分解図にて示す如く、支持体14は、オーバーフロー管10の内側に嵌合する短円筒状の嵌合部14a(図3〜図5参照)と、該嵌合部14aの周囲に張り出すフランジ14bを備えてなる。嵌合部14aは、外径をオーバーフロー管10の内径に合わせて設計された短い管であり、オーバーフロー管10の出口に挿し込むことで支持体14をオーバーフロー管10に対し固定できるようになっている。一般的にオーバーフロー管10として用いられる塩化ビニルパイプ等の径は、規格により数種類に限られるので、嵌合部14aの外径、ないしフランジ14bやキャップ本体13やカバー15等の寸法は、オーバーフロー管10の規格に合わせて数種類を設計すれば良い。また、ここでは嵌合部14aをオーバーフロー管10の内側に挿入することで嵌合する場合を説明したが、これとは逆に、嵌合部14aがオーバーフロー管10の外周に対して嵌合するように構成することもできる。
ここで、本実施例の場合、上述の如く、オーバーフロー管10は垂直面をなす壁面パネル5に直交する水平方向に備えられるので(図2参照)、支持体14は、嵌合部14aがオーバーフロー管10の軸方向に沿って水平方向に配置され、且つフランジ14bが壁面パネル5に沿った垂直面をなす向きに設置される。したがって、以下では便宜上、嵌合部14aの軸に沿った水平方向を前後方向、嵌合部14aの軸に直交する水平方向を左右方向、嵌合部14aの軸に直交する垂直方向を上下方向として説明する。
フランジ14bは、図6、図7に示す如く全体に方形をなしており、嵌合部14aと反対側の面には、フランジ14bにおける嵌合部14aの縁にあたる位置に短円筒状に突出する突出部14cを備えている。また、該突出部14cの上方の位置にはキャップ本体13を回転可能に支持するための本体取付部14dを備え、突出部14cの下方の位置にはキャップ本体13の下部を閉位置で支持するための突当部14eを備えている。また、フランジ14b下部の左右両端には、カバー15を固定するための係止部14fを備えている。突出部14c、本体取付部14d、突当部14e及び係止部14fの詳細については、キャップ本体13やカバー15の説明と合わせて後述する。
キャップ本体13は、図6、図7に示す如く、上下方向に延びる複数の縦材13aを、左右方向に沿って配される円柱状の軸13bにより横方向に連結してなる。個々の縦材13aは、細長い板状の物体であり、互いに平行な面をなして等間隔に配列した板状の縦材13aの上部を、各縦材13aに直交する向きに軸13bが貫通した形に固定することで、キャップ本体13全体として柵状の形状をなしている。縦材13aの下部には、その最下端に櫛歯状の隙間を残して、複数の縦材13aを横断する向きに抵抗板13cが配置されており、各縦材13aは、上部において軸13bにより、下部において抵抗板13cにより、それぞれ互いに連結された形になっている。
支持体14のフランジ14bに備えた本体取付部14dは、キャップ本体13の軸13bを支持するための構成である。図6に示す如く、本体取付部14dは、フランジ14bと直交する垂直面をなして突出する二枚の外側取付板14gと、該二枚の外側取付板14gに挟まれる位置にフランジ14bと直交する垂直面をなして突出する二枚の内側取付板14hを備えてなる。外側取付板14g及び内側取付板14hは、フランジ14bにおいて、オーバーフロー管10(図3、図4参照)の出口をなす突出部14cの上方に同じ高さに形成される。外側取付板14gはフランジ14bから突出しつつその先端が上方に向かって屈曲する鈎状の形状をなしており、図3に示す如く、この鈎の内側、すなわちフランジ14b側にキャップ本体13の軸13bが配置される。一方、内側取付板14hは、図6に示す如くフランジ14bから遠い側の縁に凹部を備えており、図3に示す如く、この凹部に軸13bが配置される。こうして、外側取付板14gのなす鈎状形状と、内側取付板14hの凹部とにより軸13bを前後から挟み込むように支持し、これにより、キャップ本体13全体が軸13bを中心として支持体14に対し回転できるようになっている。尚、本体取付部14dの構成は、ここに示した例に限定されるものではなく、キャップ本体13を回転可能に支持できればどのような構成であっても良い。
図3に示す如く、キャップ本体13を構成する個々の縦材13aは、上下方向の長さがフランジ14bの本体取付部14dから突当部14eに達する長さであり、軸13bが本体取付部14dに支持された状態で、突出部14cの上方から下方にわたって配置される。また、軸13bは、突出部14cの左右方向の幅より長く、複数の縦材13aは、突出部14cの左右方向全幅にわたって配置される。こうして、複数の縦材13aにより構成されるキャップ本体13が、オーバーフロー管10の出口をなす突出部14c中央の開口全体を覆うようになっている。
この際、図5に示す如く、突出部14cと突当部14eにより、突出部14cとキャップ本体13との隙間には、縦材13a同士の隙間と同じ程度の幅の隙間が確保される。すなわち、フランジ14bには、本体取付部14dを介してキャップ本体13が取り付けられるため、キャップ本体13はフランジ14bのなす面から本体取付部14dの高さだけ離間することになる。そこで、フランジ14bからキャップ本体13の側に向かって突出部14cを設けることで、キャップ本体13とフランジ14bとの間の距離を適度に狭くしている。さらに、突出部14cの下方に、フランジ14bのなす面からキャップ本体13に向かって突出部14cよりも大きく張り出す突当部14eを備え、この突当部14eに縦材13aの下端を突き当てるようにすることで、キャップ本体13が閉じた状態において縦材13aのなす柵状の構造が突出部14cの縁に対して略平行になるようにし、キャップ本体13と突出部14cとの間の隙間を一定の幅に保つようにしている。
カバー15は、図3、図4に示す如く、支持体14のフランジ14bのなす面と直交する垂直面をなす二つの側面15aと、該二つの側面15aに挟まれるように上面15b及び正面15cを備えている。二つの側面15aはフランジ14bの左右方向外側に、上面15bはフランジ14bの上側に配される。正面15cはキャップ本体13に関してフランジ14bと反対側の位置でフランジ14bと平行な垂直面をなすよう配置され、上面15bと正面15cは滑らかな曲面をなして連続している。こうして、二つの側面15aと上面15bとで支持体14を三方から取り囲み、正面15cとあわせて支持体14及びこれに支持されるキャップ本体13の全体を覆う形となっている。この際、正面15cがキャップ本体13と対峙する位置関係となるが、正面15cはキャップ本体13とは十分に離間しており、カバー15が後述するキャップ本体13の開動作を妨げないようになっている。
図4、図7に示す如く、カバー15の内側には、二つの側面15a及び上面15bの縁部全体にわたって二枚の取付フランジ15d,15dが突出しており、この取付フランジ15d,15dの間に支持体14のフランジ14bの縁を差し込むことができるようになっている。二枚の取付フランジ15d,15dのうち、正面15cから遠い側の取付フランジ15dには、左右の下端部の内側に切欠き15e,15eが備えられており、ここに支持体14のフランジ14bに備えた係止部14f,14fを引っ掛けることで、カバー15を支持体14に対し固定できるようになっている。
支持体14の係止部14fは、フランジ14bの下端部の左右両側に備えられており、それぞれフランジ14bの下端から上に向かって切り込むように設けられた切欠き14iと、各該切欠き14iの左右方向外側に設けられた鈎部14jとを備えている。切欠き14iを設けたことで、フランジ14bの下端部における切欠き14iの左右方向外側の領域は下方に向けて細く突出した形となっており、この領域は細い形状のために可撓性を有し、左右方向に僅かに屈曲する(以下、この領域を可撓部14kと称する)。鈎部14jは、この可撓部14kの嵌合部14a側の面に盛り上がるように形成されており、可撓部14kの左右方向両端よりも内側の位置に上下方向に沿って備えられた基部14lの上部に、左右方向外側に僅かに張り出す頭部14mを備えている。頭部14mの上縁は、上端から左右方向外側に向かって下り勾配をなしている。
フランジ14bは、カバー15の両側面15a,15aの間に挿し込めるよう、左右方向の幅が側面15a,15aの内面同士の距離と略等しいか、それよりもやや小さく設定される。フランジ14b下端の鈎部14jは、左右の該鈎部14jの基部14l,14lの左右方向両端同士がなす距離が、取付フランジ15dの左右方向内側の縁同士の距離と略等しいか、それよりやや小さくなるよう配置される。また、左右の鈎部14jの頭部14mの左右方向両端同士がなす距離は、取付フランジ15dに形成した切欠き15e,15e同士の間にちょうど収まる大きさに設定される。
オーバーフロー管10の出口に排水管用キャップ(出口側キャップ)12を取り付ける際には、図8に示す如く、まずキャップ本体13を取り付けた支持体14の嵌合部14aを、オーバーフロー管10の出口に挿入する。その後、支持体14に備えたフランジ14bが二枚の取付フランジ15d,15dの間に収まるよう、カバー15を支持体14に対し上方からスライドさせるように被せる。この際、フランジ14bの下端部における左右両端には鈎部14jが嵌合部14a側の面に盛り上がるように形成されているので、カバー15を支持体14に被せていくと、二枚の取付フランジ15dのうち、オーバーフロー管10側に位置する取付フランジ15dの下端が、左右の鈎部14jの頭部14mに突き当たる。
鈎部14jは可撓部14kに設けられているので、カバー15をさらに下方にスライドさせていくと、取付フランジ15dの下端部によって左右の鈎部14jを含む可撓部14kが左右方向内側に押し縮められ、左右の鈎部14j同士の距離が縮まって、取付フランジ15dのフランジ14bに対するさらなる移動を許容する。そして、切欠き15eが頭部14mの位置に達すると、ここで左右の可撓部14kは弾発力によって左右方向外側に広がり、ここで鈎部14jの頭部14mが左右の切欠き15eに係止され、カバー15が支持体14に取り付けられる。このようにして、取り付けの手順は完了する。
あるいは、カバー15を支持体14に取り付けてから、嵌合部14aをオーバーフロー管10の出口に挿入して固定するという手順でも良い。また、清掃等を行う場合には、作業者がカバー15の下方から手を入れ、支持体14の鈎部14j,14j同士を左右方向内側に押し縮めつつ、カバー15を上方にスライドさせれば、支持体14からカバー15を取り外すことができる。
尚、支持体14に対するカバー15の取付構造は上述の構成に限定されない。例えば、フランジ14bから鈎部を前面(オーバーフロー管10と反対側)に突出させると共に、カバー15における前記鈎部に対応する位置に係合穴を備え、カバー15を支持体14に対し水平方向に押し付けるようにすることで前記係合穴に前記鈎部を係合させ、カバー15を支持体14に対し固定するよう構成することもできる。この場合、カバー15の着脱にあたり、該カバー15を壁面パネル5(図1、図2参照)に沿ってスライドさせることがないため、カバー15と壁面パネル5との摺動を避け、壁面パネル5の表面の摩耗や破損を回避することができる。また、ここに説明した以外にも、支持体14に対しカバー15を適切に固定できる限り、カバー15の取付構造としては種々の仕組みを採用することができる。
キャップ本体13は、後述する開閉動作がしやすいよう、塩化ビニル樹脂等の軽い素材にて形成される。支持体14やカバー15の素材は何でも良いが、支持体14には例えばキャップ本体13と同じ塩化ビニル樹脂、カバー15には見栄えや耐候性を考慮してアルミ等を用いることができる。
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
まず、多量の降雨等がない間は、オーバーフロー管10がオーバーフロー管として機能する機会はない。そして、オーバーフロー管10からの排水が行われない間は、出入口から管内にゴミや虫等の異物が侵入することが懸念される。管内の異物はオーバーフロー管10を閉塞ないし排水能力を低下させる虞があるので、異物の侵入はなるべく防止する必要がある。
ここで、図1〜図4に示す如く、オーバーフロー管10の入口には入口側キャップ11が、出口には出口側キャップ12が、それぞれ備えられている。入口側キャップ11は、上述の如くキャップ本体11aに複数の穴が開口した構成であり、大きい異物がオーバーフロー管10の入口から侵入しないようになっている。オーバーフロー管10の出口を覆うキャップ本体13は、上述の如く縦材13aを複数配列した柵状に形成され、該縦材13a同士の隙間は十分に小さく設計されているので、ここから大きい異物がオーバーフロー管10内に侵入する虞はない。また、支持体14のフランジ14bに備えた突出部14cと突当部14eにより、キャップ本体13の閉状態においてフランジ14bとの間の隙間は細く一定に保たれている。したがって、この隙間からも大きい異物が侵入することはない。こうして、入口側キャップ11と出口側キャップ12により、オーバーフロー管10内への異物の侵入は出入口ともに防止されるようになっている。
また、キャップ本体13や支持体14はカバー15により覆われている。このカバー15は、キャップ本体13や支持体14を隠してバルコニー1(図1参照)の美観を損ねることを防いでいるほか、例えばビニル袋のような異物がキャップ本体13を覆ってオーバーフロー管10の出口を閉塞してしまうような事態も防止している。
次に、降雨等によりバルコニー1内に水が入り込み、これを排水する場合を説明する。上述の如く、バルコニー1には常用の排水設備としてドレン溝6、及び第一の排水管であるドレン管7が備えられており(図1、図2参照)、バルコニー1に吹き込んだ雨水等は床面3の傾斜に沿ってドレン溝6に流れた後、ドレン管7から雨樋8に排出される。しかし、ドレン管7の内部に異物が溜まっていたり、ドレンキャップ9にゴミが張り付くなどしてドレン管7による排水が上手く行われない場合や、豪雨等でバルコニー1への雨水の流入量が極端に多い場合には、ドレン管7からの排水量を流入量が上回って床面3に雨水が滞留していくことがある。
滞留した雨水の水位が第二の排水管であるオーバーフロー管10の入口の高さに達すると、該オーバーフロー管10からの排水が開始される。この際、オーバーフロー管10に流入する雨水には木の葉等の異物が混じっている場合があるが、オーバーフロー管10の入口は入口側キャップ11が備えられているので、キャップ本体11aに開口した穴に対しある程度以上大きい異物はオーバーフロー管10に侵入しない。こうして、入口側キャップ11により異物の侵入を防ぎつつ、キャップ本体11aの穴から雨水が流入していく。
オーバーフロー管10の出口は、出口側キャップ12のキャップ本体13によって覆われているが、このキャップ本体13は支持体14に対し回転可能に支持されており、オーバーフロー管10から排出される水流が出口に到達すると、図9に示す如く、水流によりキャップ本体13がオーバーフロー管10の出口に対して持ち上がる開動作を行う(尚、図9ではカバー15の図示を省略している)。このとき、キャップ本体13の下部にはオーバーフロー管10の出口と対向する面をなすように抵抗板13cを備えており、この抵抗板13cにオーバーフロー管10内からの水流が衝突することで、キャップ本体13の開動作が行われやすくなっている。キャップ本体13の開きやすさは、抵抗板13cの面積や縦材13aに対する取り付け位置を種々変更することにより調節できる。
水流は、持ち上がったキャップ本体13と、支持体14の突出部14cとの間の隙間から排出される。また、水流の速さや水量によっては、キャップ本体13を構成する縦材13a同士の隙間からも排出されていく。
この際、オーバーフロー管10の入口には上述の如く入口側キャップ11が被せられて異物の侵入を防いでいるが(図1、図2参照)、キャップ本体11aの開口よりも小さな異物は雨水と共にオーバーフロー管10内に侵入してしまうことがある。しかし、図9の如くキャップ本体13が開動作し、支持体14の間が広がることにより、仮にオーバーフロー管10内に異物が侵入しても、該異物は水流と共に除去される。
オーバーフロー管10による排水の結果、管内に流れ込む水がなくなり、排水が終了すると、キャップ本体13は自重により閉じ、図3に示す状態に復帰する。
ところで、上述の如きキャップ本体13の開閉は、オーバーフロー管10を通過する排水の量が十分に多く、水流に勢いがあれば問題なく行われるが、排水の量が少なく流速も遅い場合には、キャップ本体13の開動作がなされにくいことが考えられる。この間に入口側キャップ11を通過した小さい異物がオーバーフロー管10の出口側に到達すれば、ここで支持体14やキャップ本体13の内側に張り付き、以降徐々に異物が堆積していくといった事態もまれに起こる可能性がある。しかし、こういった場合、まず異物が堆積するのはキャップ本体13や支持体14の下部からである。そして、キャップ本体13の抵抗板13cが備えられていない上部には、複数の縦材13a同士の間に隙間が形成されている。よって、仮にキャップ本体13裏側の下部に異物が堆積しても、キャップ本体13上部からは排水が可能である。水の通る隙間はキャップ本体13と支持体14の突出部14cとの間にも確保されており、ここからも雨水は排出される。
また、異物の堆積によりオーバーフロー管10の排水能力が低下すれば、オーバーフロー管10内には水が滞留しやすくなり、その圧力がキャップ本体13の抵抗板13cに加わることになる。この水圧がある程度以上に高まると、やはり図9に示す如くキャップ本体13の開動作が行われ、異物はこの際にキャップ本体13と支持体14の間から水流と共に除去される。
このように、本実施例の排水管用キャップ12は、水流に伴うキャップ本体13の開動作により、異物を堆積しないよう随時除去すると共に、異物が堆積した場合でも自動的に排出できるようになっている。この際、キャップ本体13は、上部に備えた水平方向の軸13bを中心に回転することで開閉するので、開動作が行われやすい構成となっている。すなわち、キャップ本体13の開動作の力点はオーバーフロー管10から流れる排水との接触位置であるが、この排水は、主としてキャップ本体13の下部を通過しようとする。したがって、開動作の支点となる軸13bを力点である水流からなるべく離間する上方に配置することで、梃子の原理により、小さな水流あるいは水圧でもキャップ本体13を動作しやすくすることができるのである。したがって、例えばキャップ本体の回転軸を垂直方向に沿って備え、該回転軸を中心にキャップ本体が観音開きの形で開閉するよう構成した場合等と比較して、異物が特に除去されやすい。
しかも、排水の終了後は、キャップ本体13は自重により自動的に閉じるので、開状態からの復帰に特別な機構は必要ない。
また、キャップ本体13は、複数の縦材13aを軸13bにより連結した柵状の形状としており、これらの縦材13a同士の隙間として開口が形成されている。このため、例えばキャップ本体13をメッシュ状の形状に構成した場合と比較して、隙間の幅に対する各開口の面積が大きい。よって、仮に開動作が上手く行われずに異物が堆積した場合でも、開口面積の大きい隙間から効率良く排水を行うことができる。一方、降雨等がなく、オーバーフロー管10からの排水が行われない間には、縦材13a同士の隙間の幅よりも大きい異物の侵入を防止することができる。
加えて、このような構造とした場合、キャップ本体13の回転軸をなす軸13bや、開動作を行いやすくするための抵抗板13cが、縦材13a同士を連結する構造材をも兼ねるので、柵状の形状を形成するための構造が簡単である。
また、本実施例の排水管用キャップ12では、円筒形の嵌合部14aをオーバーフロー管10に挿し込むことで固定する方式を採っているが、これも異物の堆積を防止するための構成である。すなわち、例えばドレンキャップ9や入口側キャップ11の如く(図1、図2参照)、排水管用キャップ12を板バネによりオーバーフロー管10に固定する構成とすることもできるが、その場合、板バネがオーバーフロー管10の内部を横切る配置となるため、前記板バネに異物が絡まり、詰まりの原因となりやすい。本実施例の如き円筒形の嵌合部14aであれば、そういった事態を招くことなく、異物を伴う排水を異物ごとスムーズに出口まで導くことが可能である。
図10(A)、(B)はキャップ本体13の形態の別の例を示している。ここに示したキャップ本体13では、抵抗板13cの配置が上記図6や図7等で説明したキャップ本体13と異なっている。すなわち、図6、図7に示したキャップ本体13では、抵抗板13cの取付位置が縦材13aの下部に設定されているが、図10に示すキャップ本体13では、縦材13aの上部を覆うように抵抗板13cが備えられている。
こうした配置は、異物の堆積による開動作の不具合を回避するための構成である。すなわち、図6、図7に示す如きキャップ本体13の場合、上述の如くオーバーフロー管10(図3参照)の下部を流れてくる排水に抵抗板13cが接触するので、水量が少なくても開動作が行われやすいという利点があるが、その反面、縦材13aの中程に抵抗板13cの上縁が位置しているため、排水の水位がここまで上昇した場合、この位置で縦材13a同士の隙間に異物が挟まってしまう場合がある。そして、キャップ本体13の開く向きにはカバー15の正面15cが位置しているので、キャップ本体13における異物の堆積がカバー15の正面15c側に及んだ場合には、キャップ本体13とカバー15の間に異物が挟まることで、キャップ本体13の開動作に支障を来す可能性が想定される。
その点、図10に示す如く、抵抗板13cを縦材13aの上部を覆うように配置すれば、抵抗板13cの上縁に異物が引っ掛かるような事態は生じないので、キャップ本体13が開動作を行う際に異物が障害となる虞は少ない。
また、このように抵抗板13cが縦材13aの上部に位置している場合、オーバーフロー管10(図3参照)を流れる排水の水位が抵抗板13cの下縁に達するまでは水流が抵抗板13cと衝突しないので、キャップ本体13の開動作が行われる頻度は図3に示す如きキャップ本体13と比較すれば低くなる。しかしながら、水位が低くキャップ本体13が閉じている間は、抵抗板13cに覆われていない縦材13aの下部の隙間から水が流れ出るので、排水に支障を生じる虞は少ない。また、キャップ本体13が閉じている間に縦材13aの下部に異物が堆積したとしても、水位が上昇して抵抗板13cの位置に達すれば、水流が抵抗板13cに衝突することにより開動作が行われて異物は除去される。
図11は、本発明の排水管用キャップの形態として考えられるその他の例を示している。例えば、上述の例では水平方向に設置したオーバーフロー管10に対して本発明の排水管用キャップ12を取り付ける場合を説明したが、実際にオーバーフロー管10が設置される向きは必ずしも水平とは限らない。排水管としての機能の関係上、オーバーフロー管10は、例えば出口側が入口側より下方に位置するように斜めに備えられることも考えられる。その場合、例えば図11に示す如く、支持体14の突出部14cを下側ほど長く突出させて端面を垂直面に沿って配し、且つ突当部14eも突出部14cの形状に合わせて大きく突出させれば、キャップ本体13を垂直方向に沿った配置とすることができる(尚、図11ではカバー15の図示を省略している。)。
以上のように、上記本実施例においては、オーバーフロー管10の出口に、該オーバーフロー管10の出口を覆うキャップ本体13を備え、該キャップ本体13は、オーバーフロー管10からの排水に伴ってオーバーフロー管10の出口に対し開動作を行うよう構成しているので、オーバーフロー管10から排水を行わない間はキャップ本体13によりオーバーフロー管10出口からの異物の侵入を防止する一方、オーバーフロー管10から排水を行う場合には、水流に伴うキャップ本体13の開動作によりオーバーフロー管10内側の異物を除去することができる。
また、本実施例においては、キャップ本体13に、オーバーフロー管10の出口と対向する面をなす抵抗板13cを備えているので、オーバーフロー管10からの水流が抵抗板13cに衝突することにより、キャップ本体13の開動作を行いやすくすることができる。
また、本実施例において、キャップ本体13は、支持体14の出口の上方に水平方向に沿って備えた軸13bを中心に回転可能に支持された構成とすることができ、このようにすれば、キャップ本体13の開動作の支点を構成する軸13bを力点である水流から離間させることで、開動作を一層行いやすくすることができる。しかも、キャップ本体13は自重により自動的に閉じるので、開状態からの復帰に特別な機構は必要ない。
また、本実施例において、キャップ本体13は、複数の縦材13aを隙間を開けて配列した柵状に形成されているので、開口面積の大きい隙間から効率良く排水を行うことができる一方、オーバーフロー管10からの排水が行われない間には、前記隙間の幅よりも大きい異物の侵入を防止することができる。
また、本実施例においては、オーバーフロー管10の出口に嵌合する筒状の嵌合部14aを形成した支持体14を備え、キャップ本体13は、支持体14に回転可能に支持されているので、異物を伴う排水を筒状の嵌合部14aを通してスムーズに出口まで導くことができる。
また、本実施例において、キャップ本体13は、オーバーフロー管10の出口に固定される支持体14に回転可能に支持され、支持体14には、キャップ本体13側に向かって突出する突出部14cを備えているので、キャップ本体13の閉状態において支持体14との間の隙間を細く保ち、大きい異物の侵入を防止することができる。
したがって、上記本実施例によれば、簡単な構造でオーバーフロー管への出口側からの異物の侵入を防ぐ一方、オーバーフロー管内からの異物により詰まりを生じる虞を低減し得る。
尚、本発明の排水管用キャップは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。