以下、本発明の一実施形態を、図1〜29を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を、オフィス等において使用される事務用回転椅子たる椅子Aに適用したものである。
椅子Aは、脚Bと、脚Bに旋回可能に支持された支持基部Cと、支持基部Cの上に配された座Dと、支持基部Cに対して後傾動作可能に支持された背凭れHとを備えたものである。
以下、この椅子Aの各構成について詳述する。
<<脚B>>
脚Bは、先端にキャスタb3を有した複数本の脚羽根b1と、脚羽根b1の基端部に立設された脚支柱b2とを備えている。脚支柱b2は、上下方向に伸縮可能に構成されており、支持基部Cを上下に位置変更可能に支持している。
<<支持基部C>>
支持基部Cは、脚Bの上端部に接続された金属製のブロック枠状の部材を主体に構成されている。支持基部Cには、背凭れHの回転軸である左右方向に延びた主軸j1が設けられている。
支持基部Cの上部には、左右に対をなして配された前リンクL1が回動可能に支持されている。前リンクL1は前傾した姿勢をなしている。前リンクL1の前端部は座Dに対して回動可能に接続しており、前リンクL1の後端部は支持基部Cに対して回動可能に支持されている。
<<座D>>
座Dは、合成樹脂により作られたシェル状をなす座受d1と、座受d1の上に前後位置を変更可能に設けられたクッション性のある座本体d2とを備えたものである。座Dの前部は、前リンクL1を介して支持基部Cに支持されている。座Dの後部は、背凭れHを構成してなり後リンクL2を一体的に設けた背フレーム1を介して支持基部Cに支持されている。
座Dは、いわゆる体重感知式のロッキング機構Fにより、背凭れHの後傾動作に同期して動くように構成されている。体重感知式のロッキング機構Fは、初期状態において、前リンクL1と後リンクL2とがそれぞれ前傾しており、背凭れHを後傾させた際に、前リンクL1及び後リンクL2の作用により座Dが全体的に後上方に移動し得るように構成されている。
<<背凭れH>>
背凭れHは、支持基部Cの主軸j1まわりに回動可能に支持されたものである。背凭れHは、背フレーム1と、背フレーム1の前側に配された背板2と、被カバー体であるとともに板状体である背板2の略全体を覆うカバーたる背板カバー4と、背板カバー4によって被覆されていない背板2における一部分である露出部26に外装された化粧部材Eと、背板2を背フレーム1に対して前後方向に位置変更可能に位置決めするための位置決め機構6とを具備してなる。
<背フレーム1>
背フレーム1は、支持基部Cに設けられた主軸j1を中心に後傾動作を行うものである。背フレーム1は、上下方向に延びた左右の側フレーム部1aと、左右の側フレーム部1aの上端部間に架設された上フレーム部1bと、左右の側フレーム部1aの下端部からそれぞれ前方に延びる左右の下フレーム部1cと、左右の下フレーム部1c同士を結合する下連結部1dとを備えている。左右の側フレーム部1a、上フレーム部1b、左右の下フレーム部1c、及び、下連結部1dは、合成樹脂により一体に成形されている。
左右の側フレーム部1aは、それぞれ下に向かって漸次幅広となる部材の形状をなしている。左右の側フレーム部1aは、それぞれが、側面視、且つ、正面視において、略くの字状をなしている。左右の側フレーム部1aは、上側フレーム部分11と下側フレーム部分13とを屈曲部分12を介して連続させたものである。上側フレーム部分11は側面視において後傾しており、下側フレーム部分13は側面視において前傾している。
上フレーム部1bは、側フレーム部1aの上端部同士を連結するものである。上フレーム部1bの前面には、背板2の上端部を取り付けるために、前方に開口する複数の凹陥部14が左右方向に間隔をあけて設けられている。上フレーム部1bの底面には、外側から各凹陥部14内に連通してなるボルトv1を挿通するための図示しないボルト挿通孔が設けられている。上フレーム部1bの後面はフラットに形成されている。
左右の下フレーム部1cは、左右の側フレーム部1aに連設されており前後方向に延びている。左右の下フレーム部1cは、その前部が支持基部Cに設けられた主軸j1に対応する位置に配されている。左右の下フレーム部1cは、前端部が座Dの下方に配置された支持基部Cの両側にまで延出している。左右の下フレーム部1cは、その前部に、前側及び内側に開口し、主軸j1の両端部が挿入される凹陥部15を備えている。凹陥部15は、隠蔽部材17により隠蔽され得るようになっている。左右の下フレーム部1cは、側面視において後方に漸次上昇するように湾曲した形状をなしている。左右の下フレーム部1cは、側面視において後傾した態様をなしている。左右の下フレーム部1cは、その後部における上面側に、位置決め機構6を構成する軸孔161を有した軸受突起16を備えている。
背フレーム1における下連結部1dは、左右の下フレーム部1c同士を剛結するためのプレート状のものである。
側フレーム部1a、及び、下フレーム部1cは、側面視においてS字状をなすように一体に連続している。側フレーム部1aにおける下側フレーム部分13と下フレーム部1cとは、側面視において略くの字状をなしており、且つ、側フレーム部1aと下フレーム部1cとは屈曲部18を介して一体に連続している。
<背板2>
背板2は、合成樹脂により一体に形成されたものであり、周縁部に形成された背枠Kと、背枠Kの内側に配された背板本体Mとを備えている。
まずは、背枠Kについて説明する。
背枠Kは、上下方向に延びる左右の側フレーム部2aと、側フレーム部2aの上端部間を繋ぐ上フレーム部2bと、左右の側フレーム部2aの下端部間を繋ぐ下フレーム部2cとを備えたものである。すなわち、背枠Kは、左右の側フレーム部2aと、左右の側フレーム部2aの上端間に設けられた上フレーム部2bと、左右の側フレーム部2aの下端間に設けられた下フレーム部2cとを主体に構成された枠状のものである。
左右の側フレーム部2aは、側面視において後傾した上側フレーム部分21と側面視において前傾した下側フレーム部分23とを前側に最も突出した突出部分22を介して連続させてなるものである。
左右の側フレーム部2aは、外側縁の後面側に背板カバー4における左右の縫い代部分44を配設し得る凹陥状の縫い代部分配設部nsを備えている。縫い代部分44は、袋状の部位4hを形成するために、一方のカバー構成要素41と他方のカバー構成要素42とを縫着したことによって縫付け接合部分近傍に不可避的に形成された生地の余剰突出部分である。縫い代部分配設部nsは、縫い代部分44と係わり合うことによって、背板カバー4を背板2に安定的に位置決めさせている。すなわち、背板カバー4の内面側に形成された縫い代部分44を、背板2の縫い代部分配設部nsに位置決めすることによって、背板2に対する背板カバー4のずれ動きを抑制している。縫い代部分配設部nsは、左右の側フレーム部2aを構成する上側フレーム部分21における外側端縁の背面側及び突出部分22における外側端縁の背面側に上下方向に連続して設けられている。
なお、図29は、主として、背板カバー4と背板2との位置決めを説明するための概略背面図である。説明の便宜上、背板2は背枠Kのみを示しており、縫い代部分44や押し込み部材p2についてはわかりやすさのために色塗り表示している。
下側フレーム部分23は、下方に向かって漸次内方に偏位するように形成されている。左右の下側フレーム部分23は、下方に向かって漸次離間距離が短くなるいわゆる下窄み態様をなすように配されている。
下側フレーム部分23には、袋状をなす背板カバー4の開口側の自由端を保持し得る取付溝、すなわち第一、第二の取付溝mz1、mz2が設けられている。下側フレーム部分23は、背板カバー4における一方のカバー構成要素41の取付端縁41eを取り付け得る第一の取付溝mz1、及び、背板カバー4における他方のカバー構成要素42の取付端縁42eを取り付け得る第二の取付溝mz2を備えている。第一、第二の取付溝mz1、mz2は、有底の溝状の部位を主体に構成されており、下側フレーム部分23の端縁に沿って上下方向に延びており、それぞれ外側方に開放されている。第一、第二の取付溝mz1、mz2は、前後に隣接して配されている。すなわち、第一の取付溝mz1は第二の取付溝mz2の前に略平行に隣接して配されている。
下側フレーム部分23における第一、第二の取付溝mz1、mz2の上の位置すなわち側面視における各取付溝mz1、mz2の上端部の上には、突出部分22に形成された縫い代部分配設部nsと、第一、第二の取付溝mz1、mz2とを空間的に連通させ得る連通路rtが設けられている。連通路rtは、外側すなわち左右に開放された溝状をなしている。
下側フレーム部分23における第一、第二の取付溝mz1、mz2の下には、位置決め機構6を構成する軸孔241を有した突出部たる軸受突起24(L)、24(R)が前側に向かって左右に対をなして突設されている。より詳しく言えば、背板2は、他の部材である位置決め機構6を構成する左右のリンク6a、6bと回動可能に連結するための左右に対をなす左の突出部分たる左の軸受突起24(L)と、右の突出部分たる右の軸受突起24(R)とを備えている。
なお、背板2における左右の軸受突起24(L)、24(R)及びその近傍部分は、背板カバー4によって被覆されていない部位である露出部26となっている。露出部26に外装される化粧部材Eについては後で詳述する。
上フレーム部2bは、左右の側フレーム部2aの上端間に一体に架設されたもので、平面視において後方に突出するように湾曲した形状をなしている。上フレーム部2bは、断面視において前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも短く設定されている。上フレーム部2bの前には湾曲接続部wが配されている。
背板2の上フレーム部2bは、背フレーム1の上端部に接続するようになっている。すなわち、上フレーム部2bは、背面に背フレーム1の凹陥部14に嵌合し得る嵌合突起25を備えている。嵌合突起25は、後方に向かって突設されている。嵌合突起25には、ボルトv1が螺着されるねじ孔h1が設けられている。上フレーム部2bの嵌合突起25を、背フレーム1の凹陥部14に内嵌めした上で、ねじ孔h1に対して下側から挿入したボルトv1を螺着することにより、背板2の上端部である上フレーム部2bが、背フレーム1の上端部である上フレーム部1bに固定されるようになっている。
下フレーム部2cは、左右の側フレーム部2aの下端部間に架設されたものである。下フレーム部2cは、背板カバー4における一方のカバー構成要素41の取付端縁41eを取り付け得る第一の取付溝mz1、及び、背板カバー4における他方のカバー構成要素42の取付端縁42eを取り付け得る第二の取付溝mz2を備えている。第一、第二の取付溝mz1、mz2は、下フレーム部2cの端縁に沿って左右方向に延びており、それぞれ下方に開放されている。第一、第二の取付溝mz1、mz2は、前後に隣接して配されている。すなわち、第一の取付溝mz1は第二の取付溝mz2の前に略平行に隣接して配されている。
この実施形態では、背板2の下部に設けられた第一、第二の取付溝mz1、mz2が、それぞれ、左の軸受突起24(L)及び右の軸受突起24(R)の介在によって、中間、左側、及び、右側の三つに分離している構成をなしている。すなわち、背板2の第一、第二の取付溝mz1、mz2は、下フレーム部2cにおける左の軸受突起24(L)と右の軸受突起24(R)との間に設けられた中間取付溝mz1(C)、mz2(C)と、左の軸受突起24(L)よりも左に位置する側フレーム部2aに設けられた左側取付溝mz1(L)、mz2(L)と、右の軸受突起24(R)よりも右に位置する側フレーム部2aに設けられた右側取付溝mz1(R)、mz2(R)とを備えている。
次に、背板本体Mについて説明する。
背板本体Mは、背枠Kの内側に配されたものである。背板本体Mは、着座者の腰部分に略対応した上下方向中間位置に配された腰部領域m1と、腰部領域m1よりも上に配された上領域m2と、腰部領域m1よりも下に配された下領域m3とを備えている。そして、腰部領域m1の剛性が、上領域m2、及び、下領域m3の剛性よりも高く設定されている。換言すれば、上領域m2、及び、下領域m3は、腰部領域m1よりも弾性変形し易く設定されている。
腰部領域m1は、左右の側フレーム部2a間に設けられた左右方向に延びる複数の帯状部材m11を主体に構成されている。より具体的に言えば、複数の帯状部材m11は、左右の側フレーム部2aにおける上側フレーム部分21の下端部間を繋ぐように配設されている。腰部領域m1の複数の帯状部材m11は、スリットm13を介して一定間隔で上下方向に一定間隔をあけて並んで配設されている。この実施形態では、腰部領域m1は、正面視において左右方向に直線状に延び、互いに平行をなすように上下方向に並んで配された五本の帯状部材m11により構成されている。帯状部材m11は、断面視において略長方形状をなしている。腰部領域m1における隣り合う帯状部材m11同士は、上下接続片m12を介して部分的に連結されている。帯状部材m11は、左右の側フレーム部2a間に亘って略同じ幅寸法に設定されている。なお、隣り合う帯状部材m11間に形成されたスリットm13の幅寸法と腰部領域m1の帯状部材m11の幅寸法は略同じに設定されている。
上領域m2は、上フレーム部2bと腰部領域m1の上端部すなわち最も上側に配された腰部領域m1を構成する帯状部材m11との間に設けられた上下方向に延びる複数の帯状部材m21を主体に構成されている。より具体的に言えば、上領域m2は、正面視において上下方向に延びる複数の帯状部材m21と、複数の帯状部材m21と上フレーム部2bとの間に位置してなり各帯状部材m21の上にそれぞれ連設されてなる複数の接続部たる湾曲接続部wとを備えている。
上領域m2を構成する複数の帯状部材m21は、上下方向に延びてなるものであり、スリットm23を介して一定間隔で左右方向に並んで配設されている。帯状部材m21は、湾曲接続部wに接続する上端部から腰部領域m1の帯状部材m11に接続する下端部までの間が略同じ幅寸法に設定されている。複数の帯状部材m21は、断面視において略長方形状をなしている。
上領域m2は、その上下方向中間位置に配された中部領域構成部r1と、中部領域構成部r1の上に配された上部領域構成部r2と、中部領域構成部r1の下に配された下部領域構成部r3とを備えている。そして、中部領域構成部r1の剛性が、上部領域構成部r2、及び、下部領域構成部r3の剛性よりも低く設定されている。つまり、上領域m2における隣り合う帯状部材m21同士は、左右接続片m22を介して部分的に連結されている。そして、中部領域構成部r1における左右接続片m22による横方向への連結度合いが、上部領域構成部r2、及び、下部領域構成部r3における左右接続片m22による横方向への連結度合いよりも低く設定されている。
具体的には、中部領域構成部r1では、左右方向に延びる仮想直線s1上において、隣り合う二本の帯状部材m21同士のみを左右接続片m22を介して接続している。上部領域構成部r2では、左右方向に延びる仮想直線s2上において、隣り合う三本の帯状部材m21同士を左右接続片m22を介して連続的に接続している部分r21を備えている。下部領域構成部r3では、左右方向に延びる仮想直線s3上において、隣り合う三本の帯状部材m21同士を左右接続片m22を介して連続的に接続している部分r31を備えている。つまり、この実施形態では、左右接続片m22による仮想直線s1、s2、s3上における帯状部材m21の連結本数によって横方向への連結度合いの高低を設定したものとなっている。
上領域m2に設けられた湾曲接続部wは、正面視において上下方向に延びる複数の帯状部材m21と上フレーム部2bとの間に介設された薄板の帯状をなすものである。この実施形態では、湾曲接続部wは、前方、より具体的には、前上方に向かって凸をなすように湾曲した形状をなしている。湾曲接続部wは、各帯状部材m21に対応して複数設けられている。湾曲接続部wの厚み寸法は、帯状部材m21の厚み寸法と同じに設定されている。湾曲接続部wは薄板状をなしており、その後端縁は、上フレーム部2bにおける上端部にのみ接続している。上フレーム部2bよりも前に位置している湾曲接続部wの上端は、上フレーム部2bの上端よりも高い位置に配されている。湾曲接続部wは、帯状部材m21に接続する前端部から上フレーム部2bに接続する後端部までの間が略同じ幅寸法に設定されている。複数の湾曲接続部wは、断面視において略長方形状をなしている。湾曲接続部wは、正面視において、上フレーム部2bの下端縁n1よりも上に位置している。
背板2は、隣り合う湾曲接続部w間に形成されたスリットwsの幅寸法w1が、隣り合う帯状部材m21間に形成されたスリットm23の幅寸法w2よりも短く設定されている。より具体的に言えば、隣り合う湾曲接続部w間に形成されたスリットwsの幅寸法w1は、隣り合う帯状部材m21間に形成されたスリットm23の幅寸法w2の約三分の一に設定されている。上領域m2の帯状部材m21の幅寸法w4は、湾曲接続部wの幅寸法w3よりも短く設定されている。なお、隣り合う帯状部材m21間に形成されたスリットm23の幅寸法w2と上領域m2の帯状部材m21の幅寸法w4は略同じに設定されている。
湾曲接続部wは、その前表面が、平らな湾曲面をなすように形成されている。つまり、湾曲接続部wは、その前面の外表面が、滑らかに形成されており、凹凸形状が存在しないようになっている。湾曲接続部wの外面と帯状部材m21の外面とは面一に設定されている。このようにすることで、湾曲接続部wの上を覆うとともに当該湾曲接続部wに裏当て支持される背板カバー4に、湾曲接続部wの外面形状に起因する凹凸形状が出現しにくいようになっている。
下領域m3は、下フレーム部2cと腰部領域m1の下端部すなわち最も下側に配された腰部領域m1を構成する帯状部材m11との間に設けられた上下方向に延びる複数の帯状部材m31を主体に構成されている。複数の帯状部材m31は、スリットm33を介して一定間隔をあけて左右方向に並んで配設されている。帯状部材m31は、腰部領域m1の帯状部材m11に接続する上端部から下フレーム部2cに接続する下端部までの間が略同じ幅寸法に設定されている。複数の帯状部材m31は、断面視において略長方形状をなしている。下領域m3における左右方向中間部に配された複数の帯状部材m31は、当該下領域m3における左右両側部に配された複数の帯状部材m31よりも長い寸法に設定されている。なお、隣り合う帯状部材m31間に形成されたスリットm33の幅寸法と下領域m3の帯状部材m31の幅寸法は略同じに設定されている。
背板2は、上述した背板カバー4によって覆われていない露出部26を備えている。この実施形態では、露出部26が、別体をなす他の部材である左右のリンク6a、6bに回転可能に接続するための被カバー体である背板2の接続端部たる軸受突起24及びその周辺の部位によって構成されている。換言すれば、露出部26は、背板2に突設された突出部である軸受突起24を含んでなるものである。
なお、この実施形態では、上領域m2の帯状部材m21、下領域m3の帯状部材m31、及び、腰部領域m1の上下接続片m12の各厚み寸法は略同じに設定されている。また、腰部領域m1の帯状部材m11、及び、上領域m2の左右接続片m22の各厚み寸法は略同じに設定されている。
そして、腰部領域m1の帯状部材m11、及び、上領域m2の左右接続片m22の各厚み寸法は、上領域m2の帯状部材m21、下領域m3の帯状部材m31、及び、腰部領域m1の上下接続片m12の各厚み寸法よりも厚く設定されている。
このように構成された背板2における背板本体Mは、腰部領域m1の帯状部材m11が比較的肉厚を有したものとなるため、着座者の腰部を強く支持し得るものとなる。さらに、背板2における背板本体Mは、上領域m2の左右接続片m22が比較的肉厚を有したものとなるため、連結箇所に集中する応力に好適に耐え得るものとなっている。
以上に述べた背板2には、背板カバーEによって被覆されていない露出部26を被覆する化粧部材Eが設けられている。
<化粧部材E>
化粧部材Eは、背板2とは別体をなしている。化粧部材Eは、合成樹脂により一体に形成されている。化粧部材Eは、露出部26の外観特性とは異なる外観特性を付与し得るものである。なお、説明の便宜上、図中において、化粧部材Eは色つけ表示してある。つまり、椅子A全体における一部分に、化粧部材Eを用いていわゆるスポット的な外観特性を付与することによって、使用者に好適な視覚的印象を与え得るものとなっている。なお、この実施形態における化粧部材Eの外観特性は色彩である。すなわち、化粧部材Eは、背板2とは異なる色彩を備えたものである。化粧部材Eは、背板2の色彩が表出し得る露出部26を覆うことにより背板2とは異なる色彩を使用者に見せることができるものとなっている。一例としては、背板2が白色をなした合成樹脂製のものである場合には、化粧部材Eは、白色以外の色彩(例えば黒色)をなしたものに設定することが可能である。化粧部材Eの色彩は、模様を含む適宜の色彩を設けることができるのはもちろんのことである。なお、他の外観特性としては、表面形状や材質(例えば金属など)により発揮され得る質感を挙げることができる。
化粧部材Eは、左右の突出部分である軸受突起24に外嵌し得る凹陥形状をなす化粧部材本体e1と、化粧部材本体e1の周縁部に設けられた鍔部e2とを備えている。化粧部材本体e1は、軸受突起24の軸孔241に対応させた左右方向に連通した軸挿通孔e11を有している。
鍔部e2は、背板2の軸受突起24の周縁領域に形成された凹み部2hに嵌合し得るようになっている。鍔部e2は、背板2に設けられた位置決め凹部2iに内嵌する位置決め凸部e21と、第一、第二の取付溝mz1(L)、mz1(R)、mz2(L)、mz2(R)に対応する位置に設けられた切欠部e22とを備えてなる。なお、背板カバー4の正面視における左右下角部分に設けられた凹陥状の端縁、すなわち、一方のカバー構成要素41の露出部形成端縁411は、鍔部e2の外縁よりも内側すなわち化粧部材本体e1側に位置し得るように設定されている。
続いて、背板カバー4について説明する。
<背面カバー4>
背板カバー4は、布等の生地を主体に構成されてなるものである。背板カバー4は、背板2における一面側たる前面側を被覆し得る一方のカバー構成要素41、及び、布等の生地を主体に構成されてなり背板2における他面側たる後面側を被覆し得る他方のカバー構成要素42を有したものである。背板2の前側に位置する一方のカバー構成要素41の裏面には、シート状をなす発泡体により構成されたインナークッション43が配設されている。この実施形態における背板カバー4は、ファスナーや連結ボタン等の連結具を用いて離間したカバー構成要素同士を連結する構成を採用していない。つまり、背板カバー4は、連結具を用いることなく、背板2の略全体を覆うことができるように構成されている。
背板カバー4は、一方のカバー構成要素41における側部及び上部の周縁部と他方のカバー構成要素に42における側部及び上部の周縁部とを部分的に縫着して形成された下側に向かって開口し得る袋状の部位4hを備えている。袋状の部位4hの一部である背板カバー4における上部の背面側部分には、背板2の嵌合突起25が背板カバー4の外方に突出し得る連通孔45aを有したプレート部材45が取り付けられている。
背板カバー4における一方のカバー構成要素41の取付端縁41e(C)、41e(L)、41e(R)は、合成樹脂により形成された帯状をなす押し込み部材p1を備えている。押し込み部材p1は、一方のカバー構成要素41を構成する生地に縫い付けられている。
背板カバー4における他方のカバー構成要素42の取付端縁42e(C)、42e(L)、42(R)は、合成樹脂により形成された帯状をなす押し込み部材p2を備えている。なお、他方のカバー構成要素42の取付端縁42e(C)、42e(L)、42(R)の押し込み部材p2は、断面視L字状の形状をなしている。他方のカバー構成要素42の押し込み部材p2は、第二の取付溝mz2の奥に差し込まれる被挿入内片部p21と、被挿入内片部p21の外縁部から第一の取付溝mz1の開口側に向かって延出する延出外片部p22とを備えている。押し込み部材p2の被挿入内片部p21は、他方のカバー構成要素42を構成する生地に縫い付けられている。
他方のカバー構成要素42を構成する生地の一部は、押し込み部材p2の延出外片部p22の先端縁に押されて第一の取付溝mz1に近接する位置に位置決めされることになる。つまり、断面視L字状をなす押し込み部材p2を用いることによって、他方のカバー構成要素42の取付端縁42eを好適に第二の取付溝mz2に取り付け得るとともに、一方のカバー構成要素41における取付端縁41e(C)、41e(L)、41(R)、及び、他方のカバー構成要素42の取付端縁42e(C)、42e(L)、42(R)との間に外観を損ねるような隙間が形成され難いものとなるため、好適な外観を形成することができるものとなる。
<位置決め機構6>
位置決め機構6は、背板2を、前位置(f)と後位置(r)の何れかに選択して位置決めし得るものである。すなわち、背板2は、位置決め機構6によって、当該背板2の上端部を回動中心として前位置(f)と後位置(r)との間で位置変更可能に構成されている。
この実施形態では、背板2が、前位置(f)に位置する場合と後位置(r)に位置する場合とによって、着座者の腰部に対して主体的に係わり得る部位を異ならせている。つまり、背板2が前位置(f)にある場合には、着座者の腰部に対して背板本体Mにおける腰部領域m1の下部が主体的に係わり得るものとなっており、背板2が後位置(r)にある場合には、着座者の腰部に対して背板本体Mにおける腰部領域m1の下部よりも上側の部位が主体的に係わり得るものとなっている。
位置決め機構6は、背板2の弾性変形を利用して、前位置(f)又は後位置(r)の何れかの位置に安定的に位置し得るように構成されている。
位置決め機構6は、背フレーム1に対して前後方向に回動し得るように枢支された左右に対をなして配された左右のリンク6a、6bを備えている。
位置決め機構6は、背フレーム1の下部における側面視後傾部分と背板2の下端部との間に設けられている。
位置決め機構6は、背フレーム1の軸受突起16に支持された左右のリンク6a、6bと、左右のリンク6a、6bの回動端部を背板2の軸受突起24に回動可能に連結する先端軸sjと、一方のリンクである左のリンク6aを直接的に回動操作するための操作レバー6cとを備えている。左右のリンク6a、6bは、前方に傾斜した前位置(a)と、後方に傾斜した後位置(c)との間でのみ回動し得るように設定されている。
左のリンク6a(正面視における左側)は、操作レバー6cに加えられる操作力により前後方向に回動するもので、内側のリンクメンバ61と外側のリンクメンバ62とを具備してなる。
内側のリンクメンバ61は、その下部が背フレーム1における軸受突起16の内側面に添接するとともにその上部が背板2における軸受突起24の内側面に添接するものである。内側のリンクメンバ61は、背フレーム1における軸受突起16の軸孔161に貫挿される基端軸kjと、背板2における軸受突起24の軸孔241に貫挿される先端軸sjとを一体に備えている。内側のリンクメンバ61の中間位置には、ボルトv2が挿通し得るボルト挿通孔h2が形成されている。
外側のリンクメンバ62は、その下部が背フレーム1における軸受突起16の外側面に添接するとともにその上部が背板2における軸受突起24の外側面に添接するものであり、基端軸kjの貫通端が嵌合する図示しない基端側嵌合穴と、先端軸sjの貫通端が嵌合する先端側嵌合穴622とを備えている。外側のリンクメンバ62の中間位置には、外側のリンクメンバ62と内側のリンクメンバ61との間隔を一定に保つためのスペーサ突起63が設けられている。スペーサ突起63には、ボルト挿通孔h2を通して挿入されたボルトv2が螺合する部位が設けられている。すなわち、ボルトv2を介して内側のリンクメンバ61と外側のリンクメンバ62とが結合されるようになっている。
スペーサ突起63は、その前端縁部又は後端縁部が背フレーム1における軸受突起16の前面又は後面に当接し得るようになっており、左のリンク6aが前位置(a)から後位置(c)までの間でのみ回動し得るように回動範囲を規制する機能を備えている。
外側のリンクメンバ62における基端部の外側面には、軸心を基端側嵌合穴621の軸心に一致させて角柱状のボス部64が突設されている。ボス部64には、操作レバー6cの基端部が嵌着され、ボルトv7によりボス部h7に対して抜け止めされている。なお、操作レバー6cの基端部周縁と外側のリンクメンバ62との間には、リング部材6dが介設されている。外側のリンクメンバ62に接続された操作レバー6cは、外側のリンクメンバ62に対して一体的に回動し得るようになっている。
右のリンク6b(正面視における右側)は、前述した左のリンク6aに準じた構成をなすものであり、対応する構成については同一の符号を付した上で説明を省略する。なお、右のリンク6bにおいて、左のリンク6aと異なっている点は、外側のリンクメンバ62に操作レバーが設けられていない点である。なお、右のリンク6bに、左のリンク6aと同様に操作レバーを設けるように構成してよいのはもちろんである。
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Aは、カバーたる背板カバー4によって略全体を覆われた被カバー体である背板2を備えたものである。そして、背板2が、背板カバー4によって覆われていない露出部26を備えたものであり、背板2は別体をなし、露出部26を被覆する化粧部材Eを備えている。このため、背板カバー4によって覆われていない部位の外観特性を選択的に変更しやすく、外観特性を変更した場合でも背板2の剛性等が変化しにくい椅子Aを提供することができるものとなる。
このようなものであれば、背板2全体は一色にしたままで、露出部26を覆う化粧部材Eのみの色彩を変更することによって安価にカラーバリエーションを増やすことができる。さらに、化粧部材Eのみの変更であれば、背板2の基本強度や特性は同じ状態で維持することができるものとなる。
露出部26を被覆する化粧部材Eによって、背板カバー4によって覆われていない部分に色彩や質感等の外観特性を選択的に付与し得るものとなる。このため、化粧部材Eによって使用者に合わせた好適な外観を付与することができるものとなる。しかも、背板2は、同一の素材によって一体的に形成することも可能である。このため、背板2における背板カバー4によって覆われていない部位の色彩を選択的に変更し得るように構成しても、当該背板2の剛性等の均質化を図り易いものとなっている。
露出部26が、別体をなす他の部位である左右のリンク6a、6bに接続するための背板2における接続端部たる軸受突起24、及び、その周辺部である。換言すれば、露出部26が、背板2に突設された突出部である軸受突起24を含んでなるものである。このため、背板カバー4によって被覆され難い部位である露出部26が、化粧部材Eによって被覆され得るものとなっている。
露出部26が、左右のリンク6a、6bに回転可能に接続される軸孔241を備えた軸受突起24を含んでいる。このため、背板カバー4によって被覆され難い部位である軸孔241を備えた軸受突起24及びその周辺部を好適に被覆し得るものとなっている。
化粧部材Eが、突出部たる軸受突起24に外嵌し得る化粧部材本体e1を備えたものである。このため、背板カバー4によって被覆され難い部位である軸受突起24は、化粧部材本体e1に外嵌されるものとなり、当該軸受突起24が好適に被覆され得るものとなっている。
化粧部材Eが、化粧部材本体e1と、化粧部材本体e1の周縁部に設けられた鍔部e2とを備えている。このため、背板2の露出部26が視認されにくいように鍔部e2を有した化粧部材Eが好適に被覆し得るものとなっている。
鍔部e2の外縁よりも内側の位置に背板カバー4の端縁である露出部形成端縁411が位置し得るように設定されている。このため、化粧部材Eが被覆していない背板2の部位は使用者に視認され難いものとなるので、外部に好適な外観を与えることができるものとなる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
化粧部材の形状や構造は、装着される部分の具体的な形状に相応させて種々のものを適用することができるのはもちろんのことである。
背凭れには、着座者の頭部を後側から支持するためのヘッドレストを取り付けてよいのはもちろんのことである。
座や背凭れには、着座者の肘や腕を下側から支持するための肘掛けを取り付けるようにしてもよいのはもちろんのことである。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。