実施例1に係るパネル装置につき、図1から図11を参照して説明する。以下、図3の紙面左側をパネル装置の正面側(前方側)とし、図3の紙面右側をパネル装置の背面側(後方側)として説明する。
パネル装置1は、例えば、美術館や博物館等の展示スペースにおいて絵画、版画、陶器皿、メダル等の展示物99(物品)を展示するために、床または台座から天井に亘って複数のパネルを取付けてなるものであり、パネルとして透明のガラスパネル4(パネル体)が使用されることにより、内部に収容される展示物99を外部から鑑賞できるようになっている。
図1及び図3に示されるように、実施例1におけるパネル装置1は、天井Cに固定され左右に延びる上部パネル支持体2と、床面Fに固定され左右に延びる下部パネル支持体3と、の間に一対のガラスパネル4,4が前後に離間させて取付けられた二重ガラスパネル構造になっている。また、後段にて詳述するが、パネル装置1は、吊支パネル11(板状部材)に取付けられた展示物99を収容するための展示部9(図1参照)を側壁Wから展示スペース側に突出させた状態で設置される。
次いで、ガラスパネル4,4,…の構造について詳しく説明する。尚、上部パネル支持体2と下部パネル支持体3との間に前後に離間させて取付けられるガラスパネル4,4は、同一構成であるため、パネル装置1の前方側に取付けられるガラスパネル4について説明し、後方側に取付けられるガラスパネル4についての説明を省略する。
図3に示されるように、各ガラスパネル4は、2枚の透明な板ガラス4a,4aを重合して強化した合わせガラスであるパネル本体4bと、該パネル本体4bの上端面4c及び下端面4eに両面接着テープあるいはホットメルト接着剤5によりそれぞれ固定された上部縁材6及び下部縁材7と、から構成されている。尚、現場での取付けや施工時間を短縮するために、予め工場等においてパネル本体4bに上部縁材6及び下部縁材7を取付け、ガラスパネル4をユニット化しておくとよい。尚、板ガラス4a,4aとしては、展示部9内に収容される展示物99の視認性を高めるために高透過性のガラスが使用されている。
次いで、上部縁材6について詳しく説明する。尚、前方側に取付けられるガラスパネル4の上部縁材6について説明する。図4に示されるように、ガラスパネル4を構成する上部縁材6は、側面視クランク形状をなし、パネル本体4bの上端面4cに両面接着テープあるいはホットメルト接着剤5により固定される水平板60と、水平板60の後端から上方に向けて延びる挿入板61と、水平板60の前端からパネル本体4bに沿って下方に向けて所定距離延びる垂下板62と、を有している。尚、上部縁材6は、アルミ合金製の押出成形品である。
垂下板62は、パネル本体4bの前面側に沿って当接することにより、上部パネル支持体2と下部パネル支持体3との間にガラスパネル4が取付けられた状態において、パネル本体4bに対して後方側から水平方向に応力が働いた場合にパネル本体4bが抜け出ないように支持できるようになっている。また、垂下板62がパネル本体4bの前面側に沿って当接するため、パネル本体4bの上端面4cに対して水平板60を固定する際に、前後方向の位置合わせを行いやすくなっている。
また、水平板60の長手方向及び前後方向の寸法をパネル本体4bの上端面4cの長手方向及び前後方向の寸法とそれぞれ略同寸にすることにより、水平板60とパネル本体4bの上端面4cの間の接着面積が大きくなり、両面接着テープあるいはホットメルト接着剤5による接着力が高められている。
挿入板61の前後方向の寸法は、後述する上部挿入溝27の前後方向の寸法よりも小さくなっており、ガラスパネル4を斜めに傾斜させたまま挿入板61を上部挿入溝27内に挿入できるとともに、挿入板61が上部挿入溝27内に挿入された状態のまま、ガラスパネル4を回動させて垂直に立ち上げることができる。尚、挿入板61のたわみを利用してガラスパネル4を回動させるようにしてもよく、この場合には、上部挿入溝27と挿入板61との前後方向の隙間は必須ではない。
尚、挿入板61を切欠く等して長手方向の寸法をパネル本体4bの上端面4cの長手方向の寸法よりも短寸に形成することにより、挿入板61の側面を下方から視認でき、挿入板61を後述する上部支持部材22の上部挿入溝27に挿入させるための位置合わせと挿入作業を容易に行えるようにしてもよい。また、挿入板61は、水平板60に対して複数形成されてもよい。
次いで、下部縁材7について詳しく説明する。尚、前方側に取付けられるガラスパネル4の下部縁材7について説明する。図5に示されるように、ガラスパネル4を構成する下部縁材7は、パネル本体4bの下端面4eに両面接着テープあるいはホットメルト接着剤5により固定される水平板70と、水平板70の前端からパネル本体4bの前面に沿って上方に向けて延びる支持片71と、水平板70の前端から下方に向けて突設される当接片72と、水平板70の後端から下方に向けて突設される係合片73と、から構成されている。尚、下部縁材7は、アルミ合金製の押出成形品である。
支持片71は、水平板70の前端からパネル本体4bの前面に沿って上方に向けて所定距離延び、上部パネル支持体2と下部パネル支持体3との間にガラスパネル4が取付けられた状態において、パネル本体4bに対して後方側から水平方向に応力が働いた場合にパネル本体4bが抜け出ないように支持できるようになっている。
当接片72は、下部縁材7の水平板70の前端から下方に向けて突設され、下方に向けて後述する巾木30側(後方側)に漸次拡張した形状をなし、当接片72の下端に形成される当接面72aが後述する下部支持部材32の当接面38dに上方から当接することにより、ガラスパネル4から下方向にかかる荷重と、ガラスパネル4が前方側に倒れる方向にかかる荷重を支持できるようになっており、ガラスパネル4の取付け状態における安定性を高めている。
係合片73は、下部縁材7の水平板70の後端から下方に向けて突設され、下方に向けて巾木30側に漸次減縮した形状をなし、後述する下部支持部材32の被係合部38cに係合可能になっている。言い換えれば、係合片73の前方側には、下方に向けて前方側から後方側へ傾斜する傾斜面73bが形成されている。また、係合片73の後方側には、パネル本体4bの後面4dと略面一となる垂直面73aが形成されている。
また、下部縁材7の水平板70の長手方向及び前後方向の寸法をパネル本体4bの下端面4eの長手方向及び前後方向の寸法とそれぞれ略同寸にすることにより、下部縁材7の水平板70とパネル本体4bの下端面4eの間の接着面積が大きくなり、両面接着テープあるいはホットメルト接着剤5による接着力を高められるようになっている。
次いで、吊支パネル11について詳しく説明する。図2及び図3に示されるように、吊支パネル11は、前述したパネル本体4bの上下方向及び左右方向の寸法と略同寸の1枚の強化ガラスである吊支パネル本体11aと、吊支パネル本体11aの上端部において左右方向に離間させて取付けられる吊支装置15,15(図6参照)と、から主に構成されている。尚、吊支パネル本体11aとしては、展示部9内に配置される吊支パネル11自体を視認し難くして目立たなくするために高透過性のガラスが使用されている。また、吊支装置15,15は、同一構成であるため、一方の吊支装置15について説明し、他方の吊支装置15についての説明を省略する。
図2に示されるように、吊支パネル本体11aには、後述する展示部9の開口部9a(開口端部)側(図2紙面左方側)の前後両面に側面視略コ字状をなす把手12,12がそれぞれ取付けられている。これによれば、把手12,12を把持することにより、吊支パネル本体11aに直接触れることなく、手動で吊支パネル11を後述するレール部26に沿って左右方向に移動させることができる。
また、図1に示されるように、吊支パネル本体11aの後述する展示部9の当接部8側(図1紙面右方側)の側端部には、吊支パネル11が展示部9内に配置された際に、当接部8に設けられる後述する当接部材83(図7参照)に当接する保護材14が上下方向に亘って取付けられている。尚、保護材14は、透光性と耐衝撃性が高いポリカーボネート製であり、吊支パネル本体11aに取付けられた状態において目立ち難く、吊支パネル11が展示部9の当接部8に当接した際の衝撃から吊支パネル本体11aを保護できるようになっている。
尚、吊支パネル本体11aの上端部は、所定位置を切欠かれることにより凹凸形状(図6参照)をなしており、後述する吊支装置15の支持ボルト18や挟持板19,19を締結するためのボルト19b,19bに緩衝しないようになっている。また、吊支装置15は、下方に窪む当該凹部に取付けられるため、吊支パネル本体11aの凸部の上端を天井Cに近づけた構成とすることができる。
図4及び図6に示されるように、吊支装置15は、吊支パネル本体11aの上端部に取付けられ、後述するレール部26内を左右方向(レール部26の延伸方向)に走行可能なローラ部16(走行体)と、該ローラ部16に吊支パネル本体11aを連結する連結部17と、から主に構成されている。
ローラ部16は、後述する支持ボルト18の胴部18bが螺合される基部16aと、基部16aの前後面に左右方向に離間して前後一対ずつ軸支される走行ローラ16b,16b,16b,16bと、から構成され、後述するレール部26の走行板26a,26a上を左右方向に滑らかに走行できるようになっている。
連結部17は、ローラ部16の基部16aに螺合され下方に延びる支持ボルト18と、支持ボルト18に対して前後から取付けられる一対の挟持板19,19と、から主に構成されている。
支持ボルト18は、頭部18aを下方に向けた状態でローラ部16の基部16aに螺合されるとともに、予め胴部18bに挿通されるナット18cとその頭部18aとの間に挟持板19,19の左右略中央から対向するように延出する連結片19a,19aを上下に重ねて配置した状態で締結することにより、支持ボルト18に対して挟持板19,19を強固に固定できるようになっている。尚、後段にて詳述するが挟持板19,19は、支持ボルト18に固定されることによりレール部26の下方に配置された状態になっている。
挟持板19,19には、左右方向に離間して前後方向に貫通する図示しない貫通孔が穿設されており、この貫通孔にボルト19b,19bを挿通して締付けることにより、挟持板19,19の前後方向の離間寸法を調整できるようになっている。これによれば、吊支パネル本体11aの上端部をレール部26の下方に配置される挟持板19,19間に下方から挿入した状態でボルト19b,19bを締付けることにより、吊支パネル本体11aの上端部を挟持板19,19により挟持して強固に固定することができる。また、前述したように、吊支パネル本体11aの上端部は切欠かれて凹凸形状をなしているため、挟持板19,19間における位置合わせが行いやすく、吊支パネル11をレール部26に吊支するための取付け施工を容易に行うことができるようになっている。
尚、図6に示されるように、レール部26には、吊支パネル11において展示部9の当接部8側に取付けられる吊支装置15のローラ部16に接触するストッパ16cが所定位置に設けられることにより、吊支パネル11が展示部9の当接部8に激しく衝突しないように吊支パネル11の移動を規制することができる。また、ストッパ16cには、ショックアブソーバが内蔵されており、吊支装置15のローラ部16が接触した際の衝撃を吸収できるようになっている。
次いで、上部パネル支持体2について詳しく説明する。図3及び図4に示されるように、天井Cには、側面視下向きコ字状をなす笠木20が天井裏に配置される側面視上向き略コ字状をなす固定部材29と複数の固定ボルト50,50,…によって連結されることにより、天井Cを挟み込むようにして強固に固定されている。このとき、笠木20の天板20aには、笠木20の延伸方向に沿って複数の連結金具21,21,…(図3及び図4では、1つの連結金具21のみを示している)が固定ボルト50,50,…によって笠木20と共締めされることにより固定されている。さらに、連結金具21,21,…には、笠木20の下方から外嵌される後述する上部支持部材22の連結部24が複数の連結ボルト21a,21a,…によって一体に連結されている。言い換えれば、上部支持部材22は、天井Cに対して笠木20と一体に取付けられるようになっている。尚、連結金具21は、板材を複数重ね合わせることにより構成されており、板材の枚数を変更することで笠木20に外嵌される上部支持部材22の高さ位置を調整可能になっている。また、固定ボルト50と連結ボルト21aの説明の便宜上、図4においては、連結ボルト21aの胴部を破線で表示している。
尚、本実施例における上部パネル支持体2は、笠木20と上部支持部材22を合わせたものとなっている。また、上部パネル支持体2を構成する笠木20と上部支持部材22は、アルミ合金製の押出成形品である。
上部支持部材22は、下方から前後方向に対向する側面視略L字状の走行板26a,26aからなるレール部26(レール)と、走行板26a,26aの上下略中央からそれぞれ前後方向外側に向けて延びる前方支持部25及び後方支持部25’と、前述した連結金具21に下方から当接する前後一対の当接片24b,24bを有する側面視ロ字状の連結部24と、から主に構成されている。
また、上部支持部材22には、笠木20の前後の側板20b,20bの外面に沿って上方に延び前方支持部25及び後方支持部25’を構成する前後の起立板25a,25aと、前後の起立板25a,25aの間に形成される連結部24と、前後の起立板25a,25aの間に形成されるレール部26と、から側面視上向き略コ字状構造の上向き開放部分である嵌合部23が形成され、笠木20を下方から覆うように外嵌される。尚、前方支持部25及び後方支持部25’の構造は、同一構成であるため、前方支持部25の構造について説明し、後方支持部25’の構造についての説明を省略する。
連結部24は、レール部26を構成する前後の走行板26a,26aを笠木20の内部で前後方向に連結する連結板24aと、連結板24aの上面から上方に延び連結金具21に下方から当接する前後一対の当接片24b,24bと、当接片24b,24bを前後方向に連結するとともに上部支持部材22と連結金具21とを一体に連結するための連結ボルト21aが挿通される取付板24cと、から構成されている。
前方支持部25は、前方側の起立板25aの上端から前方に向けて延びる上板25bと、上板25bの前端から下方に向けて延び起立板25aと対向する対向板25cと、から主に構成され、起立板25aと上板25bと対向板25cの3つの板から側面視下向き略コ字状の上部挿入溝27が形成されている。
また、対向板25cの下端は、起立板25aの下端よりも上方に形成されている。言い換えれば、上部挿入溝27の開口部27aは、起立板25aの下端よりも上方に形成されている。
また、対向板25cには、前方側に向けて係止部25dが形成されており、前面カバー部材10bが係止されることにより取付けられ、上部パネル支持体2に対するガラスパネル4の取付け構造を隠せるようになっている。
レール部26は、連結部24を構成する連結板24aの前後両端から下方に延び端部同士が前後方向に対向して側面視略L字状に形成される走行板26a,26aから構成されており、走行板26a,26aの対向端部間、すなわちレール部26の前後略中央において下方に開放する開口部26bが形成されるとともに、連結部24の連結板24aと前後の走行板26a,26aにより上部支持部材22の内部に側面視矩形状の空間が形成されている。
レール部26内には、前述した吊支装置15のローラ部16を配置できるようになっており、前後方向に対向する走行板26a,26a上を走行ローラ16b,16b,16b,16bが走行できるようになっている。また、レール部26の開口部26bからは、ローラ部16の基部16aに螺合される吊支装置15の支持ボルト18を下方に突出させることができ、レール部26の下方に支持ボルト18に固定される挟持板19,19を配置できるようになっている。尚、レール部26の開口部26bは、吊支装置15のローラ部16が配置されるレール部26内の前後寸法よりも走行板26a,26aの前後寸法分だけ狭くなるように構成されているため、レール部26内に配置される吊支装置15のローラ部16が見え難くなり、美観を高めることができる。
また、レール部26の走行板26a,26aの前後方向外側には、係止部26c,26cがそれぞれ形成されており、左右方向に延びる側面視略L字状のレールカバー28,28(図1,図4参照)がそれぞれ係止されることにより取付けられ、レール部26の下方において、レール部26及びレール部26に吊支される吊支パネル11の吊支装置15,15、すなわち、吊支パネル11の吊支構造を隠せるようになっている。尚、レールカバー28,28は、上部支持部材22の前後の起立板25a,25aに対して上下方向にそれぞれ略面一になるように取付けられる。
次いで、下部パネル支持体3について詳しく説明する。図3及び図5に示されるように、床面Fには、側面視上向きコ字状をなす巾木30が複数のアンカーボルト51,51,…により固定されている。このとき、巾木30の底板30aには、側面視上向きコ字状をなす案内部材31がアンカーボルト51,51,…によって巾木30と共締めされることにより固定されている。
巾木30の内部には、巾木30の底板30aと、巾木30の前後の側板30b,30bと、案内部材31の側板31b,31bとから巾木30の延伸方向に亘って前後一対の側面視上向きコ字状の開口部33,33が形成され、開口部33,33の所定位置には、アジャスタ機構34,34がそれぞれ配設されている。尚、アジャスタ機構34は、各開口部33において左右方向に離間した状態で少なくとも2つ以上設けられている。
アジャスタ機構34,34は、開口部33,33内でそれぞれ前後に亘って設けられる基部34a,34aと、基部34a,34aに設けられるねじ孔34b,34bに上方から螺合されるアジャスタボルト35,35と、から構成され、基部34a,34aは、側面視略L字状の脚部34c,34cを介して巾木30の底板30aに固定されている。尚、アジャスタ機構34,34は、基部34a,34aが巾木30の前後の側板30b,30bに溶接固定され、脚部34c,34cの下端部が巾木30の底板30aに溶接固定されることにより開口部33,33内にそれぞれ強固に固定されているため、前後に取付けられるガラスパネル4,4の荷重を受けても変形することがない。
アジャスタボルト35,35は、基部34a,34aのねじ孔34b,34bに対する締付け具合により、開口部33,33の上方に突出する頭部35a,35aの高さ位置を調整可能となっている。そのため、前方側の開口部33の上方から外嵌される下部支持部材32及び後方側の開口部33の上方から外嵌される下部支持部材32’をアジャスタボルト35,35の頭部35a,35aにより下方から支持できるとともに、巾木30に対する下部支持部材32,32’の高さ位置を個別に調整でき、下部パネル支持体3のレベル調整を行いやすい。また、下部支持部材32,32’は、前後方向において分割されることにより施工時の運搬や取付け作業が行いやすく、施工性が高められている。
尚、本実施例における下部パネル支持体3は、巾木30と下部支持部材32を合わせたものとなっている。さらに尚、下部パネル支持体3を構成する巾木30と下部支持部材32,32’は、アルミ合金製の押出成形品である。また、下部支持部材32,32’の構造は、同一構成であるため、前方側に取付けられる下部支持部材32の構造について説明し、後方側に取付けられる下部支持部材32’の構造についての説明を省略する。
下部支持部材32は、巾木30の上方に突出するアジャスタボルト35の頭部35aにより支持される上方支持板37と、上方支持板37の前端から下方に延び巾木30の前方側の側板30bの外面側に配置される支持部38と、上方支持板37の後端から下方に延び案内部材31の前方側の側板31bの内面に沿って下方に向けて延びる案内板39と、から構成されている。
また、下部支持部材32には、支持部38において上方支持板37の前端から巾木30の前方側の側板30bの外面に沿って下方に向けて延びる支持板38aと、上述した上方支持板37及び案内板39と、から構成される側面視下向きコ字状構造の下向き開放部分である嵌合部36が形成され、巾木30の前方側の開口部33を上方から覆うように外嵌される。
支持部38は、上述した支持板38aと、支持板38aの下端から前方に向けて延びる水平板38bと、から主に構成され、水平板38bの上面側には、前述した下部縁材7の係合片73と係合する被係合部38cと、当接片72と当接する当接面38dが形成される。
被係合部38cは、支持板38aの前面側に相当する垂直面38eと、支持板38aの下端から前方側に向けて斜め上方向に傾斜する傾斜面38fと、から構成されている。言い換えれば、被係合部38cは、前方側から下方に向けて巾木30側(後方側)に漸次減縮した形状をなし、前述したガラスパネル4の係合片73と係合可能になっている。また、被係合部38cに係合片73が係合されると、被係合部38cの傾斜面38fは、係合片73の傾斜面73bと当接し、被係合部38cの垂直面38eは、係合片73の垂直面73aと当接した状態となっているため、ガラスパネル4が浮き上がる等して前方側に移動した場合であっても、被係合部38cの傾斜面38fの傾斜に沿って係合片73が滑り、被係合部38cの垂直面38eと係合片73の垂直面73aとが当接した状態に戻るように案内される。
当接面38dは、被係合部38cの前方側に形成され、前述したガラスパネル4の当接片72が上方から当接することにより、ガラスパネル4から下方向にかかる荷重と、ガラスパネル4が前方側に倒れる方向にかかる荷重を支持できるようになっており、ガラスパネル4の取付け状態における安定性を高めている。
また、被係合部38c及び当接面38dの下方には、係止部38gが形成されており、前面カバー部材10bが係止されることにより取付けられ、下部パネル支持体3とガラスパネル4の取付け構造を隠せるようになっている。
尚、下部支持部材32は、アジャスタ機構34により高さ位置の調整が行われた後、係止部38gに前方側からビス52が打ち込まれることにより、巾木30と強固に固定される。
また、巾木30の前後略中央には、案内部材31の底板31aと、案内部材31の前方側の側板31bの内面に沿って下方に向けて延びる下部支持部材32の案内板39と、案内部材31の後方側の側板31bの内面に沿って下方に向けて延びる下部支持部材32’の案内板39と、から凹溝90が形成され、レール部26に吊支される吊支パネル11(吊支パネル本体11a)の下端部が緩嵌された状態で配置できるようになっている。
これによれば、パネル装置1に取付けられる前後一対のガラスパネル4,4の対向面間に吊支パネル11を移動可能に吊支することができる。すなわち、吊支パネル11が配置される展示部9をパネル装置1に取付けられる前後一対のガラスパネル4,4の対向面間に構成することができる。
また、吊支パネル11の下端部は、下部パネル支持体3に形成される凹溝90内に配置されているため、吊支パネル11の下端部が外部から見えないように隠せるようになっており、展示部9内の美観が高められている。さらに、凹溝90は前後方向に狭く構成されているため、吊支パネル11の前後方向への揺動を凹溝90内でガイドすることができ、吊支パネル11を安定して吊支できるようになっている。
また、下部パネル支持体3に凹溝90が一体に構成されることにより、吊支パネル11の取付け施工時において、凹溝90により下部パネル支持体3に対する吊支パネル11の位置決めを容易に行うことができるため、下部パネル支持体3に吊支パネル11の案内構造を構成するための施工が容易になる。さらに、吊支パネル11の移動時においては、吊支パネル11の下端部は、凹溝90内に沿ってガイドされるようになっている。
また、巾木30及び案内部材31を共に側面視上向きコ字状に構成することにより、厚さの薄い巾木30の底板30a及び案内部材31の底板31aから凹溝90の底面の厚さが構成されるため、吊支パネル11の下端を床面Fの近傍まで延ばすことができる。
次いで、パネル装置1における展示部9について詳しく説明する。図1、図2及び図7に示されるように、展示部9は、上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3により支持される前後一対のガラスパネル4,4と、展示部9に配置される吊支パネル11の側端部が当接する当接部8と、展示部9に対して吊支パネル11を出し入れ可能な開口部9aと、から形成されている。以下、上部パネル支持体2において、展示部9の開口部9aから展示スペース側、すなわち展示部9側に延びる部分を上部パネル支持体2の本体部2aとして説明する。
尚、展示部9の開口部9aには、上部パネル支持体2と下部パネル支持体3との間に上下方向に亘って上面視略コ字状の開口部カバー10c(図7参照)が取付けられることにより、展示部9の開口部9aを上下方向に亘って塞がれるため、展示部9内の遮蔽性が高められており、展示部9内への虫や塵等の侵入を防ぐことができる。
また、展示部9の開口部9aからは、側壁W内に向かって上部パネル支持体2の本体部2aと左右方向に連続する延設部2bが延びており、図2に示されるように、開口部カバー10cを取外した状態では、展示部9の開口部9aから吊支パネル11を延設部2bのレール部26(図9参照)に沿って側壁W内に引き出すことができるようになっている。尚、説明の便宜上、図示しないが、延設部2bのレール部26には、端部近傍に前述したストッパ16cが設けられている。
尚、上部パネル支持体2の延設部2bは、展示部9内から吊支パネル11の略全体を引き出せるように、少なくとも吊支パネル11の左右方向の寸法と略同寸が展示部9の開口部9aから延設されている。これによれば、展示部9内から引き出された吊支パネル11に対して展示物99の取付け/取外しの作業を行いやすい。また、延設部2bにおいてレール部26に対する吊支パネル11の取付け施工を行うことができるため、施工性を高められる。
図7に示されるように、展示部9の当接部8は、笠木20と巾木30との間に立設される支柱80と、支柱80に対して展示部9の内部側(図7紙面左方側)から外嵌される側部支持部材81と、パネル装置1の外側(図7紙面右方側)から外嵌されるエンドカバー10a(図1及び図2参照)と、から主に構成されている。
側部支持部材81は、ガラスパネル4,4の後面4d,4dに当接することによりパネル装置1の構造強度を高める前後一対の当接板81b,81bと、前面カバー部材10b,10bを前後に係止させるための前後の係止部81c,81cと、から主に構成されている。また、側部支持部材81には、当接板81b,81bを前後方向に連結する連結板81dと、前後の係止部81c,81cと、から構成される上面視略コ字状構造の開放部分である嵌合部81aが形成され、支柱80を展示部9の内部側(左方側)から覆うように外嵌される。
当接板81b,81bには、前後から取付けられるガラスパネル4,4の後面4d,4dにそれぞれ当接し、衝撃緩衝材としての役割を果たすゴム製の弾性部材87,87が取付けられている。尚、前後の当接板81b,81bの間には、パネル装置1の内面側から側面カバー部材10eが係止されることにより取付けられ、側部支持部材81の構造を隠せるようになっている。また、側面カバー部材10eには、吊支パネル本体11aの側端部と当接し、衝撃緩衝材としての役割を果たす透明のゴム製の当接部材83が取付けられている。
係止部81c,81cには、前面カバー部材10b,10bがそれぞれ係止されることにより取付けられ、側部支持部材81に対する前後のガラスパネル4,4の取付け構造を隠せるようになっている。
展示部9の開口部9aは、笠木20と巾木30との間に前後方向に離間して立設される前後一対の分割支柱94,94と、分割支柱94,94に前後からそれぞれ外嵌される分割フレーム95,95とから主に構成されている。尚、前後の分割支柱94,94及び分割フレーム95,95は、同一構成であるため、パネル装置1の前方側(図7紙面下方側)に取付けられる分割支柱94及び分割フレーム95について説明し、後方側に取付けられる分割支柱94及び分割フレーム95についての説明を省略する。
分割フレーム95は、分割支柱94が外部に露出しないように隠すカバー部95aと、ガラスパネル4の後面4dに当接することによりパネル装置1の構造強度を高める当接部95bと、前面カバー部材10bを係止させて取付けるための係止部95cと、から構成されている。
分割フレーム95の当接部95bには、展示部9内において、吊支パネル本体11aに対して当接するブラシ状のモヘアシール96が設けられることにより、吊支パネル本体11aを傷付けることなく展示部9の開口部9aに対する展示部9内の遮蔽性を高めることができ、展示部9内への虫や塵等の侵入を防ぐことができる。モヘアシール96は、吊支パネル11を移動させる際に展示物99と接触しないように一部が上下方向に切欠かれた状態で設けられている。尚、モヘアシール96を前後方向に移動可能な構成として、展示物99との接触を回避するようにしてもよい。
また、展示部9内は、遮蔽性が高められているため、展示部9内に吊支パネル11が押し込まれていく過程において、吊支パネル11により押し込まれた展示部9内の空気が、モヘアシール96を通過して展示部9の開口部9aから外部に向かって流出することにより、展示部9内への虫や塵等の侵入を抑えられるようになっている。
分割フレーム95の当接部95bには、前方側から取付けられるガラスパネル4,4の後面4dに当接し、衝撃緩衝材としての役割を果たすゴム製の弾性部材97が嵌め込まれている。
分割フレーム95の係止部95cには、前面カバー部材10bが係止されることにより取付けられ、分割フレーム95に対するガラスパネル4の取付け構造を隠せるようになっている。
尚、展示部9の開口部9aの外側近傍の床面F、すなわち上部パネル支持体2の延設部2bと上下方向に対向する床面Fには、後段にて詳述するパネルガイド91(図8及び図10参照)が設けられている。
次いで、上部パネル支持体2の延設部2bについて詳しく説明する。図9に示されるように、上部パネル支持体2の延設部2bにおいて、上部パネル支持体2の上部支持部材22には、前後の前方支持部25及び後方支持部25’にガラスパネル4,4を取付ける必要がないため、前後の対向板25c,25cに設けられる係止部25d,25dに対して前述した前面カバー部材10bの代わりに延設部用前面カバー部材10d,10dが取付けられる。尚、延設部用前面カバー部材10dは、前面カバー部材10bと略同一形状であり、下端部が上部支持部材22の係止部26cに取付けられるレールカバー28に当接する位置まで延び、上部パネル支持体2の本体部2aに取付けられる前面カバー部材10bとの連続性を維持しながら、上部支持部材22の延設部2bにおける前方支持部25及び後方支持部25’の構造を隠せるようになっている。さらに、前面カバー部材10bと延設部用前面カバー部材10dの上下寸法は略同じであり、略同じ高さに取付けられるため、上部支持部材22の本体部2aと延設部2bの上端において前面カバー部材10b及び延設部用前面カバー部材10dが連続性を持って配置される。そのため、例えば、上部パネル支持体2の延設部2bの少なくとも一部が側壁Wから突出し、上部パネル支持体2の本体部2aと連続した状態で展示スペース側に配置された場合であっても、上部パネル支持体2の外観に連続性が維持され、美観に優れる。
また、図10に示されるように、展示部9の開口部9aの外側近傍の床面Fには、側面視上向き略コ字状をなすパネルガイド91がビス98により固着され、吊支パネル11(吊支パネル本体11a)の下端部が床面Fに固着される基部91aから前後に立設するガイド片91b,91b間において近接した状態で配置されている。尚、ガイド片91b,91bの前後方向の離間寸法は、展示部9の開口部9aの前後寸法よりも小さくなっている。これによれば、吊支パネル11の下端部がガイド片91b,91b間においてガイドされることにより、吊支パネル11の前後方向への揺動を抑えることができる。
次いで、展示部9における上部パネル支持体2の本体部2a(以下、単に上部パネル支持体2という)及び下部パネル支持体3に対するガラスパネル4の取付け方法について説明する。尚、ここでは、予め上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3に対して展示部9を構成する後方側のガラスパネル4を取付け、レール部26内に配置された吊支装置15の挟持板19,19に吊支パネル本体11aを取付けた状態において、最後に前方側のガラスパネル4(以下、単にガラスパネル4ともいう)を取付ける場合を例に挙げて説明する。
図11(a)に示されるように、まず、ガラスパネル4の上方を上部パネル支持体2側に傾斜させた状態で持ち、ガラスパネル4の上端に固定された上部縁材6の挿入板61を上部パネル支持体2の前方支持部25に設けられた上部挿入溝27に挿入する。このとき、ガラスパネル4に設けられた挿入板61の後方側の垂直面61aを前方支持部25の起立板25aに当接させて上方に向けて滑らせることにより、上方に位置する上部挿入溝27へ挿入板61を案内させることができるので、上部挿入溝27に対する挿入板61の挿入を安全に且つ確実に行うことができる。
次に、図11(b)に示されるように、上部挿入溝27に挿入板61が挿入された状態で当該箇所を中心としてガラスパネル4の下端を下部パネル支持体3に近接させるように回動させ、ガラスパネル4の下端を略水平に移動させる。このとき、ガラスパネル4を持ち上げ、上部挿入溝27に挿入板61の略全体が挿入されている状態でガラスパネル4を回動させることにより、パネル本体4bの下端に固定された下部縁材7が下部パネル支持体3の前方側に突出している被係合部38c及び当接面38dに接触することなく、ガラスパネル4の下端を下部パネル支持体3に近接させることができ、ガラスパネル4の回動を安全かつ確実に行うことができる。
最後に、図11(c)に示されるように、挿入板61の垂直面61a及び係合片73の垂直面73aを上部パネル支持体2の前方支持部25に設けられた起立板25a及び下部パネル支持体3の下部支持部材32の支持部38に設けられた支持板38aに当接させた状態で真下に落とし込むことにより、図11(d)に示されるように、ガラスパネル4の下端に設けられた係合片73を支持部38の被係合部38cに係合させることができる。また、同時に、ガラスパネル4の下端に設けられた当接片72の当接面72aを下部パネル支持体3の支持部38に設けられた当接面38dに上方から当接させることができる。このとき、被係合部38cを構成する垂直面38eの下端から上部挿入溝27の開口部27aまでの上下寸法L2よりもガラスパネル4の上下寸法L1(上部縁材6の挿入板61の上端から下部縁材7の係合片73の下端までの上下寸法)が大きくなっており、上部挿入溝27に挿入板61が挿入された状態が保持されている(図3参照)。
これにより、上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3に対するガラスパネル4の取付けが完了し、下部パネル支持体3の支持部38に設けられた被係合部38cにガラスパネル4の下端に設けられた係合片73が係合された状態で、同時に上部パネル支持体2の前方支持部25に設けられた上部挿入溝27に挿入板61が挿入された状態とすることができ、且つ挿入板61の垂直面61aと、係合片73の垂直面73aと、を上部支持部材22の起立板25a及び下部支持部材32の支持板38aに当接させた状態とすることができるので、ガラスパネル4を上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3に対して安定して保持させることができる。このように、パネル装置1は、展示部9を構成するガラスパネル4の着脱施工を容易に行うことができるため、展示部9内の清掃等のメンテナンス作業を行いやすい。
また、上述の寸法関係(L1>L2)であるため、ガラスパネル4を上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3に取付けた状態でガラスパネル4が前後に倒れることがない。
以上説明したように、本実施例におけるパネル装置1は、上部パネル支持体2に取付けられる前後一対のガラスパネル4,4の対向面間に形成される展示部9において左右に延びるレール部26と、前後に対向するガラスパネル4,4間において該レール部26に沿って左右に走行可能な吊支装置15,15(ローラ部16,16)を備え、吊支装置15,15は、展示物99を取付け可能な吊支パネル11(吊支パネル本体11a)を吊支可能であるため、吊支装置15,15をレール部26に沿って走行させることにより吊支パネル11に取付けられた展示物99を左右方向に移動させることができるため、床面Fから天井C側に亘って取付けられ前後に対向するガラスパネル4,4間(展示部9)に収容される展示物99の位置合わせを容易に行うことができる。
また、前後に対向するガラスパネル4,4の側端部に構成される展示部9の開口部9aから、吊支パネル11に取付けられた展示物99を出し入れすることができるため、ガラスパネル4,4間(展示部9)への展示物99の収容が容易である。
また、上部パネル支持体2において、上部支持部材22のレール部26は、展示部9の開口部9aから左右方向外側に延長されている、すなわち上部パネル支持体2の延設部2bが設けられているため、ガラスパネル4,4間(展示部9)に収容される展示物99が吊支パネル11に取付けられ吊支装置15,15により吊支された状態でレール部26に沿って展示部9の開口部9aから上部パネル支持体2の延設部2bに移動させることができるため、展示物99の出し入れを行いやすい。
また、吊支装置15,15には、板状の吊支パネル11が吊支され、吊支パネル11の面部に展示物99を取付けることにより、前後に対向するガラスパネル4,4間(展示部9)に展示物99を安定した状態で収容することができる。また、物品として板状のスクリーン等が吊支装置15,15に直接吊支された場合にも安定した状態で収容することができる。
また、展示部9を構成する前後一対のガラスパネル4,4及び吊支パネル11を構成する吊支パネル本体11aが共に透光性を有しており、吊支パネル本体11aに展示物99を取付けることにより、前後方向に並列に配置されるガラスパネル4,4と吊支パネル本体11aとが重畳して吊支パネル本体11aが外部から判別し難くなるため、展示物99の吊支構造が認識され難く、展示部9に収容される展示物99があたかも空間上に配置されているような演出効果を得ることができる。
さらに、上部支持部材22において、レール部26の下向きの開口部26bは、吊支装置15のローラ部16が配置されるレール部26内の前後寸法よりも走行板26a,26aの前後寸法分だけ狭くなるように構成され、かつレール部26の下方側にレールカバー28,28が取付けられることにより、展示物99を鑑賞する際に視線が水平角あるいは仰角となる場合であっても、吊支パネル11の吊支構造が視認し難くなっている。
また、展示部9において吊支パネル11の吊支構造を目立ち難くするために、吊支装置15,15が天井近くの高い位置に設けられているが、上部パネル支持体2の上部支持部材22にレール部26が構成されており、該レール部26に沿って吊支装置15,15のローラ部16,16を滑らかに走行させることができるため、把手12、12を把持して操作すればよいので高所作業の必要がなく、吊支パネル11の位置合わせの作業を容易に行うことができる。
また、ガラスパネル4の取付け施工において、ガラスパネル4は、上部支持部材22の起立板25a,25a及び下部支持部材32,32’の支持板38a,38aよりもパネル装置1の内側に入り込むことがないため、予めレール部26に吊支パネル11を取付けた状態であっても、吊支パネル11に取付けられる展示物99とガラスパネル4が接触することがなく安全に作業することができる。さらに、レールカバー28,28は、上部支持部材22の前方支持部25及び後方支持部25’における起立板25a,25aと面一になるように取付けられるため、ガラスパネル4の取付け施工の邪魔にならない。
また、ガラスパネル4が取付けられた状態において、ガラスパネル4と笠木20及び巾木30との距離が近くなっているため、パネル装置1の前後寸法の変更幅(笠木20及び巾木30の前後寸法の変更幅)を大きく取ることが可能となり、例えば、パネル装置1の前後寸法を小さくした場合であっても、笠木20及び巾木30の前後寸法をできる限り大きくして下部パネル支持体3の支持強度を高めることができ、安定性が高まるので、パネル装置1の設計自由度が高くなっている。
また、上部支持部材22において、ガラスパネル4,4を前後方向に離間させて取付けるための前方支持部25及び後方支持部25’の間のスペースを利用して吊支パネル11を吊支するためのレール部26をコンパクトに構成できる。さらに、上部支持部材22において、レール部26内に配置される吊支装置15,15のローラ部16,16と、前方支持部25及び後方支持部25’に取付けられるガラスパネル4,4の上端部との高さ位置が近くなっており、吊支パネル11の吊支構造とガラスパネル4,4の取付け構造を上部支持部材22内の近い位置にコンパクトに構成できるため、それぞれに必要な支持強度を互いに補い合う構造とすることができる。
また、上部支持部材22において、連結部24の直下に吊支装置15のローラ部16が配置されるレール部26が設けられているため、吊支パネル11が取付けられた状態において、吊支パネル11の上端と笠木20との上下方向の距離が近くなっている。さらに、上部支持部材22において、笠木20に固定される連結金具21,21,…との連結部分として剛性が必要となる連結部24の構造を利用してレール部26が形成されており、上部支持部材22全体をコンパクトに構成できるため、吊支パネル11の上下寸法を大きく取ることが可能となり、展示部9に収容される展示物99があたかも空間上に配置されているような演出効果をより高めることができる。
また、上部パネル支持体2は、上部支持部材22の前後にガラスパネル4,4を取付けるための前方支持部25及び後方支持部25’を有し、前方支持部25及び後方支持部25’の間に吊支パネル11を吊支可能なレール部26が一体成形されているため、構造強度が高くなるとともに、天井Cに設けられる上部パネル支持体2に対して別途レール部26の取付け施工を行う必要がなく、設置現場において上部パネル支持体2に吊支パネル11の吊支構造を構成するための施工が容易になる。
また、下部パネル支持体3は、下部支持部材32,32’の前後にガラスパネル4,4,…を支持するための支持部38,38をそれぞれ有し、該下部支持部材32,32’の間に吊支パネル11(吊支パネル本体11a)の下端部を案内する凹溝90が一体に構成されているため、設置現場において床面Fに設けられた下部パネル支持体3に吊支パネル11の案内構造を構成するための施工が容易になる。
さらに、下部パネル支持体3は、前方側でガラスパネル4を支持する支持部38を有する下部支持部材32と、後方側でガラスパネル4を支持する支持部38を有する下部支持部材32’とに分割され、前後に対向して凹溝90を構成する案内板39,39をそれぞれ備えているため、下部支持部材32,32’を個別に離間させて設置することができ、下部パネル支持体3に吊支パネル11の案内構造を容易に構成できる。
また、下部パネル支持体3において、巾木30に形成される前後一対の断面上向きコ字形の開口部33,33に上方からそれぞれ断面上向きコ字形の下部支持部材32,32’がそれぞれ外嵌されることにより、下部パネル支持体3の構造が補強されるため、下部支持部材32,32’を前後に分割しても下部パネル支持体3におけるガラスパネル4,4,…の支持強度を高めることができる。
また、吊支パネル本体11aの上端部に取付けられる吊支装置15,15のローラ部16,16は、上部支持部材22のレール部26内において前後の走行板26a,26a上に安定して走行できるように配置されるとともに、吊支パネル本体11aの下端部は、下部パネル支持体3に構成される凹溝90内に配置されることにより、吊支パネル11の前後方向への揺動を抑えることができるため、地震による揺れ等の力を受けても展示部9内において吊支パネル11が安定した状態で保持され、落下することがない。
実施例2に係るパネル装置につき、図12を参照して説明する。実施例2は、実施例1のパネル装置1の下部パネル支持体3の構成を変更し、床面Fに左右に延びる箱体状の台座300を設けることにより、展示部9の下端部を床面Fよりも上方の高さ位置に配置したものである。また、実施例2は、実施例1のパネル装置1の展示部9の構成を変更し、展示部9における上部パネル支持体2と台座300との間で左右に複数のガラスパネル4,4,…が連設されることにより展示部9の左右方向の寸法を大きくしたものである。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
図12に示されるように、実施例2におけるパネル装置100は、天井Cに固定され左右に延びる上部パネル支持体2と、床面Fに固定され左右に延びる台座300と、の間に前後方向に離間させた一対のガラスパネル4,4が左右方向に複数連設された二重ガラスパネル構造になっており、展示部9において、前後一対のガラスパネル4,4の対向面間に展示物99が取付けられた吊支パネル11が吊支されている。尚、実施例2におけるガラスパネル4は、パネル本体4bの下端面4eに実施例1の下部縁材7が設けられておらず、パネル本体4bの下端面4eがガラスパネル4の下端部として台座300の上面300aに載置された状態となっている。
また、左右に隣接するガラスパネル4,4の対向端部同士は、透明度の高い樹脂製のジョイント材40(図12参照)が充填されることにより上下方向の枠を使用しなくとも左右方向の連結が可能になっている。
また、パネル装置100には、展示部9内に配置される吊支パネル11を展示部9の外部から上部パネル支持体2の上部支持部材22に設けられるレール部26に沿って左右方向に移動させるための図示しない移動手段が設けられている。尚、移動手段は、吊支パネル本体11aの上端部に取付けられる吊支装置15,15を展示部9の外部からレール部26に沿って左右方向に移動させることができるものであれば、自由に構成されてよく、例えば、吊支装置15のローラ部16に外部から駆動を制御可能な電動モータが内蔵されていてもよい。
これによれば、左右に複数連設され前後に対向するガラスパネル4,4間(展示部9)において、吊支装置15,15のローラ部16,16を移動手段により外部からレール部26に沿って左右に移動させることができるため、吊支パネル11に取付けられた展示物99の位置合わせを容易に行うことができる。また、展示部9内に複数の吊支パネルを吊支することができる。
尚、図12に示されるように、吊支パネル11は、展示部9の前後において左右に隣接するガラスパネル4,4のジョイント材40,40と、吊支パネル本体11aの左右側端が前後方向に重畳する位置に配置されることにより、展示部9内に配置される吊支パネル11を視認し難くなり、展示部9に収容される展示物99が空間上に配置されているような演出効果を高めることができる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例において、展示部9を構成する前後一対のガラスパネル4,4のパネル本体4b,4b及び吊支パネル11の吊支パネル本体11aは、透光性を有するものとして説明したが、これに限らず、少なくとも展示部9の前面側に取付けられるパネル体のパネル本体が透光性を有していれば、後面側のパネル体と吊支パネルには透光性を有さない金属製パネルや木製パネル等が使用されてもよい。
また、前記実施例では、予め上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3に対して展示部9を構成する後方側のガラスパネル4を取付け、レール部26内に配置された吊支装置15の挟持板19,19に吊支パネル本体11aを取付けた状態において、最後に前方側のガラスパネル4を取付ける場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、吊支パネル11が取付けられた状態で展示部9を構成する前後のガラスパネル4,4を取付けるようにしてもよい。
また、上部パネル支持体2は、天井Cに対して間接的に固定されていてもよく、一体に固定されていなくてもよい。
また、パネル装置1,100は、側壁Wから展示部9のみが延設されるものに限らず、上部パネル支持体2の延設部2bが展示スペースに配置されていてもよい。
また、上部パネル支持体2の延設部2bは、上部パネル支持体2の本体部2aから連続して延びるものに限らず、上部パネル支持体において、本体部と延設部が入れ子式に構成され、展示部9の開口部9aから延設部を本体部の中に収納できるようにしてもよい。また、上部パネル支持体の本体部と延設部は、別体に構成され必要に応じて連結されるものであってもよい。
また、上部パネル支持体2及び下部パネル支持体3に対するガラスパネル4の取付け構造については、前記実施例1,2の取付け構造に限らず、ガラスパネル4を安定して取付けられるものであれば自由に構成されてよい。
また、パネル本体4b及び吊支パネル本体11aとしては、透明なアクリル製の板材が使用されてもよい。
また、前記実施例では、吊支パネル11を構成する吊支パネル本体11aは、ガラスパネル4のパネル本体4bの上下方向及び左右方向の寸法と略同寸のものとして説明したが、これに限らず、吊支パネル本体の上下方向及び左右方向の寸法は自由に構成されてよい。
吊支パネル11を移動させる移動手段としては、吊支装置15のローラ部16に外部から駆動を制御可能な電動モータが内蔵されるものに限らず、無端状のワイヤや磁石の吸着力等を利用して外部から吊支装置を手動で移動させるものであってもよい。
また、吊支パネル11の展示部9の開口部9a側の側端部に開口部カバー10cを一体に取付けることにより、吊支パネル11を展示部9内に配置すると同時に開口部9aを閉塞できるようにしてもよい。
また、パネル装置1,100をエアタイト式の展示ケースとして使用する場合には、下部パネル支持体3において凹溝90の下方空間は外部から見えなくなっているため、凹溝90の底部を構成する案内部材31の底板31aに調湿トレイ及び調湿材等を設置してもよい。また、凹溝90の一部に吸排気用のパンチングを設けてもよい。
また、前記実施例では、上部支持部材22にレール部26が一体成形されるものとして説明したが、これに限らず、上部支持部材に別体のレール部材を一体に取付けられるものであってもよい。
また、上部支持部材22に取付けられ前後方向に対向するレールカバー28,28の内面側には、吊支パネル11に取付けられる展示物99を上方から照らすための照明装置等が設置されてもよい。
また、展示物99は、吊支パネル11に取付け可能なものであれば、自由に選択されてよく、絵画や写真等の展示品に限らない。さらに、1枚の吊支パネル11に複数の展示物が取付けられてもよい。
また、吊支される物品として、映像を投影するためのスクリーンや遮光板等であってもよい。