JP6861763B2 - 熱可塑性樹脂組成物、成形品および製品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、成形品および製品 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、成形品および製品に関する。
汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等のスチレン系樹脂の成形品は、家電製品、OA機器等の製品の内部部品、ハウジング等の様々な用途に、様々な環境下で使用されている。
これらのスチレン系樹脂の成形品には、その使用環境、使用方法により、砂塵、埃、煤、油煙等の粉塵汚れが付着したりすることがある。成形品に粉塵汚れが付着すると、見た目が悪くなり、製品の性能の劣化を招く虞もある。
そこで、粉塵汚れの付着を抑制する為に、帯電防止剤を用いてスチレン系樹脂の成形品に帯電防止性能を付与する試みがなされている。
例えば、帯電防止剤を吹き付け、浸漬、塗布等によって成形品の表面に付着させることにより、成形品に帯電防止性能を付与する方法が知られている。しかし、成形品の表面に帯電防止剤を付着させる方法では、帯電防止剤の大半が水溶性の界面活性剤であり、拭き取り、洗浄等によって帯電防止剤が除去され、帯電防止性効果がなくなるという問題がある。
一方、スチレン系樹脂に添加剤として帯電防止剤を配合することにより、スチレン系樹脂の成形品に帯電防止性能を付与する方法(練り込み法)も知られている。この練り込み法は、帯電防止効果の持続性が高いため、近年、注目されている。
練り込み法に用いられる帯電防止剤としては、種々の化合物が知られている。例えば、特許文献1(特開2011−256293号公報)には、アミノエチルエタノールアミンの脂肪酸アミド化合物が開示されている。特許文献2(特開昭58−118838号公報)および特許文献3(特開平3−290464号公報)には、ポリエーテルエステルアミドが開示されている。特許文献4(特開2001−278985号公報)、特許文献5(国際公開第2014/115745号)および特許文献6(国際公開第2014/148454号)には、オレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックとからなるブロックコポリマー等が開示され、また、特許文献5および6には、ポリエーテルエステル系高分子型の帯電防止剤が開示されている。
なお、特許文献1には、アミノエチルエタノールアミンの脂肪酸アミド化合物の帯電防止効果を向上させる為に、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(例えば、ステアリン酸カルシウム)などを併用することが開示されている。また、特許文献4には、オレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックとからなるブロックコポリマーの帯電防止効果を向上する為に、塩化リチウム、酢酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を併用することが開示されている。また、特許文献5および特許文献6には、ポリエーテルエステル系高分子型の帯電防止剤に、酢酸カリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を配合することが開示されている。
特開2011−256293号公報 特開昭58−118838号公報 特開平3−290464号公報 特開2001−278985号公報 国際公開第2014/115745号 国際公開第2014/148454号
しかしながら、上記の帯電防止剤は、何れも、砂塵、埃等の親水性の粉塵汚れの付着抑制にはある程度の効果が認められるものの、煤、油煙等の疎水性の粉塵汚れに対する付着抑制効果は、殆ど認められなかった。すなわち、親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れとの両方が付着し難い樹脂組成物は提供されていなかった。
したがって、本発明の目的は、熱可塑性樹脂組成物からなる成形品への親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れとの両方の付着を抑制することである。
スチレン系樹脂(A)と、
ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)と、
下記式(1)で表される脂肪酸金属塩(C)と、
スチレン系熱可塑性エラストマー(D)と、を含有する、熱可塑性樹脂組成物。

M(OH)y(R−COO)x ・・・(1)

(式(1)中、Rは、炭素数6〜40のアルキル基またはアルケニル基である。Mは、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、リチウムおよびバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素である。xおよびyはそれぞれ独立な0以上の整数であり、x+y=[Mの価数]の関係を満たす。)
本発明においては、スチレン系樹脂(A)に対して、親水性コポリマー(B)、脂肪酸金属塩(C)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(D)を配合することにより、熱可塑性樹脂組成物からなる成形品への親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れとの両方の付着を抑制することができる。
実施の形態2に係る成形品の一例を示す断面模式図である。 実施の形態2に係る成形品の一例について、深さ方向の組成分布を示す模式的なグラフである。 実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物について説明するための概念図である。 実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物について説明するための概念図である。 実施の形態3に係る空気調和機の一例を示す断面模式図である。 実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物について説明するための概念図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面において、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
実施の形態1.
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、
スチレン系樹脂(A)と、
ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)と、
脂肪酸金属塩(C)と、
スチレン系熱可塑性エラストマー(D)と、を含有する。
なお、本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、更に良好な耐衝撃性等の機械的強度を併せ持つことも可能である。
<スチレン系樹脂(A)>
本実施の形態のスチレン系樹脂(A)の主成分としては、例えば、ポリスチレン樹脂(PS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アルキル(メタ)アクリレート単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体(MS)、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(AS)、ジエン系ゴム成分を含有するシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(ABS)、エチレン−αオレフィンゴム成分を含むシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(AES)、アクリルゴム成分を含むシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(ASA)、ジエン系ゴム成分を含むアルキル(メタ)アクリレート単量体と芳香族ビニル化合物との共重合体(MBS)、ジエン系ゴム成分を含むアルキル(メタ)アクリレート単量体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(MABS)、アクリルゴム成分を含むアルキル(メタ)アクリレート単量体と芳香族ビニル化合物との共重合体(MAS)などを挙げることができる。
なお、主成分とは、最も質量が多い成分であり、スチレン系樹脂(A)中の主成分の含有率は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
スチレン系樹脂(A)は、その製造時にメタロセン触媒等の触媒を使用することによって得られた、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有する樹脂であってもよい。また、スチレン系樹脂(A)は、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られた、分子量分布の狭い重合体、共重合体およびブロック共重合体、並びに、立体規則性の高い重合体および共重合体であってもよい。
ポリスチレン樹脂(PS)は、少なくとも一種の芳香族ビニル化合物を溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合等の重合方法によって重合して得られる重合体である。好ましい芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ターシャリーブチルスチレンなどのアルキルスチレン、フェニルスチレン、ビニルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン等が挙げられる。これらは一種または二種以上を使用し得る。これらのうち特に好ましい芳香族ビニル化合物は、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−フルオロスチレンであり、特にスチレンが好ましい。
ポリスチレン樹脂(PS)の分子量について、特に制限はないが、溶媒としてトリクロロベンゼンを用い、135℃において、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは150,000以上である。なお、分子量分布の広狭は制限されない。
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)は、PS等の芳香族ビニル重合体からなるマトリックス中に、ブタジエンゴム等からなるゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体である。HIPSは、例えば、芳香族ビニル単量体と不活性溶媒の混合液に、ゴム状重合体を溶解し、攪拌して塊状重合、懸濁重合、溶液重合等を行うことにより得ることができる。また、HIPSは、例えば、芳香族ビニル単量体と不活性溶媒の混合液にゴム状重合体を溶解して得られた重合体に、別途得られた芳香族ビニル重合体を混合した混合物であってもよい。
HIPSにおいて、芳香族ビニル重合体からなるマトリックス部分について、特に制限されないが、溶媒としてトリクロロベンゼンを用い、135℃において、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは150,000以上である。また、ゴム状重合体の平均粒子径について、特に制限はないが、一般的には0.4〜6.0μmが適当である。
上記の芳香族ビニル単量体としては、スチレン、およびその誘導体(例えば、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等)が使用できるが、スチレンが最も好適である。なお、これらの単量体の2種以上を併用してもよい。
上記のゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体等が使用できる。ポリブタジエンとしては、シス結合の含有量が高いハイシスポリブタジエン、シス結合の含有量が低いローシスポリブタジエン等が挙げられる。
これらの中でも、シス−1,4結合を90モル%以上有するハイシスポリブタジエンゴムをゴム状重合体100質量%中70質量%以上含有するポリブタジエンが好ましく使用される。
具体的には、ハイシスポリブタジエンゴムを単独使用して得られるゴム変性スチレン系樹脂、ハイシスポリブタジエンゴムとローシスポリブタジエンゴムを混合使用して得られるゴム変性スチレン系樹脂、または、ハイシスポリブタジエンゴムを使用して得られたゴム変性スチレン系樹脂とローシスポリブタジエンゴムを使用して得られるゴム変性スチレン系樹脂の混合物のいずれにおいても、ゴム変性スチレン系樹脂中に存在するゴム状重合体100質量%中に、ハイシスポリブタジエンゴムを70質量%以上含有することが好ましい。ここで、ハイシスポリブタジエンゴムとは、例えば、シス−1,4結合を90モル%以上の比率で含有するポリブタジエンゴムを意味する。ローシスポリブタジエンゴムとは、例えば、1,4−シス結合の含含有率が10〜40モル%であるポリブタジエンゴムを意味する。
アルキル(メタ)アクリレート単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体(MS)において、アルキル(メタ)アクリレート単量体は、例えば、メチル(メタ)アクリレートおよびフェニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の単量体である。特にメチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。尚、「(メタ)アクリレート」の表記は、メタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを意味する。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレンなどが使用でき、特にスチレンが好ましい。これらは1種または2種以上を用いることができる。
上記MSの質量平均分子量とメチル(メタ)アクリレート/スチレンの組成比については、特に制限されないが、質量平均分子量は、好ましくは80,000〜300,000、より好ましくは100,000〜200,000であり、メチル(メタ)アクリレート/スチレンの組成比率は、好ましくは80/20〜40/60、より好ましくは70/30〜50/50である。
シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(AS)において、シアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。また、芳香族ビニル化合物としては、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく使用できる。
AS中における各成分の割合としては、全体を100質量%とした場合、シアン化ビニル化合物の割合は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは15〜35質量%であり、芳香族ビニル化合物の割合は、好ましくは95〜50質量%、より好ましくは85〜65質量%である。
更にこれらのビニル化合物に、上記の共重合可能な他のビニル系化合物を混合してもよい。この場合、他のビニル系化合物の含有割合は、AS中15質量%以下であることが好ましい。
ASは、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合によるものである。また、共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。
ASの還元粘度は、好ましくは0.2〜1.0dL/g(20〜100mL/g)であり、より好ましくは0.3〜0.5dL/g(30〜50mL/g)である。還元粘度が0.2dL/g(20mL/g)より小さいと衝撃が低下し、1.0dL/g(100mL/g)を越えると加工性が悪くなる。
なお、還元粘度は、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物を共重合した共重合体(AS)0.25gを精秤し、ジメチルホルムアミド50mLに2時間かけて溶解させた溶液を、ウベローデ粘度計を用いて30℃の環境で測定したものである。なお、粘度計は溶媒の流下時間が20〜100秒のものを用いる。還元粘度は、溶媒の流下秒数(t)と溶液の流下秒数(t)から次式によって求められる。
還元粘度(ηsp/C)={(t/t)−1}/0.5
なお、ジエン系ゴム成分を含むシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(ABS)、エチレン−αオレフィンゴム成分を含むシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(AES)、アクリルゴム成分を含むシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(ASA)、ジエン系ゴム成分を含むアルキル(メタ)アクリレート単量体と芳香族ビニル化合物との共重合体(MBS)、ジエン系ゴム成分を含むアルキル(メタ)アクリレート単量体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体(MABS)、および、アクリルゴム成分を含むアルキル(メタ)アクリレート単量体と芳香族ビニル化合物との共重合体(MAS)は、熱可塑性の共重合体である。
本実施の形態において、ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMAS中に含まれる各種ゴム成分の割合は、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは8〜50質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、特にスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく使用できる。
更に、アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、特にメチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートが好ましく使用できる。
ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、スチレン系樹脂(A)100質量%に対して、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは50〜90質量%である。
ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMAS中において、ゴム成分は粒子状で存在する。ゴム成分の粒子径は、好ましくは0.1〜5.0μm、より好ましくは0.15〜1.5μm、特に好ましくは0.2〜0.8μmである。ここで、ゴム成分の粒子径の分布は、単一の分布であってもよく、2つ以上の複数のピークを有していてもよい。また、ゴム成分の粒子径のモルフォロジーにおいて、ゴム粒子が単一の相をなしていてもよく、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有していてもよい。
なお、ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASは、重合の際に発生するフリーの重合体成分(芳香族ビニル化合物等)を含有するものであってもよい。
ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASの還元粘度(先に記載の方法で求めた30℃での還元粘度)は、好ましくは0.2〜1.0dL/g(20〜100mL/g)、より好ましくは0.3〜0.7dL/g(30〜70mL/g)である。
また、ゴム成分にグラフトされた芳香族ビニル化合物等の割合(グラフト率)は、ゴム成分に対して、好ましくは20〜200質量%であり、より好ましくは20〜70質量%である。
また、ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASは、塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよい。特にABSは塊状重合によって製造されたものが好ましい。尚、代表的な塊状重合法としては、例えば、化学工学 48巻第6号415頁(1984)に記載された連続塊状重合法(いわゆる東レ法)、化学工学 第53巻第6号423頁(1989)に記載された連続塊状重合法(いわゆる三井東圧法)などが挙げられる。
本実施の形態において、ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASは、いずれもスチレン系樹脂(A)として好適に使用することができる。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASに、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分等とを別途共重合して得たビニル化合物重合体をブレンドしてなる樹脂も、スチレン樹脂(A)として好ましく使用できる。
AS、ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASについては、良好な熱安定性や耐加水分解性などの点から、アルカリ(土類)金属の含有量が少ないことが好ましい。スチレン系樹脂(A)中のアルカリ(土類)金属の含有率は、好ましくは100ppm未満であり、より好ましくは80ppm未満であり、更に好ましくは50ppm未満であり、特に好ましくは10ppm未満である。このように、アルカリ(土類)金属の含有量を少なくする観点からも、塊状重合法が好適に使用される。
かかる良好な熱安定性や耐加水分解性に関連して、ASおよびABS等において乳化剤を使用する場合、該乳化剤は好適にはスルホン酸塩類であり、より好適にはアルキルスルホン酸塩類である。また凝固剤を使用する場合、該凝固剤は硫酸または硫酸のアルカリ土類金属塩が好適である。
ABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMASに含まれるゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、エチレンとプロピレンとの非共役ジエンターポリマー、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムなどが挙げられる。
ジエン系共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体などが挙げられる。
エチレンとα−オレフィンとの共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体などが挙げられる。
エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体としては、例えば、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体などが挙げられる。
エチレンとプロピレンとの非共役ジエンターポリマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などが挙げられる。
アクリル系ゴムとしては、例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体などが挙げられる。
シリコーン系ゴムとしては、例えば、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなるIPN型ゴム(すなわち、2つのゴム成分が分離できないように相互に絡み合った構造を有しているゴム)、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリイソブチレンゴム成分からなるIPN型ゴムなどが挙げられる。
上記ゴム成分は、好ましくは、ポリジエンゴム(ポリブタジエンなど)、アクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレンゴムから成る群から選択される。ゴム成分のガラス転移温度は、例えば、典型的には、アクリルゴムについては−10℃〜−20℃であり、エチレンープロピレンゴムについては−50℃〜−58℃であり、ブタジエンゴムについては約−100℃である。
本実施の形態で使用されるABS、AES、ASA、MBS、MABSおよびMAS中のゴム成分の含有率は、4質量%〜25質量%であることが好ましい。ゴム成分の含有率は、例えば、共重合時のゴム成分の量を調整することにより調整できる。また、例えば、ゴム成分を含有する芳香族ビニル共重合体と、ゴム成分を含有しない芳香族ビニル重合体または共重合体とを混合することにより、ゴム成分の含有率を調整することも可能である。
<親水性コポリマー(B)>
親水性コポリマー(B)は、ポリオキシエチレン鎖を有する。ポリオキシエチレン鎖は親水性セグメントとして機能するため、ポリオキシエチレン鎖を有することで、帯電防止性能を発現し、親水性の粉塵汚れの付着を抑制する効果を発現する。
親水性コポリマー(B)としては、例えば、ポリオレフィンとポリオキシエチレン鎖を有する親水性ポリマーとが繰り返し交互に結合してなる親水性コポリマー(B1)、ポリエーテルエステルアミド等が挙げられる。
親水性コポリマー(B)は、上記の親水性コポリマー(B1)を含むことが好ましい。なお、親水性コポリマー(B1)は、言い換えれば、ポリオレフィン由来の複数のブロックと、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性ポリマー由来の複数のブロックと、を交互に有するコポリマーである。親水性コポリマー(B1)を用いることで、更に熱可塑性樹脂組成物(成形品)の防汚効果が高まる。
ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)(特に、上記の親水性コポリマー(B1))は、スチレン系樹脂(A)と混合すると他の親水性ポリマーや帯電防止剤と比較して、熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の表面に集まりやすいという特徴がある。すなわち、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)は、他の親水性ポリマーや帯電防止剤と比較して、成形品の内部に埋没せずに表面に存在する量が多い。従って、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)の添加量に対して効率的に防汚効果が発揮される。このため、同等の防汚性能を得るために必要な親水性コポリマー(B)の添加量は、他の親水性ポリマーよりも少なくてもよい。
ポリオレフィンとポリオキシエチレン鎖を有する親水性ポリマーとが繰り返し交互に結合してなる親水性コポリマー(B1)は、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報に記載されるように、ポリプロピレンまたはポリエチレンを酸変性し、これにポリアルキレングリコールを反応させる方法で得ることができる。
また、ポリエーテルエステルアミドは、ポリオキシエチレン鎖を親水性セグメントとして有するブロック型コポリマーであり、例えば、特開昭49−8472号公報、特開平6−287547号公報に記載の方法で得ることができる。
ポリオキシエチレン鎖の質量平均分子量は、耐熱性やポリオレフィン鎖との反応性の観点から1,000〜15,000が好ましい。
本実施の形態の親水性コポリマー(B)は、熱可塑性樹脂組成物中に分散することにより親水性の粉塵汚れに対する付着抑制効果を発現するため、親水性コポリマー(B)自体の表面抵抗値は通常できるだけ低い方が好ましい。親水性コポリマー(B)の表面抵抗値は、好ましくは1×10〜1×1010Ωであり、より好ましくは1×10〜1×10Ωである。
親水性の粉塵汚れに対する付着抑制効果を向上させる目的で、熱可塑性樹脂組成物は、上述した親水性ポリマー以外の他の帯電防止剤をさらに含んでいてもよい。他の帯電防止剤としては、例えば、界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等)、イオン性液体などが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)は、別の格別な効果も有している。
両性(親水性および疎水性)の防汚性を得るためには、親水性コポリマー(B)と後述する脂肪酸金属塩(C)の両方が必要であるが、脂肪酸金属塩(C)は親水性コポリマー(B)と比較して分子量が小さく、スチレン系樹脂(A)との絡み合いも少ないため、成形品の表面から脱落したり、劣化したりする可能性がある。しかし、親水性コポリマー(B)が成形品の表面に多く存在し、帯電防止効果により親水性の粉塵汚れの付着を防止する親水性コポリマー(B)の親水基に、脂肪酸金属塩(C)の親水基が付着することによって、脂肪酸金属塩(C)が脱落することなく表面に安定的に存在することができる。
脂肪酸金属塩(C)の親水基の逆側には、脂肪酸金属塩(C)の非極性の疎水基であるRがあるため、疎水性の粉塵汚れに対する高い付着抑制効果という、親水性コポリマー(B)だけでは得られない新たな効果が得られる。
つまり、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)と脂肪酸金属塩(C)とが、共に成形品の表面に存在し、互いに相乗効果を発揮することで、両性の粉塵汚れに対する高い付着抑制効果(防汚性)が発揮されている。
<脂肪酸金属塩(C)>
脂肪酸金属塩(C)は、下記式(1)で表される化合物である。

M(OH)y(R−COO)x ・・・(1)

(式(1)中、Rは、炭素数6〜40のアルキル基またはアルケニル基である。Mは、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、リチウムおよびバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素である。xおよびyはそれぞれ独立な0以上の整数であり、x+y=[Mの価数]の関係を満たす。)
添加物として、上記の親水性ポリマーや帯電防止剤を用いるだけでは、親水性の粉塵汚れの付着抑制効果は得られるが、一方で疎水性の粉塵汚れの付着抑制効果が低く、後述する比較例では疎水性の粉塵汚れの付着量は半分以下にもならないため、新たな手段が必要である。
また、一般的に撥水や撥油効果が得られる添加剤としては、シリコーンオイル、PTFEなどのフッ素樹脂、フュームドシリカなどの疎水性シリカなどがあるが、いずれの添加物も疎水性の粉塵汚れの付着抑制効果も得られなかった。これは、樹脂に添加した場合には、樹脂内部に埋没してしまって、上記の添加剤が表面にでてこないためである。表面に高い濃度で存在することができて、かつ、疎水性や撥水撥油性を持つ材料として、脂肪酸金属塩(C)をスチレン系樹脂(A)と親水性コポリマー(B)と一緒に配合することで課題を解決できる。
本実施の形態で使用される脂肪酸金属塩は、式(1)で示される脂肪酸金属塩である。

M(OH)y(R−COO)x ・・・(1)

(式(1)中、Rは、炭素数6〜40のアルキル基またはアルケニル基である。Mは、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、リチウムおよびバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素である。xおよびyはそれぞれ独立な0以上の整数であり、x+y=[Mの価数]の関係を満たす。)
式(1)において、Rの炭素数は、6〜40であり、好ましくは11〜27であり、更に好ましくは15〜20である。Rの炭素数が6より小さい場合、または、炭素数が40よりも大きい場合、何れも粉塵の付着を防止する効果が小さくなり好ましくない。また、Rは、アルキル基またはアルケニル基であり、好ましくはアルキル基である。
一般に石油・鉱油よりも水との接触角が高いと撥水撥油性があるとされ、水との接触角が90度よりも高いと疎水性だとされている。脂肪酸金属塩(C)はこれに該当する。
(金属元素M)
式(1)において、Mは、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、リチウムおよびバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素である。
Mは、アルミニウムおよび亜鉛から選択される少なくとも1種の金属元素であることが好ましい。この場合、熱可塑性樹脂組成物は、より高い防汚性能を発揮することができる。また、Mは、アルミニウムであることがより好ましい。この場合、熱可塑性樹脂組成物は、更に高い防汚性能を発揮することができる。
図3を参照して、Mのイオン半径が小さい場合(図3(a1),(a2))は、Mのイオン半径が大きい場合(図3(b1),(b2))に比べて、熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の表面に脂肪酸金属塩の非極性基(疎水基)を密に配列できるからである。疎水基が密になると、疎水性の粉塵汚れの付着抑制効果が高まる。Mのイオン半径は、それぞれ、アルミニウムは54、亜鉛は74、カルシウムは100、バリウムは135であり、アルミニウムが最も小さく、次に亜鉛が小さい。このため、防汚効果が高めるために、金属元素Mとしては、アルミニウムが最も最適であり、次に亜鉛が好ましい。
(脂肪酸)
本実施の形態の脂肪酸金属塩(C)を構成する脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。脂肪酸は、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの長鎖脂肪酸(炭素数12以上の脂肪酸)であることが好ましい。特に、ステアリン酸は、入手し易く安価なため製造にはより好ましい。
脂肪酸金属塩(C)としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、トリステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸(ジヒドロキシ)アルミニウム、ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、2−エチルヘキサン酸アルミニウムなどが挙げられる。脂肪酸金属塩(C)は、好ましくは、ステアリン酸亜鉛、トリステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸(ジヒドロキシ)アルミニウム、および、ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウムであり、更に好ましくは、ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウムである。なお、脂肪酸金属塩(C)は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、および、ステアリン酸バリウムは、平滑性と高度の撥水性を有し、表面自由エネルギーが低い(約21.2mN/m)という特徴を有する。表面自由エネルギーが低い材質は、フッ素樹脂(表面自由エネルギー:約21.5mN/m)のように表面状態が安定であるため、汚れが付着しにくい。熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の表面に、表面自由エネルギーが低いステアリン酸アルミニウムの層ができることで、カーボンブラック、煤、油煙などの疎水性の粉塵汚れの付着を防止する効果が発現する。また、表面自由エネルギーが低くなることで、ホコリ、砂塵、土などの親水性の粉塵汚れも付着しにくくなる。したがって、熱可塑性樹脂組成物に配合された親水性コポリマー(B)による除電効果に加えて、さらに疎水性の粉塵汚れおよび親水性の粉塵汚れに対する防汚性が向上する。
(価数)
式(1)において、xおよびyはそれぞれ独立な0以上の整数であり、x+y=[Mの価数]の関係を満たす。
Mの価数が1の場合、yは0となるが、Mの価数が2以上の場合、yは0または1以上の整数となる。Mの価数が3以上の場合、yは1であることが好ましい。この場合、熱可塑性樹脂組成物は、より高い防汚性能を発揮することができる。
一例として、Mの価数が3であるアルミニウムの長鎖脂肪酸塩であるステアリン酸アルミニウムについて説明する。
ステアリン酸アルミニウムとしては、1つのステアリン酸を含むモノタイプのモノステアリン酸アルミニウム〔Al(C1735COO)(OH)〕、2つのステアリン酸を含むジタイプのジステアリン酸アルミニウム〔Al(C1735COO)(OH)〕、および、3つのステアリン酸を含むトリタイプのトリステアリン酸アルミニウム〔Al(C1735COO)〕がある。
図4を参照して、トリステアリン酸アルミニウムは、非極性基の量が多いために成形品の表面に移行しにくく(図4(a))、更に不安定な物質であるため空気中の水分により加水分解して、モノステアリン酸アルミニウムまたはジステアリン酸アルミニウムとの混合物となりやすい。従って、ジステアリン酸アルミニウムの場合の方が、成形品の表面に移行しやすく(図4(b))、トリステアリン酸アルミニウムよりも両性の粉塵抑制効果が高い。なお、Mの価数が3より多い場合においても、同様に、トリタイプより脂肪酸の数が少ないジタイプの脂肪酸金属塩の方が、両性の粉塵抑制効果が高い。
他方、モノステアリン酸アルミニウムは、ジステアリン酸アルミニウムに比べて、アルミニウムの数が同じ場合に、非極性基(疎水基)であるRの数が少なくなる(図4(c))。従って、ジステアリン酸アルミニウムの場合の方が、モノステアリン酸アルミニウムよりも両性の粉塵抑制効果が高い。
なお、実際に飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて成形品の表面近傍を測定すると、ステアリン酸に由来するC1835 が二次イオンとして検出された。TOF−SIMSの検出深さは一般的に1〜2nmとされているため、成形品の最表面にステアリン酸が存在することが確認できた。
ポリスチレン分析時の主要ピークであるCのイオン強度を基準としたときのC1835 の二次イオン強度比は、ジステアリン酸アルミニウムを用いた成形品の場合は0.341であり、モノステアリン酸アルミニウムを用いた成形品の場合(0.0687)およびトリステアリン酸アルミニウムを用いた成形品の場合(0.172)に比べて、2倍〜4倍以上であった。従って、y=1であるジステアリン酸アルミニウムを用いた成形品では、表面に非極性基(疎水基)が多く存在しており、粉塵抑制効果を最も発現しやすい。
なお、前述したMの価数が3以上の場合と同様の理由から、Mの価数が2である場合も、ジタイプの脂肪酸金属塩の方がモノタイプの脂肪酸金属塩よりも両性の粉塵抑制効果が高い。従って、Mの価数が2である場合、yは0(xは2)であることが好ましい。
<スチレン系熱可塑性エラストマー(D)>
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー(D)は、下記一般式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。

X−(Y−X)n …(I)

(X−Y)n …(II)

一般式(I)および(II)において、Xは芳香族ビニル重合体ブロックであり、YはXとは異なる重合体ブロックである。nは1以上の整数である。なお、一般式(I)において、各ブロックで重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、「芳香族ビニル重合体ブロック」とは、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体からなるブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックは、例えば、ビニル芳香族炭化水素とそれ以外の重合成分との共重合体からなるブロック、または、ビニル芳香族炭化水素のみの重合体からなるブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックが、ビニル芳香族炭化水素とそれ以外の重合成分との共重合体からなるブロックである場合、ビニル芳香族炭化水素の比率が60質量%以上であることが好ましい。
ビニル芳香族炭化水素の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、スチレン、p−メチルスチレンが好ましい。これらは1種または2種以上を用いることができる。
一般式(I)または(II)において、Yとしては、例えば、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロック、および、部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記一般式(I)または(II)で表されるブロック共重合体の具体例としては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブテン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン−水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体、スチレン−イソプレンジブロック共重合体等が挙げられる。その中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体が最も好適である。
スチレン系熱可塑性エラストマー(D)は、スチレン系熱可塑性エラストマーを不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性することによって得られる変性スチレン系熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、不飽和ジカルボン酸、不飽和モノカルボン酸などが挙げられる。
不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、酸ハライド化合物、アミド化合物、イミド化合物、エステル化合物などが挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、塩化マレニル、マレイミド、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体の中でも、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、マレイン酸またはその酸無水物がより好ましく、マレイン酸の酸無水物(無水マレイン酸)がさらに好ましい。
不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物は、相溶化剤として機能するため、親水性コポリマー(B)が広く分散して、強度改善とは別の効果として、粉塵汚れの付着抑制効果が向上する。
また、不飽和カルボン酸またはその誘導体が、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物である場合、他の不飽和カルボン酸またはその誘導体である場合に比べて、色相がよくなる効果も得られる。
また、不飽和カルボン酸またはその誘導体が、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物である場合、他の不飽和カルボン酸またはその誘導体である場合に比べて、少ない添加量で高い粉塵汚れの付着抑制効果(防汚効果)が得られる。さらに、不飽和カルボン酸またはその誘導体が、マレイン酸またはその酸無水物である場合、より高い防汚効果が得られる。さらに、不飽和カルボン酸またはその誘導体が、マレイン酸の酸無水物である場合、親水性ブロックポリマー(B)の分散性が良く、防汚効果が最も高い。
スチレン系熱可塑性エラストマーのグラフト変性物(基変性物)は、例えば、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックと、を含むブロック共重合体を、酸無水物基含有化合物およびパーオキサイド化合物と混合することにより調製された組成物を、1軸または2軸押出機に供給し、加熱溶融し、混練りすることによって得ることができる。なお、混合は、例えば、混練機(ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等)、混合機(リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等)などで行うことができる。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーへの酸無水物基の付加量は、例えば、赤外分光分析法により、1790cm−1付近の酸無水物基由来の吸収に基づいて検量線法によって求めることができる。
酸無水物基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマーにおいて、酸無水物基の好ましい付加率は、0.5〜5質量%である。0.5〜5質量%の範囲の場合、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の色相が良好な傾向が認められる。
スチレン系熱可塑性エラストマー中の、ゴム成分の含有率は、通常、75〜25質量%である。スチレン系熱可塑性エラストマー(D)は、1種類以上を選択して使用することができる。スチレン系熱可塑性エラストマーを2種類以上使用する場合は、それらの構成成分が同一であっても、異なっていてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの質量平均分子量は、好ましくは25万以下、より好ましくは20万以下、さらに好ましくは15万以下である。質量平均分子量が25万を超えると、相溶性改良効果が低下する場合がある。また、質量平均分子量の下限については特に限定されないが、質量平均分子量は、好ましくは4万以上、より好ましくは5万以上である。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定することにより、算出することができる。
<各成分の含有量>
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物において、親水性コポリマー(B)の配合量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部であり、更に好ましくは1〜17質量部である。
また、脂肪酸金属塩(C)の配合量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部であり、更に好ましくは1〜8質量部である。
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)の配合量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部であり、更に好ましくは1〜15質量部である。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、特に、スチレン系樹脂(A)100質量部と、親水性コポリマー(B)1〜20質量部と、脂肪酸金属塩(C)0.5〜10質量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)0.5〜20質量部と、を含有することが好ましい。
脂肪酸金属塩(C)は、一般的には0.5質量%以下(特に、0.1%程度)で成形性改善のための滑剤、離型剤等として熱可塑性樹脂組成物に配合される場合があるが、0.5質量%より多くの脂肪酸金属塩(C)を配合することで、成形品の表面に親水性コポリマー(B)と脂肪酸金属塩(C)との両方を高濃度で存在させる作用が発揮され、更に両性の防汚効果が向上する。
親水性コポリマー(B)の配合量が20質量部を超える場合は、弾性率などの機械強度が低下するようになり、1質量部未満の場合は、粉塵の付着抑制効果の低下が認められるようになる。
脂肪酸金属塩(C)の配合量が10質量部を超える場合は、耐熱性、耐衝撃性が低下するようになり、0.5質量部未満の場合は、粉塵の付着抑制効果の低下が認められるようになる。
前述したように一般的に脂肪酸金属塩(C)は、本実施の形態の目的である親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れの両性の粉塵汚れの付着抑制、とは異なる目的で使用されることがある。それは、例えば、特開2004−168055公報、特開2003−183529公報等に開示されるように、滑剤、成形改良剤、離型剤、くもり防止剤等として使用される。この場合、脂肪酸金属塩(C)の配合量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、0.5質量部未満である。更に、一般的な製造業に関わる使い方では0.1質量部以下である。また、脂肪酸金属塩(C)の粉塵付着抑制の効果はこれまで知られていない。
本実施の形態では、従来の使い方とは全く異なる目的として、親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れの両方の付着抑制効果を得るため、一般的に使用される量よりも脂肪酸金属塩(C)の配合量を十分に多くし、それによって初めて両性の粉塵汚れに対する顕著な付着抑制効果が得られることを見出した。したがって、脂肪酸金属塩(C)の配合量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1〜8質量部である。この場合、成形品の表面を粉塵抑制コーティングしたものと同等以上の良好な粉塵抑制効果が得られる。粉塵抑制を目的として、熱可塑性樹脂100質量部に対して脂肪酸金属塩(C)を1質量部以上配合した例は、これまで知られていない。
脂肪酸金属塩の空気中に向いた非極性の疎水基であるRによって、疎水性の粉塵汚れの付着抑制という新たな効果を得ている。脂肪酸金属塩(C)をスチレン系樹脂(A)に対して0.5質量%以上添加することで、多くの疎水基を熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の表面に密に配置することができ、疎水性の粉塵汚れの付着抑制効果が高まる。
後述するように、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)の帯電防止効果によって親水性の粉塵汚れの付着抑制効果が高まり、脂肪酸金属塩(C)を併せて配合することで疎水性の粉塵汚れの付着抑制効果が高まり、両性の汚れに強い新たな効果が得られる。
従って、スチレン系樹脂(A)単独よりも、スチレン系樹脂(A)と親水性コポリマー(B)とを含む組成物は粉塵汚れの付着抑制効果(防汚効果)が高く、スチレン系樹脂(A)と親水性コポリマー(B)と脂肪酸金属塩(C)とを含む組成物は更に粉塵汚れの付着抑制効果が高い。
スチレン系熱可塑性エラストマー(D)の配合量が、0.5質量部未満である場合は、スチレン系樹脂(A)への親水性コポリマー(B)成分の分散性向上効果が低下し、防汚効果、衝撃強度改良効果、熱安定性改良効果等の低下が認められる場合がある。また、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)を20質量部を超えて配合しても、それ以上の分散性向上効果は認められず、弾性率の低下が認められるようになる。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と、親水性コポリマー(B)と、脂肪酸金属塩(C)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)と、を含有することで、両性の粉塵汚れに対する付着抑制効果が得られるだけでなく、更に衝撃強度改良効果(耐衝撃性等の機械的強度の維持効果)を得ることができる。
<任意成分>
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、任意成分として、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、防黴剤、無機充填材などの成分を含んでいてもよい。
(熱安定剤)
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、製造時等の熱安定性を向上するために、熱安定剤を含んでいてもよい。
熱安定剤としては、リン系安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましく、これらを併用することがより好ましい。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物中のリン系安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は特に制限されない。
熱安定性の向上効果が効果的に得られ、かつ、上記の各必須成分の配合量に影響を与えないことから、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.6質量部である。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、およびこれらのエステル、ホスホナイト化合物および、第3級ホスフィン等が挙げられる。
亜リン酸エステル(ホスファイト化合物)としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
亜リン酸エステル(ホスファイト化合物)としては、上記の他、二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。
例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、および2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
リン酸エステル(ホスフェート化合物)としては、トリフェニルホスフェート、およびトリメチルホスフェート等が挙げられる。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
ホスホナイト化合物は、アルキル基を2以上置換したアリール基を有する上記のホスファイト化合物との併用可能であり、好ましい。
ホスホン酸エステル(ホスホネイト化合物)としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記リン系安定剤の中でも、ホスホナイト化合物、もしくは下記一般式(2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
Figure 0006861763
(式(2)中、RおよびR’は炭素数6〜30のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
上記の如く、ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
上記式(2)の中でもより好適なホスファイト化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
ヒンダードフェノール化合物としては、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は必要に応じて、リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤以外のその他の熱安定剤を含むことができる。
他の熱安定剤は、リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一方と併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。
他の熱安定剤としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(この安定剤の詳細については特開平7−233160号公報を参照されたい)が挙げられる。
上記ラクトン系安定剤に関しては、Irganox HP−136(登録商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)等が市販されている。
上記ラクトン系安定剤、ホスファイト化合物、およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤として、Irganox HP−2921(登録商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)等が市販されている。
ラクトン系安定剤の添加量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.05質量部、より好ましくは0.001〜0.03質量部である。
その他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート等のイオウ含有安定剤が挙げられる。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物中のリン系安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の安定剤の添加量は特に制限されず、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.08質量部、特に好ましくは0.001〜0.05質量部である。
(紫外線吸収剤)
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム成分等の影響によって耐候性に劣る場合があることから、耐候性を向上するために紫外線吸収剤の配合は有効である。
本実施の形態の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤、環状イミノエステル系の紫外線吸収剤、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルなどが挙げられる。他のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体が例示される。2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や、2−(2’−ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などが挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが挙げられる。さらに、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記で例示した化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基に置換された化合物が例示される。
環状イミノエステル系の紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては、例えば、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
さらに、紫外線吸収剤は、紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合してなるポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルであって、エステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記の中でも、紫外線吸収能の点では、ベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましく、耐熱性や色相(透明性)の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤が好ましい。上記紫外線吸収剤は、単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部を基準として、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.02〜2質量部、さらに好ましくは0.03〜1質量部、特に好ましくは0.05〜0.5質量部である。
(光安定剤)
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、光安定剤を含有してもよい。本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、暗所黄変を起こす場合があることから、かかる劣化を防止するため光安定剤の配合は有効である。
かかる光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を好適に用いることができる。HALSは、例えば、以下の一般式(3)〜(6)で示される化合物、およびこれらの化合物の2種以上の組み合わせである。
Figure 0006861763
Figure 0006861763
Figure 0006861763
Figure 0006861763
一般式(3)〜(6)中、R〜Rは、独立した置換基である。
上記置換基としては、例えば、水素、エーテル基、エステル基、アミン基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、およびアリール基が挙げられる。
これらの置換基は、官能基を含有していてもよい。当該官能基としては、例えば、アルコール、ケトン、無水物、イミン、シロキサン、エーテル、カルボキシル基、アルデヒド、エステル、アミド、イミド、アミン、ニトリル、エーテル、ウレタン、および、これらの組み合わせが挙げられる。
ヒンダードアミン光安定剤(HALS)としては、置換ピペリジン化合物から誘導される化合物が好ましく、アルキル置換ピペリジル、ピペリジニルまたはピペラジノン化合物、および置換アルコキシピペリジニル化合物から誘導される化合物がより好ましい。
ヒンダードアミン光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール;ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート;ジ−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート;N−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとコハク酸のオリゴマー;シアヌル酸とN,N−ジ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレンジアミンのオリゴマー;ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)スクシネート;ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート;ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート;テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサン−1,6−ジアミン;N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン;2,2'−[(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニル)−イミノ]−ビス−[エタノール];ポリ((6−モルホリン−S−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ);5−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−シクロ−ウンデシル−オキサゾール);1,1'−(1,2−エタン−ジ−イル)−ビス−(3,3',5,5'−テトラメチル−ピペラジノン);8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ(4.5)デカン−2,4−ジオン;ポリメチルプロピル−3−オキシ−[4(2,2,6,6−テトラメチル)−ピペリジニル]シロキサン;1,2,3,4−ブタン−テトラカルボン酸−1,2,3−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−4−トリデシルエステル;α−メチルスチレン−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)マレイミドとN−ステアリルマレイミドとのコポリマー;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−β,β,β',β'−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールと1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルエステルとのコポリマー;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルエステルとのβ,β,β',β'−テトラメチル−ポリマー;D−グルシトール、1,3:2,4−ビス−o−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルイデン)−;7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンエイコサン−21−オン−2,2,4,4−テトラメチル−20−(オキシラニルメチル)のオリゴマー;プロパン二酸、[(4−メトキシフェニル)メチレン]−,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル;ホルムアミド、N,N'−1,6−ヘキサンジイルビス[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル;1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N,N'''−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]−ビス[N',N''−ジブチル−N',N''−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル);ポリ[[6−[(1,1,3,33−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]];1,5−ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン3,3−ジカルボン酸,ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル;1,5−ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン3,3−ジカルボン酸,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル;N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノ−オキサミド;4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン;1,5,8,12−テトラキス[2',4'−ビス(1'',2'',2'',6'',6''−ペンタメチル−4''−ピペリジニル(ブチル)アミノ)−1',3',5'−トリアジン−6'−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン;3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ピロリジン−2,5−ジオン;1,1'−(1,2−エタン−ジ−イル)−ビス−(3,3',5,5'−テトラ−メチル−ピペラジノン);1,1'1''−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル)トリス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン);1,1',1''−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル)トリス(3,3,4,5,5−テトラメチルピペラジノン)などが挙げられる。
かかるヒンダードアミン光安定剤(HALS)の添加量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し好ましくは、0.01〜5質量部、更に好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜1質量部である。
(抗菌剤)
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、抗菌剤を含んでいてもよい。抗菌剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属を、結晶性アルミノケイ酸塩、無定形アルミノケイ酸塩、シリカゲル、活性アルミナ、けいそう土、活性炭、リン酸ジルコニウム、ヒドロキシアパタイト、酸化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、ガラス等に担持してなる無機系抗菌剤が挙げられる。抗菌性金属としては、酸化亜鉛が好ましい。
酸化亜鉛は、特に限定されるものでなく、市販されているものであってもよく、例えば、金属亜鉛を熱して気化させ、空気中で燃焼させたものや、硫酸亜鉛または硝酸亜鉛を加熱して調製されたものであってもよい。また、酸化亜鉛としては、例えば、繊維状、板状、粒子状、テトラポッド状などの各種形状のものが使用できる。本実施の形態に用いる酸化亜鉛は、酸化ケイ素、シリコーンオイル、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物などで表面処理されていてもよい。
市販されている酸化亜鉛としては、例えば、JIS K−1410で区分される「1種酸化亜鉛」、「2種酸化亜鉛」、「3種酸化亜鉛」や、日本薬局方に規定された局方酸化亜鉛、水熱合成工程を経て調製した異方性(柱状、板状、テトラポット状)の酸化亜鉛(形状異方性を有する酸化亜鉛)が挙げられる。これらの酸化亜鉛の内、平均粒径が50〜200nmの粒子状酸化亜鉛が好ましく、特に100〜150nmの粒子状酸化亜鉛が好ましい。ここで言う平均粒径とは、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定して得られた粒度分布において、積算質量分布が50%となる粒径である。
酸化亜鉛の配合量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部、更に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
(無機充填材)
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、剛性を付与し強度を向上する目的で強化フィライーとして、無機充填剤を含んでいてもよい。
無機充填材としては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、セラミックバルーン、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムなどの各種ウイスカーなどが挙げられる。なかでも、タルク、ワラストナイト、マイカ、ガラス繊維、ガラスミルドファイバーなどのケイ酸塩系の充填材が好ましく使用される。なかでも特に好ましいのは、タルク、ワラストナイトおよびマイカである。
無機充填材を配合する場合、本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物には、無機充填材の濡れ性を向上するためカルボン酸無水物基、スルホン酸基などの酸性基を含んだ添加剤などを含むことができる。
本実施の形態における無機充填材の含有量は熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。かかる配合量が0.1質量部未満では充填材の補強効果が無く、30質量部を超えると衝撃強度が著しく低下するため好ましくない。
(他の任意成分)
本実施の形態で使用可能な他の任意成分としては、着色の為の染料、顔料、消泡剤、可塑剤、滑剤、離型剤および難燃剤等を挙げることができる。更には、スチレン系樹脂(A)、親水性コポリマー(B)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(D)以外の熱可塑性樹脂を本実施の形態の目的を損なわない範囲で配合することも可能である。
このような熱可塑性樹脂としては、汎用樹脂として家電やOA機器で用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、
オレフィン系樹脂である、ポリオレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等)、環状オレフィン系樹脂、および、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、
スチレン系樹脂である、ポリスチレン(PS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS樹脂)、および、アクリロニトリルスチレン(AS樹脂)、
ABS樹脂のブタジエンに代替しアクリルゴムを重合させたASA樹脂、
ABS樹脂のブタジエンに代替しエチレン系ゴムを重合させたAES樹脂、
メチルメタクリレートブタジエンスチレン(MBS樹脂)などが挙げられる。
その他の汎用樹脂の例として、ポリ塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等)、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)が挙げられる。
また、特に強度に優れ、耐熱性のような機能が強化されているエンジニアリングプラスチックの例として、ポリカーボネート樹脂(BPA型ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等)、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE樹脂)、ポリオキシメチレン樹脂(ポリアセタール等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂を本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物の原料として、単独で用いても良いし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。複数の樹脂とは、例えば、PC/ABS、PC/ASなどのポリマーアロイである。このようなポリマーアロイは、ポリカーボネート(PC樹脂)とスチレン系樹脂(ABS樹脂やAS樹脂など)の両方の特長を兼ね備えており、電気・電子関係、OA機器、照明器具、精密機械、自動車部品、家庭用品など幅広い分野で使用される。
上記樹脂(A)やポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)に比べて、脂肪酸金属塩(C)は分子量が低いため、いずれの樹脂を原料に用いても、脂肪酸金属塩(C)は、成形品の表面に露出しやすいため、種々の樹脂を熱可塑性樹脂組成物に配合することが可能である。
なお、図6を参照して、脂肪酸金属塩(C)と親水性コポリマー(B)とは、成形時の溶融粘度が異なる。成形時には、金型内に射出された樹脂(A)がはじめに固まり、次に親水性コポリマー(B)が固まり、その次に分子量が低い脂肪酸金属塩(C)が固まっていく。つまり、上記樹脂(A)に比べて、親水性コポリマー(B)および脂肪酸金属塩(C)の方が、固化速度が遅いため、成形品の表面に露出しやすい傾向がある。このように、親水性コポリマー(B)および脂肪酸金属塩(C)は、上記樹脂(A)と成形時の溶融粘度が異なるため、樹脂(A)に配合することができる。
一方、例えば、融点が高く(例えば、約320℃以上)、極性が極めて高い樹脂原料は、分散が難しいため、所望の粉塵抑制効果が得られにくい。つまり、親水性コポリマー(B)および脂肪酸金属塩(C)は、上記の樹脂(A)よりも、成形品の表層近傍に集まりやすいため、粉塵抑制効果が発現されやすい。
逆に、融点が約320℃以上など高くて、極性が極めて高い樹脂原料であると、分散が難しいため、所望の粉塵抑制効果が得られにくい。
つまり、上記の樹脂(A)よりも、親水性コポリマー(B)および脂肪酸金属塩(C)は、成形品の内部よりも表層近傍に集まりやすいため、粉塵抑制効果が発現されやすい。
さらに、低分子量の脂肪酸金属塩(C)の極性基と、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)とが親和性を有している。このため、親水性コポリマー(B)が脂肪酸金属塩(C)に付着することにより、親水性コポリマー(B)および脂肪酸金属塩(C)は、脱離が防止され、成形品の表層近傍に多量に存在することができる。したがって、親水性と疎水性の両方の粉塵汚れに対して付着抑制効果が発現されやすい。
実施の形態2.
本実施の形態に係る成形品は、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる。本実施の形態に係る成形品では、上記の熱可塑性樹脂組成物からなることにより、親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れとの両方の付着を抑制する効果が奏される。
本実施の形態に係る成形品においては、成形品の表面付近(表面から一定の深さまでの部分)における脂肪酸金属塩(C)の濃度(熱可塑性樹脂組成物中の含有率)が、成形品の内部(表面から一定の深さより深い部分)における脂肪酸金属塩(C)の濃度よりも高いことが好ましい。具体的には、例えば、成形品の表面から10nm以内の部分における脂肪酸金属塩(C)の濃度が、成形品の表面から10nmより深い部分における脂肪酸金属塩(C)の濃度よりも高いことが好ましい。
このような、成形品の深さ方向における脂肪酸金属塩(C)の濃度の違いは、例えば、Arイオンで成形品の表面を削っていきながら、各々の深さまで削られた状態の成形品の表面に対して、X線光電子分光法(XPS)を用いて金属元素Mの元素分析(金属元素Mの面積比率の測定)を行うことにより、確認することができる(図2参照)。
例えば、図1に示されるように、成形品の表面から10nm以内の部分(測定深さA)について、各々の深さにおける脂肪酸金属塩(C)の濃度(金属元素Mの面積比率)を測定し、その中で最も高い濃度を求める。一方、図1中に点線で示される成形品の厚みLの半分の深さ(L/2:測定深さB)に脂肪酸金属塩(C)の濃度を測定する。これらの濃度の測定値を比較することにより、成形品の深さ方向における脂肪酸金属塩(C)の濃度の違いを確認することができる。
例えば、実施例で後述する両性への防汚効果のある成形品のサンプル(試験片)では、表面から10nm以内の部分での脂肪酸金属塩(C)の濃度は、成形品の表面から10nmより深い部分における脂肪酸金属塩(C)の濃度の2倍以上であった。具体的な一例では、表面から10nm以内の部分での脂肪酸金属塩(C)の濃度は、最大3.2質量%であり、成形品の表面から10nmより深い部分における脂肪酸金属塩(C)の濃度は、約0.3質量%〜0.6質量%であり、前者は後者の約5〜10倍であった。
脂肪酸金属塩(C)では、Rの部分が非極性基、残りの部分が極性基である。成形中には、金型に極性基が付着し、熱可塑性樹脂組成物の内部側に非極性基を向けた状態で、脂肪酸金属塩(C)が整列すると考えられる。更に、成形後に、熱可塑性樹脂組成物の内部に溶融していた他の脂肪酸金属塩(C)が表面に移行する。
また、脂肪酸金属塩(C)は、樹脂との相溶性が低いため、臨界溶解度(濃度)以上の量が配合されると、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の表面に拡散される。熱可塑性樹脂組成物の表面近傍では、複数の脂肪酸金属塩(C)がそれぞれの極性基同士で結合し、成形品の外側(空気側)に非極性基である疎水基Rを向けて配列すると考えられる。
従って、成形品の表面近傍では、熱可塑性樹脂組成物中の脂肪酸金属塩(C)の濃度が成形品の内部に比べて高くなり、粉塵汚れが付着する成形品の表面において、効率的に表面エネルギーの低減や撥水撥油効果を得ることができる。結果として、脂肪酸金属塩(C)を一般的な用途である滑剤、離型剤等として使用する場合とは異なり、成形品の表面において疎水性の粉塵汚れの付着を抑制するという新たな効果が得られる。
実施の形態3.
本実施の形態の製品は、上記の成形品を備える。すなわち、上記の成形品は、例えば、家電製品、OA機器等の製品の樹脂製部品(内部部品、ハウジング等)として用いられる。本実施の形態の製品では、上記の成形品を備えることにより、清潔性の向上とメンテナンス頻度の削減の効果が奏される。
製品としては、例えば、パソコン、ノートパソコン、CRTディスプレー、プリンター、携帯端末、携帯電話、コピー機、ファックス、記録媒体(CD、CD−ROM、DVD、PD、FDDなど)ドライブ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、音声機器(オーディオ、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスクなど)、照明機器(LED)、リモコン、換気扇、レンジフード、冷蔵庫、空気調和機(エアーコンディショナー、除湿機、加湿機など)、空気清浄機、掃除機、炊飯器、クッキングヒーター、お風呂用品、洗面所用品、ジェットタオル、扇風機、タイプライター、ワードプロセッサー、自動車、車両用機器(カーナビケーション、カーステレオ等)、雑貨などが挙げられる。
また、例えば、空気調和機、ドア、表示機器、ガイシ、ミラー、計測器、各種機器の操作部などの樹脂製部品に上記の成形品を適用すれば、粉塵汚れの付着が減少し、清潔性が向上して、メンテナンス頻度を減らすことができる。特にユーザや業者が長期間メンテナンスすることができない製品の樹脂部品として、上記の成形品は有用である。
本実施の形態の上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、製品が樹脂部品を備えていれば適用可能であり、前述した用途に限らず広く適用できる。
また、成形のみで防汚効果が簡単に得られるため、防汚効果のある塗装やコーティングに比べると、成形品の移動や塗布作業などの複雑な工程が圧倒的に少ないという利点がある。このため、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、製品の量産に適し、実用性が極めて高い。また、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、防汚効果のある塗装やコーティングに比べると、表面の塗りムラ、虹模様、光沢度などを気にすることなく、外観部材として適用しやすい利点があるため、製品の量産に適し、実用性が極めて高い。
図5は本実施の形態に係る空気調和機の断面模式図である。図5に示すように、空気調和機の室内機の本体ケース10は、横長のほぼ直方体状に形成されており、その上面には空気吸込口11が設けられ、前面下部には空気吹出口12が設けられている。空気吸込口11の下流側から本体ケース10の前面側にかけて、プレフィルタ17が設けられている。また、本体ケース10の前面を覆う前面パネル14が設けられている。
本体ケース10内には、空気吸込口11から吸込んだ室内空気を、空気吹出口12から室内に吸出すためのファン13が設けられている。ファン13の上流側には熱交換器22が配設されており、ファン13の下流側には風路21があり、空気が風路21を通過していく。熱交換器22の下には、ドレンパン18が設けられている。
なお、図示してないが、本体ケース10内には、ファン13を駆動するファンモータ、空気調和機の運転を制御する制御部等が設けられている。
上下風向板15,16は、空気吹出口12から吹出す空気の上下方向の吹出し角度を調整する。左右風向板19は、空気吹出口12から吹出す空気の左右方向の吹出し角度を調整する。上下風向板15,16の端にはそれぞれ支持軸が設けられて、空気吹出口12の側壁に設けた軸受に回動かつ着脱自在に支持されており、左右風向板19は固定されている場合と、手動で方向を設定できる場合と、モーターに駆動されて左右方向に自動で回動できる場合がある。
ファン13を駆動すると室内空気が空気吸込口11から吸込まれて、プレフィルタ17、熱交換器22、ファン13、風路21、空気吹出口12、左右風向板19、上下風向板15,16の順に通過して、室内に風が吹き出される。空気とともにホコリ、砂塵、繊維等の親水性の粉塵汚れや、油煙、すす、皮脂、タバコ等の疎水性の粉塵汚れが、風と共に各種空気調和機の部材に接触するため、空気吸込口11、プレフィルタ17、熱交換器22、ファン13、風路21、空気吹出口12、左右風向板19および上下風向板15,16は、常に汚損され続ける。また、吸い込まれた空気は前面パネル14のプレフィルタ17に対向した背面壁20にも接触するため、背面壁20も汚損され続ける。
上記の前面パネル14、空気吹出口12、左右風向板19、上下風向板15,16、風路21および背面壁20の構成材料としては、PSまたはABSなどのスチレン系樹脂が使用されることが多い。なお、プレフィルタ17の枠の構成材料としては、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂が使用されることが多い。ファン13の構成材料としては、PP等のオレフィン系樹脂またはAS等のスチレン系樹脂が使用されることが多い。
空気調和機のように常に汚損され続ける製品に対して、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を好適に用いることができる。
空気調和機に上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を適用した場合の効果として、部材の汚れを軽減できるので清潔性の向上やメンテナンス頻度の削減が期待できる。また、汚れの再飛散がないため、汚れを原因とする臭気が風と一緒に届くときに生じる不快感が低減される。また、付着した汚れを栄養とするカビの発生を抑制できる。また、空気調和機のように天井に高い位置に備えられた製品は、ユーザが脚立等を使って掃除する必要があり、掃除が困難であるが、上記の成形品の適用により、掃除の頻度を下げることができ、特に高齢者などにとって好ましい。
また、ファン13の隙間に汚れが堆積して隙間を埋めてしまったり、各種風路の表面に汚れが堆積したりして、空気の通り道が狭まると、風量の低下により冷暖房能力が低下したり、ファンの消費電力が増加したりするという不具合が起こるが、上記の成形品の適用により汚れを抑制することで、購入初期の風量を維持して、消費電力の増加を抑制できる。
その他にも、例えば、冷蔵庫の野菜トレイは、ABS、PS等のスチレン系樹脂またはPP等のオレフィン系樹脂が使用されることが多い。掃除機のダストボックスは、ABS、PS等のスチレン系樹脂またはPP等のオレフィン系樹脂が使用されることが多い。各種換気扇のシロッコファンや扇風機のファンには、PP等のオレフィン系樹脂が使用されることが多い。いずれも汚れが削減されることで、メンテナンスの手間を削減することができる。
<評価方法>
(1)シャルピー衝撃強度
ISO 179に従い、ノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(2)引張り強度
ISO 527−1,2に従い、引張り強度(引張り降伏強度)の測定を実施した。測定値を使用したスチレン系樹脂(A成分)単体の引張り強度と比較し、下記の基準に基づいて評価した。
[引張り強度の評価基準]
A:保持率が95%以上、B:保持率が95%未満、90%以上、C:保持率が90%未満、85%以上、D:85%未満
(3)面衝撃強度
150mm×150mm×2mm(厚み)の角板を、射出成型機を用いて成形し、高速面衝撃試験をN=5で実施し、面衝撃強度(破壊エネルギー)を測定し、N=5の平均値を求めた。また、破壊形態について、下記の基準に基づいて評価した。
[破壊形態の評価基準]
A:延性的な破壊、B:延性的な破壊と脆性的破壊の混在(延性的は破壊数>脆性的破壊数)、C:延性的な破壊と脆性的破壊の混在(脆性的は破壊数>延性的な破壊数)、D:脆性的な破壊
なお、破壊形態の評価は、衝撃試験後に試験片が割れて飛び散ることなく、撃芯貫通部は一様に突出して残っている形態を示すものを延性的な破壊、撃芯、あるいは受台の形等に試験片が破壊し、撃芯貫通部が平坦なままに貫通部端面がシャープな状態を示すものを脆性的な破壊とした。破壊形態は、脆性的な破壊形態よりも延性的な破壊形態の方が好ましい。
また、試験機として、高速面衝撃試験機 ハイドロショットHTM−1(島津製作所(株)製)を使用した。試験条件としては、撃芯の衝突速度を7m/秒とし、先端が半円状で半径6.35mmの撃芯を用い、受台穴径を25.4mmとした。
(4)曲げ弾性率
ISO 178に従い、曲げ弾性率を測定した(試験片寸法:長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)。曲げ弾性率の測定値を下記の基準に基づいて評価した。尚、曲げ弾性率は高い方が好ましい。
[曲げ弾性率の評価基準]
A:1900MPa%以上、B:1900MPa%未満、1800MPa%以上、C:1800MPa%未満、1700MPa%以上、D:1700MPa%未満
(5)荷重たわみ温度
ISO 75−1および75−2に従い、荷重たわみ温度を測定した。なお、測定荷重は1.80MPaで実施した。
(6)粉塵付着性の評価
150mm×150mm×2mm(厚み)の角板を作成し、23℃、湿度50%の環境にて一週間放置した後、該角板について粉塵付着性の試験を実施した。親水性の粉塵付着性評価には、関東ローム(JIS試験用紛体11種)を使用し、疎水性の粉塵付着性評価には、カーボンブラック(JIS試験用紛体12種)を使用した。
粉塵付着性の評価は、粉塵をエアーで成形品表面に一定量(5g)吹きつけた後の、成形品表面をKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX−5000により100倍で観察し、画像処理により粉塵付着面積割合を求めて、下記の基準に基づいて評価した。
[粉塵付着性の評価基準]
A:粉塵付着面積割合が3%未満、B:粉塵付着面積割合が3〜6%未満、C:粉塵付着面積割合が6〜8%未満、D:粉塵付着面積割合が8%以上
(7)色相
射出成型機にてシリンダー温度240℃、金型温度50℃、射出速度20mm/sで連続成形した成形品、および、同条件でシリンダー内に樹脂を10分間滞留させた後の成形品の色相変化(ΔE)を測定した。測定には、東京電色社製「Spectro Photo Meter TC−1800MKII」を用いた。なお、色相変化(ΔE)の値が小さいもの程、熱安定性が良好であることを示す。
[熱安定性の評価]
A:色相変化(ΔE)が1未満、B:色相変化(ΔE)が1以上、2未満、C:色相変化(ΔE)が2以上、3未満、D:色相変化(ΔE)が3以上
<実施例1〜60、比較例1〜62>
表1〜表6に示すA〜D成分100質量部(A〜D成分の総量)、離型剤[理研ビタミン(株)製:リケスター EW400(製品名)]0.3質量部、リン系熱安定剤 [BASF製 IRGAFOS168(製品名)]0.1質量部、フェノール系熱安定剤 [BASF製;IRGANOX1076(製品名)]0.1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤 [(株)ADEKA製 アデカスタブ LA−57(製品名)]0.2質量部、および、ベンドトリアゾール系紫外線吸収剤 [シプロ化成(株)製 SEESORB701(製品名)]0.1質量部をV型ブレンダーで混合し、混合物を得た。
得られた混合物を押出機の第1供給口から供給した。原料(混合物)の供給量は、計量器[(株)クボタ製CWF]により精密に計測された。原料の押出には、径30mmのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α−38.5BW−3V)を使用し、スクリュー回転数が200rpm、吐出量が20kg/h、ベントの真空度が3kPaの条件で、原料を溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。なお、押出温度については、第1供給口からダイス部分までの温度を220℃に設定した。
得られたペレットの一部は、80℃4時間の熱風循環式乾燥機による乾燥の後、射出成形機(FANUC(株)T−150D)を用いて評価用の試験片(実施例1〜60および比較例1〜62)として成形された。射出成形の基本条件としては、シリンダー温度を200℃、金型温度を50℃、射出速度を20mm/sとした。
表1〜表6に示されるA〜D成分(記号表記の各成分)は、以下の通りである。
〔A成分〕
(HIPS)
高衝撃ポリスチレン樹脂[PSジャパン(株)製、H8672(製品名)、ゴム含有量:9質量%]
(PS)
ポリスチレン樹脂[PSジャパン(株)製、H77(製品名)]
(ABS)
ABS樹脂[日本A&L(株)製、クララスチック SXH−330(商品名)、GPC測定による標準ポリスチレン換算の質量平均分子量:90,000、ブタジエンゴム成分約17.5質量%、質量平均ゴム粒子径が0.40μm]
〔B成分〕
(PEPO−1)
ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有するコポリマー [三洋化成工業製、ぺレクトロン HS (商品名)、表面抵抗値=4×10Ω]
(PEPO−2)
ポリエーテルエステルアミド [三洋化成工業製、ペレスタットNC6321(商品名)、表面抵抗値=1×10Ω]
〔C成分〕
(StZn)
ステアリン酸亜鉛[日油株式会社製、ジンクステアレート(製品名)、金属含有量=10.5〜11.3%、遊離脂肪酸=0.5%以下]
(StAl−1)
モノステアリン酸(ジヒドロキシ)アルミニウム[日油株式会社製、アルミニウムステアレート300(製品名)、金属含有量=10.0〜11.5%、遊離脂肪酸=8.0%以下]
(StAl−2)
ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウム[日油株式会社製、アルミニウムステアレート600(製品名)、金属含有量=8.5〜10.0%、遊離脂肪酸=12.0%以下]
(StAl−3)
トリステアリン酸アルミニウム[日油株式会社製、アルミニウムステアレート900(製品名)、金属含有量=6.5〜8.0%、遊離脂肪酸=20〜30%]
〔D成分〕
(MH−SEBS)
無水マレイン酸(不飽和ジカルボン酸の酸無水物)によってグラフト変性されてなるマレイン酸変性スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体[クレイトンポリマー社製、FG1901GT(製品名)、ゴム成分含有量=70wt%]
(AC−SBS)
アクリル酸(不飽和モノカルボン酸の酸無水物)によってグラフト変性されてなるアクリル酸変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体
〔旭化成ケミカルズ(株)製の「タフプレンA」(製品名)をキシレンにて窒素気流下、130℃に加熱攪拌した。これに、アクリル酸とジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを少量ずつ滴下した後、更に攪拌を続け反応を進行した。その後、内容物を室温まで下げ、アセトンに投入して、ろ過することにより、アクリル酸変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を得た。アクリル酸の付加量は2質量%であった。〕
(SBS)
スチレン−ブタジエンースチレンブロック共重合体[旭化成ケミケルズ(株)製、タフプレンA(製品名)、ゴム成分含有量=60wt%]
得られた評価用の試験片(実施例1〜60および比較例1〜62)についての上記(1)〜(6)の評価結果を表1〜表6に示す。
Figure 0006861763
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表1〜表6に示される評価結果から、スチレン系樹脂(A)、親水性コポリマー(B)と、脂肪酸金属塩(C)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)と、を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形品である実施例では、親水性および疎水性の粉塵汚れに対して優れた付着抑制効果(防汚効果)が得られることが確認できる。さらに、実施例では、衝撃強度等の機械的強度を低下させることなく、優れた防汚効果が得られることが確認できる。
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)が、不飽和カルボン酸またはその誘導体によりグラフト変性されてなるスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する場合、シャルピー衝撃強度や面衝撃強度(破壊エネルギー)の数値が向上して、高速面衝撃試験での破壊形態が良好となる。
さらに、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)が「AC−SBS」である場合(グラフト変性に不飽和モノカルボン酸またはその酸無水物が用いられる場合)に比べて、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)がMH−SEBSである場合(グラフト変性に不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が用いられる場合)の方が、更に、シャルピー衝撃強度や面衝撃強度(破壊エネルギー)の数値が向上して、高速面衝撃試験での破壊形態が良好となる。
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)が「AC−SBS」である場合に比べて、MH−SEBSである場合の方が、色相変化(ΔE)が少なく、熱安定性の評価が良好となる。不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物の中で、特にマレイン酸またはその酸無水物が好ましい。
なお、脂肪酸金属塩(C)として、ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウムを用いた場合(すなわち、金属元素Mの価数が3である場合に、2つの脂肪酸を含む金属塩を用いた場合)において、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸アルミニウムまたはトリステアリン酸アルミニウムを用いた場合に比べて、親水性の粉塵汚れと疎水性の粉塵汚れの両方に対する付着抑制効果(防汚効果)がより優れる傾向が認められる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 本体ケース、11 空気吸込口、12 空気吹出口、13 ファン、14 前面パネル、15,16 上下風向板、17 プレフィルタ、18 ドレンパン、19 左右風向板、20 背面壁、21 風路、22 熱交換器。

Claims (7)

  1. スチレン系樹脂(A)と、
    ポリオキシエチレン鎖を有する親水性コポリマー(B)と、
    下記式(1)で表される脂肪酸金属塩(C)と、
    スチレン系熱可塑性エラストマー(D)と、を含有する、熱可塑性樹脂組成物であって、
    前記スチレン系樹脂(A)は、ポリスチレン樹脂、芳香族ビニル重合体からなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体、および、ジエン系ゴム成分を含むシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記親水性コポリマー(B)は、ポリオレフィンとポリオキシエチレン鎖を有する親水性ポリマーとが繰り返し交互に結合してなる親水性コポリマー(B1)、および、ポリエーテルエステルアミド、からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマー(D)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体によりグラフト変性されてなるスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する、熱可塑性樹脂組成物

    M(OH)y(R−COO)x ・・・(1)

    (式(1)中、Rは、炭素数6〜40のアルキル基またはアルケニル基である。Mは、アルミニウムおよび亜鉛らなる群から選択される少なくとも1種の金属元素である。xおよびyはそれぞれ独立な0以上の整数であり、x+y=[Mの価数]の関係を満たす。)
  2. 前記スチレン系樹脂(A)100質量部と、前記親水性コポリマー(B)1〜20質量部と、前記脂肪酸金属塩(C)0.5〜10質量部と、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(D)0.5〜20質量部と、を含有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記不飽和カルボン酸またはその誘導体は、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物は、マレイン酸またはその酸無水物である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記マレイン酸またはその酸無水物は、無水マレイン酸である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
  7. 請求項に記載の成形品を備える製品。
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