JP6857937B2 - プレキャスト床版の接合構造 - Google Patents

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本発明は、例えば一般道や高速道路等の高架橋の架設に用いられるプレキャスト床版の接合構造に関するものである。
従来、この種の高架橋の架設においては、工場等で製作されたコンクリート製の複数のプレキャスト床版を主桁上に橋軸方向に配列し、プレキャスト床版同士を接合することにより床版全体を構築するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
プレキャスト床版には橋軸方向に延びる複数の継手鉄筋が端部側を床版本体の接合端面から延出するように設けられ、各継手鉄筋の端部側が床版本体間の間詰め部内に位置するようにプレキャスト床版を配置するとともに、橋軸直角方向に延びる複数の補強鉄筋を間詰め部内の各継手鉄筋に結束した後、間詰め部内にコンクリートを充填するようにしている。
また、前記継手鉄筋としては、床版本体の上側に配置される鉄筋と下側に配置される鉄筋が床版本体の端面から延出してループ状に連続したものも知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来例では、互いに隣り合うプレキャスト床版のうち一方のプレキャスト床版側の継手鉄筋と他方のプレキャスト床版側の継手鉄筋とを互いにループ状部分が橋軸直角方向に交互に位置するように配置し、各ループ状部分の内側に橋軸直角方向に延びる補強鉄筋を配置している。
特開2009−264040号公報 特許第5337122号公報
しかしながら、前者の従来例の場合は、橋軸直角方向に延びる多数の補強鉄筋を各継手鉄筋に結束する作業が必要となるため、施工現場での作業工数が増大して施工時間が長くなるという問題点があった。一方、後者の場合は、ループ状部分によって間詰めコンクリートからの支圧力が得られるため、補強鉄筋の本数を少なくすることができる。しかしながら、ループ状部分は鉄筋を曲げて形成しているため、上側の鉄筋と下側の鉄筋との間隔はループ状部分の直径と等しくなり、しかもループ状部分の直径を小さくするには鉄筋の曲げ強度上の限度がある。このため、床版の設計条件では上側の鉄筋と下側の鉄筋との間隔がループ状部分の直径よりも小さくなる場合でも、ループ状部分の直径に合わせなければならず、床版厚が必要以上に大きくなる。これにより、床版の重量による主桁への負荷や床版本体のコンクリート使用量を無用に増大させるという問題点があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工現場での作業工数を低減することができるとともに、床版厚を無用に増大させることのないプレキャスト床版の接合構造を提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、互いに長手方向に直交する方向に間隔をおいて配置された複数の継手鉄筋を端部側がプレキャスト床版の端面から延出するように設けるとともに、プレキャスト床版の端面間に間詰め材を充填することにより、複数のプレキャスト床版同士を接合するようにしたプレキャスト床版の接合構造において、互いに上下方向に間隔をおいて隣り合う上側継手鉄筋の端部側及び下側継手鉄筋の端部側端側及び端側をそれぞれ固定された継手部材を備え、継手部材を厚さ方向が継手鉄筋の長手方向に直交する方向となるように配置された板状部材によって形成し、継手部材に厚さ方向に貫通する少なくとも一つの孔を設けている。
これにより、継手部材によって間詰め材からの支圧力が得られることから、継手鉄筋の長手方向に直交する方向に延びる補強鉄筋の本数を少なくすることが可能となる。その際、継手部材には継手鉄筋の長手方向に直交する方向に貫通する孔が設けられているので、孔の内周面によっても支圧力が得られる。また、継手部材を継手鉄筋とは別部品から形成することができるので、互いに隣り合う継手鉄筋の間隔が継手部材によって制約を受けることがない。更に、継手部材が厚さ方向を継手鉄筋の長手方向に直交する方向とする板状部材によって形成されていることから、継手鉄筋の横方向の間隔を狭くしても継手部材同士が干渉することがない。
本発明によれば、補強鉄筋の本数を少なくすることができるので、補強鉄筋の結束に要する現場作業を軽減することができ、プレキャスト床版を用いた急速施工に極めて有利である。この場合、継手部材に設けた孔の内周面によっても支圧力を得ることができるので、プレキャスト床版同士の接合強度(引張強度)をより高めることができる。また、互いに隣り合う継手鉄筋の間隔が継手部材によって制約を受けることがないので、従来のループ継手を用いる場合のように床版厚がループ部分によって必要以上に大きくなることがなく、床版厚を設計条件通りの寸法にすることができる。これにより、プレキャスト床版の重量による主桁への負荷や床版本体のコンクリート使用量を無用に増大させることがないという利点がある。また、継手鉄筋の横方向の間隔を狭くしても継手部材同士が干渉することがないので、継手鉄筋を高密度に配置することができる。
本発明の第1の実施形態を示すプレキャスト床版の正面断面図 プレキャスト床版の接合部分を示す平面図 プレキャスト床版の接合部分を示す側面断面図 継手部材の側面図 継手鉄筋及び継手部材の斜視図 床版架設工程を示す概略側面図 プレキャスト床版の接合工程を示す側面断面図 プレキャスト床版の接合工程を示す側面断面図 プレキャスト床版の接合工程を示す斜視図 プレキャスト床版の接合工程を示す斜視図 本発明の第2の実施形態を示す継手部材の側面図 本発明の第3の実施形態を示す継手部材の側面図
図1乃至図10は本発明の第1の実施形態を示すもので、例えば一般道や高速道路等に用いられる高架橋の架設に用いられるプレキャスト床版の接合構造を示すものである。
本実施形態では、主桁10上にプレキャスト床版20が橋軸方向に並べて配列され、プレキャスト床版20同士は以下の接合構造によって互いに接合される。
主桁10は、ウエブ11の上端及び下端にそれぞれ上フランジ12及び下フランジ13を有する鋼桁からなり、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて複数列に配置されている。
プレキャスト床版20は、例えば工場や製造ヤードで製作され、施工現場に搬送されて主桁10上に設置される。プレキャスト床版20は、コンクリート製の床版本体21の橋軸方向端面から橋軸方向に延出する複数の上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23を有し、各継手鉄筋22,23は上下方向及び橋軸直角方向にそれぞれ配列され、互いに長手方向に直交する方向に間隔をおいて配置されている。各継手鉄筋22,23は異形棒鋼からなり、床版本体21内には橋軸直角方向に延びる他の鉄筋(図示せず)が設けられている。
また、各継手鉄筋22,23の端部側には継手部材24が設けられている。継手部材24は厚さ方向が橋軸直角方向となる四角形状の鋼板によって形成され、その上端及び下端を上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に溶接されている。この場合、継手部材24は、上下方向の寸法が各継手鉄筋22,23の間隔と等しくなるように形成され、その厚さ方向中央が各継手鉄筋22,23の中心位置と一致するように配置されている。また、継手部材24には厚さ方向に貫通する円形の孔24aが設けられ、孔24aは継手部材24の上下方向及び前後方向の中央に配置されている。
前記プレキャスト床版20を架設する場合は、プレキャスト床版20を施工現場に搬送し、図6に示すようにクレーン車Aによって吊り上げて主桁10上に載置する。その際、隣り合うプレキャスト床版20は橋軸方向端面間に間隔を有するように配置され、これらの橋軸方向端面の間には、各プレキャスト床版20から延出する各継手鉄筋22,23及び各継手部材24が配置される。その際、一方のプレキャスト床版20側の各継手鉄筋22,23と他方のプレキャスト床版20側の各継手鉄筋22,23は互いに橋軸直角方向に交互に位置するように配置される。この場合、一方のプレキャスト床版20側の継手部材24は他方のプレキャスト床版20側の継手部材24よりも他方のプレキャスト床版20寄りに配置され、他方のプレキャスト床版20側の継手部材24は一方のプレキャスト床版20側の継手部材24よりも一方のプレキャスト床版20寄りに配置される。
また、プレキャスト床版20の橋軸方向端面間には橋軸直角方向に延びる複数の補強鉄筋25が設けられ、各補強鉄筋25は上側継手鉄筋22の上側と下側継手鉄筋23の下側にそれぞれ橋軸方向に間隔をおいて複数本ずつ配置される。この場合、下側継手鉄筋23側に配置される補強鉄筋25は予め工場等で継手鉄筋23に鋼線や番線によって結束され、上側継手鉄筋22側に配置される補強鉄筋25は、プレキャスト床版20を主桁10上に載置した後、現場で継手鉄筋22に結束される。
次に、図3に示すようにプレキャスト床版20の橋軸方向端面間に速硬性のコンクリートやモルタルからなる間詰め材20aを充填する。これにより、各継手鉄筋22,23と間詰め20aとの間に生ずる付着力と、各継手部材24と間詰め材20aとの間に生ずる支圧力によって橋軸方向の引張強度が得られ、各プレキャスト床版20同士が接合される。その際、図4の白抜き矢印に示すように、支圧力Fが継手部材24の橋軸方向一端面と孔21aの内周面の半分に生ずる。尚、間詰め部20aで互いに対向する床版本体21の橋軸方向端面は、テーパ状に傾斜した傾斜面であってもよく、或いは端面の下端側が顎状に張り出すように形成されたものであってもよい。
前述のように橋軸方向に配列された複数のプレキャスト床版20が間詰め材20aと各継手鉄筋22,23及び各継手部材24により接合され、床版全体が形成される。そして、床板の幅方向両側には壁高欄20bが設けられ、床版上面にはアスファルト20cによって路面が形成される。
また、各継手部材24の孔24aに補強鉄筋25を配置するようにしてもよい。この場合、補強鉄筋25を橋軸直角方向から各継手部材24の孔24aに挿入しなければならないため、プレキャスト床版20の側方に補強鉄筋25の長さ分のスペースを必要とするが、各継手部材24の孔24a内の補強鉄筋25は結束する必要がないので、その分だけ現場作業を軽減することができる。
このように、本実施形態によれば、互いに上下方向に間隔をおいて配置された上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23をそれぞれ床版本体21の橋軸方向端面から延出するように設けるとともに、各継手鉄筋22,23には上端側及び下端側をそれぞれ上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に固定された継手部材24を設けたので、継手部材24によって間詰め材20aからの支圧力を得ることができ、その分だけ補強鉄筋25の本数を少なくすることができる。これにより、補強鉄筋25の結束に要する現場作業を軽減することができるので、プレキャスト床版20を用いた急速施工に極めて有利である。
この場合、継手部材24には橋軸直角方向に貫通する孔24aが設けられているので、孔24aの内周面によっても支圧力を得ることができ、プレキャスト床版20同士の接合強度(引張強度)をより高めることができる。
また、継手部材24を各継手鉄筋22,23とは別部品から形成することができるので、上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23の上下方向の間隔が継手部材24によって制約を受けることがない。これにより、従来のループ継手を用いる場合のように床版厚がループ部分によって必要以上に大きくなることがなく、床版厚を設計条件通りの寸法にすることができる。これにより、プレキャスト床版20の重量による主桁10への負荷や床版本体21のコンクリート使用量を無用に増大させることがないという利点がある。
更に、継手部材24を厚さ方向が橋軸直角方向となる板状部材によって形成したので、各継手鉄筋22,23の橋軸直角方向の間隔を狭くしても継手部材24同士が干渉することがなく、各継手鉄筋22,23を高密度に配置することができる。
また、互いに橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版20のうち一方のプレキャスト床版20側の継手鉄筋22,23と他方のプレキャスト床版20側の継手鉄筋22,23とを互いに橋軸直角方向に交互に位置するように配置したので、プレキャスト床版20の橋軸方向端面間の距離を短くすることができ、間詰め材20aの使用量を少なくすることができる。
尚、前記実施形態では、継手部材24を鋼板によって形成したものを示したが、上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に固定されるものであれば、例えば硬化プラスチック等、継手部材を他の材質からなる部材によって形成するようにしてもよい。
更に、図11及び図12は継手部材の他の実施形態を示すものである。即ち、図11の第2の実施形態に示す継手部材26は橋軸方向に配列された複数の孔26aを設けたもので、孔26aの数が多い分だけ支圧力を高めることができる。また、図12の第3の実施形態に示す継手部材27は上下方向に配列された複数の孔27aを設けたもので、床版厚さが大きい場合に継手部材27の橋軸方向の長さを大きくせずに支圧力を高めることができる。
尚、前記各実施形態では、橋軸方向に並べて配列されたプレキャスト床版20同士を橋軸直角方向に接合するようにしたものを示したが、例えば既設の床版を半幅員ずつ取り替える場合など、プレキャスト床版同士を橋軸直角方向に接合する接合構造にも適用することができる。この場合、継手鉄筋をプレキャスト床版の幅方向の端面から橋軸直角方向に延出するように設けることにより、前記実施形態と同様に継手鉄筋に固定された継手部材を用いることができる。
1…合成桁、10…主桁、20…プレキャスト床版、20a…間詰め材、21…床版本体、22…上側継手鉄筋、23…下側継手鉄筋、24…継手部材、24a…孔、25…補強鉄筋、26…継手部材、26a…孔、27…継手部材、27a…孔。

Claims (5)

  1. 互いに長手方向に直交する方向に間隔をおいて配置された複数の継手鉄筋を端部側がプレキャスト床版の端面から延出するように設けるとともに、プレキャスト床版の端面間に間詰め材を充填することにより、複数のプレキャスト床版同士を接合するようにしたプレキャスト床版の接合構造において、
    互いに上下方向に間隔をおいて隣り合う上側継手鉄筋の端部側及び下側継手鉄筋の端部側端側及び端側をそれぞれ固定された継手部材を備え、
    継手部材を厚さ方向が継手鉄筋の長手方向に直交する方向となるように配置された板状部材によって形成し、
    継手部材に厚さ方向に貫通する少なくとも一つの孔を設けた
    ことを特徴とするプレキャスト床版の接合構造。
  2. 前記孔を円形に形成した
    ことを特徴とする請求項1記載のプレキャスト床版の接合構造。
  3. 互いに隣り合うプレキャスト床版のうち一方のプレキャスト床版側の継手鉄筋と他方のプレキャスト床版側の継手鉄筋とを互いに継手鉄筋の長手方向に直交する方向に交互に位置するように配置した
    ことを特徴とする請求項1または2記載のプレキャスト床版の接合構造。
  4. 前記継手部材の孔を継手鉄筋の長手方向に間隔をおいて複数設けた
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載のプレキャスト床版の接合構造。
  5. 前記継手部材の孔を継手鉄筋の長手方向に直交する方向に間隔をおいて複数設けた
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のプレキャスト床版の接合構造。
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