以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面において、互いに直交するX軸とY軸とZ軸とを含む三次元直交座標系を用いて説明する。Z方向(第1方向)はZ軸の正方向を示し、X方向(第2方向)はX軸の正方向を示し、Y方向(第3方向)はY軸の正方向を示す。X方向とY方向とZ方向とは互いに直交する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図面の簡略化のため、断面を示す斜線を適宜省略する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る光学素子1を示す断面図である。図1に示すように、光学素子1は、第1層A1と、第2層A2と、基板SB1と、基板SB2とを備える。第2層A2は第1層A1に対向する。第1層A1は、互いに対向する第1境界面11と第2境界面12とを有する。第2層A2は、互いに対向する第3境界面13と第4境界面14とを有する。第2境界面12と第3境界面13とは対向している。例えば、第2境界面12と第3境界面13とは接している。第1境界面11と第2境界面12と第3境界面13と第4境界面14とは、Z方向に直交している。第1層A1と第2層A2とは基板SB1とSB2とに挟まれる。第1層A1は基板SB1に対向し、第2層A2は基板SB2に対向する。第1境界面11は基板SB1に対向し、第4境界面14は基板SB2に対向する。基板SB1及び基板SB2の各々は、例えば、ガラス基板である。
具体的には、第1層A1は、液晶層であり、ネマティック液晶により形成される。ネマティック液晶はネマティック相に相当する。従って、第1層A1は、第1構造体B1ごとに一方向に対する配向秩序を有する構造体を形成する。
第1層A1は厚さL1を有する。厚さL1はZ方向に沿った厚さを示す。第1層A1は複数の第1構造体B1を含む。複数の第1構造体B1はネマティック液晶を形成する。第1構造体B1の各々はZ方向に沿って延びる。第1構造体B1の各々は、Z方向に沿って連なる複数の第1要素Q1を含む。第1要素Q1は液晶分子である。第1要素Q1は例えば棒状である。なお、本願の図面では、図面の簡略化のため、第1要素Q1の数を限定しているが、第1構造体B1の各々において、多数の第1要素Q1が連なっている。
第1構造体B1の各々において、複数の第1要素Q1の配向方向は揃っている。従って、第1構造体B1の各々において、第1要素Q1の配向方向は、第1構造体B1の配向方向を示す。複数の第1要素Q1の配向方向が揃っていることは、複数の第1要素Q1の配向方向が略平行であることを示しているため、複数の第1要素Q1の配向方向が、略同一である場合だけでなく、略180度異なる場合も、複数の第1要素Q1の配向方向が揃っていることを示す。
具体的には、第1要素Q1の配向方向は、時間的にも、空間的にも揺らいでいるため、第1構造体B1の各々において、複数の第1要素Q1の配向方向が揃っていることは、第1構造体B1の各々において、複数のダイレクターが揃っていることに相当する。
すなわち、本願の図面では、図面の簡略化のため、1つの第1要素Q1は、Z方向に直交する1つの平面内に位置する複数の第1要素のうち、ダイレクターの方向を向いている第1要素を代表して示している。従って、第1構造体B1の各々において、Z方向に直交する1つの平面内には、第1要素Q1を含む複数の第1要素(以下、「第1要素群」と記載する。)が位置している。第1要素が平面内に位置していることは、第1要素が平面に略平行な姿勢で平面内に位置している場合だけに限られず、第1要素が平面に対して傾斜した姿勢で平面に交差して位置している場合を含む。
ここで、ダイレクターとは、第1要素群に含まれる複数の第1要素の平均的配向方向を表す単位ベクトルのことである。ダイレクターは第1要素群ごとに定められる。
そして、第1構造体B1の各々において、複数の第1要素群はZ方向に沿って並んでおり、複数の第1要素群のダイレクターは揃っている。従って、第1構造体B1の各々において、第1要素群のダイレクターの方向は、第1構造体B1の配向方向を示す。複数の第1要素群のダイレクターが揃っていることは、複数の第1要素群のダイレクターが略平行であることを示しているため、複数の第1要素群のダイレクターの方向が、略同一である場合だけでなく、略180度異なる場合も、複数の第1要素群のダイレクターが揃っていることを示す。
また、第1構造体B1の各々において、複数の第1要素群のダイレクターが揃っていることは、Z方向に沿って並ぶダイレクターに若干のバラツキがある場合を含む。例えば、第1境界面11の近傍に位置する第1要素群の配向方向を変化させることによって、第1境界面11の近傍以外に位置する第1要素群の配向方向を追従させて、第1構造体B1の配向方向を設定する場合、配向手法によっては、第1境界面11の近傍でのダイレクターの方向と、第2境界面12の近傍でのダイレクターの方向とが若干異なり、Z方向に沿ってダイレクターに若干の分布が生じる可能性がある。このようなダイレクターの若干の分布があった場合でも、複数の第1要素群のダイレクターが揃っていることに相当する。
以上、第1構造体B1の各々において、複数の第1要素Q1の配向方向(具体的には、複数の第1要素群のダイレクター)が揃っていることは、第1層A1が第1構造体B1ごとに一方向に対する配向秩序を有する構造体を形成していることに相当する。
第1構造体B1の各々は、第1構造体B1の配向方向に応じて、つまり、第1要素Q1の配向方向に応じて、第1構造体B1への入射時の光の位相に対して、第1構造体B1からの出射時の光の位相を変化させる。
具体的には、複数の第1構造体B1に、それぞれ、光を構成する複数の光線束が入射する。そして、複数の第1構造体B1は、配向方向に応じて、複数の光線束の位相を互いに異ならせて出射する。その結果、入射時の光の位相に対して、出射時の光の位相が変化する。
実施形態1では、特に明示しない限り、複数の第1構造体B1の配向方向が異なるように、複数の第1構造体B1の配向方向が固定されている。ただし、光学素子1の初期状態では、複数の第1構造体B1の配向方向が揃っていてもよい。そして、複数の第1構造体B1の配向方向が異なるように、複数の第1構造体B1の配向方向を動的に制御してもよい。
第1構造体B1の各々は光学異方性を有する。つまり、第1構造体B1の各々は光に対して複屈折を引き起こす。従って、第1構造体B1の各々は、異常光と常光とに位相差を生じさせる。その結果、第1構造体B1の各々は、第1構造体B1への入射時の光の偏光状態に対して、第1構造体B1からの出射時の光の偏光状態を変化させる。光の偏光状態は、光の進行方向に対して定められる。なお、例えば、光学異方性は、1軸光学異方性である。
具体的には、第1要素Q1の異常光に対する屈折率ne1と、第1要素Q1の常光に対する屈折率no1とを用いると、第1要素Q1の複屈折は、Δn1(=ne1−no1)で表される。そして、複屈折Δn1に従って、入射時の光の偏光状態に対して、出射時の光の偏光状態が変化する。従って、複数の第1構造体B1に、それぞれ、光を構成する複数の光線束が入射すると、第1構造体B1の各々は、複屈折Δn1に従って光線束の偏光状態を変化させる。その結果、入射時の光の偏光状態に対して、出射時の光の偏光状態が変化する。光線束の偏光状態は、光の進行方向に対して定められる。
第1層A1では、例えば、全ての第1要素Q1の複屈折Δn1は同じである。従って、複数の第1構造体B1からそれぞれ出射する複数の光線束の偏光状態は同じである。例えば、第1層A1を半波長板として機能させると、第1構造体B1の各々は、右円偏光の光線束を左円偏光の光線束に変化させて出射する。
複数の第1構造体B1からそれぞれ出射する複数の光線束の偏光状態が同じである一方、複数の第1構造体B1からそれぞれ出射する複数の光線束の位相は、第1構造体B1の各々の配向方向に応じて異なる。なお、例えば、複数の第1要素Q1において、複屈折Δn1が異なっていてもよい。
以上、第1層A1は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の偏光状態に対して、第1層A1から第2層A2への出射時の光の偏光状態を、複数の第1構造体B1の複屈折によって変化させる。また、第1層A1は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の偏光状態に対して、第1層A1から第1層A1の外部への出射時の光の偏光状態を、複数の第1構造体B1の複屈折によって変化させる。
加えて、第1層A1は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の位相に対して、第1層A1から第2層A2への出射時の光の位相を、複数の第1構造体B1の配向方向に応じて変化させる。従って、例えば、第1層A1は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の波面に対して、第1層A1から第2層A2への出射時の光の波面を、複数の第1構造体B1の配向方向に応じて変化させることができる。また、第1層A1は、第2層A2から第1層A1への入射時の光の位相に対して、第1層A1から第1層A1の外部への出射時の光の位相を、複数の第1構造体B1の配向方向に応じて変化させる。従って、例えば、第1層A1は、第2層A2から第1層A1への入射時の光の波面に対して、第1層A1から第1層A1の外部への出射時の光の波面を、複数の第1構造体B1の配向方向に応じて変化させることができる。
一方、第2層A2は、第1層A1が出射した光の一部を反射し、他の一部を透過する。ただし、第2層A2は、第1層A1が出射した光の全部を反射してもよいし、第1層A1が出射した光の全部を透過してもよい。
第2層A2は厚さL2を有する。厚さL2はZ方向に沿った厚さを示す。第2層A2は、実施形態1では、液晶層であり、コレステリック液晶により形成される。コレステリック液晶はコレステリック相に相当する。コレステリック相はカイラル液晶相の一例である。コレステリック液晶とは、1つの平面内では細長い液晶分子が長軸の方向を揃えて配列しており、平面に垂直な方向に進むに従って液晶分子が螺旋状に旋回する構造の液晶のことである。
第2層A2は、コレステリック液晶により形成されるため、第1層A1から入射した光(例えば、円偏光)を反射する際は、光の入射時と反射時とで、光の偏光状態を維持したまま光を反射する。一方、第2層A2は、コレステリック液晶により形成されるため、第1層A1から入射した光(例えば、円偏光)を透過する際は、光の入射時と出射時とで、光の偏光状態を維持したまま光を透過する。また、任意の偏光を入射した場合には、偏光は右円偏光成分と左円偏光成分とに分割され、右円偏光成分は、コレステリック液晶の螺旋の巻き方向に応じて反射又は透過され、左円偏光成分は、コレステリック液晶の螺旋の巻き方向に応じて反射又は透過される。
本特許請求の範囲及び本明細書において、「光の偏光状態の維持」とは、光の偏光状態が実質的に維持されることを示す。「光の偏光状態の実質的な維持」とは、光の偏光状態が厳密に維持される場合の他、光の偏光状態がほぼ維持される場合を含む。例えば、光を反射する際は、光の入射前と反射後とで(具体的には、第1層A1中の光の往路と復路とで)、光の進行方向に対する光の位相変化の方向が変化しない範囲で、光の偏光状態が変化した場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。また、例えば、光を透過する際は、光の入射前と透過時とで(具体的には、第1層A1中と第2層A2中とで)、光の進行方向に対する光の位相変化の方向が変化しない範囲で、光の偏光状態が変化した場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。
例えば、円偏光又は楕円偏光を反射する際は、光の入射時と反射時とで、光の進行方向に対する円偏光又は楕円偏光の旋回方向が維持される場合は、つまり、旋回方向が変化しない場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。透過の場合も同様に、旋回方向が維持される場合は、つまり、旋回方向が変化しない場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。
例えば、直線偏光を反射する際は、光の入射時と反射時とで、直線偏光が維持される場合は、つまり、直線偏光が円偏光に変化しない場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。透過の場合も同様に、直線偏光が維持される場合は、つまり、直線偏光が円偏光に変化しない場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。
例えば、直線偏光を反射する際は、光の入射時と反射時とで、直線偏光の振動方向の変化が、45度未満の場合は、光の偏光状態が実質的に維持されている。透過の場合も同様である。例えば、直線偏光の振動方向の変化が、35度未満が更に好ましく、25度未満が更に好ましく、15度未満が更に好ましく、5度未満が更に好ましい。
第2層A2は複数の第2構造体B2を含む。複数の第2構造体B2の各々は螺旋状である。複数の第2構造体B2はコレステリック液晶を形成する。第2構造体B2の各々はZ方向に沿って延びる。第2構造体B2の各々は、Z方向に沿って螺旋状に旋回して積み重ねられた複数の第2要素Q2を含む。第2要素Q2は液晶分子である。第2要素Q2は例えば棒状である。第2構造体B2の螺旋軸は、Z方向に沿って延びている。なお、本願の図面では、図面の簡略化のため、第2要素Q2の数を限定しているが、第2構造体B2の各々において、多数の第2要素Q2が連なっている。
具体的には、本願の図面では、図面の簡略化のため、1つの第2要素Q2は、Z方向に直交する1つの平面内に位置する複数の第2要素のうち、ダイレクターの方向を向いている第2要素Q2を代表して示している。従って、第2構造体B2の各々において、Z方向に直交する1つの平面内には、第2要素Q2を含む複数の第2要素(以下、「第2要素群」と記載する。)が位置している。第2要素が平面内に位置していることは、第2要素が平面に略平行な姿勢で平面内に位置している場合だけに限られず、第2要素が平面に対して傾斜した姿勢で平面に交差して位置している場合を含む。
そして、第2構造体B2の各々において、複数の第2要素群がZ方向に沿って配向方向を変えながら螺旋状に並んでいる。つまり、第2構造体B2の各々において、ダイレクターが螺旋軸に沿って螺旋状に旋回している。ダイレクターとは、第2要素群に含まれる複数の第2要素の平均的配向方向を表す単位ベクトルのことである。ダイレクターは第2要素群ごとに定められる。
第2構造体B2の各々は、ピッチpを有する。ピッチpは、第2構造体B2の螺旋の1周期を示す。従って、第2構造体B2の螺旋の1周期の両端のうち、一方端に位置する第2要素Q2は、他方端に位置する第2要素Q2に対して略360度だけ旋回している。つまり、一方端に位置する第2要素Q2の配向方向と、他方端に位置する第2要素Q2の配向方向とが、揃っており、略平行である。Z方向に直交する各平面内において、複数の第2構造体B2にわたって、複数の第2要素Q2の配向方向が、揃っており、略平行である。つまり、Z方向に直交する各平面内において、隣り合う第2要素Q2の配向方向は、揃っており、略平行である。さらに換言すると、複数の第2構造体B2の空間位相は互いに同一である。また、複数の第2構造体B2の螺旋の旋回方向は同じである。さらに、複数の第2構造体B2の配向方向は固定されている。なお、Z方向に直交する各平面内において、複数の第2構造体B2にわたって、複数の第2要素Q2の配向方向が揃っていなくてもよい。つまり、複数の第2構造体B2の空間位相は、互いに同一である場合に限定されず、異なっていてもよい。
第2構造体B2の各々は、第2構造体B2の構造と光学的性質とに応じた帯域(以下、「選択反射帯域」と記載する場合がある。)の波長を有する光であって、第2構造体B2の螺旋の旋回方向に整合する偏光状態を有する光を反射する。このような光の反射を選択反射と記載し、光を選択反射する特性を選択反射性と記載する場合がある。また、第2構造体B2の各々は、第2構造体B2の螺旋の旋回方向と相反する偏光状態を有する光を透過する。
具体的には、選択反射は次の通りである。すなわち、第2構造体B2の各々は、第2構造体B2の螺旋のピッチpと屈折率とに応じた帯域の波長を有する光であって、第2構造体B2の螺旋の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を有する光を反射する。更に具体的には、液晶分子の異常光に対する屈折率をne2、液晶分子の常光に対する屈折率をno2と記載すると、第2構造体B2の各々は、no2×p〜ne2×pで示される帯域の波長を有する光であって、螺旋の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を有する光を反射する。一方、第2構造体B2の各々は、第2構造体B2の螺旋の旋回方向と反対の旋回方向の円偏光を有する光を透過する。なお、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
第2構造体B2の各々は、光を反射する際に、第2構造体B2への光の入射時と第2構造体B2からの光の反射時とで、光の偏光状態を維持したまま、光を反射する。また、第2構造体B2の各々は、光を透過及び出射する際に、第2構造体B2への光の入射時と第2構造体B2からの光の出射時とで、光の偏光状態を維持したまま、光を透過及び出射する。
具体的には、複数の第2構造体B2に、それぞれ、光を構成する複数の光線束が入射する。そして、第2構造体B2の各々は、光線束を反射する際に、第2構造体B2への光線束の入射時と第2構造体B2からの光線束の反射時とで、光線束の偏光状態を維持したまま、光線束を反射する。また、第2構造体B2の各々は、光線束を透過及び出射する際に、第2構造体B2への光線束の入射時と第2構造体B2からの光線束の出射時とで、光線束の偏光状態を維持したまま、光線束を透過及び出射する。「光線束の偏光状態の維持」の意義は、「光の偏光状態の維持」の意義と同様である。
以上、第2層A2は、螺旋状の第2構造体B2を有する。従って、第2構造体B2の螺旋の旋回方向に整合する偏光状態を有する光が第1層A1から入射すると、第2層A2は光を反射する。そして、第2層A2は、第1層A1から第2層A2への光の入射時と、第2層A2から第1層A1への光の反射時とで、光の偏光状態を維持したまま、光を反射する。また、第2構造体B2の螺旋の旋回方向と相反する偏光状態を有する光が第1層A1から入射すると、第2層A2は光を透過する。そして、第2層A2は、第1層A1から第2層A2への光の入射時と、第2層A2から第2層A2の外部への光の出射時とで、光の偏光状態を維持したまま、光を透過及び出射する。
本明細書では、第1層A1の外部は光学素子1の外部(つまり、第1層A1に対して第1境界面11の外側)を示し、第2層A2の外部は光学素子1の外部(つまり、第2層A2に対して第4境界面14の外側)を示す。
また、第1構造体B1の配向方向は、第1要素Q1の配向角度又は第1要素群のダイレクターの配向角度で表される。第1要素Q1の配向角度は、第1要素Q1のZ軸回りの回転角度を示し、X方向に対する第1要素Q1の回転角度で表される。第1要素群のダイレクターの配向角度は、ダイレクターのZ軸回りの回転角度を示し、X方向に対するダイレクターの回転角度で表される。Z方向から第1構造体B1を見たときに、時計回りの回転角度を「+」とし、反時計回りの回転角度を「−」とする。また、第1構造体B1の配向方向を第1構造体B1の配向角度と記載する場合がある。
以上、図1を参照して説明したように、実施形態1によれば、第2層A2は、光の偏光状態を維持したまま光を反射する。従って、第1層A1中の光の往路と復路とで、光の進行方向に対して光の位相変化の方向が同じになる。加えて、第1層A1は、第1層A1中の光の往路と復路との双方で、光の位相を変化させる。
従って、第1構造体B1の配向方向の変化量に対して、第1層A1から第1層A1の外部に出射する光(出射光)の位相の変化量(つまり、位相の変調量)を比較的大きくできる。その結果、例えば、第1構造体B1の配向方向の変化に対して、第1層A1から第1層A1の外部に出射する光の波面の変化を比較的大きくできる。
特に、実施形態1では、第2構造体B2は、螺旋状であるため、光の偏光状態を維持したまま光を反射する構造体として好適である。
具体的には、ネマティック液晶層だけを含む第1比較例に係る光学素子に光を入射して、光を透過及び出射する場合と比較して、2倍の位相変化を実現できる。なぜなら、第1比較例では、光はネマティック液晶層を1回通るだけであり、実施形態1では、光は第1層A1を2回通るからである。
例えば、第1比較例に係る光学素子を半波長板として機能させた場合、液晶分子の配向角度をゼロ(ラジアン)からπ(ラジアン)まで変化させると、光の位相は、ゼロ(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化する。つまり、液晶分子の配向角度の変化に対する光の位相の変化率は、2倍である。これに対して、実施形態1では、光学素子1を半波長板として機能させた場合、第1構造体B1の配向角度をゼロ(ラジアン)からπ/2(ラジアン)まで変化させると、光の位相は、ゼロ(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化する。つまり、第1構造体B1の配向角度の変化に対する光の位相の変化率は、4倍である。
また、実施形態1によれば、コレステリック液晶層だけを含む第2比較例に係る光学素子に光を入射して、光を反射する場合と比較して、2倍の位相変化を実現できる。
例えば、第2比較例に係るコレステリック液晶層の液晶分子の配向角度をゼロ(ラジアン)からπ(ラジアン)まで変化させると、光の位相は、ゼロ(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化する。つまり、液晶分子の配向角度の変化に対する光の位相の変化率は、2倍である。これに対して、実施形態1では、第1層A1のリタデーションRd(=Δn1×L1)を光の半波長に設定した場合、つまり、第1層A1が半波長板として機能する場合、第1構造体B1の配向角度の変化に対する光の位相の変化率は、4倍である。半波長板は、異常光と常光とに180度の位相差を与え、例えば、円偏光の旋回方向を反転させる。
以下、本明細書において、第1構造体B1の配向角度の変化に対する光の位相の変化率を「位相変化率」と記載する場合がある。この場合の「光の位相」は、第1層A1から第1境界面11を通して第1層A1の外部に出射する光の位相を示す。
また、実施形態1では、光の位相変化率を大きくできるため、複数の第1構造体B1の配向角度を変化させて配向する際に、一定範囲内での配向角度の変化量を小さくできる。つまり、粗い配向パターンで、所望の位相変化を実現できる。その結果、複数の第1構造体B1のパターニングが容易になるため、光学素子1を容易に製造できる。例えば、粗い配向パターンで、所望の波面変化を実現できる。
例えば、第1比較例では、X方向の一定距離D内で、液晶分子の配向角度をゼロ(ラジアン)からπ(ラジアン)まで変化させて、光の位相をゼロ(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化させる。これに対して、実施形態1では、例えば、X方向の一定距離D内で、第1要素Q1の配向角度をゼロ(ラジアン)からπ/2(ラジアン)まで変化させるだけで、光の位相をゼロ(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化させることができる。従って、実施形態1では、第1比較例に対して、配向パターンの密度を1/2にできる。その結果、複数の第1構造体B1のパターニングが容易になる。配向パターンの密度とは、一定距離D内での配向角度の変化量のことである。
また、実施形態1によれば、第2層A2は、第1層A1が出射した光を透過及び出射する。この場合、第2層A2が出射する光は、第1層A1を既に通っている。従って、第2層A2が出射する光の位相は変化している。その結果、光学素子1は、光の位相を変化させる透過素子として好適である。
さらに、実施形態1によれば、第1層A1は選択反射性を有する。従って、第1層A1に入射する光の偏光状態(具体的には、右円偏光又は左円偏光)を選択することによって、光学素子1を反射素子としてだけ機能させることもできるし、光学素子1を透過素子としてだけ機能させることもできる。ただし、第1層A1に直線偏光を有する光を入射することもできる。この場合、透過光と反射光とはそれぞれの特性に応じた位相変化を有しつつ出射する。
さらに、実施形態1によれば、第1層A1は、互いに配向方向の異なる複数の第1構造体B1を含む。従って、第1層A1から第1層A1の外部への出射時の位相は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の位相に対して変化している。つまり、第1層A1から第1層A1の外部に出射する光の波面は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の波面に対して非平行である。その結果、第1構造体B1の配向方向を異ならせることによって、様々な所望の波面の光を第1層A1から出射できる。
同様に、第2層A2から第2層A2の外部に出射する光の波面は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光の波面に対して非平行である。その結果、第1構造体B1の配向方向を異ならせることによって、様々な所望の波面の光を第2層A2から出射できる。
さらに、実施形態1によれば、第1構造体B1の各々において、複数の第1要素Q1の配向方向は揃っている。つまり、第1構造体B1ごとに、複数の第1要素Q1は一方向に対する配向秩序を有しており、第1構造体B1の粘性が比較的低い。具体的には、第1構造体B1の各々はネマティック液晶を形成している。従って、コレステリック液晶と比較して、複数の第1構造体B1のパターニングが容易であり、複数の第1構造体B1を容易に精度良く所望の配向パターンに設定できる。
さらに、実施形態1によれば、第2層A2への入射時に第2構造体B2の螺旋の旋回方向に整合する偏光状態(具体的には、旋回方向)を有する光LT2を、第1層A1に入射することにより、位相が変化した光LT2を高い効率で取り出すことができる。例えば、第1層A1を半波長板として機能させる場合は、第2構造体B2の螺旋の旋回方向に相反する偏光状態(具体的には、旋回方向)を有する光LT2を第1層A1に入射する。
引き続き図1を参照して、具体例を挙げながら、光の反射と透過とを説明する。
まず、一例としての各種条件に付いて説明する。光LT1が、基板SB1を通して、第1層A1の第1境界面11に対して垂直に入射する。光LT1は波面F1を有する。光LT1は、第1境界面11への入射時に第1偏光状態を有する光LT2と、第1境界面11への入射時に第2偏光状態を有する光LT3とを含む。第2偏光状態が示す光の旋回方向は、第1偏光状態が示す光の旋回方向と逆である。つまり、第2偏光状態が示す光の偏光方向は、第1偏光状態が示す光の偏光方向と直交する。例えば、第1偏光状態は右円偏光を示し、第2偏光状態は左円偏光を示す。光LT2は波面F2を有し、光LT3は波面F3を有する。光LT2の偏光状態は、光LT2の進行方向に対して定められる。光LT3の偏光状態は、光LT3の進行方向に対して定められる。
第1層A1は半波長板として機能する。つまり、第1層A1のリタデーションRd(=Δn1×L1)が光LT1(光LT2、光LT3)の半波長に一致する。従って、第1層A1は偏光状態を変化させる。例えば、光の偏光状態が円偏光である場合、第1層A1は光の旋回方向を反転させる。つまり、第1層A1は、光LT2の偏光状態を第1偏光状態から第2偏光状態に反転させて、光LT2を出射する。また、第1層A1は、光LT3の偏光状態を第2偏光状態から第1偏光状態に反転させて、光LT3を出射する。
第2層A2の複数の第2構造体B2の螺旋の旋回方向は、第1旋回方向又は第2旋回方向のいずれかを示す。第2旋回方向は、第1旋回方向の反対方向を示す。螺旋の旋回方向が第1旋回方向を示す場合、第2層A2は、光LT2及び光LT3のうち、第1旋回方向に整合する偏光状態(具体的には旋回方向)を有する円偏光を反射し、第1旋回方向に相反する偏光状態(具体的には旋回方向)を有する円偏光を透過する。一方、螺旋の旋回方向が第2旋回方向を示す場合、第2層A2は、光LT2及び光LT3のうち、第2旋回方向に整合する偏光状態(具体的には旋回方向)を有する円偏光を反射し、第2旋回方向に相反する偏光状態(具体的には旋回方向)を有する円偏光を透過する。反射された光LT2の位相は、第1層A1の配向角分布に応じて空間的に変調され、入射光LT1とは異なる波面F2を有する。透過した光LT3の位相は、第1層A1の配向角分布に応じて空間的に変調され、入射光LT1とは異なる波面F3を有する。なお、例えば、第1層A1の配向角度が空間的に分布していない場合は、波面F2および波面F3は波面F1と同じであってもよい。
以下、光の反射と透過との説明において、第1偏光状態が左旋回方向を示し、第2偏光状態が右旋回方向を示す。従って、光LT2は入射時に左円偏光を有し、光LT3は入射時に右円偏光を有する。つまり、光LT1は直線偏光を有する。また、第2構造体B2の螺旋の旋回方向は第1旋回方向を示し、第1旋回方向は右旋回方向を示す。従って、第2偏光状態が第1旋回方向に整合し、第1偏光状態が第1旋回方向に相反する。つまり、第2偏光状態が示す旋回方向が第1旋回方向と同じであり、第1偏光状態が示す旋回方向が第1旋回方向と反対である。
また、理解の容易のため、一例として、Y方向に沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は同じであり、X方向に沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は線形に変化する。具体的には、複数の第1構造体B1の配向方向は、X方向に沿って角度θずつ変化する。
以上、一例としての各種条件について説明した。各種条件の下、第1層A1は、第1境界面11から第1層A1に入射した光LT1を透過させて、第2境界面12から光LT1を第2層A2に向けて出射する。具体的には、第1層A1は、光LT2の偏光状態を第1偏光状態から第2偏光状態に反転させて、光LT2を出射する。また、第1層A1は、光LT3の偏光状態を第2偏光状態から第1偏光状態に反転させて、光LT3を出射する。さらに、第1層A1は、第1境界面11への入射時の光LT2の位相を、角度2θ(=2×θ)だけ変化させて、光LT2を出射する。また、第1層A1は、第1境界面11への入射時の光LT3の位相を、角度「−2θ」(=−2×θ)だけ変化させて、光LT3を出射する。ここで、角度の符号がプラス(+)の場合には位相遅れを、マイナス(−)の場合には位相進みを示す。
第2層A2は、第2境界面12から第1層A1が出射した光LT2を、偏光状態を維持したまま第3境界面13から第1層A1の第2境界面12に向けて反射する。つまり、第2層A2は、第1層A1が出射した第2偏光状態を有する光LT2を、第2偏光状態を維持したまま第1層A1に向けて反射する。
第1層A1は、第2境界面12から第1層A1に入射した光LT2を透過させて、光LT2を第1境界面11から第1層A1の外部に向けて出射する。具体的には、第1層A1は、光LT2の偏光状態を第2偏光状態から第1偏光状態に反転させて、光LT2を出射する。従って、第1境界面11への光LT2の入射時の偏光状態と第1境界面11からの光LT2の出射時の偏光状態とが一致する。また、第1層A1は、第3境界面13から第2境界面12への入射時の光LT2の位相を、角度2θだけ変化させて、光LT2を出射する。
第1層A1は、光LT2の往路と復路とのそれぞれで、光LT2の位相を角度2θだけ変化させて、第1境界面11から出射している。つまり、第1層A1は、光LT2の位相を角度4θ(=4×θ)だけ変化させている。その結果、第1境界面11から出射する光LT2の波面F2が、第1境界面11から入射した光LT2の波面F2に対して角度4θだけ傾斜して、光LT2が出射される。
一方、第2層A2は、第1境界面11から第1層A1が出射した光LT3を第3境界面13から透過させて、光LT3を第4境界面14から第2層A2の外部に向けて出射する。具体的には、第2層A2は、光LT3の偏光状態を維持したまま、光LT3を出射する。つまり、第2層A2は、第1層A1が出射した第1偏光状態及び角度「−2θ」の位相を有する光LT3を、第1偏光状態を維持したまま第2層A2の外部に向けて出射する。その結果、第4境界面14から出射する光LT3の波面F3が、第1境界面11から入射した光LT3の波面F3に対して角度「−2θ」だけ傾斜して、光LT3が出射される。
なお、光LT1は、第1層A1に対して傾斜して入射してもよい。また、光LT1は、光LT2だけを含んでいてもよいし、光LT3だけを含んでいてもよい。
次に、第2構造体B2の螺旋の旋回方向と円偏光とを定義する。螺旋の右旋回方向とは、Z方向に進むに従って第2要素Q2が時計回りに螺旋状に旋回する方向のことである。螺旋の左旋回方向とは、Z方向に進むに従って第2要素Q2が反時計回りに螺旋状に旋回する方向のことである。一方、右円偏光とは、光の進行方向の反対方向に向かって(つまり、光源に向かって)、ある固定点(つまり、一定の場所)における光(つまり、電磁波)を見たときに、固定点を通過する光電場ベクトルが時間とともに時計回りに旋回する円偏光のことである。ある固定時間において、光の偏光状態が空間的に右旋回方向を示すとき、光は右円偏光を有する。左円偏光とは、光の進行方向の反対方向に向かって、ある固定点における光を見たときに、固定点を通過する光電場ベクトルが時間とともに反時計回りに旋回する円偏光のことである。ある固定時間において、光の偏光状態が左旋回方向を示すとき、光は左円偏光を有する。
次に、第1構造体B1の配向方向が角度「θ」だけ変化するときに、第1層A1の外部に出射される光LT2の位相が角度「4θ」だけ変化する原理を、ジョーンズベクトルを用いて説明する。
以下の計算では、光波はZ方向に伝搬しているとし、光波の位相の振動項をφ=kz−ωtで表わす。「k」は波数、「z」はZ軸上の位置、「ω」は角振動数、「t」は時間の変数である。
本明細書では、光の偏光状態は2次元の列ベクトルで表され、成分M11(=1)と成分M21(=i又は−i)とのうち、成分M21である虚数単位「i」に付された符号が、マイナス(−)のときは、右円偏光を示し、プラス(+)のときは、左円偏光を示す。
まず、理解の容易のため、第3比較例に係る光学素子による位相変化について説明する。第3比較例に係る光学素子は、図1に示す光学素子1から第2層A2を除いた構成を有している。
すなわち、第3比較例に係る光学素子は、第1層A1(ネマティック液晶)だけを有する。第3比較例に係る第1層A1は、波長λを有する光LT1に対して、半波長板として機能するリタデーションRd(=Δn1×L1)を有する。なお、説明の便宜のため、第3比較例においても、実施形態1と同じ参照符号を用いて説明する。そして、適宜、図1を参照して第3比較例を説明する。
図1に示すように、第3比較例では、Z方向に伝搬する光LT1が第1層A1に入射する。そして、第1構造体B1の配向方向をX方向に一致させたときの第1層A1のジョーンズマトリクスM0は、式(1)で与えられる。
そして、第1構造体B1の配向方向をX方向に対して角度「θ」(以下、「回転角度「θ」)と記載する場合がある。)だけ回転させたときの第1層A1のジョーンズマトリクスMは、式(2)で与えられる。
本明細書の数式中、「R(θ)」は、式(3)で表され、回転角「θ」の回転行列を示す。また、本明細書の数式中、「R」は「R(0)」を示し、「i」は虚数単位を表す。
光LT1の偏光状態をジョーンズベクトルVinによって表す。第1境界面11から入射する時に右円偏光を有する光LT1のジョーンズベクトルVinは、式(4)によって表される。
その結果、第2境界面12から出射する時の光LT1のジョーンズベクトルVoutは、式(5)によって表される。
式(4)及び式(5)から明らかなように、第3比較例では、光LT1の偏光状態は、入射時の右円偏光から出射時の左円偏光に変化している。
また、第3比較例では、第2境界面12からの出射時の光LT1は、「−2θ」に比例した絶対位相を有している。つまり、空間的に複数の第1構造体B1(ネマティック液晶)の配向方向をパターニングして、回転角「θ」を空間的に変化させた場合には、第1構造体B1ごとに、回転角「θ」に比例した光LT1の位相変化(−2θ)が生じる。
一方、第1境界面11から入射する時に左円偏光を有する光LT1のジョーンズベクトルVinは、式(6)によって表される。
その結果、第2境界面12から出射する時の光LT1のジョーンズベクトルVoutは、式(7)によって表される。
式(6)及び式(7)から明らかなように、第3比較例では、光LT1の偏光状態は、入射時の左円偏光から出射時の右円偏光に変化している。
また、第3比較例で、左円偏光を入射した場合には、第2境界面12からの出射時の光LT1は、「2θ」に比例した絶対位相を有している。つまり、光LT1の入射時の偏光状態(右円偏光又は左円偏光)に依存して、位相の感じ方が反転する。
次に、実施形態1に係る光学素子1による位相変化について説明する。第1層A1(ネマティック液晶)は、波長λを有する光LT1に対して、半波長板として機能するリタデーションRd(=Δn1×L1)を有する。そして、Z方向に伝搬する光LT1が第1層A1に入射する。光LT1は、左円偏光を有する光LT2と、右円偏光を有する光LT3とを含む。第2層A2(コレステリック液晶)において、第2構造体B2の螺旋の旋回方向は右旋回方向(右巻き)を示す。従って、第2層A2は、光LT2を反射し、光LT3を透過する。
具体的には、第1境界面11から入射する時に右円偏光を有する光LT3のジョーンズベクトルVinは、式(8)によって表される。
そして、第2境界面12から出射する時の光LT3のジョーンズベクトルVoutは、式(9)によって表される。
式(9)から明らかなように、第2境界面12から出射する時の光LT3は、左円偏光を有している。従って、光LT3は、第2層A2によって反射されることなく、第2層A2を透過する。この場合、左円偏光を有する光LT3は、第2層A2から位相及び偏光状態の影響をほとんど受けることなく、第2層A2を伝搬する。
すなわち、第2層A2の第2構造体B2が右巻きのときに、光学素子1に右円偏光を有する光LT3を入射すると、光LT3は、左円偏光となって、第2層A2を透過する。そして、光LT3は、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」に対応して、角度「−2θ」の位相を有する。
一方、第1境界面11から入射する時に左円偏光を有する光LT2のジョーンズベクトルVinは、式(10)によって表される。
そして、第2境界面12から出射する時の光LT2のジョーンズベクトルV´inは、式(11)によって表される。
式(11)から明らかなように、第2境界面12から出射する時の光LT2は、右円偏光を有している。従って、光LT2は、右巻きの第2構造体B2を含む第2層A2によって反射される。一方、右円偏光を有する光LT2は、偏光状態を維持したまま、伝搬方向だけを反転して、第2境界面12から入射する。つまり、光LT2は、Z方向の反対方向に向かう右円偏光として入射する。そして、光LT2は、第1層A1を伝搬し、第1層A1を再度透過する。
光LT3が第1層A1を再度透過する際に、光LT2の伝搬方向が反転しているため、角度「θ」の配向方向を示している第1構造体B1は、角度「π−θ」の配向方向を示す第1構造体B1として機能する。角度「π−θ」の配向方向を示す第1構造体B1を含む第1層A1のジョーンズマトリクスM´は、式(12)によって表される。
また、第2境界面12から入射する時に右円偏光を有する光LT2のジョーンズベクトルV´inは、式(13)によって表される。
そして、第1境界面11から出射する時の光LT2のジョーンズベクトルVoutは、式(14)によって表される。
式(14)から明らかなように、第1境界面11から出射する時の光LT2は、左円偏光を有している。そして、光LT2は、第2境界面12から入射し、第1境界面11より出射する過程で、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」に対応して、角度「2θ」の位相を有する。したがって、式(11)及び式(14)から明らかなように、光LT2は、入射した時の位相に比べ、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」に対応して、「4θ」(=2θ+2θ)の位相を有する。
光LT2が角度「4θ」の位相を有することは、入射→第1層A1伝搬→第2層A2による反射→第1層A1を再度伝搬→出射という一連の過程をまとめて記述した式(15)からも明らかである。
一方、第2層A2の第2構造体B2の旋回方向が左旋回方向(左巻き)を示す場合、入射時の光LT2が右円偏光を有すると、第2層A2は光LT2を反射する。
第1境界面11から入射する時に右円偏光を有する光LT2のジョーンズベクトルVinは、式(16)によって表される。
そして、式(14)と同様の計算により、光LT2が第1層A1を再度透過して、第1境界面11から出射する時の光LT2のジョーンズベクトルVoutは、式(17)によって表される。
式(17)から明らかなように、第1境界面11から出射する時の光LT2は、右円偏光を有している。そして、光LT2は、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」に対応して、角度「−4θ」の位相を有する。
以上、式(14)及び式(17)から明らかなように、波長λを有する光LT2に対して、光LT2の位相をゼロ(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化させる場合、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」をゼロ(ラジアン)からπ/2(ラジアン)まで変化させればよい。
すなわち、実施形態1では、第2層A2は、第2層A2への円偏光の入射時と、第2層A2から第1層A1への円偏光の反射時とで、偏光状態、つまり、円偏光の旋回方向を維持したまま円偏光を反射する。従って、円偏光の入射前と反射後とで、円偏光の進行方向に対する円偏光の位相変化の方向が変化しない。その結果、第1層A1は、円偏光の往路と復路との双方で、同方向に位相を変化させるため、第1構造体B1の配向角度の変化に対する円偏光の位相の変化率を比較的大きくできる。特に、第1層A1が半波長板として機能する場合は、第1構造体B1の配向角度の変化に対する円偏光の位相の変化率は、4倍になり、好適である。なお、第2層A2は、第2層A2への円偏光の入射時と、第2層A2中の円偏光の透過時とで、偏光状態、つまり、円偏光の旋回方向を維持したまま円偏光を出射する。
なお、光LT1(光LT2、光LT3)が第1境界面11に対して垂直に入射したときの条件で、式(1)〜式(17)を算出しているが、光LT1が第1境界面11に対して傾斜して入射した場合でも、位相特性については、式(1)〜式(17)と同様の位相特性になる。ただし、反射特性は第1層A1の性質に依存する。
次に、図2〜図8を参照して、一定条件の下、光学素子1の光学的特性について説明する。図2は、1本の第1構造体B1と1本の第2構造体B2とを含む光学素子1を示す断面図である。図2に示すように、光学素子1に基づいて、マトリクス法による計算を実行し、円偏光入射時の反射率、透過率、及び位相特性を計算する。
第1構造体B1はネマティック液晶を形成する。そして、第1層A1は、第2層A2の選択反射帯域の中心波長(608nm)において、半波長板として機能し、円偏光の旋回方向を反転させる。つまり、第1層A1のリタデーションRd(=Δn1×L1)が中心波長の1/2に一致する。中心波長とは、選択反射帯域の中心の波長のことである。
第1層A1に対する異常光の屈折率ne1は「1.7」であり、第1層A1に対する常光の屈折率no1は「1.5」である。第1層A1の厚さL1は「1520nm」である。また、第1構造体B1の配向方向を配向角度φで示す。配向角度φは、第1要素Q1のZ軸回りの回転角度を示し、X方向に対する第1要素Q1の回転角度で表される。配向角度φは、ゼロ(ラジアン)以上π(ラジアン)以下で変化させる。
第2構造体B2はコレステリック液晶を形成する。そして、第2構造体B2の螺旋の旋回方向は右旋回方向を示す。従って、第2層A2は、右円偏光を反射し、左円偏光を透過する。
第2層A2は、選択反射帯域(570nm以上646nm以下)の波長を有する右円偏光を反射(具体的にはブラッグ反射)する。第2層A2に対する異常光の屈折率ne2は「1.7」であり、第2層A2に対する常光の屈折率no2は「1.5」である。従って、第2層A2の複屈折Δn2(=ne2−no2)は第1層A1の複屈折Δn1(=ne1−no1)と一致する。
第2層A2の厚さL2は「7600nm」であり、第2構造体B2の螺旋のピッチpは「380nm」である。また、第2構造体B2の配向方向を配向角度φ0で示す。配向角度φ0は、第3境界面13での第2要素Q2のZ軸回りの回転角度を示し、X方向に対する第2要素Q2の回転角度で表される。配向角度φ0は、ゼロ(ラジアン)である。
まず、図3〜図5を参照して、光LTとして左円偏光を入射したときの反射率及び位相特性の計算結果を説明する。光LTは第1境界面11に対して垂直に入射する。光学素子1に左円偏光を入射すると、第1層A1が左円偏光を右円偏光に反転する。従って、第2層A2が右円偏光を反射する。なお、図3及び図4におけるグレースケールは実際はカラースケールである。
図3は、光学素子1に左円偏光を入射したときの反射率Rの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図3では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの反射率R(%)を示す。反射率Rは、第3境界面13に入射した光LTの強度に対する第3境界面13から反射した光LTの強度の比率を示す。
図3に示すように、第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲で、第2層A2は、光LTのうち、選択反射帯域(570nm以上646nm以下)の波長λを有する光(第3境界面13への入射時に右円偏光)を反射する。光学素子1に入射した左円偏光は第1層A1により右円偏光に反転されるためである。
図4は、光学素子1に左円偏光を入射したときの反射位相Φrの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図4では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの反射位相Φr(ラジアン)を示す。反射位相Φrは、第1境界面11から入射後に第3境界面13で反射されて第1境界面11から出射する時の光LTの位相を示す。
図4に示すように、光LTのうち、選択反射帯域(570nm以上646nm以下)の波長λを有する光の反射位相Φrが、第1構造体B1の配向角度φに依存して変化している。例えば、配向角度φが0からπ/2まで変化すると、580nmの波長λを有する光の反射位相Φrは、−π/2から−π/2まで、つまり、2π変化している。
図5は、光学素子1に異なる波長の左円偏光を入射したときの反射率R及び反射位相Φrの配向角度φ依存性を示すグラフである。図5では、横軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、左側の縦軸は光LTの反射率R(%)を示し、右側の縦軸は光LTの反射位相Φr(ラジアン)を示す。
また、円形マークR1は、光LTのうち、波長λが520nmの光の反射率Rを示す。円形マークR2は、光LTのうち、波長λが580nmの光の反射率Rを示す。円形マークR3は、光LTのうち、波長λが608nmの光の反射率Rを示す。円形マークR4は、光LTのうち、波長λが640nmの光の反射率Rを示す。円形マークR5は、光LTのうち、波長λが700nmの光の反射率Rを示す。
円形マークR1〜円形マークR5の各々は、水平方向に延びる直線を表す。第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲において、選択反射帯域の波長λを有する光(円形マークR2〜R4)の反射率Rは100%である。一方、選択反射帯域外の波長λを有する光(円形マークR1、R5)の反射率Rは10%以下である。
また、四角マークΦr1は、光LTのうち、波長λが520nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr2は、光LTのうち、波長λが580nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr3は、光LTのうち、波長λが608nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr4は、光LTのうち、波長λが640nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr5は、光LTのうち、波長λが700nmの光の反射位相Φrを示す。
四角マークΦr1〜四角マークΦr5の各々は、右斜め上方向に延びる斜線を表す。例えば、608nmの波長λを有する光の反射位相Φr(四角マークΦr3)は、配向角度φのπ/2の変化に対して、2π変化している。同様に、他の波長λを有する光の反射位相Φr(四角マークΦr1、Φr2、Φr4、Φr5)も、配向角度φのπ/2の変化に対して、2π変化している。
次に、図6〜図8を参照して、光LTとして右円偏光を入射したときの反射率及び位相特性の計算結果を説明する。光学素子1に右円偏光を入射すると、第1層A1が右円偏光を左円偏光に反転する。従って、右巻きの第2層A2は、左円偏光を反射することなく透過する。なお、図6及び図7におけるグレースケールは実際はカラースケールである。
図6は、光学素子1に右円偏光を入射したときの透過率Tの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図6では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの透過率T(%)を示す。透過率は、第3境界面13に入射した光LTの強度に対する第3境界面13を透過した光LTの強度の比率を示す。
図6に示すように、第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲で、第2層A2は、光LT1のうち、全範囲の波長λを有する光(第3境界面13への入射時に左円偏光)を透過する。光学素子1に入射した右円偏光は第1層A1により左円偏光に反転されるためである。
図7は、光学素子1に右円偏光を入射したときの透過位相Φtの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図7では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの透過位相Φt(ラジアン)を示す。透過位相Φtは、第1境界面11から入射後に第3境界面13から透過して第4境界面14から出射する時の光LTの位相を示す。
図7に示すように、光LTのうち、全範囲の波長λを有する光の透過位相Φtが、第1構造体B1の配向角度φに依存して変化している。例えば、配向角度φが0からπまで変化すると、550nmの波長λを有する光の透過位相Φtは、−π/2から−π/2まで、つまり、2π変化している(破線参照)。
図8は、光学素子1に異なる波長の右円偏光を入射したときの透過率T及び透過位相Φtの配向角度φ依存性を示すグラフである。図8では、横軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、左側の縦軸は光LTの透過率T(%)を示し、右側の縦軸は光LTの透過位相Φt(ラジアン)を示す。
また、円形マークT1は、光LTのうち、波長λが520nmの光の透過率Tを示す。円形マークT2は、光LTのうち、波長λが580nmの光の透過率Tを示す。円形マークT3は、光LTのうち、波長λが608nmの光の透過率Tを示す。円形マークT4は、光LTのうち、波長λが640nmの光の透過率Tを示す。円形マークT5は、光LTのうち、波長λが700nmの光の透過率Tを示す。
円形マークT1〜円形マークT5の各々は、水平方向に延びる直線を表す。第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲において、各波長λを有する光(円形マークT1〜T5)の透過率Tは100%である。
また、四角マークΦt1は、光LTのうち、波長λが520nmの光の透過位相Φtを示す。四角マークΦt2は、光LTのうち、波長λが580nmの光の透過位相Φtを示す。四角マークΦt3は、光LTのうち、波長λが608nmの光の透過位相Φtを示す。四角マークΦt4は、光LTのうち、波長λが640nmの光の透過位相Φtを示す。四角マークΦt5は、光LTのうち、波長λが700nmの光の透過位相Φtを示す。
四角マークΦt1〜四角マークΦt5の各々は、左斜め上方向に延びる斜線を表す。例えば、580nmの波長λを有する光の透過位相Φt(四角マークΦt2)は、配向角度φのπの変化に対して、2π変化している。同様に、他の波長λを有する光の透過位相Φt(四角マークΦt1、Φt3、Φt4、Φt5)も、配向角度φのπの変化に対して、2π変化している。
以上、図5及び図8に示すように、配向角度φに対する反射位相Φrの変化率(2π/(π/2))は、配向角度φに対する透過位相Φtの変化率(2π/π)の2倍である。
次に、図9〜図12を参照して、一定条件の下、第4比較例に係る光学素子100の光学的特性について説明する。なお、図10及び図11におけるグレースケールは実際はカラースケールである。図9は、第4比較例に係る光学素子100を示す断面図である。図9に示すように、光学素子100は、基板101と、層103と、基板102とを備える。層103は境界面106と境界面107とを有する。層103は厚みLを有する。層103は、1本の構造体104を含む。構造体104は、螺旋状であり、ピッチpを有する。構造体104は、Z方向に沿って螺旋状に旋回する複数の要素105を含む。要素105は液晶分子である。
光学素子100に基づいて、マトリクス法による計算を実行し、右円偏光入射時の反射率及び位相特性を計算する。
構造体104はコレステリック液晶を形成する。そして、構造体104の螺旋の旋回方向は右旋回方向を示す。従って、層103は、右円偏光を反射し、左円偏光を透過する。
層103は、選択反射帯域(570nm以上646nm以下)の波長を有する右円偏光を反射する。層103に対する異常光の屈折率ne2は「1.7」であり、層103に対する常光の屈折率no2は「1.5」である。層103の厚さL2は「7600nm」であり、構造体104の螺旋のピッチpは「380nm」である。また、構造体104の配向方向を配向角度φ0で示す。配向角度φ0は、境界面106での要素105のZ軸回りの回転角度を示し、X方向に対する要素105の回転角度で表される。配向角度φ0は、0(ラジアン)以上π(ラジアン)以下で変化させる。
図9に示すように、光LTとして右円偏光を入射する。光学素子100に右円偏光を入射すると、層103が右円偏光を反射する。
図10は、光学素子100に右円偏光を入射したときの反射率Rの波長λ依存性及び配向角度φ0依存性を示すグラフである。図10では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は構造体104の配向角度φ0(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの反射率R(%)を示す。反射率Rは、境界面106に入射した光LTの強度に対する層103から反射した光LTの強度の比率を示す。
図10に示すように、構造体104の配向角度φ0が0以上π以下の範囲で、層103は、光LT1のうち、選択反射帯域(570nm以上646nm以下)の波長λを有する光(右円偏光)を反射する。
図11は、光学素子100に右円偏光を入射したときの反射位相Φrの波長λ依存性及び配向角度φ0依存性を示すグラフである。図11では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は構造体104の配向角度φ0(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの反射位相Φr(ラジアン)を示す。反射位相Φrは、層103によって反射される光LTの位相を示す。
図11に示すように、光LTのうち、選択反射帯域(570nm以上646nm以下)の波長λを有する光の反射位相Φrが、構造体104の配向角度φ0に依存して変化している。なお、図示を省略したが、光LTとして左円偏光を入射させた場合は、光LTの透過位相Φtは、構造体104の配向角度φ0に依存しない。
図12は、光学素子100に異なる波長の右円偏光を入射したときの反射率R及び反射位相Φrの配向角度φ依存性を示すグラフである。図12では、横軸は構造体104の配向角度φ0(ラジアン)を示し、左側の縦軸は光LTの反射率R(%)を示し、右側の縦軸は光LTの反射位相Φr(ラジアン)を示す。
また、直線R1は、光LTのうち、波長λが520nmの光の反射率Rを示す。直線R2は、光LTのうち、波長λが580nmの光の反射率Rを示す。直線R3は、光LTのうち、波長λが608nmの光の反射率Rを示す。直線R4は、光LTのうち、波長λが640nmの光の反射率Rを示す。直線R5は、光LTのうち、波長λが700nmの光の反射率Rを示す。
構造体104の配向角度φ0が0以上π以下の範囲において、選択反射帯域の波長λを有する光(直線R2〜R4)の反射率Rは100%である。一方、選択反射帯域外の波長λを有する光(直線R1、R5)の反射率Rは20%以下である。
また、四角マークΦr1は、光LTのうち、波長λが520nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr2は、光LTのうち、波長λが580nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr3は、光LTのうち、波長λが608nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr4は、光LTのうち、波長λが640nmの光の反射位相Φrを示す。四角マークΦr5は、光LTのうち、波長λが700nmの光の反射位相Φrを示す。
四角マークΦr1〜四角マークΦr5の各々は、左斜め上方向に延びる斜線を表す。例えば、700nmの波長λを有する光の反射位相Φr(四角マークΦr5)は、配向角度φ0のπの変化に対して、2π変化している。同様に、他の波長λを有する光の反射位相Φr(四角マークΦr1〜Φr4)も、配向角度φのπの変化に対して、2π変化している。
以上、図5及び図12に示すように、実施形態1に係る光学素子1での配向角度φに対する反射位相Φrの変化率(2π/(π/2))は、第4比較例に係る光学素子100での配向角度φ0に対する反射位相Φrの変化率(2π/π)の2倍である。
次に、図1、図2、及び図13〜図17を参照して、第1層A1のリタデーションRdについて説明する。なお、図13〜図17におけるグレースケールは実際はカラースケールである。図1に示すように、第1層A1のリタデーションRdは、第1層A1の第1要素Q1の複屈折Δn1と、第1層A1の厚みL1とを用いて、次式により表される。
Rd=Δn1×L1
第1層A1のリタデーションRdは、波長λcを用いると、3λc(2m+1)/8以上であり、かつ、5λc(2m+1)/8以下であることが好ましい。「m」はゼロ以上の整数を示す。波長λcは、第1層A1の外部から第1層A1に入射する光の波長を示す。
例えば、光学素子1を反射素子として利用するときは、波長λcは、第2層A2によって選択反射されることの可能な光の波長であり、第2層A2の選択反射帯域内のいずれかの波長を示す。波長λcは、例えば、選択反射帯域の中心波長であるが、中心波長に限定されない。
例えば、光学素子1を透過素子として利用するときは、波長λcは、第1層A1から第2層A2への入射時に、光の偏光状態が第2構造体B2の螺旋の旋回方向に相反する場合の光の波長を示す。
リタデーションRdを、3λc(2m+1)/8以上であり、かつ、5λc(2m+1)/8以下にすると、光学素子1を反射素子として利用したときに、波長λcを有する光の反射率Rを80%以上にすることができる。また、光学素子1を透過素子として利用したときに、波長λcを有する光の透過率Tを80%以上にすることができる。
「m」がゼロであることが最も好ましい。つまり、第1層A1のリタデーションRdは、3λc/8以上、かつ、5λc/8以下であることが最も好ましい。「m」がゼロ以外の場合と比較して、第1層A1の厚みL1を小さくできるからである。また、第1層A1の厚みL1を小さくできると、第1要素Q1の応答速度を向上できる。
例えば、波長λcが560nmである場合は、第1層A1のリタデーションRdは、210nm以上350nm以下であることが好ましい。
例えば、波長λcが560nmであり、複屈折Δn1が「0.2」である場合は、第1層A1の厚みL1は、1050nm以上1750nm以下であることが好ましい。
なお、波長λcは、光学素子1の設計時の基準として使用できるため、「基準波長λc」と記載する場合がある。
以下、図2及び図13〜図17を参照して、一定条件の下、第1層A1のリタデーションRdを変数として各種計算を実行する。図2に示すように、光学素子1に基づいて、マトリクス法による計算を実行し、リタデーションRdを変数として、反射率R、透過率T、反射位相Φr、及び透過位相Φtを計算する。光LTは第1境界面11に対して垂直に入射する。
第1構造体B1はネマティック液晶を形成する。第1層A1に対する異常光の屈折率ne1は「1.7」であり、第1層A1に対する常光の屈折率no1は「1.5」である。
図13に示す反射率R及び反射位相Φrを計算する際は、第1層A1の厚さL1は「1400nm」である。つまり、第1層A1のリタデーションは280nmであり、第1層A1を半波長板として機能させている。
図14〜図17に示す反射率R、透過率T、反射位相Φr、及び透過位相Φtを計算する際は、第1層A1の厚さL1を、25nm以上5600nm以下の範囲で、25nm単位で変化させる。この場合、光LTの波長λを、第2層A2の選択反射帯域(525nm以上595nm以下)の中心波長λa(=560nm)に固定している。また、第1構造体B1の配向方向を配向角度φで示す。配向角度φは、0(ラジアン)以上π(ラジアン)以下の範囲で、π/90(ラジアン)単位で変化させる。
第2構造体B2はコレステリック液晶を形成する。そして、第2構造体B2の螺旋の旋回方向は右旋回方向を示す。従って、第2層A2は、右円偏光を反射し、左円偏光を透過する。
第2層A2は、選択反射帯域(525nm以上595nm以下)の波長を有する右円偏光を反射する。中心波長λaは560nmである。第2層A2に対する異常光の屈折率ne2は「1.7」であり、第2層A2に対する常光の屈折率no2は「1.5」である。第2層A2の厚さL2は「7000nm」であり、第2構造体B2の螺旋のピッチpは「350nm」である。また、第2構造体B2の配向方向を配向角度φ0で示す。配向角度φ0は、0(ラジアン)である。
図13(a)は、光学素子1に光LTとして左円偏光を入射したときの反射率Rを示すグラフである。図13(a)では、横軸は光LTの波長λを示し、縦軸は反射率Rを示す。図13(a)に示すように、選択反射帯域(525nm以上595nm以下)では、左円偏光の反射率Rは約100%である。中心波長λaは560nmである。この例では、配向角度φは0(ラジアン)である。なお、第1層A1は円偏光の旋回方向を反転させるため、第2層A2への入射時では、左円偏光が右円偏光に反転している。
図13(b)は、光学素子1に光LTとして左円偏光を入射したときの反射率Rの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図13(b)では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの反射率R(%)を示す。
図13(b)に示すように、第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲で、第2層A2は、光LT1のうち、選択反射帯域(525nm以上595nm以下)の波長λを有する光(第3境界面13への入射時に右円偏光)を反射する。光学素子1に入射した左円偏光は第1層A1により右円偏光に反転されるためである。
図13(c)は、光学素子1に光LTとして左円偏光を入射したときの反射位相Φrの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図13(c)では、横軸は光LTの波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LTの反射位相Φr(ラジアン)を示す。
図13(c)に示すように、光LTのうち、選択反射帯域(525nm以上595nm以下)の波長λを有する光の反射位相Φrが、第1構造体B1の配向角度φに依存して変化している。
図14(a)は、光LTとして右円偏光を入射したときの反射率Rの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図14(b)は、光LTとして右円偏光を入射したときの反射位相Φrの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図14(a)及び図14(b)では、横軸は第1構造体B1の配向角度φを示し、左側の縦軸はリタデーションRdを示す。図14(a)では、右側のグレースケールは反射率Rを示し、図14(b)では、右側のグレースケールは反射位相Φrを示す。
図14(a)に示すように、リタデーションRdが0(ラジアン)以上λ/8(ラジアン)以下の範囲で、反射率Rは80%以上である。また、リタデーションRdが7λ/8(ラジアン)以上λ(ラジアン)以下の範囲で、反射率Rは80%以上である。
一方、図14(b)に示すように、リタデーションRdが0(ラジアン)以上λ/8(ラジアン)以下の範囲で、反射位相Φrは配向角度φに依存しない。また、リタデーションRdが7λ/8(ラジアン)以上λ(ラジアン)以下の範囲で、反射位相Φrは配向角度φに依存しない。
図15(a)は、光LTとして右円偏光を入射したときの透過率Tの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図15(b)は、光LTとして右円偏光を入射したときの透過位相Φtの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図15(a)及び図15(b)では、横軸は第1構造体B1の配向角度φを示し、左側の縦軸はリタデーションRdを示す。図15(a)では、右側のグレースケールは透過率Tを示し、図15(b)では、右側のグレースケールは透過位相Φtを示す。
図15(a)に示すように、リタデーションRdが3λ/8(ラジアン)以上5λ/8(ラジアン)以下の範囲で、透過率Tは80%以上である。
一方、図15(b)に示すように、リタデーションRdが3λ/8(ラジアン)以上5λ/8(ラジアン)以下の範囲で、透過位相Φtは、配向角度φに依存している。具体的には、この範囲で、配向角度φのπ(ラジアン)の変化(図中の破線参照)に対して、透過位相Φtは2π変化している。
図16(a)は、光LTとして左円偏光を入射したときの反射率Rの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図16(b)は、光LTとして左円偏光を入射したときの反射位相Φrの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図16(a)及び図16(b)では、横軸は第1構造体B1の配向角度φを示し、左側の縦軸はリタデーションRdを示す。図16(a)では、右側のグレースケールは反射率Rを示し、図16(b)では、右側のグレースケールは反射位相Φrを示す。
図16(a)に示すように、リタデーションRdが3λ/8(ラジアン)以上5λ/8(ラジアン)以下の範囲で、反射率Rは80%以上である。
一方、図16(b)に示すように、リタデーションRdが3λ/8(ラジアン)以上5λ/8(ラジアン)以下の範囲で、反射位相Φrは、配向角度φに依存している。具体的には、この範囲で、配向角度φのπ/2(ラジアン)の変化(図中の破線参照)に対して、反射位相Φrは2π変化している。
図17(a)は、光LTとして左円偏光を入射したときの透過率Tの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図17(b)は、光LTとして左円偏光を入射したときの透過位相Φtの配向角度φ依存性及びリタデーションRd依存性を示すグラフである。図17(a)及び図17(b)では、横軸は第1構造体B1の配向角度φを示し、左側の縦軸はリタデーションRdを示す。図17(a)では、右側のグレースケールは透過率Tを示し、図17(b)では、右側のグレースケールは透過位相Φtを示す。
図17(a)に示すように、リタデーションRdが0(ラジアン)以上λ/8(ラジアン)以下の範囲で、透過率Tは80%以上である。また、リタデーションRdが7λ/8(ラジアン)以上λ(ラジアン)以下の範囲で、透過率Tは80%以上である。
一方、図17(b)に示すように、リタデーションRdが3λ/8(ラジアン)以上5λ/8(ラジアン)以下の範囲で、透過位相Φtは配向角度φに依存していない。また、リタデーションRdが7λ/8(ラジアン)以上λ(ラジアン)以下の範囲で、透過位相Φtは配向角度φに依存していない。
光学素子1に入射した光の波面を変換し、変換後の波面を利用することを目的にする場合には、第2層A2での光の反射率が高い方が好適である。一方、三次元物体の波面を精度良く表現するホログラム素子を光学素子1によって実現する場合には、光の複素振幅、すなわち、位相のみでなく反射光強度を変調することが好ましい。
具体的には、図16から明らかなように、第1層A1の複数の第1構造体B1の配向角度φとリタデーションRdとをそれぞれ空間的に変化させることで、反射位相Φrと反射率Rとの双方を制御できる。例えば、第1要素Q1の配向方向をZ軸に垂直な面内にとどめず、面外に配向させることで、リタデーションRdを空間的に変化させることができる。つまり、第1要素Q1の配向方向を、Z軸に垂直な面に対して傾斜させることで、リタデーションRdを空間的に変化させることができる。この場合、第1要素Q1の配向方向を面外に配向させる配向膜を用いるか、あるいは、電圧を印加することで、第1要素Q1の配向方向を面外に配向させ、動的にリタデーションRdを制御してもよい。
ここで、図1を参照して、光学素子1に追加可能な構成の一例を説明する。第1層A1と第2層A2との間には、液晶の配向を促す媒質を配置してもよいし、絶縁性または導電性の薄膜が配置してもよい。また、基板SB1と第1層A1の間には、液晶の配向を促す媒質を配置してもよいし、電極を配置してもよいし、絶縁性または導電性の薄膜を配置してもよい。さらに、基板SB2と第2層A2との間には、液晶の配向を促す媒質を配置してもよいし、電極を配置してもよいし、絶縁性または導電性の薄膜を配置してもよい。
液晶の配向を促す媒質は、例えば、ポリイミドである。絶縁性の薄膜は、例えば、ポリマーである。導電性の薄膜は、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物:Indium Tin Oxide)である。
次に、図1及び図18〜図23を参照して、第1層A1の複数の第1構造体B1の配向パターンについて具体例を挙げながら説明する。第1層A1は、互いに配向方向の異なる複数の第1構造体を含む。その結果、複数の第1構造体B1は、線形配向パターン又は非線形配向パターンを取り得る。線形配向パターンは、複数の第1構造体B1の配向方向が線形に変化するパターンを示す。「線形に変化」は、例えば、第1構造体B1の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。非線形パターンは、複数の第1構造体B1の配向方向が非線形に変化するパターンを示す。「非線形に変化」は、例えば、第1構造体B1の配向方向の変化量がN次関数で表されることを示す。「N」は2以上の整数を示す。
図18及び図19は、線形配向パターンの一例として、実施形態1に係る第1配向パターン及び第2配向パターンを示す。図20〜図23は、非線形配向パターンの一例として、実施形態1に係る第3配向パターン〜第6配向パターンを示す。図18〜図23では、図面の簡略化のため、基板SB1を省略し、第1境界面11が示されている。また、Z方向に向かって光学素子1を見ている。
(第1配向パターン)
図1及び図18を参照して、第1配向パターンについて説明する。図18は、第1配向パターンを有する光学素子1を示す平面図である。図18に示すように、複数の第1構造体B1は第1配向パターンで並んでいる。具体的には、複数の第1構造体B1は、X方向とY方向とのそれぞれに沿って並んでいる。そして、複数の第1構造体B1のうち、X方向に沿って並んでいる複数の第1構造体B1の配向方向は、X方向に沿って線形に変化している。具体的には、複数の第1構造体B1の配向方向が一定角度で変化している。
一方、複数の第1構造体B1のうち、Y方向に沿って並んでいる複数の第1構造体B1の配向方向は、揃っている。
複数の第1構造体B1を第1配向パターンで配置すると、第1境界面11から出射する光LT2の波面F2は、第1境界面11へ入射した光LT2の波面F2に対して傾斜し、直線状の勾配を有する。例えば、複数の第1構造体B1の配向方向がX方向に沿って角度θずつ変化している場合、光LT2の入射時の波面F2に対する出射時の波面F2の傾斜角度は、4θになる。第1配向パターンでは、波面F2が直線状の勾配を有するように、複数の第1構造体B1の配向方向が変化している。
実施形態1によれば、複数の第1構造体B1を第1配向パターンで配置すると、光LT2の波面F2を傾斜させて出射できる。つまり、光LT2を偏向して出射できる。その結果、例えば、光学素子1は、円偏光ビームスプリッター又は光アイソレーターとして応用可能である。
以下、本明細書において、一定方向に沿って配向方向が180度だけ変化するときの2つの第1構造体B1の間隔を第1構造体B1の周期Tと定義する。従って、ある周期Tの終点での配向方向は180度と示され、次の周期Tの始点での配向方向は0度と示される。ただし、ある周期Tの終点は次の周期Tの始点であるため、ある周期Tの終点での第1構造体B1の配向方向と、次の周期Tの始点での第1構造体B1の配向方向とは同じである。第1配向パターンでは、第1構造体B1の配向方向がX方向に沿って0度から180度まで変化するときの両端の第1構造体B1の間隔が、第1構造体B1の周期Tである。第1配向パターンでの第1構造体B1の周期Tを「周期T1」と記載する。
なお、第2層A2から外部に出射する光LT3の波面F3も、第1境界面11へ入射した光LT3の波面F3に対して傾斜し、第1配向パターンに応じて、第2層A2への入射時の光LT3の位相に対応した直線状の勾配を有する。
(第2配向パターン)
図1及び図19を参照して、第2配向パターンについて説明する。第2配向パターンでは、第1構造体B1の周期Tが短い点で、第1配向パターンと異なる。以下、第2配向パターンが第1配向パターンと異なる点を主に説明する。
図19は、第2配向パターンを有する光学素子1を示す平面図である。図19に示すように、光学素子1において、第2配向パターンでの第1構造体B1の周期T(以下、「周期T2」と記載する。)は、第1配向パターンでの周期T1の略1/2である。従って、複数の第1構造体B1を第2配向パターンで配置すると、入射時の波面F2に対する出射時の波面F2の傾斜角度は、第1配向パターンでの波面F2の傾斜角度の略2倍になる。第2配向パターンでは、波面F2が直線状の勾配を有するように、複数の第1構造体B1の配向方向が変化している。
以上、図18及び図19を参照して説明したように、実施形態1によれば、複数の第1構造体B1の周期Tを調整することによって、光LT2の波面F2の傾斜角度を容易に調整できる。つまり、光LT2の偏向方向を容易に調整できる。周期Tを大きくするほど波面F2の傾斜角度を小さくでき、周期Tを小さくするほど波面F2の傾斜角度を大きくできる。また、光学素子1は、3以上の複数の周期Tを含んでいてもよい。
なお、第2層A2から外部に出射する光LT3の波面F3も、第1境界面11へ入射した光LT3の波面F3に対して傾斜し、第2配向パターンに応じて、第2層A2への入射時の光LT3の位相に対応した直線状の勾配を有する。
(第3配向パターン)
図1及び図20を参照して、第3配向パターンについて説明する。第3配向パターンでは、外部への出射時の光LT2の波面F2が曲面である点で、波面F2が平面である第1配向パターンと異なる。以下、第3配向パターンが第1配向パターンと異なる点を主に説明する。
図20は、第3配向パターンを有する光学素子1を示す平面図である。図20に示すように、複数の第1構造体B1は第3配向パターンで並んでいる。具体的には、複数の第1構造体B1は、X方向とY方向とのそれぞれに沿って並んでいる。そして、複数の第1構造体B1のうち、X方向に沿って並んでいる複数の第1構造体B1の配向方向は、X方向に沿って非線形に変化している。具体的には、第1構造体B1の配向方向の変化量が2次関数で表される。例えば、第1構造体B1の配向方向が、X方向に向かって、角度θ0→角度θ1→角度θ2→角度θ3→角度θ4と変化する(θ0<θ1<θ2<θ3<θ4)。そして、第1構造体B1の配向方向の変化量が、X方向に向かって、(θ1−θ0)、(θ2−θ1)、(θ3−θ2)、(θ4−θ3)である。つまり、第1構造体B1の配向方向の変化量が、X方向に向かって徐々に増大している。
以上、実施形態1によれば、複数の第1構造体B1を第3配向パターンで配置すると、第1境界面11から出射する光LT2の波面F2は曲面を含む。つまり、第3配向パターンでは、波面F2が曲面を含むように、複数の第1構造体B1の配向方向が変化している。
なお、第2層A2から外部に出射する光LT3の波面F3も、第3配向パターンに応じて、第2層A2への入射時の光LT3の位相に対応した曲面を含む。
(第4配向パターン)
図1及び図21を参照して、第4配向パターンについて説明する。第4配向パターンでは、外部への出射時の光LT2の波面F2が線対称な曲面である点で、第3配向パターンと異なる。以下、第4配向パターンが第3配向パターンと異なる点を主に説明する。
すなわち、複数の第1構造体B1は第4配向パターンで並んでいる。具体的には、複数の第1構造体B1は、第1層A1の対称軸AX1に対して対称になるように、対称軸AX1を中心に放射状に配置される。対称軸AX1はZ方向に略平行である。つまり、複数の第1構造体B1の配向方向は、対称軸AX1に対して対称である。
図21(a)は、第4配向パターンを有する光学素子1を示す平面図である。 図21(a)では、Z方向から光学素子1を見たときの第1構造体B1の配向方向が、第1要素Q1の回転角度で表される。また、図21(a)では、0度の回転角度を黒色で表し、180度の回転角度を白色で表す。0度と180度との間は、濃度の異なる灰色で示される。濃い灰色ほど0度に近い値を示し、淡い灰色ほど180度に近い値を示す。
図21(b)は、複数の第1構造体B1の配向分布を示すグラフである。縦軸は、第1要素Q1の回転角度を示し、横軸は、放射方向RDに沿った第1層A1における位置を示す。放射方向RDは、第1層A1の対称軸AX1に略直交する方向であり、対称軸AX1から離れる方向を向いている。放射方向RDは、対称軸AX1に略直交し、対称軸AX1から離れる方向を向いている限り、360度のうちの任意の方向を取り得る。
図21(a)及び図21(b)に示すように、放射方向RDに沿って並んだ複数の第1要素Q1の回転角度は異なる。つまり、放射方向RDに沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は異なる。
具体的には、複数の第1要素Q1の回転角度分布は、対称軸AX1に対して対称であり、同心円状に形成される。また、複数の第1要素Q1の回転角度は、放射方向RDに沿って鋸歯状に変化する。第1構造体B1の周期Tの各々において、第1要素Q1の回転角度は、対称軸AX1から放射方向RDに向かうに従って、曲線状に0度から180度まで変化する。例えば、回転角度は、放物線状(つまり、2次関数的)に変化する。なお、複数の第1要素Q1の回転角度は、第1構造体B1の半周期(T/2)で、鋸歯状に変化していてもよい。この場合、半周期の各々において、第1要素Q1の回転角度は、対称軸AX1から放射方向RDに向かうに従って、曲線状に、0度から90度まで、又は90度から180度まで変化する。
第4配向パターンでは、第1構造体B1の周期Tは、対称軸AX1から放射方向RDに向かって段階的に小さくなる。周期Tが大きいほど第1要素Q1の回転角度の変化勾配は小さくなり、周期Tが小さいほど第1要素Q1の回転角度の変化勾配は大きくなる。
図21(a)及び図21(b)に示すように、複数の第1要素Q1の回転角度を変化させることにより、つまり、第1構造体B1の配向方向を変化させることにより、外部への出射時の光LT2の波面F2は、対称軸AX1に対して対称な曲面を含む。つまり、第4配向パターンでは、波面F2が対称軸AX1に対して対称な曲面を含むように、複数の第1構造体B1の配向方向が変化している。曲面は、光LT2の入射方向と反対方向(Z方向の反対方向)に向かって凸状である。曲面は、例えば、ドーム状又は切頭ドーム状である。
以上、実施形態1によれば、複数の第1構造体B1を第4配向パターンで配置すると、外部への出射時の光LT2の波面F2が、光LT2の入射方向と反対方向に向かって凸状の曲面を含む。従って、光LT2を拡散できる。その結果、例えば、光学素子1は、ホログラフィック素子として応用可能である。また、光学素子1を凹レンズとして応用可能である。また、波面F2は、対称軸AX1に対して対称である。従って、対称軸AX1を中心に均等に光LT2を拡散できる。
また、実施形態1によれば、第1構造体B1の周期Tを調整することによって、光LT2の拡散の範囲(つまり、光LT2の拡がる範囲)を容易に調整できる。周期Tを大きくするほど波面F2の曲率半径が大きくなるため、光LT2の拡散の範囲を狭くでき、周期Tを小さくするほど波面F2の曲率半径が小さくなるため、光LT2の拡散の範囲を拡げることができる。例えば、光LT2の拡散の範囲としての視野角特性を容易に調整できるため、光学素子1をディスプレイに応用する場合に好適である。
さらに、実施形態1によれば、複数の第1要素Q1の回転角度が放射方向RDに沿って鋸歯状に変化している。従って、更に効果的に光LT2を拡散できる。
なお、対称軸AX1は、Z方向に対して傾斜していてもよい。この場合、外部への出射時の波面F2の向きが変わるため、光LT2を偏向させつつ拡散できる。また、波面F2に含まれる曲面が光LT2の入射方向(Z方向)に向かって凸状に湾曲するように、複数の第1構造体B1の配向方向を変化させてもよい。この場合、出射時の光LT2は集光する。その結果、光学素子1を凸レンズとして応用可能である。そして、周期Tを大きくするほど波面F2の曲率半径が大きくなるため、光LT2の焦点距離を長くでき、周期Tを小さくするほど波面F2の曲率半径が小さくなるため、光LT2の焦点距離を短くできる。
また、第2層A2から外部に出射する光LT3の波面F3も、第4配向パターンに応じて、第2層A2への入射時の光LT3の位相に対応した曲面を含む。
(第5配向パターン)
図1及び図22を参照して、第5配向パターンについて説明する。第5配向パターンでは、出射時の光LT2の波面F3が凸凹状である点で、第1配向パターンと異なる。以下、第5配向パターンが第1配向パターンと異なる点を主に説明する。
図22は、第5配向パターンを有する光学素子1を示す平面図である。図22に示すように、複数の第1構造体B1は、X方向とY方向とのそれぞれに沿って並んでいる。そして、複数の第1構造体B1のうち、X方向に沿って並んでいる複数の第1構造体B1の配向方向は、不規則に変化している。また、複数の第1構造体B1のうち、Y方向に沿って並んでいる複数の第1構造体B1の配向方向は、不規則に変化している。従って、外部への出射時の光LT2の波面F2は、凸凹形状を有する。つまり、第5配向パターンでは、波面F2が凸凹形状を有するように、複数の第1構造体B1の配向方向が変化している。
以上、実施形態1によれば、複数の第1構造体B1を第5配向パターンで配置すると、波面F2は凸凹形状を有する。従って、光LT2の入射角に依存することなく、凸凹形状に応じて光LT2を拡散できる。つまり、微細な周期で各第1構造体B1の配向方向を変化させることで、光LT2の入射角に依存することなく、光LT2を拡散できる。例えば、光学素子1は、視野角特性のない光反射素子若しくはスクリーンとして応用したり、真正性を識別するために応用したりすることが可能である。
また、第2層A2によって反射される光LT2の波長帯域が、近赤外線を示す波長帯域になるように、第2層A2を形成する。つまり、反射される光LT2の波長帯域が、近赤外線を示す波長帯域になるように、第2構造体B2のピッチpと屈折率ne2と屈折率no2とを設定する。この場合、光学素子1は、例えば、熱線(例えば、太陽光)を効果的に反射できる。従って、例えば、熱線反射素子として効果的に利用できる。近赤外線を示す波長帯域は、例えば、0.75μm以上1.4μm以下の範囲である。
さらに、波面F2が凸凹形状を有することで、光学素子1の光沢が抑制され、艶消しの色味を有する光学素子1を提供できる。また、微細な周期で各第1構造体B1の配向方向を変化させて、凸凹形状の波面F2を形成することで、モルフォ蝶の鱗粉による光反射原理を再現できる。
なお、第2層A2から外部に出射する光LT3の波面F3も、第5配向パターンに応じて、第2層A2への入射時の光LT3の位相に対応した凸凹形状を有する。
(第6配向パターン)
図1及び図23を参照して、第6配向パターンについて説明する。第6配向パターンでは、波面F2が螺旋面を形成している点で、第3配向パターンと異なる。以下、第6配向パターンが第3配向パターンと異なる点を主に説明する。
図23(a)は、第6配向パターンを有する光学素子1を示す平面図である。 図23(a)に示すように、複数の第1構造体B1の配向方向は、所定点PPの周りに2π(ラジアン)だけ変化している。具体的には、複数の第1要素Q1は、所定点PPの周りに、2π(ラジアン)だけ回転している。
従って、外部への出射時の光LT2の波面F2は螺旋面を含む。つまり、光LT2は、光渦として出射される。光渦とは、特異点を有し、等位相面が螺旋面を形成する光のことである。特異点では光強度が0である。特異点は、所定点PPに相当する。なお、複数の第1構造体B1の配向方向が2π(ラジアン)変化すると、光の位相は8π変化する。
図23(b)は、複数の第1構造体B1の配向分布を示す平面図である。図23(b)での回転角度の表し方は、図21(a)での回転角度の表し方と同じである。図23(b)に示すように、複数の第1要素Q1の回転角度が、所定点PPの周りに2πだけ変化している。
ただし、複数の第1要素Q1の回転角度は、所定点PPの周りにnπ(ラジアン)だけ変化していてもよい。nは1以上の整数を示す。つまり、複数の第1構造体B1の配向方向は、所定点PPの周りにnπ(ラジアン)だけ変化していてもよい。なお、複数の第1構造体B1の配向方向がnπ(ラジアン)変化すると、光の位相は4nπ変化する。
複数の第1構造体B1の配向方向を所定点PPの周りにnπ(ラジアン)だけ変化させることにより、出射時の光LT2の波面F2は螺旋面を含む。つまり、光LT2は、光渦として出射される。
以上、実施形態1によれば、複数の第1構造体B1を第6配向パターンで配置すると、外部への出射時の光LT2の波面F2は螺旋面を含む。従って、光LT2を光渦として出射できる。その結果、光学素子1を利用することで、簡素な構成の光学系によって光渦を生成できる。例えば、光渦はレーザー加工又は顕微鏡下での細胞の操作に用いられるため、光学素子1は、これらの分野で好適に利用できる。
なお、第2層A2から外部に出射する光LT3の波面F3も、第6配向パターンに応じて、第2層A2への入射時の光LT3の位相に対応した螺旋面を含む。従って、光LT3を光渦として出射できる。
(実施形態2)
図24を参照して、本発明の実施形態2に係る光学素子1Xについて説明する。実施形態2に係る光学素子1Xは、実施形態1の第2層A2及び基板SB2(図1)に代えて、反射基板SBRを備える点で、実施形態1と異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図24は、実施形態2に係る光学素子1Xを示す断面図である。図24に示すように、光学素子1Xの構成は、実施形態1に係る光学素子1の構成と同様である。ただし、光学素子1Xは、実施形態1の第2層A2及び基板SB2に代えて、反射基板SBRを備える。反射基板SBRは、実施形態2に係る第1層A1に対する第2層として機能する。
反射基板SBRは、入射する光を反射する。反射基板SBRは、例えば、入射する光を鏡面反射する。反射基板SBRは、例えば、合成樹脂製ミラー、金属製ミラー、誘電体製ミラー、又はガラス製ミラーである。誘電体製ミラーは、例えば、誘電体多層膜ミラーである。
引き続き図24を参照して、具体例を挙げながら、光の反射と透過とを説明する。
光LT1が、基板SB1を通して、第1層A1の第1境界面11に対して垂直に入射する。なお、光LT1は、第1層A1に対して傾斜して入射してもよい。光LT1は光LT2又は光LT3のいずれかを含む。光LT2は第1偏光状態(例えば、左円偏光)を有し、光LT3は第2偏光状態(例えば、右円偏光)を有する。
まず、比較例として、第1層A1が半波長板として機能する場合の光の反射と透過とを説明する。すなわち、第1層A1が光LT1(光LT2、光LT3)の半波長に一致するリタデーションRdを有する場合、第1層A1は、光LT2の偏光状態を第1偏光状態から第2偏光状態に変化させ、光LT3の偏光状態を第2偏光状態から第1偏光状態に変化させる。また、第1層A1は、第1境界面11への入射時の光LT2の位相を、角度θaだけ変化させて、光LT2を反射基板SBRに向けて出射し、第1境界面11への入射時の光LT3の位相を、角度「−θa」だけ変化させて、光LT3を反射基板SBRに向けて出射する。
第1層A1を透過した光LT2及び光LT3は反射基板SBRによって反射される。この場合、反射基板SBRは、光LT2の偏光状態を第2偏光状態から第1偏光状態に変化させ、光LT3の偏光状態を第1偏光状態から第2偏光状態に変化させて、光を反射する。
さらに、第1層A1は、第1偏光状態を有する光LT2及び、第2偏光状態を有する光LT3を透過させ、第1境界面11から出射する。また、第1層A1は、反射基板SBRから第2境界面12への入射時の光LT2の位相を、角度「−θa」だけ変化させて、外部に光LT2を出射し、反射基板SBRから第2境界面12への入射時の光LT3の位相を角度θaだけ変化させて、外部に光LT3を出射する。その結果、光LT2の位相及び光LT3の位相の各々は、第1境界面11への入射時と第1境界面11からの出射時とで相殺されて変化しない。
そこで、実施形態2では、第1層A1は1/4波長板として機能する。1/4波長板は、異常光と常光とに90度の位相差を与え、例えば、円偏光を直線偏光に変換する。具体的には、第1層A1のリタデーションRdが光LT1(光LT2、光LT3)の1/4波長に一致する。つまり、リタデーションRdが光LT1(光LT2、光LT3)の波長の1/4に一致する。そして、第1層A1は光の偏光状態を変化させる。光LT2は、光学素子1への入射前には、第1偏光状態を有している。第1偏光状態は、円偏光(例えば、左円偏光)を示す。光LT3は、光学素子1への入射前には、第2偏光状態を有している。第2偏光状態は、第1偏光状態が示す円偏光と反対の円偏光(例えば、右円偏光)を示す。第1層A1は、光LT2の偏光状態を第1偏光状態(例えば、左円偏光)から第3偏光状態に変化させて、光LT2を出射する。第3偏光状態は直線偏光(例えば、第1振動方向を有する直線偏光)を示す。また、第1層A1は、光LT3の偏光状態を第2偏光状態(例えば、右円偏光)から第4偏光状態に変化させて、光LT3を出射する。第4偏光状態は、第3偏光状態が示す直線偏光に直交する直線偏光(例えば、第2振動方向を有する直線偏光)を示す。第1振動方向と第2振動方向とは直交する。
以下、理解の容易のため、光LT2に着目し、一例として、Y方向に沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は同じであり、X方向に沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は線形に変化する。具体的には、複数の第1構造体B1の配向方向は、X方向に沿って角度θずつ変化する。また、簡単のため、第1偏光状態を「円偏光」と記載し、第3偏光状態を「直線偏光」と記載する。
第1層A1は、第1境界面11から第1層A1に入射した光LT2を透過させて、第2境界面12から光LT2を反射基板SBRに向けて出射する。具体的には、第1層A1は、光LT2の偏光状態を円偏光から直線偏光に変化させて、光LT2を出射する。また、第1層A1は、第1境界面11への入射時の光LT2の位相を、角度θだけ変化させて、光LT2を出射する。
反射基板SBRは、第2境界面12から第1層A1が出射した光LT2を、偏光状態を維持したまま第1層A1の第2境界面12に向けて反射する。つまり、反射基板SBRは、第1層A1が出射した角度θの位相を有する光LT2を、直線偏光及び角度θの位相を維持したまま第1層A1に向けて反射する。
第1層A1は、第2境界面12から第1層A1に入射した光LT2を透過させて、光LT2を第1境界面11から第1層A1の外部に向けて出射する。具体的には、第1層A1は、光LT2の偏光状態を直線偏光から円偏光に変化させて、光LT2を出射する。この場合、Z方向(+Z方向)を見て配向角度θを有する第1構造体B1(ネマティック液晶)は、Z方向と反対方向(−Z方向)を見た場合には配向角度(π−θ)を有する。従って、第1境界面11への光LT2の入射時の偏光状態と第1境界面11からの光LT2の出射時の偏光状態とが一致する。また、第1層A1は、第2境界面12への入射時の光LT2の位相を、角度θだけ変化させて、光LT2を出射する。
第1層A1は、光LT2の往路と復路とのそれぞれで、光LT2の位相を角度θだけ変化させて、第1境界面11から出射している。つまり、第1層A1は、光LT2の位相を角度2θ(=2×θ)だけ変化させて、光LT2を出射している。その結果、第1境界面11から出射する光LT2の波面F2が、第1境界面11から入射した光LT2の波面F2に対して角度2θだけ傾斜して、光LT2が出射される。
なお、光LT2と同様にして、第1層A1は、光LT3の位相を角度「−2θ」(=−2×θ)だけ変化させて、光LT3を出射する。その結果、第1境界面11から出射する光LT3の波面F3が、第1境界面11から入射した光LT3の波面F3に対して角度「−2θ」だけ傾斜して、光LT3が出射される。
以上、図24を参照して説明したように、実施形態2によれば、リタデーションRdを1/4波長とした第1層A1は、光LT2の偏光状態を円偏光から直線偏光に変化させるため、反射基板SBRは、偏光状態(つまり、直線偏光)を維持したまま光LT2を反射する。従って、第1層A1中の光LT2の往路と復路とで、光LT2の進行方向に対して光LT2の位相変化の方向が同じになる。加えて、第1層A1は、第1層A1中の光LT2の往路と復路との双方で、光LT2の位相を変化させる。その結果、第1層A1を半波長板として機能させる場合と比較して第1層A1の厚みL1を小さくしつつ、光LT2の位相を変化させることができる。同様に、第1層A1を半波長板として機能させる場合と比較して第1層A1の厚みL1を小さくしつつ、光LT3の位相を変化させることができる。厚みL1を小さくできると、第1要素Q1の応答速度を向上できる。
また、実施形態2では、ネマティック液晶層だけを含む第4比較例に係る光学素子に光を入射して、光を透過及び出射する場合と比較して、小さな厚みL1を有しつつ、第4比較例に係る光学素子と同じ位相変化を実現できる。
例えば、実施形態2に係る第1層A1を1/4波長板として機能させた場合の光の位相変化率は、第4比較例に係るネマティック液晶層を半波長板として機能させた場合の光の位相変化率と同じである。しかしながら、第1層A1の複屈折Δn1が第4比較例に係るネマティック液晶層の複屈折と同じ場合は、第1層A1の厚みL1は、第4比較例に係るネマティック液晶層の厚みの1/2である。
さらに、実施形態2によれば、コレステリック液晶層だけを含む第5比較例に係る光学素子に光を入射して、光を反射する場合と比較して、小さな厚みL1を有しつつ、第5比較例に係る光学素子と同じ位相変化を実現できる。
例えば、実施形態2に係る第1層A1のリタデーションRdを光の1/4波長に設定した場合の光の位相変化率は、第5比較例に係るコレステリック液晶層のリタデーションを光の半波長に設定した場合の光の位相変化率と同じである。しかしながら、第1層A1の複屈折Δn1が第5比較例に係るコレステリック液晶層の複屈折と同じ場合は、第1層A1の厚みL1は、第5比較例に係るコレステリック液晶層の厚みの1/2である。
また、実施形態2によれば、反射基板SBRを有しているため、光学素子1Xは反射素子として好適である。
さらに、実施形態2によれば、光の位相を電圧印加等の外部からの刺激による屈折率変調だけで変化させる場合と比較して、光LT2の位相の変化量を大きくできる。同様に、光LT3の位相の変化量を大きくできる。
さらに、実施形態2によれば、実施形態1と同様に、第1層A1は、互いに配向方向の異なる複数の第1構造体B1を含む。従って、第1層A1から第1層A1の外部に出射する光LT2の波面F2は、第1層A1の外部から第1層A1への入射時の光LT2の波面F2に対して非平行である。その結果、第1構造体B1の配向方向を異ならせることによって、様々な所望の波面の光LT2を第1層A1から出射できる。同様に、第1構造体B1の配向方向を異ならせることによって、様々な所望の波面の光LT3を第1層A1から出射できる。
さらに、実施形態2によれば、実施形態1と同様に、コレステリック液晶と比較して、複数の第1構造体B1のパターニングが容易であり、複数の第1構造体B1を容易に精度良く所望の配向パターンに設定できる。
なお、第1層A1の複数の第1構造体B1を、例えば、実施形態1に係る第1配向パターン〜第6配向パターンで配置することができる。
次に、第1構造体B1の配向方向が角度「θ」だけ変化するときに、第1層A1の外部に出射される光LT1の位相が角度「2θ」だけ又は角度「−2θ」だけ変化する原理を、ジョーンズベクトルを用いて説明する。
まず、理解の容易のため、第6比較例に係る光学素子による位相変化について説明する。第6比較例に係る光学素子は、図24に示す光学素子1Xを半波長板として機能させている。すなわち、第6比較例に係る光学素子では、第1層A1は、波長λを有する光LT1に対して、半波長板として機能するリタデーションRdを有する。なお、説明の便宜のため、第6比較例においても、実施形態2と同じ参照符号を用いて説明する。そして、適宜、図24を参照して第6比較例を説明する。
図24に示すように、第6比較例では、Z方向に伝搬する光LT1が第1層A1に入射する。そして、第1構造体B1の配向方向をX方向に一致させたときの第1層A1のジョーンズマトリクスMrは、近似的に式(18)で与えられる。
入射→第1層A1伝搬→反射基板SBRによる反射→第1層A1を再度伝搬→出射という一連の過程を経た光LT1の特性は、式(19)及び式(20)で与えられる。
すなわち、光LT1が右円偏光又は左円偏光のいずれかを有する場合、第1境界面11から入射する時の光LT1のジョーンズベクトルVinは、式(19)によって表される。
そして、光LT1が第1境界面11から出射する時の光LT1のジョーンズベクトルVoutは、式(20)によって表される。
式(20)から明らかなように、第6比較例では、第1境界面11に対する入射時と出射時とで、光LT1の偏光状態は反転し、光LT1の位相は変化しない。
次に、実施形態2に係る光学素子1Xによる位相変化について説明する。第1層A1(ネマティック液晶)は、波長λを有する光LT1に対して、1/4波長板として機能するリタデーションRdを有する。そして、Z方向に伝搬する光LT1が第1層A1に入射する。光LT1は、左円偏光又は右円偏光のいずれかを有する。
第1構造体B1の配向方向をX方向に一致させたときの第1層A1のジョーンズマトリクスM0は、式(21)で与えられる。
光が第1境界面11から第2境界面12に伝搬する際の第1層A1のジョーンズマトリクスMは、式(22)で与えられる。
光が第2境界面12から第1境界面11に伝搬する際の第1層A1のジョーンズマトリクスM´は、式(23)で与えられる。
光LT1が左円偏光又は右円偏光のいずれかを有する場合、第1境界面11から入射する時の光LT1のジョーンズベクトルVinは、式(24)によって表される。
そして、光LT1が第1境界面11から出射する時の光LT1のジョーンズベクトルVoutは、式(25)によって表される。
式(25)から明らかなように、光LT1が第1境界面11への入射時に右円偏光を有する場合、第1境界面11からの出射時の光LT1は、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」に対応して、角度「−2θ」の位相を有する。一方、光LT1が第1境界面11への入射時に左円偏光を有する場合、第1境界面11からの出射時の光LT1は、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」に対応して、角度「2θ」の位相を有する。また、第1境界面11に対する入射時と出射時とで、伝搬方向は反転し、光LT1の偏光状態は変化しない。
従って、実施形態2では、波長λを有する光LT1に対して、光LT1の位相を0(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化させる場合、第1構造体B1の配向方向を示す回転角「θ」を0(ラジアン)からπ(ラジアン)まで変化させればよい。
また、実施形態2では、光LT1の位相を0(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化させる場合、複屈折Δn1を有する第1層A1のリタデーションRdは、1/4波長でよい。従って、複屈折Δn1と同じ複屈折を有するコレステリック液晶層だけを用いて光の位相を0(ラジアン)から2π(ラジアン)まで変化させる場合と比較して、第1層A1の厚みL1を小さくできる。例えば、第1層A1の厚みL1を、コレステリック液晶層の厚みの1/2にすることができる。
なお、光LT1が第1境界面11に対して垂直に入射したときの条件で、式(18)〜式(25)を算出しているが、光LT1が第1境界面11に対して傾斜して入射した場合でも、位相特性については、式(18)〜式(25)と同様の位相特性になる。ただし、反射特性は第1層A1の性質に依存する。
(実施形態3)
図25を参照して、本発明の実施形態3に係る光学素子1Yについて説明する。実施形態3に係る光学素子1Yは、実施形態1の第2層A2(図1)に代えて、1/4波長層A21及び反射層A23を含む第2層A2Yを備える点で、実施形態1と異なる。以下、実施形態3が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図25は、実施形態3に係る光学素子1Yを示す断面図である。図25に示すように、光学素子1Yの構成は、実施形態1に係る光学素子1の構成と同様である。ただし、光学素子1Yは、実施形態1の第2層A2に代えて、第2層A2Yを備える。
第2層A2Yは、光の入射時と反射時とで、光の偏光状態を維持したまま光を反射する。
具体的には、第2層A2Yは、1/4波長層A21と、反射層A23とを含む。1/4波長層A21は、第1層A1に対向する。1/4波長層A21は、例えば、ネマティック液晶(ネマティック相)により形成される。ただし、1/4波長層A21の材質は特に限定されない。1/4波長層A21のリタデーションRd4は、1/4波長層A21の複屈折Δn4と、1/4波長層A21の厚みL4とを用いて、次式により表される。
Rd4=Δn4×L4
複屈折Δn4は、1/4波長層A21に対する異常光の屈折率ne4と、1/4波長層A21に対する常光の屈折率no4とを用いて、「ne4−no4」で表される。
1/4波長層A21のリタデーションRd4が、入射する光の1/4波長に一致する。つまり、リタデーションRd4が光の波長の1/4に一致する。その結果、1/4波長層A21は、1/4波長板として機能し、異常光と常光とに90度の位相差を与える。
反射層A23は、入射する光を反射する。反射層A23は、1/4波長層A21に対向し、基板SB2に対向する。反射層A23は、例えば、入射する光を鏡面反射する。反射層A23は、例えば、誘電体多層膜である。
具体的には、反射層A23は、複数の第1誘電体層61と、複数の第2誘電体層62とを含む。第1誘電体層61の数と第2誘電体層62の数とは、同じである。第1誘電体層61と第2誘電体層62とは、交互に配置されて積層される。例えば、第1誘電体層61の屈折率nd1は、第2誘電体層62の屈折率nd2より小さい。例えば、第1誘電体層61の厚みd1は、第2誘電体層62の厚みd2より大きい。第1誘電体層61は、誘電体により形成される。第2誘電体層62は、第1誘電体層61を形成する誘電体と異なる誘電体により形成される。
1/4波長層A21と反射層A23とは、協働して、光の入射時と反射時とで、光の偏光状態を維持したまま光を反射する。つまり、第2層A2Yは、実施形態1に係る第2層A2と同様の反射特性を有する。
引き続き、図25を参照して、具体例を挙げながら、光の反射について説明する。光学素子1Yには、光LT1が入射する。光LT1が、基板SB1を通して、第1層A1の第1境界面11に対して垂直に入射する。なお、光LT1は、第1層A1に対して傾斜して入射してもよい。光LT1は、光LT2又は光LT3のいずれかを含む。光LT2は、第1偏光状態(例えば、左円偏光)を有する。光LT3は、第2偏光状態(例えば、右円偏光)を有する。また、理解の容易のため、第1層A1は、半波長板として機能する。さらに、一例として、Y方向に沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は同じであり、X方向に沿って並んだ複数の第1構造体B1の配向方向は線形に変化する。具体的には、複数の第1構造体B1の配向方向は、X方向に沿って角度θずつ変化する。
以下、光LT2に着目する。第1層A1は、実施形態1と同様に、光LT2の偏光状態を第1偏光状態から第2偏光状態に反転させて、光LT2を第2層A2Yに向けて出射する。また、第1層A1は、第1境界面11への入射時の光LT2の位相を、角度2θ(=2×θ)だけ変化させて、光LT2を第2層A2Yに向けて出射する。
第2層A2Yは、第2境界面12から第1層A1が出射した光LT2を、偏光状態を維持したまま第1層A1の第2境界面12に向けて反射する。つまり、第2層A2Yは、第1層A1が出射した第2偏光状態を有する光LT2を、第2偏光状態を維持したまま第1層A1に向けて反射する。
第1層A1は、実施形態1と同様に、第2境界面12から第1層A1に入射した光LT2の偏光状態を第2偏光状態から第1偏光状態に反転させて、光LT2を第1境界面11から第1層A1の外部に向けて出射する。また、第1層A1は、第2境界面12への入射時の光LT2の位相を、角度2θだけ変化させて、光LT2を第1境界面11から第1層A1の外部に向けて出射する。
第1層A1は、実施形態1と同様に、光LT2の往路と復路とのそれぞれで、光LT2の位相を角度2θだけ変化させて、第1境界面11から出射している。つまり、第1層A1は、光LT2の位相を角度4θ(=4×θ)だけ変化させて、光LT2を出射している。
なお、光LT3については、位相変化の方向が光LT2と異なる。すなわち、第2層A2Yは、第1層A1が出射した第1偏光状態を有する光LT3を、第1偏光状態を維持したまま第1層A1に向けて反射する。従って、第1層A1は、往路と復路との各々で、光LT3の位相を角度「−2θ」(=−2×θ)だけ変化させて、光LT3を第1境界面11から第1層A1の外部に向けて出射する。つまり、第1層A1は、光LT3の位相を角度「−4θ」(=−4×θ)だけ変化させて、光LT3を出射する。
以上、図25を参照して説明したように、実施形態3によれば、実施形態1と同様に、第2層A2Yは、光の偏光状態を維持したまま光を反射する。従って、第1層A1中の光の往路と復路とで、光の進行方向に対して光の位相変化の方向が同じになる。加えて、第1層A1は、第1層A1中の光の往路と復路との双方で、光の位相を変化させる。
従って、実施形態3では、実施形態1と同様に、第1構造体B1の配向方向の変化量に対して、第1層A1から第1層A1の外部に出射する光(出射光)の位相の変化量(つまり、位相の変調量)を比較的大きくできる。その他、実施形態2では、実施形態1と同様の効果を有する。
具体的には、実施形態3では、第2層A2Yは、第2層A2Yへの円偏光の入射時と、第2層A2Yから第1層A1への円偏光の反射時とで、偏光状態、つまり、円偏光の旋回方向を維持したまま円偏光を反射する。従って、円偏光の入射前と反射後とで、円偏光の進行方向に対する円偏光の位相変化の方向が変化しない。その結果、第1層A1は、円偏光の往路と復路との双方で、同方向に位相を変化させるため、第1構造体B1の配向角度の変化に対する円偏光の位相の変化率を比較的大きくできる。特に、第1層A1が半波長板として機能する場合は、第1構造体B1の配向角度の変化に対する円偏光の位相の変化率は、4倍になり、好適である。
特に、実施形態3では、誘電体を有する反射層A23と、1/4波長層A21と含む第2層A2Yは、光の偏光状態を維持したまま光を反射する反射体として効果的に機能する。
なお、例えば、光学素子1Yは、偏光依存性を有しながら集光等を行うミラー、又は、円二色性を評価する分光器として利用できる。また、例えば、第2層A2Yとして、1/4波長層A21及び反射層A23に代えて、メタマテリアルから形成される反射層を配置してもよい。さらに、例えば、反射層A23に代えて、金属製ミラーを配置してもよい。
次に、図25〜図27を参照して、一定条件の下、光学素子1Yの光学的特性について説明する。なお、図26及び図27におけるグレースケールは実際はカラースケールである。一定条件は、次の通りである。
すなわち、第1層A1がネマティック液晶としての1本の第1構造体B1を含み、第1層A1と同様に、1/4波長層A21がネマティック液晶としての1本の構造体を含む場合について、マトリクス法による計算を実行し、円偏光入射時の反射率及び位相特性を計算する。
第1層A1は、半波長板として機能するように、第1層A1のリタデーションRdが設定される。具体的には、第1層A1は、600nmの波長において、半波長板として機能し、円偏光の旋回方向を反転させる。つまり、第1層A1のリタデーションRdが、光の波長の1/2(=300nm)に一致する。
第1層A1に対する異常光の屈折率ne1は「1.7」であり、第1層A1に対する常光の屈折率no1は「1.5」である。第1層A1の厚みL1は「1500nm」である。また、実施形態1と同様に、第1構造体B1の配向方向を配向角度φで示す。
第2層A2の厚みL2は「750nm」である。1/4波長層A21に対する異常光の屈折率ne4は「1.7」であり、1/4波長層A21に対する常光の屈折率no4は「1.5」である。従って、1/4波長層A21の複屈折Δn4(=ne4−no4)は第1層A1の複屈折Δn1(=ne1−no1)と一致する。
6層の第1誘電体層61が設けられる。第1誘電体層61の屈折率nd1は「1.46」であり、第1誘電体層61の厚みd1は「104nm」である。また、6層の第2誘電体層62が設けられる。第2誘電体層62の屈折率nd2は「2.35」であり、第2誘電体層62の厚みd2は「63nm」である。
まず、図26を参照して、光LT2として左円偏光を入射したときの反射率Rと反射位相Φrとを説明する。図26(a)は、光学素子1Yに左円偏光を入射したときの反射率Rの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図26(a)では、横軸は光LT2の波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LT2の反射率R(%)を示す。反射率Rは、第2層A2Yに入射した光LT2の強度に対する第2層A2Yから反射した光LT2の強度の比率を示す。なお、グラフの軸及び反射率Rの定義は、後記の図27(a)についても同様である。
図26(a)に示すように、第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲で、第2層A2Yは、光LT2のうち、510nm以上730nm以下の範囲の波長λを有する光を反射する。
図26(b)は、光学素子1Yに左円偏光を入射したときの反射位相Φrの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図26(b)では、横軸は光LT2の波長λ(nm)を示し、左側の縦軸は第1構造体B1の配向角度φ(ラジアン)を示し、右側のグレースケールは光LT2の反射位相Φr(ラジアン)を示す。反射位相Φrは、第1境界面11から入射後に第2層A2Yで反射されて第1境界面11から出射する時の光LT2の位相を示す。なお、グラフの軸及び反射位相Φrの定義は、後記の図28(a)についても同様である。
図26(b)に示すように、光LT2のうち、510nm以上730nm以下の範囲の波長λを有する光の反射位相Φrが、第1構造体B1の配向角度φに依存して変化している。具体的には、配向角度φが0からπ/2まで変化すると、光LT2の反射位相Φrは、2π変化している(例えば、図中の破線参照)。
次に、図27を参照して、光LT3として右円偏光を入射したときの反射率Rと反射位相Φrとを説明する。図27(a)は、光学素子1Yに左円偏光を入射したときの反射率Rの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図27(a)に示すように、第1構造体B1の配向角度φが0以上π以下の範囲で、第2層A2Yは、光LT3のうち、510nm以上730nm以下の範囲の波長λを有する光を反射する。
図27(b)は、光学素子1Yに右円偏光を入射したときの反射位相Φrの波長λ依存性及び配向角度φ依存性を示すグラフである。図27(b)に示すように、光LT3のうち、510nm以上730nm以下の範囲の波長λを有する光の反射位相Φrが、第1構造体B1の配向角度φに依存して変化している。具体的には、配向角度φが0からπ/2まで変化すると、光LT3の反射位相Φrは、2π変化している(例えば、図中の破線参照)。
ただし、図26(b)及び図27(b)に示すように、左円偏光と右円偏光とで、反射位相Φrの変化の傾斜が反転する。つまり、左円偏光と右円偏光とで、反射位相Φrの変化の方向が、互いに異なっており、互いに逆である。例えば、右円偏光では位相が遅れ、左円偏光では位相が進む。
以上、図26及び図27を参照して説明したように、実施形態3によれば、実施形態1と同様に、第1層A1が半波長板として機能する場合、第1構造体B1の配向角度φの変化(θ)に対する光の位相の変化率は、4倍(4θ)である。なお、第1誘電体層61の数は、「6」に限定されず、単数又は「6」以外の複数であってもよいし、第2誘電体層62の数は、「6」に限定されず、単数又は「6」以外の複数であってもよい。
(実施形態4)
図28及び図29を参照して、本発明の実施形態4に係る光学素子1、製造装置、及び製造方法について説明する。実施形態4に係る光学素子1は、ホログラム素子として機能する点で、実施形態1に係る光学素子1と異なる。以下、実施形態4が実施形態1と異なる点を主に説明する。また、理解を容易にするために、実施形態1の説明で使用した参照符号を使用して、実施形態4を説明する。
まず、図1及び図28を参照して、実施形態4に係る光学素子1の製造装置201の構成を説明する。図28は、製造装置201を示すブロック図である。図1及び図28に示すように、製造装置201は光学素子1を製造する。光学素子1の第1層A1は、第2層A2が反射した光LT2を第1層A1の外部に向けて出射し、光LT2に対応する仮想物体の像を形成する。仮想物体は「物体」の一例である。仮想物体とは、コンピューターが作り出した仮想空間に配置されている物体のことである。仮想物体は、立体であってもよいし、平面であってもよい。また、第2層A2は、第2層A2を透過する光LT3を第2層A2の外部に向けて出射し、光LT3に対応する仮想物体の像を形成する。
製造装置201は、情報処理装置210と、配向処理装置220と、液晶配置装置230とを備える。情報処理装置210は、物体データ作成部211と、配向分布データ作成部213と、配向処理データ作成部215とを含む。具体的には、情報処理装置210は、コンピューターであり、プロセッサーと記憶装置とを有する。そして、プロセッサーは、記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行することによって、物体データ作成部211、配向分布データ作成部213、及び配向処理データ作成部215として機能する。記憶装置は、例えば、半導体メモリーのようなメモリーを含み、ハードディスクドライブを含んでいてもよい。
次に、図28及び図29を参照して、製造装置201の動作について説明する。図29は、製造装置201が実行する光学素子1の製造方法を示すフローチャートである。図29に示すように、製造方法は、工程S100と工程S200とを含み、光学素子1を製造する。工程S100は、工程S1〜工程S9を含む。
工程S100において、製造装置201は、第1層A1を形成する。
工程S200において、製造装置201は、第2層A2を形成する。
具体的には、図29に示すように、工程S1において、物体データ作成部211は、仮想物体を表す物体データを作成する。具体的には、物体データは、仮想物体の形態を表す。仮想物体の形態は、仮想物体の形状、模様、若しくは色彩、又はこれらの一部若しくは全部の結合を示す。模様は記号及び図形を含む。記号は、文字、数字、及びマークを含む。
工程S3において、配向分布データ作成部213は、物体データに基づいて、複数の第1構造体B1の配向方向を算出し、配向分布データ(第1配向データ)を作成する。配向分布データは、複数の第1構造体B1の配向方向の分布を示す。
例えば、配向分布データは、第1境界面11に位置する第1要素Q1の配向方向、つまり、第1構造体B1の配向方向を、第1角度範囲内で示す。第1角度範囲は、例えば、0ラジアン以上2πラジアン以下である。なお、第1要素Q1の配向方向は、第1境界面11に対して略平行でなくてもよく、第1境界面11に対して傾斜していてもよい。
工程S5において、配向処理データ作成部215は、配向分布データに基づいて、配向処理データ(第2配向データ)を作成する。配向処理データは、配向処理装置220の実行する配向処理方法に対応して作成され、配向処理装置220によって使用される。配向処理データは、配向分布データが示す配向方向の分布に対応する配向パターンを示す。具体的には、第1境界面11に位置する複数の第1要素Q1の配向方向が配向分布データの示す配向方向を示すように、配向処理データは、配向層の表面構造及び/又は表面物性を定める。配向層は、基板SB1に形成され、複数の第1要素Q1と接触して複数の第1構造体B1を配向させる。配向層は、例えば、配向膜、又は基板SB1に形成された構造(具体的には、微細構造)である。配向層の表面物性は、例えば、配向層の液晶に対するアンカーリング方位である。
例えば、配向処理データは、第1境界面11に位置する第1要素Q1の配向方向、つまり、第1構造体B1の配向方向を、第2角度範囲内で示す。第2角度範囲は、例えば、第1角度範囲の1/4である。なぜなら、第1要素Q1の配向方向が、ある値からπ/2ラジアンだけ変化すると、光LT2の位相が、2πラジアンだけ変化するからである。なお、例えば、第2角度範囲は、第1角度範囲の1/2であってもよい。
例えば、配向処理データ作成部215は、配向分布データに基づいて、配向処理方法に対応して配向処理データを作成する。例えば、配向処理方法が光配向法である場合、照射偏光に対して、第1要素Q1が、平行に配向したり、垂直に配向したりする。従って、配向処理方法及び液晶材料の特性を反映して、配向処理データが作成される。
工程S7において、配向処理装置220は、配向処理データに従って配向層を処理する。その結果、配向層に接触した第1要素Q1の配向方向が配向分布データの示す配向方向を示すように、配向層の表面構造及び/又は表面物性が変化する。なお、配向処理データに従って配向層を処理することを配向処理と記載する場合がある。
例えば、配向処理装置220は、配向処理方法として、光配向法、マイクロラビング法、斜方蒸着法、又は構造配向法を実行することができる。
光配向法は、基板に成膜した感光性の配向膜に偏光を照射することにより、配向膜に接触する液晶分子の配向方向を制御する。配向膜と液晶材料との組み合わせによって、液晶分子は、照射した偏光に対して、平行に配向したり、垂直に配向したりする。
マイクロラビング法は、基板に成膜した配向膜(例えば、ポリイミド系の配向膜)を布で擦ることにより液晶分子の配向を促す。配向膜の特性に依存して、液晶分子は、擦った方向に対して、平行又は垂直に配向する。
斜方蒸着法は、基板に対して斜め方向から配向膜(例えば、二酸化ケイ素膜)を成膜することにより、配向膜に接触する液晶分子の配向を促す。成膜は原料を基板に蒸着させることにより実行される。蒸着する角度によって液晶分子の配向方向が変わる。
構造配向法は、基板に、微細な構造を配向層として形成し、配向層に接触する液晶分子の配向を促す。例えば、棒状液晶分子は基板に形成された微細な溝構造に沿って配向する。なお、配向層の処理は、基板に、微細な構造を配向層として形成することを含む。
工程S9において、液晶配置装置230は、第1層A1に対応する液晶が配向層に接触するように液晶を配置する。配向層には配向処理が実行されているため、液晶の第1要素Q1が配向し、第1層A1が形成される。
なお、工程S200では、製造装置201は、工程S3〜工程S9と同様にして、第2層A2を形成する。
以上、図28及び図29を参照して説明したように、実施形態4によれば、ホログラム素子として機能する光学素子1を製造できる。
すなわち、製造装置201は、仮想物体を表す物体データに基づいて配向分布データを作成し、配向分布データに基づいて配向処理データを作成する。従って、第1層A1には、仮想物体の像が、複数の第1構造体B1の配向方向の分布として記録される。そして、第1層A1に光を照射し、第2層A2によって反射された光を第1層A1が外部に出射することにより、記録された仮想物体の像が再生される。つまり、光学素子1がホログラム素子として機能する。このように、実施形態4では、ホログラム素子として機能する光学素子1を製造できる。
また、実施形態4によれば、配向処理を実行して第1要素Q1を配向させ、仮想物体の像を、複数の第1構造体B1の配向方向の分布として記録させる。従って、一般的なホログラム素子と比較して、ホログラム素子として機能する光学素子1を容易に製造できる。なお、一般的なホログラム素子では、例えば、半導体製造用の電子線描画装置により原版を微細加工して記録処理することが要求される。
さらに、実施形態4によれば、仮想物体を任意に設定して、物体データを作成できる。従って、所望の仮想物体の像を光学素子1に容易に記録させることができる。
さらに、実施形態4によれば、光学素子1は、第1境界面11から入射した光を反射し、光に対応する仮想物体の像を形成する。つまり、光学素子1は、仮想物体の像を記録及び再生でき、ホログラム素子として機能する。その結果、光学素子1の応用範囲を更に拡張できる。例えば、光学素子1をセキュリティ素子として機能させることができる。例えば、セキュリティ素子としての光学素子1は、再生する像(例えば、図柄)を、入射する偏光に依存して変化させる。この場合、特に、真贋判定において有効である。例えば、セキュリティ素子としての光学素子1は、特定の偏光の光を入射したときだけ、像(例えば、図柄)を再生する。この場合も、特に、真贋判定において有効である。実施形態4では、第2層A2の選択反射性を有効に活用できる。例えば、光学素子1を透明なセキュリティ素子として機能させることができる。具体的には、不可視波長域(例えば、近赤外域)の光を反射するようにピッチpを設定する。従って、光学素子1に可視波長域の光が入射した場合、光学素子1は透明である。一方、光学素子1に不可視波長域(例えば、近赤外域)の光を照射した場合、仮想物体の像が形成される。
(実施形態5)
図30及び図31を参照して、本発明の実施形態5に係る光学素子1Aについて説明する。実施形態5では、光学素子1Aの第1構造体B1の配向方向が動的に制御される点で、実施形態1の光学素子1と異なる。以下、実施形態5が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図30(a)及び図30(b)は、実施形態5に係る光学素子1Aを備える光学装置DVを示す図である。なお、図30(a)及び図30(b)では、図面の簡略化のため、基板SB1及び基板SB2を二点鎖線で示し、1本の第1構造体B1及び1本の第2構造体B2を示している。
図30(a)に示すように、光学装置DVは、光学素子1Aと、制御部50と、電源ユニット52と、複数のスイッチSWとを備える。
光学素子1Aは、図1に示す光学素子1の構成に加えて、複数の電極ユニット40をさらに備える。電極ユニット40の各々は、単数又は複数の第1構造体B1に対応して配置される。電極ユニット40は、基板SB1の一対の主面のうち、第1層A1に対向する主面に配置される。
電極ユニット40の各々は、第1電極41と第2電極42とを含む。第1電極41と第2電極42とは、第1構造体B1の中心軸CAを挟む。中心軸CAは、第1構造体B1の中心を通り、Z方向に沿って延びる。第1電極41及び第2電極42の各々は、例えば、透明色を有し、ITO(インジウム・スズ酸化物:Indium Tin Oxide)により形成される。なお、第1電極41及び第2電極42の各々は、半透明色を有していてもよいし、他の色彩を有していてもよい。
制御部50は電源ユニット52及び複数のスイッチSWを制御する。具体的には、制御部50はプロセッサー及び記憶装置を有する。そして、プロセッサーが記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行して、電源ユニット52及び複数のスイッチSWを制御する。
電源ユニット52は、制御部50の制御を受けて、電極ユニット40ごとに制御電圧(電圧)を生成し、電極ユニット40ごとに制御電圧を印加する。そして、電極ユニット40の各々は、対応する第1構造体B1の配向方向を制御する制御電圧を、対応する第1構造体B1に印加する。制御部50は、電極ユニット40ごとに、電源ユニット52が生成する制御電圧を制御する。制御電圧は、直流電圧又は交流電圧である。制御部50は、例えば、制御電圧が直流電圧の場合は、制御電圧の電圧値を制御する。制御部50は、例えば、制御電圧が交流電圧の場合は、制御電圧の周波数及び/又は振幅を制御する。交流電圧は、例えば、矩形波、三角波、正弦波、又は鋸歯状波である。
引き続き図30(a)及び図30(b)を参照して、光学装置DVの動作を説明する。図30(a)に示すように、光学素子1Aの初期状態では、制御部50は、複数のスイッチSW(具体的にはすべてのスイッチSW)をオフにする。従って、電極ユニット40の各々に制御電圧は印加されない。その結果、複数の第1構造体B1(具体的には全ての第1構造体B1)の配向方向は、揃っており、略平行である。図30(a)の例では、第1構造体B1の各々の配向方向は、Y方向に略平行である。
次に、図30(b)に示すように、制御部50は、複数のスイッチSW(具体的にはすべてのスイッチSW)をオンにする。従って、電極ユニット40の各々に制御電圧が印加される。その結果、第1構造体B1ごとに、第1構造体B1の配向方向が、印加された制御電圧の特性に応じて変化する。制御電圧の特性とは、例えば、制御電圧が直流の場合は電圧値のことであり、制御電圧が交流の場合は、周波数及び/又は振幅のことである。
次に、図31を参照して、電極ユニット40の一形態について説明する。図31は、光学素子1Aを示す平面図である。図31では、Z方向から光学素子1Aを見ている。図31では、図面の簡略化のため、基板SB1を省略し、第1境界面11が示されている。また、図示を省略したが、全てのスイッチSWがオンである。
図31に示すように、複数の第1構造体B1は、X方向とY方向とのそれぞれに沿って並んでいる。Y方向に沿って略一直線に並ぶ複数の第1構造体B1はグループGを形成する。その結果、複数のグループGが形成される。
複数のグループGにそれぞれ対応して、複数の電極ユニット40が配置される。光学素子1AをZ方向から見たときに、各グループGにおいて、第1電極41と第2電極42とは、複数の第1構造体B1を挟む。
制御部50は、電源ユニット52を制御して、電極ユニット40ごとに、電極ユニット40に印加する制御電圧を制御する。その結果、制御部50は、グループGごとに、第1構造体B1の配向方向を動的に制御できる。例えば、制御部50は、複数のグループG間で、第1構造体B1の配向方向を空間的に異ならせることができる。また、例えば、制御部50は、第1構造体B1の配向方向を時間的に異ならせることができる。つまり、制御部50は、第1構造体B1の配向方向を、時間に応じて異ならせることができる。さらに、例えば、制御部50は、複数のグループGの第1構造体B1の配向方向を変化させて、複数のグループGにわたって、初期状態と異なる配向方向に揃えることができる。
以上、図30及び図31を参照して説明したように、実施形態5によれば、電極ユニット40は、第1構造体B1の配向方向を制御する制御電圧を、第1構造体B1に印加する。従って、制御電圧を制御することによって、第1構造体B1の配向方向を動的に制御できる。その結果、第2層A2によって反射されて第1層A1から第1層A1の外部へ出射される光LT2の位相を動的に制御できる。つまり、第1層A1の外部へ出射される光LT2の波面を動的に制御できる。また、第2層A2を透過して第2層A2の外部へ出射される光LT3の位相を動的に制御できる。つまり、第2層A2を透過して第2層A2の外部へ出射される光LT3の波面を動的に制御できる。例えば、光学素子1Aは空間光変調素子として利用でき、光学装置DVは空間光変調器として利用できる。
なお、電極ユニット40を、第1構造体B1ごとに配置することもできる。その結果、制御部50は、第1構造体B1ごとに、第1構造体B1の配向方向を動的に制御できる。また、光学素子1Aの全ての電極ユニット40に同じ特性の制御電圧を印加することもできる。例えば、1個の光学素子1Aによって1個の画素を構成して、複数の光学素子1Aによってディスプレイを構成する場合、1個の光学素子1Aの中では、電極ユニット40に印加する制御電圧の特性は同じであるが、光学素子1Aごとに、制御電圧が制御される。また、1グループGに含まれる第1構造体B1は、特に限定されず、製品仕様に応じて、任意に定めることができる。例えば、光学素子1Aをディスプレイに応用する場合、1グループGを1画素に対応させてもよい。
(実施形態6)
図32を参照して、本発明の実施形態6に係る光学素子1Bについて説明する。実施形態6では、第1層A1〜第3層A3を有する点で、第1層A1及び第2層A2を有する実施形態1と異なる。以下、実施形態6が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図32は、実施形態6に係る光学素子1Bを示す断面図である。図32に示すように、光学素子1Bは、図1に示す光学素子1の構成に加えて、第3層A3をさらに備える。第2層A2は第3層A3に対向する。第2層A2は、第1層A1と第3層A3との間に配置される。
第3層A3は、互いに対向する第5境界面15と第6境界面16とを有する。第5境界面15と第4境界面14とは対向している。例えば、第5境界面15と第4境界面14とは接している。第5境界面15と第6境界面16とは、Z方向に直交している。第1層A1と第2層A2と第3層A3とは基板SB1とSB2とに挟まれる。第1層A1は基板SB1に対向し、第3層A3は基板SB2に対向する。第1境界面11は基板SB1に対向し、第6境界面16は基板SB2に対向する。
具体的には、第3層A3は、液晶層であり、ネマティック液晶により形成される。第3層A3は厚さL3を有する。厚さL3はZ方向に沿った厚さを示す。第3層A3は複数の第3構造体B3を含む。複数の第3構造体B3はネマティック液晶を形成する。第3構造体B3の各々はZ方向に沿って延びる。第3構造体B3の各々は、Z方向に沿って連なる複数の第3要素Q3を含む。第3要素Q3は液晶分子である。第3要素Q3は例えば棒状である。なお、本願の図面では、図面の簡略化のため、第3要素Q3の数を限定しているが、第3構造体B3の各々において、多数の第3要素Q3が連なっている。
第3構造体B3の各々において、複数の第3要素Q3の配向方向は揃っている。複数の第3要素Q3の配向方向が揃っていることは、複数の第3要素Q3の配向方向が略平行であることを示しているため、複数の第3要素Q3の配向方向が、略同一である場合だけでなく、略180度異なる場合も、複数の第3要素Q3の配向方向が揃っていることを示す。第3構造体B3の各々において、第3要素Q3の配向方向は、第3構造体B3の配向方向を示す。
第3構造体B3においても、第1構造体B1と同様に、第3要素Q3、第3要素群、及び第3要素群のダイレクターが定義される。つまり、1つの第3要素Q3は、Z方向に直交する1つの平面内に位置する複数の第3要素のうち、ダイレクターの方向を向いている第3要素を代表して示している。従って、第3構造体B3の各々において、Z方向に直交する1つの平面内には、第3要素Q3を含む複数の第3要素(以下、「第3要素群」と記載する。)が位置している。第3構造体B3の各々において、第3要素群のダイレクターの方向は、第3構造体B3の配向方向を示す。
第3構造体B3の各々において、複数の第3要素Q3の配向方向(具体的には、複数の第3要素群のダイレクター)が揃っていることは、第3層A3が第3構造体B3ごとに一方向に対する配向秩序を有する構造体を形成していることに相当する。また、複数の第3要素Q3の配向方向が揃っていることの意義は、複数の第1要素Q1の配向方向が揃っていることの意義と同様であり(実施形態1参照)、配向方向の厳密な一致だけを意味していない。
第3構造体B3は、第3構造体B3の配向方向及び第3層A3のリタデーションに応じて、入射する光に対して第1構造体B1と同様の挙動を示す。
すなわち、第3構造体B3の各々は、第3構造体B3の配向方向に応じて、つまり、第3要素Q3の配向方向に応じて、第3構造体B3への入射時の光の位相に対して、第3構造体B3からの出射時の光の位相を変化させる。
実施形態6では、特に明示しない限り、複数の第3構造体B3の配向方向が異なるように、複数の第3構造体B3の配向方向が固定されている。ただし、複数の第3構造体B3の配向方向が揃っていてもよい。また、複数の第3構造体B3の配向方向を動的に制御してもよい。
第3構造体B3の各々は光学異方性を有する。従って、第3構造体B3の各々は、第3構造体B3への入射時の光の偏光状態に対して、第3構造体B3からの出射時の光の偏光状態を変化させる。光の偏光状態は、光の進行方向に対して定められる。
以上、第3層A3は、第2層A2から第3層A3への入射時の光の偏光状態に対して、第3層A3から第3層A3の外部への出射時の光の偏光状態を、複数の第3構造体B3の複屈折によって変化させる。加えて、第3層A3は、第2層A2から第3層A3への入射時の光の位相に対して、第3層A3から第3層A3の外部への出射時の光の位相を、複数の第3構造体B3の配向方向に応じて変化させる。つまり、第3層A3は、第2層A2から第3層A3への入射時の光の波面に対して、第3層A3から第3層A3の外部への出射時の光の波面を、複数の第3構造体B3の配向方向に応じて変化させる。
なお、第3構造体B3の配向方向は、第1構造体B1の配向方向と同様に、第3要素Q3の配向角度又は第3要素群のダイレクターの配向角度で表される。
また、複数の第3構造体B3の配向パターンは、複数の第1構造体B1の配向パターンと異なっていてもよいし、同じでもよい。第3層A3のリタデーションRd3(=Δn3×L3)は、第1層A1のリタデーションRdと異なっていてもよいし、同じでもよい。複屈折Δn3は、第3層A3に対する異常光の屈折率ne3と常光の屈折率no3とを用いて表される(Δn3=ne3−no3)。
例えば、第4境界面14からの出射時の光LT3の位相が角度2θのときに(図1参照)、第6境界面16からの出射時の光LT3の位相がゼロになるように、複数の第3構造体B3の配向方向を決定して、複数の第3構造体B3を配向する。つまり、第4境界面14からの出射時の光LT3の波面F3の傾斜角度2θのときに(図1参照)、第6境界面16からの出射時の光LT3の波面F3の傾斜角度がゼロになるように、複数の第3構造体B3の配向方向を決定して、複数の第3構造体B3を配向する。具体的には、複数の第1構造体B1の配向方向を、X方向に向かって角度「θ」ずつ変化させる。一方、複数の第3構造体B3の配向方向を、X方向に向かって角度「−θ」ずつ変化させる。
例えば、第4境界面14からの出射時の光LT3の位相が角度2θのときに(図1参照)、第6境界面16からの出射時の光LT3の位相が4θになるように、複数の第3構造体B3の配向方向を決定して、複数の第3構造体B3を配向する。つまり、第4境界面14からの出射時の光LT3の波面F3の傾斜角度2θのときに(図1参照)、第6境界面16からの出射時の光LT3の波面F3の傾斜角度が4θになるように、複数の第3構造体B3の配向方向を決定して、複数の第3構造体B3を配向する。具体的には、複数の第1構造体B1の配向方向を、X方向に向かって角度「θ」ずつ変化させる。さらに、複数の第3構造体B3の配向方向を、X方向に向かって角度「θ」ずつ変化させる。
以上、図32を参照して説明したように、実施形態6によれば、光学素子1Bは第3層A3を備える。従って、複数の第3構造体B3の配向方向に応じて、第2層A2を透過して第3層A3に入射した光LT3の位相を更に変化させることができる。つまり、複数の第3構造体B3の配向方向に応じて、第2層A2を透過して第3層A3に入射した光LT3の波面F3を更に変化させることができる。
また、実施形態6によれば、第3層A3の複屈折によって、第2層A2を透過して第3層A3に入射した光LT3の偏光状態を更に変化させることができる。なお、第3層A3の複数の第3構造体B3を、例えば、実施形態1に係る第1配向パターン〜第6配向パターンで配置することができる。
さらに、実施形態6は、実施形態1と同様に、第1層A1及び第2層A2を備える。従って、実施形態6では、実施形態1と同様の効果を有する。なお、複数の第3構造体B3の配向方向が揃っていてもよい。
ここで、第1境界面11からだけ光を入射することに加えて、第6境界面16からも光を入射してもよい。この場合、例えば、第1境界面11と第6境界面16との各々から、第2構造体B2が選択反射可能な光を入射する。その結果、第1境界面11から入射した光は第2層A2によって反射されて、第1層A1から外部に出射する。第1層A1から外部に出射した光の位相及び波面は、第1層A1の複数の第1構造体B1の配向方向に応じて変化している。一方、第6境界面16から入射した光は第2層A2によって反射されて、第3層A3から外部に出射する。第3層A3から外部に出射した光の位相及び波面は、第3層A3の複数の第3構造体B3の配向方向に応じて変化している。
(変形例)
本発明の実施形態6に係る変形例では、第3層A3は、第2層A2と同様の構造を有する。つまり、第3層A3を構成する複数の第3構造体B3が、螺旋状である。例えば、第3層A3がコレステリック液晶を形成する。
具体的には、第3構造体B3の螺旋の1周期の両端のうち、一方端に位置する第3要素Q3は、他方端に位置する第3要素Q3に対して略360度だけ旋回している。Z方向に直交する各平面内において、複数の第3構造体B3にわたって、複数の第3要素Q3の配向方向が、揃っており、略平行である。つまり、複数の第3構造体B3の空間位相は互いに同一である。また、複数の第3構造体B3の螺旋の旋回方向は同じである。さらに、複数の第3構造体B3の配向方向は固定されている。さらに、第3構造体B3の螺旋の旋回方向は、第2構造体B2の螺旋の旋回方向と異なる。
なお、実施形態6及び変形例において、第1層A1と第2層A2との間、及び/又は、第2層A2と第3層A3との間には、液晶の配向を促す媒質を配置してもよいし、絶縁性または導電性の薄膜を配置してもよい。また、基板SB1と第1層A1の間には、液晶の配向を促す媒質を配置してもよいし、電極を配置してもよいし、絶縁性または導電性の薄膜を配置してもよい。さらに、基板SB2と第3層A3との間には、液晶の配向を促す媒質を配置してもよいし、電極を配置してもよいし、絶縁性または導電性の薄膜を配置してもよい。
(実施形態7)
図1を参照して、本発明の実施形態7に係るフィルムユニットについて説明する。フィルムユニットは、第1フィルムと第2フィルムとを含む。第1フィルムは、実施形態1に係る第1層A1に基づいて形成される。第2フィルムは、実施形態1に係る第2層A2に基づいて形成される。なお、フィルムユニットは、基板SB1及び基板SB2を含まない。
図1に示すように、第1フィルムは、例えば、第1層A1の複数の第1構造体B1を重合させることによって形成される。具体的には、第1フィルムは、第1層A1を構成する複数の第1要素Q1を重合させることによって形成される。この場合、例えば、第1層A1に光を照射することによって、複数の第1要素Q1を重合させる。
又は、第1フィルムは、例えば、所定の温度又は所定の濃度において液晶状態を示す高分子液晶材料を、液晶状態において特定の配向パターンを有する複数の第1構造体B1を形成するように配向制御し、その後配向を維持したまま固体に転移させることで形成される。
重合又は固体への転移によって、第1フィルムでは、隣り合う第1構造体B1は、第1構造体B1の配向を維持したまま、互いに結合している。その結果、第1フィルムでは、各第1要素Q1の配向方向が固定されている。
第2フィルムは、例えば、第2層A2の複数の第2構造体B2を重合させることによって形成される。具体的には、第2フィルムは、第2層A2を構成する複数の第2要素Q2を重合させることによって形成される。この場合、例えば、第2層A2に光を照射することによって、複数の第2要素Q2を重合させる。
又は、第2フィルムは、例えば、所定の温度又は所定の濃度において液晶状態を示す高分子液晶材料を、液晶状態において空間位相の揃った複数の第2構造体B2を形成するように配向制御し、その後配向を維持したまま固体に転移させることで形成される。
重合又は固体への転移によって、第2フィルムでは、隣り合う第2構造体B2は、第2構造体B2の配向を維持したまま、互いに結合している。その結果、第2フィルムでは、各第2要素Q2の配向方向が固定されている。
フィルムユニットは、第1フィルムと第2フィルムとを対向するように配置することによって形成される。例えば、フィルムユニットは、第1フィルムと第2フィルムとを対向するように、第1フィルムユニットと第2フィルムとを密着することによって形成される。
実施形態7に係る第1フィルムと同様にして、実施形態2〜実施形態6に係る第1層A1に基づいて、実施形態2〜実施形態6に対応する第1フィルムを形成できる。また、実施形態7に係る第2フィルムと同様にして、実施形態4〜実施形態6に係る第2層A2に基づいて、実施形態4〜実施形態6に対応する第2フィルムを形成できる。さらに、実施形態7に係るフィルムユニットと同様にして、第1フィルムと第2フィルムとを対向するように配置することによって、実施形態4及び5に対応するフィルムユニットを形成できる。また、実施形態2に対応する第1フィルムと反射基板SBRとを対向するように配置することによって、フィルムユニットを形成できる。さらに、実施形態3に対応する第1フィルムと第2層A2Yとを対向するように配置することによって、フィルムユニットを形成できる。
また、実施形態6に対応して、第3フィルムを、例えば、第3層A3の複数の第3構造体B3を重合させることによって形成する。具体的には、第3フィルムは、第3層A3を構成する複数の第3要素Q3を重合させることによって形成される。この場合、例えば、第3層A3に光を照射することによって、複数の第3要素Q3を重合させる。
又は、第3フィルムは、例えば、所定の温度又は所定の濃度において液晶状態を示す高分子液晶材料を、液晶状態において特定の配向パターンを有する複数の第3構造体B3を形成するように配向制御し、その後配向を維持したまま固体に転移させることで形成される。
重合又は固体への転移によって、第3フィルムでは、隣り合う第3構造体B3は、第3構造体B3の配向を維持したまま、互いに結合している。その結果、第3フィルムでは、各第3要素Q3の配向方向が固定されている。
さらに、実施形態6に対応して、第1フィルムと第2フィルムと第3フィルムとを積層することによって、フィルムユニットを形成できる。この場合、第2フィルムが、第1フィルムと第3フィルムとで挟まれる。
以下、実施形態7に係るフィルムユニットと実施形態1〜実施形態6に対応するフィルムユニットとを総称して、実施形態7に係る「本フィルムユニット」と記載する。本フィルムユニットは光学素子として機能する。また、本フィルムユニットは基板SB1及び基板SB2を有していない。
実施形態7によれば、本フィルムユニットは、実施形態1〜実施形態6に係る光学素子1、光学素子1X、光学素子1Y、光学素子1A、及び光学素子1Bと同様の効果を有する。また、本フィルムユニットは、実施形態1〜実施形態6と同様に、円偏光ビームスプリッター、光アイソレーター、ホログラフィック素子、凹レンズ、凸レンズ、ディスプレイ、光反射素子、スクリーン、又はセキュリティ素子として応用可能である。
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
図1及び図33〜図36を参照して、本発明の実施例に係る光学素子1と第7比較例に係る光学素子とを説明する。実施例では、図1を参照して説明した実施形態1に係る光学素子1を使用した。図1に示すように、第1層A1が460nmの波長λで半波長板として機能するように、第1層A1の厚みL1を設定した。第1層A1と第2層A2とをそれぞれフィルムにして、貼り合わせて使用した。従って、基板SB1及び基板SB2は使用しなかった。また、複数の第1構造体B1は、第2配向パターンを有した。第2構造体B2の旋回方向は、右旋回方向であった。
図33は、実施例に係る光学素子1が採用した第2配向パターンを示す平面図である。図33では、Z方向から光学素子1を見ている。図33では、第1境界面11が示されている。第1構造体B1の配向方向の表し方は、図21での配向方向の表し方と同じである。
図33に示すように、実施例の第2配向パターンは、10周期で第1構造体B1を配置した点で、2周期で第1構造体B1を配置した図19に示す第2配向パターンと異なった。
光学素子1には、左円偏光を有する光LT2だけを入射した。具体的には、光LT2だけを、第1境界面11に対して垂直に入射した。そして、第2境界面12から反射して第1境界面11から出射した光LT2を、顕微鏡下で、マイケルソン干渉計によって観測した。観測の際は、460nmの波長λの光だけを透過するフィルターを通して、干渉縞を観測した。
図34は、実施例に係る光学素子1が出射した光LT2に対応する干渉縞を示す図である。図34に示すように、干渉縞F2bを観測できた。干渉縞F2bは、第1境界面11から出射した光LT2の位相変化に対応していた。つまり、干渉縞F2bは光LT2の波面を表した。そして、干渉縞F2bは、光LT3の位相変化のない干渉縞F2aに対して、傾斜角度K1を有していた。
次に、図35を参照して、第7比較例に係る光学素子100について説明する。図35は、光学素子100を示す図である。図35に示すように、光学素子100は、図9を参照して説明した光学素子100と同様である。ただし、第7比較例では、光学素子100は、コレステリック液晶を形成する多数の構造体104を含んだ。多数の構造体104は、460nmの波長λを有する光LTを反射する屈折率とピッチpとを有していた。
また、多数の構造体104の螺旋の空間位相は異なっていた。そして、複数の傾斜した反射面108を形成した。構造体104の旋回方向は、右旋回方向を示していた。層103の厚みLは、実施例に係る第1層A1の厚みL1と同じだった。層103をフィルムにして使用した。従って、基板101及び基板102は使用しなかった。また、境界面106での複数の構造体104の配向パターンは、図33に示す第2配向パターンと同じであった。
光学素子100には、右円偏光を有する光LTだけを、境界面106に対して垂直に入射した。そして、反射面108から反射して境界面106から出射した光LTを、顕微鏡下で、マイケルソン干渉計によって観測した。観測の際は、460nmの波長λの光だけを透過するフィルターを通して、干渉縞を観測した。
図36は、第7比較例に係る光学素子100が出射した光LTに対応する干渉縞を示す図である。図36に示すように、干渉縞Fbを観測できた。干渉縞Fbは、境界面106から出射した光LTの位相変化に対応していた。つまり、干渉縞Fbは光LTの波面を表した。そして、干渉縞Fbは、光LTの位相変化のない干渉縞Faに対して、傾斜角度K2を有していた。
図34及び図36に示すように、実施例に係る傾斜角度K1は、第7比較例に係る傾斜角度K2より大きかった。具体的には、実施例に係る傾斜角度K1は、第7比較例に係る傾斜角度K2の約2倍であった。
実施例に係る傾斜角度K1が第7比較例に係る傾斜角度K2より大きいことは、実施例の光学素子1による位相変化が、第7比較例に係る光学素子100による位相変化よりも大きいことを表していた。具体的には、実施例の光学素子1による位相変化は、第7比較例に係る光学素子100による位相変化の約2倍であることが示された。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(9))。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる3実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(1)図1を参照して説明した第1層A1の複数の第1構造体B1は、任意の配向パターンで形成することができ、実施形態1〜実施形態6に示す配向パターンに限定されない。また、図32を参照して説明した第3層A3の複数の第3構造体B3は、任意の配向パターンで形成することができ、実施形態6に示す配向パターンに限定されない。
(2)実施形態1〜実施形態7では、光を、第1境界面11に対して入射角度が略90度になるように、第1境界面11に入射させたが、第1境界面11に対して入射角度が鋭角になるように、第1境界面11に入射させることもできる。
(3)実施形態1〜実施形態7において、第1層A1はネマティック相に限定されない。第1層A1が、ネマティック相以外の一方向に対する配向秩序を有する液晶相であってもよい。つまり、第1層A1は、ネマティック相以外の、第1構造体B1ごとに一方向に対する配向秩序を有する液晶相を形成していてもよい。実施形態6の第3層A3についても同様に、ネマティック相に限定されない。
また、第2層A2はコレステリック相に限定されない。第2層A2が、コレステリック相以外のカイラル液晶相であってもよい。つまり、複数の第2構造体B2は、コレステリック相以外のカイラル液晶相を形成していてもよい。コレステリック相以外のカイラル液晶相は、例えば、カイラルスメクチックC相、ツイストグレインバウンダリー相、又はコレステリックブルー相である。また、コレステリック相は、例えば、ヘリコイダルコレステリック相であってもよい。
(4)本発明の適用は、液晶に限定されない。例えば、実施形態1〜実施形態7の第1層A1は、液晶に代えて、第1構造体B1ごとに一方向に対する配向秩序を有する構造体を形成していてもよい。第1層A1は、例えば、第1構造体B1ごとに一方向に対する配向秩序を有する、有機物、無機物、金属、又は結晶である。また、第1層A1は、例えば、異方性を持つポリマーにより形成されていてもよいし、金属あるは誘電体のナノロッド構造を有していてもよい。実施形態6の第3層A3についても同様に、液晶に限定されない。
また、実施形態1〜実施形態7の第2層A2において、液晶に代えて、カイラルな構造体を配置してもよい。つまり、複数の第2構造体B2は、カイラルな構造体を形成してもよい。カイラルな構造体は、例えば、螺旋無機物、螺旋金属、又は螺旋結晶である。
螺旋無機物は、例えば、Chiral Sculptured Film(以下、「CSF」と記載する。)である。CSFは、基板を回転させながら無機物を基板に蒸着した光学薄膜であり、螺旋状の微細構造を有する。その結果、CSFは、コレステリック液晶と同様の光学特性を示す。
螺旋金属は、例えば、Helix Metamaterial(以下、「HM」と記載する。)である。HMは、金属を微細な螺旋構造体に加工した物質であり、コレステリック液晶のように円偏光を反射する。
螺旋結晶は、例えば、Gyroid Photonic Crystal(以下、「GPC」と記載する。)である。GPCは、3次元的な螺旋構造を有する。一部の昆虫又は人工構造体はGPCを含む。GPCは、コレステリックブルー相のように円偏光を反射する。
(5)実施形態1〜7に係る光学素子1、光学素子1X、光学素子1Y、光学素子1A、光学素子1B、及びフィルムユニット(以下、「光学素子1等」と記載する。)を複数製造して、複数の光学素子1等を積層することもできる。この場合、複数の光学素子1等の構造は互いに異なっていてもよい。また、実施形態6において、基板SB2と第3層A3との間に、単数又は複数の層が配置されていてもよい。
例えば、第1層のフィルムユニットが仮想物体としてのリンゴの「軸」の像を茶色で形成し、第2層のフィルムユニットが仮想物体としてのリンゴの「葉」の像を緑色で形成し、第3層のフィルムユニットが仮想物体としてのリンゴの「果実」の像を赤色で形成する。その結果、「軸」と「葉」と「果実」とで、カラーのリンゴの像が形成される。
例えば、ある偏光の光を照射したときは、第1層のフィルムユニットが第1の仮想物体の像を形成し、他の偏光の光を照射したときは、第2層のフィルムユニットが第2の仮想物体の像を形成する。本発明では、第2層A2の選択反射性を有効に活用できる。
(6)光学素子1等は様々な分野で応用可能である。例えば、光学素子1等は、ホログラフィック光学素子として機能することができる。例えば、光学素子1等は、光を特定の方向に反射又は拡散させることで、折り返しミラー、スクリーン、又はレンズとして機能する。例えば、ホログラフィック光学素子は、ウェアラブルディスプレイに搭載できる。
例えば、光学素子1等は、装飾用素子又は装飾用フィルムとして機能することができる。例えば、光学素子1等は、どの角度から見ても同じ色の光を反射する。その結果、光学素子1等は、半透過型かつ金属光沢を有する装飾用素子又は装飾用フィルムとして機能する。
例えば、実施形態7に係るフィルムユニットとガラス基板とを備えるスクリーンを形成できる。フィルムユニットはガラス基板の表面に貼付される。そして、スクリーンは、例えば、ウェアラブルデバイスのディスプレイとして利用できる。
例えば、実施形態7に係るフィルムユニットとガラスとを備えるガラス板を形成できる。フィルムユニットは、ガラスに貼付される。フィルムユニットは、入射光の一部を反射光として反射する。この場合、フィルムユニットは、反射光を入射光の入射方向と略逆方向に反射する。又は、フィルムユニットは、入射光の入射角度に依存することなく、入射光の一部を反射光として反射する。
例えば、実施形態7に係るフィルムユニットとガラスとを備えるガラス板は、自動車又は建造物の窓ガラスとして利用できる。この場合、熱線としての入射光が入射したときに、熱線としての反射光の反射方向を制御して、人間が反射光を浴びないようにすることができる。また、熱線としての反射光を、人間が反射光を浴びないように、特定の方向に集光したりできる。また、例えば、ガラス板を、高い視野角特性を有する透過率の透明型プロジェクタースクリーンとして利用できる。
(7)光学素子1等に、刺激を付与することによって、光学素子1等の特性を動的に制御できる。例えば、光学素子1等に電気的刺激を付与する(例えば、電圧又は電流の印加)。光学素子1は、電気的刺激に応答し、複数の第1構造体B1の配向方向を変化させる。例えば、光学素子1等に光刺激を付与する(例えば、光の照射)。光学素子1は、光刺激に応答し、複数の第1構造体B1の配向方向を変化させる。例えば、光学素子1等に機械的刺激を付与する(例えば、応力の印加)。光学素子1は、機械的刺激に応答し、複数の第1構造体B1の配向方向を変化させる。例えば、光学素子1等に化学的刺激を付与する(例えば、化学反応の誘起)。光学素子1は、化学的刺激に応答し、複数の第1構造体B1の配向方向を変化させる。なお、実施形態6の光学素子1Bに刺激を付与することによって、複数の第3構造体B3の配向方向を変化させてもよい。
(8)実施形態1〜実施形態7において、光学素子1等に入射する光は、可視光に限定されず、可視光領域外の波長を有する光であってもよい。例えば、特に波長及び周波数は限定されないが、光学素子1等に電磁波(例えば、テラヘルツ波)を入射してもよい。
(9)実施形態1〜実施形態7において、光学素子1等は、略平板状に限定されない。光学素子1等は、例えば、湾曲又は屈曲していてもよい。例えば、光学素子1等が湾曲している場合、ミラー等を作成した際の収差の補正に有用である。また、光学素子1等は、弾性を有していてもよい。光学素子1等が弾性を有していると、例えば、任意の曲率で光学素子等を湾曲させることができる。