JP6856047B2 - 電線の防水構造 - Google Patents

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Description

本発明は、電線の防水構造に関し、さらに詳しくは、電線端末のスプライス部等において、止水材によって電線導体に防水処理を施す防水構造に関する。
導体の外周を絶縁被覆で被覆した電線においては、複数の電線間で導体を接合すること等を目的として、絶縁被覆を除去して、導体を絶縁被覆から露出させた部位が設けられることが多い。このように導体が露出した部位が、水との接触が起こる可能性のある場所に設けられる場合には、露出された導体に対して、防水処理が施される。自動車等の車両や船舶、航空機、機械装置等に用いられる電線においては、水との接触が頻繁に起こる場合もあり、そのような防水構造を設けることの必要性が、特に高くなる。
電線の防水構造の例として、特許文献1に、複数本の被覆電線のストリップをジョイントして成るスプライス電線と、該スプライス電線のジョイント部およびその近傍に被せた合成樹脂製のキャップと、該キャップ内においてスプライス電線とキャップ間および被覆電線相互間を閉塞固定する樹脂層とから成るスプライス電線の防水構造が開示されている。樹脂層は、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂などの未硬化樹脂を硬化することにより形成されている。
特開平10−243539公報
特許文献1に開示される防水構造のように、電線において、導体が露出した箇所に、止水材を用いて防水構造を形成する際に、エポキシ樹脂等よりなる樹脂材料に、有機高分子材料や無機材料よりなるフィラーを添加することで、靱性や機械的強度等の特性を止水材に付与できる可能性や、防水性等、止水材が有する特性を高めることができる可能性がある。しかし、電線導体が複数の素線の集合体よりなる場合に、導体に防水処理を施すためには、素線間に形成される微小な空隙を含め、防水構造を形成すべき部位の全体に、フィラーを含んだ止水材を、均一性高く充填する必要がある。止水材の充填が不十分な部位が存在すると、防水構造全体として、十分な防水性を確保するのが難しくなる。また、止水材中におけるフィラーの分布が不均一になっていると、防水構造において、フィラーによる特性付与や特性向上の効果が十分に得られない箇所が生じる可能性がある。
本発明の解決しようとする課題は、複数の素線の集合体よりなる導体に、止水材を用いて防水処理を施すに際し、フィラーを含んだ止水材を均一性高く充填することができる電線の防水構造を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明にかかる電線の防水構造は、複数の素線が集合してなる導体の少なくとも一部の領域を、止水材で封止した防水構造において、前記止水材は、樹脂材料と、前記樹脂材料中に分散したフィラーと、を含有し、前記フィラーは、平均粒径が、1μm以上、かつ前記素線の外径の15%以下であり、前記止水材における含有量が、前記樹脂材料に対して1質量%以上、20質量%以下である。
ここで、前記フィラーの平均粒径は、10μm以下であるとよい。
また、前記フィラーは、ゴムまたはエラストマーよりなる軟質フィラーであるとよい。あるいは、前記フィラーは、無機化合物よりなる硬質フィラーであるとよい。
前記止水材は、熱硬化性を有する樹脂組成物の硬化物よりなるとよい。
前記防水構造は、複数の電線の導体が端末部で露出されて相互に接合されたスプライス部が、キャップ部材に収容され、前記止水材が、前記キャップ部材の内部に充填されたものであるとよい。
上記発明にかかる電線の防水構造においては、防水構造を構成する止水材において、樹脂材料に分散されるフィラーの平均粒径が、前記素線の外径の15%以下となっている。また、フィラーの含有量が、樹脂材料に対して、1質量%以上、20質量%以下となっている。フィラーの粒径と含有量が、上記のようになっていることで、導体を構成する素線の間の微小な空隙にも、特性の付与や防水性等の特性の向上に効果を示すのに十分な量のフィラーが、分布しやすくなっている。また、止水材を液状の組成物の状態で導体に接触させる場合に、組成物の粘度の過度の上昇が起こりにくいため、素線の間の微小な空隙にも、組成物が浸透しやすい。これらの効果により、素線間の微小な空隙を含め、防水処理を施すべき部位に、フィラーを含んだ止水材を、均一性高く充填することができる。その結果、防水構造の各部において、高い防水性を確保するとともに、フィラーによる特性付与や特性向上の効果を利用することができる。
ここで、フィラーの平均粒径が、10μm以下である場合には、特に効果的に、導体を構成する素線の間の微小な空隙に、フィラーを分布させることができる。
ここで、フィラーが、ゴムまたはエラストマーよりなる軟質フィラーである場合には、軟質フィラーを止水材に分散させることで、止水材に靱性を付与するともに、止水材の弾性率を下げることができる。その結果、止水材に発生する熱応力を低減することができ、防水構造が、冷却と加熱を繰り返して受ける冷熱環境に置かれた場合にも、止水材に割れが発生し、防水性が低下するのを、抑制することができる。
あるいは、フィラーが、無機化合物よりなる硬質フィラーである場合には、硬質フィラーを止水材に分散させることで、止水材の機械強度を向上させるとともに、線膨張率を下げることができる。その結果、止水材に発生する熱応力を低減することができ、冷熱環境下でも、止水材に割れが発生し、防水性が低下するのを抑制することができる。
止水材が、熱硬化性を有する樹脂組成物の硬化物よりなる場合には、樹脂組成物を未硬化の液状の状態で調製し、防水構造を形成すべき部位に接触させることで、導体を構成する素線の間の微小な空隙にも、樹脂組成物を均一に浸透させやすい。当該樹脂組成物を熱硬化させることで、フィラーを含有する止水材が、素線の間の微小な空間に均一性高く充填された防水構造を、簡便に製造することができる。
防水構造が、複数の電線の導体が端末部で露出されて相互に接合されたスプライス部が、キャップ部材に収容され、止水材が、キャップ部材の内部に充填されたものである場合には、電線端末のスプライス部において、高い防水性能を有する防水構造を、簡便に製造することができる。
本発明の一実施形態にかかる防水構造を有するワイヤーハーネスの端末部の構成を示した透視側面図である。 電線の断面を示す図であり、(a)は全体図、(b)は拡大図である。
以下、図面を用いて、本発明の実施形態にかかる電線の防水構造について、詳細に説明する。本発明の実施形態にかかる電線の防水構造は、複数の素線が集合してなる導体の少なくとも一部の領域を、止水材で封止するものであれば、どのような電線のどのような部位に形成されてもよいが、以下では、複数の電線を有するワイヤーハーネスの端末において、露出された導体が相互に接合されたスプライス部に、防水構造を形成する場合を例として、説明を行う。
[防水構造を有するワイヤーハーネス]
図1に、本発明の一実施形態にかかる防水構造を有するワイヤーハーネス1の構成の一例を示す。ワイヤーハーネス1は、電線束2と、電線束2の端末に形成されたスプライス部3と、スプライス部3を含む電線束2の端末部に設けられた防水部4、とを有する。防水部4が、本発明の一実施形態にかかる防水構造として構成されている。
電線束2は、複数の電線20を、軸を揃えて束にしたものよりなっている。図示した形態では、3本の電線20が、電線束2を構成している。図2(a)に断面を示すように、各電線20は、長尺の導体21と、導体21の外周を被覆する絶縁被覆22と、を有する絶縁電線として構成されている。
電線20を構成する導体21は、図2(a)に示すように、複数の素線21aの集合体よりなっている。複数の素線21aは、軸を揃えて束ねられているだけでもよいが、相互に撚り合わせられ、撚線として導体21を構成していることが好ましい。素線21aとしては、公知の金属素線を用いることができる。素線21aを構成する金属材料は特に限定されず、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を例示することができる。素線21aの外径は、特に限定されるものではないが、後述する止水材42に含まれるフィラーFが配置される空隙Sを、素線21aの間に十分に確保する等の観点から、0.10mm以上であることが好ましい。また、スプライス部3を形成するための抵抗溶接の行いやすさ等の観点から、0.5mm以下であることが好ましい。そのような範囲の外径を有する素線は、自動車用の電線の導体を構成する素線として、汎用されている。
電線20を構成する絶縁被覆22の材質も特に限定されない。絶縁被覆22を構成する材料として、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)等のハロゲン系ポリマー、熱可塑性エラストマー、ゴムなどを挙げることができる。
電線束2の端末において、各電線20の絶縁被覆22が除去され、導体21が絶縁被覆22に覆われずに露出された状態となっている。電線束2を構成する各電線20の導体21が、露出された部位において、相互に接合され、スプライス部3を形成している。スプライス部3は、各電線20の導体21が、圧着、抵抗溶接、超音波溶接等によって接合され、固着されている。
そして、電線束2の端末のスプライス部3を含む部位が、防水部4によって被覆されている。防水部4は、キャップ41と、止水材42と、を有している。
キャップ41は、絶縁性の樹脂材料よりなり、一端に閉塞部41aを、他端に開放部41bを有する有底の筒状体として構成され、内部に空間を有している。キャップ41には、電線束2が、開放部41bから挿入され、内部空間に収容されている。電線束2は、端末のスプライス部3の先端から、導体21が絶縁被覆22に被覆された部位の一部までにわたる領域を、キャップ41の内部空間に収容されている。
キャップ41を構成する樹脂材料は、特に限定されるものではなく、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系ポリマー、熱可塑性エラストマー、ゴム等を例示することができる。キャップ41は熱収縮性材料より構成してもよく、この場合には、キャップ41が熱収縮された状態にあることが好ましい。また、後述するように、キャップ41の内部空間に充填される止水材42が、光硬化性の樹脂組成物の硬化物よりなる場合には、キャップ41を構成する材料が、その樹脂組成物の光硬化に用いる光に対して、透過性を有することが好ましい。
キャップ41の内部空間には、止水材42が密に充填されている。これにより、キャップ41に収容された電線束2の端末部は、スプライス部3の先端から、導体21が絶縁被覆22に被覆された部位の一部までにわたる領域が、止水材42に包埋され、止水材42によって封止された状態にある。止水材42に封止された部位において、止水材42は、電線束2を構成する各電線20の間の空間、各電線20の絶縁被覆22と導体21の間の空間、そして、各電線20の導体21を構成する素線21aの間に形成されている空隙Sを占めて、充填されている。
以上のように、ワイヤーハーネス1では、スプライス部3を含む電線束2の端末において、複数の電線20の間の空間、各電線20の導体21と絶縁被覆22の間の空間、各電線20の導体21を構成する素線21aの間の空隙Sの各領域に、止水材42が充填され、それらの領域に充填された止水材42が一体に連続して封止することで、電線束2の端末部に水が接触したとしても、電線束2を構成する各電線20の内部に侵入するのが阻止され、導体21が、水との接触から保護される。このように、止水材42によって、導体21に対する防水性が発揮される。さらに、防水部4において、止水材42によって封止された部位が、キャップ41に収容されていることで、キャップ41が止水材42の防水性を補助するとともに、止水材42を物理的に保護する役割を果たす。
[止水材の構成材料]
ここで、止水材42の構成材料の詳細について説明する。止水材42は、上記のように、樹脂材料と、フィラーFとを含有している。フィラーFは、樹脂材料中に分散されている。止水材42は、絶縁性材料として構成されていることが好ましい。
止水材42を構成する樹脂材料は、特に限定されるものではない。樹脂材料として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を例示することができる。後述するように、フィラーFの添加によって、冷熱環境での止水材42の割れを抑制する効果が大きく得られるという観点からは、線膨張係数や弾性率が高く、冷熱環境において割れを生じやすい樹脂種である、エポキシ系樹脂またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。樹脂材料は、1種のみを用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
止水材42は、硬化性を有する樹脂組成物(止水材組成物)の硬化物よりなることが好ましい。その場合には、止水材42を構成する止水材組成物を、未硬化の流動性を有する状態で調製し、本実施形態にかかる電線束2の端末部等、防水部4を形成すべき場所に配置してから、硬化させることができる。このように、流動性の高い状態で、止水材組成物を電線20に接触させることで、電線20を構成する導体21の素線21aの間の空隙S等、微小な空間にも、止水材組成物を浸透させ、止水材42で封止することができる。その結果、硬化を経て、防水部4を構成する止水材42の各部において、高い防水性を確保することが可能となる。止水材組成物が備える硬化性としては、熱硬化性、湿気硬化性、二液反応硬化性、および光硬化性を例示することができる。これらのうち、硬化を簡便に行えるという点で、熱硬化性樹を備えることが好適である。
フィラーFを構成する材料は、特に限定されるものではなく、有機高分子材料や、無機材料よりなる形態を例示することができる。フィラーFの材料特性に応じて、止水材42に新たな特性を付与することや、防水性等、止水材42が有する特性を向上させることができる。フィラーFは、1種のみを用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
フィラーFの平均粒径(D50;以下、単に「粒径」と称する場合がある)は、1μm以上、かつ素線21aの外径の15%以下となっている。フィラーFの平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折・散乱を用いた粒度分布測定によって、評価することができる。
フィラーFの平均粒径を、1μm以上としておくことで、フィラーFを添加した止水材組成物の粘度が過度に上昇するのを避けることができる。止水材組成物の粘度が高くなりすぎると、導体21の素線21aの間の空隙S等、微小な空間に、止水材組成物が浸透しにくくなる。しかし、粘度の過度の上昇を避けることで、そのような微小な空間にも、均一性高く、止水材組成物を浸透させることができ、その状態で止水材組成物を硬化させることで、防水部4を構成する止水材42の全域において、高い防水性を得ることができる。
一方、フィラーFの平均粒径を、素線21aの外径の15%以下としておくことで、導体21の素線21aの間の空隙Sをはじめ、微小な空間にも、フィラーFを分布させやすくなる。図2(b)に示すように、導体21の素線21aの間には、周囲を複数の素線21aに囲まれて、微小な空隙Sが存在している。フィラーFの粒径が、この空隙Sの大きさよりも大きければ、空隙Sに充填される止水材42の中に、フィラーFを配置することができない。すると、導体21の外側等、広い空間には、フィラーFが所定の濃度で分散された止水材42を配置することができるが、素線21aの間の空隙Sには、止水材42を構成する樹脂成分のみが浸透し、空隙Fに充填された止水材42にフィラーFが含有されなくなる。この場合には、空隙Sに充填された止水材42において、フィラーFによる特性の付与や向上の効果を享受することができない。例えば、フィラーFが、冷熱環境における止水材42の割れを抑制する効果を有する場合に、素線21aの間の空隙Sに、フィラーFが配置されなければ、素線21aの間の空隙Sに充填された止水材42において、他の部位に充填された止水材42よりも、冷熱環境での割れが発生しやすくなる可能性がある。すると、素線21aの間の部位を起点として、止水材42に割れが発生しやすくなり、防水部4を構成する止水材42において、十分な防水性および絶縁性を維持することが難しくなる。
また、フィラーFの粒径が大きい場合に、素線21aの間に止水材組成物を浸透させる際に、フィラーFが素線21aの間の空間に詰まり、止水材組成物の浸透を妨げる可能性がある。すると、止水材組成物の浸透性が悪くなり、素線21aの間に、気泡状の空間が形成されて、止水材42の防水性を低下させる原因となる。
これに対し、フィラーFの粒径が十分に小さく、素線21aの間の微小な空隙Sに、フィラーFを分布させ、空隙Sに充填された止水材42に、フィラーFを含有させることができれば、空隙Sに充填された止水材42においても、他の部位に充填された止水材42と同様に、フィラーFによる特性の付与や向上の効果を享受することができる。例えば、上記のように、フィラーFが、冷熱環境における止水材42の割れを抑制する効果を有する場合に、素線21aの間の部位においても、冷熱環境による割れの発生を効果的に抑制することができる。結果的に、素線21aの間の部位を含めた止水材42の全域で、冷熱環境下での割れを抑制し、高い防水性および絶縁性を維持することが可能となる。
素線21aの間の空隙Sに配置することができるフィラーFの平均粒径の最大値を、相互に接する素線21aの間に形成される空隙Sに、幾何的に収容することができるフィラーFの径の最大値として、規定することができる。図2(b)のように、外径Rの断面円形の素線21aが3本、正三角配置をとって相互に外接した際に、図中に点線で表示するように、素線21aの間に形成される空隙Sに収容することができる球形のフィラーFの直径の最大値rは、r=(2/√3−1)R≒0.15Rとなる。この最大値rに基づいて、止水材42に添加されるフィラーFの平均粒径が、r以下となるようにすればよい。概算して、フィラーFの平均粒径を、素線21aの外径の15%以下とすればよい。さらに、フィラーFを、素線21aの間の空隙Sに余裕をもって配置できるように、平均粒径をr/2以下、さらにはr/4以下とすれば、より好ましい。つまり、フィラーFの平均粒径を、素線2aの外径の8%以下、さらには4%以下とすればよい。なお、導体21を構成する素線21aとして、外径の異なるものを用いている場合には、上記の上限値を、外径の平均値、好ましくは最小値を用いて規定すればよい。
さらに、フィラーFの平均粒径は、上記のようにr以下であることに加え、20μm以下であることが好ましい。さらには、10μm以下、また5μm以下であるとよい。上記のように、自動車用電線に汎用される素線の外径は、0.10mm以上であり、20μm以下との平均粒径は、そのような素線21aの間に形成される空隙SにフィラーFを侵入させるのに、十分に小さいものである。
止水材42におけるフィラーFの含有量は、止水材42を構成する樹脂材料の量に対して、1質量%以上となっている。フィラーFの含有量が少なすぎると、フィラーFの特性を止水材42において十分に発揮させることができないが、含有量を1質量%以上とすることで、止水材42において、フィラーFによる特性の付与や向上の効果を得やすくなる。フィラーFの含有量は、5質量%以上であれば、さらに好ましい。
一方、止水材42におけるフィラーFの含有量は、止水材42を構成する樹脂材料の量に対して、20質量%以下となっている。止水材42におけるフィラーFの含有量が多すぎると、フィラーFを添加した止水材組成物の粘度が高くなりすぎることにより、またフィラーFの凝集が起こることにより、素線21aの間の空隙S等、微小な空間に止水材組成物を浸透させるのが難しくなる。フィラーFの含有量を20質量%以下としておくことで、止水材組成物の粘性の過度の上昇やフィラーFの凝集を抑え、素線21aの間の空隙S等の微小な空間にも、止水材組成物を均一性高く浸透させることができる。その結果、防水部4の全域において、高い防水性を有する止水材42を形成することができる。フィラーFの含有量は、10質量%以下であれば、さらに好ましい。
このように、止水材42に含有されるフィラーFの粒径と含有量の上限および下限が、上記のように設定されていることにより、素線21aの間の空隙Sをはじめとする微小な空間にも、高い均一性をもって止水材42を充填し、止水材42の充填による防水効果を得ることができる。また、素線21aの間の空隙Sをはじめとする微小な空間を含め、止水材42の全域において、フィラーFの添加による特性の付与や向上の効果、例えば防水性の向上の効果を、得ることができる。
止水材42を構成する止水材組成物の粘度は、フィラーFの粒径と含有量の両方に依存するが、素線21aの間の空隙Sに十分に浸透させる観点から、室温にて、9000mPa・s以下であることが好ましい。さらには、5000mPa・s以下であるとよい。
止水材42には、樹脂材料やフィラーFの特性を損なわないかぎりにおいて、フィラーF以外にも、種々の添加剤を添加することができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、着色剤、光吸収剤、光安定剤、消泡剤、硬化剤、密着性助剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、重合禁止剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤等を挙げることができる。なお、滑剤等、粒子状で添加される添加剤については、上記フィラーFと同様、1μm以上、かつ素線21aの外径の15%以下の粒径を有することが好ましい。
[フィラーの例]
上記のように、止水材42に含有されるフィラーFは、その材料組成を限定されるものではなく、材料組成に応じて、止水材42に新たな特性を付与することや、防水性等、止水材42の特性を向上させることができる。好適なフィラーFの例を、以下で説明する。
(1)軟質フィラー
止水材42に含有される好適なフィラーFとして、軟質フィラーを例示することができる。軟質フィラーは、おおむね、デュロメータA硬度で40以下の硬度を有している。止水材42に軟質フィラーを添加することで、冷熱環境下でも、止水材42に割れが発生するのを抑制し、止水材42の防水性を維持することが可能になる。
防水部4が冷熱環境に置かれた際に、樹脂材料の収縮・膨張により、止水材42に割れが発生する可能性がある。特に、止水材42を構成する樹脂材料が、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂である場合には、それらの樹脂材料が大きな線膨張係数と高い弾性率を有し、また脆性の高い材料であることから、冷熱環境下で、止水材42に割れが発生しやすい。止水材42の割れは、止水材42の防水性や絶縁性の低下につながる。
そこで、硬度が低いフィラーFを樹脂材料に添加し、止水材42の弾性率を低下させ、靭性を付与することで、冷熱環境における割れの発生を抑制することができる。冷熱環境での割れは、止水材42に熱応力が生じることで発生するが、熱応力は、材料の線膨張係数と弾性率(ヤング率)の積に比例する。よって、軟質フィラーの添加によって、止水材42の弾性率を低下させることで、熱応力を低減し、耐冷熱衝撃性を向上させることができる。つまり、冷熱環境に置かれても、止水材42に割れが発生しにくく、止水材42の防水性を維持することができる。上記のように、フィラーFの粒径と含有量が規定されていることにより、素線21aの間の空隙Sのような微小な空間にも、軟質フィラーを含んだ止水材42が充填され、冷熱環境下で、素線21aの間の部位を起点とした割れの発生を、効果的に抑制することができる。
軟質フィラーの構成材料の例としては、ゴムおよびエラストマーを挙げることができる。具体的には、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を挙げることができる。
上記のように、樹脂材料に軟質フィラーを含有させることで、止水材42の弾性率を低減することができる。例えば、軟質フィラーの添加により、止水材42の弾性率(ヤング率)を、10%以上、さらには20%以上低減させることができれば、止水材42の耐冷熱衝撃性を効果的に向上させることができる。止水材42の弾性率は、JIS K 7161に準拠して評価することができる。
(2)硬質フィラー
止水材42に含有される好適なフィラーFの別の例として、硬質フィラーを例示することができる。硬質フィラーは、おおむね、モース硬度で5以上の硬度を有している。止水材42に硬質フィラーを添加することで、冷熱環境下でも、止水材42に割れが発生するのを抑制し、止水材42の防水性を維持することが可能になる。
硬質フィラーの添加により、冷熱環境下で止水材42に割れが発生するのが抑制される機構は、上記軟質フィラーの場合とは異なる。硬質フィラーは、その硬度の高さのため、樹脂材料中に分散されることで、止水材42の線膨張係数を低下させる。
上記のように、熱応力は、材料の線膨張係数と弾性率(ヤング率)の積に比例するので、止水材42の線膨張係数を低下させることで、冷熱環境下に置かれた際に、止水材42に発生する熱応力を低減し、止水材42の耐冷熱衝撃性を向上させることができる。つまり、冷熱環境に置かれても、止水材42に割れが発生しにくく、止水材42の防水性を維持することができる。上記のように、フィラーFの粒径と含有量が規定されていることにより、素線21aの間の空隙Sのような微小な空間にも、硬質フィラーを含んだ止水材42が充填され、冷熱環境下で、素線21aの間の部位を起点とした割れの発生を、効果的に抑制することができる。さらに、硬質フィラーの添加により、耐冷熱衝撃性向上の効果に加え、止水材42の機械的強度を向上させる効果も得られる。
硬質フィラーの構成材料の例としては、無機化合物を挙げることができる。具体的には、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属炭窒化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩等を、挙げることができる。これらのうち、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属炭窒化物が、特に高い硬度を有する点で好ましく、それらの化合物の具体例として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、溶融シリカ、結晶シリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を挙げることができる。
上記のように、樹脂材料に硬質フィラーを含有させることで、止水材42の線膨張係数を低減することができる。例えば、硬質フィラーの添加により、止水材42の線膨張係数を、5%以上、さらには10%以上低減させることができれば、止水材42の耐冷熱衝撃性を効果的に向上させることができる。止水材42の線膨張係数は、JIS K 7197に準拠して評価することができる。また、硬質フィラーの添加により、止水材42の引張強度を、20%以上、さらには40%以上増大させることができれば、止水材42の機械的強度を効果的に向上させることができる。止水材42の引張強度は、JIS K 7161に準拠して評価することができる。
[防水構造の形成方法]
止水材42が、硬化性を有する止水材組成物の硬化物よりなる場合には、硬化性を有する止水材組成物を用いて、高い防水性を有する防水部4を、簡便に形成することができる。さらに、防水部4の構成部材として、キャップ41を用いることで、硬化性を有する止水材組成物を用いた防水部4の形成を、簡便に行うことができる。
電線束2の端末のスプライス部3を含む領域に防水部4を形成するには、まず、未硬化の樹脂材料に、フィラーFおよびその他の添加剤を混合し、止水材組成物を調製する。そして、調製した止水材組成物を、キャップ41の内部空間に注入しておく。さらに、スプライス部3の先端から、導体21が絶縁被覆22に被覆された領域までを含む電線束2の端末部を、キャップ41内に保持された止水材組成物中に浸漬する。この際、止水材組成物は、各電線2の間の空間、各電線2の導体21と絶縁被覆22の間の空間、そして各導体21を構成する素線21aの間の空隙Sに浸透する。
当該止水材組成物を硬化させることで、キャップ41の内部空間において、硬化後の止水材42が保持され、スプライス部3を含む電線束2の端末部を封止した、防水部4を形成することができる。止水材42の硬化は、止水材組成物が備える硬化性に応じた方法で行えばよい。例えば、樹脂材料が光硬化性を有する場合には、光照射によって、止水材組成物を硬化させればよい。一方、樹脂材料が熱硬化性を有する場合には、加熱によって、止水材組成物を硬化させればよい。この際、キャップ41が熱収縮性の材料よりなる場合には、キャップ41の構成材料の熱収縮も、同時に行うことができる。
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(1)試料の作製
以下の各試験においては、電線端末のスプライス部に、止水材を用いた防水部を作製し、試料として用いた。
試料の作製には、外径0.16mmの銅合金よりなる素線を撚り合わせた導体の外周を、PVC組成物よりなる絶縁被覆で被覆した絶縁電線を用いた。このような絶縁電線の端末において、絶縁被覆を除去し、導体を露出させた。絶縁電線を3本束にして、端末で露出した導体を抵抗溶接によって相互に接合し、スプライス部を形成した。
そして、PVC組成物よりなるキャップの中に、熱硬化性の止水材組成物を注入し、止水材組成物の中に、上記でスプライス部を形成した電線束の端末部を挿入した。この際、図1に示すように、スプライス部の先端から、導体が絶縁被覆に被覆された部位までをキャップ内の止水材組成物に浸漬した。そして、止水材組成物を、ヒーターによって、キャップの外側から加熱し、硬化させた。
上記で用いた止水材組成物は、アミン系硬化剤を添加した熱硬化型のビスフェノール型エポキシ樹脂に、所定のフィラーを混合することで調製した。フィラーの種類および粒径、含有量は、各実施例および比較例にかかる試料において、以下の各表に示すように選択した。この際、各止水材組成物の室温における粘度を、JIS−K7117−Dに準拠して、粘度計を用いて計測しておいた。また、各フィラーの平均粒径(D50)を、レーザー回折・散乱を用いた粒度分布測定によって、評価しておいた。
(2)耐久後リーク試験の方法
各試料の防水部を構成する止水材の耐冷熱衝撃性を評価するために、耐久後リーク試験を行った。
まず、上記のように作成した防水部を有する各試料に対して、冷熱衝撃を印加した。具体的には、各試料を、−40℃で30分間保持した後、120℃で30分間保持するサイクルを所定回数繰り返した。繰り返しのサイクル数は、500サイクル、700サイクル、1000サイクルとした。
そして、冷熱衝撃の印加を行う前の初期の試料、および各サイクル数の冷熱衝撃の印加を経た試料に対して、室温にて、リーク試験を行った。具体的には、各試料の端末に形成した防水部の全体を水中に浸漬した。電線束を構成する電線についても、1本を除き、全長を水中に浸漬した。そして、水中に浸漬していない1本の電線の、防水部を設けていない側の端末である開口部から、圧力200kPaの圧縮空気を流入させた。
この際、水中に浸漬した他の電線の開口部および防水部から、気泡が発生しているかどうかを、目視にて確認した。いずれの箇所からも気泡が発生しなかった場合には、防水性が高い「A」と評価し、いずれかの箇所から気泡の発生が確認された場合には、防水部に、止水材が十分に充填されていない箇所や、止水材に割れが発生した箇所が存在すると判断し、防水性が低い「B」と判定した。いずれの試料についても、3個体に対して各サイクル数の試験を行い、束にした3本の絶縁電線に対してリーク試験を行って、各個体および各絶縁電線で、同じ判定結果が得られることを確認した。多回の冷熱サイクルを経ても、防水性が高い「A」との結果が得られるほど、止水材が、耐冷熱衝撃性に優れているとみなすことができる。
(3)フィラーの特性の確認
まず、フィラーの添加による止水材の特性の変化を確認するために、種類の異なるフィラーを添加した止水材を用いて作製した試料に対して、耐久後リーク試験を行い、耐冷熱衝撃性を評価した。
また、一部の止水材については、止水材組成物を硬化させて作製した試験片を用いて、JIS K 7161に準拠した弾性率および引張強度、JIS K 7197に準拠した線膨張係数を測定した。ここで、線膨張係数としては、−40℃から120℃の間の平均値を採用した。
ここでは、フィラーとして、以下のものを用いた。止水材において、各フィラーの含有量は、樹脂材料に対して、10質量%とした。
(軟質フィラー)
・アクリルゴムフィラー:カネカ社製「カネエース MP−91」、粒径3μm
・熱可塑性エラストマーフィラー:東レ社製「トレパール TRC」、粒径5μm
(硬質フィラー)
・窒化ケイ素フィラー:デンカ社製、粒径4μm
・シリカフィラー:東海化学工業所製、粒径5μm
・タルクフィラー:日本タルク社製、粒径5μm
下の表1に、各フィラーを止水材に添加した場合について、耐久後リーク試験の結果を、止水材の特性とともに示す。
Figure 0006856047
上記表1によると、軟質フィラーを添加している実施例A1,A2、および硬質フィラーを添加している実施例A3〜A5のいずれにおいても、フィラーを添加していない比較例A1と比較して、リーク試験において、高い防水性が維持される冷熱衝撃のサイクル数が上昇している。これより、軟質フィラーまたは硬質フィラーを樹脂材料に添加することで、止水材の耐冷熱衝撃性が向上し、冷熱衝撃を経ても高い防水性を維持できるようになることが分かる。
止水材の耐冷熱衝撃性を向上させる機構は、軟質フィラーと硬質フィラーで異なっていると考えられる。軟質フィラーを添加した場合には、止水材の弾性率が低下しており、軟質フィラーを添加することで、止水材の弾性率の低下によって、冷熱環境下で止水材に発生する熱応力が低減され、止水材に割れが生じにくくなっていると解釈できる。
一方、硬質フィラーを添加した場合には、線膨張係数が低減されており、硬質フィラーを添加することで、止水材の線膨張係数の低下によって、冷熱環境下で止水材に発生する熱応力が低減され、止水材に割れが生じにくくなっていると解釈できる。硬質フィラーの添加によって、止水材の引張強度も向上している。
硬質フィラーの中で、タルクフィラーを用いている実施例A5においては、耐冷熱衝撃性が、フィラーを添加していない比較例A1よりは向上しているものの、窒化ケイ素フィラーおよびシリカフィラーを用いている実施例A3,A4に比べると、耐冷熱衝撃性向上の程度が小さくなっている。これは、ケイ酸塩を含んでなるタルクの硬度が、窒化ケイ素やシリカの硬度よりも低いことにより、線膨張係数低減の効果が小さいためであると考えられる。
(4)フィラーの粒径の影響の評価
次に、フィラーの粒径が、止水材の特性にどのように影響するかを調べた。ここでは、粒径の異なるフィラーを添加した止水材組成物を用いて作製した試料に対して、1000サイクルの冷熱衝撃の印加を経た後に、リーク試験を行い、耐冷熱衝撃性を評価した。
フィラーとしては、4種類の粒径の窒化ケイ素フィラー(いずれもデンカ社製)を準備した。いずれも、樹脂材料に対して、10質量%の含有量で、止水材に含有させた。
表2に、各粒径のフィラーを添加した場合の試験結果を示す。ここで、実施例B2および比較例B1はそれぞれ、表1の実施例A3および比較例A1と同じものとなっている。
Figure 0006856047
表2によると、フィラーの平均粒径が1μmおよび4μmである実施例B1,B2において、フィラーを含有しない比較例B1の場合よりも、1000サイクルの冷熱衝撃印加後の防水性が高くなっている。そのような範囲の平均粒径を有するフィラーを止水材組成物に添加することで、素線の間の空隙等、微小な空間にも、止水材組成物が浸透するとともに、そのような空間に充填された止水材組成物にフィラーが含有されており、それら微小な空間を含む止水材の全域で、硬質フィラーの添加による耐冷熱衝撃性の向上の効果が得られていると解釈できる。
一方、フィラーの粒径が1μm未満である比較例B2においては、冷熱衝撃印加前の初期状態から、フィラーを含有しない比較例B1よりも、防水性が低くなっている。これは、比較例B2において、比較例B1よりも顕著に高い組成物粘度が観測されていることと対応しており、粒径の小さいフィラーの混合により、止水材組成物の粘度が上昇し、止水材組成物が、素線の間の空隙等、微小な空間に十分に浸透されなかったものと考えられる。また、素線の外径の15%以下として規定されるフィラーの粒径の最大値は、ここでは24μmであり、フィラーの粒径がその最大値を超えている比較例B3においても、冷熱衝撃印加前の初期状態から、フィラーを含有しない比較例B1よりも、防水性が低くなっている。これは、素線間に止水材組成物を浸透させる際に、フィラーが素線間に詰まって止水材組成物の浸透性が悪くなり、素線間に、リークの原因となる気泡状の空間が形成されたことによると解釈される。
(5)フィラーの含有量の影響の評価
最後に、止水材におけるフィラーの含有量が、止水材の特性にどのように影響するかを調べた。ここでは、フィラーの含有量の異なる止水材組成物を用いて作製した試料に対して、耐冷熱衝撃性を評価した。
フィラーとしては、上記「フィラーの特性の確認」の試験において用いたのと同じ、アクリルゴムフィラー(平均粒径3μm)と、窒化ケイ素フィラー(平均粒径4μm)を用いた。それぞれの含有量を、表3,4のように変化させた。含有量は、樹脂材料の量に対する比率(単位:質量%)として示している。
表3,4に、各含有量でフィラーを添加した場合の試験結果を示す。ここで、実施例C3および実施例C7、比較例C1はそれぞれ、表1の実施例A1および実施例A3、比較例A1と同じものとなっている。
Figure 0006856047
Figure 0006856047
表3および表4によると、いずれのフィラーについても、フィラーの含有量が1質量%以上、20質量%以下の範囲にある各実施例においては、フィラーを含有しない場合よりも、多くの冷熱サイクルを経ても防水性を維持することができており、耐冷熱衝撃性が向上していることが分かる。これは、フィラーの含有量が適量であることで、素線の間の空隙等、微小な空間にも、止水材組成物が均一性高く浸透するとともに、そのような空間に充填された止水材組成物にフィラーが含有されていることの結果であると考えらえる。
一方、いずれのフィラーについても、含有量が1質量%未満である場合(比較例C2,C4)には、フィラーを含有しない場合と比べて、耐冷熱衝撃性が向上していない。フィラーの含有量が少なすぎて、フィラーによる耐冷熱衝撃性向上の効果が十分に発揮されていないものと考えられる。さらに、いずれのフィラーについても、含有量が20質量%を超えている場合(比較例C3,C5)には、フィラーを含有しない場合よりも止水材の防水性が低下しており、冷熱衝撃印加前の初期状態から、低い防水性しか得られていない。これは、多量のフィラーを含有することで、止水材組成物の粘度が過度に上昇し、素線間の空隙等、微小な空間に、止水材組成物が十分に浸透できず、十分な防水性を有する防水部を形成できなかったことによると解釈できる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
上記のように、本発明の実施形態にかかる防水構造は、複数の電線の導体を端末部で接合した端末スプライス部に設けられる形態に限られず、種々の種類の電線および位置に対して適用することができる。例えば、電線の長手方向中途部で、複数の電線を接合したスプライス部に、防水構造を設けてもよい。また、電線束ではなく、1本の電線の端部や中途部で、複数の素線の集合よりなる導体が絶縁被覆から露出された部分に、防水構造を設けてもよい。
1 ワイヤーハーネス
2 電線束
20 電線
21 導体
21a 素線
22 絶縁被覆
3 スプライス部
4 防水部
41 キャップ
42 止水材
F フィラー
S 素線間の空隙

Claims (6)

  1. 外径が0.10mm以上0.5mm以下の素線が複数集合してなる導体の少なくとも一部の領域を、止水材で封止した防水構造において、
    前記止水材は、樹脂材料と、前記樹脂材料中に分散したフィラーと、を含有し、
    前記フィラーは、平均粒径が、1μm以上、5μm以下であり、ゴムまたはエラストマーよりなる軟質フィラーまたは無機化合物よりなる硬質フィラーとして構成され、前記止水材における含有量が、前記樹脂材料に対して1質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする電線の防水構造。
  2. 前記軟質フィラーは、デュロメータA硬度で40以下の硬度を有し、
    前記硬質フィラーは、モース硬度で5以上の硬度を有していることを特徴とする請求項1に記載の電線の防水構造。
  3. 前記軟質フィラーは、前記樹脂材料への添加により、前記止水材の弾性率を10%以上低減させるものであり、
    前記硬質フィラーは、前記樹脂材料への添加により、前記止水材の線膨張係数を5%以上低減させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電線の防水構造。
  4. 前記軟質フィラーは、アクリルゴムまたは熱可塑性エラストマーより構成され、
    前記硬質フィラーは、窒化ケイ素、シリカ、タルクのいずれかより構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電線の防水構造。
  5. 前記止水材は、熱硬化性を有する樹脂組成物の硬化物よりなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電線の防水構造。
  6. 複数の電線の導体が端末部で露出されて相互に接合されたスプライス部が、キャップ部材に収容され、前記止水材が、前記キャップ部材の内部に充填されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電線の防水構造。
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