JP6855346B2 - 連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法 - Google Patents

連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法 Download PDF

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Description

本発明は、牛乳や乳飲料、豆乳、ジュースなどの各種飲料、あるいはスープ、ゲル状食品材料、固液混合食品材料など、流動性を有する食品材料に通電して、ジュール熱により食品材料を加熱するにあたり、通電のための電極表面でのスケールの発生、成長を防止する方法に関するものである。
最近に至り、各種の流動性を有する食品材料や飲料を殺菌したり調理したりするために加熱する連続加熱装置として、流路内において流動性食品材料や飲料を連続的に移送しながら、流路内に露呈している一対以上の電極間に電圧を加え、食品材料や飲料に通電してジュール熱により加熱する装置が、例えばジュール加熱装置あるいは通電加熱装置などの名称で開発されている(例えば特許文献1〜3等)。
この種の連続通電加熱処理装置の代表的な例を、図1に模式的に示す。
連続通電加熱処理装置は、基本的には、食品材料に通電して食品材料を加熱する通電加熱部1と、その通電加熱部1に供給する電流、電圧を発生する電源装置10とを有する構成とされる。
図1の連続通電加熱処理装置は、通電加熱部1の電極2A、2Bをリング状電極(環状電極)によって構成した例として示している。すなわち加熱部流路3が、全体として円筒状(チューブ状)をなす中空管体4によって形成されており、この中空管体4の一端には流入口5Aを有する入り口部材5が設けられ、他端には流出口6Aを有する出口部材6が設けられている。そして中空管体4は、流路3の長さ方向(流れの方向)に所定間隔Gを置いて配設された一対のリング状電極2A、2Bと、これらのリング状電極2A、2B間に介在する絶縁管体からなる中間絶縁管(スペーサ管体)7Aと、リング状電極2A、2Bと入り口部材5、出口部材6のそれぞれの間に介在する端部側絶縁管7B、7Cとによって構成されている。
流入口5Aには、外部から流動性食品材料を供給するための供給管8が接続され、流出口6Aには、外部へ流動性食品材料を導くための排出管9が接続されている。
供給管8には、図示しない流動性食品材料供給源から、ポンプなどの加圧手段によって、
流動性食品材料が連続的に供給されるようになっている。また排出管9は、流動性食品材料を冷却するための冷却管や熱交換器などからなる図示しない冷却部に接続されている。
そして、交流の電圧、電流が、電源装置10の一対の出力端子10A、10Bから給電用導体(導体配線)12A,12Bを介して、通電加熱部1内の電極2A、2Bに給電される構成とされる。電極2A、2Bに給電する交流波形としては、正弦波、あるいはパルス波(矩形波)などが使用される。
正弦波交流の場合は、電源装置10としては、商用3相交流を2相交流に変換して出力トランスにより電圧調整して2相交流を出力する、一般的な2相交流電源装置を用いることが出来る。
またパルス波(矩形波)交流の場合、電源装置としては、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子を用いたものが開発されている(例えば特許文献4)。このようなスイッチング素子を用いた、パルス波交流発生用の電源装置の一例を図2に模式的に示す。
図2において、電源装置10は、外部の3相交流商用電源14からの商用3相交流15を、サイリスタ(SCR)などからなる整流回路16によって整流し、得られた直流電流17を、IGBT素子などからなるスイッチング回路18によって、例えば20kHzの周波数の高周波信号を発生する自励発振器などの高周波発振器19からの高周波信号20によってチョッピングし、例えば20kHzの矩形波交流(パルス波交流)21とし、その矩形波交流21を、出力トランス11の一次側巻線11aに導き、二次側巻線11bから、所定の電圧に昇圧された電極印加用矩形波交流として取り出し、出力端子10A、10Bから給電用導体(導体配線)12A、12Bを経て、通電加熱部1の一対のリング状電極2A、2Bに導くように構成される。
図1もしくは図2に示す連続通電加熱装置の通電加熱部1において、流入口5Aから中空管体4内に流入した流動性を有する食品材料は、流出口6Aに至るまでの間において、リング状電極2A、2B間の流路を通過し、その間、食品材料に通電され、その食品材料の電気抵抗によって発熱(ジュール発熱)して食品材料の温度が上昇し、殺菌や調理がなされる。
特開平11−89522号公報 特開2015−156349号公報 特開2001−169734号公報 特開2015−92866号公報
前述のような連続通電加熱装置を、牛乳や乳飲料、豆乳などの殺菌等のために使用した場合、次のような問題がある。
すなわち、連続通電加熱装置を長時間連続して運転しているうちに、電極表面にスケールが生成、付着していく。このスケールは、牛乳や乳飲料、豆乳などの食品材料に含まれるCaなどの成分の酸化物や、変性して凝固した蛋白質等に由来するものと思われるが、電極表面のスケールが成長すれば、その箇所で電極間の間隔が狭くなって、電極間でスパーック(短絡)が生じやすくなる。そして電極間の短絡が発生すれば、電源装置の回路素子、例えばIGBT素子等に急激に過大な電流が流れるため、回路素子を破壊してしまうおそれがある。また短絡によって激しいスパークが発生すれば、電極表面に焼き付きが発生して、安定して電流を流すことができなくなり、操業が不安定となる。またスパークの発生には至らない場合でも、スケールの発生、付着によって流路が狭くなって、流路内を流れる食品材料の流速が大きくなったり、偏流が生じたりして、運転状態が不安定となり、食品材料を目標通りの温度まで安定して加熱することが困難となる。すなわち、投入電力に見合った温度上昇量を安定して得ることが困難となる。
したがって、牛乳などのスケールが発生しやすい流動性食品材料を対象とする場合は、長時間にわたって安定して連続運転することは困難であった。そこで、この種の流動性食品材料を対象とする場合、短時間で運転を停止して、電極表面の清掃(スケール除去)を頻繁に行ったり、また焼き付きが発生した電極を頻繁に交換したりすることが必要となったりするが、その場合には、処理能率の低下やコスト上昇を招く等の問題が生じる。そのため従来は、牛乳などのスケールが発生しやすい流動性食品材料については、連続通電加熱を適用することは、ためらわれていたのが実情である。
なお一般にこの種の連続通電加熱装置における電源装置では、短絡検出回路を設けておき、短絡が検出された際に過大電流が回路素子に流れないように設計することが多いが、大量の流動性食品材料を連続処理するための通電加熱装置の場合のような、高出力レベルでの急激な過大電流発生には対応することができず、回路素子の破壊を招いてしまいやすい。そのため、実際上は短絡検出回路を設けておくだけでは、回路素子の保護は充分ではなく、また電極表面の焼き付き防止については有効ではなかった。さらには、短絡検出回路を設けておいても、短絡に至る以前の段階での、スケールの発生成長による運転状態の不安定化には対処できなかった。
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、流動性を有する食品材料(飲料を含む)を連続通電加熱するにあたり、電極表面でのスケールの発生、付着の防止を図り、これによって、スケールが発生しやすいとされていた食品材料についても、長時間安定した通電加熱を行い得るようにすることを課題としている。
上述の課題を解決するため、本発明者等が鋭意実験、検討を重ねたところ、電源装置の一対の出力端子うちの一方の出力端子と、電圧印加用の一対の電極のうちの一方の電極との間に、電気抵抗体を介挿させることによって、牛乳や乳飲料、豆乳などの食品材料を通電加熱する場合でも、電極表面でのスケールの発生・付着を大幅に軽減し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、
交流電圧を発生する電源装置の一対の出力端子から、流動性を有する食品材料が連続的に移送される流路に露呈されている少なくとも一対の電極に給電して、前記食品材料を、前記流路内で連続的に通電加熱するにあたり、
前記電源装置の一対の出力端子のうち、いずれか一方の出力端子と、前記一対の電極のうちいずれか一方の電極との間に、所定の電気抵抗を有する電気抵抗体を介挿した状態で、前記電極に給電し、食品材料を通電加熱することを特徴とするものである。
また本発明の第2の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第1の態様のスケール防止方法において、
前記電気抵抗体として、その電気抵抗値が、0.5Ω以上のものを用いることを特徴とするものである。
さらに本発明の第3の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第1もしくは第2の態様のスケール防止方法において、
前記電極間に、周波数15kHz以上の交流電圧を加えることを特徴とするものである。
また本発明の第4の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第1〜第3のいずれかの態様のスケール防止方法において、
前記電極間に加える交流電圧が、正弦波交流電圧もしくはパルス波交流電圧であることを特徴とするものである。
さらに本発明の第5の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第1〜第4のいずれかの態様のスケール防止において、
少なくとも一対の電極が、前記流路における流れの方向に間隔を置いて配列され、前記流れの方向に沿って交流電圧を加えて通電加熱することを特徴とするものである。
また本発明の第6の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第5の態様のスケール防止において、
前記少なくとも一対の電極としてリング状電極を用い、流路を構成する中空管体の長さ方向に間隔を置いて流路を取り囲むように前記各リング状電極が配設された状態で電極間に交流電圧を加えることを特徴とするものである。
さらに本発明の第7の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第1〜第4のいずれかの態様のスケール防止方法において、
前記一対の電極が、前記流路を挟んで、流れの方向に対して直交する方向に対向するように配設され、前記流れに対して直交する方向に交流電圧を加えて通電加熱することを特徴とするものである。
また本発明の第8の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第7の態様のスケール防止方法において、
前記各電極として、平板状の電極を用い、相互に対向するように平行に配設された一対の平板状の電極の対向面間に前記流路が形成された状態で、電極間に交流電圧を加えることを特徴とするものである。
さらに本発明の第9の態様の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法は、前記第1〜第8のいずれかの態様のスケール防止方法において、
前記食品材料が牛乳もしくは乳飲料、又は豆乳であることを特徴とするものである。
本発明によれば、牛乳や乳飲料、豆乳などを殺菌などのために連続通電加熱処理処理を施すにあたって、電極表面にスケールが生成、付着されにくく、またスパークや焼き付きも発生しにくく、そのため長時間安定して連続運転することができ、そのためスケール除去作業の負担を軽減することができ、また電極交換の頻度も少なくて済み、さらには電源の回路素子が破壊されるおそれも少なくなる等の効果が得られる。
従来の連続通電加熱装置の一例を原理的に示す略解図である。 電源装置としてパルス電源を用いた場合の従来の連続通電加熱装置の一例を原理的に示す略解図である。 本発明のスケール防止方法の第1の実施形態を実施している状況を示す略解図である。 本発明のスケール防止方法の第2の実施形態を実施している状況を示す略解図である。 本発明のスケール防止方法の第3の実施形態を実施している状況を示す略解図である。 本発明のスケール防止方法の第4の実施形態を実施している状況を示す略解図である。 本発明のスケール防止方法の第5の実施形態を実施している状況を示す略解図である。 図7におけるVIII−VIII線での断面図である。 図7におけるIX−IX線での断面図である。 実施例3、実施例4で用いた平面電極の電極対向面の寸法を示す略解図である。
以下に、本発明のスケール防止方法の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図3には、本発明のスケール防止方法の第1の実施形態のスケール防止方法を実施する場合の連続通電加熱装置の一例を示す。なお図3において、図1、図2に示した要素と同一の要素については図1、図2と同一の符号を付し、その詳細は省略する。
図3の実施形態では、通電加熱部1としては、図1に示したと同様に、チタンなどの金属からなるリング状電極2A、2Bを用いた構成とされている。すなわち、通電加熱部1は、流入口5Aと流出口6Aとの間の流路3に沿って、所定間隔Gを置いて配設された一対のリング状電極2A、2Bを有している。以下では、一対のリング状電極2A、2Bを区別する必要がある場合は、流入口5Aに近い側のリング状電極2Aを入り口側電極と称し、流出口6Aに近い側のリング状電極2Bを出口側電極と称することとする。なお一対のリング状電極2A、2B間の間隔Gは特に限定しないが、通常は3〜100mm程度の範囲内が好ましい。
電源装置10は、一般的な2相正弦波交流を発生するものでも、また図2に示したようなパルス波(矩形波)交流を発生するもの、いずれでもよい。いずれにしても、電源装置10は、その出力側に昇圧用(出力電圧調整用)の出力トランス11を備えている。
以下では、電源装置10の一対の出力端子(出力トランス11の二次側巻線11bの端子に相当する)10A、10Bのうち、一方の出力端子10Aを負側出力端子と称し、他方の出力端子10Bを正側出力端子と称することとする。但し、二次側巻線11bに生じるパルスは交流であるから、上記の各端子についての正側、負側は、あくまで出力端子を区別するために便宜的に名づけたに過ぎず、各出力端子における電圧の正負を表すものではない。
電源装置10の一対の出力端子(出力トランス11の二次側巻線11bの端子に相当する)10A、10Bのうち、いずれか一方の出力端子と、通電加熱部1の一対の電極2A、2Bのうちのいずれか一方の電極との間に、電気抵抗値が好ましくは0.5Ω以上、より好ましくは2.0Ω以上の電気抵抗体22が介挿されている。
ここで、本実施形態では、出力端子10A、10Bのうちの負側出力端子10Aと通電加熱部1の入り口側電極2Aとの間に上記の電気抵抗体22が介挿されている。なお負側出力端子10Aと電気抵抗体22との間及び電気抵抗体22と入り口側電極2Aとの間(言い換えれば電気抵抗体22の前後)は、銅などの良導体からなる一般的な給電用導体(導体配線)23A、23Bによって接続されている。また正側出力端子10Bと通電加熱部1の出口側電極2Bとの間は、同じく銅などの良導体からなる一般的な給電用導体(導体配線)23Cによって直接に接続されている。
電気抵抗体22の具体的種類は特に限定しないが、高電圧や、大電流等に耐え得る抵抗器、例えばセラミック質抵抗器、とりわけ冷却機能付きのセラミック質抵抗器を用いることができる。この種の抵抗器としては、例えば東海高熱工業株式会社製「エレマ抵抗器(商標)」の間接水冷抵抗器がある。
なお、電気抵抗体22は、所定の抵抗値の抵抗器を複数本用い、それらを直列接続もしくは並列接続することによって、電気抵抗体全体として、所望の抵抗値となるように調整してもよいことはもちろんである。
ここで、正側出力端子10Bと通電加熱部1の出口側電極2Bとの間の給電用導体23Cは、導体径及び長さによって異なるが、一般には、1×10−7Ω〜1×10−8Ω程度である。一方、負側出力端子10Aと通電加熱部1の入り口側電極2Aとの間に介挿されている電気抵抗体22の抵抗値は、0.5Ω以上、好ましくは2.0Ω以上であるから、負側出力端子10Aと通電加熱部1の入り口側電極2Aとの間の電気抵抗は、電気抵抗体22の前後の給電用導体23A、23Bの電気抵抗を考慮しても、入り口側電極2Aの側の電気抵抗の10倍以上の値となる。なお、図示はしていないが、実際には配線中間や配線端末にコネクタが存在するのが通常であり、厳密に言えば、これらのコネクタ部分の電気抵抗も勘案する必要があるが、これらのコネクタ部分の電気抵抗は無視できる程度に小さいのが通常である。
以上のような連続通電加熱装置において、電源装置10の出力トランス11の二次側巻線11bに生じた所定の電圧、例えば50〜2000Vの交流電圧が、出力端子10A、10Bから通電加熱部1の一対のリング状電極2A、2Bに導かれる。すなわち正側出力端子10Bは、給電用導体23Cを通じて通電加熱部1の出口側電極2Bに通電され、負側出力端子10Aは、給電用導体23A、電気抵抗体22、給電用導体23Bを通じて通電加熱部1の入り口側電極2Aに通電される。
そしてリング状電極2A、2B間の流路3を牛乳などの流動性食品材料が通過する際には、電極2A、2B間で食品材料に交流電圧が加えられ、ジュール熱により温度上昇して(加熱されて)、殺菌や調理がなされる。
なお、リング状電極2A、2B間に加えられる交流電圧は、リング状電極2A、2B間の距離(間隔G)の1mmあたりの電圧として、1〜40V/mmとすることが望ましい。
なおまた、流路3を流れる流動性食品材料自体は、例えば通電加熱部1の出側の配管の金属部分等によって電気的に接地された状態となるのが通常である。
ここで、従来の連続通電加熱装置では、流動性食品材料、特に牛乳や乳飲料、豆乳などが電極2A、2B間を、通電されながら通過する間に、流動性食品材料中のCa等の成分の酸化物や蛋白質凝固物などが生成されて、電極2A、2Bの表面にスケールとして付着する傾向が強い。また電極表面でのスケールの成長によってスパークが発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態の通電加熱装置では、電極表面へのスケールの付着を防止し、さらにスパークの発生を抑制することが可能となった。
すなわち、従来の連続通電加熱装置では、電源装置10の出力端子10A、10Bは、電気抵抗体を介在させることなく、銅などの良導体(給電用導体配線や接続端子、コネクタなど)によって直接に電極2A、2Bに接続されており、また加えられる交流の周波数も15kHz未満とするのが通常であった。これに対して本実施形態では、電源装置10の出力端子10A、10Bのうちのいずれか一方(本実施形態では負側出力端子10A)と、通電加熱部1の電極2A、2Bとのいずれか一方(本実施形態では入り口側電極2A)との間に、好ましくは0.5Ω以上、より好ましくは2.0Ω以上の抵抗値の電気抵抗体22を介挿させ、且つ加える交流の周波数を好ましくは15kHz以上、より好ましくは40kHz以上とすることによって、電極表面へのスケールの付着を防止し、さらにスパークの発生、焦げ付き(焼き付き)の発生を抑制しうることを、本発明者等の詳細な実験により見出したのである。
ここで、電気抵抗体22の抵抗値が0.5Ω未満では、電極表面へのスケールの付着防止、スパークの発生の防止の効果が充分に得られなくなるおそれがある。したがって電気抵抗体22の抵抗値は0.5Ω以上とすることが好ましい。そして特に抵抗値を2.0Ω以上とすることによって、これらの効果を確実かつ充分に発揮することが可能となる。なお電気抵抗体22の抵抗値の上限は特に規定しないが、抵抗値が大きすぎれば電力ロスが大きくなり、そこで通常は10Ω以下とすることが好ましい。
また加える交流の周波数が15kHz未満では、電気抵抗体22の抵抗値を0.5Ω以上としても、電極表面へのスケールの付着防止、スパークの発生の防止の効果が充分に得られなくなるおそれがある。したがって周波数は15kHzとすることが好ましい。そして特に40kHz以上とすれば、これらの効果を確実かつ充分に発揮することが可能となる。なお周波数の上限は特に規定しないが、電力効率等の観点から、1000kHz以下とすることが好ましい。
なおリング状電極(環状平面電極)を用いた図3に示す通電加熱部1の場合、一対のリング状電極2A、2Bの間隔Gは、3〜100mmの範囲内とすることが望ましい。
なお、連続通電加熱時において、電極表面付近の局部的な過度の温度上昇を回避し、これにより過度の局部的温度上昇による加熱対象の品質の低下を防止するためには、電極間の流路における流れが層流ではなく、乱流となることが望ましく、また電極表面でのスケールの付着、成長を抑制するとともに焼き付きの発生を防止するためにも、電極間での流れが乱流となることが望ましい。
一般に流路における層流/乱流は、レイノルズ数Reを指標として評価することができることが知られている。レイノルズ数Reは、ρを流体の密度、μを流体の粘度、Uを代表流速、Lを代表長さ(特性長さ)とすれば、次の(1)式によって定義される。
Re=ρUL/μ・・・(1)
牛乳や豆乳の場合、その密度は1000kg/m程度、粘度は2〜50mPa・s程度で、ほぼ一定の値である。そこで、リング状電極を用いた本実施形態では、対象となる流動性食品材料の密度および粘度に応じ、流路を形成する中空管体の内径(リング状電極の内径)と流速Uのいずれか一方、又は双方を調整することによって、レイノルズ数Reを調整することが望ましい。一般には、レイノルズ数Reが2,300以上では乱流が生じると言われているが、本発明では、充分に乱流を生起させるため、電極間流路のレイノルズ数Reが20,000以上、好ましくは50,000以上となるように設定することが好ましい。
このようにレイノルズ数Reを20,000以上、好ましくは50,000以上に調整することによって、電極間の流路を流れる牛乳などの流動性食品材料に充分に乱流を生起させることができ、これによって流路の断面内で流動性食品材料を均一に温度上昇させて、電極表面付近での局部的な過度の温度上昇を防止し、食品材料の品質の低下を防止することができる。また乱流によって、電極表面へのスケールの付着を抑制することができ、また前述のように電極表面付近での過度の温度上昇を防止することができるため、電極表面での焼き付きの発生の危険を減じることも可能となる。
リング状電極2A、2Bの内径は特に限定しないが、流速に応じて、乱流を充分に生起させ得るようなレイノルズ数、及び電極間通電時間が確保できる径とすればよい。
すなわち、前述のように流路内に乱流を生起させることが望ましく、そのためには流路のレイノルズ数Reが、20,000以上、好ましくは50,000以上となるように設定することが好ましいのであり、このようなレイノルズ数が確保できるように、また同時に、リング状電極2A、2B間での通電時間が適切な時間となるように、電極間での流速に応じて適切に定めればよく、例えば内径8〜25mm程度であればよい。
<第2の実施形態>
電気抵抗体22は、要は電源装置10のいずれか一方の出力端子10A、10Bと通電加熱部1のいずれか一方の電極2A、2Bとの間に介在させればよく、必ずしも負側出力端子10Aと入り口側電極2Aとの間に介挿する必要はない。そこで図4に示す第2の実施形態では、電源装置10の正側出力端子10Bと通電加熱部1の出口側電極2Bとの間に電気抵抗体22を介挿した構成としている。このように出口側電極2Bの側に電気抵抗体22を介挿した場合でも、いずれの電極の側にも電気抵抗体を介挿しない場合に比較すれば、スケールの付着防止、スパークの発生防止を図ることができる。
<第3の実施形態>
以上の第1、第2の実施形態では、通電加熱部1のリング状電極として、一対の電極2A、2Bを用いた例として示しているが、実際の通電加熱部では、通電加熱される流路の長さを確保するため、3以上のリング状電極、望ましくは3以上の奇数個のリング電極を用いて通電加熱部を構成することが多い。
例えば5つのリング状電極2C〜2Gを用いた場合の例を、第2の実施形態として図5に示す。
図5において、通電加熱部1における中空管体4は、5個のリング状電極2C〜2Gを、それぞれ間隔を置いて配列し、各リング状電極2C〜2Gの間にスペーサ管体として中間絶縁管7E〜7Hを配し、さらに両端側のリング状電極2C、2Gと入り口部材5、出口部材6の間に端部側絶縁管7D、7Iを配した構成とされている。そして、電源装置10の出力端子10A、10Bのうち、負側出力端子10Aは、電気抵抗体22を介して、入り口側のリング状電極2C、出口側のリング状電極2G、中間のリング状電極2Eに(したがって一つ置きに)接続されている。また正側出力端子10Bは、上記のリング状電極2C、2E、2Gの間のリング状電極2D、2Fに、電気抵抗体を介することなく、一般的な給電用導体23Cによって接続されている。
このように、3以上のリング状電極を用いる場合も、電極一つ置きに、電気抵抗体を介挿させた状態で、連続通電加熱を行うことにより、電極表面でのスケールの発生、ひいてはスパークの発生及びそれに伴う焼き付きの発生を抑制することが出来る。
以上の第1〜第3の実施形態では、電極として一対以上のリング状電極を用いて、流路の長さ方向(流れの方向)に間隔を置いて電極を配列している。したがってこの場合は、電極間の食品材料には、流路に沿った方向に電圧が印加されて、その方向に電界が生成されることになる。このような場合は、電流は電極表面の端部付近(例えば一対の電極の互いに近い側の端部付近)に集中するから、スケールも電極の端部付近において集中的に生成されて、その付近で堆積・成長しやすい。そしてスケールが成長すれば、その箇所からスパークが発生しやすくなる。また、スケールが成長すれば、流路が狭くなって流速が増大したり偏流が生じたりして、食品材料が安定して加熱されなくなり、目標とする温度まで加熱できなくなる。言い換えれば、温度上昇量が少なくなる。言い換えれば、温度上昇量が少なくなり、目標とする温度上昇量が得られなくなる。
したがって第1〜第3の実施形態の場合、スケールの発生・成長の程度は、温度上昇量の低下によって把握することが出来る。なお実際の運転では、流速や投入電力などの調整によって目標とする温度上昇量ΔTを設定して運転を行なって、運転中に実際に加熱温度(出口温度)を検出して、実際の温度上昇量ΔTjを測定するのが通常である。一方、これ以上、温度上昇量が低下すれば、スケールが発生しやすい状況となると見積もられる温度上昇量の低下分の値(限界温度上昇量減少分)Tαを、あらかじめ定めておく。そして、運転中の実際の温度上昇量ΔTjが、ΔT−Tαより小さくなったときに、運転を停止させる操業を行えば、スケールの発生、成長を未然に防止し、スケールの発生、成長に伴うスパークの発生や焼き付きの発生を回避することが出来る。但し、運転中の実際の温度上昇量ΔTjが、早い時期にΔT−Tαより小さくなれば、早期に連続運転を中断することになり、その場合、生産性の低下や電極の清掃、交換の頻度が高くなってしまう等の問題が生じる。
そしてこのような実施形態1〜3の場合、運転を開始してから、実際の温度上昇量ΔTjが、ΔT−Tαより小さくなって運転を停止させるまでの連続運転時間をもって、スケールの発生状況を評価することが出来る。
なお上記の限界温度上昇量減少分Tαは、これまでの操業実績のデータに基づいて定めたり、実験によって定めればよい、具体的な限界温度上昇量減少分Tαの値は、例えば2〜5℃程度に定めればよく、代表的にはTα=4℃と設定することができる。
一方、上記の第1〜第3の実施形態とは異なり、一対の電極を、流路の長さ方向(流れの方向)に対し直交する方向に間隔を置いて電極を配列することもできる。この場合、電極間の食品材料に、流路に直交する方向に電圧を印加して、その方向に電界を生成することになる。このような例を、次の第4の実施形態、第5の実施形態として説明する。
<第4の実施形態>
本発明のスケール防止方法を、内外面対向タイプの電極を用いて通電加熱する場合に適用するにあたって使用する通電加熱装置の一例の概要を、第4の実施形態として図6に示す。
図6において、流路3を構成する中空管体4は、その中空管体4自体が、導電材からなる中空円筒状の外側電極2Hによって構成されている。そして、流路3の横断面中央部には、軸線方向に沿って、外側電極2Hの内径より小さい外径の導電材からなる丸棒状もしくは中空管状の内側電極2Iが配設されている。この場合、流動性食品材料は、外側電極2Hの内周面と内側電極2Iの外周面との間の空間(隙間)を通過しながら、外側電極2Hと外側電極2Iとの間に加えられる交流によって通電加熱がなされる。そして本実施形態では、例えば電源装置10の負側出力端子10Aと外側電極2Hとの間に電気抵抗体22が介挿されている。一方、電源装置10の正側出力端子10Bは、電気抵抗体を介することなく、給電用導体23Cによって内側電極2Iに接続されている。
このように、内外面対向タイプの電極を用いる場合も、電源装置10のいずれか一方の出力端子と、外側電極もしくは内側電極との間に電気抵抗体を介挿させた状態で、連続通電加熱を行うことにより、電極表面でのスケール、焼き付きの発生を抑制することが出来る。
<第5の実施形態>
さらに本発明のスケール防止方法は、平板状の電極を対向させたタイプの通電加熱部を用いて通電加熱する場合にも適用することが出来る。その場合の通電加熱装置の概要を、第5の実施形態として図7〜図9に示す。
図7〜図9において、一対の平板状の電極(平面電極)2J、2Kが、間隔を置いて平行に対向するように配設されている。これらの平面電極2J、2Kの相互間の周辺部分には、樹脂などの絶縁材料からなるスペーサ30が介在され、このスペーサ3によって、相互に対向する平面電極2J、2K間の隙間に流路3が区画されている。一方の平面電極2Jにおける流路3の一端部に相当する箇所には、平面電極2Aをその厚み方向に貫通して流入口5Aが形成され、他方の平面電極2Kにおける流路3の他端部に相当する箇所には、平面電極2Jをその厚み方向に貫通して流出口6Aが形成されている。流入口5Aには、外部から流動性食品材料を供給するための供給管8が接続され、流出口6Aには、外部へ流動性食品材料を導くための排出管9が接続されている。なお流入口5Aを形成した平面電極2Jは、入り口側平面電極2Jと称し、流出口6Aを形成した平面電極2Kは、出口側平面電極2Kと称することとする。
そして第5の実施形態では、電源装置10の負側出力端子10Aと入り口側平面電極2Jとの間に電気抵抗体22が介挿されている。一方、電源装置10の正側出力端子10Bは、電気抵抗体を介することなく、給電用導体23Cによって出口側平面電極2Kに接続されている。
なお場合によっては、電源装置10の正側出力端子10Bと出口側平面電極2Kとの間に電気抵抗体22を介挿し、電源装置10の負側出力端子10Aは、電気抵抗体を介することなく、給電用導体によって入り口側平面電極2Jに直接接続することも許容される。
このように平板状電極(平面電極)を用いた第5の実施形態の場合、一対の平面電極2J、2Kの間隔G´は、1〜10mmの範囲内とすることが望ましい。その間隔G´が1mm未満では、電極間の流路抵抗が大きすぎて圧力損失が大きすぎ、また電極間で放電(スパーク)が発生してしまうことが懸念される。一方間隔Gが10mmを越えれば、電極間の電界密度が小さくなり、昇温速度が遅くなってしまうおそれがある。
また一対の平板状電極2A、2Bによって挟まれる流路25の長さは特に規定しないが、例えばパルスを使用する場合、電極間でのパルス電圧印加時間が適切な時間となるように、電極間での流速に応じて適切に定めればよい。
さらに、一対の電極2A、2B間印加電圧は、50〜10,000V程度とされ、したがって電極間の距離1mmあたりの印加電圧は。50〜1,000V/mm程度となる。
本実施形態のように、平面対向タイプの電極(平面電極)を用いる場合も、電源装置10のいずれか一方の出力端子と、入り口側平面電極もしくは出口側電極との間に電気抵抗体を介挿させた状態で、連続通電加熱を行うことにより、電極表面でのスケール、焼き付きの発生を抑制することが出来る。但し、出口側電極2Kの側に電気抵抗体22を介挿するよりも、図7に示しているように、入り口側電極22Jの側に電気抵抗体22を介挿した場合の方が、スケール防止効果が高いことが判明している。
なお、平面電極を用いた本実施形態の場合、スケールは、電極のエッジ部(例えば図7〜図9)における流入口5A、流出口6Aの角部付近に発生しやすい傾向は若干認められるが、リング状電極を用いた第1の実施形態の場合よりは、電極表面に全面的に発生しやすい。したがって、平面電極の表面に発生したスケールの面積率(電極の全表面積に対してスケールが発生した箇所が占める面積の割合)を調べれば、スケール発生状況を評価することが出来る。
また平面電極を用いた本実施形態の場合も、電極表面付近の局部的な過度の温度上昇を回避し、これにより過度の局部的温度上昇による加熱対象の品質の低下を防止するためには、電極間の流れが層流ではなく、乱流となることが望ましく、また電極表面でのスケールの付着、成長を抑制するとともに焼き付きの発生を防止するためにも、電極間での流れが乱流となることが望ましい。そこで、第1の実施形態について述べたと同様に、電極間の流路におけるレイノルズ数Reを20,000以上、好ましくは50,000以上に調整することが望ましい。すなわち、電極間の間隔G´と流速を、20,000以上、好ましくは50,000以上のレイノルズ数Reが確保されるように定めることが望ましい。
以上のような各実施形態の方法によれば、流動性食品材料を通電加熱によって連続的に殺菌あるいは調理するにあたり、牛乳や乳飲料、豆乳などのスケールを生成しやすい食品材料を対象とした場合でも、電極表面でスケールが生成、付着することを抑制することができる。そのため、スケールの発生、付着によって安定した運転が困難となるおそれが少ない。また電極表面でのスケールの成長によって電極間で短絡が生じたり、さらにはスパークが発生して、電極表面が焼付いてしまう(焦げ付いてしまう)ことを防止でき、そのため電源装置の回路素子に急激に過大な電流が流れることを防止して、急激な過大電流による回路素子の破壊を未然に防止することができる。
そして、このようにスケールの生成、付着、さらにはスパークの発生を抑えることができる結果、電極表面の清掃(スケール除去)の頻度を少なくするとともに、焼き付きが発生した電極の交換の頻度を少なくすることができるから、生産性の向上を図ることができ、また電極交換等に要するコストを低減して、経済性を高めることができる。
本発明のスケール防止方法は、牛乳やその他の乳飲料、あるいは豆乳について殺菌や調理等のための通電加熱を行う場合に最適であるが、そのほかスケールや電極の焼き付きが生じやすい飲料、流動性食品材料に適用して、電極表面のスケール発生・付着の防止を図り得ることはもちろんである。
以下に、本発明のスケール防止方法による効果を実証するために行った実施例を、比較例とともに以下に示す。
<実施例1>
試験対象として牛乳を用い、次のように連続通電加熱実験を行った。
すなわち、電極としては、図3に召すようなリング状電極(入り口側電極2Aおよび出口側電極2B)を用い、電極に加える交流としてはパルス波交流を用いた。
表1の試験No.1〜No.8に示す条件で、印加するパルスの周波数、電気抵抗体の電気抵抗値、電気抵抗体の挿入位置をそれぞれ変化させ、試験液として牛乳を、流量13.5L/minで連続的に流しながら、パルスを加える運転実験を最長90分実施した。
電気抵抗体としては、セラミック抵抗器(東海高熱工業株式会社製:エレマ電気抵抗器(商標)の間接水冷抵抗器)の1.25Ωのものを、直列もしくは並列に接続することによって、2.5Ω、0.42Ωの2段階に抵抗値を異ならせた。
なお電気抵抗体の挿入位置については、表1において「出口側」と記載した試験例(No.1、No.3、No.5、No.7)では、図4に示すように、正側出力端子10Bと出口側電極2Bとの間に電気抵抗体22を介挿させた。また「入口側」と記載した試験例(No.2、No.6)では、図3に示すように、負側出力端子10Aと入り口側電極2Aとの間に電気抵抗体22を介挿させた。さらに「両側」と記載した試験例(No.4、No.8)では、正側出力端子10Bと出口側電極2Bとの間、及び負側出力端子10Aと入り口側電極2Aとの間のそれぞれに電気抵抗体22を介挿させた。
流路径は10.5mmとし、リング状電極としてはチタン製の内径10.5mmで軸線方向に沿った長さが20mmのものを用い、一対の電極間の距離は50mmとした。電極間に印加するパルス波交流の電圧は2500Vであり、したがって電極間の単位長さ当たりの電圧は50V/mmである。さらに、電極間の流路のレイノルズ数Reは、約2700である。
またここで、電気抵抗体を介在させない側の電源装置の出力端子から電極までの導体部分(配線及びコネクタ等)の抵抗値は、約1×10−7Ωであって、電気抵抗体の抵抗値よりも充分に小さい。
入り口での試験液(牛乳)の温度は100℃であり、電極間を通過した試験液の温度(目標加熱温度)は115℃とした。すなわち目標温度上昇量ΔTを15℃とした。
ここで、スケールの発生が懸念される限界温度上昇量減少分Tαは4℃とし、運転開始から連続的に出口温度を測定して、実際の温度上昇量ΔTjが、ΔT−Tα=11℃を下回った時に、スケールが発生しやすくなったと見積もって運転を停止させた。
そして運転停止後、電極を取り外して、電極表面のスケール発生状況発生状況を調べた。
各試験No.1〜No.8において、運転停止までの運転時間を表1中に示す。なお表1において、No.5、No.6は、運転時間が90分に至るまで、実際の温度上昇量ΔTjが11℃を下回ることがなく、したがって運転を中断させる必要が生じなかった。そのほかのNo.1〜No.4、No.7、No.8では、運転時間が90分に至るまでの間の中途で温度上昇量ΔTjが11℃を下回ったため、その時点で運転を中断させた。
また運転停止後の電極表面を観察して、電極表面のスケール発生の有無を調べたので、その結果も表1に示す。運転を90分間中断させなかったNo.5、No.6では、電極表面にスケールが発生していないことが確認された。
これに対して運転を中断させたNo.1〜No.4、No.7、No.8では、いずれも電極表面にスケールが発生していることが確認された。
Figure 0006855346
以上の結果から、電気抵抗体を介挿させることによって、介挿させない場合と比較して、スケールの発生を招くことなく、長時間安定して運転し得ることが明らかである。
一方、同じ周波数、同じ抵抗体設置位置では、抵抗体の抵抗値が0.42Ωの場合よりも2.5Ωの場合の方が、相対的にスケールが発生しにくく、相対的に長時間安定して連続運転し得ることが分かる。
さらに、同じ抵抗体設置位置、同じ抵抗値では、周波数が20kHzの場合よりも60kHzの場合の方が、相対的にスケールが発生しにくく、相対的に長時間安定して連続運転し得ることが分かる。
<実施例2>
実施例1と同様に試験対象として牛乳を用い、実施例1に準じて、パルス波交流による連続通電加熱実験を行った。
この実施例2では、最長運転時間を実施例1の場合よりも長時間の120分とした。
またこの実施例2では、周波数の影響をより詳細に確認するため、2.5Ωの電気抵抗体を入り口側に介挿した場合について、周波数を60kHzと44kHzの2段階に変化させた。
この実施例2の条件及び評価を、表2の試験No.21,No.22に示す。なお上記以外の条件は、実施例1の場合と同じである。
Figure 0006855346
表2に示すように、周波数以外の条件が同じであれば、周波数が44kHzの場合よりも60kHzの場合の方が、早期のスケールの発生を防止して、より長時間安定して運転し得ることが分かる。
<実施例3>
試験対象として牛乳を用い、次のように連続通電加熱実験を行った。
すなわち、電極としては、図7〜図9に召すような平面電極(入り口側電極2J、出口側電極2K)を用い、表3の試験No.31〜No.38に示す条件で、印加する高電圧パルスの周波数、電気抵抗体の電気抵抗値、電気抵抗体の挿入位置をそれぞれ変化させ、試験液として牛乳を電極間に連続的に流しながら、パルス波交流を加える運転実験をそれぞれ所定時間行った。そして実験終了後、電極を取り外して、入り口側電極および出口側電極表面のスケール発生状況、焦げ付き(焼き付き)の発生状況を調べた。
電気抵抗体としては、実施例1と同様にセラミック抵抗器(東海高熱工業株式会社製:エレマ電気抵抗器(商標)の間接水冷抵抗器)の1.25Ωのものを、直列もしくは並列に接続することによって、2.5Ω、0.42Ωの2段階に抵抗値を異ならせた。
なお電気抵抗体の挿入位置については、表3において「出口側」と記載した試験例(No.31、No.33、No.35、No.37)では、正側出力端子2Aと出口側電極2Kとの間に電気抵抗体を介挿させた。また「入口側」と記載した試験例(No.32、No.36では、図7に示すように負側出力端子2Bと入り口側電極2Jとの間に電気抵抗体を介挿させた。さらに「両側」と記載した試験例(No.34、No.38)では、正側出力端子2Aと出口側電極2Kとの間、及び負側出力端子2Bと入り口側電極2Jとの間のそれぞれに電気抵抗体を介挿させた。
平面電極としてはチタン製のものを用いた。また平面電極2J、2Kの対向面の寸法は、図10を参照すれば、流入口5A、流出口5Bの直径Dは6mm、流入口5Aの中心軸線Oから流出口6Aの中心軸線Oまでの距離(平面電極2J、2Kの流路方向の実質的な長さ)Lは38mm、幅Wは6mmである。したがって電極対向面の面積は、約200mmである。
また一対の平面電極2J、2K間の距離G´(図7参照)は2mm、印加電圧は250Vで、したがって電極間の単位長さ当たりの電圧は125V/mmである。さらに、電極間の流路のレイノルズ数Reは、約6900である。
またここで、電気抵抗体を介在させない側の高電圧パルス発生部の出力端子から電極までの導体部分(配線及びコネクタ等)の抵抗値は、約1×10−7Ωであって、電気抵抗体の抵抗値よりも充分に小さい。
試験No,31〜34では、入り口での試験液(牛乳)の温度は15℃であり、電極間を通過した試験液の温度は28℃で、その間の温度上昇量(ΔT)は13℃であった。また試験No,35〜38では、入り口での試験液(牛乳)の温度は15℃であり、電極間を通過した試験液の温度は31,5℃で、その間の温度上昇量(ΔT)は16.5℃であった。
連続運転時間は50分としたが、試験No.33、試験No.37では、中途でスパークの発生が認められため、その時点で試験を中断した。
実験終了後、電極を取り外して、入り口側電極および出口側電極表面のスケール発生状況、焦げ付き(焼き付き)の発生状況を調べてそれぞれの評価を行い、さらに各電極についてのスケール発生状況評価及び焦げ付き(焼き付き)発生状況評価に基づいて、総合評価を行ったので、その結果を表3中に示す。ここで、スケール発生状況評価、焦げ付き(焼き付き)発生状況評価、及び総合評価は、次のような基準によって行った。
<スケール発生状況の評価基準>
◎印:スケールの発生が全く認められなかったケース。
〇印:スケールの発生が若干認められたが、スケール発生個所が、面積率で電極表面の約30%以下であったケース。
△印:スケールの発生がやや多く、スケール発生個所が、面積率で電極表面の約30%を超え、約70%以下であったケース。
×印:スケールの発生が多く、スケール発生個所が、面積率で電極表面の約70%を超えたケース。
<焦げ付き発生状況の評価基準>
◎印:焦げ付きの発生が全く認められなかったケース。
〇印:焦げ付きの発生がわずかにあったが、焦げ付きの程度が小さく、スパーク発生の危険性が少ないと認められるケース。
△印:焦げ付きの発生がやや多く、場合によってはスパークが発生すると判断されるケース。
×印:焦げ付きの発生が激しく、それ以上使用すればスパークが発生する危険性が高いと判断されるケース。
<総合評価基準>
入り口側電極、出口側電極についての、スケール発生状況評価と焦げ付き発生状況評価において、ほとんどが◎印であった場合を最良(合格)として◎を付し、一つでも×印があった場合を不良(不合格)として×印を付し、それらの中間を○印(ほぼ良好)、△印(やや不良)の2段階で評価した。
Figure 0006855346
表3から、電気抵抗体を介挿させることによって、介挿させない場合と比較して、総合評価値が小さくなること、すなわちスケールの付着、スパークの発生の傾向が小さくなることが分かる。
そして、同じ周波数、同じ抵抗値では、入り口側に電気抵抗体を介挿させることによって、両側に介挿させた場合及び出口側に介挿させた場合よりも、総合評価が良好で、スケールの付着、スパークの発生を抑制し得ることが確認された。
また、同じ周波数、同じ抵抗体設置位置では、抵抗体の抵抗値が0.42Ωの場合よりも2.5Ωの場合の方が総合評価が良好で、スケールの付着、スパークの発生を抑制し得ることが分かる。
さらに、同じ抵抗体設置位置、同じ抵抗値では、周波数が20kHzの場合よりも60kHzの場合の方が、総合評価が良好で、スケールの付着、スパークの発生を抑制し得ることが分かる。
<実施例4>
実施例3と同様に試験対象として牛乳を用い、実施例3に準じて、連続通電加熱実験を行った。
この実施例4では、試験液(牛乳)の温度を実施例3の場合よりも高温とした。すなわち、試験液の入り口温度は108.5℃と高温とし、電極間を通過した試験液の温度は115℃で、その間の温度上昇量(ΔT)は6.5℃とした。またこの実施例4では、周波数の影響をより詳細に確認するため、2.5Ωの電気抵抗体を入り口側に介挿した場合について、周波数を60kHzと44kHzの2段階に変化させた。運転時間は90分とした。
この実施例4の条件及び評価を、表4の試験No.41,No.42に示す。なお上記以外の条件は、実施例3の場合と同じである。
Figure 0006855346
表4に示すように、周波数以外の条件が同じであれば、周波数が44kHzの場合よりも60kHzの場合の方が、より確実にスケール、焼き付きを防止し得ることが分かる。
以上、本発明の好ましい実施態様、実施例について説明したが、前述の実施態様、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1・・・通電加熱部
2A〜2K・・・電極
3・・・流路
4・・・中空管体
5A・・・流入口
6A・・・流出口
10・・・電源装置
10A、10B・・・出力端子
22・・・電気抵抗体
G、G´・・・電極間の間隔

Claims (9)

  1. 交流電圧を発生する電源装置の一対の出力端子から、流動性を有する食品材料が連続的に移送される流路に露呈されている少なくとも一対の電極に給電して、前記食品材料を、前記流路内で連続的に通電加熱するにあたり、
    前記電源装置の一対の出力端子のうち、いずれか一方の出力端子と、前記一対の電極のうちいずれか一方の電極との間に、所定の電気抵抗を有する電気抵抗体を介挿した状態で、前記電極に給電し、通電加熱することを特徴とする、連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  2. 前記電気抵抗体として、その電気抵抗値が、0.5Ω以上のものを用いることを特徴とする、請求項1に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  3. 前記電極間に、周波数15kHz以上の交流電圧を加えることを特徴とする、請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  4. 前記電極間に加える交流が、正弦波交流電圧もしくはパルス波交流電圧であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  5. 少なくとも一対の電極が、前記流路における流れの方向に間隔を置いて配列され、前記流れの方向に沿って交流電圧を加えて通電加熱することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  6. 前記少なくとも一対の電極としてリング状電極を用い、流路を構成する中空管体の長さ方向に間隔を置いて流路を取り囲むように前記各リング状電極が配設された状態で、電極間に交流電圧を加えることを特徴とする、請求項5に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  7. 一対の電極が、前記流路を挟んで、流れの方向に対して直交する方向に対向するように配設され、前記流れに対して直交する方向に交流電圧を加えて通電加熱することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  8. 前記各電極として、平板状の電極を用い、相互に対向するように平行に配設された一対の平板状の電極の対向面間に前記流路が形成された状態で、電極間に交流電圧を加えることを特徴とする、請求項7に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
  9. 前記食品材料が牛乳もしくは乳飲料、又は豆乳であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの請求項に記載の連続通電加熱における電極表面のスケール防止方法。
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